▽ カルファン紀行の事 | ▽ 迷走する冒険者の事 | ▽ タイガーファング城侵入の事 |
【プレセア】 裏口から脱出しよう。
【ファベル】 包囲されてる気もするけど。
【プレセア】 でも、行くしかない。
【GM】 キミたちが裏から外に出ると、そこに、3人の兵士グループAが槍を携え、待ち構えていた。
【キャロット】 「あれぇ?」って思ってよう。
【GM】 「そこのでかい奴、おとなしく縛につけ!」と、兵士たちは怒鳴る。
【キャロット】 「なんで、ウサギがあかんの!?」って聞く。
【GM】 「エルフやろ、おまえはッ」(笑)
「つーか、ウサギ人間もアカンのじゃ!」って、兵士は言ってる。
【キャロット】 「えぇ〜?!」って、不服そうにしてる。
「ウサギ人間じゃなくて、ウサギ。ニンジン、食べれますよ」
【GM】 「本物のウサギがしゃべるか!」……で、キミら、どーすんの?
【キャロット】 うーん、頭弱い子やと思って、通してくれへんかな。
【ファベル】 いや、たとえそれでもエルフやから。
【プレセア】 じゃあ、突破しようと試みよう。
【GM】 なら、戦闘やね。騒ぎをききつけて、そのうち新たな敵が加わるかも。
【キャロット】 仕込杖で殴る。(ころっ)14。
【ファベル】 (ころっ)18。
【プレセア】 (ころっ)36。
【ファベル】 あいかわらず、ムチャな数字。わたしら、見学しててもいいかも。
【プレセア】 そんなんされたら、ダメージをプレセアひとりで受けることになるやん(笑)。死んだら呪うで。
【GM】 (ぽちっ)うおっ、ごっついダメージを受けてしまった。「手に負えねー!」って言ってる。
「おおーい、こっちだー!」と、仲間を呼んでるよ。
【ファベル】 逃げ腰?
【GM】 かなり逃げ腰。
【プレセア】 じゃあ、そのまま突っ切る。
【GM】 では、キミたちは、兵士グループAの囲いを突破した。
助けを聞きつけて、表口のほうから駆けつけてくる、3人の兵士グループBの姿が見える。
んで、キミら、徒歩で逃げるのかな?
【キャロット】 あっ、馬を呼ぶ、馬!
【GM】 馬は厩に繋がれてたね。
【プレセア】 引き返すか。
【GM】 ならば、兵士グループBと戦闘になる。
【プレセア】 ぶっ倒すさ。
【GM】 兵士グループBの後ろには、領主ポルフォンの姿も見えるけど、これは戦闘には参加しない。
ポルフォンは、家の反対側から回ろうとしてた別の兵士グループに、「こっちだ! 回り込め!」と、指示を出してる。
【プレセア】 何人ぐらい来るやろ。200人ってことはないやんな。
【キャロット】 3人やと思う。兵士の数って、全部で9人やったし。
領主は無視。目の前にいる兵士グループBを攻撃。(ころっ)14。
【ファベル】 (ころっ)19。
【プレセア】 (ころっ)32。
【GM】 (ぽちっ)わっ、またくらった。痛いなぁ、もう。
兵士グループBは、「なんだ、こいつら。強いぞ」と、怖気づいてる。
【キャロット】 馬、馬。ロープを切って、馬に乗る。
【ファベル】 馬に乗った。牛のロープも切る。
【プレセア】 領主までの距離は、どれくらい?
【GM】 20メートルほど。近距離(6〜30メートル)の範囲やね。
【ファベル】 なんか危険やな、このひと。
【キャロット】 なんかやる気やな。
【プレセア】 この場は、頭を押さえたほうが、賢いような気がするねんけど。
領主を捕らえようと試みるよ。
【ファベル】 プレセアの不穏な空気を感じ取って、立ち止まる。
【キャロット】 逃げようとして、「あれぇ?」って振り返ってる。
【GM】 それは、兵士グループBが阻止しようとするけど、プレセアはひとりで立ち向かうんかね? あと、裏口で戦った兵士グループAも、仲間が増えて気を取り直しつつあるよ。
【プレセア】 ファベルたちに、「領主を確保するから手伝え」って言う。
【ファベル】 手伝ってもいいけど。
【キャロット】 じゃあ、馬から降りる。
【GM】 とりあえず、領主への接近を阻止しようとする、兵士グループBとの戦闘ね。そっちのヒットを出して。
【ファベル】 退く気はないわけ?
【GM】 キミらが向かってくるねんもん。しゃあないやん。
【キャロット】 (ころっ)17。
【ファベル】 (ころっ)27。
【プレセア】 (ころっ)31。
【GM】 (ぽちっ)それはやられた。兵士グループBは倒れたよ。領主への道は開けた。
しかし、裏口のところで戦った兵士グループAが、背後から駆けて来てる。家の反対側からは、さらに3人の無傷の兵士たちが来るよ。
領主ポルフォンは、逃げようとする。
【キャロット】 追いかける〜。
【プレセア】 捕まえるよ。
【GM】 では、捕まえようとするひとは、器用度で1レベルのセービング・ロールに成功してください。
【プレセア】【キャロット】【ファベル】 (ころっ)
【GM】 プレセアとキャロットが成功やね。逃げようとした領主ポルフォンは、キミらふたりに取り押さえられたよ。
駆けつけようとした兵士たちは、たたらを踏んで立ち止まり、「ポルフォン様を放せ!」と、言ってるよ。
【プレセア】 「武装解除しろ」
【GM】 領主に命じられて、兵士たちは、槍や剣などの武器を地面に投げ捨てた。
【ファベル】 あっさりやな。
【GM】 「私を捕らえて、何のつもりだ?」と、ポルフォンは言う。
【キャロット】 「ウサギのつもりです」
【GM】 「エルフのくせに」
【キャロット】 「それはちょっと違うね。魂の種族はウサギ」
【ファベル】 なんか、変な空気が漂いだした(笑)。
【GM】 「私を誰だと思ってる」
【キャロット】 「知らん」
【ファベル】 『シラン』っていう動物がおったなぁ。
【キャロット】 おった、おった!(笑)
【GM】 「バカ者、私をあんな動物と一緒にするな。
私は、キャフタ領主ワーレドー子爵や、本国のゴンパルト公爵と懇意にしていただいているのだ。おまえたち、タダではすまんぞ」
【プレセア】 「だから?」
【キャロット】 権力とかそういうのじゃなくて、耳の長さとか、体の長さが大事やから。
【ファベル】 それもちょっと違うと思うけど。
【GM】 「おまえたちの望みはなんだ?」と、領主は聞いてくるよ。
【ファベル】 「あのウサギを捕まえて、どうしようと思うたわけ?」
【GM】 「キャフタのワーレドー子爵に突き出せば、また、私の株が上がるじゃないか」
ところで、捕らえた領主をどうしたいの、キミらは?
【キャロット】 さあ?
【ファベル】 プレセアが捕らえようって言うから、手伝っただけやし。
【GM】 最悪やな(笑)。
【ファベル】 領主に、「あんたのことは、村人に引き渡してもいいわけ?」って聞く。
【GM】 「勝手にしろ」と、答える。
【ファベル】 なにぃ?
【プレセア】 プレセアは、そんなことどうでもいいねん。領主を人質にして脱出を図りたかっただけやから。
【GM】 そうなんか。
【キャロット】 じゃあ、村を出る。
【ファベル】 自分らが見えなくなるまでは、身の安全を保証してもらわんと。
【プレセア】 途中まで連れて行ったらええやん。途中で身ぐるみ剥いで、ほかしてきたらええねん。
【ファベル】 ――だそうです(笑)。
本当にそれを実行したあと、冒険者たちは、鉱山の村モゴチャに行った。
そして、10年前の種族浄化によるドワーフ狩りで放棄された、村の裏山のドワーフ地下住居地跡に忍び込み、グングの酒蔵を見つけ出した。
【GM】 ドワーフサイズの住居やからね。ウサギ男は、いろんなものがつっかえてるよ。
【キャロット】 あー、ホンマや。外で待ってようかな(笑)。
【ファベル】 ウサ耳をはずして行こう。
【キャロット】 ウサ耳に折り目がつかんように、両手で大事そうに優しく押さえて、身をかがめて地下住居をうろつくわ。
【ファベル】 はずそうよ(笑)。
【GM】 酒蔵は、単純に地面をくり抜いただけ、という感じではないね。壁や天井は、複雑に入り組むように掘られてる。よく見ると、壁と天井の境には、通気孔みたいな小さな四角い穴がいくつも開けられている。
じつはこれ、精霊の流れを意識した、風水の力を引き出すような造りになってるんやね。魔法ではなく、建築技巧によるところが、ドワーフらしい。
【プレセア】 酒と杖を探す。
【GM】 見たらすぐにわかる。部屋の奥に酒樽がふたつあり、そのそばの壁に、先っちょに透明な宝玉がはめ込まれた杖が1本、立てかけられている。
【ファベル】 他には?
【GM】 部屋の隅に毛布が3組、テーブルに3脚の椅子がある。テーブルの上には、スープ皿が3人分と、パンが3つ載ってるよ。食事の準備が整ったところやったみたいやね。
パンはカビてないけど、水分を失ってカチコチになってる。スープ皿も、その底にスープの成分がこびりついてるだけ。
【プレセア】 酒樽を持つことはできる?
【GM】 酒樽ひとつにドワーフ酒が20リットル入っており、その重量は600です。
【キャロット】 重〜。
【プレセア】 持つのはムリやな。水袋に入れていこか。
【ファベル】 わたしも入れる。
【キャロット】 オレも。
【プレセア】 じゃあ、プレセアはやめとこう。
【キャロット】 杖は、どういうのなん?
【GM】 なら、知性度で1レベルのセービング・ロールをしてみ――成功やね。そいつは、『召喚の杖』というアイテムです。金貨1200枚の価値がある。
面識のある特定の人物を、1通常ターン(10分)の間、召喚する魔法の杖。いちど使用すると、壊れます。
【キャロット】 それ、召喚されたひとは、10分したら自動的に帰っていくん?
【GM】 そう。元の場所にテレポートしていく。
【ファベル】 迷惑やな〜。召喚されたひとがトイレ中やったりしたら、怖いで(笑)。
【GM】 新聞持ったまま、やって来るやろね。
【キャロット】 ティガーとか呼び出したら、強いかなぁ。オムレツと一緒に来そうやけど。
この後、冒険者たちは、古文書の地図に竜の絵が描かれている場所に行った。
そこは古代都市の無人の遺跡。冒険者たちは、“禍つ神の像の目を美酒注ぐ少年の背に向ける”ことによってあらわれていた、古代都市の太守の館の地下迷宮に潜った。
……が、めぼしいものは何もない。
あたりまえである。そこは10年前、ガーヴェンのメンバーだったアイザックとリザロークが、探索し尽くした地下迷宮なのだから。(『落日の虎』第3話参照)
かつてリザロークのお尻を噛んだミミックだけが残されていて、冒険者たちはそいつに襲われてしまった。
さらにその後、冒険者たちは、古文書の地図にバツ印が記されていた場所に向かった。
そこは森深い山の奥。地下遺跡への入り口を発見した。
遺跡の入り口は、鉄の扉に閉ざされていた。扉には、竜が頭と翼と尻尾で丸い玉を支えるような形状の、かなり特徴的な窪みがあった。
その形は、先に立ち寄った古代都市の場所に記された古文書の印と、そっくりだった。
冒険者たちは、リザロークたちが古代都市の太守の館で見つけたという、『竜の水晶像』が必要なんだろうと、めぼしをつけた(古文書にそう書いてあるし)。
冒険者たちの迷走は続く。
その『竜の水晶像』のありかを探るため、なんと、カリーニョ村の領主ポルフォンに話を聞こうとしたのだ!
とうぜんながら、冒険者たちは村に入ることができない。
閉ざされた門の上の櫓から、矢を射かけられる始末。とくに、暴挙の首謀者であるプレセア・アクアマリンは集中攻撃を受け、重傷を負うハメになった。
【ファベル】 とうぜんの報いやな。
ほうほうのていで、カリーニョ村から逃げ出した冒険者たち。モゴチャ村を発ってから、すでに4日を無為に過ごしている。
これでは、何のために、ティガーたちが知っている情報を、プレセアたちが共有しているのかわからない――。
【GM】 とりあえず、自分たちが持ってる情報を整理したら?
古代都市の地下迷宮で『竜の水晶像』を見つけたリザロークの話では、それは当時彼らが所属してた組織のリーダーに渡した、ってことやったね。
その後、リーダーはロットバイル王国への謀反に失敗し、財産はロットバイルに没収されてしまった。
没収されたリーダーの財産のうち、使えそうな物は本国へ、使えなさそう物や用途不明の物は、旧カルファン王国のタイガーファング城に放置されてる、と聞いたよね?
そしてリザロークは、「『竜の水晶像』は、何に使うのかわからなかった」と言っていた。
【キャロット】 じゃあ、『竜の水晶像』は、カルファンの城にある!
【ファベル】 カルファンの城は、どこにあるの?
【GM】 かつてのカルファン王国時代の王都、レギトの街です。
【キャロット】 じゃあ、レギトに向かう。
7月17日の夕方、冒険者たちは、大都市レギトに到着した。
【GM】 レギトは北に海を持ち、漁港を構える、人口約1万8000人の大都市です。
キミたちは南側からやって来ました。
南の郊外にあるいくつかの丘陵地には、至高神シルファス、大地母神ミフォア、戦神オーシュ、知識神リンツ、幸運神ノプスの神殿が点々と建っています。
かつての国教はオーシュ。しかし、ロットバイル王国は宗教を禁止しているので、どの神殿も、現在は無人です。もしかすると、オークやアンデッド・モンスターなんかが、住みついてしまってるかも。
【ファベル】 司祭たちはどうなったんやろ?
【GM】 信仰を捨てなければ、処分されたでしょうな。
【プレセア】 ほう。
【GM】 さて、キミたちは、レギトの街門にやって来ました。
まあ、街の門には、見張りの衛兵が立ってますわな。ベテランふうの衛兵が、門を往来をする人物を、さりげなく観察してます。ベテランなので、怪しい者は、その素振りだけで見抜いてしまう。
衛兵は、「ちょっと待て」と、キミたちを呼び止めたよ。主に不審な視線を送られてるのは、とうぜん、身の丈194センチのウサギ男やね。
「このクソ暑いのに、なんで耳あてなんかしてるんだ?」
【キャロット】 「ウサギになりきるために決まってるじゃないですか。マフラーもしてますよ、モコモコの」って言う。
「かわいいでしょ? モコモコの手袋も」
【GM】 ベテランの衛兵は、思いっきり疑ってるみたいやけど。
【ファベル】 「こいつ、本気なんで」
【キャロット】 ここはこの路線で押し切らないとやばい、って本能が思った。暑苦しいかっこうで、「ウサギ人間♪」って言うとく。
【GM】 「なに、貴様はウサギ人間なのか?」
【キャロット】 「魂がウサギの人間」
【GM】 ここでキャロットは、幸運度で1レベルのセービング・ロールをしてみて。
【キャロット】 (ころっ)失敗した。
【GM】 なら、「怪しいな。ちょっと耳を見せてみろ」と、言われてしまったよ。
【キャロット】 じゃあ、「はい」ってウサ耳を渡す。
「耳! これ、オレの耳」
【GM】 「アホか!」と、衛兵はウサ耳を投げ捨てた。
【キャロット】 「あ〜ッ」って、拾いに行く(笑)。
【ファベル】 必死や、必死や。
【GM】 いちおうね、魅力度を使って、[説得]とか[言いくるめ]とかを試みれるけど?
【ファベル】 じゃあ、[説得]をやってみる。魅力度が乏しいけど。(ころっ)ムリ、失敗。
【GM】 それなら、「引っ込んでろ」と言われた。
【キャロット】 ほんじゃあ、「この耳あてを取ったら、呪いが発動するねん!」って、[詐欺]してみる。(ころっ)出た、成功。
【GM】 ベテラン衛兵のカウンター・セービング・ロール。(ころっ)失敗。衛兵は「の、呪いか?!」と、驚いてるよ。
「どんな呪いだ?」
【キャロット】 「おまえもウサギになる」
【GM】 「それは嫌だな」
【キャロット】 「いいの? 耳あて、取るよ?」
【GM】 「じゃあ、行け」と、ベテラン衛兵は門を通してくれたよ。
【プレセア】 お城へ一直線に行くよ。
【GM】 大通りを歩いてると、レギトの街は、思いのほか賑やかなのがわかるね。ダンフリーズ王国との決戦に備えて集められた若い兵士たちが、いっぱいいるから。
彼らのほとんどは農民やけど、恩賞をめあてに志願してきた者が大多数なので、悲壮感はそれほどない。ちょっとした危ない遠足、冒険に出るつもりでいる感じ。
ロットバイルの軍服はカッコいいので、その姿でナンパしてる奴がいる。残していく家族や、畑のことを気にしてるのもいる。まあ、どれも変にハイになってるみたいやね。
【ファベル】 ふむ。
【GM】 キミたちは、タイガーファング城の前まで来ました。水掘と、ウサギ男の身長より高い城壁に囲われた、堅固な城です。堀には跳ね橋が架けられ、城門に続いている。
もちろん、そこかしこに歩哨がいるよ。
【キャロット】 一般人は、入れなさそうなん?
【GM】 見学はさせてもらえそうにないな。戦争が近いんで、ピリピリしてるし。
【プレセア】 さて、どこかで聞き込みして、どうやったら城の中に潜り込めるか、探らんといかんのでない?
【キャロット】 盗賊ギルドとか。
【ファベル】 あるの? 盗賊ギルド。
【GM】 表立って存在してるわけではないんで、盗賊が、知性度による1レベルのセービング・ロールに成功して、見つけるしかない。
【プレセア】 (ころっ)成功。
【GM】 なら、スラムに程近い一軒の酒場の看板に、盗賊の情報屋を示す暗号が隠されてるのを、プレセアは見抜いた。
【プレセア】 じゃあ、中に入って「城の中に入ろうと思ったら、どうやって入れるの?」と、聞いてみるよ。
【GM】 「なに考えてんだ、おまえ?」と、鋭い目つきの鷲鼻のオヤジは言う。
【プレセア】 「どうしても、宝物庫に行かなアカン事情があるねん」
【GM】 「命知らずな奴らだ」
【ファベル】 「そんなに警備が厳重なん?」
【GM】 「城の警備が厳重なのはあたりまえだが、宝物庫には、恐ろしい幽霊がいるんだ」
【キャロット】 幽霊?
【GM】 「カルファン騎士の亡霊だ。宝物庫を守っているらしく、迂闊に近づいてそいつに殺された奴は、少なくないぜ」と、オヤジは言う。
「あそこには、ロットバイルには不要なものばかりが放置されてるのに、何を大切に守ってるんだか」
【ファベル】 気になるな〜。
【GM】 「ま、金さえ払えば、忍び込む方法は教えてやるよ。別に止めはしないぜ」
【プレセア】 いくら払えばいいかな?
【GM】 「金貨5枚だな。どーせ生きて帰れないだろうし、持ち金ぜんぶでもいいぞ」
【プレセア】 5枚、渡しとくよ(笑)。
【GM】 なら、侵入ルートを教えてもらった。漁港の近くに、城からの脱出口があるらしい。その昔、ティガーことレギト王子が城を落ち延びるとき、アイザックとリザロークに連れられて出てきたところやね。
【プレセア】 そのルートを使えば、宝物庫までは安全に行けるんやね?
【GM】 「そいつは、おまえさんの腕と運しだいだな」
脱出路は城の内部に通じていて、宝物庫は、城の裏庭に建ってる見張り塔の地下にあるらしい。地下におりる階段は、塔の中にあるとのこと。
【キャロット】 城の中から、裏庭に出んといかんのか。
【GM】 「城のあちこちに、昼夜を問わず見張りがいるぜ。亡霊騎士が陣取ってる、塔の地下の宝物庫を除いてな」
【プレセア】 その塔の入り口も、衛兵に見張られてる?
【GM】 「あたりまえだろ。見張り塔だせ」(笑)
【キャロット】 じゃあ、夜のうちに忍び込もう。GM、今、何時ぐらい?
【GM】 レギトに到着したのが夕方やったから、宵のあたりかな。もうじきしたら真夜中になり、街は寝静まる。見張りたちを除いてね。
【キャロット】 ほんなら、真夜中になるまで、適当な宿屋で待つ。
夜が深まり、冒険者たちは行動を起こした。
漁港に出向き、情報屋から仕入れた侵入ルートに入るのだ。
【キャロット】 ランタンに灯をつける。見つからんように、シャッターを半分下ろし気味で。
そして冒険者たちは、城内に忍び込んだ。城の廊下には、ろうそくが灯る燭台が掛けられている。キャロットは、ランタンのシャッターを完全に下ろした。
物陰に息を潜めて様子を窺っていると、ランタンを手にした歩哨が、ふたりひと組で巡回していた。とくに明るい光が漏れる部屋は、宿直の衛兵たちの詰め所だ。ときおり、笑い声が聞こえてくる。
冒険者たちは、警邏に見つからぬよう、細心の注意を払って裏庭に出た。
庭にはかがり火が焚かれ、城壁の上の物見や、庭のあちこちに、見張りがいる。
冒険者たちは、何度も幸運度によるセービング・ロールを行い、死角になる場所を縫いながら、ついに、宝物庫があるという見張り塔のそばの茂みに辿り着いた。
【GM】 塔の入口には、見張りの衛兵がふたり立ってるよ。塔には小さな窓がいくつかあって、主に1階の窓から明かりが漏れ出てる。
【キャロット】 明かりが漏れてない窓はない?
【GM】 1箇所ある。見張りが立ってる入口の、ちょうど正反対の位置。
【キャロット】 高さはどれくらい?
【GM】 キミの肩ぐらい。
【キャロット】 じゃあ、身長的には問題なさそう。他のふたりを肩車して中に入れて、自分はガッと入る。
【GM】 みんな、中に入れたよ。真っ暗です。ひとの気配は感じない。
【キャロット】 ランタンのシャッターを、ちょっとだけ開けてみる。
【GM】 どうやら、武器庫のようやね。剣やら槍やら弓やらが、ところせましと並べられている。扉がひとつあるよ。
【キャロット】 扉から出る前に、[聞き耳]をしてみる。(ころっ)成功。
【GM】 その扉のすぐ向こうというわけじゃないけど、もうちょっと遠いところから、「やっと交代か〜」とかいう声や、ガチャガチャと移動する鎧の音が聞こえた。
【キャロット】 じゃあ、この扉を開けても大丈夫かな? そ〜っと少しだけ開けて、向こうの様子を見てみる。
【GM】 扉の向こうは左右に延びる廊下です。正面に別の扉がある。衛兵たちの話し声や物音は、そこから聞こえてくるみたい。たぶん、詰め所なんやろね。
【キャロット】 廊下をこそーっと移動して、地下へおりる階段を探す。
冒険者たちは螺旋を描いて下る階段をおり、宝物庫がある見張り塔の地下にやってきた。
【GM】 情報屋が言ってたとおり、まったくの無人やね。あちらに見える鉄製の頑丈な扉が、宝物庫だと思われます。
【キャロット】 扉を開けようとする。
【GM】 すると、「待て」と、扉から声がする。
【キャロット】 扉から?
【GM】 そう。にゅ〜っと滲み出るように、半透明の騎士ふうの若い男が姿を現したよ。プレート・アーマーに身を包み、ツヴァイハンダーを背負ってるね。
【キャロット】 「あー、強そう」って思う。
【プレセア】 カルファン騎士の亡霊やな。
【GM】 「ここは、カルファンの宝を預かる宝物庫。王の許可なくして、近づくことあたわず。命を惜しむ者は、立ち去るがよい」と、騎士は言う。
【キャロット】 王がおったらいいんや。呼び出せるけど。
【ファベル】 召喚しちゃえ。
【キャロット】 その前に、騎士に「王族を連れてきたら、中に入ってもいいの?」って聞く。
【GM】 「正当な王家の血筋を引き継ぐ方ならば」
【キャロット】 じゃあ、『召喚の杖』でティガーを召喚〜♪
【GM】 すると、杖の先の透明な玉がやわらかく光り出す。それは無数の光の粒になり、粒が集まり、人の形を成していく。
【キャロット】 この時間……ティガーは寝てる!(笑)
【GM】 光が収まると、そこに寝ぼけ眼のティガーが立ってるよ。
【ティガー】 「ふぇ〜?」って、言ってる。
「なに、ここ?!」
【キャロット】 「オレが呼びましたぁ〜」(笑)
【ファベル】 騎士の亡霊に、「これが王族です」と紹介する。
【GM】 亡霊騎士は、いったん扉の向こうに姿を消した。そして、1枚の直径30センチほどの円形の鏡を持って、再び姿を現す。
「失礼ながら、あなたのルーツを探らせていただく」と言い、亡霊はティガーを鏡に映した。
そこに映るのは、現在の18歳の姿ではなく、10年ほど前の少年時代の姿のティガーやね。子供の姿のティガーが、現在のティガーの行動に合わせて、「なに、ここ?」と、キョロキョロしてる。
【ティガー】 「これ、夢? 俺、死んだんかな〜」って、悩む。
「っていうか、眠い〜」
【ファベル】 なんか、鏡に映ってる子供ティガーを見ても、大して違和感がないねんけど。
【GM】 亡霊騎士は、「おお、レギト王子!」と、感激してるよ。
【ティガー】 「えーッ、なんで知ってるの?」
【GM】 ……誰か、説明したってくれ!(笑)
【プレセア】 じゃあ、説明するわ。
【GM】 今度は不機嫌になったりしてな。
【ティガー】 そうそう、「なにすんねん」って。
「じゃあ、オムレツ1個で手ぇ打つわ」
【キャロット】 ニンジンしか持ってへんけど。
【ティガー】 え〜!?
【GM】 亡霊騎士は、「レギト王子、無事に城を落ち延びたという噂は、まことだったのですね」と、喜んでるよ。
【ティガー】 うん、ホンマみたい。
【GM】 この騎士の名は、エスローダル・サラザール。ティガーの師匠のステファン・ベロフの見習いだったひとで、ティガーも何回か顔を合わせてるよ。
覚えてるかな? 知性度で1レベルのセービング・ロールをしてみよう。
【ティガー】 (ころっ)覚えてる。
【GM】 その記憶の中の若者のままの姿やね。
【ティガー】 あ、じゃあ、死んだん?
【ファベル】 だから、半透明なんやって(笑)。
【GM】 さっきから、亡霊、亡霊と言うてんのに。
エスローダルは、カルファン王国が滅亡するちょっと前に、騎士叙勲を受けてたんで、見習い時代のものではなく、騎士のかっこうになってるけど。
【ティガー】 出世したんや。
【GM】 「カルファンの再興を信じ、宝を守り続けて参りました。どうぞ、中の物をお役立てください」と言って、エスローダルは姿を消した。
鉄の扉が、静かに開いたよ。彼が手にしていた鏡は、ふわりと床に落ちる。
【プレセア】 鏡、拾うとき。
【ティガー】 じゃあ、ティガーがもらっとく。
【GM】 それは金貨5000枚(5万フィス)の価値がある、魔法の鏡です。
単純に映し出される対象の過去の姿を見るものであって、「何時何分、こいつはこんなことをしていた」ということを映し出すことはできんよ。
【ティガー】 整形したひとの過去の姿を見て笑うとか。
【GM】 そうそう。何年前のものを映すかは、使用者の任意。対象が産まれる前の年代を設定すると、何も映らない。
【ファベル】 宝物庫の中に入ろう。
【プレセア】 『竜の水晶像』はある?
【GM】 あったよ。
【ファベル】 それ、ゲット。
【プレセア】 これはこっちがもらって行っとかなアカンね。
【ティガー】 他に持って行ってもよさそうな物ってある?
【GM】 そうやね。白いツヴァイハンダー、王冠、王錫、王様のマントなど。
【ティガー】 ツヴァイハンダー、もらっとこうかな。色が気に入らんけど。
【GM】 そいつは『マドナガルの剣』。王家に代々伝わる国宝です。所有者を選ぶので、カルファンの王族以外が持っても、何の役にも立たない。
詳しいスペックは、ソード・ワールドに戻ったときに教えるよ。
【ティガー】 あと、王冠を持って帰って、ファンリーにかぶせたいなぁ。マントとか着せて、女王様〜。
【GM】 泣くぞ、エスローダルが……。
【ティガー】 じゃあ、ここの辺のどこかに、[隠蔽]でうまいこと隠しとく。(ころっ)できたっぽい。
【GM】 経験レベル14のティガーに隠されたら、並みの人間では見つけられんやろね(笑)。おまけに、幽霊がいなくなってることに気づくまで、誰も近寄らんやろし。
【プレセア】 エスローダルは消えても、その効果は残ってるんやな。
【ファベル】 忠義者やで。
【ティガー】 もう、ここには用がなさそう。召喚の制限時間が残り1分になった時点で、「わーっ」って表に走り出して、衛兵とかをびっくりさせて帰りたいな〜。
【GM】 なんか、ティガーがうずうずして、ニヤニヤしてるで(笑)。
【ティガー】 「どうせ、上に見張りとかおるんやろ?」って(笑)。
【ファベル】 やめてぇ〜!!
【ティガー】 じゃあ、シルビーに似てる女の人がいるから、やめとく。「いらんことしたら、シルビーに怒られるような感じになる」って、本能で思うてん。
【GM】 それじゃ、無事に召喚の制限時間が来た。
【ティガー】 「ばいばーい」って、ぷしゅ〜って帰った。
で、そのまま布団に潜って寝て、朝になって「剣が増えてるぅ!」って騒ぐねん。
【ファベル】 覚えてないんか!
【プレセア】 「夢じゃなかった〜」って言うねんな。
【ティガー】 そうそう、芽ぇとか生えてる感じやねん、トト○の。
【GM】 あ、『召喚の杖』は使い捨てなんで、もうただの棒きれになったから。
【キャロット】 うん。でも、あの酒蔵で使わんでよかった〜。ホンマは、あそこで砂漠のドワーフを召喚して喜ばせてあげようという案が、ウサギの中にはあってん。
【GM】 でも、使い捨てのアイテムやったからね。
【キャロット】 そうそう。だからやめてん。
【プレセア】 ほんじゃ、危険が去ったことやし、城を脱出しようか。
帰路もまた、冒険なのだ。侵入したとき同じぐらい、危険に満ちている。
冒険者たちは、警備兵に見つからぬよう、来たときと同じぐらいに注意を払って、脱出を図った。ここまで温存してきたハイパー・ポイントも、ここで使った。
そして3人は、無事にタイガーファング城を抜け出し、レギトの城下町に紛れることができたのだった。
【プレセア】 ほんなら、今夜は宿屋に戻って、明日の朝になったら、改めて例のバツ印の洞窟へ行こう。
【GM】 それじゃあ、今日はここまでにしとこうか。続きは、また今度ということで。