▽ 黒ずくめの影を追う事 | ▽ カルファンの剣を入手する事 | ▽ ファンリーの行方の事 |
【GM】 ファンリーが連れさらわれた日の夜です。
ポツポツと降り始めた雨は、夜半過ぎにが車軸を垂らすような大雨になり、強風に煽られて窓ガラスを激しく叩く。
【ジーネ】 雨っちゅーか、嵐じゃないの。あわてて鎧戸を閉めます。
【GM】 夜が明けると、雨はすっかりあがってるけどね。軒から垂れる雫が朝日にきらめき、早起きなセミはそろそろ合唱の準備を始める。
で、メイドのジーネは、その頃にはすでに起きていて、朝食の準備をしてたりする。
【ジーネ】 あー、早く宿屋の主人の身内、来てくれんやろか。不幸を知らせる手紙、もう届いてるんじゃないかなぁ。
【GM】 まだまだ。ジーネの手紙を携えた飛脚は、一路メカリアをめざしてひた走ってる途中。昨日の昼、ようやくオレンブルクの国境を越える峠に到達したばかり。
飛脚がその峠の茶屋でセミの声を聞きながら一服してると、メカリア方面から7歳ぐらいの娘を伴った親子連れがやってきて、彼の隣に座って団子を注文した。
「いやー、暑いですな」と飛脚が声をかけ、「まったくですな」などと父親が応えて、しばらくの間、談笑してなごんでる。
「これからオレンブルクですか?」
「ええ、ちょっと私用でロメ王国まで行ってまして、オレンブルクへ帰る途中なんです」
「うちのお父ちゃんは、オーシュ神殿の神殿長なんやで」と、女の子が下から口をはさむ。
【ランディ】 おお、これはいつかコネを作らねば……。
【GM】 「でな、ロメの山は女は入られへんから、うち、ふもとで留守番しててん」と女の子。
「子供のうちから世界を見せておきたいもんですから、私用で旅をするときは、いつもこうして連れてるんですよ」と、神殿長。
「さ、カノン、そろそろ行こうか」
「あいよー!」
ということで、親子連れはオレンブルクに去り、飛脚は再びメカリアへ向けて疾駆する。
【ジーネ】 そんな悠長なことしとらんと、さっさと手紙を届け〜ぃ!
【GM】 さて、ジーネが朝食の準備を終えた頃に、ティガーたち3人は2階から酒場に降りてきたよ。
【ティガー】 オムレツ〜。
【ランディ】 朝食を食べながら、ファンリーを助ける手立てを考えよう。
【ジーネ】 といっても、手がかりが……。そもそも、なんで彼女はさらわれたんだろね?
【ランディ】 黒ずくめたちは、演劇好きの魔術師もさらってたな。ケートの手引きで。
【ジーネ】 それ以外にも、魔術師の失踪事件ってのが多発してたよね。それも、黒ずくめが関係してるんだろうか。
【GM】 などと話し合いながら朝食をすませたところに、ひとりの若い魔術師ふうの男性がやってきます。
【ジーネ】 泊まり客じゃないよね? わたしは営業できないんで。
【GM】 客じゃないよ。
「レンツォ・カザーリ導師が黒ずくめの一味に連れ去られた、という情報を持ち込んで来られた冒険者の方が、こちらにいると聞いてきたのですが」と、その若者は声をかけてくる。
【ランディ】 はいはい。それは僕たちです。
【ジーネ】 何の御用かしら?
【GM】 その男の名前はリフェール。魔術師ギルドに所属するソーサラーです。
彼の話によると、2週間ほど前から、彼の師匠であるエイドリアン・ギルバード導師が行方不明になってるらしい。
【ティガー】 それは、いっぱいいる失踪した魔術師のひとり?
【GM】 そう。5人目の失踪者です。
で、昨日の夜、同じように失踪したカザーリ導師が、怪しい黒ずくめの一味に誘拐されたらしいという話を聞き、自分の師匠も同じように誘拐されたのではないかと考えて、黒ずくめの詳しい情報を聞きにここへ来たわけ。
【カバンタ】 詳しい情報と言うてもな〜。オレらも何も知らんぞ。
【ジーネ】 これから黒ずくめたちの手がかりを探そうというところだったしね。
【GM】 それならリフェールは、「ギルバード導師失踪について何か情報を得たら、どんなささいなことでもいいから教えて欲しい」と、言ってくる。どうやら、心の底から師匠を尊敬してるみたいやね。
【ランディ】 まあ、衛兵はアテにならへんし。
【ジーネ】 皆が皆、あの隊長さんのようなひとばかりじゃないとは思うけどね。
【カバンタ】 オレは黒ずくめだとか、ファンリーだとか、ど〜でもいいんやけど。
【ジーネ】 なんてこと言うのー!!
【ティガー】 飛び蹴りしたるねん。(ころっ)1ゾロ。
【ジーネ】 殴ってやる。(ころっ)はずれ。
【カバンタ】 へろへろ〜ん。
【ティガー】 むかーッ!
【GM】 リフェールは、ちょっと不安そうな顔をしながら「よろしくお願いします」と言い、酒場を後にする。
で、キミたちはどうすんのかな?
【ランディ】 僕は貧民街に行きます。ケートが黒ずくめと会ってた酒場にもう一度行って、情報収集がしたい。
【ジーネ】 そういえばGM、ファンリーを乗せた船ってさ、どっちの方向に向かってた?
【GM】 西の方角やね。
【ランディ】 そのまま西に行くと、邪神の眠る島があるな。
【ジーネ】 でも、あの船って、ホントにボートだったでしょ。そんなので海を渡れるんだろうか。
【カバンタ】 途中で大きな船に乗せ換えたのかも知れん。
【ティガー】 ちっちゃい島があって、そこが秘密基地になってるとか。岸壁に穴が開いてて、そこがアジトになってるとか。
【ジーネ】 とりあえず、漁村で船を借りて海の上を調べてみる?
【ティガー】 じゃあ、漁村に行こう。
【GM】 カバンタは?
【カバンタ】 そうやな〜。前はテーブルをかじってたから、今度はイスをかじる〜。
【ティガー】 またかぃ!
【ジーネ】 なんでそう、意味のないことばかりすんの!? 盗賊ギルドにでも行ってなさい。
【カバンタ】 何しにや?!
【ランディ】 オレンブルクの街で誘拐事件が起こったんやから、縄張りを荒らされた盗賊ギルドが黙ってないと思う。だから、うまくすれば黒ずくめの情報が得られるかも。
【カバンタ】 行かなアカンのん〜?
【ジーネ】 行きなさい!
【カバンタ】 じゃあ、へろへろ〜んと行く〜。
【GM】 ということで、ティガーとジーネは北の『日の出門』を出て漁村に向かい、ランディとカバンタは貧民街に向かった。
ランディとカバンタは、午前11時頃に貧民街に到着したよ。ランディはケートが通っていたという例の酒場に、カバンタは盗賊ギルドに来た。
それで、ランディはどうすんのかな?
【ランディ】 酒場のオヤジに聞きたいんやけど、ケートと話をしていた黒い奴らって、この酒場で泊まったりしてた客?
【GM】 「いや、うちは泊まりはやってないよ」
【ランディ】 ということは、よその宿屋に泊まってたのか……。そいつらの人相を教えてもらえますか?
【GM】 さすがに細かい部分は覚えてないけど、大まかな人相を教えてもらったよ。
【ランディ】 じゃあ、聞き出したその人相を示して、どこの宿屋に泊まってたか情報を集めてきます。
【ティガー】 それって、すごい時間がかかるんと違う?
【GM】 まあ、1日2日では無理やろね。
【カバンタ】 そういうときこそ、盗賊ギルドやな。はよ、うちに聞きにおいで。オレ、ギルドの建物に入ろか入らんとこか迷ってるから。
【ジーネ】 なんで迷う必要があんの!
【GM】 きっと、入口の前に水の入ったペットボトルが置かれてるんやろ。
【カバンタ】 猫でもビビらんぞ、そんなもん。オレを下級な猫扱いにしないでください。
【ランディ】 僕は盗賊ギルドの前まで来て、そこでカバンタを見つけて「何してるん?」と、聞くんやな。
【カバンタ】 いやな、来たはいいけど、何をしたらええんかわからんからな。
【ジーネ】 黒ずくめの情報を聞き出すんでしょうがーっ!
【カバンタ】 そんな建設的なことを言われても困〜る。
【ランディ】 「とりあえず、黒ずくめの一味と思われる奴らの人相は聞き出せたから、こいつらがどこに泊まってるんかを調べてもらってくれ」と頼、む。
【カバンタ】 んじゃ、そんな感じで。
ケートにカザーリ誘拐の手引きを持ちかけた者たちの調査結果は、翌朝、ジーネの宿に届けられることとなった。
それとは別に、今朝、4日前にファンリーを追って宿屋に押しかけてきた黒ずくめたちと同じ装備をした、不審な男たち4人の変死体が、街内を流れるケンプテン川の木材置場に上がったという情報も得た。
【カバンタ】 よっしゃ、その木材置場とやらに行ってみよう。
【GM】 といっても、すでに死体は片づけられてるよ。
【カバンタ】 別に死体なんかなくてもええねん。そこで待ってたら、上流から何かが流れてくるかも知れん。
【GM】 ゴミぐらいしか流れて来ないと思うけどなぁ。
ランディはどうする?
【ランディ】 魔術師ギルドのリフェールのところに行く。
【GM】 やって来たよ。
「何かわかったんですか?」と、リフェールくん。
【ランディ】 「まだ調査中です。じつは、あなたの師匠のお話を聞かせて欲しいんです」
【GM】 では、聞かせてもらった話を簡単にまとめましょう。
リフェールの師匠エイドリアン・ギルバードは、主に失われた魔法の研究をしていた。
かなりの実力を持った導師なので、それ専用の研究施設まで与えられて、思うままに研究できてたらしい。その見返りとして、リフェールのような若輩者の指導を受け持ってたんやけどね。
【ランディ】 その研究施設ってのは……。
【GM】 いまランディがいる、まさにその場所。
【ランディ】 師匠がいなくなっても、閉鎖とかはされてないんや。
【GM】 いちおう、臨時の研究所長として、ギルバード師の親友であり、優秀な助手兼副所長であったクラウス・ウォルトンという魔術師が就任してるから。
【ランディ】 なるほど。ま、とりあえず、こんなところで宿屋に帰ります。
【GM】 すると、帰り着いたのは午後12時半やな。
時間を午前9時半頃まで巻き戻そう。
ティガーとジーネは、街の北門を出て30分のところにある漁村の浜辺にやって来た。
【ティガー】 その辺の漁師に、船を貸してくれるように頼んでみるけど、貸してくれそうなひとはおる?
【GM】 んじゃ、まあ、そうやって浜辺で声をかけてまわると、ひとりの老漁師が「貸してやってもええぞ」と応える。
「ほれ、あの舟じゃー」と指し示されたところにあるのは、1艘のボロっちい小舟。4人乗りぐらい。
「ワシが50年使い込んだ舟じゃー」
【ジーネ】 大丈夫かしら、その舟……。
【GM】 「大丈夫じゃー。この50年の間で、半沈3回、横転1回しか経験しとらん強者じゃー。大船に乗ったつもりでおるとええ」
【ティガー】 小舟じゃんか!(笑)
【ランディ】 半沈3回か。まあ、それで今日まで残ってるんだから、運がいいとも言える。
【ティガー】 やっぱ、新品の舟でいいっす。新しい舟を貸してくれ。
【GM】 「新品はのー、昨日の嵐でちょっと傷んだんじゃー。若い舟には根性が足りん!」
【カバンタ】 年季の差やな。
【GM】 「とりあえず、50年の舟だから50フィスで貸してやろう」
【ティガー】 魚釣りして、釣れた魚を渡すから40フィスでどうだい?
【ジーネ】 あんた、魚釣れるの?
【ティガー】 俺は魚釣りうまいぜ〜。
【GM】 「じゃあ、ちょっと試してやろう」と、釣り竿を渡される。「ほれ、ここで投げ釣りしてみぃ」
ちなみにフィッシャー技能を持ってないようなんで、ダイスの出目だけで判定ね。いい出目で成功なら、かなり大きい魚が釣れたことにしよう。
【ティガー】 うわーい! じゃあ、釣る。(ころっ)釣れたよ。しかも、めっちゃええ魚。
【カバンタ】 おっ、鯛が釣れた、鯛が。
【ランディ】 ビギナーズラックやな。
【GM】 「なかなかやるじゃねーか〜。じゃあ、40フィスで貸してやろう。その代わり、魚10匹は釣ってこいよ」
【ティガー】 OK〜。釣れなかったら、近所の魚屋で買ってこよう。
【カバンタ】 そんなら素直に50フィス払ったほうが安くつくやん。
【ジーネ】 ところでわたし、チェインメイルを着てても大丈夫?
【GM】 海に落ちなければ大丈夫でしょう。
【ジーネ】 そうじゃなくて、重さの話。そのせいで舟が沈むってことはない?
【カバンタ】 どんな小さい舟やねん! 仮にも漁船やろ(笑)。
【GM】 「今日は大漁だぜー! うわーッ、舟が沈む〜」って、そんなバカな(笑)。
ティガーのほうの鎧はどうなってんの?
【ティガー】 スケイル・アーマーを着てるよ。落ちたら怖いから、脱いどこっかな……いや、やっぱり着とく!
【GM】 それじゃあキミたちは、他の漁師たちの手も借りて、50年の舟を砂浜から海面に押し出した。ちなみに日本の小舟のように、船尾についた1本の櫓で漕ぎ進むタイプの舟ね。
ティガーとジーネ、どっちが操船するのかな?
【ティガー】 俺が漕ぐ。
【GM】 じゃあ、乗り慣れないタイプの舟だし、操船の判定をしてみよう。ダイスを振ってみ。そんなに高い出目でなくても成功するけど。
【ティガー】 (ころっ)失敗。
【カバンタ】 ということは、同じ場所でクルクル回ってるんやな。
【GM】 浜辺で貸主のじいさんや、他の漁師たちが呆れ顔で見てるよ(笑)。
「何をやっとるんじゃー」
【ティガー】 ジーネ、替わってくれ。
【ジーネ】 私が漕ぐの!? うまくいくかな〜、(ころっ)失敗。
【GM】 キミたちはかれこれ30分、すでに漁師たちが漁に出かけた後も、そこでクルクル回り続けてる。
「ちょっと貸してみろよ」
「そうじゃなくて、こうするんだ!」とか言い合いながら(笑)。
じゃあ、もう1回ずつ振ってごらん。
【ティガー】 (ころっ)成功!
【GM】 それなら、ようやく、舟は思う方向に進みはじめた。
【ジーネ】 それじゃ、ファンリーがさらわれた岸壁のあたりにでも行ってみましょうか。
【GM】 だいたい、1時間半ぐらいでそこに着くよ。
【ティガー】 俺が舟を漕いでるから、ジーネが魚を釣っといて。
【ジーネ】 はい。(ころっ)失敗。
【カバンタ】 エサだけ取られたんや。
【GM】 釣り判定は30分に1回行うから、目的地に到着するまでの間に、あと2回試みることができるよ。
【ジーネ】 (ころっ)3回目でようやく1匹釣れた。ちっちゃいのが。
【GM】 ジーネがその小さい魚を大事そうに魚籠に入れたところで、ファンリーがさらわれた例の岬の下にたどり着いた。
ゆらゆら揺れる小舟から見上げれば、岸壁の高さはけっこうなもの。ティガーは、よくあんなところから飛び降りたもんだ、と思ってる。
【ティガー】 あのときは夢中だったからさ。
【ジーネ】 とりあえず、ここから黒ずくめの小舟が向かったほうへ行ってみましょう。
【GM】 西に向かうんやね?
しばらく岸壁沿いに西方向へ進んで行くと、岩肌の崖の波うち際に、大きな空洞がぽっかりと口を開けている場所を見つけた。
そこの岸壁の高さは、だいたい10メートルぐらい。その空洞の高さは7メートルほどで、幅もそれに見合ったぶんだけあるようだ。
【ティガー】 洞窟? 奥はかなり深そう?
【GM】 中を覗いてみるんやな。それほど深い洞窟ではなさそう。10メートルほどいったところで、行き止まりになってる。
【ティガー】 中には何もない?
【GM】 いや、小舟が1艘、岩壁にがんがん当たりながら、ぷかぷか浮いてる。
【ジーネ】 ファンリーを連れ去った船だろうか?
【ティガー】 近づいて、乗り移って調べてみよう。
【GM】 するとティガーは、小舟の底に古びた人形が転がってるのを見つけた。ファンリーがいつも持ってると言ってた、あの人形ね。
【カバンタ】 人形ゲットやな。
【ランディ】 これで、ファンリーがその洞窟に連れてこられたのは間違いない、と判断できますね。
【ティガー】 この洞窟はそれだけ? 何か、入れそうな穴とかはないん?
【GM】 見当たらないね。
【カバンタ】 じゃあ、そこで他の船に乗せ替えられたんやな。
【GM】 ところで、洞窟の周辺には海面から顔を突き出した岩がいつくかあるんやけど、辺りを見回していたジーネは、そのうちのひとつの岩に、中年男性が腰まで海水につかりながらうつぶせで倒れているのを、発見したよ。
【ジーネ】 見捨てるわけにはいきません。とりあえず、近づいてみよう。
【ティガー】 生きてんのかな。知ってるひと? 黒ずくめとか。
【GM】 いや、見たことのないおじさんで、黒ずくめの衣装ではないね。
ちなみに生きてるようです。かなり衰弱してるけど。
【ジーネ】 とりあえず、舟に乗せてあげよう。
【ティガー】 んじゃ、岩場に飛び移って、おっさんを抱えようとする。
【GM】 すると、おっさんは気がついたみたい。
しかし、どうやら足が折れてるようで動けないらしい。
【ジーネ】 〈キュアー・ウーンズ〉で治しましょうか?
【GM】 骨折は〈キュアー・ウーンズ〉では治らないよ。〈リジェネレーション〉じゃないと。
【ティガー】 まあ、いいや。とりあえず、おっさんを抱えて舟に乗り移るよ。
【GM】 ところが、ティガーがおっさんを抱え上げようとした、まさにそのとき!
【カバンタ】 何が起きたんや!
【GM】 でっか〜いハサミをもった謎の巨大生物が、のそのそと横歩きで現れた。
【ティガー】 蟹〜、でっかい蟹〜。
【GM】 そう、ずばり蟹です。右のハサミのほうが、左のハサミよりも大きい、左右非対称な造形やね。
【カバンタ】 その蟹をうまく捕獲したら、魚10匹扱いになるかも。
【GM】 なるかもね。何せ、甲羅の幅が約2メートルほどだから。
【カバンタ】 おお、いけるいける。おつりがくるほどやろ。これは頑張って捕獲せんと。
【ティガー】 よーし!
【ランディ】 でも、どうやって持って帰るの? さすがに舟には乗らないやろ。
【ジーネ】 それはロープで引っ張っていけばいい。
【GM】 曳航するわけね。つーか、なんでもう捕獲した気分でおるんや?(笑)
とりあえずその蟹、腹を空かせているのか、「こーりゃ、ええもん見つけた!」とばかりにハサミをガチャガチャいわせて、ティガーに近づいてくる。
【ティガー】 こっちも「こーりゃ、ええもん見つけた」気分。カニグラタンや!
【ランディ】 緊張感ないな(笑)。
【GM】 というわけで戦闘ね。ティガーからどうぞ。
ジーネのモーニングスターのクリティカル、ティガーのクリティカルなどが炸裂し、哀れ蟹は第5ラウンド目で倒されてしまった。
【GM】 あーあ、蟹ミソが飛び散った。
【ティガー】 ちょっと味見してみてる。どう、おいしい?
【GM】 ……まずいよ。すごい大味で。
【ティガー】 そっか、まあいいや。漁師のじいちゃんに持って帰ってあげよう。
【ジーネ】 んじゃ、ロープでくくって曳航しましょか。
【ティガー】 あと、骨折してるおっさんも持って帰るよ。舟に乗せる。
【GM】 乗せられた。
「いや〜、かたじけない。ところで、ここはどこでござるか?」
【ティガー】 「オレンブルクの岸壁でござる」
【GM】 「おお、すると無事に帰ってこれたようでござるな」
【ジーネ】 あの〜、ぜんぜん無事じゃなかったんでしょ。
【GM】 「いやいや、まったく。恩に着るでござる」と、おじさんは頭を下げる。
【ティガー】 いったい、ここで何をしてたの? このおっさん、誰?
【GM】 このおじさんはガブリエル・タルキーニ、38歳。オレンブルク王国の騎士です。
とある任務で邪神の眠る島のウィス王国に出向いてて、任務の性質上ロンデニアを経由せず、直接ウィスから船でオレンブルクに戻ってこようとしてたらしい。ところが昨日──。
【ティガー】 ──嵐で船が沈んじゃったのね。
【GM】 そう。ただ、嵐が沈没の原因じゃない。ガブリエルの乗っていた船は、オレンブルクが誇るドレッドノート級輸送戦艦セイレーン。ちょっとやそっとの嵐で沈むようなことはない、と豪語できる。
【ジーネ】 じゃあ、モンスターに襲われたとか。
【GM】 近いけどちょっと違う。
昨日の嵐の夜、ちょうど邪神の眠る島ロンデニア王国の南沖で、所属不明の船と衝突してしまった。
船室で寝ていたガブリエルさんは、飛び起きて甲板に出た。そして、セイレーンはもう間もなく沈没すると見て取ったガブリエルさんは、近くに転がってた樽を持って、「えいやっ」とばかりに闇の海に飛び込んだ。
【ジーネ】 その衝突した船ってのが怪しい。ここでファンリーを乗せ替えた船なのかしら。
【カバンタ】 間違いなく、そうやろ。
【ジーネ】 衝突した位置はロンデニアの南沖……やっぱり、邪神の眠る島に連れていかれたんだろうなぁ。
【ティガー】 んで、このおっちゃんは、樽につかまってここに流れてきたのね。
【GM】 そういうこと。足は骨折してしまったけど、鎧を着ていなかったのが幸いした。肌身離さず何より大切にしていた剣は、いまも背中に負ってるけどね。
でも、ま、危うく蟹のエサになるところを助けてもらったんやし、他に渡せるようなものもないんで、この剣を謝礼に差し上げよう。
【ジーネ】 そんな大切な物をもらってもいいの?
【ティガー】 わーい。その剣って、魔法とかかかってるの?
【GM】 うんにゃ、普通の剣です。形状は少し特殊やけどね。
ツヴァイハンダーという種類の剣で、基本的には片手で扱うんやけど、刀身の根元もグリップになっていて両手でも使える。まあ、数値的な扱いはバスタードソードと一緒やけど。あと、片手で刀身グリップを持ったときに、ショートスピアのように取りまわせる。
【ジーネ】 剣か。じゃ、私はいらない。ティガーがもらっとき。
【GM】 ツヴァイハンダーはいまは亡きカルファン王国の特産品で、軽くて丈夫で錆びに強いカルファン鉄で作られてるので、色がちょっと黒っぽい。カルファン鉄製ということで、自動的に高品質な武器になるよ。
ちなみにこいつの柄には、家紋とカルファン王国の紋章が入ってる。
【ティガー】 おお!
【ランディ】 ガブリエルさんって、オレンブルク王国の騎士ですよね。なぜ、カルファン王国の紋章が……。
【GM】 この剣はもともと、ガブリエルの物じゃないからね。深いわけがあるのだよ。
今から17年前、カルファン王国に待望の王子が誕生したとき、各国から祝いの特使が派遣された。オレンブルクからも使者は遣わされ、若きガブリエルはその護衛隊の一員として、カルファン王国に出向いた。
そして、カルファン王国の王城タイガーファングにおいて、余興の一貫としてカルファン騎士とオレンブルク騎士による親善試合が行われた。出場したのは、互いに若手筆頭だったふたり。このガブリエル・タルキーニと、カルファンの騎士ステファン・ベロフ。
試合は、ガブリエルのバスタードソードがステファンの頭を叩き割る直前、そしてステファンのツヴァイハンダーがガブリエルの胸のプレートを貫く寸前、カルファン国王サパロ5世の「そこまで!」のひと言で、引き分けに終わった。
しかし、ガブリエルに言わせると、あのとき止められなければ、彼の剣がステファンの頭に届くより一瞬早く、紙一重の差でツヴァイハンダーに胸を貫かれていたらしい。
両者ともにサパロ5世や各国王から豪華な褒美を賜ったほど、見守る人々を熱狂させたすごい試合であった。
この戦いで友情を結んだふたりは、互いの剣を交換。こうしてガブリエルは、ツヴァイハンダーを手に入れたのだった。
【ジーネ】 ますます大切な剣やんか。ティガーに渡していいの?
【GM】 「いやいや、先ほどティガー殿の戦いを拝見いたしたが、何かこう、あのステファンを思い出させるみごとな戦いぶりでござった。まるで、彼の魂が乗り移ったような……このガブリエル、久々に血が騒いだでござる」とのこと。
「この剣は、拙者ではなくティガー殿にこそ、使いこなせるのかも知れませぬ」
【ジーネ】 はあ、まあ、そっちがそれでいいなら、別に構いませんけど。
でも、ティガーの武器ってスピアだよ?(笑) 戦いぶりが似るものなんだろうか。
【GM】 カルファン王国は、剣術より槍術に秀でた国だったからね。ステファンの太刀筋と似てたのかも知れない。
【ランディ】 ツヴァイハンダーは1Hスピアとして扱える、って言ってたしね。
【カバンタ】 売り飛ばせばけっこうな値段になるやろ。高品質で、しかも家紋入りのレア・アイテムやからな。
【ティガー】 売らへん〜。
【ランディ】 ジーネにはお礼はないの?
【ジーネ】 別にいらないよ。人として、当然のことをしたまでですから。
【GM】 「それでは拙者の気がすみませぬ。司祭どのには後ほど、銀貨なんぞをお届けいたしましょう」とのこと。
【ジーネ】 ま、くれるっちゅうんなら、無理に断らないけどね。
漁村に戻ったティガーたちは、魚10匹の代わりに巨大蟹を老漁師に渡して街に入った。騎士ガブリエルとはそこで別れ、ふたりはねぐらにしている宿屋に戻った。
【GM】 現在の時刻は午後3時半。
その3時間前に、ランディは宿屋に戻って来ている。カバンタはまだ木材置場におるんかな?
【カバンタ】 夕食の時間には帰るけどな。キャベツにマヨネーズをかけて食べる。
【GM】 すると、夕飯は全員そろって食べるわけか。
ちなみに今頃漁村では、カニグラタンを食した老漁師の夫婦が「なんじゃこりゃー! まずぅ!」とか叫んでたりする(笑)。で、腹を押さえて「う〜ん、う〜ん」と悶えるわけや。
【ティガー】 蟹があたったんや(笑)。
【ジーネ】 そりゃ、モンスターだもんねぇ。
【ティガー】 俺もミソを生で食ったから、生命力抵抗しとこっと。(ころっ)6ゾロ!
【ランディ】 鉄の胃袋や。
【GM】 さて、翌朝になって、ジーネにはガブリエルの遣いから300フィスが届けられ、カバンタには盗賊ギルドの遣いからケートと接触していた連中の情報が届けられた。
【カバンタ】 して、その内容は?
【GM】 それらしき連中が泊まっていたという宿を、南街の宿場で見つけ出したとのこと。『漆黒の銘酒亭』というところ。
また、それとは別に『大いなるナマズ亭』という妙に魔術師から人気がある酒場でも、2週間ぐらい前にちょくちょく目撃されていたらしい。
【ジーネ】 その連中は、まだ『漆黒の銘酒亭』に泊まってるの?
【GM】 いや、もう出払った後だそうだ。
【ティガー】 なんや。
【ランディ】 とりあえず、奴らが泊まっていたという宿屋に行ってみて、主人から詳しい話を聞き出そう。
【カバンタ】 オレは行かへんで。また木材置場で川を眺めとくから。今日こそ、何か重要なものが流れてくるかも知れへん。
【ジーネ】 こいつはー!
ランディ、ジーネ、ティガーの3人は、漆黒の酒場亭にやって来た。そこのオヤジの話によると、黒ずくめと思われる連中は10人で宿泊。3週間前から泊まり込んでいたようだが、そのうち7人が4日前に宿を引き払い、残る3人も2日前に宿を出たという。
連中は2つのグループに分かれて5人部屋を使用していたらしく、オヤジの許可を得てその部屋を調査することになった。
すると、片方の部屋のベッドの下で、燃え残ったファラリア紙の紙片を発見した。紙にはオムスク語の文字で何かが書かれてあるようだ──。
【ランディ】 ファラリア紙ってことは、この紙片の持ち主は、ロットバイル王国かそこらへんに関係する者やな。
【ティガー】 紙には何て書かれてあるの?
【GM】 かなりの部分が読めなくなってるみたい。
「……捨てられた我らには……魂に刻印を持つ者の……世界から悲しみを消すために……」
【ジーネ】 『世界から悲しみを消すために』??
【ランディ】 何のことやろ。
【カバンタ】 謎は深まるばかりやな。
【ティガー】 とりあえず、『大いなるナマズ亭』にも行ってみようよ。そいつらがそこで何をしてたんか、気になるし。
【GM】 では、大いなるナマズ亭にやって来た。
ここはなぜか魔術師ギルドのギルド生たちに人気のある酒場で、いまもギルド生と思われるような奴らがその辺で飯を食べてたりする。
キミたちが店内に入ると、ふさふさした黒髪にナマズ髭をたくわえたオヤジが、「いらっしゃい」と迎えてくれた。
【ジーネ】 ナマズ髭のオヤジさんに黒ずくめと思われる奴らの人相を説明して、「こういう奴らが出入りしてたらしいですが、何か不審な動きはなかったですか?」と、聞いてみる。
【GM】 「そういえば、そんな奴らが20日ほど前から、2、3日来てたなぁ。あそこの隅っこのテーブルで、何やら話し込んでたよ」
【ティガー】 それって、そいつらだけで話してたん? 他に誰か混じってなかった?
【GM】 「常連の魔術師が混じってたよ。あれは確か、失われた魔法を研究してるっていう、クラウスだ」
【ランディ】 代理の研究所長やな。
【ティガー】 そういうことか〜。
【ジーネ】 ケートのときのようにクラウスをそそのかして、ギルバードさん誘拐の手伝いをさせたんやな。
【ランディ】 じゃあ、魔術師ギルドに行って、リフェールに頼んでクラウスに会わせてもらおう。
【GM】 キミたちは魔術師ギルドのリフェールのところに来た。
しかし、クラウス所長代理は今日は来ていないとのこと。
【ティガー】 クラウスの家はどこかわかる?
【GM】 わかるよ。どうやら、魔術師ギルドの敷地内に住んでるようやね。
キミたちは、リフェールからその場所を聞き出した。
【ジーネ】 いるかどうかはわからないけど、とにかくクラウスの家に行ってみよう。
ところでカバンタ、キミはどうしてるの?
【カバンタ】 ん、いまは釣り糸を垂らしてやな、川の流れを見てる。
【GM】 で、やかんとか長靴とか釣り上げて喜んでるんやろ。
【カバンタ】 大漁、大漁。
【ジーネ】 こいつは〜。
【GM】 さて、ティガーたち3人はクラウスの家まで来たよ。
【ランディ】 玄関をノックしてみよう。
「クラウスさん、いますかぁ?」
【GM】 本人が玄関から顔をのぞかせた。
「私がクラウスだが、キミたちは?」
【ティガー】 ずばり、聞く!
「おまえ、黒ずくめと会ってたやろ。そんで、ギルバードを誘拐させたはずや」
【GM】 「『はず』と言われてもね。何のことだか、さっぱりわからんよ」
【ジーネ】 証拠がないんだよな〜。
【ランディ】 じゃあ、「〈センス・ライ〉の前でも同じ答えができますか?」と、尋ねる。
【ジーネ】 誰が〈センス・ライ〉を使えるのよ?
【ランディ】 そこは、リフェールのコネでなんとか(笑)。
【ティガー】 ランディのコネで、ギルド長にかけてもらうとか。
【GM】 あんなのコネとは言わん! ただ、見かけただけやん(笑)。
では、クラウスの顔はみるみる険しく歪んでいく。
「奴には代償を支払わせるだけのことだ」
【ジーネ】 代償?
【ティガー】 おまえが所長代理になる代償で、ギルバードを差し出したんやろが。
【GM】 「違う!」と、クラウスは激しく否定。
「私は、世界からすべての悲しみを消し去るという、彼らの理想に共感を覚えたのだ」
クラウスはいつも2番手だった。ギルバードとは実力伯仲、知識の面でも劣っていたわけではないのに、なぜかいつも肝心なところで負けてしまう。
空席ができた導師への昇進試験のとき、クラウスは人生のすべてを賭けるつもりで、これ以上ないというくらい猛勉強し、万全を期していた。
しかし、受験直前に故郷の母親が病に倒れ、看病のために帰郷しなくてはならず、チャンスを逃した。ちなみに、ギルバードはそのとき導師になった。
それ以来、クラウスは何をしてもうまくいかなくなった。
何度か昇進試験を受けたものの苦杯をなめ続け、後輩には追い抜かれ、ギルバードには大差をつけられた。
やがてギルバードは自分の研究施設を与えられるようにまでなり、クラウスはその助手としての日々を送ることになった。
【GM】 「たった一度の不運で私の人生は大きく狂い、私の不運で奴は幸運を掴んだ。その罪を贖わせて、何が悪い!」
【ジーネ】 幸運なのが罪だなんて……それって、ひがんでるだけじゃん。
【カバンタ】 同情の余地なし、やな。
【ランディ】 とりあえず、こいつには自首を勧めるけど、その前にギルバードがどこに連れていかれたのか、聞いてみる。ファンリーもそこにいるかも知れへんし。
【GM】 「ランダースだ」
【ティガー】 “邪神の眠る島”か!
【GM】 「さて、キミたちにはここで消し炭になっていただこう。なに、魔法実験中の事故だとでも言っておけば、大した罪にはなるまい」
【ジーネ】 往生際の悪いやっちゃ。
【カバンタ】 ついに戦闘やな。さ、ちゃっちゃとやってくれ。
【ランディ】 で、自分は何してんの?
【カバンタ】 そりゃもう、この国のゆく末を憂いつつ、川の流れを見てる。
戦闘自体はわずか4ラウンドで決着がついた。しかし、クラウスの唱える強力な〈ファイア・ボール〉の前に、冒険者たちは危うく消し炭になるところだった。
ティガーたちは苦しみながらもなんとかクラウスを倒し、生け捕りにすることができた。
そしてクラウスを魔術師ギルドに突き出し(後の処分はギルドに一任することにした)、ギルバード失踪事件の解決の謝礼として、3000フィスを受け取った。
【ジーネ】 だいぶまとまった金が入ってきたな。これで念願の邪神の眠る島へ渡ることができるかな。
【ランディ】 どのみちファンリーを助け出すためには、邪神の眠る島に渡らんとアカンしな。
【ティガー】 あ、そうや。半端の70フィスを、食あたりを起こした老漁師の家の玄関の前に、そっと置いとこうっと。「蟹を食べさせてごめんなさい」って。
【GM】 すると、何も知らない老漁師夫婦は、「世の情けが身にしみるなぁ、ばあさんや」「ほんにのう。ありがたや、ありがたや」とか言うてるんやな。
それじゃ、本日はここまでということで。