≪REV / EXIT / FWD≫

§烙印の天使:第6話§

船上のめぐりあい

著:龍神裕義 地図:もよ
▽ 邪神の眠る島をめざす事 ▽ カバンタの息子の事 ▽ ロンデニアでの情報収集の事

邪神の眠る島をめざす事

【GM】 では、エイドリアン・ギルバード導師誘拐を手引きした犯人、クラウス・ウォルトンを魔術師ギルドに突き出した翌朝です。
【ティガー】 オムライス食べてる。
【ランディ】 今日はオムレツじゃないんや。
【カバンタ】 チキンライスがドッキングされたんやな。
【ティガー】 うん、ちょっと豪華。
【GM】 そこに、オレンブルク王国の役人がやって来た。どうやら、この宿屋を差押えに来たようやね。
【ジーネ】 差押えですか。店長、何をやったんだ。
【GM】 店長は別に何もしてないよ。オレンブルクで店を出すときは、基本的に王国から店舗などの場所を借用することになる。
 で、店主が死亡したりした場合、その肉親が後を継ぐことができるんやけど、その申請は5日以内に行わなければならない。
 今回、それがなかったので、この宿はいったん王国に返却され、新たな店主に貸し出されることになった。
「つーことで、本日中に出てってください」とのこと。
【ジーネ】 じゃあ、隣の宿屋に行きましょか。
【ティガー】 オムライス持って移動〜。
【GM】 「お客さん、持ち込みは困るよ」
【ティガー】 ケチケチすんなって(笑)。
【ジーネ】 さて、これからどーするか、みんなで検討せないかん。
 とりあえず、前回のセッションで出てきた、木材置場の「黒ずくめらしき男たちの死体」ってのが、すごく気になるんやけど。
【カバンタ】 気になるんなら、調べたらええやん。
【ジーネ】 それについての詳しい情報は、どこに行ったら聞けるんかな?
【カバンタ】 そら、死体が運ばれた場所やろな。
【ランディ】 変死体ということで、きっと検死が行われたはず。
【ジーネ】 じゃあ、そこで情報を聞くといいわけか。
 まずはオーシュ神殿横の例の詰所に行って、衛兵長に事情を話して、検死の結果を聞けるように取り計らってもらおっかな。
【ティガー】 ついてこっと。オムライス食べ終わるまで待ってな。
【ランディ】 僕も行こう。
【カバンタ】 何か知らんけど、ついていくらしい。
【GM】 珍しく4人そろって行動するわけね。
 では、キミたちは、オーシュ神殿横の衛兵の詰所にやって来ました。
 ジーネの話を聞いた衛兵長は、「なに、あのブヨブヨの死体が見たいであるか。変わった女だな。これだから女は信じられんのである」とか言ってる。
【ジーネ】 どーゆー理屈やねん! 死体が見たいんじゃなくて、検死の結果を聞きたいの。
【ティガー】 とりあえず、今は女を信じたくないんや(笑)。
【GM】 まあ、そんなことを言いつつも衛兵長は衛兵Aに命令して、ジーネが検死結果を聞き出せるようにしてくれたよ。単に衛兵Aが同行するだけやけど。
 ちなみに検死を行ったのは、魔術師ギルドの中のとある施設です。
【ランディ】 じゃあ、魔術師ギルドに行こう。
【GM】 それでは、魔術師ギルドの隅っこにある研究所にやって来た。ここは人体の神秘について研究する施設で、変死体の解剖などを行って死因を調査することもしています。
 白衣を着た、でこの広い猫背の小男が「どんなご用件でしょうか」と応対する。
【ランディ】 「2日前に木材置場で発見された4つの死体の検死結果を、教えて欲しいんですけど」と言う。
【GM】 白衣の小男はロッカーを漁って、ひとつのファイルを持ち出してきた。で、それをパラパラめくる。
【ティガー】 死因は溺死?
【GM】 溺死じゃない。どうやら、殺された後に川に捨てられたようやね。
【カバンタ】 どうやって殺されたんやろ。
【GM】 「刃物ですね。左首の横、僧帽筋と鎖骨の間を、上から鋭利な刃物で刺されたようです。それだけでじゅうぶん致命傷ですが、その刃物にはさらに致死性の猛毒も塗られていたようで、即死したものと思われます」とのこと。
【カバンタ】 4つとも同じ殺され方か?
【GM】 同じらしい。しかも、手練の人間の仕業だろうとのこと。致命傷以外にも、体のあちこちに傷痕が残ってたらしいけどね。
【ジーネ】 これは暗殺者の仕業かな。
【ランディ】 犯人は単独か複数か、判断がつきにくいな。
【ティガー】 たぶん、複数やと思う。単独やと、ひとりを殺してる間に他の3人に逃げられてまうし。
【ランディ】 単独犯が、別々の場所で殺したのかも知れない。
【ティガー】 それやと、いちいち川に捨てるのがしんどいで。
【ジーネ】 被害者に外見的な特徴はないんやろか。「これは、どこそこの国の人間や!」と、ひと目でわかるような……。
【GM】 身体的特徴は、オムスク人ということ以外にこれといってない。ただ、そいつらはチェイン・メイルに身を包んでたんやけど、その鎧に特徴がある。
【ジーネ】 チェイン・メイルを着てたら、川に沈んだままなんでは? どうやって発見されたんだろう。
【GM】 3日前の夜に嵐があったやろ。あれで川の水が増えて、流れが速くなった。んで、水流に巻き上げられたこの死体たちは、木材置場の岸辺に打ち上げられたんやね。
【ティガー】 そいつら、死後何日ぐらい経ってるの?
【GM】 発見された時点で、死後3日ぐらい。かなり水を吸ってふやけてたよ。体内にガスも溜まってたし。
【ランディ】 それで浮かびやすくなってたんやな。
【ティガー】 発見されたときに死後3日ってことは、いまで言うと、5日前に殺されたことになるんか。5日前は、ファンリーと出会った日か。
【ランディ】 あのとき、ファンリーを追って宿屋に乱入してきた黒ずくめの数は、4人やったな。
【カバンタ】 微妙な共通点やな。
【ジーネ】 ところで、そいつらのチェイン・メイルの特徴って、どんなの?
【GM】 軽くて丈夫で渋く黒光りする金属、カルファン鉄でできてるらしい。
 ちなみにカルファン鉄は、原産国のカルファン王国がオレンブルクと敵対するロットバイル王国に取られて以来、オレンブルク王国内では手に入らない希少な製品になっている。
【カバンタ】 どこでなら、手に入るんや。
【GM】 そりゃ、ロットバイル王国でしょう。または、ロットバイルと親密な関係にある国、もしくはあった国。
【カバンタ】 その親密な国ってのはどこや。
【GM】 いまはそういう国はないね。7ヶ月ほど前までは、邪神の眠る島のランダース王国が同盟関係にあったようやけど。
【ランディ】 また出ましたな、その名前。
【ジーネ】 やはり……そのランダース王国に行ってみるしか、なかろうか。
【カバンタ】 そりゃ、行くしかないやろ。そこにファンリーがおるはずなんやから。
【ティガー】 行こう、行こう。
【GM】 ちなみに、オレンブルクからの連絡船で、直接ランダースまで行けるわけじゃないで。連絡船はロンデニアとの間で運行されてるからね。
【ティガー】 ロンデニアからは?
【GM】 陸路を通れば行けんこともないでしょう。
 ただし、ランダース王国とは戦争してる仲。いまのところ、戦闘は小康状態やけど。
【ランディ】 島内の敵味方の関係は、どんな感じになってるの?
【GM】 邪神の眠る島には、もともと6つの国があった。ロンデニア王国、ランダース王国、ウィス王国、ブレイン共和国、スパニア王国、ゴルド王国。
 その内、ゴルド王国が現在ランダース王国領になっている。いちどランダースに支配されたスパニア王国が独立を回復したため、ゴルドは飛び領になってしまってる状態。これがランダース軍。
 それに対するのは、ロンデニア王国・ウィス王国・ブレイン共和国・スパニア王国からなる連合軍。ちなみに連合軍は、オレンブルク王国と親密です。
【カバンタ】 6つのうち4つが味方か。なんや、何の問題もないやないか。
 よし、じゃあ、行こか。まずは邪神の眠る島のロンデニアに。
【GM】 おお、初めてカバンタの口から建設的な意見が出たぞ。きっと、暑さで頭がやられたんやな(笑)。
【カバンタ】 じゃ、連絡船の乗り場に行くで。
 どう、船には乗れそう?
【GM】 切符さえ買えば乗れる。ひとり200フィスね。
 さて、港にはキミたちがこれから乗り込む船が停泊している。船舶技術に長けるロンデニア王国と共同開発した、最新鋭のドレッドノート級輸送戦艦です。
 まあ、戦艦と言っても戦艦同士の決戦を想定したもんじゃなくて、海賊やモンスターから自分の身や輸送物資を守るために、バリスタなどで武装してるだけなんやけどね。
【カバンタ】 最新鋭か。ということは、スピードがめちゃくちゃ速いんやな。スパーンとロンデニアに行ってくれるやろ。
【GM】 そりゃもう、スパーンと行けるよ。これまで3日かかってたオレンブルク〜ロンデニア間を、2日の航行でこなしてしまうんやから。
【ランディ】 おお、それはすごい。
【GM】 ドレッドノート級はオレンブルクで17隻が就航、さらに8隻が建造中という状態で、老朽化した前世代のクラーケン級と順次置き換えられている。
 すでに役目を終えたクラーケン級が港の片隅に停泊していて、
「おい、見ろよ。493年に建造された、クラーケン級2番艦『オーク』だぜ」
「そうそう、『クラーケン』とはバリスタの数が違うんだよね」
「オレンブルクは、この頃から戦艦にモンスターの名前をつけるようになってさぁ──」とか何とか、うるさくウンチクを垂れるマニアたちの注目を浴びてたりする(笑)。
【ティガー】 「知るかー!」と思っとく。
【カバンタ】 して、オレらが乗る船のモンスター名は?
【GM】 ドレッドノート級6番艦『シーホース』。
【ティガー】 よかった、『ゴブリン』とかじゃなくて(笑)。
【ジーネ】 その古い船を借りることはできんじゃろか。
【GM】 できるわけがない。おとなしく200フィスの切符を買いなさい。
【ランディ】 切符を買ったほうが、よっぽど安くつくやろね。船を借りるとなると、水夫も雇わんといかんし。

カバンタの息子の事

【カバンタ】 じゃあ、切符を買って乗った。モンスターに会わんように、うま〜く針路をとってや。
【ティガー】 どんなんや(笑)。
【GM】 それでは、キミたちは船上のひととなった。天気はいいし、風向きもよし。航海はきわめて順調です。
 キミらはどんなふうに船旅を楽しむのかな?
【ジーネ】 楽しんでるヒマなんてないよ。例の怪しげな船の情報を得るために、手当たり次第に話を聞いてる。
【ティガー】 俺は甲板で日焼けしとく。
【ランディ】 僕は船長のところに行って、航海の記念にサインをもらおう。
「ぜひ、この切符にサインを……」
【カバンタ】 オレは船のあちこちを見て回る〜。
【GM】 なるほどね。この船は仮にも戦艦だから、船首には凶悪な衝角が、両舷にはよく手入れされたバリスタなどが装着されている。
 カバンタはそういうのを見て喜んでいる。
【カバンタ】 このバリスタの黒光り加減がな、素晴らしいねん。
【ティガー】 知るかー!
【GM】 ちなみに、バリスタの射手にはコモン・ルーンの〈エンチャント・ウェポン〉が支給されていて、いざ戦闘というときは、エンチャントされたバリスタから直径88ミリのクォーレルをぶっ放つ。
【ランディ】 そりゃ、強力そうや。
【GM】 さて、甲板では、傭兵っぽいのや、商人っぽいの、キミたちと同じ冒険者っぽいのが多数くつろいでいるよ。
 そして向こうでは、船員と子供が何やらモメてたりするんやな。
【ティガー】 なんじゃ、それ?(笑) 何が起こっとんや。
【GM】 その子供は、甲板をフラフラ歩いてるカバンタを見つけて、「父ちゃん!」と駆け寄ってくる。
「父ちゃん、探したんだよ!」
【カバンタ】 わけわからんぞ(笑)。
【GM】 すると、その子供とモメていた船員が「おめーが親父か」とやって来る。小麦色の肌でスキンヘッド、丸太のような腕には錨マークの刺青が彫られている男が。
【カバンタ】 強そうやな。
【GM】 子供は「父ちゃん、助けて」と、カバンタの後ろに隠れる。
 どうやら、密航しようと船倉に潜んでいたところ発見され、つまみ出されたらしい。
 スキンヘッドはカバンタに、「親父なら、そのガキの切符を買え」と言ってくる。
【カバンタ】 知らん。その子供を海に捨てようとする。
【GM】 「何をするんだ、父ちゃん!」
【カバンタ】 知らん、知らん。今にも捨てそうやけど、スキンヘッドの反応は?
【GM】 「てめー、なんてひどいことしやがる!」と、殴りかかってきた。
 じつはこのひと、子供の頃に父親に冷たく扱われてた過去をもってるんやね。
【カバンタ】 避ける。(ころっ)紙一重で回避した。
【GM】 「ちぃ! なかなかやるな」
【ランディ】 バトルモードになりましたか。
【ジーネ】 これは止めに行ったほうがいいんだろうか。
【ティガー】 「えらいことになってるなー」と、見に行ってみる。
「がんばれ、カバンタ」(笑)
【GM】 ティガー以外にも、騒ぎを聞きつけたヤジ馬たちが集まってきて、カバンタとスキンヘッドの周囲には、あっという間に人だかりができてしまった。
「どうやら、あの男が自分の息子を海に捨てようとしたらしいぞ」
「それをスキンヘッドが止めたんだ」
「おい、それでも父親か!」とかなんとか、好き勝手な言葉がギャラリーから発せられる。
【ティガー】 おお、あいつ息子がいたんや(笑)。
【カバンタ】 とりあえず子供を甲板に捨てとこ、ポイって。そしてスキンヘッドに手で「来い来い」と挑発するんやな。
【GM】 「ほう、このゴンチャロフさまにケンカを売ろうってのか、おもしろい!」と、スキンヘッドが殴りかかってきた――カバンタは、それを軽やかな身のこなしでかわした。
 ギャラリーは「やれー、やれー!」と無責任に煽っている。
【ティガー】 やれー、やれー!
【GM】 その隙に、子供は人垣の股の間をくぐって逃げようとして、ティガーの股の下もくぐろうとするよ。
【ティガー】 じゃあ、子供を捕まえて「カバンタって、変な親父やろ?」って言う。
「あいつ、椅子とかかじるねんで」
【GM】 「あ、う、うん。そうだね」
【ティガー】 カバンタとスキンヘッドの戦いがよく見えるように、子供を肩車してあげる。
「そういえば、キミ、カバンタとあんまり似てへんなぁ」
【GM】 「オ、オレ、母親似なんだ」
【ジーネ】 子供にしたら、逃がしてもらえない状態になってるのね。
【GM】 その間もスキンヘッドは、一方的に殴りかかっている。カバンタはそれをひらりひらりとかわし続ける。
【ジーネ】 とりあえず、人だかりをかき分けて「争いごとはおやめなさい!」と、止めに入ろう。いちおう、ここは司祭らしく。
【GM】 プリーストの仲裁で、スキンヘッドは殴るのをやめた。
 そして肩で息をしながら、カバンタに「なかなかやるじゃねーか」と言う。
【カバンタ】 ニヤっと笑っとこ。
【GM】 ギャラリーたちは「なんでぇ、もう終わりかよ」と離れていった。その場に残ってるのは、カバンタとスキンヘッド、ジーネとティガーと、ティガーに肩車された自称カバンタの息子。
 ランディは船長のところにいて、「なるほど〜。これはいい舵輪ですなぁ」とか言うてる。
【ランディ】 たぶん、何がどういい舵輪なのかはわかってないけど、とりあえずヨイショしてるんやな。
【ジーネ】 ホントに戦神の司祭なのかしら。
【GM】 スキンヘッドは「金は払ってもらうぜ」と、乗船券の発売をまだあきらめていないようです。
「さあ、200フィスだ」
【カバンタ】 だから、あんな子供なんて知らん!
【GM】 ティガーの肩の上の子供は、「なに言ってるんだ、カバンタ父ちゃん!」と憤慨してる様子。
【ジーネ】 カバンタの名前、知ってるの?
【ティガー】 俺が教えてしまった。
 とりあえず俺は、どっちの言ってることが本当か、わからん状態。
【カバンタ】 そら、ティガーにはわからんやろな。オレにもわからんし。
【GM】 「オレの言ってることが本当だぞ」と、子供はティガーの頭をポンポン叩く。
【ティガー】 叩くなーッ。
【ジーネ】 う〜む、カバンタに子供がおるようには思えんし、親子別々に船に乗った理由もわからんし、嘘ちゃうかなぁと思う。
【ランディ】 本人は否定してますしね。
【GM】 ──と、甲板にやってきたランディは、落ちつき払った様子で言うんやな。
【ランディ】 話はすべて聞かせてもらいましたよ(笑)。
【ティガー】 いつの間に!?
【GM】 「父ちゃんは記憶喪失なんだ!」と、子供は言ってるよ。
【カバンタ】 そうなんか。
【ティガー】 カバンタ、納得してしまってる(笑)。
【ジーネ】 魔術師がいたらなぁ。〈センス・ライ〉で調べてもらえるのに。この船に魔術師は乗ってないの?
【GM】 いくらか乗ってるよ。ただし、1レベルとか、2レベルとかそんなの。「よ〜し、ゴブリン倒すぜ〜」とか言ってそうな連中。
【ランディ】 〈スリープ・クラウド〉の練習とかしてそう。
【ジーネ】 たかがゴブリン倒すために、200フィスも払って島に渡るのか、そいつら。変な奴らやなぁ。
【カバンタ】 そ〜りゃ、今から稼いでいくんやろ。
【GM】 ちなみに『言ってそうな連中』ね。それに、彼らは彼らのGMに「島のゴブリンを倒してこい」と、言われたのかも知れない。
「でも、あのGM、1回こっきりだから嫌なんだよな〜」
「レベルが上がったとたん、キャラ作り直しだもん」
【カバンタ】 それは、ぜんぜん稼げてへんな。
【GM】 ところで、スキンヘッドは「どうでもいいから、切符を買えよ」と、言っている。
【カバンタ】 だから、オレは買わへんって。
【ランディ】 「買え」「買わない」じゃ、話が進まないな。
【GM】 子供はティガーに降ろしてもらい、カバンタに駆け寄って抱きつく。
「思い出してよ、父ちゃん。オレのことを! キミ……じゃくて、父ちゃんは、オレの父ちゃんなんだ!」
【カバンタ】 ほら、言葉の端々に嘘があるやろ。
【GM】 ここでカバンタは、冒険者レベル+知力ボーナスで、ダイス振ってみ。
【カバンタ】 (ころっ)成功。
【GM】 するとカバンタは、子供の手がカバンタの腰の袋にのびていることに気づいた。
【ティガー】 スリしようとしたな、さては。
【カバンタ】 その袋にのびた手を掴む。
【GM】 子供はカバンタを見上げて、ニコっと笑う。
【カバンタ】 軽く腕を折ろうとする。
【GM】 「痛いよ、父ちゃん」
【ジーネ】 それは、傍で見てる私らにも、何が起きてるのかわかるんやろか。
【カバンタ】 たぶん、わからんな。シーフ同士の高度な争いやから。
【ランディ】 じゃれ合ってるようにしか見えんわけやな。
【ティガー】 じゃあ、「仲いいな〜」と思ってる。
【ランディ】 「やっぱり親子なんかな〜」
【GM】 スキンヘッドは「さっさと金を払えよ〜」と怒ってる。
【カバンタ】 じゃあ、この子供やる。
【GM】 「ひでぇ父親だな、おまえは!」
【カバンタ】 ああ、なんとでも言うがいいッ。
【ジーネ】 ところで、この子は何の目的でこの船に乗ってきたんやろ?
【GM】 姉貴を探すためらしい。

 カバンタの息子だと自称するこの少年の名は、カール・ヴェンドリンガー。オレンブルクの貧民街に住む11歳。父親が何者でどこにいるのかは不明で、7つ年上の姉バーバラとはタネ違いである(姉の父も所在不明)。
 3年前に母が死去して以来、バーバラは母が勤めていた娼館で娼婦として働き、カールは怪しい賭場のチケット係などの雑用をして日銭を稼ぎ、姉弟ふたりで暮らしてきた。
 2ヶ月前、「邪神の眠る島で傭兵相手にボロ儲けできる」という話を聞いたバーバラは、学費を稼いでカールを学校(魔術師ギルド内にある)に通わせるため、仲間たちとともに島に渡った。
 先日、姉の仲間たちがオレンブルクに帰ってきたが、一緒に戻ってくるはずのバーバラの姿はなかった。
 仲間たちの話では、出立予定の2日ほど前に身なりのいい男と一緒にいて、出航のときが来ても港に現れなかったらしい。
 心配したカールは、単身島に渡って姉を捜すことを決意した。

ロンデニアでの情報収集の事

【GM】 ところが、いかんせんカールには金がない。父親は産ますだけ産まして、さっさと姿をくらましたらしいから。
【ティガー】 なるほど。悪い奴やなぁ、カバンタは(笑)。
【カバンタ】 その話を聞いて感動した誰かが、泣いて200フィスを払ってくれるやろ。「これでも使いな」って言うてくれるはずや。
【ジーネ】 まあ、100フィスぐらいなら出してあげてもいいけど。
【ティガー】 んじゃ、俺が残りの100フィスを払ったる。
【GM】 ジーネとティガーから料金を受け取ったスキンヘッドは納得したらしく、「おまえ、しっかりしろよ」と、カバンタの肩を叩いて船室に消えていった。
 カールは「どうもありがとう!」と、ジーネとティガーに子供らしくかわいく頭をさげる。
【ティガー】 カバンタの財布をすろうとしたときとは、えらい違いやな。
【ジーネ】 でも、そこでお金をすったってなぁ。どうする気やったんやろ?
【ランディ】 そりゃ、そこから船代金を支払うつもりやったんやろ。
【カバンタ】 ちょっと考えたらわかるぞ。
【ジーネ】 でも、危ないよなぁ。そんな戦争をやってるようなところに、子供がひとりで行くなんて。
【カバンタ】 そう思うなら、守ってあげたら。
【ジーネ】 そんなヒマはないっ。
【ランディ】 カバンタが守ってあげるべきやろう(笑)。
【ティガー】 おまえ、親父じゃねーのかよ!(笑)
【カバンタ】 知らん!
【GM】 「まちがいなく、父ちゃんだよ。だって、母ちゃんが言ってたもん。オレの親父の名前は『カバンタ』だって」
【カバンタ】 たまたま、名前が一緒なだけやー!
【GM】 「それに、シーフだったような」
【カバンタ】 『ような』かぁーッ! だいたい、オレはレンジャーっぽく過ごしてるぞ。
【GM】 ノンノンノン、スキンヘッドの攻撃をよけるとき、シーフ技能で回避してたやろ。
【カバンタ】 バレたか〜。シーフの足の運びを読まれたんやな。
【ジーネ】 私は、生まれる前にいなくなった父親なのにすぐ顔がわかった、という時点で「これは嘘やろな」と思う。
【ティガー】 ティガーは信じてるで、たぶん。
【ランディ】 人がいいな。
【GM】 まあ、そういう楽しいイベントなどもあって、2日後に邪神の眠る島ロンデニア王国の王都ロンデニアが見えてきた。
【カバンタ】 見えてきたか。どんな街や?
【GM】 ロンデニアは南北ふたつの丘の裾野の平野部に開かれた街で、丘の上には地下水を汲み上げるための風車が、海のほうを向いていくつも並んでいる。そこから用水路が張りめぐらされて、街の生活水を供給してるみたいやね。
 大きなため池なんかもあるよ。
 ちなみに、北の丘には五大神の神殿が、南の丘には城が建っている。船は、その街の港に滑りこんだ。
【カバンタ】 じゃあ、降りた!
【ティガー】 降りる〜。
【GM】 ずっと船に乗ってたんで、キミたちはなんだか地面が揺れてるような錯覚を覚える。足元がフワフワして気持ち悪い。
【ジーネ】 とりあえず、私は神殿に行く。
【ランディ】 僕も神殿に。
【ティガー】 俺は街の市場に行く。
【カバンタ】 オレはため池に〜。
【ジーネ】 盗賊ギルドへ行けぇー!
【GM】 また、みんなバラバラに行動すんのね。
 カールはカバンタの服の裾を引っ張って、「なあなあ、姉ちゃんを捜そうや」と言うよ。
【カバンタ】 勝手に捜しぃな。敏捷度14でダッシュするで。どう、逃げられた?
【GM】 逃げられた。取り残されたカールは、「ちぃ!」と悔しがってる。
 カバンタはため池にやって来た。ちなみに『釣り・遊泳禁止』。
【カバンタ】 釣りしたらアカンのか! 何しに来たんかわからんやないか。
 周りはどんな感じや?
【GM】 池の堤の上には遊歩道があって、ベンチなんかが置かれている。
【ランディ】 市民の憩いの場になってるんやな。
【カバンタ】 じゃあ、遊歩道を歩いて、ベンチに座る。
【GM】 座った横では、恋人同士がいちゃいちゃしてる。
【カバンタ】 いちゃいちゃ発見〜。観察しとく。
【GM】 カバンタが無遠慮にジッと見るもんだから、恋人たちはどこかに行ってしまった。
【カバンタ】 ベンチ、独り占め〜。ごろん、と寝ころぶ〜。
【ジーネ】 こいつはぁー!
【ティガー】 おまえ、ホントにシーフか?(笑)
【カバンタ】 シーフって、こんなもんやろ。
【ティガー】 想像してたのと違う(笑)。
【カバンタ】 じゃあ、ため池に注ぎ込む用水路を、上流に向けて遡ってみる。
【GM】 とすると、向かうのは丘の上やね。地下水を汲み上げる風車が、きゅーるきゅーる回ってるで。
【カバンタ】 よっしゃ、風車チェックやな。怪しい風車があるやも知れん。
【GM】 ジッと風車を見てるうちに、カバンタはそれが巨人に見えてきたよ。
【ランディ】 ドン・キホーテか(笑)。
【カバンタ】 風車に石を投げつけてみる。
【GM】 すると、衛兵が飛んでくる。「コラーッ!」
【カバンタ】 「いや、巨人がな──」
【GM】 「何をわけのわからんことを言ってるんだ。ちょっと来なさい!」
 カバンタは詰所に連行され、たっぷり油を絞られた。解放されるときには、「もう、あんなイタズラしちゃ、ダメだよ」と、諭される。
【ティガー】 口調がもう……頭おかしいひとを相手にしてる感じ(笑)。
【カバンタ】 じゃあ、解放されたので宿屋のほうに、ふらふら〜っと行ってみる。
【GM】 了解。
 さて、場面は変わってランディとジーネ。
 キミたちは、五大神の神殿が並ぶ北の丘を、フゥフゥ言いながら登っている。ロンデニアは国教が戦神オーシュなので、オーシュ神殿がいちばん上にある。シルファスの神殿はその下。
【ジーネ】 「じゃあ、後で」と別れて、シルファス神殿に入る。
【ランディ】 僕はオーシュ神殿に。
【GM】 ジーネがシルファス神殿に入ると、物静かな司祭が「ようこそ、シスター」と迎えてくれる。
 で、何の用かな?
【ジーネ】 「最近、人さらいの噂などを聞いたことはございませんか」と、尋ねてみる。
【GM】 「人さらいの噂? たまに聞くことがありますよ」とのこと。人がさらわれたというような話自体は、それほど珍しいことじゃないしね。
【ジーネ】 じゃあ、ファンリーとバーバラさんのことを説明して、「このようなひとに関しての、誘拐の噂はありませんか?」と聞く。
【GM】 それは要するに「若い娘の失踪事件」っていうことかな?
 それなら、「そういえば、そういう話を聞いて回ってる中年の男性がいましたよ」
【カバンタ】 それはいつの話や?
【GM】 何ヶ月か前から調査してまわってるみたいで、司祭の話では今日も来たらしい。
 さて、ランディがオーシュ神殿に来てみると、やっぱりここでも司祭たちが筋肉トレーニングに励んでたりする。島はいま非常事態やからね。「いまこそ、戦神の力を見せるとき!」とばかりに、みんな張り切ってるようだ。
【ジーネ】 見せ方が間違ってるー!
【GM】 汗だくの男性司祭が「よくぞ来た! ブラザー!」と、ランディを迎えてくれた。
【ランディ】 えーっと、僕もジーネと同じようなことを尋ねるよ。
【GM】 すると、ジーネに対するものと同じ答えが帰ってきた。ただし、中年の男性に対する描写が、「バトル・アックスを担いだ、3レベルぐらいのファイターっぽい冒険者だったぞ」となっている。戦神の司祭やから、そういうところに目がいってしまったんやろね。
【ジーネ】 そのおじさんには、どこでなら会えるのかな?
【カバンタ】 そりゃ、まだ情報集めしてるんなら、酒場とかやろ。
【ジーネ】 じゃあ、「ありがとうございました!」とお礼を言って、神殿を出て酒場があるようなところへ走って行く。
【ランディ】 ということは、宿場街に行くわけか。
【GM】 ジーネが神殿を飛び出したところに、同じように情報集めを終えたランディがいるよ。ふたりは宿場街のほうに向かう。
 で、最後はティガー。市場に来てるんやったな。
 港から街で唯一の街門の通じる大通りに市場は開かれ、さまざまな露店が出ている。通りは色とりどりの天幕に覆われてるから、雨天の日も濡れずにすむみたいやね。
 市場は多種多様なひとびとであふれかえって、話し声やら呼び込みの声やら笑い声やらで、喧騒に満ちている。
 ティガーはあちこちの商人から「どうや、兄ちゃん。ちょっと見ていかへんか?」とか声をかけられまくるよ。
【ティガー】 肉、買う。肉! 歩きながら食えるやつな。
【GM】 ティガーは、タレをたっぷりつけて焼きあげた鶏肉を買った。ヒゲもじゃの店主が紙にくるんで渡してくれる。5フィスな。
【ティガー】 それを食べながら、黒ずくめっぽいのがいないか周りを見とく。うさん臭そうな人間を捜す。
【GM】 黒い服や黒い鎧を来た人間は、たくさんいるよ。うさん臭そうなのも、たくさんいるなぁ。いまもティガーに近寄って、「鶏肉にはこれ、このレモネードが合うよ!」と黄色い歯を見せてニッコリ笑い、得体の知れない濁った液体が入った薄汚いビンを差し出す、ターバン姿の商人がいるし。
【ティガー】 その商人に、「ファンリーみたいなのを見なかったかい?」と聞いてみる。
【GM】 その質問、漠然とし過ぎやな(笑)。
「さあ、わかんないな〜。でも、このレモネードを飲めばアナタ、そのファンリーを見るかも知れない!」
【ティガー】 「そのジュース、うまいのかい?」
【GM】 「おいしいよ〜。元気になるネ!」
【ティガー】 じゃあ、レモネードを買ってみる。自分では絶対、飲まへんけど。汚い物を持つようにして、宿場街のほうに行く。「カールくん、おったらこれを飲ましたるねんけど、おれへんかな〜」って感じ。
【GM】 なるほどね。これで、全員が宿場街に向かうわけや。ティガーがいちばん最初に到着するね。
 ティガーは宿場街の通りで、カールを見つける。カールは、チェイン・メイルを着込んでバトル・アックスを担いだ冒険者ふうの中年男性と、何やら話しているみたいだ。
【ジーネ】 捜す手間がかからなかったね。
【GM】 ということで、つづきは次回。

÷÷ つづく ÷÷
©2002 Hiroyoshi Ryujin
Map ©2002 Moyo
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