≪REV / EXIT / FWD≫

§久遠の旅人:第6話§

歴史を旅する者

著:龍神裕義 地図:もよ
▽ おかしな世界 ▽ 砂漠の旅 ▽ 最果ての村

おかしな世界

 さて、世界放浪編がひとまず終了し、今回からは新しい章に突入します。
 ここで気分を一新するためと、参加プレイヤーが3人に減少したために、プレイヤーの持ちキャラを交換してもらい、一種のいわゆるプレロールド・タイプのゲームに変わりました。
 出てくるキャラクターはこれまでと同じですが、その口調、性格、思考パターンが大きく変化しています(笑)。

【GM】 さて、省地方・誨(カイ)の魔導協会が管理してる魔法の竜巻に乗ったキミたちは、気がつくと、遺跡の中に立っていた。そう、そこはオレンブルク王国の北東にある大遺跡、いわゆる落ちてきた天空都市ですわ。
【カノン】 アレクラストでいうところの、『堕ちた都市』やな。そのまんまやけど。時刻は?
【GM】 真昼やね。いい天気やわ。ちなみに、ムードロ・ペーニンの姿が見えない……。
【ルミオス】 あーあ、はぐれてしまった。じゃあ、街道を通ってオレンブルクに帰ろう。1週間ほどで着くんやろ?
【GM】 そやな。ま、街道を魔物に襲われたりすることもないやろ。途中には宿場もあるし、快適なもんや。てくてくと街道を旅するキミたちは、とある宿屋で1泊することになった。
【カノン】 そりゃ、泊まったりもするやろな。
【GM】 そして、そこの酒場で夕飯を食べてると、ドヤドヤと入ってくる一団があるわけや。3人ほどの旅人ふうの男たちやね。キミたちの姿を見ると、「おお、キミたちは冒険者!」と声をかけてくる。
【バルバッツァ】 そうじゃ。
【GM】 「おお、やっぱり」と嬉しそう。じつはこのひとたちは、メカリア王国からやって来た、武器・防具職人であるらしい。この宿場の手前まで別の冒険者たちに護衛をしてもらってたんだけど、その冒険者たちは天空都市の遺跡に行くらしく、その途中までの契約になってたんでさっき別れたそうだ。
【ルミオス】 ああ、その冒険者、うちらが竜巻で着いた場所に行くんやな。
【GM】 で、職人たちはもうちょっと旅せんといかんから、もしよかったら、護衛についてくれんかと申し出てくるわけや。
【ルミオス】 どこまで行くの?
【GM】 カルファン王国の南端にあるカリーニョ村というところです。
【ルミオス】 えっと、地図、地図……うわ〜っ、カルファン王国ってめっちゃ北やん!(笑)

【カノン】 えらい遠いやんか。
【バルバッツァ】 まあ、街道沿いに行けばそんなに危険じゃないし、楽に護衛できるんやろ?
【GM】 それがねぇ、ダンフリーズ王国のハーストという街と、トロワ王国の王都ルクルーゾの間から北西に進路をとって、荒ぶる砂漠を越えていかんとアカンのやわ。
【ルミオス】 なんでぇな。
【バルバッツァ】 そんな危ない……。
【GM】 えーっとね、じつはロットバイル王国を通るほうが、もっと危なかったりするから(笑)。
【カノン】 情勢が悪い、ってことやな。
【バルバッツァ】 でも、砂漠越えって危険やなぁ。砂漠で何か出そう。
【GM】 危険やから「護衛してくれ」って言うてるんやんか。
【カノン】 それはいいけど、砂漠で迷わん方法はあるんかい?
【GM】 レンジャー技能の持ち主がいてくれれば、大丈夫。
【カノン】 ああ、カノンが持ってるな。2レベルほど。
【ルミオス】 報酬は?
【GM】 「ひとりに1日20フィス支払おう」。日数は予定通りいけば85日で到着するらしい。つまり、1700フィスってことやね。で、無事に目的地に着けば、ボーナスでひとりに500フィスを支払う。
【カノン】 必要経費はどうなるの?
【GM】 日給の中に含まれてる。ただ、宿に泊まる場合の宿泊費は、職人側が面倒みてくれるらしい。つまり、食費や旅の道具なんかは日給で買ってくれ、ってことやな。
【ルミオス】 帰りはどうすんの?
【GM】 さあ、自分らで勝手に帰れば?(笑) 冒険者やろ。
【カノン】 まあな。とりあえずカノンは戦神の司祭やし、受けてもいいと思ってるよ。勇気を持って生きれば大丈夫やねん。
【バルバッツァ】 あたしも異存はないけど、どうしますか?
【ルミオス】 じゃ、行こう。
【GM】 それでは翌朝出発して、まずはオレンブルク王国の王都オレンブルクへ向かいます。……はい、着きました(笑)。ここでさらに2人の武器職人と合流するから、3日ほど滞在することになる。その間したいことがあったら、やっといてくれ。
【ルミオス】 じゃあ、使い魔を召喚する。カラスね。
【カノン】 召喚の儀式って何日かかるんやったっけ。出発までに間に合うか?
【GM】 召喚の儀式は3日かかる。ギリギリやね。この計算し尽くされたシナリオの塩梅!(笑) じゃ、ルミオスは2D振ってな。1ゾロなら失敗やから。
【ルミオス】 ウソ? ダイス振るんや。(ころっ)1ゾロっ! あははははは、カラスおらんかってん、あはははは(笑)。
【GM】 何を寝ころんでるねん、起きろ(笑)。
【ルミオス】 だって、おもしろ過ぎ〜! 1ゾロ出たぁ!(笑)
【カノン】 自分の失敗でそこまで笑えたら、幸せなもんや。
【GM】 つーことで、召喚の儀式は失敗。3日間の苦労が水の泡。しかも、ソーサラーのレベルが上がるまでは、再チャレンジできない。
【バルバッツァ】 かわいそ〜。
【ルミオス】 あー、疲れた。疲れ損。
【カノン】 その間にカノンは、オーシュ神殿にお参りに行っておこう。
【GM】 おお、司祭らしい行動やね。するとカノンは、なんか神殿がちょっときれいになってるような気がする。記憶にあるものよりね。
【バルバッツァ】 建て直したんやろか。
【カノン】 きっと、金持ちからのたくさんの寄付があったんやろ。寄付で新しく壁を塗り替えたんや、とカノンは思う。
【ルミオス】 時代が古いんとちゃうの?
【バルバッツァ】 竜巻で時空を越えた、ってこと? あ、あたしは盗賊ギルドに行ってくるよ。「ひっさしぶり〜」
【GM】 でも、ギルドにいるのは知らんひとばかり。「なんだ、てめえは」とか言われるよ。
【バルバッツァ】 じゃあ、「ちぇ、せっかく挨拶に来たのによ」つって、泊まってる宿屋に帰る。
【カノン】 神殿も知らんひとばかり? いちおう、カノンはここの出身なんやけど。
【GM】 そうやな、面識のないひとばかり。まあ、同じオーシュの信者ということで、邪険に扱われたりはしないけど。
【カノン】 う〜ん、たぶん私らがいた時間と大きく離れてるんやろけど、過去に来たのか、未来に来たのか判断がつかんなぁ。
【GM】 他にすることはありますかね?
【ルミオス】 別にないよ。出発しよう。
【GM】 そんじゃ、5人になった武器職人の護衛ということで、みんなは故郷のオレンブルクを跡にした。街道をてくてく進んで行くこと60日。途中、ちょっとしたトラブルがあったりしながらも、無事に荒ぶる砂漠の入口までやって来ました。砂漠といっても、礫砂漠ね。石とかがゴロゴロしてるよ。
【カノン】 いよいよ砂漠か〜。
【バルバッツァ】 砂嵐とか吹き荒れてる?
【GM】 もちろん。この砂漠には常に複数の竜巻が徘徊してるから。
【ルミオス】 うわ〜。えらいこっちゃ。
【バルバッツァ】 そんなん追われたら、逃げなアカンやん。
【GM】 特に、年に1度現れるという巨大な竜巻は、時空の狭間にいる怪物『シルフイーター』が引き起こすといわれている。
【バルバッツァ】 それきっと、中心に入ると何かあるんや。
【カノン】 ちょっと待った! その危険な砂漠を越えるのは、ロットバイルって国の情勢が悪化してるからやんな?
【GM】 うん、そう。
【カノン】 いま気づいたんやけど、そのロットバイルの情勢って、我々のもともとの時間ではどんな感じになってたん? また時間軸の話に戻してしまうけど。
【GM】 自国以外の事情を知りたいわけね。それじゃ、セージ技能でチェックしてみよか。
 ──おっと、ルミオスが違和感を覚えたみたいだね。つーかね、これがルミオスが現代のものとして知ってる、オムスク地方の地図(笑)。

【ルミオス】 あれ? ロットバイル王国なんてない?? えっ、さっきの地図とぜんぜん違うねんけど。ダンブリーズ王国が南からニョ〜ンと伸びて、でかくなってる!(笑)
【カノン】 いちおうカルファン王国はあるのか。
【バルバッツァ】 護衛してあげてる武器職人に、「事情を説明しろ」って言う。
【GM】 事情は説明したはず。カルファン王国のカリーニョ村に行かなきゃいけないという事情があるから、キミたちに護衛してもらってるの。
【バルバッツァ】 でも、あたしたちはロットバイル王国なんて知らない。
【GM】 今さら、そんなの知らないよ(笑)。だって、引き受けたんはキミたちやろ?
【ルミオス】 ってゆうかさ、今、過去にいるの? 未来にいるの? このダンフリーズ王国がニョ〜ンと伸びたんって、いつ頃?
【カノン】 今いるのが過去の世界なら、歴史の知識で知ってるかも知れんってことやな。
【GM】 じゃあ、歴史チェックしてみよう。おお、6ゾロか。ならば、ほぼ完璧に、ルミオスはオムスク地方の歴史の知識を持ってる。
 ダンフリーズ王国が、キミの知ってるレムリア暦541年の形になったのは、その7年前の534年のこと。
 ダンフリーズに攻め込まれ、旧カルファン王国領まで撤退したロットバイル王国が、生き延びた旧国の王子の起こしたクーデターによって滅亡し、『14年戦争』という大戦争が終結した年。
【ルミオス】 少なくとも、十四年戦争よりも前っぽいな、今いる世界は。
【カノン】 前やろな。「旧カルファン王国領まで撤退」と言うからには、その時点で、カルファン王国はロットバイルの物になってるはずやから。それが存在してるんやから。
【バルバッツァ】 十四年戦争についての知識はないの?

砂漠の旅

【GM】 6ゾロやから、知ってるでしょうな。
 十四年戦争は、レムリア暦520年にロットバイル王国がカルファン王国に侵攻して、それを併合したことから始まった戦争。主にオムスク地方北西部で行われた戦争で、邪神の眠る島でも戦いがあったほど。
【カノン】 けっこう広範囲で戦争してたんやな。
【GM】 そうだね、オレンブルク王国ですら、陰ながら参加してたぐらい。オレンブルク以東は、ほとんど無関係やったけどね。
【バルバッツァ】 陰ながら、ってどーゆーこと?
【GM】 この戦争は、ロットバイルが中心となって起きたものなんやけど、オレンブルクは、それ以前にロットバイルと不戦協定を結んでたんよ。だから、直接戦おうとはしなかった。
 それに、オレンブルクはアリステア地方侵攻を企てたんで、戦闘に参加して自国が消耗してしまうのはイヤがったわけ。
【カノン】 つまり、直接ロットバイルとは戦わないけど、ロットバイルの侵攻を食い止めるために、どこかの国を支援して使ってた、ということやな。
【GM】 そう。それが行われたのが、邪神の眠る島での戦争。
 その頃、ファラリア王国を攻めていたロットバイルが、ランダースという国を支援して、邪神の眠る島の征服を狙った。地図を見てもらえばわかると思うけど、この島を手に入れたら、オレンブルク王都は目の前。喉元にナイフを突きつけるようなものだから。
【カノン】 その作戦はうまくいったのかね?
【GM】 途中までは。ランダース王国は、ロットバイル王国の天才的な戦略家でもある摂政ルートンに言われるまま、速攻でスパニア王国、ゴルド王国を征服した。
 相手に体勢を整える間を与えない電撃戦は、ロットバイルの得意技。ロットバイル王国は、大陸でも同じように526年にはルクルーゾまでを手に入れた。
【カノン】 すごいな。
【GM】 さて、邪神の眠る島における、ロットバイルの真意に気づいたオレンブルク王国は、それに対抗するため、同じく邪神の眠る島のロンデニア王国、ウィス王国を支援。やがてランダース軍と連合軍はブレインをめぐって大きな戦いをした。
【ルミオス】 どっちが勝ったん?
【GM】 ブレインをめぐる戦いは、連合軍がからくも勝利した。そして、オレンブルクが乗り出したことで、摂政ルートンはあっさりランダースを切り捨てた。自分たちも大陸で戦争してるし、使えないならさっさと捨てる。
 529年に、邪神の眠る島の戦争は、連合軍の勝利で幕を閉じた。
【カノン】 しかし、ずいぶん思い切りがいい軍師やな、そのルートンというのは。摂政ということは、ロットバイルには飾りだけでも国王が別にいるってこと?
【GM】 いるよ。かつて魔法も神への祈りも禁じ、今や奇跡など忘れられたロットバイルにおいて、唯一、神聖魔法が使え“奇跡の女王”と呼ばれる美しい女王様が。その名はジーニュ。完全に飾り物だけど、ロットバイル臣民には絶大な人気がある。
【バルバッツァ】 それでひとつにまとまってるんやな。
【カノン】 気持ちがひとつにまとまってなれば、電撃戦なんてできんわな。
【ルミオス】 ロットバイル王国って、ものすごい強かったんや。
【GM】 オムスク地方の戦争では、敵味方の識別のために、各国で定められた色彩の陣羽織というか、サーコートみたいなのを鎧の上から羽織る。ロットバイル王国の濃緑のサーコートの迅雷さながらの突進は、敵にとって恐怖の的だった。
 しかしそれも、摂政ルートンが病没する531年までのこと。
【カノン】 ルートンの死で力を失ったんやな。
【GM】 そう。それまでの快進撃がウソのように、ダンフリーズに押し返されはじめた。
【ルミオス】 そして最後には、旧カルファン領まで縮小しちゃうのね。
 でも、ルミオスの時代の地図には、ロットバイル王国はないけど……カルファン王国が復活してる。
【GM】 そのカルファン王国の再興によって、ロットバイル王国は滅亡したんやね。
 ──と、まあ、ルミオスはこういうもろもろの歴史を、ここに至って思い出したわけや(笑)。
【ルミオス】 少なくとも、ロットバイル王国が旧カルファン王国を滅ぼす前の時代にいるわけやんな。今はまだ、十四年戦争は始まってないんやろ?
【カノン】 それはわからんな。過去のどの時点に飛ばされたのかが、わからんから。ひょっとしたら、もうじき始まろうとしてる状況かも知れへんし。
【ルミオス】 職人たちに「今、何年?」って聞いてみよう。そしたら、いつの時代にいるのか、すぐわかる(笑)。
【GM】 「変なことを聞くひとだねぇ。今はレムリア暦519年に決まってるだろ」
【ルミオス】 来年や! 来年、戦争が始まるっ!(笑)
【カノン】 なるほど、それでロットバイルは通られへんのやな。
【バルバッツァ】 でも、今年じゃなくてよかった〜。
【ルミオス】 なあ。じゃあ、今頃オレンブルクでは、自分らが生まれてる、ってこと?(笑)
【カノン】 そうやな、カノン以外はすでに生まれてるよな。
【GM】 ──とかなんとか、砂漠の入口でブツブツもめてるキミたちを見て、職人たちはちょっと不安そう。「あの、大丈夫ですか?」
【ルミオス】 あははは。大丈夫、大丈夫(笑)。
【カノン】 「勇気を持って立ち向かえば大丈夫。道は開けるんや」と、オーシュ信者のカノンなら言うな。根拠はないけど。
【ルミオス】 んじゃ、砂漠に入ろう。
【バルバッツァ】 砂漠で迷ったりせんやろな。ルートとか確立されてるの?
【GM】 そんなのないよ。でも、大丈夫。地図によると、アルカーラ山脈を右手に見ながらずっと北上して行けば、やがて砂漠を抜けてカリーニョ村に着くから。
【ルミオス】 オアシスとかあるのかな?
【GM】 噂によると、あるらしい。もちろん、職人たちはじゅうぶんな水をラクダに積んで、持ってくけどね。
【ルミオス】 あ、うちもラクダ欲しい〜!
【GM】 じゃあ、街で買ってくれば? ちなみに職人たちは、ラクダに乗るわけじゃないよ。荷物を運ばせるだけやから。
【カノン】 そうすると楽だねぇ〜。
【GM】【ルミオス】【バルバッツァ】 ……。

 けっきょく、食料と水を調達したらラクダを買う資金がなくなってしまったので、ラクダはあきらめざるを得なかった。
 そして一行は、荒ぶる砂漠に足を踏み入れた。

【バルバッツァ】 とりあえず、竜巻には気をつけんといかんな。対処のしようがないし。
【GM】 「竜巻にあったら、伏せて。マントをかぶって」と、職人は言う。
【カノン】 ムササビみたいに飛んでいったりして。

 冒険者たちは荒ぶる砂漠を順調に旅する。
 しかし、危険が多々潜む砂漠のこと、油断は禁物。ワンダリング・モンスターと出会う可能性だってあるのだ。

【GM】 (ころっ)おっ、何か出てきたぞ。4本足で、のそのそと近づいてくるよ。
【バルバッツァ】 なんだ、なんだ。
【ルミオス】 ウサギやったら食おうぜ。
【カノン】 こんな所でそんなもんに出会うかぃ!
【GM】 そう。キミたちの前に現れたのは、身体は獅子、尻尾が蠍、顔はおじいちゃんという怪物です。
【バルバッツァ】 うわーッ、気持ち悪い〜!
【ルミオス】 いや〜ん、[怪物判定]。(ころっ)
【GM】 そいつはマンティコアという魔獣ですな。
【カノン】 マンティコアなら、知力があるよな。下位古代語ならしゃべれるんとちがう?
【ルミオス】 そいつ、何か言うてへん?
【GM】 なんか、ブツブツ言ってる。「あー、腹減った。めっちゃ腹減った。今やったら、ドワーフでも食ってやるわ」
【カノン】 じゃあ、乾き大根あげよか?(笑)
【ルミオス】 ダメ!
【GM】 つーか、魔獣は食料は必要なかったな。でも、反応は敵対的らしいので、とりあえずキミらの存在が気に入らないみたい(笑)。「殺す。おまえらをコロス。なんかムカつくしィ」
【カノン】 イヤや、そんな魔獣。
【バルバッツァ】 とりあえず、戦闘じゃー!

 暗黒魔法の〈スティール・ライフ〉を使うマンティコアだったが、ルミオスの〈ライトニング〉のクリティカルが飛び出したこともあって、4ラウンドで倒されてしまった。
 戦闘後冒険者たちはたっぷり休み、精神力を完全回復させてから再出発した。

【GM】 オアシスが見えてきたよ。
【ルミオス】 走る。で、飛び込んでみたら蜃気楼やねん(笑)。
【GM】 礫砂漠をゴリゴリ滑って、岩に頭を打ちつけてピクリとも動かなくなったりして。
【バルバッツァ】 そんなん、無念の最期やん。
【カノン】 これ以上の無念はないぞ(笑)。


 などと、マンティコアを軽く撃破したせいか、足取りも軽く旅する冒険者たち。しかし、この後に出会った狂ったサラマンダー5体には、手を焼かされた。
 何せ相手には通常の武器が通用しない。
 さらにサラマンダーの炎の2連続クリティカルを受けたルミオスが倒れ(生死判定にはギリギリ成功)、頼みの綱の打撃魔法を失ってしまった。カノンの〈キュアー・ウーンズ〉で回復させてもらったものの、絶対絶命の危機であることに変わりはない。
 もうダメかと思われたそのとき、礫砂漠にバラ吹雪が舞う……。

【GM】 そこには高飛車な女エルフが腕組みして立っている。「人間ごときがこんな場所に足を踏み入れるなんて、身の程知らずね」とかなんとか言ってる。
【ルミオス】 ムードロ!?
【バルバッツァ】 ムードロや!

最果ての村

【GM】 そう、どう見てもムードロ・ペーニンそのひと。ムードロらしき女性は〈ウィル・オー・ウィスプ〉を弱っているサラマンダーにぶつけて、それを消滅させた。
【カノン】 あ〜、おいしいとこだけ持っていきよんねんな(笑)。

 ムードロの加勢もあって、この3ラウンド後にサラマンダーどもを全滅させた。

【ルミオス】 ムードロ、もっと早く出てこいっちゅうねん!(笑)
【GM】 そんなこと言われても、たまたま通りかかっただけやもん。
【バルバッツァ】 なんで、こんなところを通りかかるんよ?(笑)
【GM】 アルカーラ山脈の奥に故郷があるからね。「つーか、ずいぶん馴れ馴れしいわね。あんたたち、誰よ?」
【ルミオス】 あれ? うちらの知らないムードロかな。過去のムードロ。
【カノン】 ああ、エルフやし、たかだか数十年程度の過去なら、外見に変化はないやろしな。
【ルミオス】 中身も変わってなさげ(笑)。昔からあんな性格なんや。
【GM】 「早く帰りなさよ」と言い残して、ムードロは去って行く。
【バルバッツァ】 どこ行くん?
【GM】 オレンブルク王国やってさ。

 過去のムードロと別れた冒険者と職人たちは、さらに北を目指して進んでゆく。
 砂漠に入って10日目の昼、一行はオアシスの開かれたとある蛮族たちの集落に入った。

【GM】 蛮族たちはみんな、裸同然のかっこうをしてる。別にスッポンポンじゃないけどね。男は股間にケースをかぶせてるし。
【ルミオス】 やったー! ケース、取ったれ〜(笑)。
【カノン】 最悪や。
【バルバッツァ】 食料を分けてもらおう。
【GM】 「分けてあげてもいいけど、おまえ、オレたちに何くれる?」。ちなみに現金はいらないよ。使い道ないし。
【バルバッツァ】 物々交換か。何が欲しいの?
【GM】 「そうだな。塩をくれ、塩を」と言う。
【バルバッツァ】 誰か、塩を持ってる?
【GM】 職人が持ってた。というわけで、キミたちも食事にありつける。正体不明の肉とかやけどね。大きな皿に盛られた料理を、アルフレッドとかいう子供が運んでくれる。
【ルミオス】 アルフレッド? ああ、将来、伝説の剣を探すアイツか。
【GM】 そう。でもいまは子供やから、ちっちゃいケースを装着してる。
【ルミオス】 あははは、かわいい〜! 取っちゃえ(笑)。
【カノン】 何をそんなに大喜びしてんの。

 翌日、集落を後にした一行はさらに8日旅を続け、ついに砂漠を突破。カルファン王国カリーニョ村に到着した。

【GM】 カリーニョ村は農業で成り立ってる、人口200人足らずの小さな村です。ごくごくありふれた農村、って感じやね。
【カノン】 そんな平凡な村に、武器職人たちは何の目的があったん?
【GM】 ここで別のひとと待ち合わせをしてて、そのひとたちと一緒に最終目的に行くらしい。いちおう、明日落ち合うらしい。
【カノン】 そうやろな。どう考えても、こんな村に何らかの目的があったとは思われへん(笑)。
【ルミオス】 どこに行くん?
【GM】 さらに北にある、モゴチャという鉱山の村だそうだ。
【バルバッツァ】 名前がどんどんおもしろくなるなぁ。
【カノン】 きっと、異文化の地域やからやろな。
【ルミオス】 こっちのひとにしてみたら、オレンブルクとかおもしろい名前やと思うかも知れへん。
【バルバッツァ】 で、モゴチャまでの護衛はいらへんの?
【GM】 いらないよ。カリーニョ村で案内人と合流する、って言うてるやんか。
【バルバッツァ】 じゃあ、ここでお別れってことか。
【GM】 そうやね。今までご苦労さまでした。と言っても、その待ち合わせ場所は、カリーニョ村でただひとつの宿屋。キミらも宿泊するんなら、そこになる。ちなみにその宿屋、めったに客がないから、普段は裏の畑で農業をやって生計を立ててるらしい。
【カノン】 泊まる部屋が余分にある農家、って感じやな。
【GM】 でも、先祖代々伝わる宿らしい。
【カノン】 たぶん、ご先祖さまは接待好きのひとやったんやろ。
【ルミオス】 じゃ、その宿屋で泊まる。
【GM】 宿屋の主人は20代半ばの男性。「いらっしゃいませ」というその背後には、能面のような仮面が飾られたりする。他国ではあまり見かけないお面やね。
【ルミオス】 あっ、そのお面を買って帰る! で、オレンブルクでみんなをびっくりさせるねん。
【GM】 「あっはっは。お客さん、あれは売り物じゃないですよ。ここだけの話、夜中に目が光ると噂されてるんです」
【ルミオス】 欲しい〜!
【バルバッツァ】 乾いた大根と交換してもらえば?
【ルミオス】 それはダメ。
【カノン】 なんでルミオスが拒否するんや?(笑) 大根はカノンの持ち物やろ。
【ルミオス】 あげたらダメ。そんなことしたら、(プレイヤーを)殺す(笑)。
【GM】 まあ、そんなこんなで久々にまともな食事をして、久々にふかふかのベッドで眠ることができるわけや。
【ルミオス】 石の上で寝てばかりやったから、ぐっする眠れる。
【GM】 ちなみに夕食では、職人たちとささやかな祝杯をあげた。ついでに報酬と約束のボーナスをもらったよ。この宿の翌朝までの宿泊費は、職人が持ってくれるからね。
【バルバッツァ】 やったー!
【GM】 夜遅くまで騒いだキミたちは、これまでの長旅の疲れを癒すべく、深い眠りに落ちていった。泥のように眠ったんやろね。そして、夜が明けた。
【ルミオス】 朝飯を食べる〜。
【バルバッツァ】 平和やなぁ(笑)。
【カノン】 のどかな村やし、2〜3日泊まっていってもええな。
【ルミオス】 温泉とかあれば最高なんやけど。
【GM】 などとなごんでると、外がなんだか騒がしくなる。
【ルミオス】 外を覗いてみる。
【GM】 すると、武装した兵士らしき男たちが14、5人ほどで、縛り上げた数名の老若男女を連れていくのが見える。
【カノン】 その老若男女ってのはなに、村人?
【GM】 そう。その内訳は、年老いた夫婦がふた組、若い夫婦ひと組、若い女性の計7名。それを見る村人たちも、捕らえられてる当の本人たちも、いったい何が起こってるのかわからず、混乱してる模様。
【バルバッツァ】 じゃあ、その列に割り込んで、兵士たちに事情を聞く。
【カノン】 あまりにも無謀過ぎるぞ。
【ルミオス】 そんなことしたら、殺されそうなんやけど。
【GM】 バルバッツァは飛び出してみて気づいたんやけど、彼らを連行している兵士以外にも、完全武装の兵士がざっと20人ほどいるよ。
【ルミオス】 うわー、いっぱいおる。この村を制圧しに来たんかな?
【カノン】 とりあえず、バルバッツァを押さえとくよ。殺されかねん。
【ルミオス】 その兵士たちって、どこの国のひと? ロットバイル?
【GM】 いや、虎が描かれた軍旗は、カルファン王国のものやね。だから、カルファン王国兵ということになる。
【ルミオス】 正規兵か……。
【カノン】 兵士のほうからは、何の説明もないの?
【GM】 なんか偉そうなヒゲの兵士長が、「まもなく、広場でこの7名の処刑を行うから、村の者はすべて集まるように」と告げてるよ。
【ルミオス】 そばの村人に、「あのひとら何かしたん?」って聞く。
【GM】 まったくわからんらしい。
【ルミオス】 何やろ、ランダムかな?
【カノン】 この状況では何も見えてこうへんな。
【GM】 ちなみに「村の者すべて」は、キミたちも含んでるからね。広場に行くように。
【ルミオス】 じゃあ、行ってみよか。
【GM】 広場はすでに木組みの柵で円形に囲われて、即席の処刑場に仕立てられている。広場の中央あたりには、人をくくりつける丸太の杭が打ち立てられている。7人の男女は、そこに縛りつけられた。ここに至って現実感を取り戻したのか、毅然としている若い女性以外の6人は、取り乱して泣きわめく。
【カノン】 あの7人は何なのか、村人に尋ねてみる。
【GM】 若い夫婦は、ふた組の老夫婦の片方の息子夫婦で、若い女性は、もう片方の老夫婦の息子の嫁らしい。
【ルミオス】 全員、血縁者?
【カノン】 血縁上の繋がりがあるふた組、ということやな。
【GM】 その7人の前にひとりの騎士が進み出て、1枚の紙を広げる。そして広場の外、つまりキミたち群衆に向かって、そこに書かれたものを読み上げる。要するに、罪状を読み上げるということやね。
【カノン】 これでいちおう、騒ぎの原因がわかるわけやな。
【バルバッツァ】 聞いてみる。
【GM】 騎士は咳払いをすると、芝居がかった口調で罪状を読み上げる。その内容は──以下、次回ということで。

÷÷ つづく ÷÷
©2001 Hiroyoshi Ryujin
Map ©2001 Moyo
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お名前
ひと言ありましたら
 
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