▽ ファンリーの朝帰りの事 | ▽ 貧民街での捜査の事 | ▽ 岸壁の告白の事 |
【GM】 さて、キミたちは劇場の外に出ました。日が沈んだ空は藤色、そろそろ星もまたたこうかというところ。
ケートは、他の劇団員とともに劇場に残ってます。公演はないけど、いろいろあるんでね。
【ジーネ】 ところでカバンタくん、ちょいちょい。ケートが喉を潰した理由ってのを、盗賊ギルドで調べることはできんかね?
【カバンタ】 そら、できるやろ。
【ジーネ】 行ってきて?
【カバンタ】 こんな夜中にか。もう、メシ食って寝ようとしてるのに。
【ジーネ】 シーフに夜中もなにもあるかぃ〜。
【GM】 ちなみに、盗賊ギルドは貧民街にあります。街門が閉められてるから、いまは行けないね。
【ジーネ】 シーフなら、抜け出して行けって。
【GM】 見つかれば、ただではすまないけど。
【ティガー】 明日、広場で公開処刑されてたりして。
【カバンタ】 今日はもう寝るからな。明日、覚えてたら行ってきてやる。
【ランディ】 しまった、ケートにおじいさんの手紙を渡さないと。
そういえば、ケートが喉を潰したとき、ファンリーは彼女から何か相談とか受けなかったんですか?
【GM】 相談というか、声が潰れてしまってオーディションを断念した、ってことは聞いた。しかも、その後も治らないと。
【ティガー】 モニカがケートの声を潰した。だから、モニカを殺そうと思った。キラーン! 俺、すごいやん。
【ジーネ】 とりあえず、宿屋に戻ろう。
【ランディ】 その前に、ケートに手紙を渡します。
【GM】 はい、受け取りました。きっと、涙しながら読むんでしょうな。
では、キミたちはわらわらと宿屋に戻って行きます。
【ティガー】 今日はエビフライだー。タコさんウィンナーもね。推理をしたら、疲れたぜ!
【ジーネ】 じゃあ、途中で食材を買っていこう。
【GM】 だいたい日没で閉店になるから、急いで買わないと間に合わないかも。というわけで、閉店間際の露店であれこれ材料を買いながら、宿屋に帰ってきました。
【ジーネ】 じゃあ、ちゃっちゃと晩ご飯を作ります。エビフライランチをみんなのメニューにしました。全員一緒にしとかないと、作るの大変なのよ!
【ティガー】 おかんがおるみたい。
【カバンタ】 また、なごみ系か〜。なんか、なしくずし的に仲間になってるな〜。
【ランディ】 相手の素性もよく知らないまま。
【ティガー】 ファンリーのことは知ってるで。
【GM】 んじゃ、晩メシを食べながら、簡単に身の上話でもしてれば?
【ランディ】 僕はセフェリア王国のファノンから、各地でコネを作りながら旅してきました。
これまで作ったコネは数知れず、有名人やそのそっくりさんのサインをもらいまくりました。
【GM】 そっくりさんとわかってて、サインもらってるんやな。鞄を開けたら、変なコレクションがいっぱい入ってそう。
【ジーネ】 私は、オレンブルク王国の名もない片田舎、エルゴン村の出身。
各地でメイドのバイトして路銀を稼ぎながら、旅をしてきました。最終的には、故郷の神殿を継がなきゃいけないんで、その修行のための旅です。
【GM】 神殿を継ぐというよりも、この旅が終わったら立派なメイドになってそうやな。
【ジーネ】 ついでに、お婿さんも探さんといかんしな。
【ティガー】 メイドは花嫁修行なのね。旦那を探してるんなら、カバンタなんかどうだい?
【ジーネ】 神殿を継ぐ者が、シーフと結婚するのはどうかと……。それに、好みじゃない。
【ティガー】 じゃあ、ランディはどう? プリースト同士でちょうどいいじゃないですか。
【ジーネ】 でも、宗派が違う。
【GM】 ずいぶん宗派にこだわるけど、光の神同士ならあんまり気にせんでいいよ。
で、ティガーは?
【ティガー】 俺は──あ、言うたらアカンねん。
【ジーネ】 「ひ・み・つ♥」なの?
【ランディ】 人に言えない過去を持ってるとは……。
【ティガー】 「いや〜、オレンブルクのメシはうまいって聞いてさ、あっはっは」って言うとこ。オレンブルク王国の田舎の村出身、ってことで。
【カバンタ】 カバンタはテーブルに突っ伏して眠ってる。
【GM】 それでは、夜も更けてきたので、キミたちは2階の寝室に行った。
【ジーネ】 私は後片付けをすませてから、眠ります。カバンタには、風邪をひかないよう、毛布をかけといてあげます。
【GM】 ティガーたちは、階下から届くカチャカチャという洗い物の音を聞きながら、眠りに落ちた。
翌朝、目を覚ますと、トントントンという朝食を作っている音が、階下から聞こえてくる。
【ティガー】 いいですな〜。でも、もうちょっとベッドでもぞもぞしとく。朝はパンとベーコンエッグとコーンスープ希望ね。
【GM】 1階の酒場のテーブルで寝ていたカバンタは、2、3回体を痙攣させた後、目を覚ました。口もとのよだれを拭いながら、寝ぼけ眼で辺りを見回すと、厨房でジーネが朝食の準備をしている。
【カバンタ】 起きた! じゃあ、ベーコンエッグをつまんどく。はぐはぐ。
【ティガー】 俺のベーコンエッグ〜!
【GM】 盛りつけ終わってカウンターに置いてる先から食べるもんだから、ジーネが「おかしいわねぇ。作っても作っても増えないわ」とか言ってそう。
【ジーネ】 言うわけないでしょうが!
「つまみ食いしてないで、顔を洗い終わったら、朝食をテーブルに並べてくださいな」
【カバンタ】 じゃあ、並べさせられる。こっちのテーブルにひとつ、あっちのテーブルにひとつ、みんなバラバラ〜。
【ジーネ】 1箇所にまとめときなさいよ。
【GM】 その頃、2階で寝ていた3人も降りてきた。ファンリーはどうしようかな。もう、門は開いてるし、すぐにおいとましようか。
【ジーネ】 せっかくファンリーのぶんも作ったんだし、食べていきなさいな。いちおう、「うちの宿屋に泊まって何も間違いはなかった」というようなことを手紙に書いて、持たせてあげるから。シルファスの司祭の弁護だし、少しは怒られずにすむかもよ。
【GM】 それじゃ、お言葉に甘えましょう。
では、なごやかに朝食を食べ、新たな1日が始まります。ファンリーはジーネの弁護の手紙を受け取り、ミフォア神殿に帰っていきます。
「どうもお世話になりました」
【ジーネ】 ほら、ティガー。送ってってあげなさい。
【ティガー】 わーい、ふたりで歩こう。
【GM】 それを出勤途中の隊長に見られた。ピキ〜ッ!
【ティガー】 「やっ、朝から大変だね。俺、彼女を送って行かなきゃいけないんだ。じゃあな!」
【GM】 立ち去るティガーとファンリーの背後で、隊長はガクっと膝をついてうなだれている(笑)。
さて、神殿に行くと、その入口にイリア司祭が仁王立ちしていた。三角メガネが朝日に輝く! 無断外泊で、年頃の若い男の子と一緒に朝帰りしてるんやから、それはもう、すさまじい怒り。
ティガーまで怒られるよ。
【ジーネ】 私の手紙は役に立たなかったのかな?
【GM】 いちおう、隙を見て手紙を渡したんやけどね、「モニカがあんなことになって、あなたまで帰ってこなくて、どれほど心配したと思ってるざますか!」と、涙ながらに怒られてる。
で、ティガーも、「あーたもあーたざます。こんな幼いミフォアの聖女に、て、て、て、手を出すなんて!」と、怒鳴られてる。
【ティガー】 まだ、手はつけてねーよ!
【GM】 「『まだ』とは、どーゆー意味ざますか!?」と、神殿の前で怒られ続ける。道行く人の視線を集めながら。
【ティガー】 あーあ。
【GM】 その頃、ジーネは朝食の後片付けをしたり、ベッドを直したりしてます。
カバンタとランディは、1階のテーブルでお茶を飲みながら、「いや〜、今日もいい天気ですな」「まったくですな」と、くつろいでる。
【ジーネ】 くつろいでないで、盗賊ギルドに行ってきてよ、カバンタ。
【カバンタ】 じゃあ、貧民街へ辻馬車で行く〜。
【GM】 では、運賃は180フィスね。
ちなみに辻馬車の終点は、オレンブルク南区と貧民街を隔てる『正門』前の広場。。そこからは歩きになる。
そんじゃ、約1時間後に正門広場ターミナルに到着します。
【ランディ】 話し相手もいなくなったし、僕はオーシュ神殿にでも行ってみましょうかね。
【GM】 外に出たとき、精神ダメージから立ち直った隊長と出会った。
【ランディ】 衛兵の詰所はオーシュ神殿の隣でしたね。じゃあ、「途中まで、ご一緒しませんか」と言う。
【ジーネ】 そのランディに、宿の出口から「いってらっしゃ〜い!」って手を振る(笑)。
【GM】 その瞬間、隊長からビキーっと殺気が放たれる。並んで歩くランディは、ずっと憎悪のオーラを感じているよ。
では、無言のまま、戦神オーシュ神殿にやって来て、ランディは隊長と別れました。
神殿の入口では、マッチョな司祭が「ようこそ、兄弟」と迎えてくれる。むきっ。
【ランディ】 そ、そんな神殿なんですか。
えーっと、昨日の劇場の事件について何か噂が出てないか、神殿の中で聞いてまわりたいんですけど。
【GM】 神殿の中では、男たちがスポーツジムさながらに、あちこちで筋肉トレーニングに励んでいる。その熱気と男たちの汗のにおいは、ランディに郷愁の念を抱かせる。
ランディが話しかけると、夏だというのに体から湯気を立ちのぼらせている男性信者が、スクワットしながら「モニカちゃん、死んだんだって? ショックだな〜」と答える。
「オレ、もう少しでチケット取れそうだったのに、しばらく劇場は閉鎖だったよ〜」
【ランディ】 街に出回ってるのは、その程度の噂か。
【GM】 他に聞きたいことがなければ、リング上でスパーリングしてた男性信者が、「よう、兄弟! いっちょ、やってみねーか」と誘ってくるよ。
【ランディ】 じゃあ、ここでしばらく汗を流して、それから劇場に行きます。
【GM】 さて、その頃、ティガーとファンリーは、ようやくイリア司祭の説教から解放された。
ファンリーは、ティガーに「ありがとうございました」と頭を下げ、イリア司祭の後を追って、神殿の奥へ消えた。
【ティガー】 じゃあ、劇場に行ってみようかな。途中で宿屋に寄って、ジーネに「一緒に劇場へ行く?」って聞いてみる。
【ジーネ】 掃除、洗濯もひと息ついてるし、買い物のついでもあるから、行きましょか。
【GM】 じゃあ、買い物袋を持って行くんだね。
オーシュ神殿のそばを通りかかったとき、首にタオルを巻いたランディが出てきます。
そのランディに、上半身裸のマッチョマンが「明日も来いよ、兄弟!」とか声をかけてる。
【ランディ】 「明日は負けませんよ」
【ティガー】 いったい、何の神殿なんやろ……。
【GM】 3人が合流した頃、カバンタは貧民街に入った。
貧民街になると、同じオレンブルクでもまったく異なる顔を見せる。
街壁内の居住区と違って、バラック小屋や長屋のような建物が、まったくでたらめに、雑多に建てられている。風呂敷マントの子供たちが遊ぶ細い路地は、複雑に入り組んでいて、知っていないとすぐに迷いそう。
カバンタは、シーフの勘で、なんとか盗賊ギルドまでやって来た。
スルメをくちゃくちゃと噛んでる、人相の悪い男が「何の用だ?」と出迎える。
【カバンタ】 「劇場のモニカの付き人のハーフエルフのケートの声が出なくなった理由を、調べに来たんだが」
ざっくり、いまわかるかな? 210フィスを手渡す。
【GM】 男は210フィスを受け取り、「調べてやろう」と言う。情報が手に入ったら、カバンタの泊まってる宿屋に届けよう。
「まいどあり〜」くちゃくちゃ。
【カバンタ】 金がいっぱい飛んだので、帰りは徒歩で宿屋に向かう。
【GM】 その頃、ティガーたち3人は劇場に着いた。
劇場はしばらく閉鎖されるので、予定していた公演はすべて中止。払い戻しの列ができてるよ。
【ティガー】 列に並んで払い戻し〜。
【ランディ】 同じく。
【ジーネ】 並ぶのイヤだから、シルファス神殿に行っときますわ。神殿に行って挨拶して、帰りに買い物して、晩ご飯の用意をする予定。
【GM】 シルファス神殿は宮廷広場の南にあったね。じゃあ、広場のあたりで、南から歩いてくるカバンタに出会ったよ。
【ジーネ】 「どうでした?」と聞いてみる。
【カバンタ】 「ん、どうも」と言って、宿屋に帰る。
【ランディ】 会話になってない(笑)。
【ジーネ】 キッと睨んで、神殿に行く。カバンタの夕食には、マスタードをたっぷり入れてやろうかしら。
【ティガー】 肉に入れたらアカンで。俺が取るから。
【ランディ】 ところで、ケートに会うことはできますか?
【GM】 ケートは、今朝、自宅に戻ったらしいよ。ちなみに、貧民街に住んでるそうです。
【ランディ】 じゃあ、劇団員にだいたいの場所を聞いて、そこに行ってみましょう。
【GM】 ジーネが神殿でお祈りをすませて外に出たとき、ちょうど貧民街に向かうランディに出会った。
【ジーネ】 「どこ行くの〜?」
【ランディ】 「ちょっと、ケートさんに会いに」
【ジーネ】 「じゃあ、私もケートさんのところに行こっかなぁ」と合流します。
【ティガー】 俺はミフォア神殿に行って、ケートのじいさんに会ってくる。
【GM】 途中でティガーが宿屋を覗いてみると、ひとり、酒場でボ〜っとしているカバンタが、テーブルをはぐはぐかじってた。
「ひもじい〜」
【ジーネ】 自分でご飯を買ってくるなりするつもりはないんか。
【カバンタ】 だって、連絡待ちやからな。おとなしくしとらんと。
【GM】 ティガーはミフォア大神殿に来たよ。
この前、泊めてもらった部屋に、おじいさんたちはいた。ぷるぷるぷる。
【ティガー】 おじいさんたちは、ケートの声が潰れた理由を知ってる? ってか、声が潰れてることを知ってるの?
【GM】 知らないでしょう。ケートの手紙にはそんなこと書いてなかったし、ランディからも聞いてないから。
【ティガー】 じゃあ、まあ、いいわ。
【GM】 そんじゃ、おじいさんは「まあ、お茶でも飲んで、ゆっくりしていきなされ」と言って、お茶を注いでくれる。
ぷるぷるぷる……カチャカチャカチャ!
【ティガー】 こぼすなぁー!!
【GM】 その頃、ランディとジーネは貧民街をさまよってます。
噂に聞いた貧民街、どこがどこだかさっぱりわからない。街の人に尋ねまわって、ようやくケートの家にやって来た。
オンボロの長屋です。右から2軒目がケートの家。
【ランディ】 その扉の前に立って、呼びかけてみます。
【GM】 しかし、応答はない。
【ランディ】 出かけてるのかな。左隣の家に行って、ケートのことを尋ねてみます。
【GM】 そこは、木彫り師のじいさんの家。家の中では、ねじり鉢巻きをしたじいさんが、木鎚を振るって、一所懸命、何かを彫ってます。
「なんじゃねえ!?」カンカンカン!
【ランディ】 「隣のケートさんのことで、ひとつお伺いしたいんですけど」
【GM】 「あー?! よく聞こえねえよ!」カンカンカン!
「ケートがどーしたってぇ!?」
【ジーネ】 「どこに行ったか、知りませんかぁ!?」
【GM】 「なんか、出かけたみたいだぞぉ!」カンカンカン!
【ランディ】 「どこに行ったか、わかりますかぁ!? ケートさんがよく行く場所とか」
【GM】 「さあな! でも、酒場で俺とよく会うぜ!」カンカン……で、彫りおえた彫刻を見て、「ダメだ! 魂がこもっとらん!」と投げ捨てる。
そして、次の木に取りかかった。
【ランディ】 その酒場の場所を聞いて、行ってみます。
【GM】 それじゃ、酒場にやって来たよ。午後2時ぐらいかな。
まだ準備中で、マスターが忙しそうに支度をしている。
【ランディ】 マスターに、ケートが来なかったか聞いてみます。
【GM】 「ここ最近、来てないねぇ。それまでは頻繁に来てたんだけどね」
【ジーネ】 来るときは、いるもひとりで? 誰かそばにいなかった?
【GM】 「たいていひとりで、そこのカウンター席で飲んでるよ。そういえば5日ぐらい前、最後に来たときは、珍しく他の人間と一緒だったな。あそこの隅っこのテーブルで、何やら話しこんでたみたいだったよ」
【ジーネ】 一緒にいたのって、どんな感じのひとだった?
【GM】 「黒っぽい服装の男で、2、3人いたかな。見かけない奴らだったよ」
【ジーネ】 黒い服……あの黒ずくめと、なにか関係があるんだろうか。
【ランディ】 ケートさんって、普段はどんなひとなんでしょうか。
【GM】 「地味で目立たない、おとなしい娘だね。ジュノのオーディションを受けてた頃は、発生練習に励んでたよ。周囲に気兼ねなく練習できるよう、町外れの岸壁の上に出かけてたみたいだね」
【ランディ】 その岸壁に行ってみましょう。マスターにお礼を言って、店を出ます。
【ジーネ】 私は宿に帰ります。そろそろ、夕飯の支度をしなくては。
【GM】 いまは2時半ぐらいなんで、ジーネが宿に帰り着くのは、4時半ぐらいになるね。
では、ジーネは宿屋に向かい、ランディはマスターに聞いた岸壁へ行った。
岸壁には誰もいないよ。打ち寄せる波の音と、カモメの鳴き声が響くだけ。青い空には入道雲。
【ランディ】 絶景かな、絶景かな。
しばらく、景色に見とれておきます。たっぷり堪能したら、とりあえず、宿屋に帰りましょう。
【GM】 OK。
さて、一方その頃、ミフォア大神殿でおじいさんとなごんでるティガーに、通りかかったファンリーが声をかけてくる。なんか、出かけるみたい。
【ティガー】 「どっか行くの?」ぷるぷるぷる。
【GM】 「はい、ちょっと」
【ティガー】 「どこ行くん?」ぷるぷるぷる。
【GM】 じゃあ、ファンリーはこっそり耳打ちする。
ケートに呼び出されたらしい。しかも、なぜだか「ファンリーひとりで来てほしい」と。
【ランディ】 『ひとりで』とは、怪しい……。
【ティガー】 行く行く行く! こっそりとついて行く。鎧は着てないから、尾行とかしやすいはず。
【ジーネ】 シーフじゃないのに、尾行なんかできるの?
【GM】 試みることはできるよ。
じゃ、ファンリーは神殿の外に出た。
ティガーが目立たないようについてくと、そこに暗い顔をしたケートが待っていた。
【ランディ】 僕らとは入れ違いになってたんですね。
【GM】 ケートとファンリーは少し言葉を交わした後、連れ立って街のほうへと歩きはじめたよ。
【ティガー】 少し離れてついて行く。
【GM】 じゃあ、いちおうダイスを振ってみよう。通りを行き交う人は多いし、冒険者もたくさんいるので鎧が立てる音も多い。おまけにケートは素人なんで、1ゾロでなければ成功でいいよ。
【ティガー】 (ころっ)成功。
【GM】 (ころっ)ただし、ファンリーは気づいたみたい。
ティガーは振り向いた彼女と目が合った。
【ティガー】 びくっ!(笑) 指で「しーっ」ってする。
【GM】 ファンリーはうなずいて、何事もなかったかのようにケートについていく。
貴族街の南、宮廷広場に差しかかったとき、貧民街のほうから「支度しなきゃ、支度しなきゃ」と歩いてくるメイドと出会った。
ジーネにしてみれば、探してたケートが北街方面から歩いてくるのに出会ったことになるね。
【ティガー】 メイドに見つからんように隠れる。(ころっ)
【ジーネ】 (ころっ)気づいたちゃった。
【ティガー】 「バラしたら殺す」って目で脅す。
【ジーネ】 別にバラすつもりはないよ。ケートに「探してたんだけど」って、話しかけるだけ。
【GM】 ケートは目をそらしながら、「わたしに何の御用でしょうか」と言う。
【ジーネ】 「いや、私は用がないんだけど……」
【GM】 「それじゃ、急いでるので失礼します」と言い、ファンリーを伴って、再び貧民街方面に歩いて行く。
【ティガー】 尾行再開。メイドとすれ違いざまに、「晩飯、肉ね」と言っとく。
【ジーネ】 「まーまー、そう言わずに」と、ティガーの首をホールドしながら、一緒に行きますわ。(ころっ)
【GM】 それはいいけど、ジーネは鎧を着てたりする?
【ジーネ】 いまは着てませんよ。普通に暮らしてる街にいるわけですし。
【GM】 (ころっ)それなら、ケートは気づかない。ただし、やっぱりファンリーは気づいて振り向く。
【ジーネ】 ニコっと笑う。
【GM】 ファンリーは軽く会釈して、ケートについていく。
南の街門近く、魔術師ギルド南の宿場街に差しかかったとき、宿屋に向かうランディは、ケートと出会った。
【ティガー】 隠れろ、隠れろ。(ころっ)
【ジーネ】 (ころっ)
【ランディ】 (ころっ)僕はティガーたちには気づきませんでした。ケートは僕に気づいてますか?
【GM】 うん、会釈だけして、さっさと貧民街のほうへ行こうとしてる。
【ランディ】 じゃあ、黙ってついて行きます。
【GM】 それは尾行じゃなくて、単についていくんやね?
すると、ケートは立ち止まり、「何か御用でしょうか?」と聞いてくる。
【ランディ】 「あの、どこに行くんでしょうか?」
【GM】 「どこでもいいんじゃないですか?」
【ランディ】 えっと……じゃあ、とりあえず、立ち去ります。
で、適当な角を曲がって、隠れます。
【GM】 角を曲がった先に、ティガーたちが隠れてる。
【ランディ】 「皆さん、こんなところで何を?」
【ティガー】 「しーっ! 見てわかんねーのか?」
【ジーネ】 「ケートの様子がおかしいから、見張ってるのよ」
【GM】 ケートとファンリーは、正門を出て貧民街のほうへ去って行く。
【ティガー】 ついてく、ついてく。
【ランディ】 僕も、今度は見つからないように尾行しますよ。ちなみに鎧は着てるけど、ハード・レザーなんで大丈夫でしょう。(ころっ)
【GM】 (ころっ)その出目だと、やはりファンリーは気づく。ケートに気づいた様子はない。
【ティガー】 やるな、ファンリー。
【ジーネ】 じゃあ、3人で「しーっ!」。
【GM】 ファンリーはうなずいて、おとなしくケートに従って行く。
【ランディ】 素直な娘だなぁ。
【GM】 ケートとファンリー、そしてキミたち3人は、正門を出て貧民街を通り抜け、さっきランディが景色を眺めてた例の岸壁にやって来ました。
大きな岩がいくつか転がってるから、隠れて様子を見ることは可能やね。
時刻は午後4時半。ちなみに、ケートたちは岸壁の縁まで行ってる。
【ジーネ】 レンジャー技能があるんで、15メートルあたりまでこっそり近づきます。(ころっ)成功。
で、聞き耳を立てるよ。
【ティガー】 レンジャー技能はないんで、修正なしで20メートルまで。(ころっ)成功したけど、ファンリーには気づかれたかも。
【ランディ】 僕はヘタに動きません。近くの隠れやすい場所で、待機。
【GM】 とすると、ランディの位置は、ケートたちから30メートル離れた地点の茂みの中ね。
ジーネはレンジャー技能の[聞き耳]を使うんやね? なら、ケートの話す声が聞こえる。
どうやら、「ファンリーに行ってもらいたいところがある」みたいなことを言ってるようだ。
そして、そう言いながら、懐からダガーを出した。
「おとなしくしててくれれば、悪いようにはしない」
【ティガー】 ファンリーは何も言わんの?
【GM】 いちおう、どういうことかと尋ねる。
するとケートは、「これは取り引きの報酬だから協力して」というようなことを言う。
【ティガー】 なるほどー、黒ずくめはファンリーが欲しかったのね。キラーン!
【ジーネ】 隙を見て岩陰から飛び出す。ダッシュでファンリーたちのとこに行く。
「みんな、出てこ〜い!」
【ティガー】 ダッシュ!
【ランディ】 僕はいつでも飛び出せるようにして、待機します。
【GM】 ティガーの脚力なら2秒ほどで、ジーネなら3秒でケートと接敵状態になる。
が、ケートまでの距離5メートルというところで、ケートはファンリーを抱えてその首にダガーを突きつけて、「動かないで!」と言うよ。
【ティガー】 立ち止まる。
【ジーネ】 立ち止まる。そして「ファンリーをどうするつもりです!?」と、びしっと言う。
【GM】 「何もしない。取り引きの報酬として、引き渡すだけ」
【ティガー】 「引き渡した後に、何されるかわかんないじゃん」
【GM】 「危害を加えるようなことは、絶対ないはず。あの人たちは、悪い人じゃないから。世界を救うために、ファンリーが必要なだけ」と答える。
【ジーネ】 店長を殺したような奴らが、いい人なわけないでしょ!
【GM】 取り引き相手が店長を殺した人間かどうかなんて、ケートにも誰にもわからない。黒ずくめと取り引きした、ってのもキミたちの想像やんか(笑)。
【ティガー】 それはいいけど、その取り引きって、事故に見せかけてモニカを殺してもらうことか? 声が潰れたのは、モニカのせいだな?
【GM】 それでは、せっかく波の音が聞こえる岸壁にいるんやし、ケートは静かに告白し始めよう。
ティガーの推理は、だいたい当たってる。当初、声が潰れた原因はケート自身にもわからず、単なる病気だと思ってた。
そして女優の夢は絶たれたけれど、ケートはどうしても演劇に関わっていたかったので、脚本の勉強をしながら、小間使いとして雇ってもらってたんやね。
ところが、ある日、大盛況の公演の後のこと──。
【ジーネ】 お約束やね。楽屋のドアから、モニカの話し声が聞こえてきたんでしょ。
【GM】 そう。ケートは、モニカとハイジの会話を聞いてしまった。
どうやらモニカは、遅効性の毒を盛ったらしい。そうしてケートの声を潰し、まんまと栄光をその手に掴んだと。
ハイジはそれを聞いて、「うまいことやったわね。ハーフエルフなんかに、舞台を汚されたくないもん」と、答えてたらしい。
【ティガー】 だから、ふたりとも殺させたんだ。
【GM】 その復讐の報酬として、このファンリーの引き渡しと、劇好きな魔術師──〈センス・ライ〉でカバンタを取り調べた、レンツォ・カザーリ先生ね──を、事件の混乱に乗じて誘拐させる手引きをしたという。
【ジーネ】 「いくら復讐のためとは言え、人を殺していいわけがない!」
【GM】 じゃあケートは、隊長が言ってたようなことを言う。
「あいつの幸せのために、わたしは不幸にされたのよ! 己の幸福の糧にされる者の苦痛を、思い知らせただけさ!」
【ランディ】 そろそろ僕も出ていこうかな。
「そんなことだろうと思ってましたよ」
【ジーネ】 こ、こいつ……。と、内心、握り拳を握っとこう。
【GM】 とくにそっちが何もしないなら、語り終えたケートは、ファンリーを抱えたまま後ろに倒れる。
岸壁の縁に立ってたんで、当然、後ろは海。ふたりは海に落ちたよ。
【ティガー】 追っかけたれー!! 飛び込む!
【GM】 飛び込むんかぃ!? 崖の高さは7メートルほど。ティガーは海に飛び込んだ。
水面に顔を出すと、1艘の小舟に乗った黒ずくめの男が、ファンリーを引き上げてるところ。
【ティガー】 泳いで小舟に行く。
【GM】 すると、ケートがティガーにしがみつく。キミはうまく泳げない……どころか、ヘタしたら溺れるね。
ファンリーを乗せた小舟は、岸壁沿いに、南西に向かって去ってゆく。
【ジーネ】 「ファンリー、飛び下りなさーい!」と叫ぶ。
【GM】 「わたし、泳げないんですー!」との答え。
【ランディ】 すべて手筈どおりって感じですな。ファンリーが泳げないことまで、見越してたのか……。
【ティガー】 俺はケートを振り払うぞ。(ころっ)成功。
黒ずくめに向かってスピアを投げつける! (ころっ)
【GM】 そんなの持って、飛び込んでたの? 足場はないも同然やし、その出目だと届きもせずに、海中に投げ捨てられたようなものやね。
【ティガー】 ちっくしょー。泳いで追いかける!
【GM】 しかし、さすがに舟には追いつけない。引き離される一方だ。
【ティガー】 ファンリーに、「きっと、助けに行くからなー!」と叫ぶ。
【GM】 ティガーの名を呼ぶファンリーの声は、どんどん遠くなって行く。
その後、ティガーと、復讐のために友人を売って放心状態となったケートは、ジーネとランディにロープで引き上げられた。
冒険者たちは、ケートから黒ずくめたちのアジトなどを聞き出そうとしたが、彼らの正体すらはっきりと知らないケートには、答えようがなかった。
とりあえず、街に戻ることにした一行は、途中、魔術師ギルドに寄り、門を固める警備兵にレンツォ・カザーリ誘拐の真相を話し、ギルドに知らせるように頼んだ。そしてケートの身柄は、(例の隊長がいるところとは別の)詰所に事情を説明して、引き渡した。
ティガーは、ミフォア大神殿のイリア司祭に、ファンリーが連れ去られたことを知らせに行った。話を聞いたイリア司祭は、気を失って倒れた。
そして、一同は宿屋に戻ってきた。
【GM】 もう、すっかり夜やね。宿屋に入ると、カバンタがいるよ。
【カバンタ】 いらっしゃいませ〜。
【ジーネ】 あんたが言うのか?!
【ティガー】 けっきょく、カバンタって、何をしてたん?
【カバンタ】 ずっと、盗賊ギルドの報告を待ってた。何の役にも立たんかったけど(笑)。
【ジーネ】 とりあえず、ファンリーを助ける手立てを考えなきゃいけないねぇ。
【GM】 それならば、次のセッションまでにゆっくり考えといてね。とりあえず、今回はここまでということにしよう。