≪REV / EXIT / FWD≫

§久遠の旅人:第7話§

悲劇の村の少女

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ カリーニョ無惨 ▽ 魔術師の塔 ▽ 秘宝奪回

カリーニョ無惨

【GM】 それじゃ、騎士が読み上げた罪状の内容を、要約して話そう。この者たちの身内の者、つまり老夫婦たちの息子たちが、ある罪を犯したらしい。
【ルミオス】 どんな罪?
【GM】 カリーニョ村は、モゴチャ村、アクシャ村とともにカルファン王国第2の都市キャフタの領主カリム・スコエ・ハオト──王族の分家のひとね──に治められている。アイザックとリザロークというその男たちは、あろうことか、そのキャフタ領主の暗殺を企てたらしい。
【バルバッツァ】 なんで? なんでそんなことしたん。
【GM】 どうやら、納めるべき税金のうち5万フィスを着服し、それがバレそうになったんで暗殺を企てたんだそうです。この件にはカリーニョ村の長も関わっており、村長はすでにキャフタで処刑した。
【カノン】 は?? 村長は処刑されてるの?
【GM】 そう。キャフタでね。
【バルバッツァ】 この村で処刑されたんとちゃうんか。なんでキャフタで殺されたんやろ。どういうこと?
【ルミオス】 ちょっと経過がわからん。村人に説明してもらえる?
【GM】 んじゃ、してあげよう。もともとね、この村に課せられた税金は2万4000フィスやったわけ。それを、冒険者を目指していて、しかもちょっとした事件を解決したことによって信頼を得たアイザックとリザロークという男たちに、キャフタまで運んでもらったんやね。
【バルバッツァ】 それを着服したんや。旅の資金のために。
【GM】 いや、2万4000フィスはちゃんと納めてるよ。しかし、領主カリムから「あと5万フィス払え」と言われて、通告されていた課税額と違うやないかということで、村長に相談しにいちど帰って来てん。
【カノン】 なるほど。5万フィスってのは、領主が勝手に予告なく上乗せした額なわけやな。
【GM】 それを聞いた80歳を超えてもなお矍鑠としている村長エスティバン・トゥバイエは、領主に抗議すべくふたりを伴ってキャフタに乗り込んだらしい。村人が知ってるのは、ここまで。その後、キャフタで何があったのかは知らない。
【カノン】 たぶん、騎士が言ったように村長は殺されて、ふたりは逃げたんやろ。で、今、捕まってるのが、アイザックとリザロークの身内なわけか。村長の身内は?
【GM】 村長はひとり身だった。
【ルミオス】 アイザックとかいう奴らは?
【GM】 捕らえて投獄しておたけど、逃げてしまったらしい。
【ルミオス】 なるほど、そんで家族が殺されるんや。
【バルバッツァ】 じゃあ、「アイザックたちを捕まえてきてやるから、家族を殺すのはやめろ」って言う。
【カノン】 いや、それはおかしい。だいたい、村長もアイザックたちも、殺される謂われはないはずや。暗殺しようとしたっていう話だって、領主たちがでっちあげただけの可能性がある。
【ルミオス】 きっと、領主が勝手に税金を引き上げて、抗議されたから村長を殺しただけやろ。
【バルバッツァ】 ロクでもない領主なんやな。
【カノン】 その、5万フィスの上乗せというのは、カリーニョ村だけなん? アクシャ村やモゴチャ村も、その領主に治められてるんやろ?
【GM】 もちろん、それらの村でも加増されてるよ。今回の件は、それらの民に対する見せしめの意味があるのかも知れないね。
【バルバッツァ】 村人たちの反応はどうなん?
【GM】 「村長を処刑した」と聞いたときに、悲鳴や抗議の怒号があがって騒然となってるよ。そんな中、キャフタの乞食たちが槍をカッシャカッシャいわしながら、罪人たちに近づいていく。そんでもってグサ〜っと刺したわけや。「ぎゃー」だの「うわー」だの「痛ぇ」だの断末魔の悲鳴がこだまする。
【バルバッツァ】 そりゃ、痛いやろ(笑)。
【ルミオス】 あーあ……。
【バルバッツァ】 憤りを感じる。「こんなことが許されていいのか!」
【GM】 そんなこともありまして、ついに村人たちはキレましたね。村人たちは、鎌や鋤などを手にとって兵士たちに襲いかかる。
【バルバッツァ】 そりゃ、キレるわ。こっちだってキレそうやのに。
【ルミオス】 農民一揆や。
【GM】 兵士たちは槍で応戦するけど、若い兵士などは初めての実戦なのでちょっとパニック。まあ、村人にしても、皆が皆、戦ってるわけではなく、逃げようとしたり降伏しようとしたりする者もあるけど、そうした兵士は見境なく攻撃してみたり。
【カノン】 こういう状況下では、そうなるやろなぁ。
【ルミオス】 すごい場面に出くわしてしまった(笑)。
【GM】 ところで、この混乱の中、キミたちのところにひとりの30歳ぐらいの女性が近づいてくる。村人のようやね。4〜5歳の女の子の手を引いてるよ。「あんたたち、冒険者だろ?」やって。
【バルバッツァ】 おうとも。
【ルミオス】 うなずく。
【GM】 「じゃあ、この子を連れて遠くに逃げておくれ」
【バルバッツァ】 なぜ?
【GM】 えーっとね、この子は逃亡しているというリザロークの娘で、名前はファンリー。家族が畑仕事に行くとき、いつものようにこの女性の家に預けられていたため、兵士たちに捕らえられずにすんだんやね。でも、見つかったり、リザロークの娘とばれたりしたら、タダではすまない。
【カノン】 それはもちろん引き受けてもいいけど、その女の人はどーすんの?
【GM】 この女性は、胸から槍の穂先を生やした。背後から兵士に刺されたんやね。引き抜かれると同時に、口から血を吐いて倒れた。
【ルミオス】 えーっ!? じゃあ、女の子を後ろに隠す!
【カノン】 もうアカン。それはもう、カノンは堪えきれへんやろ。その兵士に対して攻撃するで。兵士は何人いるの?
【GM】 キミらの前には3人いる。とりあえず戦闘ラウンドということで、敏捷度順に行動処理していくから。最初はルミオス、コマンド?
【ルミオス】 女の子を庇って後退する。
【GM】 ファンリーをローブの中に隠してるんやろ。そんでルミオスに屁こかれて、「くさー!」って死んでもたりして(笑)。
【ルミオス】 どんなんやねん!(笑)
【カノン】 とりあえず、女の人を刺した兵士に攻撃する。
【バルバッツァ】 できれば、みね打ちにしとけ。
【カノン】 みね打ちもクソもない。バトル・アックスやもん。
【ルミオス】 みねがない(笑)。

 怒りのカノンはクリティカルを放ち、冒険者たちは兵士をあっさり打ち倒した。
 そしてルミオスが、村を包囲するカルファン兵の囲みが手薄なところを見つけ、兵士に発見されることなくカリーニョ村を脱出した。
 背後に黒煙をあげるカリーニョ村。ファンリーは表情もなく、それを見つめる。
 そして一行の前に広がるのは、あの荒ぶる砂漠であった……。

【GM】 さて、来るときは散々苦労した荒ぶる砂漠だけど、帰るときはなぜかあっという間に抜けてしまうんやね(笑)。
【バルバッツァ】 なんでやろな(笑)。
【GM】 さて、キミたちはこれらかどこに向かうんかな?
【ルミオス】 どこやろ。
【カノン】 とりあえず、このファンリーを置いていけるところを目指すしかないな。いつまでも連れて回るわけにもいかんし。
【バルバッツァ】 どう、GM。どっかそういうところに心当たりはある?
【GM】 そうやな〜。キミらは全員、オレンブルクの出身やったな。じゃあ、オレンブルクの国教を司るミフォア大神殿が、身寄りのない孤児を引き取って世話しているのを知ってるよ。
【カノン】 そこに行くしかないか。
【バルバッツァ】 じゃあ、オレンブルクに行く〜。
【GM】 そうして街道を目指すキミたちだけど、街道まではまだもうちょっと距離がある。その日の夕刻、行く手に小さな村が見えてきた。夕餉の煙が細々と立ちのぼる、ちんまりとした農村です。
【カノン】 とうぜん、宿屋や。
【GM】 んじゃ、村の宿屋にやって来た。1階が酒場、2階が宿泊施設ね。キミたちが酒場の扉を開けて入ると、キミたちの冒険者らしき姿を見た宿屋の主人がニッコリ笑った。
【ルミオス】 なんか、変なこと頼まれそうや(笑)。
【GM】 「いらっしゃませ〜」と、揉み手して迎えてくれてるよ。「いやー、ちょうどよかった」
【ルミオス】 とりあえず、ご飯食べる。
【GM】 「どーぞ、どーぞ」と、丼に山盛りで持ってきてくれる。
【ルミオス】 やり過ぎ〜!
【GM】 キミたちがご飯を食べてると、主人は話す。「じつはですな〜、この村の秘宝が盗まれたんですわ」
【ルミオス】 秘宝なんてあるの、こんなちっちゃい村に。
【バルバッツァ】 さて、その秘宝とは?
【GM】 「鞘ですわ」どうやら、バスタード・ソードの形状の鞘らしい。
【ルミオス】 鞘!? なにそれ、特別なん?
【バルバッツァ】 そら、仮にも村の秘宝やからな。
【GM】 そう。その鞘にぴったり納まる剣を入れて3日3晩儀式を行うと、ドラゴン・キラーができあがるらしい。ただし、あと1回使用したら、効果がなくなるけど。
【ルミオス】 じゃあ、あと1回使うと秘宝じゃなくなるんや。もう使われてるんとちゃう?
【GM】 「使われる前に取り戻して欲しいな〜」と主人は言う。「この間も村長の家に集まって、みんなでそう言ってたんですわ」
【バルバッツァ】 ……黙々とメシを食い続けよっかな。
【GM】 じゃあ、次から次に料理が運ばれてくる。
【ルミオス】 酒でも飲んでよっかな。
【GM】 次から次にコップに酒が注がれる。「それで村長の家はですね〜、表の通りを真っ直ぐ行って、3番目の辻を左に曲がって右手3軒目の家ですわ」

魔術師の塔

【ルミオス】 ──だってさ(笑)。
【カノン】 じゃあ、食事が済んだら、村長の家に行ってみましょか。
【GM】 「行ってくださる? いやー、嬉しいなぁ。また一杯、注いじゃおっかな〜」という感じで食事を済ませ、キミたちは村長の家にやってきた。
 応対に出た村長さんは、キミたちの冒険者らしき姿を見て、ニッコリ笑うね。「どーぞ、どーぞ」とキミたちを招き入れる。
【バルバッツァ】 じゃあ、招き入れられた。
【カノン】 「さっそくですが、ドラゴン・キラーの鞘のことを聞かせていただきましょか」
【GM】 「その鞘は古代魔法帝国の遺産で、その鞘にぴったり納まる剣を入れて3日3晩儀式を行うと──」
【ルミオス】 それはもう、さっき聞いた。
【GM】 ルミオスの言葉に、村長はハンカチをくわえてヨヨヨと泣き崩れる。「わ、私はこのことを言うために、今まで──」
【カノン】 わかった、わかった。で、鞘がなくなった詳しい経緯を聞かせて欲しいんやけど。
【GM】 「これはですな、南西の森の廃墟の塔に棲んでるゴブリンの仕業なんですわ」
【バルバッツァ】 ゴブリンに盗られたんか〜。
【ルミオス】 ゴブリンはその鞘の正体を、よく知っとったな。そんなもの盗んで、何をするつもりやねん。
【GM】 「ゴブリンに聞いてぇや」
【バルバッツァ】 でもな〜、ゴブリンなんかと戦ってもなぁ。どうせ、裏があるんやろけどな。
【ルミオス】 うん。すぐ死んじゃうよね、ゴブリン。絶対、ゴブリンの上の奴がおるで。黒幕が。
【カノン】 それはさておき、なんでゴブリンの仕業やとわかったん?
【GM】 人間のものではない足跡が、たくさん残されてたからね。村長の家の周りや、秘宝を保管してた部屋に。
【カノン】 この家に保管してたんかぃな!
【ルミオス】 村長、無防備。鍵ぐらいかけろ〜。
【バルバッツァ】 いつ盗まれたん?
【GM】 「1週間ぐらい前ですなぁ」
【ルミオス】 じゃあ、やっぱり使われてしまって、もう秘宝じゃなくなってると思う。
【GM】 「いや、あの儀式は、村長に代々伝わるものなので、外部の者に儀式は行えないはずなのです」
【バルバッツァ】 まあ、取り戻してもいいけどな。今日はもう日がとっぷりと暮れてしまってるから。
【ルミオス】 明日、森に行ってみよう。
【カノン】 その、ゴブリンが棲んでる塔までは、どのくらいの距離なん?
【GM】 「森を南西に2時間ばかり行ったところにそびえております」
【カノン】 その塔には、何か謂われがあるの?
【GM】 じつは、村長のおじいさんのおじいさんの時代、その塔には大勢の魔術師が籠もって、日夜魔法技術の研究に没頭していたらしい。ところがある日、魔術師たちはこつぜんと姿を消し、塔はそのまま廃墟になったという。
【バルバッツァ】 なんで魔術師は姿を消したんや。
【GM】 それは、誰も知らない。以来、村人たちは不気味がって、その無人の塔にあまり近寄らなくなった。
【カノン】 塔までの道筋を聞けば、迷わずに行けそうな感じなん?
【GM】 そやね。古〜い道が残ってたりするから、レンジャー技能があれば楽勝でしょう。
【カノン】 仕事を引き受けるとして、報酬はいくらもらえるの?
【GM】 「ひとりあたま、600フィスでいかがでしょう。前金で1割、残りは成功報酬ということで」
【バルバッツァ】 それは、ファンリー込みで?
【GM】 んなわけない(笑)。キミたち3人のお話。
【カノン】 とりあえず、ファンリーをここで預かってもらおか。
【ルミオス】 連れて行ったりしたら、帰ってきた頃には息してへんで、ファンリー。
【GM】 ところがファンリーは、カノンのズボンをひしっと掴んでみたりする(笑)。
【ルミオス】 うわー、懐かれてる!(笑) 置いて行かれへん。
【カノン】 カノンお姉さん、困ったね。ゴブリン程度ならバルバッツァひとりで対処できるやろから、ファンリーを庇うことに専念できるかな、と考えそうやな。
【バルバッツァ】 バルバッツァは嫌そうな顔をするやろな。「えー?」って。
【ルミオス】 我、関せず。
【カノン】 そんじゃ、今日は宿屋に泊まって、明日になったら森に行きましょか。いちおう、ファンリーは連れて行くわ。私が守るということで。
【GM】 OK。では、翌朝になり、キミたちはファンリーを伴って、南西の森の塔をめざし出発しました。森を歩くこと約2時間、森の開けた場所に、話に聞いた廃墟の塔が姿を現した。
【カノン】 ゴブリンとかはいない?
【GM】 いるよ。塔の入口とおぼしき扉の前に、あくびをしながら見張りについてる2匹のゴブリンが。ハードレザーにスピアで武装してるね。
【バルバッツァ】 武装してんのか。まいったね。
【ルミオス】 やっぱ、人間の黒幕が後ろにおるんちゃうん。わかった、村長が黒幕っ!
【バルバッツァ】 えぇ〜?
【カノン】 ……。
【GM】 カノンは呆れて物も言えないらしい(笑)。ところで、キミたちは茂みにいます。ゴブリンたちに気づかれたかどうかのチェックをしてみてくれ。──その出目なら、ルミオスが気づかれたね。
【ルミオス】 ちなみにファンリーは6ゾロッ!
【バルバッツァ】 ちょっとは見習え〜。ルミオス、行ってこ〜い。
【ルミオス】 んじゃあ、〈スリープ・クラウド〉でも。(ころっ)効かなかった。なんじゃ、そりゃ。他のひと、行って。
【カノン】 見守る。
【バルバッツァ】 俺も暖かく見守ってる。
【GM】 じゃあ、ゴブリンから見えてるのはルミオスだけか。何やらギャーギャー言いながら、武器を構えて近づいてくる。次のラウンド、ルミオスから。
【バルバッツァ】 何かすごいことしてよ。ゴブリンが近づきつつあるから。
【ルミオス】 でも、ここで〈スリープ・クラウド〉したら、自分も寝てまうで。
【バルバッツァ】 じゃあ、別の使えばええやん。素手で殴るか?
【ルミオス】 こんなところで精神力使うのもったいないし、殴る。ゴブリンAに(ころっ)。当たるか、こんなもん!
【カノン】 フォンリーの様子はどうなん?
【GM】 怯えて、キミの足にしがみついてる(笑)。
【カノン】 はあ、置いて突撃するわけにもいかんな。じゃあ、2倍消費で両方のゴブリンに〈フォース〉。(ころっ)両方に効いて、Aには9点、Bには11点のダメージ。
【バルバッツァ】 茂みから飛び出て、[なぎ払い]でゴブリンA、Bを一撃で落とそかな。(ころっ)どっちも斬った。Aに14点、Bにはクリティカルで19点。
【GM】 ──どっちとも死んだ。上半身と下半身がバラバラになった。
【ルミオス】 ファンリー、見てびっくりや。
【バルバッツァ】 見えへんように埋めとかな。ちゃんとハチミツをかけて、腐りやすくしとこう。木の養分になる。
【カノン】 じゃあ、塔に入ろか。

 冒険者たちは塔に侵入した。
 かつての食堂であった部屋Aや、書庫らしき部屋(本などはすでに失われている)などを探索したが、件の鞘らしき物は見つけられない。
 そして冒険者たちは2階のHの部屋にやって来た。

【GM】 そこ(部屋H)の片隅には、槍が8本ほど矛先を上にして床に立っているよ。じゃっかん、錆びてるけど。
【ルミオス】 錆びてるんなら、いらないや。

 冒険者たちは部屋Hを後にして、捜索を続行しつつ3階に上がった。
 3階の長〜い廊下の進む途中──。

【GM】 突然、廊下の床がパカっと口を開けた。先頭にいたのはカノンとバルバッツァだったね。じゃ、おふたりには[罠感知]をしていただこう。
【バルバッツァ】 (ころっ)成功。飛びのいた。
【カノン】 (ころっ)失敗。
【GM】 じゃあ、カノンは下に落ちてしまった。そこには、刃を上にした8本の槍が待ち構えている。
【ルミオス】 あ、なるほど。
【GM】 カノンは[アクロバット]ができないので、鎧で防御することのみ可能。防御してみ。ちなみにその床は撥ね上げ式なので、カノンが落ちた次の瞬間には元通りになってたりする(笑)。
【カノン】 (ころっ)鎧で11点止めたよ。
【GM】 じゃあ、通ったダメージは4点。
【バルバッツァ】 ダッシュで戻ってこい。

 カノンと合流した冒険者たちは、4階に上がった。そして、部屋Oの扉の前にやって来た。

【GM】 扉は閉まってるよ。
【バルバッツァ】 じゃあ、罠チェックをせずに開けてみようかな。試しに〜。
【カノン】 なめきっとる(笑)。
【GM】 ところが、いくらガチャガチャやっても扉は開かない。ちなみにカギ穴はないよ。
【ルミオス】 魔法の鍵か。〈アンロック〉か。(ころっ)解除したよ。
【バルバッツァ】 さっそく扉をガーンと開ける。中はどう?
【GM】 中にはソファと、社長さんが使ってそうな大きな机がある。そして、2匹のゴブリン、1匹の体格のいいオレンジ色のハードレザーを着たゴブリンが、臨戦態勢で待ち構えております。
【バルバッツァ】 俺らのこと、バレバレ?(笑)
【ルミオス】 ガチャガチャやったもんな。

秘宝奪回

【GM】 それじゃ、有無を言わさず戦闘ラウンドね。ルミオスからどうぞ。
【ルミオス】 何もしない。後ろにさがる。
【カノン】 じゃあ、ファンリーを預けとく。しっかり守ったってや。
【GM】 ファンリーはルミオスのローブをはしっと掴む……いや、ローブをめくって中に入ったろか(笑)。そんで、ルミオスのスネ毛を抜くねん。
【ルミオス】 ズボン、はいてるとちゃうん?
【GM】 はいてへんで。ローブの下は、パンツ一丁。たまに風でローブがまくり上げられて、「いや〜ん」とか言うて押さえたりしてるから。「イタズラな春風さんね!」って。
【ルミオス】 ルミオスってきしょ〜!(笑)
【カノン】 なんで本気にすんねん!
【ルミオス】 だって、めっちゃ想像できるねんもん。
【カノン】 想像すな!
【GM】 はいはい、ウソウソ。ファンリーは普通に隠れてる。
【バルバッツァ】 よっしゃ、俺はなぎ払いでゴブリンA、B、オレンジ色のゴブリンを斬る。
【ルミオス】 また一撃で片づける気や(笑)。
【バルバッツァ】 (ころっ)ゴブリンAとオレンジ色のゴブリンに当たった。ゴブリンAにはふた回りクリティカル〜で28点、オレンジ色のゴブリンには14点。
【GM】 ゴブリンAは頭から真っ二つ、いろんな物が床にまき散らされるわ。血とか内蔵とかラーメンとか。
【バルバッツァ】 ラーメンって、なんじゃ?
【GM】 昼飯。
【カノン】 とてもじゃないけど、ファンリーには見せられんな。
【ルミオス】 大丈夫、今、うちのローブの中でスネ毛抜いてるから。
【GM】 体格のいいオレンジ色のゴブリンはまだ死んでないよ。「貧弱、貧弱ぅ〜」と、笑ってる。それではゴブリンたちの反撃、目標はバルバッツァ。……両方とも回避された。次のラウンド。
【ルミオス】 ファンリーを守ってる。「ファンリーはオレが守る!」
【カノン】 敵はバルバッツァがひとりで片づけそうやし、ルミオスとファンリーの取り合いをしとこか(笑)。
【GM】 するとオレンジ色のゴブリンが、「痛がってるファンリーの手を放したほうが、本物の母親だ!」と言う。
【ルミオス】 何の話やねん!(笑)
【バルバッツァ】 なぎ払いするで。(ころっ)オレンジ色の奴にはクリティカル19点ダメージ、Bには14点。
【GM】 ……オレンジのゴブリンは死んだ。ゴブリンBは生きてる。「たった、たった1機にゴブリン2機がやられただとぉ〜!?」と驚くゴブリンBは、「ごめんなさい」と土下座する。「いや、ボクが『やろ』言うたんちゃうんですよ」
【ルミオス】 ドラゴン・キラーの鞘のこと聞いてみる。「村長の家から、パクってきたやろ?」
【GM】 「オレはやってないんですけどー、他の奴らが、オネット様に言われて盗んでました」
【バルバッツァ】 誰? そのオネットっていう奴は。
【GM】 「オレたちのボスだ」
【ルミオス】 オネットってどんな奴? 男?
【GM】 「男だ」
【バルバッツァ】 服装は?
【GM】 「あんな感じ」と、ルミオスを指す。
【ルミオス】 ボスって、じつはオレ??
【バルバッツァ】 おまえが犯人か〜!
【カノン】 そんなことが起こりえるんなら、びっくりするわい。
【バルバッツァ】 ボスはどこにおるんや?
【GM】 「奥の部屋だ」と、部屋の隅にある扉を指す。
【バルバッツァ】 よし、キュッとしめあげて、道案内でもさせよっかな。

 ところがその扉の奥、部屋Pには明らかに知能の高い文化人が生活していた形跡があったものの、ゴブリンBの言うボスに姿はなかった。もちろん、秘宝の鞘も見つからない。

【ルミオス】 ウソついたな〜。
【GM】 「出かけてるんちゃいますの、ほんなら」と、口を尖らして不服そう。「オレらだって、あの人のことはよく知らんのやし」
【バルバッツァ】 なんや、その言いぐさは〜。
【GM】 「はいはい、ごめんなさいー」
【バルバッツァ】 ずんばらりん。
【GM】 「うぎゃあーッ!!」
【ルミオス】 殺しちゃったの?! 今日のバルバッツァは怖いなぁ。ファンリー、ぜんぶ見てたら、人間不信になってまうで。
【カノン】 こんな調子で、まともに成長できるんやろか。
【バルバッツァ】 大丈夫、バルバッツァが育ててやるから。
【ルミオス】 うわー。ファンリー、シーフに決定。
【カノン】 ま、1レベルでも冒険者技能を持っててくれると、助かるんやけどな。で、どうするね?
【ルミオス】 部屋Pで待っとけば、ボス、帰ってくるんちゃうの?
【カノン】 いつ帰ってくるか、わからへんやんか。
【バルバッツァ】 隠し部屋とかないんかな。
【ルミオス】 ゴブリン殺してもたから、聞かれへん。
【バルバッツァ】 っていうかな、捜索したマッピングを見てみると、3階が明らかに大きさ的におかしいねん。
【カノン】 とりあえず、3階の部屋Jと部屋Kに行ってみよう。バルバッツァ、西側の壁を入念に調べてみて。
【バルバッツァ】 (ころっ)どう、隠し扉とか見つかった?
【GM】 何も見つからない。ただ、壁の向こうに空間がありそうな感じはする。
【バルバッツァ】 壁を壊せ〜。
【GM】 ムチャな壊し方して、自重で塔が崩落しても知らんぞ(笑)。
【ルミオス】 自分の部屋(部屋P)から繋がってるかもよ。調べてみよう。

 バルバッツァが部屋Pを隈なく調べると、隠し扉を発見した。奥の小部屋Qには、下に降りる階段があった。
 階段を降りていくと、部屋Iにたどり着いた。そこには──。

【ルミオス】 ドラゴン・キラーの鞘が奉られてある。
【GM】 ま、それに近いね。それらしき鞘は、奥の壁に立てかけられている。その前には、ローブを纏った、ひとりの男が立っている。さらにその前にストーン・サーバントが3体立っている。
【バルバッツァ】 「動くな、西部○察だ。逮捕状は出ている」
【カノン】 西部○察なら、逮捕状うんぬん以前に即ぶっ放さな。事がすべて終わった後に、逮捕状を出すわけや。
【バルバッツァ】 よし、敵に対抗してストーン・サーバント作ったれ、ルミオス。
【ルミオス】 材料がない。だから、〈ファイアボール〉。(ころっ)サーバントAにはクリティカルで23点、サーバントBには13点、Cには抵抗されて12点、ボスは……うわ〜い、へぼい。10点のダメージね。
【GM】 サーバントAはバコーンと砕け散った。
【カノン】 あ、敵もソーサラーなんやな。〈ファイアボール〉が来たら、ファンリー一撃で死んでまうやないか。
【バルバッツァ】 〈カウンター・マジック〉かけとく?
【ルミオス】 もう遅い。さっきので、うちの行動は終わってしまった。
【カノン】 あー、こりゃアカン。死ぬわ。抱きかかえて庇うことはできる?
【GM】 抱きかかえて?? どうやろ……ファンリーは小さいし、爆発系の魔法やし、OKにしよか。ただし、ファンリーのぶんのダメージもくらってもらうよ。
【バルバッツァ】 それは何? 敵が魔法を唱える瞬間にできるの?
【GM】 できるよ。
【バルバッツァ】 んじゃ、カノンは行動を終わらせておいてから、庇えばええんやな。なぎ払いでも何でもしたって。
【カノン】 ファンリーのそばを離れるわけにはいかんし、〈フォース〉をサーバント2体とオネットにかける。(ころっ)サーバントBには10点、Cには11点、オネットには抵抗されて9点。
【GM】 サーバントB、Cは砕けてしまった。弱すぎるぞ、おい。
【バルバッツァ】 オネットのところまで走って、組み合いで押し倒す。(ころっ)1ゾロ!
【GM】 ひゃっひゃっひゃっひゃ。バルバッツァはそのまま後ろの壁まで滑って行く。さあ、オネットの反撃やな。オネットは懐から牙のような物を取り出して、呪文を唱える。ルミオスにはすぐわけるけど、そいつはスケルトン・ウォリアー。ちなみに3体。「これで1万5000フィス飛んだーっ!」と、オネットは嘆いてる。
【ルミオス】 知るかーッ!(笑)
【カノン】 あー、〈ファイアボール〉じゃなくて助かった。
【GM】 ちなみに次、ルミオスが〈ファイアボール〉みたいな範囲系の魔法を唱えると、バルバッツァも巻き込まれるからな。
【バルバッツァ】 巻き込まんように、うま〜いこと魔法を唱えてもらわんと。
【GM】 んなことできん!

 せっかく作ったスケルトン・ウォリアーなのに、ルミオスの〈ライトニング〉のクリティカルをくらって、何もしないうちに1体崩れさってしまった。
 続いてカノンが〈フォース〉でオネットとスケルトン・ウォリアーたちを痛めつける。
 バルバッツァはスケルトン・ウォリアーに阻まれて、オネットに攻撃できない。スケルトン・ウォリアーに挑むものの、攻撃をかわされる。

【GM】 オネットは懐から何やら怪しげな石を取り出し、呪文を唱え始めた。
【ルミオス】 その石はいくらしたん?
【GM】 「いや、拾ってきた物だから、値段は知らん」って、なんで答えなアカンねん(笑)。呪文が完成すると、足元からス〜っと消えてゆくよ。「私の研究を邪魔しやがって。邪悪な冒険者どもめ、おぼえてろ!」
【バルバッツァ】 逃げやがった。

 この後、冒険者たちはスケルトン・ウォリアーを掃討し、ドラゴン・キラーの鞘を取り戻した。
 そして、村に帰ってきたのであった。

【GM】 村長は感激してお礼を言う。「おお、勇者さま! ありがとうございます。これで、この村がドラゴンに襲われることはないでしょう」
【カノン】 それはどうかと思うけど(笑)。
【ルミオス】 別にドラゴン避けのアイテムじゃないんやから。
【GM】 というわけでキミたちは報酬の残りをもらった。その夜は素朴ながら酒宴が開かれ、翌朝、キミたちは村人たちに見送られながら、オレンブルクに向けて出発したのであった。

÷÷ つづく ÷÷
©2001 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2001 Jun Hayashida
Map ©2001 Moyo
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ひと言ありましたら
 
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