▽ 館の見学の事 | ▽ 紳士との対決の事 | ▽ 真紅の騎士の事 |
【カバンタ】 さ、館探検をさせてもらおか。
【GM】 探検じゃなくて、観光ツアーでしょうが。ちゃんとサンチョスの案内に従って、見学するように。
で、ツアーに参加するのは、誰と誰?
【ランディ】 僕は行きますよ。
【カバンタ】 勝手に見せてくれるだけでいいのに。じゃあ、ついていくわ。
【ティガー】 俺は部屋で缶詰を食べてる。
【GM】 じゃあ、ランディとカバンタは、サンチョスの後ろについて玄関ホールを横切り、西の扉を出た。
南北にのびる廊下の南のつきあたりは倉庫だそうです。
【カバンタ】 中は見せてくれんのか?
【GM】 見たけりゃ、どうぞ(笑)。そこは埃っぽい倉庫で、ほうきだのちり取りだの何だの、いろんなものが雑多に放置されている。
廊下の西壁には、3つの扉が並んでいて、いちばん南の扉はサンチョスの私室。
【カバンタ】 見せてもらおか。
【GM】 小ぎれいに片づけられた部屋で、さっぱりしてる。でも、見られてちょっと恥ずかしい。「きゃっ」
【ティガー】 あはは、かわいぃ〜!(笑)
【GM】 その隣は、レイモンドが泊まってる部屋。ドアを開けると、レイモンドが着替えてる最中だった。「OH!」と、驚いてるよ。
【カバンタ】 そんなとこ見んでいい。つぎ行こ。
【GM】 その隣は、ジーネが泊まってる部屋。
【カバンタ】 そこもパス!
【ジーネ】 レイモンドさんの声を聞いて、ドアから顔を出した。で、カバンタが余計なことせんように、ついていこう。
【GM】 ジーネの部屋の向かいには、扉がある。その向こうもホールになっていた。
こっちのホールには、北壁以外の壁にひとつずつ扉があって、南の扉は、両開きになってる。その向こうは、玄関ホールね。
あと、ここには、2階へ上がる階段がある。
【カバンタ】 先に、1階をぜんぶ見せてもらおう。東の扉から出ていく。
【GM】 とうぜん、南北にのびる廊下になってる。
東壁には3つの扉があって、いちばん南の扉が、カバンタたちが泊まってる部屋。いま、ティガーが缶詰を食べてる最中。
【カバンタ】 じゃあ、その隣の真ん中の扉は、何や?
【GM】 そこは案内できない。
【カバンタ】 なんでや。見せてください。
【GM】 「そこは大事な宝物を保管してる場所なんで、私の一存で開けることはできないのでございます」
【カバンタ】 じゃあ、その隣、いちばん北の扉。
【GM】 そこは食堂やね。長〜いテーブルに合計7つの椅子が並べられている。北の壁には暖炉もあるよ。
あと、東の壁には厨房へ続く扉。
【カバンタ】 では、厨房を見せてください。
【GM】 「いやいやいや、厨房なんで見てもしかたないですよ。散らかってますし」
【ティガー】 厨房……食糧……エサ……ぴき〜ん!
【カバンタ】 1階はこれでぜんぶやな。じゃ、2階へ行かせてください。
【GM】 「2階は旦那さまの私室になっております」
【カバンタ】 旦那さまの私室しかないんか?
【GM】 「はい。旦那さまの書斎と、寝室のみです。ですから、むやみに階上にお連れするわけにはいきません」
【カバンタ】 じゃ、旦那さまに許可をもらってきてみそ。
【ジーネ】 バシっと殴る。「泊めていただくのに、ちょっとは遠慮しなさい!」
【カバンタ】 泊めてもらうからには、ちゃんと非常階段のチェックとかしとかんと。
【ジーネ】 玄関があるでしょうが、玄関がっ!
【カバンタ】 玄関から逃げられへんから、非常階段を使うんやんか。
【ランディ】 窓から逃げなさいよ。1階なんやし、キミはシーフやし(笑)。
【カバンタ】 ああ、バレた(笑)。
【ランディ】 ところで、あの紳士は普段は何をしてるの?
【GM】 書斎で何かの研究をしてるようやね。あとは、趣味のコレクション集め。
「そして、そのコレクションの自慢話を、1日1回は聞かされるのです。皆さんをお泊めしたのも、それが目的なのかも……」
【ジーネ】 なるほど。
【ランディ】 「ぜひ、そのコレクションを見せていただきたいですな」と言って、紳士に取り次いでもらう。「さぞ、素晴らしいコレクションをお持ちなのでしょう」
【GM】 では、サンチョスは2階に上がり、しばらくして下りてきた。
「どうぞ、旦那さまがコレクションをお見せしたいそうです」
【カバンタ】 ついて行く〜。
【GM】 通されたのは、2階の紳士の書斎。四方の壁には背の高い本棚が立ち並び、難しそうな本がびっしり並んでいる。
そして、ある本棚の一段に、8つの真っ白な頭蓋骨が並べ置かれてあった。
紳士はそれを指して、「あれなんですよ、わたしの自慢のコレクションは」と、嬉しそうに言う。
【ジーネ】 それって、本物の骸骨?
【カバンタ】 まあ、本物やろな。
【GM】 紳士の自慢が始まった。
「これらは、いずれも美しい女性たちでした。しかし、その美はしょせん、筋肉とその上に張られた皮膚の造形でしかありません。真に美しきものは、骨の髄から美しいのですよ」
【ランディ】 「はあ、そうですか」と、適当な相槌を、さも感心したように言うておく。
【GM】 サンチョスは隣にいるジーネに、「毎日毎日、あの自慢話を聞かされるんですよ」と囁く。
【ジーネ】 そりゃ、大変ですね。
【カバンタ】 その間に、カバンタは「トイレに行く」と言って、1階に下りる。で、例の宝物庫とやらに行ってみる。
【ティガー】 俺は缶詰を食べ終わったので、廊下に出る。
【GM】 すると、ちょうど廊下の向こうから、カバンタが来るのに出くわした。
【ティガー】 「食堂に行きたいんやけど、食堂ってどこ?」
【カバンタ】 「あっち」と教えてあげる。
【ティガー】 じゃ、食堂に行く。で、厨房の扉を開けたい。
【GM】 開いたよ。
【ティガー】 中には何があるの?
【GM】 かまどとか、樽とか瓶とか。あと、東の壁には勝手口、厨房の隅っこには地下へおりる階段がある。
【ティガー】 階段を下りてみよう。
【GM】 つきあたりに、鉄の扉がある。
【ティガー】 開くかな? 試してみる。
【GM】 「きぃ〜っ」と軋んだ音をたてて、扉は開いた。
【ティガー】 中を覗いてみよう。
【GM】 扉の隙間からか細い明かりが差し込む中は、そんなに広くない部屋だった。
部屋の奥には、人ひとりが横たわって入れるぐらいの大きさの、浴槽みたいなものがある。浴槽は、謎の液体で満たされている。
【ティガー】 それだけしかないん?
【GM】 見た感じ、それだけ。
【ティガー】 なんや、地下室にファンリーが捕まってると思ってた。
浴槽を覗いてみる。ひとが沈んでたりせえへん?
【GM】 謎の液体は紫色に濁ってて、よく見えない。
【ティガー】 匂いを嗅いでみる。
【GM】 きついし、臭いし、「なんじゃこりゃあ?!」って感じやな。
【ティガー】 ちょっと触ってみようかな。
【カバンタ】 溶けたらどうする、溶けたら。
【ティガー】 じゃあ、右利きやから、左手で触る。ずぶっと底までいって、中にファンリーが入ってないか、確かめる!
【ジーネ】 なんでリンゴを投げ入れるとか、そういうことせえへんの?
【ティガー】 食べ物を粗末にしてはいけません。
【ジーネ】 自分の腕ならええんかぁーッ?!
【GM】 ティガーは、左の上腕部近くまで、謎の液体で満たされた浴槽に突っ込んだ。突っ込んですぐ、左腕がピリピリしはじめた。
【ティガー】 「いや〜ん」って、引っこ抜いて腕を振る。
【GM】 腕を振るだけじゃ、付着した液体は取りきれない。ピリピリがヒリヒリに変わって、腕が赤〜くなってきた。
【ティガー】 じゃ、ちょっと腕を洗いに行く。
【GM】 勝手口から外に出れば、井戸があるよ。
【ティガー】 そこで水で液体を洗い落とす。
【GM】 洗い終わっても、まだヒリヒリしてるけどね。おまけに左の腕毛が、ぜんぶなくなってしまった。
【ティガー】 浴槽の中には何もなかった?
【GM】 これといった手触りはなかった。
【ティガー】 ま、いいや。「毛、なくなった」と思って、部屋に帰ろう。
【カバンタ】 GM、オレは扉の前で[聞き耳]してみるで。(ころっ)
【GM】 するとカバンタは、中にひとの気配を感じた。話し声が聞こえてきた、とかいうわけじゃないけどね。
【カバンタ】 鍵穴から中を覗く。
【ティガー】 覗いてるカバンタを見つけて、しばく(笑)。
【カバンタ】 (ころっ)ひょいっとよけた。
【ティガー】 ちっ、空振りした。「何しとん」って聞く。
【カバンタ】 「見たままやけどな」
【ティガー】 「覗き?」
【カバンタ】 「……うん」
【GM】 なんや、いまの一瞬のためらったような間は(笑)。ちなみに、その鍵穴は貫通してるタイプではないので、部屋の中は見えない。
【カバンタ】 それなら、ドアをノックしてみる。「コンコン」って。
【GM】 すると、中からひそひそと話し声がする。
【カバンタ】 話し声をよく聞いてみる。
【GM】 どうやら、若い女性の声みたいやね。「なんだろう?」というふうに、不安がってるようだ。
【カバンタ】 「What's your name?」やな。
【GM】 また、中でひそひそと声がする。カバンタの問いに答えは返ってこない。たぶん、対応に苦慮してるんやろ(笑)。
【ジーネ】 ひそひそ話し声がするってことは、複数おるねんな。ひとりやったら、そんなもんせえへんもんな。
【カバンタ】 しゃあないな。鍵を開けるしかないねんな。
【ジーネ】 夜になるまで待ってよぉ。
【カバンタ】 2階におる奴の声なんか、聞こえへん。開ける!
【ジーネ】 ティガー、止めてよ。
【ティガー】 止めへんよ。だって、中に何があるのか、気になるもん。
【カバンタ】 (ころっ)開いたで。中はどんな感じや。
【GM】 部屋半分が鉄格子で区切られていて、鉄格子の向こうに、女性がふたりいる。そのうち片方は、カバンタも知っているミフォアの司祭。
【ティガー】 ファンリーか!
【カバンタ】 もうひとりの女は?
【GM】 見たことのない顔やね。10代後半の若い女性です。
【カバンタ】 ずばり「バーバラやな」と聞く。
【GM】 「はい」という答えが返ってくる。
【ティガー】 ファンリーに「何かされた?」って聞く。
【GM】 「まだ、何も」
【カバンタ】 とりあえず、鉄格子に扉はないんか?
【GM】 扉はあるよ。
【カバンタ】 じゃ、それを開けてみようと試みる。
【ジーネ】 夜になるまで待ってよ〜。夜になって、みんなで合流して助けに行こうよぉ。
【カバンタ】 いーや、夜になるまでに終わらす! 目の前にファンリーがいるのに、助けようとせんほうがおかしいやろ。
鉄格子の扉を開けようとして、すかさず罠チェック。(ころっ)
【GM】 罠はないと思った。ついでに、鍵穴も見つからなかった。
【カバンタ】 じゃあ、すんなり扉は開くのか。
【GM】 開くわけがないわな(笑)。
【ティガー】 魔法の鍵や。
【カバンタ】 なんてこった! じゃあ、〈アンロック〉かけたれ、ティガー。
【ティガー】 そんなもん、ないわ! パーティの誰も持ってないわ。
【カバンタ】 役立たず〜。
【ティガー】 ファンリーに「捕まってるのは、ふたりだけ?」って聞いてみる。「他に誰かいて、連れて行かれたりとかせんかった?」
【GM】 ファンリーが連れてこられたのは昨日だけど、そんなことはなかったらしい。ちなみに、バーバラはその少し前に連れてこられたけど、やっぱりそんなことはなかったらしい。
ところで2階では、紳士のコレクション自慢がまだ続いている。退屈そうなジーネを見て取ったサンチョスが、「そろそろ下におりませんか?」と囁くよ。
【ジーネ】 「そうですわね。私にはちょっと刺激が強過ぎるコレクションですわ」と、か弱い乙女を装って答える。
【ランディ】 僕はまだ、適当に相槌をうって自慢話の相手をしてますよ。ヨイショしまくって相手をいい気分にさせるのが、ランディの話術なのです。
【ティガー】 イヤな戦神の司祭やな(笑)。
【GM】 では、紳士は、ますますいい気になって自慢話を続け、ジーネとサンチョスは、1階に下りて行く。
【カバンタ】 シーフの勘で「やばい!」と思って、部屋の外に出る。
【ティガー】 ファンリーに「夜に助けにくるから」って言うて、外に出る。
あっ、その前に、ファンリーに缶詰を渡してあげる。バンパイアに見つからんように食べな。
【カバンタ】 扉を閉めて鍵をかける。(ころっ)鍵閉め、成功。
じゃあ、部屋に戻ろう。
【ティガー】 部屋の窓から外に出て、茂みに隠れてるカールのとこに行く。で、「お姉ちゃん、見つけたから。生きてるから」って教える。
【GM】 「OK! がんばって〜!」と、茂みの中で親指をビッと立てる。その途端、スピアがふらふらと揺れたりする(笑)。
【ティガー】 「おまえも頑張って、隠れてろよ」
【GM】 「おう。息もしないぜ!」
【ティガー】 じゃ、館に戻って、窓から部屋に入る。
【GM】 その頃、北のホールに下りてきたジーネは、サンチョスから「この後はお部屋に戻られるので?」と聞かれる。
【ジーネ】 「はい。ホントに連れが無遠慮なもので、すみませんでした」と言って、自分の部屋に戻ろう。
【GM】 では、ジーネは自分の部屋に、サンチョスは夕食の支度をしに厨房に行った。
【ジーネ】 部屋に戻りがてら、隣のレイモンドさんのとこに寄ろう。「何か変わったことはありませんでしたか?」……って、部屋から出てなきゃ、何もないわな(笑)。
【GM】 そのとおり。とくに何もなかったらしい。いまはチェイン・メイルを脱いで、すっかりくつろいでいる。「やはり、鎧は蒸しますなぁ」
【ランディ】 そりゃ、夏やからね。
【ジーネ】 その後、ティガーたちの部屋に行ってみようかな。「何か、変わったことはなかった?」と尋ねる。
【カバンタ】 「何もないよ」
【ティガー】 「うん、何もない」と言いながら、ティガーの左腕は真っ赤やねん(笑)。
【ジーネ】 ティガーの左腕を見て、「どうしたの、それ?」って聞く。
【ティガー】 「ちょっと厨房で食材を触ったら、えらいことになってん」って言うとこ。
【ランディ】 どんな食材やねん(笑)。
【ジーネ】 ──で、ファンリーを見つけたことは、教えてくれないのね。
【ティガー】 じゃあ、教えてあげる。
【カバンタ】 えっ、言うん? 『沈黙は金なり』という諺があるし、敵を欺くには、まず味方から欺かんとアカンやろ。
【ジーネ】 カバンタに関節技をかけながら、ティガーの話を聞いてよう。(ころっ)
【カバンタ】 (ころっ)関節技をよけた〜。
【ジーネ】 ちっ。
【ティガー】 ジーネにぜんぶ話したよ。厨房の地下の謎の液体のことも。「それを触ったら、こんなことになってん」
あ、液体に触ったことがバレないように、腕にほう帯を巻いておこう。
【ランディ】 めっちゃ、目立つと思う。
【ジーネ】 〈キュアー・ウーンズ〉で治してあげるよ。(ころっ)
【GM】 じゃ、左腕の赤みは引いた。ヒリヒリするのも、おさまったよ。ただし、毛までは治らんからね。
【ティガー】 ま、いいや。バランスをとるために、右腕の毛も剃っとこ。
【GM】 しばらくの間は、男のくせに腕がツルツルで、ちょっとカッコ悪いんやな。
【ティガー】 そのうち、また生えてくるやろ。
【ジーネ】 さて、作戦としては、夜中にこっそりと牢屋に行って、彼女たちをどうにかして助け出すか、もしくは、紳士が眠ったところをタコ殴りにしに行くか、どっちかしかない。
【カバンタ】 そのどっちもが、実現不可能な作戦やな。
【ティガー】 牢屋は魔法の鍵やから、俺らじゃ開けられんし、どうにかして開けれるんなら、さっき助け出してるよ。
【ランディ】 それに、バンパイアは睡眠を取らなかったはずだから、寝込みを襲うのは不可能でしょう。
【カバンタ】 おとなしく、紳士が牢屋を開けに来るのを、待つしかないって。だからGM、夕食の時間まで進めてや。
【GM】 では、夜になって夕食の時間となりました。
キミたちは、食堂の長〜いテーブルに向かい合ってついている。上座には、紳士が座っております。サンチョスが丹精込めて作った豪勢な料理が並べられ、「あっはっは」とか笑いながら、それを食べている。
【ティガー】 バンパイアたちは何を食べてるの?
【GM】 紳士はキミたちと同じ物を食べてるけど、サンチョスは給仕で忙しく立ち回ってる。空いたグラスに血のような真っ赤なワインを注いだり、注がなかったり。
【ティガー】 そのワインって、普通のワイン? 血じゃないよな?
【GM】 上質のおいしいワインやけど、ティガーはそれがわかる舌を持ってるのかね?
【ティガー】 持ってないよ。「渋くてまずい〜。ぶどうジュースの方がいい〜」とか思ってる。
【GM】 カバンタは意外なことにワインにうるさく、なんだか、ウンチクをいっぱい垂れ流してたりする。「このワインは、ウィス産『ジャスティス』の517年物やな。この年は、質のいいぶどうが豊作で──」とか何とか。
そんなこんなで、楽しい夕食会はお開きとなった。
【ランディ】 「ごちそうさまでした」
【GM】 キミたちは、それぞれ割り当てられた部屋に戻った。
【カバンタ】 オレらの部屋の隣が、ファンリーの牢屋なんやな。じゃあ、隣を気にしながら、ベッドで眠ろか。
【ティガー】 寝るの?!
【カバンタ】 ただし、隣で扉が開こうものなら、飛び起きるで。
【ジーネ】 私は、完全武装で待機しとくよ。お隣のレイモンドさんにも、武装を整えもらっとこう。
部屋の外の様子に気を配っておくからね。ランディたちのほうで何かあったら、大声で知らせてね。
【カバンタ】 大声なんか出したらバレるから、犬笛で呼ぶ。
【ジーネ】 そんなの、聞こえるわけないでしょうがッ!
【GM】 そうやって、じっとり待機することウン時間、真夜中に動きがあった。
ジーネは、どこかで扉が開いて閉まる音を聞いた。ヒタヒタという足音が、近づいてくる。
そして、ジーネの部屋の向かいの扉──北のホールの扉を開けて閉める音がして、足音は遠ざかっていった。
【カバンタ】 足音はひとり分やったん?
【GM】 複数ではなかったようやね。
【ティガー】 こっちでも廊下に気を配ってるけど、北のホールの東扉が開いたりしない?
【GM】 いまはしない。
【ランディ】 2階に上がったんやな。ちなみに、僕もフル装備で待機してるから。
【ティガー】 俺はスケイル・アーマーは着ないで、剣だけ装備してる。
【カバンタ】 オレはソフトレザーで寝てる。あと、ショート・ソードも装備したままやから。シーフとしてのたしなみとして。
【GM】 さて、そうこうしてると、北のホールの東扉が開いた。
そして、足音が近づいて来たかと思うと、隣の牢屋の部屋の扉が開けられた。
【ランディ】 扉をそっと開けて、廊下を見てみる。誰かいる?
【GM】 いまは、誰もいない。ちなみに、牢屋の部屋は、開きっぱなしになってる。
【カバンタ】 その中におるんやな。
【ティガー】 じゃあ、いまのうちに玄関ホールを抜けて、ジーネを呼びに行く。鎧は脱いでるから、物音はせえへんやんな?
【GM】 まあ、そんなに派手な物音はしないやろけど、いちおう[忍び足]の判定をしとこう。ダイスを振ってみ。
【ティガー】 (ころっ)成功。じゃ、ジーネとレイモンドに知らせる。
で、すぐに北のホールに待機して、扉を半開きにして、廊下の様子を見ておく。
【ジーネ】 私とレイモンドさんは、玄関ホールに待機しておく。外に逃げられないようにね。
【GM】 牢屋の部屋からは、「何するのよ、放さしなさいよ!」という、バーバラの声が聞こえてくる。
しばらくして、麻痺したように固まったバーバラを抱えた紳士と、サンチョスが姿を現した。
サンチョスは、扉を閉めて鍵をかけて主人の後を追い、食堂へ向かう。食堂は、ちょうどティガーの目の前やね。
サンチョスが食堂の扉を開け、紳士は中に入る。サンチョスもとうぜん中に入り、扉を閉めた。
【ティガー】 廊下に出る。食堂の扉を開けようとする。
【ランディ】 同じくカバンタと一緒に廊下に出て、食堂に向かう。
【ジーネ】 私は牢屋の扉を開けようとするけど、鍵がかかってるので、カバンタに「鍵を解除して」と頼む。
【カバンタ】 開けてどないするんよ?
【ジーネ】 え? だって、ファンリーが無事かどうか、調べな。
【カバンタ】 連れていかれたんはバーバラやし、無事に決まってるやん。もし、牢屋でファンリーが死んでたら、バーバラをほって逃げるのか?
【ティガー】 とりあえず、早いとこ突入しようや。きっと、厨房の地下の体が溶ける液体で、バーバラを骸骨にするつもりやで。
あー、鎧を着てればよかった。
【ジーネ】 いまから着てくる? 30分もあれば、装備できるやろ。
【ティガー】 30分もあれば、戦闘が終わってるよ。このまま行く! 当たらなければ、大丈夫。レイモンドもおるし。
【ランディ】 突入するよ。
「待てっ、そこまでだ!」と言いながら、食堂になだれ込む。
【カバンタ】 どこまでなんや。ちなみにオレは、扉を開けたまま北のホールで待機。万が一、敵が魔法を使っても、その範囲に入らんよ〜に。
【GM】 では、食堂に突入したのは、ランディ、ティガー、ジーネ、レイモンドね。
紳士は振り返り、「フッ。やはり、邪魔をしに来たか。せっかく、そちらのオーシュの戦士に、新しい作品を見ていただこうと思っていたのだが」と言う。
【ティガー】 「バーバラを、あの液で溶かすつもりやろ? 俺の左腕は溶けかけたわ!」と、言う。
【ランディ】 ティガーとレイモンドの武器に、〈ホーリー・ウェポン〉。(ころっ)かかった。しかも、こんなところで6ゾロ(笑)。
【ジーネ】 私とランディの武器に、〈ホーリー・ウェポン〉。(ころっ)かかった。
【GM】 着々と戦闘準備を整えるキミたちを見て、紳士は「まあ、待ちたまえ。わたしは争いごとは好まんのだよ」と、言う。
「キミたちは、この娘を取り戻しに来たんだろう。返してやるから、このまま引き上げてはどうかね? あの漁村の奴らのように、全滅したくはなかろう」
【ティガー】 「バーバラもいるけど、ファンリーは、もっと返して欲しい」
【GM】 「え?? あっちは返せないけど、こっちのなら、返してやるぞ」
【ティガー】 「いや、そっちより、牢屋にいるほう」
【GM】 「あの娘は、ダメ。魂に闇の烙印を持つ、至上の娘なんやから。こっちのは返してやるから、ほら!」
【ランディ】 『闇の烙印』?
【ティガー】 ファンリーを返さんのなら、力ずくで奪い返す!
【ジーネ】 「あなたのような不浄の者を許すわけにはいきません!」
【GM】 「交渉は決裂ですな。では、死んでいただこう。コレクションに加えるほどでもないあなたがたは、犬のエサにでもしてくるっ!」
ティガー、ジーネ、ランディが紳士と相対し、レイモンドがサンチョスと対峙した。白熱の攻防が繰り広げられる。
その隙にカバンタは、麻痺しているバーバラをかついで、全力疾走でカールの潜む茂みへ連れて行った。すぐさま館に取って返し、ファンリーの牢屋に入る。
【カバンタ】 鉄格子は、また魔法で閉められてるんやな? じゃあ、部屋の中で「ディスペル・マジ〜ック!!」と、食堂に聞こえるぐらいの大声で、叫ぶ。
バンパイア、びくっとしたやろ。
【GM】 でも、いまのは古代語じゃなくて、共通語で叫んだんやろ?
【ティガー】 「コモン・ルーンが効いた! やったな」と言う(笑)。
牢屋の様子を探るため、サンチョスがレイモンドを視線で麻痺させて、食堂を出てゆく。
その間に食堂では、ティガーのふた回りクリティカルが炸裂し、バンパイア紳士を討ち倒した(紳士とサンチョスは、レッサー・バンパイアだったので、邪な土はなかった)。
崩れさる紳士を見て逃亡を図ったサンチョスは、牢屋の部屋から出てきたカバンタと、はち合わせになった。
【カバンタ】 「立ち去れぃ」と言うわ。どうせ、オレの武器には、〈ホーリー・ウェポン〉がかかってないし。
蝙蝠になって、逃げてくれるやろ。
【GM】 「いや〜、そんな高度なマネ、私にはとてもとても……じゃ、これで!」と言って、サンチョスは逃げていった。
【ジーネ】 なんで逃がすのーッ!
【カバンタ】 無益な殺生はせん(笑)。
【ランディ】 バンパイアもいなくなったし、カールとバーバラを館に呼ぼう。
【ティガー】 で、どうやって牢屋を開けよう? カールくんって、〈アンロック〉使えないかな。
もちろん、カールは魔法など使えない。
しかし、ファンリーの話から、牢屋にかけられてる魔法は、1レベルの〈ロック〉だと判明し、1日待てば、魔法は消えるとわかった。
【ティガー】 じゃあ、魔法が消えるまで、鉄格子のそばにいてあげる。「缶詰、食う?」
【ランディ】 ふたりきりにしといてあげよう。しかし、どんだけ食糧持ってるんや(笑)。
【カバンタ】 そら、100フィス分買い込んでたからな〜。
【ジーネ】 ところで、レイモンドさんの娘は、けっきょくどうなってるんだろう?
【GM】 ランディは知ってるよ。紳士の部屋のコレクションの、左から8番目の頭蓋骨がステラであることを。
【ジーネ】 うわ〜……。
【ランディ】 じゃあ、隠しててもしょうがないから、それを教えてあげよう。
【GM】 レイモンドは「NO!!」と叫んで、2階へ駆け上がる。「左から8番目……これかッ!?」
翌日、〈ロック〉の魔法が消滅したところで、ティガーはファンリーを牢から救い出した。
ジーネとランディは、手分けして7つの頭蓋骨を持ち出し、埋葬してやることにした。娘の髑髏を抱えたレイモンドは、放心状態のまま、その後に続く。
そして、一行がゾロゾロと館を出たとき──。
【GM】 そこに、ふたりの人物が立っている。片方は、覆面なしの黒ずくめ衣装を着た、若い男。
もうひとりは、チェイン・メイルに金属プレートを張りつけた鎧を着た、騎士といった風情の30代後半の金髪の男性。
騎士の鎧の鎖かたびら部分は、カルファン鉄独特の鈍い黒鉄色。プレート部分は、燃えるような鮮やかな朱色。胸のプレートには、黒い蠍の紋章が刻まれている。
そして、騎士の腰には、ティガーの剣と同じ形状の剣、ツヴァイハンダーが携えられている。
【ティガー】 そいつら、何しに来たん?
【GM】 じつは、若い黒ずくめは、ファンリーと共にポドプ村に漂着した、ふたりの黒ずくめの片割れ。仲間が動けなくなったので、ファンリーを連行するための別働隊に、救援を求めに行っていた。
で、村に戻ってみると、村は死滅して、ファンリーの姿がない。物置では、「北西」「バンパイア」と血文字を残して、仲間が息絶えていた!
というわけで、ファンリーを助けに来てみたら、キミたちが帰ろうとしているところだったわけやね。
【カバンタ】 やばい、ファンリー取られるで。
【ティガー】 前に出て、ファンリーを背中に隠す。剣を抜いて構えたれ。ピシっ!
【GM】 真紅の騎士は、ティガーのツヴァイハンダーを見て、「ん?」というような顔をする。
そして、「貴様らか。オレンブルクで、邪魔だてしたという奴らは」と言う。
【ティガー】 そのとおり!
【GM】 「ファンリーを渡せと言っても、素直に渡してくれそうにないな」
【ランディ】 もちろん。
【ティガー】 ファンリーを後ろに下がらせて、騎士の前に立つ。その騎士は強そう?
【GM】 強そうもなにも、何気なく立ってるだけなのに、「隙がねえッ」って感じやな。いま、下手に動けば、次の瞬間には、首をはねられてしまってるような感じがする。
正面で向き合ってるティガーは、背中一面に、冷たい汗をかいてるよ。
【カバンタ】 して、この勝負の行方は!?
【GM】 真紅の騎士は、とくに何もしない。いちばん後ろでしおれてるレイモンドを見て、「あの戦士はどうしたんだ?」とか、聞いてくるよ。
【カバンタ】 余裕やな。
【ティガー】 「娘をバンパイアに殺されてん」と、教えてあげる。
【GM】 「そうか、それは気の毒にな。こやつらはファンリーを取り戻したというのに、おまえは娘を殺されたのか」と、騎士はレイモンドに言う。
「ファンリーは助かり、おまえの娘は死んだ。おまえの娘に、殺されなくてはならない理由はあったか?」
【ジーネ】 そんなのあるわけないでしょ。コレクションにされただけなのに。
【GM】 真紅の騎士は、「おまえの娘は、ファンリーが助かるために、殺されたのだ。おまえの悲しみは、こいつらの幸せのためにあるのだ」とか言うてるよ。
【ランディ】 えらいこじつけですな。
【ジーネ】 悪いのは、あのバンパイアでしょ!
【GM】 「我々は、この世からおまえや、おまえの娘のような思いをする者を救うために、働いている。世界から、すべての悲しみを消すために。その気があるなら、我らと共に来い」やって。
【ティガー】 レイモンドを見てみる。
【カバンタ】 胸に手を当てて、行ってしまうやろな。ふらふら〜っと。
【GM】 なんか、カバンタまで共鳴したような口調やな(笑)。じゃあ、レイモンドは、真紅の騎士のほうに行ってしまったことにしよう。
そして騎士たちは、立ち去ることにしたらしい。「しばらくは、ファンリーを預けておこう」と、真紅の騎士は言う。
若い黒ずくめは、「スコーピオンさま、よろしいので?」と、不満げに尋ねる。
騎士は、「どのみち、やがて我がほうに来ることになる」と、答える。「あの娘は、己が運命を、すでに知っていよう」
【ティガー】 『我がほう』って、ランダース?
【GM】 「そうだ。いずれ、また会おう」と言い残して、騎士と黒ずくめ、レイモンドは立ち去っていった。
【ジーネ】 ……じゃ、帰ろうか。
一行はロンデニアの街まで帰ってきた。
ランディとジーネは、神殿に事情を話し、7つの髑髏を葬らせてもらった。
【ティガー】 ファンリーに、「さらわれた理由とか、知ってる?」と聞いてみる。
【GM】 知ってるらしい。漁村で死んだ黒ずくめを看病してるときに、話を聞かされたそうだ。
【ジーネ】 看病してたんかぃ。ほって逃げればよかったのに。
【ランディ】 いい娘やねん。
【GM】 というより、逃げても無駄やからね。
ファンリーの魂には、暗黒神クートラの烙印が押されていて、バンパイアのように、暗黒神に魅入られた者を引きつける。高レベルな魔術師には、魔法でもって、その存在場所を感知されてしまうらしい。
【ジーネ】 暗黒神の烙印か……。
【ランディ】 バンパイアも言ってましたね。「闇の烙印があるから、至上の娘だ」って。
【GM】 で、黒ずくめたちが彼女を必要としてるのは、「世界から悲しみを消すため」だからだそうで、いまの段階ではそれだけしかわからない。ファンリーに何を求めているのかも、まだわからない。
【ティガー】 じゃあ、とりあえず、向こうをやっつければいい。一緒にランダースへ行こう!
【ランディ】 それしかないやろね。乗りかかった船やし、僕も一緒に行くよ。
【ジーネ】 ほっておくわけにもいくまい。
【GM】 じゃあ、ファンリーは「ありがとうございます」と、頭を下げる。彼女は、元よりそのつもりやったしね。
ところで、カバンタは、今日が最終回やな。
今後は、どういった感じにするのかな? カールは、「父ちゃん、オレンブルクに帰ろうよ」とか言ってるけど。
【カバンタ】 知らん、知らん。姉ちゃん取り戻したし、別にもう息子のふりせんでもええやろ。
【GM】 バーバラも、「そうよ。このひとがあんたの父親なわけないでしょ」と、諭してる。
【カバンタ】 やったー!
【GM】 「あんたの父親は、『カバンタ』っていう名前なのよ」
【カバンタ】 えーッ?!
【ランディ】 やっぱりか。年貢の納めどきやな。
【ティガー】 認知してやれよ。
【カバンタ】 知ら〜ん!
【ランディ】 「オレンブルクで、親子一緒に暮らしなよ。無理すんな」と、言ってあげます。
【カバンタ】 いいや、それやったら、オレも黒ずくめのほうに行こう。「世界から悲しみを消す」という思想に、ちょっと共鳴したんやな。
これからは、独自にファンリーを狙っていく。
【ジーネ】 そんなに親子で暮らすのがイヤかーッ!
【カバンタ】 ファンリーのな、「守ってもらおう」という意思が、気に食わん。
【ティガー】 俺らが勝手に守るだけやで。
【ランディ】 組織に入っても、ちっとも働かへんから、すぐクビにされてそうやな、カバンタは。
【カバンタ】 いや、「黒い奴らに手を貸してもいいだろう」ぐらいの気持ちやから。組織に入るかどうかは、わからん。
【GM】 というわけで、ぜんぜん脈絡というものが感じられないけど、カバンタはパーティから離脱して姿を消すわけね。
【カバンタ】 そう、闇へ消えてゆく。場合によっては、強い敵キャラとして出してくれ。
【ティガー】 でも、イスかじってるだけやから、あんまり怖くなさげ。
【GM】 五重の塔の1階におりそう(笑)。
【カバンタ】 なんてことを〜。
【ティガー】 そんで、カールとバーバラはどしたん? 帰るの?
【ジーネ】 そりゃ、帰るでしょう。
【GM】 がっかりして、船に乗り込んだよ。
【ティガー】 じゃあ、ロング・スピアあげるわ。これで元気を出し。
【GM】 「ありがとう、兄ちゃん。大切にするよ、このロング・スピア!」
【ティガー】 うん、重いけどね(笑)。
【ランディ】 「早く、それを振り回せるぐらいになれよ」と、言ってあげましょう。