≪REV / EXIT / FWD≫

§Circumpolar star〜荒野の群雄〜§

ミドルフェイズ・1

著:真柴悠 イラスト:真柴悠

―妖しき派遣員―

【GM】 では、ミドルフェイズに入ります。最初はヤマグチさんね。ソバ屋。
【ヤマグチ】 おっ、来たか。入るで。「G=M社から来ましたー」
【GM】 「あぁ、よろしく頼んます」
【ヤマグチ】 名刺渡してな。
【GM】 もらった。
【ヤマグチ】 G=M社の広告も一緒に渡すで。
【GM】 適当にカウンターの横の方に置く。
【ヤマグチ】 あーあ(笑)
【GM】 生麺を入れてラップした器と、ツユの入った魔法瓶を岡持に入れて渡される。
【ヤマグチ】 受け取って、アタッチメントをつけたベスパに乗るで。てゆうか、どこに届けるん?
【ペルゼン】 先に言え!(笑)
【アルカミル】 やっと聞いた(笑)
【ペルゼン】 どうなんかな〜って思って、つっこむつもりやったで(笑)
【GM】 「惚れるとこだったよ、兄ちゃん」
【ヤマグチ】 きらーん、って笑ってるで。
【GM】 「注文は、第36師団“リンドブルム”のケッセルリンク少佐って方からです」
【ペルゼン】 あぁ(笑)

ケッセルリンク少佐
 真帝国軍第36師団“リンドブルム”の師団長副官兼作戦参謀。24歳。
 軍人家系の出身で、生真面目だが超マイペース。上下関係よりも紳士であることを優先する傾向がある。和食党。
 以前、帝国都市の軍ブロックに侵入してきたクエスターを使って、焼そばパンを強奪した上官を消している。
 銀腕の王ヌァザを継承している。

【GM】 「コレを使って下さい」GPSを渡される。
【ペルゼン】 あ、それ欲しい(笑)
【ヤマグチ】 ケッセルリンク少佐な。メモしとかな。
【GM】 「今日中に届けばいいそうなんで」
【ヤマグチ】 ふーん。
【GM】 クエストね。『少佐にソバを届ける』

―悲劇のハンター―

【GM】 次のシーンプレヤーはアルカミルやね。
【アルカミル】 はいよ。
【GM】 ヘレンをパンツァーの後ろに乗せて、奈落ドラゴンがいるという遺跡に向かってます。
【アルカミル】 ふむ。
【GM】 で、近道ついでに横切ろうと入った街の中で、何かを見つけたヘレンが「止めて」と言います。
【アルカミル】 止めたる。
【GM】 壁に貼られてるポスターに近付いていく。
【アルカミル】 おお?
【GM】 「『悲劇の類人猿』ですって! 見たいわ!」キラキラ。
【アルカミル】 (素で)「はあっ!?」(笑)
【ヤマグチ】 危ないから、見ん方がいいで。
【アルカミル】 ちょっと、そのポスターを見てみる。
【GM】 だいたい、想像する通りです。美男美女に混じって、モザイクかけたくなるような……。
【アルカミル】 「見ん方がええと思うねんけど……あの、急いだ方がええと思うで」(笑) 多分無駄やと思うけど、一応言うてみる。
【GM】 「いいじゃない。なにもドラゴンを倒せって言われた訳じゃないし。焦ったってしょうがないわよ」
【アルカミル】 「早う調査行って、早う帰った方がええんちゃうん?」
【GM】 暴れだす。
【ヤマグチ】 あーあ。
【アルカミル】 「ちょっとだけやで」
【GM】 ヘレンは、映画館に入って行った。
【アルカミル】 渋々ついて行く。
【GM】 あ、ついて行くんや。内容は、まあ尾ヒレ背ビレな感じで。それはアルカミルには分からへんのやけど。
――で、2時間後。
【ペルゼン】 全部見たんや(笑)
【ヤマグチ】 2時間もあったんや。
【アルカミル】 げんなりしそうや。
【GM】 目を赤くしてハンカチを握りしめるヘレン。
【ヤマグチ】 そういう物語なんや。
【GM】 一応、悲劇やからな。どういう方向に悲劇なんかは知らんけど。
【アルカミル】 アルカミルは、ションボリしてるで。
【ペルゼン】 でも、ヘレンはきっと熱く語るで。
【アルカミル】 余計にションボリなる(笑) この2時間で着けとったかもしれんのに。
【ヤマグチ】 ほんまや。この2時間が生死を分けたかもしれん。
【GM】 すごいトラップや。
【アルカミル】 「満足?」
【GM】 「うん」
【アルカミル】 「じゃ、い、行っていいかな? てゆうか、行こう?」
【GM】 「いいわよ」
 再びパンツァーに乗ろうとしたあなたの目の前にある電柱の、貼り紙に目が止まります。
【アルカミル】 なに?
【GM】 『たずね犬。名前:モップ 性別:オス 特徴:胴が長い』
【アルカミル】 おぉ?

モップ
 PCの一人であるヴァグランツの女性、サクラのファミリア。ミニチュアダックスフント。
 魔酒ドラゴンスピリットを飲まされて火を吹いたことに始まり、PCの「道に迷わんようにモップを伸ばしていったらええんちゃう?」などという無責任な発言が重なり、“胴が無限に伸びて火を吹く犬”呼ばわりされるようになったフォーカス犬。
データ的には普通のファミリア。

【ヤマグチ】 脱走したんや。
【GM】 で、サクラが描いたと思われる似顔絵。
【サクラ】 似てへんで(笑)
【GM】 一応シーフやけどな。
【アルカミル】 「こ、こいつは!!」
【GM】 「どうしたの?」
【アルカミル】 「この犬、多分、俺の知り合いの飼い犬やねん」
【GM】 「えー? そんなに有名な犬なの?」
【アルカミル】 「有名ちゃうねんけど」
【ヤマグチ】 早いこと止めな、世界が滅ぶねん。
【アルカミル】 「ちょっと、ヤバめの犬かな」
【GM】 そうなんや(笑)
【サクラ】 色々とね。
【GM】 実際は、全然そんな事ないのに。
【サクラ】 周りの妄想がすごいだけで。
【アルカミル】 「実際見た訳じゃないけど、いろいろ噂は聞いてんねん」
【GM】 「ふーん」
【アルカミル】 「俺が見た感じでは、普通っぽかったんやけど」
【GM】 最初のセッションで見ただけやからな。あれから、だんだんおかしくなっていったもんな。
【サクラ】 火を吹いたの見た人、このメンバーにはいてないんか。
【アルカミル】 噂でしか知らんで。「そのうち見かけたら、届けてあげるけど」
【GM】 「でも、知ってるんでしょう?」
【アルカミル】 「知ってるで。……えっ?」(笑)
【GM】 「じゃあ、探さなきゃ!」(笑)
【アルカミル】 (視線をそらしながら)「今ハ、どらごんノ調査ノ方ガ大事ダロウ?」
【GM】 「もしかしたら、どこかで飢えてるかもしれないし」
【アルカミル】 「彼なら大丈夫だ! いいから、ドラゴンの調査に……行こうよ……」(笑)
【GM】 「ふぅ〜ん。分かったわ」
というわけで、クエストね。『モップを見つける』
【アルカミル】 ああぁ〜出たよ(笑) どっかでモップが絡んでくるんや。
【ヤマグチ】 ドラゴンがモップやったりして。

――というような推理が簡単に立つほど、PL間では恐れられている。
しつこいが、GMは一度もそんなシチュエーションを用意した試しはない(笑)

【ヤマグチ】 火ぃ吹くし。誤認される可能性大やで。
【GM】 吹くか! あれは、そういう酒を飲んだからやってば!

―昼下がりの鳥獣戯画―

【GM】 えーっと、次のシーンプレイヤーはペルゼンさん。
【ペルゼン】 パンツァーで、ションボリ走るで。
【GM】 パンツァーをとばしていると、二足歩行の巨大なカエルが、正面から走ってくる。
【ペルゼン】 えっ(笑)
【ヤマグチ】 走って来んの? カエルが?
【GM】 カエル男ね。
【ペルゼン】 え、ちょっと、思いっきり避けるで。
【GM】 追いかけてくる。
【ペルゼン】 逃げる(笑)
【GM】 「遅刻しそうなんだ! 助けてくれ!」
【ペルゼン】 「知るかぁー!!」(笑)
【ヤマグチ】 バックミラーに映っとんで。
【GM】 「うわあぁぁぁ!!」
【ペルゼン】 「“うわぁ”じゃねえよ!!」
【GM】 「待ってくれよぉー!」
【ペルゼン】 「待つかよぉ!!!」
【GM】 頑張って追いかけるで。
【ヤマグチ】 そのぶんじゃ、捕まりそうやな。
【GM】 じゃあ、必死のあまりに……[反射]で振ってみよう。
【ヤマグチ】 反射高いで。
【ペルゼン】 でも、出目が低いで。9。
【GM】 砂に前輪を取られて、ザザッとこけた。
【ペルゼン】 すぐ起きあがって、逃げようとする。
【GM】 背後から抱きつく。
【ペルゼン】 うわぁ!(笑)
【GM】 「助けてくれよぉ!」
【ペルゼン】 「てゆうか、助けてほしいのは俺の方だぜ!」
【GM】 「遅れたら、爪を剥がされるんだよぉ!」
【ペルゼン】 「遅れたら、それどころじゃ済まねえんだよ!!」
【アルカミル】 爪、あるんや。
【GM】 「爪………ああーっ!!!」(一同爆笑)
 吸盤や。ショック受けてる。
【ヤマグチ】 あーあ。
【ペルゼン】 「じゃあ、いいやん! こっちは遅れたら殺されるかもしれへん」
【GM】 「助けてくれよぉ! 俺、爪がない!!」もう涙目。
【ペルゼン】 「俺も助けてほしいわーッ!!」
【GM】 「追われてるんだよ!」
【ペルゼン】 「誰に!?」
【GM】 「カエルに」
【ペルゼン】 「お前もやー!!!」
【GM】 「あんたはカエルが怖くないのか!?」
【ペルゼン】 「カエルは怖くないけど、お前が怖い!!」
【GM】 「俺はカエル恐怖症なんだよ!」
【ペルゼン】 「自分、カエルやん!」
【GM】 もう、こけたペルゼンさんに馬乗りになってるから。
【ペルゼン】 泣き出しそうや(笑)「ちゃんと朝起きていればよかった!」
【ヤマグチ】 ほんまや。反省せな。
【ペルゼン】 「酒、飲まんかったらよかった!」
【GM】 カエル男は、パンツァーを奪おうとする。
【ペルゼン】 「俺のやー!!」
【GM】 「行かなきゃダメなんだよぉ」
【ペルゼン】 「俺が行かなきゃダメなんだー!!」

 はらわたがよじれるGMと、笑いすぎてむせるペルゼンのプレイヤー(笑)

【アルカミル】 パンツァー乗れんの?
【GM】 このカエル男がクエスターやったらな。
【ヤマグチ】 それはもう、諦めるしかないな。
【GM】 座席に座ったまま、頑張ってるけど。
【ペルゼン】 「どけ!!」
【GM】 「貸してくれよ! 後で返すから」
【ペルゼン】 「貸さない! とにかく前に進みたいから、邪魔しないなら後ろ乗っとけ!」
【GM】 前には用事ないねんな。「ヒイイイ!」と叫んで、そのまま走り去る。
【ヤマグチ】 走り去ってもた。
【ペルゼン】 え、そいつ、いなくなった?
【GM】 うん。砂煙を上げながら、あなたの斜め後ろの方にある街に向かって去っていった。
【ペルゼン】 「……何だったんだ」(笑)
【ヤマグチ】 災難や。
【ペルゼン】 しばらくそっちを見てから、前に進もうかな。
【GM】 無事に街に着いたようですが。
【ペルゼン】 気になるなぁ(笑)
【GM】 では、クエストね。『部隊に追いつく』
【ヤマグチ】 おっ。
【ペルゼン】 “カエル男を助ける”じゃなかった(笑)
【GM】 残念。
【ペルゼン】 おなか痛い(笑) 顎が変になってる。
【GM】 腹筋ヤバいかも(笑)

―未知との遭遇―

【GM】 次のシーンね。ヤマグチさんです。
【ヤマグチ】 頑張ってベスパとばしとるで。
【GM】 荒野が続いて、前方に街が見えてきます。
【ヤマグチ】 ナビゲーター通りに進みよるで。
【GM】 通りかかった街の外れに、ちょっと胴体の長い生き物を発見する。
【ヤマグチ】 それは、犬か人かによって、だいぶ変わってくるねぇ。
【GM】 犬やね。ミニチュアダックスフントとよばれる、通常でも胴は長めの犬。
【ヤマグチ】 止まって、チッチッチッて舌鳴らしてみる。
【GM】 「クゥ〜ン」と鳴きながら、近寄ってくる。
【ヤマグチ】 えらい殊勝やな。
【アルカミル】 犬のくせに猫被っとんや。
【GM】 鼻クンクン。
【ヤマグチ】 鼻の前に指を出してみる。
【GM】 ペロペロ舐める。
【ヤマグチ】 じゃあ膝に乗せて、走る。
【GM】 えっ、誘拐された!
【ヤマグチ】 それで、あの『たずね犬』が貼られてしまった訳やねぇ。
【GM】 ん〜、それは時間的におかしいかな。もっと前から貼ってあるで。
【ヤマグチ】 そうなんか。
【GM】 じゃあ、クエストは『犬を守る』
【ヤマグチ】 犬を守る!?(笑)
【GM】 誘拐してもたからな。
【ヤマグチ】 誰からも守るって事やな。

―犬を求めて―

【GM】 では、次のシーンはアルカミルやね。
【アルカミル】 うい。
【GM】 続きですね。街の中。犬を探していたはずのヘレンは、服屋を物色してる。
【アルカミル】 「あれ?」(笑)
【GM】 いっつも無機質なとこにいるから、そういうお年頃な事を知らないんやね。
【アルカミル】 ヘタにつついたら余計に長くなるから……
【GM】 どんどん恐ろしい娘になっていきよるな(笑)
【アルカミル】 アルカミルはそう思っとるから、ここは素直に横に付いて、「まだ? まだ?」
【GM】 「あ、犬を探してたのよね」
【アルカミル】 「その犬なんやけど、ここにはおらんと思うで」
【GM】 「どうして?」
【アルカミル】 「た、多分あの……エサ! エサ。そう、え、エサになるようなものを探して……」
【GM】 なんでそんなに、しどろもどろやねん(笑)
【ペルゼン】 アルカミルがおもろい(笑)
【GM】 「どうする? 聞き込んでみる?」
【アルカミル】 「うん。ちょっと珍しめの犬やからな。見かけた人がいたら、印象に残っとるかもしれん」
【GM】 「炎を吐く」とか。
【アルカミル】 いや、そこまで言わん(笑)「そんな犬がおるわけない」言われるだけや。
【GM】 「軽く30メートルは伸びるんだよぉ」って、目ぇ血走らせながら。
【アルカミル】 普通に「胴が長い」とか。
【GM】 では、街びとA。
【アルカミル】 おっ。
【GM】 「街の外れで、単車に乗ったスーツの男が、ミニチュアダックスを連れてへ行くのを見たよ」
【アルカミル】 「え?」(笑)
【ペルゼン】 目撃されてる(笑)
【アルカミル】 「いつぐらいですか?」
【GM】 「ちょっと前かな」
【アルカミル】 「今日の?」
【GM】 「うん。ほんと、さっきだよ」
【アルカミル】 「どっちの方向?」
【GM】 「あっち」と指をさす。
【アルカミル】 「ちなみに、どんな感じの人でした?」
【GM】 「んー、普通のサラリーマンって感じだったよ。でもね、出前のバイクだったんだ」
【アルカミル】 「は? ……はぁ」(笑) そんなアンバランスな組み合わせやったら、見つけたら分かりそうやな。
「これは、いい情報を聞いた」
【GM】 ヘレンが、指さした方向を見て、「ちょうど遺跡の方向だわ」
【アルカミル】 「あっ! これは、ちょうどいい! さあ行こう!」
【GM】 「どうしたの急に? さっきまで、元気なかったのに」
【アルカミル】 (早口で)「いやいや、そんな事はないよ。ずっと元気だよ」
【GM】 「そう?」
【ヤマグチ】 明らかに違うよな(笑)
【アルカミル】 「さあ行こう。ドラゴンが待っている!」
【GM】 待っていられたらヤバいんちゃうん?(笑)
【アルカミル】 「モップも、きっと俺のこと待ってると思うんだ」
【GM】 「分かったわ」
 というわけでシーンを切ります。

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©2005 Haruka Mashiba
Illustration ©2005 Haruka Mashiba
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