≪REV / EXIT / FWD≫

§竜婚の贄姫:第6話§

東に浮かぶ小島の怪

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 災厄は東の方からやって来る? ▽ 謎の迷宮 ▽ 聖杯を手に入れて

災厄は東の方からやって来る?

【GM】 ロスからの伝言っていうのは、もちろん、キバちゃんが依頼した例の件に関してのことだ。
【フィナーレ】 『例の件』とは?
【牙皇子】 貴様は知らんでいい。いや、知らないほうがいい(笑)。
【GM】 で、サイレント・パブの親父によると、ロスの伝言は「お探しの物のひとつを見た、という情報がありました。なんでも、ルーベンスという町の酒場で、黒ずくめの男たちが持っているのが目撃されたそうです」というもの。
【牙皇子】 ほう。
【GM】 それから未確認の情報だけど、その黒ずくめの奴らってのは、どうやらダークエルフであるらしい。その後、そいつらの足取りは掴めてないけど、調査は続行する。しかし、できればキバちゃんにもルーベンスに来て欲しいかな〜、ということです。
【牙皇子】 よかろう。余がじきじきに出向いてやろう。
【フィナーレ】 なんだかよくわかんないけど、出かけるの? あたしは?
【牙皇子】 ついて来い。
【GM】 ──と、牙皇子は言ってるけど、その判断はフィナーレ自身がするんだね。
【フィナーレ】 影の総統の言葉に逆らえるわけないじゃん(笑)。「まったく、しょ〜がないな〜、キバちゃんてば」と言って、ついてってあげましょう。
【牙皇子】 で、そのルーベンスの町というのは、どこにあるんだ?
【GM】 メカリア王国の東、イッスス山脈を越えたところにあるロメ王国の、さらに東端にある、海に面した港町だそうです。その海を渡ると『竜の棲む島』があるというから、ほとんど大陸の東の果てやね。
 そうそう。その竜の棲む島に関して、何やらあまりよくない噂が持ち上がっているんだそうだ。
【フィナーレ】 黄金の宮殿になにか起きたとか(笑)。
【GM】 いや、ちがう。オレンブルクの偉い魔術師や学者が、[占星術]で星を観測していると、世界が滅びてもおかしくないような災厄がそこまで迫ってきている、という兆しを見たそうだ。まだ、公表はされてないんだけどね。
【フィナーレ】 どんな危機なの?
【GM】 具体的にはわからない。それがいつ来るのかも。ただ、オレンブルクより東で、災厄の元凶が生じることは確か。学者の中には、東の果て『竜の棲む島』に発生するという説を唱える者もいるらしい。ま、ここは冒険者の酒場などという店を営業してるから、世間には公表されてないような危ない情報なんかも入ってくるわけよ。
【フィナーレ】 で、その災厄をくい止めるために旅立てと?
【GM】 さあ? それは自分で決めることじゃないか。
【牙皇子】 災厄がなんであろうと、私の目的が変わることはない。目指すのは東のルーベンスという町。
【フィナーレ】 ──と、影の総統がおっしゃってるので、そうします(笑)。
【GM】 OK。とりあえず出発するんなら、いろいろと買い物とかしてくれてもいいよ。
【フィナーレ】 じゃ、使い魔召還の儀式をしよう。猫のリシュを解雇して、フクロウにします。名前はサルサ。
【GM】 ハゲ猫はお役目御免というわけだね。かわいそうに、寂しそうに去っていったよ。他にすることは?
【フィナーレ】 街に馬車を買いに行く。
【牙皇子】 その必要はない。私たちは気球を持っていただろう。
【フィナーレ】 はッ、そー言えば……。
【GM】 いや、あのね。そう、グレゴリーの報告によると、気球の調子は悪いらしい。バンパイアの城に墜落したときの後遺症が、まだ残っているそうだから。
【牙皇子】 役に立たん奴だ。
【フィナーレ】 けっきょく馬車ね。馬車を買う、食料も買う。そして次の日、出発する。
【GM】 それでは出発しました! 馬車で街道を進み、東の果てのルーベンスを目指します。

 しかし、ルニオールを過ぎて8日後、赤狼の王の森の南に差しかかったとき、キミたちの行く手に6匹のゴブリンが立ちはだかった!
「おめえたち、ずいぶん金回りがよさそうじゃねえか。命が惜しければ、金とエサと身ぐるみ置いて行け!」と、そいつらは吠えるよ。
【牙皇子】 ゴブリンごときにかまけている暇はない。フィナーレ、〈スリープ・クラウド〉で眠らせろ。
【フィナーレ】 〈スリープ・クラウド〉をかけま〜す。(ころっ)ぜんぶ寝た。
【牙皇子】 では、馬車で轢き逃げアタ〜ック。そのままルーベンスを目指す。
【GM】 ゴブリンたちはたぶん、それで永遠に眠った。障害にもならんかったな(笑)。じゃあ、それから10日後、キミたちは険しいイッスス山脈を越え、ロメ王国に入りました。
 ロメ王国の王都ロッサには、ひとつの山がそびえている。その頂では、黄色い稽古着をまとった戦神オーシュの信者たちが、「ハっ、ハっ、ハっハハッ」と、毎日修行に励んでます。
【フィナーレ】 おお〜、少林寺だ(笑)。
【GM】 ま、いわゆるモンクたちの修行場だと思ってちょうだい。ちなみにそこは女人禁制の山で、下ですでに精神の鍛練を終えたものだけが、あがってくることができる。
 山での5年間の修行を乗り越えたものは、先輩の供をして1年間の旅に出る。生きて帰ってこられたら、最後の試練、単独で闇の迷宮に挑む。そして、みごと両腕に龍と虎の刻印を授けられたものが、オーシュの戦士になるわけだ。
 オーシュの戦士となったものは、後輩たちを連れて1年の旅に出ることが義務づけられていて、それを果たしたら後は自由。山に残ってさらに修行を積むのもよし、里に下りてオーシュの教えを広めるのもよし、悟りを求めて世界を放浪するのもよし。
【牙皇子】 そのモンクってやつは、よく見かけるのか?
【GM】 たまにだけど、見かけることはあるよ。クラリオン大戦が終わってからは、オムスク地方以外でも、その姿を見ることがあるようになった。それまでオムスク地方は、アリステア帝国やミドル地方のハインベル王国と険悪な関係にあったけど、帝国が崩壊した後は、後ろ楯を失ったハインベルも国力を落としてるし、オーシュの戦士たちも比較的自由に南に行けるようになってる。
【フィナーレ】 じゃあ、いまは南の地域と仲良くなってるんだ。
【GM】 別に仲良くはなってないけど。かつて、ハインベルに奴隷としてアリステア地方へ送り込まれたオムスク人やその子供たちは、いまは非人として、「奴隷の頃のほうがマシだった」というような扱いを受けてるからね。
【フィナーレ】 それなら、さっさと救出してあげればいいのに。
【GM】 もちろん、そうしようという動きはいままでもあったよ。とくに、いまや大陸随一の超大国となったオレンブルク王国は、いまもそれをあきらめていない。
 クラリオン大戦当時、その主な戦場がアリステア地方だったから、援軍という形でオレンブルクの軍隊を送り込み、ことのついでにアリステアを自国の飛び領にしようと画策したりもしたんだけどね。オムスク地方内のゴタゴタで、結果的にはあきらめざるを得なかった。しかし、後顧の憂いがなくなれば、オレンブルクの南進がはじまるだろうね。侵略のりっぱな口実はあるんだから。
【牙皇子】 ま、そんな国家同士のお話は、私たちには関係ないさ。
【フィナーレ】 まったくだ。
【GM】 では、ルーベンスの町に着いたよ〜ん。
【フィナーレ】 町の雰囲気はどう?
【GM】 どうやらね、ここ1年、海が荒れだして漁師が漁できなくなってるらしい。そのせいでか、かなり不景気な感じかな。
【牙皇子】 私は単独で酒場に行く。ロスに例のことを報告してもらわんとな。
【GM】 しかし、その酒場にはロスはいない。かわりに、彼に雇われたというシーフがいて、キバちゃんの姿を見ると向こうから寄って来た。「ロスのダンナから、話は聞いてます。お待ちしてやした。その後の調査で、例のブツを持った奴らの足取りを掴むことに成功したんですが……。少しばかり面倒なことになりましたぜ。とりあえず、一緒に来ていただけますか?」と、言ってくるよ。
【牙皇子】 「うむ、案内せい」
【GM】 では、牙皇子は盗賊の案内で、海岸、ガケの下の岩場に連れてこられた。そこには、何て言うかなァ、時空の歪み……虹色のバリアに包まれた、歪んだ空間の入口みたいな渦巻く黒い穴のようなものが、空中に浮かんでいる。
 シーフは、「オレたちが直接見たわけじゃないんですが、黒装束のダークエルフたちから盃のようなものを受け取った者が、この穴に逃げ込んだそうです」と言う。
【牙皇子】 「ほう。それで、ロスはこの中に入って行ったのか?」
【GM】 「いえ、どうしても、この穴に入れないんです。それから、目撃者の情報によると、どういうわけかダークエルフどももこの中には入らず、船で東の方へ去って行ったらしいです。それを聞いてロスさんは、他の仲間と共に船でそいつらを追って行きました。オレは伝言を頼まれて、この町で牙皇子さまを待っていたんです」
【牙皇子】 「ロスが海に出たのはいつだ?」
【GM】 「20日前です。ダークエルフが目撃されたのは、その3日前だそうです。それから、そのダークエルフの中に、ひとりだけエルフが混じっていたそうですが……」
【牙皇子】 ふむ……。「ブツを受け取った奴は、この穴に入って行ったんだな?」
【GM】 「そうらしいです。後ろ姿だけ目撃されてます。話しによると、身長は牙皇子さまぐらいで、髪は、牙皇子さまのように美しく波うった青緑がかった黒い長髪で……」
【フィナーレ】 ようするに、キバちゃんと同じってことね(笑)。キバちゃん、心あたりはある?
【牙皇子】 「まさかアイツが……」とだけつぶやいておこう。プレイヤーには心当たりないけどな(笑)。ところで、海を渡って東を目指したらしいが、ここから東と言うと?
【GM】 もちろん、東の果ての島『竜の棲む島』だ。
【フィナーレ】 災厄うんぬんとか言われてた島ね。
【牙皇子】 では、タレ込みのシーフには「ご苦労」と言って500フィスを握らせて帰す。そのついでに、フィナーレを呼んでこさせよう。
【フィナーレ】 呼ばれた。なんでございましょう。
【牙皇子】 そのディメンジョン・ゲートのような物の正体を調べろ。
【フィナーレ】 じゃ、とりあえず〈センス・マジック〉。
【GM】 すさまじい魔力を感じる。そして、上位古代魔法の上の上の遺失魔法に、こういう空間を歪ます魔法があったかも知れない、とフィナーレは思う。
【フィナーレ】 触ってみる。
【GM】 見えない壁があるようだ。
【フィナーレ】 全力で石をぶつけてみる。
【GM】 全力で跳ね返ってきた。
【牙皇子】 私も触れてみよう。
【GM】 そうすると、キバちゃんの手はその空間の中に入る。
【牙皇子】 ほう。なら、フィナーレの手を握って奥へ入る。
【GM】 牙皇子は入れるけど、フィナーレは入ってこれない。
【フィナーレ】 キバちゃんの服のなかに入れてもらって、もう一回挑戦。
【GM】 二人羽織りかいな。そうすると、フィナーレはキバちゃんの服の中で、ガラスに押し当てられたように顔がひしゃげてブサイクになってるんだな(笑)。

謎の迷宮

【牙皇子】 しょうがない。フィナーレにテントと毛布を与えて、私だけゲートの中に入って行く。
【フィナーレ】 あたしは外でおとなしく待ってるよ。
【GM】 中は真っ暗。というか真っ黒で、その中に灰色の下る階段が浮かび上がってる。階段はキバちゃんの足元から、まっすぐ伸びてるね。
【牙皇子】 進む。
【GM】 進むんだね? じゃあ、ここでパーティはふた手に別れたわけだ。とりあえず、外で待機のフィナーレから処理しましょう。
【フィナーレ】 はい。あたしはいま、テントを張ってる最中で〜す。「しまった、小型ハンマーも借りとくべきだった」と言いながら(笑)。
【GM】 そんなフィナーレのところに、小さな男の子が走ってくるよ。だいたい、10歳ぐらいかな。キミのそばまで来ると、「お姉ちゃん、冒険者でしょ? 町の人が言ってたよ。だったら、兄ちゃんを探して」って言う。
【フィナーレ】 何だかよくわかんないけど、聞くだけ聞いてあげよう。詳しく話してみなさい。
【GM】 この子の名前は、アラン。話によると、彼の12歳年上の兄ギルは、優秀な剣士だったらしいが、3年前、両親が死んだときに引退し、ここ地元で父の後を継いで漁師になった。もちろん、カタギの仕事で兄弟ふたりの生計を立てるためだ。
 優秀な戦士ギルの漁師としての腕前はさっぱりで、10歳のアランも兄とともに自ら漁に出て、なんとか暮らせるありさまだった。そのうえ、海が荒れはじめてからは、町全体が貧しくなってきだした。
【牙皇子】 もとの剣士稼業に戻ればよかったのに。
【GM】 剣はまっさきに食費と交換したからね(笑)。ついに食料を買う金も尽きたとき、ギルは果敢にも荒れた海に漁に出た!
【フィナーレ】 なんて無謀な。
【GM】 近海では魚が捕れなくても、沖のほうなら、まだ捕れるかも知れないと思ったんだね。ところが、ギルはそのまま行方不明になってしまった。
【フィナーレ】 しかしな〜、1ヶ月も行方不明になってんなら、ふつうはもう、死んじゃってるんじゃないかな〜。
【GM】 アランは「そんなことはないよ! 生きてるってわかるんだ。どこにいるのかもわかってる。この指輪が教えてくれるんだ」と言って指輪を見せる。
 それは、アランとギルが死んだ両親からもらった指輪。これには魔法がかかっていて、もう一対の指輪がどこにあるのかが、多少わかるようになっているらしい。
【牙皇子】 そいつはおいしいアイテムだな。まだ売る物が残ってたんじゃないか(笑)。
【GM】 いや、これはいちおう両親の形見なんだし──って、キバちゃんはここにはいないんだから、チャチャを入れるな。
 アランは「依頼料ならあるんだ」と言って、小さな手で五フィスを差し出すよ。
【フィナーレ】 「そんなはした金で、このあたしを雇えると思っとんのかぁ!!」と言いたいけど、ここはグッとこらえよう(笑)。
【GM】 アランは「いますぐ行こうよ。指輪の光が、だんだん弱くなってきてるんだ」と、フィナーレの手を引っ張る。「兄ちゃんが死んじゃうかも知れない」
【フィナーレ】 しょうがない。キバちゃんが帰ってきたときのために、使い魔のサルサを時空の穴のそばに残して、ついてってあげよう。どっちに行けばいいの?
【GM】 「指輪は海の向こうだって言ってる」。というわけで、フィナーレは小さな舟が泊められてるところに案内された。その舟はアラン兄弟の物らしい。10歳と言っても、生活のために兄貴と一緒に漁に出てたんで、操船はできる。
【フィナーレ】 えらい、えらい。じゃ、その舟で行けばいいのね。
【GM】 ちなみに海は荒れてるんやわ(笑)。それでもアランはさっさと舟に乗り込む。「お姉ちゃん、早く行こう!」
【フィナーレ】 しょうがない、乗ってあげましょう。
【GM】 では、フィナーレとアランは荒れた海に、小舟で出ました。
【牙皇子】 木の葉のごとき小舟は、荒波のなかで上へ下へと揺られるわけだ(笑)。
【GM】 「た、助けてくれ〜」って、そりゃ遭難してるんやがな(笑)。でも大丈夫、フィナーレたちは遭難していない。ただね、荒波のなかを果敢に進んでると、いきなり怪物が海中から現れて、小舟に上がってこようとするんだわ。
【牙皇子】 しかしその怪物は、舟に上がったとたんに破裂して死ぬんだな。深海に住んでるだけに(笑)。
【GM】 んなわけなかろう、チャチャを入れるなって(笑)。え〜、そいつは体長3メートルぐらいの、見るもおぞましい地虫のような怪物です。
【フィナーレ】 [怪物判定](ころっ)。
【GM】 それなら、そいつがモンスターレベル5の『シー・ウォーム』だとわかった。なになに、『ふつう深海に生息していますが(笑)、光に誘われて浅瀬にあがってくることもあります』だって。じゃあ、エサを食べにあがって来たんだろうね。
【フィナーレ】 戦わなくちゃいけないのか……。フッ、しょせんは血塗られた道か。
【牙皇子】 エサを捕りに来たということは、エサを与えれば戦いは避けられるわけだ。
【フィナーレ】 そんなにいっぱい、食料持ってないよ。
【牙皇子】 そばにいるではないか。柔らかい肉のいきのいい子供が(笑)。
【フィナーレ】 いくらなんでも、そこまではできない。人気投票が近いだけに(笑)。
【GM】 人気投票がなければやるのか(笑)。っていうか、いつ、どこで人気投票なんかがあるんだ。さて、アランは「怖いよ、お姉ちゃん」と言って、フィナーレの背中に隠れます。
【フィナーレ】 ウォームに〈エネルギーボルト〉(ころっ)13点のダメージ。
【GM】 シー・ウォームのフォナーレへの攻撃は、回避された。
【フィナーレ】 ふたたび〈エネルギーボルト〉(ころっ)14点。
【GM】 ……シー・ウォームは海底に沈んで行った……。
 ここで場面転換、牙皇子の巻。
 キバちゃんはね、真っ黒の空間の灰色の階段をず〜っと降りているうちに、魔法めいた力を感じる。その瞬間、正面の壁に巨大な竜のレリーフがある部屋に立っているんだね。レリーフに向かって右の壁に、扉があります。
【牙皇子】 竜のレリーフを観察してみる。
【GM】 するとその竜は、伝説の古代の黒竜に酷似していることに気づく。
【牙皇子】 この黒竜が何を意味してるのか、プレイヤーにはわからない。ということで、ひととおり観察したら、右手のドアから出ていく。

 キバちゃんは通路を進んで行く。すると、とある扉の向こうから、何やら物音が聞こえて来た。

【牙皇子】 扉を開ける。
【GM】 すると部屋の中には、犬の顔をした身長2メートルぐらいの怪物が4匹と、黒い鎧を来た男の剣士がひとりいる。ちなみに、男の鎧の胸には、こぶし大のアメジストが嵌まっている。皆、驚いてるようだね。剣士はキバちゃんを見て「何者だ!?」と言ってくる。
【牙皇子】 牙皇子だ!
【GM】 「牙皇子だっ」と言うわけだね。そうすると、黒鎧の男はその名にピクンと反応したようだ。そして、手下ノールたちに──あっ、正体言っちゃった──「奴を倒せッ。牙皇子を倒した者には、褒美を取らす!」と言う。
【牙皇子】 〈ファイアブレス〉(ころっ)ノールAに17点、Bに17点、Cにクリティカル・ヒット21点、Dに14点、黒の剣士に10点。
【GM】 ノールCは死んだ。残りの3匹はキバちゃんに襲いかかる。Aが当てたけど、鎧に止められた。黒の男は背後で静観。
【牙皇子】 もう1回〈ファイアブレス〉(ころっ)ノールAにクリティカル・ヒット20点、Bに11点、Dにクリティカル・ヒット25点、黒の男に13点。
【GM】 AとCが死んだ。ノールBの攻撃……かわされた。すごいな。黒の剣士は、背後の扉から出て行く。
【牙皇子】 マトックでノールBに攻撃。(ころっ)ヒット、15点。
【GM】 ……死んだ。
【牙皇子】 黒の剣士を追いかけよう。
【GM】 黒の剣士を追ってキバちゃんが扉から出ていくと、そこで再び場面転換してしまうわけなんだな(笑)。
【フィナーレ】 あたしの出番ね。はいは〜い。
【GM】 小舟に揺られること数時間、前方に小島が見えて来ました。「あの島に兄ちゃんがいる!」と、アランは言う。
【フィナーレ】 それじゃあ、島に近づくでしょう。
【GM】 しかし、島の海岸近くの浅瀬には、ワニが2、3匹群れてるけど。
【牙皇子】 鹹水性のワニってとこだな。
【GM】 ワニは最近エサにありついてないらしく、フィナーレを美味そうに見てるよ。
【牙皇子】 小舟に乗ってるんだから、関係あるまい。そのまま岸まで進め。
【フィナーレ】 進んで、上陸。
【GM】 上陸した。……ワニなんて関係なかったな。キバちゃんは黙っとくように!
【フィナーレ】 アランにどこに行けばいいのか聞いてみる。
【GM】 「指輪はこっちだって言ってるよ」と島の奥地を指さして、勝手にどんどんジャングルの奥に入って行きます。
【フィナーレ】 アランについていく。
【GM】 そうしてジャングルの中をさまよってると、突然、前方の茂みから体長8メートルの大蛇が2匹現れた。大蛇は先頭にいたアランに襲いかかる。
【フィナーレ】 〈エネルギーボルト〉2倍消費(ころっ)。大蛇Aに14点、Bに11点。
【GM】 2匹とも生きてるよ。
【フィナーレ】 でも、ひるんだでしょ? 大蛇がひるんだ隙に、アラン、さがりなさい。
【GM】 アランは「フィナーレ、怖い!」と言って、フィナーレの後ろに逃げ込む。
【牙皇子】 そして、フィナーレの背中をダガーでグサ〜っと(笑)。
【GM】 バック・スタブ! 「このときを待っていたのだ〜!」(笑)……だから、チャチャを入れるなっちゅーの!

 フィナーレはこの後、4発の〈エネルギーボルト〉で大蛇を撃退した。

【フィナーレ】 アランには、「こういうことがあるから、気をつけて進みなさい。」と叱っておこう。
【GM】 そして、ザッザと進むこと小1時間、洞窟がポッカリ口を開けているのが見えました。しかし、入口の前には巨人が見張りに立ってるんですね〜。怖いですね〜。ちなみに、見張りたちはフィナーレに気づいていないようだ。アランは「あの洞窟に兄ちゃんはいる」と言って、今にも飛び出して行きそうだよ。
【フィナーレ】 アランを押さえつけて、とりあえず[怪物判定](ころっ)。
【GM】 見張りの怪物の名は『トロール』。
【フィナーレ】 トロールか……。ホントにその洞窟に入らなきゃいけないの?
【GM】 そりゃ知らんよ。それを決めるのはキミじゃないか。ただ、アランは兄貴がそこにいる、ってことで行きたがってるけどね。
【フィナーレ】 しょうがない、〈スリープ・クラウド〉〜。(ころっ)2匹とも寝ました。じゃあ洞窟に入りま〜す。
【牙皇子】 その前にとどめを刺しておいたほうがいいぞ。
【GM】 言うなや〜、そんなこと〜。キバちゃんはここにはいないんだから、横から口を出すなっちゅーねん! この場にいるのは、フィナーレだけ。そこで黙って見てなさい。
【フィナーレ】 とどめを刺す〜。
【GM】 ──と思ったけど、洞窟の中から新たに2匹のトロールが姿を現す。どうやら、ちょうど交代の時間だったんだね。出てきたトロールたちは、眠っているトロールを起こしてしまうよ。
【フィナーレ】 起きても、もう1回〈スリープ・クラウド〉〜。(ころっ)全員眠らせました。とどめを刺して洞窟に入りま〜す。
【GM】 おいおい、モンスターレベル6やのにザコだな、しかし……。洞窟に入ったんだね。洞窟の中は真っ暗で何も見えません。
【フィナーレ】 しまったな、照明をキバちゃんに借りとけばよかった……。じゃあ〈ライト〉の魔法で明かりを確保します。

聖杯を手に入れて

 フィナーレはアランを伴って洞窟を進んでいく。
 罠にかかりつつ強引に入った部屋では、ガーゴイルを撃破、宝箱を発見。それを開けようとして、再びワナにかかる(辛くも毒針に抵抗)。宝箱の中には、時価13万フィスの魔法のダガーが入っていた。
 フィナーレとアランはさらに洞窟の奥を目指し、リドルつきの扉の前に来た。

【GM】 扉の横の壁には、『COLOR』『RO□GB』と書かれた石版がはめこまれており、その下には、パソコンのキーボードみたいなのがある。つまり、□に当てはまる文字を入力せよ、ってこと。
【フィナーレ】 英語で書かれてあんの?
【GM】 いや、もちろん下位古代語のクイズ。さっき言ったのは、現実の言葉に置き換えるとこんな感じですよ、という意味合いでのこと。フィナーレはソーサラーでしかもセージだし、下位古代語ぐらい読めるだろ。
【フィナーレ】 まあ、そーだけど……『COLOR』で『RGB』? なんのこっちゃ??

 10分経過(現実の時間で)。

【牙皇子】 いーかげんわかれよ〜。私はとっくに答えがわかってるぞ。
【GM】 キバちゃんは黙ってること! もっともアランも焦れたようで、「お姉ちゃん、わかった?」と聞いてくるけどね(笑)。
【フィナーレ】 ふにゃふにゃ(笑)。ぜんぜんわから〜ん!!
【牙皇子】 おまえ、ブルーになってるやろ。私はどっちかって言うと、グリーン(笑)。
【フィナーレ】 色を答えればいいんでしょ? それはわかってんだけど……じゃあ……白。
【牙皇子】 だ〜か〜ら〜……その石版の文字列な、私に言わせると『PRO□GBP』ということになる。
【GM】 うらァ〜、だーっとれェ〜、キバ公!!

 さらに20分経過(現実の時間で)。

【牙皇子】 『R』はレッド、『O』はオレンジで『G』はグリーン、最後に『B』がブルーだとするならば、□に入るものは?
【GM】 アランも「赤が橙になったり青が緑になったりするには、何色が必要なんだろ。その色の下位古代語の頭文字のボタンを押せばいいのかな」って言ってる(笑)。
【フィナーレ】 はあ……わかった。イエローで『Y』。
【GM】 すると扉は「ゴガガガガ〜」っていうて開いた。……ヒントというより、ほとんど答えじゃないか(笑)。

 ノールが待ち構える部屋に入ったフィナーレは、〈スリープ・クラウド〉で眠らせ、とどめを刺した。
 そして場面は、キバちゃんのところへ。

【牙皇子】 やっと出番か。もうすっかり忘れてしまったぞ、どういうシチュエーションの続きなのかを。
【GM】 4匹のノールを倒して、黒い鎧の剣士を追いはじめたところだ。
【牙皇子】 ああ、そうか。では追いかける。
【GM】 追いかけて行くと、進行方向右手に分路があるT字路にさしかかり、剣士は右へ折れた。キバちゃんがそれに続こうとしたとき、そこから新たにノールが4匹、戦闘態勢で現れた。
【牙皇子】 〈ファイアブレス〉(ころっ)ノールAに12点、Bに13点、Cに10点、Dにはダメージなし。
【GM】 そのときキバちゃんは、左手側に人影を見つける。魔法の明かりが灯った杖を持ってる見慣れた女性と、知らない子供。
 フィナーレのほうもね、通路の向こうで炎が噴き出るのを目にするよ。
【フィナーレ】 なんだろう、あの懐かしい炎は……(笑)。近づく。
【GM】 アランの方は炎を見てビビってますね(笑)。ちなみにノール4匹のキバちゃんに対する攻撃は、すべてはずれた。

 意外なところで邂逅を果たしたふたりは、ノールをあっさり蹴散らす。

【牙皇子】 では、黒の剣士を追う。フィナーレに「ついて来い」と命令。
【GM】 アランはキバちゃんを見て、怯えて足がすくんでるようだけどね(笑)。
【フィナーレ】 とりあえず、アランにキバちゃんを紹介しよう。あたしの仲間だから、怖がらなくていいと。
【牙皇子】 私は「なんだ、このガキは」と、上から見下げるような視線で言う(笑)。
【GM】 アランは「お姉ちゃん、怖いよ〜」ってフィナーレの後ろに隠れてしまう(笑)。さて、T字路を曲がって進むと、両開きの扉がある。
【フィナーレ】 [ワナ発見]〜。
【牙皇子】 そんなことする必要はない。さっき、黒の剣士が入っていった扉なんだからな。蹴り開ける。
【GM】 すると、中はけっこう広い部屋。黒の鎧の剣士と、その他に黒いローブを纏った男がいる。
【牙皇子】 ほう。部屋の状況の詳細を聞かせてもらおう。
【GM】 えっと、黒ローブの男のほうは、黒いフードを目深にかぶっているので、顔はよく見えない。黒の剣士はさっきの奴ね、胸にアメジストがはまった黒い鎧を着ている。
【フィナーレ】 さっきと言われても、あたしは初対面。
【GM】 アランは黒い剣士を見て、「兄ちゃん!」と叫ぶ。でも黒の剣士は何の反応も示さない。
【牙皇子】 私は黒ローブの男に「フードを取って顔を見せろ」と言う。
【GM】 黒いローブの男は言うよ。「貴様の命令の指図など受けませんよ」
【牙皇子】 「命令の指図」ゥ(笑)?
【フィナーレ】 知力低いでしょ、そいつ(笑)。
【GM】 おのれ〜、黒の剣士ギルが剣を抜いて向かってくるよ。
【フィナーレ】 その剣士に「アランの兄ちゃんでしょ?」と聞く。
【GM】 剣士は答えない。
【フィナーレ】 しゃあないな〜。〈スリープ・クラウド〉(ころっ)効かない。
【牙皇子】 私はフードの男のほうへ歩いてゆく。ズンズンと。
【GM】 じゃあ、剣士はそれを止めようとするよ。キバちゃんに攻撃……かわされた。フードの男は、ようすを見ている。アランは「兄ちゃんを殺さないで!」と言っている。
【フィナーレ】 「殺すな」って言ったってな〜。
【牙皇子】 こういう手合いは、ドラマチックな展開で記憶を取り戻すのが定石。呪歌の〈ノスタルジィ〉でも歌ってみろ。
【GM】 いいね〜。そういうのって大好きだから、ドラマチックに演出してあげるよ。
【フィナーレ】 じゃ、ダメもとで〈ノスタルジィ〉。効果が出るまで4ラウンド歌いつづけなきゃいけないから、拾った魔法のダガーをアランに渡す。「これで自分の身は自分で守ってね」
【牙皇子】 アランのバック・スタブ。「かかったな、フィナーレ!」(笑)
【GM】 「この日を待っていたのだ〜!」(笑)ウソウソ。キバちゃんは、フードの男の前まで来た。
【牙皇子】 では、フードをはね除けて顔を見てやる。
【GM】 するとね、そこにあるのはキミにそっくりな顔だった。
【フィナーレ】 ドッペルゲンガー?
【GM】 違うよ。その男はニヤリと笑い、キバちゃんに〈ファイアブレス〉を吐く。……[精神力抵抗]されたけど、13点いったよ。次のラウンド。
【フィナーレ】 〈ノスタルジィ〉2ラウンド目。
【GM】 ギルの鎧の胸のアメジストが、怪しく光る。どうも、呪歌などの魔術的な力は、その宝石に吸い込まれて効果をあげないようだ。
【フィナーレ】 どこがドラマチックな展開なんだか。
【牙皇子】 私は〈パーシャル・ドラゴン〉(ころっ)変身。
【GM】 剣士ギルはフィナーレに攻撃……おっと、それは命中だね。ダメージは5点。黒ローブの男は〈パーシャル・ドラゴン〉(笑)。
【フィナーレ】 魔法の力はアメジストに吸い込まれてるんだったね。じゃあ、アメジストを狙って攻撃。(ころっ)クリティカル・ヒット、15点。
【GM】 ……それなら、アメジストは粉々に砕ける。すると、ギルの鎧が黒から白に変わる。ギルはその場にバッタリ倒れた。アランが「兄ちゃん!」と叫びながら、ギルに駆け寄る。

 パーシャルしたキバちゃんは、自分そっくりの黒ローブの男を追い詰める。しかし、あとひと息というところで、男は黒いローブだけを残して消えた。

【GM】 部屋の奥には宝箱が置かれてあるよ。
【フィナーレ】 あたしは魔法のダガーを返してもらうために、感動的な再会をしてる兄弟のところへ行く。
【GM】 フィナーレが「返して。」と言う前に、アランが言うよ。「ありがとう、お姉ちゃん! ボク、このナイフを大事にするよ! そしていつかきっと、お姉ちゃんみたいに強くなるんだ」(笑)
【フィナーレ】 じゅ、13万フィスのダガーが……このクソガキ! と、心の中では思いつつ、面には出さない。人気投票も近いし、いいお姉ちゃんのままでいよう(笑)。
【GM】 だから人気投票なんかない、っつーの。
【牙皇子】 私は宝箱を開ける。
【GM】 するとね、中には竜の彫刻が施された黄金の杯が入っていた。一見、豪華な意匠に見えるのは、じつは何らかの魔力を引き出すルーン文字だったりするんだね。牙皇子は知っているよ、その杯の正体を。
【牙皇子】 つまり、私が探し求め続けているものの1つだということだな。
【GM】 そのとおり。おめでとう。
【牙皇子】 ふははははは! ……と高笑いしたい衝動は抑えて、後ろでアラン兄弟とカンドー的な場面を演出しているフィナーレに気づかれぬよう、さっさと袋にしまう。そして「くそッ!この宝箱、カラだぜ」と聞こえよがしに言っておこう。

 キバちゃんの入ってきたゲートはすでに消滅していたため、ふたりはアラン兄弟を伴い、フィナーレがやって来たルートを逆にたどって、ルーベンスの町に戻って来た。

【フィナーレ】 ああ〜、けっきょく海岸に残したサルサって、何だったんだろう。
【GM】 待ちくたびれて餓死してなきゃいいけどね(笑)。

÷÷ つづく ÷÷
©2001 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2001 Jun Hayashida
Map ©2001 Moyo
▼ もしよろしければ、ご感想をお聞かせください ▼
お名前
ひと言ありましたら
 
≪REV / EXIT / FWD≫