≪REV / EXIT / FWD≫

§烙印の天使:第9話§

パーグ湖畔の決戦

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 真夏の旅の事 ▽ ガラの悪い冒険者たちの事 ▽ しゃべるペガサスのエドゥの事

真夏の旅の事

【GM】 さてと、そんじゃ始めよか。カバンタと別れた翌日、キャンペーン開始から13日が経過しとります。
【ジーネ】 とりあえず、ランダースに向かうっちゅーことになったよね。ランダース王国のある西の島まで、ロンデニアから船が出てるの?
【GM】 いや、邪神の眠る島の西島に渡る航路は、ウィスとブレインの間にしかないよ。自分たちで船を用意するのなら、話は別だけど。
【ランディ】 船は用意できないから、まずはウィスに行くことになるな。で、ブレインからスパニア王国に向かうと。
【ティガー】 スパニアから北上すれば、ランダースに入れるんやな。ランダースにはすんなり入れる?
【GM】 さあ、それはどうかわからんよ。
 そうそう、それとは関係ないけど、最近、ランダース軍の中に妖魔の姿がちらほら見える、という噂が出ている。ゴブリンだとか、ダークエルフだとかが混じっているらしい。
【ジーネ】 そんな奴ら相手にして、果して私らで対抗できるんだろうか?
【ティガー】 ゴブリンぐらいなら、楽勝。
【ランディ】 とりあえず、ウィスに向かいましょう。
【GM】 ロンデニア王国とウィス王国を結ぶ街道は、北ルートと南ルートの2つがある。ウィスまでの所要日数は、ほぼ同じ8日。パーグ湖の北を通るか、南を通るかだけの違い。
【ティガー】 じゃあ、南ルートで行く。
【GM】 了解。出発の前に、買い物があるならすませといて。ウィスまでの道中、ほとんど野宿になるから、保存食は大切やで。
 それに所持金も増えたやろし、鎧なんかを買い換えたかったら今のうちね。戦闘になってから慌てないように。
【ランディ】 それじゃ、市場で買い物していこうか。
【ティガー】 何か変なもの売ってないかな?
【GM】 ターバンの商人が変な像を売ってるよ。骨と皮だけで眼球がボコっと飛び出た痩せた男が、強そうなファイティングポーズをとっている、その名もニョムヒダの像。戦闘時に背中のボタンを押すと、すごいことが起きるらしい。
【ティガー】 何が起こるん?
【GM】 泣きだす。戦闘があることが悲しくて。
【ティガー】 かわいー! なんぼ?
【GM】 「300フィスねー」
【ティガー】 じゃ、買った。
【ジーネ】 買ったの!?
【ランディ】 さっそくボタンを押してみたら?(笑)
【GM】 すると、目から水色の細い布がたれ落ちて、口がパカっと開いて「にょ〜、にょ〜」と泣きだした。
【ティガー】 かわいい!
【ランディ】 かわいいか?(笑)

 その他、ティガーは保存食を買い足し、ランディは構造物破壊のためにウォーハンマーを買った。ジーネはネットを購入。
 それから、ファンリーの装備を買ってあげることになった。

【ジーネ】 とりあえず、シーフ技能が1レベルあるんだから、シーフ用ツールを持っといてもらわんとアカンよな。それは私が出しておこう。あとは、彼氏のティガーが見繕って買ってあげてね。
【ティガー】 防具はソフトレザーで、武器はブーメラン。
【ジーネ】 ブーメラン? そんなの、手元に帰ってこなかったら困るやん。
【ティガー】 取りに行け。
【ジーネ】 あんた、ファンリーまで色物キャラにしてまう気か?(笑)
【ティガー】 じゃあ、しょうがないから普通のも買ってあげる。ミフォアの司祭やから、ライト・メイスね。一般装備はマントとご飯。あと、楽器なんて無意味に買ってみたりして。
【ジーネ】 やめれ〜。必要なものだけ買いなさい。
【ティガー】 そんじゃあ、買い物は終わり。あ、ファンリーの人形を返しとくわ。ニョムヒダの像は俺の背負い袋にぶらさげとく。
【GM】 ティガーの後ろを歩くひとは、その像といつも目が合ってるんやな(笑)。
【ランディ】 イヤやなぁ。
【ジーネ】 私はティガーの前を歩いてよう。では、行きましょか。南ルートだそうで。
【GM】 はいよ。それでは、キミたちはウィスを目指してロンデニアを後にした。
 ちなみに、4日行ったところにあるパーグ湖までは、途中、給水できそうな水場はないから気をつけてくれたまえ。立ち寄れそうな村落がない、ってとことね。
【ジーネ】 いちおう水筒ぐらい持ってるから、大丈夫っしょ。
【GM】 ただし、オムスク地方の生水は、臭くてまずくて飲めたもんじゃない。だから、オムスク地方では、お茶やワインなんかを日常の飲料水にしてるんやね。
 ついでに、生水をそのままで飲むと、下痢を起こしたりするから要注意。
【ランディ】 いちど沸騰させんとアカンわけやな。
【GM】 そんなわけでキミたちは、7月の暑い日、炎天下の中、街道を西へウィスへ向かう。
 街道は、けっこう人通りが激しい。護衛の傭兵を引き連れたキャラバンなど、ウィス・ブレイン方面へひと儲けしに行く人、ひと儲けして大陸へ帰っていく人、さまざまな往来がある。
 キャラバンの馬車に便乗してる娼婦のお姉さんたちが、すれ違ったランディやティガーに手を振ってくる。
【ランディ】 にこやかに手を振り返しましょう。
【ティガー】 ニョムヒダの像を泣かせてみる。「にょ〜」
【GM】 向こうで黄色い歓声があがった。
【ジーネ】 それって……単に笑われただけでは? ティガーがよそのお姉さんに愛想を振りまいてると、ファンリーが怒るかもよ。
【GM】 ファンリーは「知りません」とのこと。
【ランディ】 怒ってるような、怒ってないような(笑)。
【GM】 さて、そんな感じで楽しかったのは最初だけ。湿気の多いオムスク地方の夏は、まとわりつくようなジトっとした不快な暑さ。
 蚊も多く、鎧の隙間から侵入しては、血を吸って代償に痒みを残していってくれる。
 背中を刺されたジーネは地獄。チェイン・メイルの上からでは掻けやしない(笑)。
【ジーネ】 だからといって、鎧を脱いで旅するわけにもいくまい。
【GM】 パ−グ湖まで水場がないから体も洗えず、汗をかいたところに埃が付着して黒い筋を作ったり、髪は脂でギトギトになったり、ランディは顔にカビが生えたみたいに不精髭を生やしたりしてる。
 ティガーにも不精髭はあるけど、まだ産毛みたいな髭やね(笑)。
【ティガー】 そのうち立派な髭になる。
【GM】 キミたちは、そんな状況にもめげず、野宿を重ねて旅を続け、4日後の昼前、無事にパーグ湖のほとりにある草原に到着いたしました。
【ティガー】 じゃあ、泳ぐ。
【GM】 そういう人は、たくさんいる。キミたちの他にも、旅人や商隊、その護衛の冒険者といった面々が、大勢ここでキャンプを張ってひと息ついてるから。
【ジーネ】 あっ! ウィス方面に向かうキャラバンの護衛とかで、一緒にくっついて来りゃ、よかったんじゃないか。
【ティガー】 金を稼げたんや。
【ジーネ】 今からでも、雇ってくれるところはないだろうか。
【ランディ】 ここまで来たら、難しいでしょうね。ここにいる商隊には、すでに護衛がついてしまってるみたいやし。
【ジーネ】 しょうがないか。この湖って、お魚が捕れたりするんだろうか。
【GM】 捕れるよ。パーグ湖の西にそびえる険しいセオニ山の麓、湖畔の村が漁をして暮らしてるからね。
【ランディ】 晩飯は魚でもいいな。
【ティガー】 つーか、昼飯が先〜。
【ジーネ】 その前に水浴びをしたいんだけど、ここで魔物や敵に襲われる可能性はあるんやろか。
【ティガー】 なし!
【ランディ】 まあ、これだけ人がおるところやし、大丈夫やと思うけど。
【ジーネ】 それなら、男女分かれて水浴びしよう。どっちかが荷物番をしとかないといけないし。
【ランディ】 先に行ってきなよ。
【ジーネ】 じゃあ、ファンリーと一緒に行こう。「やっと鎧が脱げるぅ」って感じやな(笑)。体を洗って、あと、着替えの服とかも洗濯しとこう。男性陣のも洗っといてあげよう。
【ランディ】 やったー!
【ティガー】 楽ちん!
【ジーネ】 放っといたら、洗濯しそうにないし(笑)。
【GM】 ジーネがそうしてるところを中心に、水が黒〜くなっていくんやな(笑)。向こうで泳いでる人からクレームが来たりして。
【ジーネ】 そこまで汚れとるんかぃ! だいたい、人がいるところで水浴びなんかせえへんよ。
 あ、洗濯物を乾かす時間がいるから、少なくともここで1泊しないとアカンかな。木と木の間にロープを張って、洗濯物を干しておこう。
【GM】 その間、ランディとティガーはどうしてるのかな?
【ランディ】 向こうで泳いでる。
【ティガー】 その辺をブラブラしてる。「何か、面白いことないかなー」って。
【ジーネ】 荷物番はどうしたぁーッ!!
【GM】 ジーネたちが洗濯物を干そうと戻ってみると、荷物だけが、ぽつねんと放置されてるんやな(笑)。
【ジーネ】 しょうがない、干し終わったら、チェイン・メイルの手入れでもして、荷物番をしてよう。
【ティガー】 で、何か面白そうなことはない?
【GM】 あるかもね。これからロンデニア方面に戻ろうという商人が、売れ残った品物を格安で売却してたり、歌を聞かせる旅の詩人がいたり、情報交換をする冒険者がいたり、愛想を振りまくお姉さんがいたり、それを「それがしとお茶をしばくであるか!」と誘うおじさんがいたり、すごく賑やかだから。
【ジーネ】 最後の人のセリフは……。
【ティガー】 衛兵隊長が来とるん?
【GM】 来てる。「隊長、がんばるであります!」と応援する衛兵Aもいるよ。
 しかし、衛兵Aの声援もむなしく、隊長は玉砕した。

ガラの悪い冒険者たちの事

【ジーネ】 あーあ。
【ティガー】 隊長たちに「何しに来たん?」とつっこむ。
【GM】 「バカ〜ンスに決まってるのである!」どうやら、傷心旅行らしい。「ここで新しい恋を見つけるのである」
【ティガー】 ああ、そう。いきなりフラれてたけど。
【GM】 「おまえこそ、こんなところで何をしてるのであるか?」
【ティガー】 バカンス。彼女連れで。
【GM】 隊長は「キーッ!」と地団駄を踏んで悔しがる。
 衛兵Aは「まだ別れてなかったのでありますか! 隊長、あの呪いはまだ効いてないようであり──」と言いかけて、隊長に口を塞がれる。
【ティガー】 何の話かな。詳しく聞かせてもらえるかな〜?
【ランディ】 まさか、クートラに入信したんじゃないやろな(笑)。
【ジーネ】 隊長がここにいるってことは、今オレンブルクのあそこの交番には、衛兵Bだけしかいないの?
【GM】 いや、もちろん、代役が勤務してるよ。
【ティガー】 ってことは、あの交番、今だけまともになってるんや(笑)。
【GM】 ──と、そのとき、向こうのほうが何だか騒がしくなった。その騒ぎは、だんだんティガーのほうへ近づいてくる。
【ティガー】 そっちを見てみる。
【GM】 それと同時に、ネットに絡められたペガサスが、飛べずにズザザザザーっとキミの前に滑ってきた。その後ろから、3人のガラの悪そうな冒険者が追いかけて来る。
【ティガー】 ガラが悪いんか。「道端で捨て猫を見つけたから拾った」って感じじゃないんやな。
【ランディ】 「血統書付きの猫を道で見かけたから、捕まえて売ってやろう」という感じやろ。
【ティガー】 そういうことか。ペガサスはどんな様子?
【GM】 ひっくり返ってる。網から逃れようと暴れるけど、そうすればそうするほど網が絡まり、どうにもならん様子。
【ティガー】 助けて欲しそうかどうか、目を見てみよう。
【GM】 かなり助けて欲しそうな目をしてる。
 湖畔にいる人々が、何の騒ぎかと注目しはじめた。ジーネとランディも、この騒ぎに気づいていいよ。
【ジーネ】 今ちょうど、洗濯物を干し終えたところです。ファンリーは私のそばにいるんだよね?
【GM】 いるよ、洗濯を手伝ってたから。ティガーがいるところを見て、「何の騒ぎでしょう?」と言ってる。
 気持ちよく泳いでいたランディは、立ち泳ぎをしながらその騒ぎを見ている。
【ランディ】 そして「また、騒ぎが起きてるな〜」と思うとく。
【ティガー】 ガラの悪い冒険者たちに、「そのペガサス、俺のやねん」と言ってみる。
【ジーネ】 おいおい。
【GM】 ガラの悪い3人組は「ウソつけ!」と怒鳴って抗議する。
【ティガー】 「まあ、ウソやけどさー。そいつ、助けて欲しそうやねん」
【GM】 「知らんがな、そんなこと!」「オレたちが見つけたんだから、ほっとけよ!」
【ティガー】 「っていうか、捕るなよっ。おまえらなんかに、ペガサスは似合わねえんだよ」
【ランディ】 すごい言いがかりや(笑)。
【GM】 ティガーの言葉に、隊長が「そうである! そうである!」と賛同する。ティガーの背中に隠れながらだけど。
【ティガー】 ほら、多数決。
【ジーネ】 多数決だと、3対2で負けてるよ。
【ティガー】 ペガサスも含めて3対3。衛兵Aも味方して3対4!
【ランディ】 衛兵Aはムリヤリ味方にされてしまったんやな。
【GM】 しかし、ガラの悪い冒険者たちは、「知るか」と言う。
「じゃあ、おまえがペガサスを買うか? それなら、オレたちは手を引いてもいいぜ」
【ティガー】 「じゃあ、このニョムヒダの像と交換しよう」
【GM】 「なんじゃ、そりゃー!」と、怒った。「バカにしてんのか!?」
【ティガー】 「知らんのか、今、オレンブルクで大流行!」
【ジーネ】 ロンデニアで買ったんでしょうが。
【ティガー】 とりあえず、大きい国の名前を言ってみた。
【GM】 (ころっ)なら、ガラ悪Bが「おおっ?」と、ちょっとだけ興味を示してる。
【ティガー】 「アホや」と思うとこ。
【GM】 ガラ悪AとCは「アホかーッ」と、ティガーにツッコミを入れる。
【ティガー】 んー、言うことがなくなってしまったなぁ。
【ジーネ】 おい。
【ランディ】 ティガーはセリフが尽きたんか。じゃあ、僕の出番やな。
 クロールで岸まで泳いで上陸する。そして、「ちょっと、お待ちなさい」と声をかける。
【GM】 ガラ悪たちとティガーが振り向くと、そこに、真っ赤なビキニパンツのランディが、水を滴らせながら仁王立ちしている。もう、すっかり小麦色。
【ティガー】 「うわあ!?」と驚く。
【GM】 ガラ悪たちも驚いた。「なんだよう?」
【ランディ】 「ここはひとつ、僕と遠泳で勝負だっ!」
【ジーネ】 なんじゃ、そりゃー!
【GM】 すると、ガラ悪Cが「おもしろい、受けてやろう」と言う。
「だが、『メカリアの飛び魚』と呼ばれたこの俺に、勝つことができるかな?」
【ジーネ】 料理の勝負ならできるんだけどなぁ。
【ティガー】 オムライスの大食いならOK!
【ランディ】 それじゃあ、3本勝負といこう。
【ジーネ】 2本取ったほうが勝ちということで。
【GM】 ガラ悪たちはそれを了承した。「オレたちが勝ったら、おまえら身ぐるみ置いてけよ」
【ジーネ】 装備一式取られちゃうの?
【ティガー】 大丈夫、負けへん。「俺たちが勝ったら、ペガサス置いてけよ」と言う。
【GM】 「約束してやろう」
 それでは、ランディとガラ悪Cによる遠泳対決からいこう。
 約600メートル先にある牡鹿岩を折り返してゴールする、1往復1200メートルの競泳。
 1200メートルを400メートルの3つのセクターに分けて、1セクターごとに『冒険者レベル+敏捷度ボーナス+2D』の値を出す。で、その合計値が多いほうが、先にゴールしたことになる。
【ランディ】 わかりました。
【GM】 その頃になると、何だか知らないけど、いつの間にかギャラリーに人だかりができてしまっている。
 こうなると、もちろん、勝手に賭が始まったりしてたりする(笑)。そして、自分が賭けたほうの選手に、激励とも脅しともつかない声援が飛ばしたりする。
【ジーネ】 私は普通にランディを応援。「がんばれ〜」
【GM】 それじゃあ、スタート!
【ランディ】 (ころっ)こっちは11。
【GM】 (ころっ)こっちは15。セクター1では、ガラ悪Cが若干リード。ランディに賭けたギャラリーから悲鳴があがり、ガラ悪Cにかけたギャラリーから歓声があがる。では、セクター2の判定。
【ランディ】 (ころっ)15。合計で26ですね。
【GM】 (ころっ)11。合計値はランディと一緒。ということは、ここでランディが追いついて並んだ!
【ティガー】 おおっ!
【ジーネ】 やった、ランディ!
【GM】 さあ、これでレースは振り出しに戻った。セクター3で勝負が決まる。
【ランディ】 (ころっ)12。合計で38。
【GM】 (ころっ)9。合計で35。ということで、牡鹿岩コーナーでガラ悪Cのインを差して並んだランディが、そのまま抜き去ってみごと優勝した。
【ティガー】 勝ったー!
【ジーネ】 おお〜、すごい、すごい。(ぱちぱちぱち)
【ランディ】 ガラ悪Cに「いいレースだったな」と手を差し出す。
【GM】 じゃあ、ガラ悪Cはランディと握手しながら、「完敗だよ。『飛び魚』の称号はおまえに譲るとしよう」と言う。
 これより後、ランディ・アクアマリンは、『アリステアの飛び魚』と称されることになる。
【ティガー】 どんな称号やねん(笑)。
【GM】 続いては料理対決。
 味を競うのはもちろん、3本目の大食い対決のために、一定時間内にどれだけオムライスを作れるかを勝負する。選手は、ジーネとガラ悪B。
【ジーネ】 それはいいけど、材料はどうすんの?
【GM】 それは、ホルトーという行商人が提供してくれる。ギャラリーから、ちゃっかり見物料を取ってるけどね。あと、ジーネとガラ悪Bには、『ホルトー商会』という名前入りのエプロンをつけてもらうから。
【ランディ】 なるほどな(笑)。
【ジーネ】 で、判定の方法は?
【GM】 制限時間は30分。これを10分ごとの3つのセクターに分けて、『メイド技能+器用度ボーナス+2D』を行う。この合計値が大きいほうが勝ちとなる。
 ちなみに、ガラ悪Bはコック技能を持っているので、それを使う。「『ダンフリーズのコック長』と呼ばれたこのオレに勝てるかな?」と、自信満々。
【ティガー】 どんな冒険者やねん、そいつら(笑)。
【GM】 ほんなら、行くで。最初の10分。(ころっ)こっちは11個作った。
【ジーネ】 (ころっ)こっちも11個。(ころっ)次の20分も11個作ったよ。
【GM】 (ころっ)ガラ悪Bは8個。お、負けとるやないか、コック長。では、最後の30分目をやってみよう。(ころっ)こっちは10個作って、合計で29個のオムレツができた。
【ジーネ】 (ころっ)よっし! 15個作ったんで、余裕で勝利!
【ランディ】 よっしゃ。
【ティガー】 勝ったー! 3本勝負で2本勝ったから、ペガサスはこっちの物やんな。
【GM】 いや、3本目の大食い対決に勝利すると3ポイントもらえる、ということにすれば、ガラ悪ーズにもまだ逆転のチャンスがある。
「『エストリアのブラック・ホール』と呼ばれる、このオレと勝負しろ!」と、ガラ悪Aも言ってるよ。
【ティガー】 そんなんと勝負するの、イヤや!(笑) 普通に食おうぜ。

しゃべるペガサスのエドゥの事

【GM】 じゃあ、ジーネとガラ悪Bが作ったオムライスは合計で66個あるから、それをギャラリーにも振りまいて、みんなでオムライスを食べた。
【ジーネ】 また、なごむのね……。
【ティガー】 おかわり!
【GM】 「オレもおかわり!」と、『エストリアのブラック・ホール』。
【ランディ】 張り合わなくてもよろしい(笑)。
【GM】 さて、みんなでワイワイ言いながらのオムライスの試食会は、やがてお開きとなる。
 ガラ悪ーズは、「いい勝負だったな。また戦おう」と握手して、約束どおりペガサスを置いて去っていった。
【ジーネ】 ネットはペガサスに絡まったまま? 誰か取ってあげて。モーニングスターでは切れませんから。
【ランディ】 じゃあ、僕が取ってあげるよ。
【GM】 ということで、ペガサスはようやく網から逃れることができた。しかし、なんと、左の翼が折れてしまっている。
【ジーネ】 〈キュアー・ウーンズ〉で治せない?
【GM】 骨折と同じやからね。〈リジェネレーション〉でないと、無理かな。
 とりあえずペガサスは、「どうもありがとうございました」と頭を下げる。
【ティガー】 そいつ、しゃべれるんや。
【GM】 「私はしゃべるペガサスのエドゥ」
【ティガー】 最初からしゃべれよ。
【ジーネ】 「たーすーけーてぇ〜」って(笑)。
【GM】 「興奮すると、ヒヒーンとしか言えなくなるのです」
【ランディ】 翼が折れたということは、もう飛べないのかな? 僕らでは〈リジェネレーション〉は使えませんし。
【GM】 少なくとも、今は飛べないね。
 ただ、ペガサスの話によると、彼の住処であるセオニ山頂の高原には森があり、その森には齢1500を数えるユニコーンの長老様が住んでらっしゃるらしい。
「長老様にお願いすれば、この折れた翼も治していただけるのですがねぇ。いかんせん、私は飛ぶことができず、セオニ山はすごく険しいのでございます。もし、足を滑らせたりしたら、きっと私は死ぬでしょう」
【ジーネ】 ずいぶん持って回った言い方だけど、要するについてきてくれ、ってことね。
【ランディ】 乗りかかった船だし、引き受けましょう。
【GM】 「ありがとうございます、勇者たちよ。無事、翼が治った暁には、あなた方にお礼をいたしましょう」
【ジーネ】 きっと、笛を吹いたら駆けつけてくれるようになるんだ。
【GM】 なんてありがちな(笑)。
【ジーネ】 そうそう、折れた翼に添え木をしといてあげよう。これで少しは楽なはず。
【GM】 「やや、これはかたじけない」
 じゃあ、セオニ山の山頂に連れてってくれるんやね?
【ジーネ】 明日の朝まで待ってくれるかな? まだ洗濯物が乾いてないし。
【ティガー】 今日は疲れたし。
【ランディ】 ここで1泊して、明日、セオニ山に向かうということで。
【GM】 了解。では、ペガサスもおとなしく立ったまま眠りについて、翌朝を迎えた。
【ジーネ】 何事もなかったのね、よかった。あのガラが悪い冒険者たちが、仕返しに来るかと思ってた。
【GM】 その点は大丈夫。勝負に負けた以上、そのペガサスからは手を引く。そして、次のペガサスを狙うんやね。
【ティガー】 けっきょく狙うんや(笑)。
【GM】 まあ、狙ってても、めったにペガサスには遭遇しないけど。ここだって、ホントはエサ場じゃないから、普段ペガサスが降りてくることはないし。
【ジーネ】 じゃあ、エドゥは何しに来たの?
【GM】 エサを食べに来たんだよ。
 セオニ山の頂は台地になっていて、外周はペガサスたちの生息地である岩場になっている。内側にはユニコーンの長老様が住む森が広がり、その中央は開けて、豊かな草原になっているらしい。
【ランディ】 山頂の森はドーナツ状になってる、ってことですな。
【GM】 そう。その中央の草原には、おいし〜い草がい〜っぱい生えていて、ペガサスたちのエサ場になってるんやね。小動物もたくさん棲む、平穏でいいところらしい。
 彼らは普段、森を飛び越えてその草原に行き、新鮮な草を食してるそうだ。
「今回はやむを得ず、パーグ湖畔の草を食べに来たのですが、あのありさまで……」と、エドゥはさめざめと泣く。
【ジーネ】 「やむを得ず」ということは、普段のエサ場に何かあったということやな。何があったの?
【GM】 「じつは先日、中央の草原にグリフィンが棲みついてしまったのです」
【ティガー】 いきなり棲みついたん?
【GM】 「そうです。いきなり棲んでいたので、びっくりしたのでございます。あの日までは平和だったのに」
【ティガー】 あーあ。
【ジーネ】 グリフィンって、どういうものかわかる?
【GM】 じゃあ、セージ技能でチェックしてみ。
 ──誰もわからんかったようやね。キミたちは、「グリフィン? なにそれ」と言ってる。
【ティガー】 エドゥに「グリフィンって、ゴブリンと比べてどっちが強い?」と、聞いてみる。
【GM】 「そりゃあ、グリフィンに決まってますよ。何より、奴らは我々の天敵です。鷲の上半身に獅子の下半身を持つ、天空の悪魔でございます」
【ティガー】 大きさはどんなもん?
【GM】 「私と同じぐらいでしたが」
【ティガー】 じゃ、馬サイズなんやな。大したことさなそう。ゴジ○サイズかと思ってた。
【ランディ】 それはシャレにならへん。
【GM】 ゴジ○ぐらいでかかったら、麓からでも見えてるわぃ。「あれかぁ」って(笑)。
【ジーネ】 エドゥを山頂に連れていくのはかまわんのやけど、グリフィンと戦うことになったら困るなぁ。勝てるとは思えんねんけど。
【ランディ】 そんときは逃げましょう。
【ジーネ】 逃げれるかしら。
【ティガー】 俺は勝てると思い込んでるから、大丈夫。
【ランディ】 「思い込んでるから、大丈夫」の理屈がわからん(笑)。
【ジーネ】 ファンリーはどう思ってるの? 彼氏はああ言ってるけど。
【GM】 ちなみにファンリーも、グリフィンのことはよく知らない。じゃあ、彼女も問題なしと思ってよう。「グリフィンの住処に近寄らなければ、大丈夫だと思います」
【ランディ】 そりゃ、そうや。優等生やな。
【ジーネ】 そんじゃあ、出発しますかい?
【ティガー】 隊長たちはどうすんの? ついてくる?
【GM】 いや、彼らはウィスからブレインに渡るつもりでいるらしい。ブレインには大きなカジノがあるからね。「ひとヤマ当てるのであるっ!」と息巻いてる。
【ティガー】 きっと、当たらへん。
【ジーネ】 ああやって身を持ち崩すんやな。
【GM】 「札束で、美女の頬をピチピチ叩くのであります!」と、衛兵A。
【ティガー】 アホや。
【ジーネ】 ああいう大人になっちゃいけませんよ、ファンリー。
【ランディ】 隊長たちとはここでお別れか。たぶん、また会うような気がするけど。
【GM】 それでは、キミたちはセオニ山に向かいます。その人外魔境的な険しい山を、エドゥが滑り落ちないように支えながら登るわけや。
【ティガー】 鎧を着て登るのって暑いよな。普通の服で登ろっかな。スケイル・アーマーは着ない方向で。
【ジーネ】 私はちゃんとチェイン・メイルを着ておくよ。
【GM】 レンジャー技能のあるジーネが、安全に登れそうルートを見つけ出しながら、キミたちは山頂をめざす。
 そして、丸1日かけて、なんとかセオニ山の頂にたどり着いた。「ああ、しんどかった。ぜいぜい」
【ティガー】 馬がそんなこと言うんか。
【GM】 「こんなに歩いたのは、久々でございます。ほら、足の裏にマメができちゃった」
【ティガー】 できねーよ、そんなの!(笑)
【GM】 さて、登頂したその先には、ペガサスがたくさんいます。都合11頭ぐらい。
「おお、エドゥじゃないか、心配したぞ」「どうした、その翼は」「なんだ、人間もいるぞ」
【ランディ】 かくかくしかじかと説明しましょう。
【GM】 ランディとエドゥから話を聞いたペガサスたちは、「それはありがとう」「どうもありがとう」「ありがとう」「ありがとう」と、一列に並んで右から順番に頭をさげる。その際、右の翼をバサッとあげる。
【ティガー】 ウェーブや、ウェーブや。こんなペガサス、見たくない〜(笑)。
【ジーネ】 う〜ん。ここのペガサスだけが変なのか、ペガサスってこんなものなのか、セージ技能のない私には判断がつかない……。
【ランディ】 僕は感動しておこう。「いいもの見せてもらったなぁ」
【GM】 そして、この集落の偉いペガサスが森に入り、ユニコーンの長老様を呼びに行った。
【ジーネ】 その間に、食事でもしとこうか。森で木の実とか採ってもいい?
【GM】 いいけど、あんまり森の奥には行かないようにね。危ないから。
【ティガー】 木の実より、ウサギを捕まえてきて欲しいな。肉ぅ〜。
【ジーネ】 別にいいけどさ。でも、ウサギを捕るのって、けっこう難しいんやで。
【GM】 まあ、ジーネはレンジャーだし、不可能ではない。狩りをするんなら、いちおう判定しとこう。
 ──それなら、1羽捕まえることができた。ジーネは、毛の長〜いウサギをぶらさげて、戻ってきたよ。
【ティガー】 気持ち悪いウサギ〜、いや〜ん!
【GM】 味は普通のウサギと変わらんよ。それに、この辺のウサギって、そんな奴ばっかりやし。
【ティガー】 どんな地域やねん(笑)。
【ジーネ】 見た目が気に入らんのなら、さっさと解体してしまおう。この毛皮って、何かに使えないかな?
【GM】 さあ? つけ髭ぐらいにしか、使えんやろね。
 さて、キミたちが食事をすませてしばらくすると、森から先程のペガサスが出てきた。その後ろに、1頭のユニコーンが続く。
 螺旋の角は、1500年の時を経てもなお美しい。その佇まいは、雄々しくも神々しい威風をたたえる堂々としたさま。まさに、伝説の生き証人。
 ただし彼の瞳は、長い年月の果てに、光を失っているようやね。
【ジーネ】 ランディ、後でサインしてもらいな。
【ランディ】 ちょっと偉すぎて、近寄れないかも(笑)。
【GM】 といったところで、以下、次回ということにしよう。

÷÷ つづく ÷÷
©2002 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2002 Jun Hayashida
Map ©2002 Moyo
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