▽ 竜の棲む島へ | ▽ 騙されてマイハート |
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【GM】 さてと、前回はアランの兄貴ギルを助けて、ルーベンスの町に戻って来たところで、終わったんだったね。キミたちはいま、ルーベンスの町の宿屋にいます。アラン兄弟の家は小汚いから、とてもじゃないけど牙皇子さまをお泊めするわけにいかなかったんだろうね(笑)。
【フィナーレ】 で、これからどーするの、キバちゃん?
【牙皇子】 ダークエルフを追って行ったロスからは、新たな伝言はないのか?
【GM】 あるよ。ロスがルーベンスの宿屋で借りた伝書鳩が、昨日帰ってきたそうだ。その足にくくりつけられていた手紙には、「我、竜の棲む島に到着。ダークエルフと最後のブツは、この島のどこかにある模様」と書かれてあった。
【フィナーレ】 そういえば、「竜の棲む島から世界を滅ぼすとかいう災厄が生まれる」って噂されてたよね。ダークエルフと関係あるのかなぁ。
【GM】 さあね。正確には、「災厄はメカリアの東から来る」っていうのが占星術の結果であって、「竜の棲む島から来る」というのは一説に過ぎない。ま、どの道、それが知りたければ、行って確かめるしかないな。
【フィナーレ】 つまり竜の棲む島に行け、と(笑)。
【GM】 いや、どうするかは自分の意思で決めて欲しい。
【フィナーレ】 どうするの、キバちゃん?
【牙皇子】 前回も言ったが、災厄うんぬんというのではなく、最後のアイテムがそこにあるというのなら、私はそこに行かねばならん。ってことで、質問。船は手に入るのか?
【フィナーレ】 アラン兄弟に聞いてみよう。
【GM】 それなら、ギルが漁業ギルドにかけあってくれ、1隻の船を借りることができた。それは動かすのに8人の水夫が必要な、『スチュワート号』というかなり年季の入った船。ちょっとやそっとでは沈まないという逸品です。
ギルは、荒れた海でも繰り出せる屈強の船乗りたちの紹介も、世話してくれるらしい。ただし、人件費はそっち持ち。水夫ひとりにつき、1日20フィスが必要です。
【フィナーレ】 ギルはついてこないの?
【GM】 ギルはアランと一緒にルーベンスに残る。呪いの支配から解放されたばかりで、まだちょっと長い旅に耐えられるような身体じゃないからね。
【牙皇子】 それでは水夫頭に、契約金として1000フィスを手渡す。あと、日数がオーバーしたら、追加料金を支払おう。
【フィナーレ】 で、竜の棲む島のどこを目指せばいいんでしょう?
【GM】 ロスの報告によると、竜の棲む島の南西には、ンギグミという港町があるらしい。ダークエルフたちやロスは、そこから上陸したという。ちなみに、ンギグミはルーベンスの町の人にも知られている港です。
基本的に、大陸の国々と竜の棲む島の間に交易はありません。ただ、海が穏やかだった頃は、年に1回ぐらい、ンギグミからルーベンスから船が来たり、逆にルーベンスからンギグミに出航したりしてたらしい。ンギグミは食糧を買い、ロメ王国は竜の棲む島で豊富に採取される銀を買っていたという。
【牙皇子】 そのンギグミというのは、どんな町なんだ?
【GM】 けっこう大きい町。メカリア王国のルニオールと同じぐらいかな。住んでる人間そのものは、大陸の──オムスク人と大差ない。ただ、古代魔法帝国時代に〈ザンナール〉の魔力にさらされたわけじゃないし、オムスク人と交わりを持ったわけでもないから、細かいところでは違いがあるかな。言語はオムスク語に近いけど、大陸側から見ればかなりなまってる。
【フィナーレ】 じゃあ、言葉が通じないわけじゃないのね。
【GM】 まあね。もともとオムスク語は下位古代語から派生したものだから、オムスク語が話せる魔術師のフィナーレなら、問題なく会話できるんじゃない?
あと、人間以外の種族、つまり亜人に関してはかなり相違がある。まず、大陸で見かけるエルフ、ハーフエルフ、ドワーフ、グラスランナーという種族はもちろん、ケンタウロスやダークエルフ、『残されし者の森』のみに生息するホビット、ハーフリングといったものはいない。
【牙皇子】 じゃあ、ロスが追ったダークエルフは、もともとは大陸の者だったのか。
【GM】 そういうことになるね。竜の棲む島にいる亜人は、リザードマン、ドラッヘ、ルプス、パンテーラといったもの。
【フィナーレ】 リザードマン以外、何だか妙なものが混じってるんですけど(笑)。
【GM】 そりゃそうだ。ソード・ワールドにはいない種族なんだから。ドラッヘは直立二足歩行の半竜半人。〈パーシャル・ドラゴン〉を使った、ドラゴンプリーストみたいな感じ。なんでこういった種族が生まれたのか、まったく不明。リザードマンの上位種とも噂されている。
【フィナーレ】 竜人か。それで『竜の棲む島』なのね。
【GM】 まあ、それもあるけど、ここには大陸でも一部の人間に知られている強力な龍神が住んでるから、というのが主な理由かな。
あと亜人の補足。ルプスは顔が狼で身体が人間、という種族。パンテーラは同じ造りで顔が豹。この狼頭、豹頭、2つの種族の出自も、いまのところ不明。どの種族も人間と友好関係にあるよ。
【牙皇子】 ンギグミに行けば、そういったのがゴロゴロいるわけだな。
【GM】 ゴロゴロじゃないと思う。だいたい、一般的な町でエルフやドワーフを見かけるぐらいの割合だと思ってください。
【フィナーレ】 多いんだか、少ないんだか、よくわからん(笑)。
【GM】 冒険者をやってると、亜人との出会いが多いからねぇ。(笑)。じゃあ、TRPGを知らない人が『ハーフエルフ』だの『ゴブリン』だのという単語を耳にするぐらい珍しいと──。
【牙皇子】 その例え、余計にわからんぞ。
【フィナーレ】 ま、とにかくンギグミに行きますか。
【GM】 OK。じゃあ、スチュワート号に乗ってください。出航しますよ?
ふたりは東の果ての島、竜の棲む島に向けて、再び大海原に繰り出し船上の人となった。途中、襲ってきた大ダコを蹴散らし、2週間後には、竜の棲む島西の海岸線に近づいた。
『スチュワート号』はそこで針路を南にとり、海岸沿いに南下。港町ンギグミを目指す。
ところが、ある砂浜近海を通過中のこと。浜辺の奥の松原の中から、〈ファイア・ボルト〉が数発飛んで来た! 船は炎に包まれたが、幸い怪我人は出なかった。何とか消火したものの、スチュワート号は深刻な損傷を受けてしまい、修理が必要になってしまった。
やむを得ず一行は、浜辺から竜の棲む島に上陸した。
【牙皇子】 フィナーレ、付近一帯を〈センス・エネミ〉で索敵せよ。
【フィナーレ】 は〜い。(ころっ)
【GM】 え〜、その辺り一帯には、敵意を持ったものは存在しない。どうやら、スチュワート号が炎に包まれた時点で、〈ファイア・ボルト〉を放った何者かは、付近から離脱したらしいね。
【牙皇子】 しかし、注意は怠らんようにせねばな。水夫たちには、修理を急がせよう。
【GM】 セイラーズは汗水たらして、一生懸命船の修理に励む。キミたちがそれを手伝うとは思えないので、たぶん、砂浜をブラブラしてるんだろうね(笑)。
そうするとですね、ふたりは船からちょっと離れたところに、人影がひとつ、倒れてるのを見つける。
【フィナーレ】 近寄ってみる。どんな人物なのかな?
【GM】 冒険者っぽいかっこうをしたエルフですね。うつ伏せで倒れてます。
【牙皇子】 足でゲシッと仰向けにさせる。
【GM】 じゃあ、顔が見える。ずばり、ロスです! ずいぶん傷だらけで汚れてるけど、死んではいない。意識を失ってるようだね。
【牙皇子】 ヒーリング・ワンドで治してやろう。
【GM】 ロスの傷は癒された。そしてロスは目を覚ますんだけど、キバちゃんの顔を見るなり、「牙皇子ぉ〜、なぜ俺たちを裏切った〜。俺はあんたのために尽くしてきたというのに〜」と言って、剣を抜いて襲いかかってきます。
【牙皇子】 何を言っているのかわからんが、とりあえず[武器狙い]で剣を叩き落とす。(ころっ)成功。
【GM】 じゃあ、ロスは痺れた腕を押さえてうずくまる。「俺たちはあんたに忠誠を誓っていたというのに、なぜ、あんなことを……」と呻いてますね。
【フィナーレ】 いったい何があったんだ? 尋ねてみよう。
【ロス】 聞いてくれ、フィナーレ。牙皇子ったらひどいんだ。
【フィナーレ】 ひどいのはよ〜く知ってる(笑)。で、何があったの?
【ロス】 俺とレイディアスは牙皇子さまに裏切られたのだ。
【牙皇子】 人違いじゃないのか?
【ロス】 とぼけるな! あれは確かに、あんただ!
【GM】 状況を説明しましょう。ロスは、牙皇子からあるアイテムの探索を命じられていたんだね。そしてロスは、ルーベンスで謎の男やダークエルフ、怪しげなアイテムの情報を得て、レイディアスという、もうひとりのキバちゃんの部下である三つ目の男と共に、この竜の棲む島に渡って来てたわけだ。
そして、キバちゃんが探しているアイテムのひとつが、この島のどこかに運び込まれていることを突き止めた。そのアイテムの行方を探しているうち、ここから2日ばかり北に行ったところに、ある館を発見した。忍び込んだその館の中で、ロスとレイディアスは、キバちゃんそっくりな男と出会った。
【牙皇子】 なるほどな。前回のセッションの最後に出てた、黒いローブの男だろうな。コードネーム『かばみこ(仮名)』と名付けてやる。
【GM】 やめてくれよ、そんな名前。で、コードネーム『かばみこ(仮名)』の手には、キバちゃんが探し求めていたアイテムが握られていたという。ロスとレイディアスは、てっきりキバちゃんが自分でそのアイテムを発見したんだと思ったんだね。そしてかばみこ(仮名)に近寄ったとき──。
【ロス】 いきなり炎を吹きかけられ、さらに、配下らしきダークエルフたちにも襲われた。そして、命からがらここまで逃げて来たというわけだ。今にして思えば、こんな辺境の地に、牙皇子さまがおられるわけがないんだ! だから貴様も偽者だッ!
【牙皇子】 おい、伝書鳩で私を呼んだのは、貴様だろう(笑)。
【ロス】 それはそうだが、だからと言って、あの人がカーテンの奥から動くはずがない! だって、影の総統なんだからッ(笑)!!
【フィナーレ】 それは一理あるけど。ってことは何かい? あたしも偽物ってことかい?
【ロス】 牙皇子さまとフィナーレは、1セットだからな。不自然に思われないよう、フィナーレの偽物を用意してても不思議じゃない。
【フィナーレ】 でも、かばみこ(仮名)のそばには、わたしの偽物はいなかったんでしょ?
【ロス】 うっ、そー言えば……。
【牙皇子】 私そっくりな奴に殺されかけたからと言って、私をそいつだと思い込んで襲いかかって来たと言うのか。短絡的な奴だ。
【ロス】 で、では、あなたはまさか……。
【牙皇子】 「フッ、余の顔を見忘れたか!」と言ってやる。ここで足元のドライアイスが、モワ〜っと流れてゆくわけだな(笑)。
【ロス】 こ、このドライアイスは……! 牙皇子さまッ、あなたに剣を向けた愚かな私をお許しください!!
【GM】 ──と、ひれ伏すんやな。勝手にしてくれ(笑)。
【フィナーレ】 で、話は変わるけど、一緒にいたレイディアスはどーなったの?
【ロス】 わからん。途中ではぐれてしまった。
【GM】 と、その時、キミたち3人はすさまじい殺気を感じる。
【フィナーレ】 どこから感じるの?
【GM】 松原の中からだね。
【牙皇子】 そこに向かって、「出てこい」と誰何する。
【GM】 すると、五人の黒いエルフが姿を現した。いわゆるダークエルフですね。そのうち1匹は、レベルの高いリーダーだと思われます。
【牙皇子】 その中にダーク・ハーフエルフはいないか?
【GM】 は?
【牙皇子】 私の偽者がいるぐらいだから、フィナーレの偽者もいるかと思っただけだ。
【フィナーレ】 ブラック・フィナーレ(笑)。
【GM】 そーゆーのは見当たらないね。
【牙皇子】 じゃあ、フィナーレの母親が混じってるとか。
【フィナーレ】 あたしのお母ちゃんは、ダークエルフじゃな〜い! ……で、敏捷度が高いのはどっち? こっちから行動していいの?
【GM】 戦闘に入るんなら、順番はフィナーレ、キバちゃん、ダークエルフ軍団、ロスということになる。
【フィナーレ】 スケルトン・ウォリアーを3体召還する。〈スケルトン・ウォリアー〉(ころっ)成功。
【牙皇子】 私はパーシャルする。
【GM】 ダークエルフ軍団は〈エネルギーボルト〉、リーダーだけが〈バルキリー・ジャベリン〉。行ったのはフィナーレ、スケルトン・ウォリアーB、C、キバちゃん、ロスだね。おっと、スケルトン・ウォリアーC以外には[精神力抵抗]された。
【ロス】 〈ミュート〉5倍消費で魔法を封じる。(ころっ)ダークエルフBとリーダーに効いた。これで〈バリキリー・ジャベリン〉は使えないだろ。
3人の冒険者たちはあっさりとダークエルフ軍団を蹴散らした。
【フィナーレ】 世界を滅ぼす災いの元凶って、さっきのダークエルフは、それに関係してるのかなァ。
【GM】 ずいぶんそれにこだわるね(笑)。別に悪いことじゃないけど。まあ、そういうことは調査しないことにはわからないだろうな。
【ロス】 あいつらはきっと、俺を追って来たんだ。俺とレイディアスが忍び込んだ館の、ダークエルフに違いない。
【フィナーレ】 かばみこ(仮名)の部下ってところね。スチュワート号を攻撃してきたのもあいつらね、きっと。
【牙皇子】 それはいいとして、最後のアイテムは、間違いなくかばみこ(仮名)が持ってたんだな?
【GM】 それは間違いないらしい。ちなみに、かばみこ(仮名)がいた館の場所は、ここから2日ばかり北に行ったところにある、2つの火山に挟まれた谷間だそうです。
【フィナーレ】 つまり、その館に行けってことだね。
【GM】 別に強制はしないよ。ただ、そこにさっきのダークエルフたちや、キバちゃんそっくりな男がいる、っていうことだけで、どうするかはそっちの勝手。
【牙皇子】 何度も言ってるが、求めるアイテムがそこにあるというのなら、行くしかないだろう。
【フィナーレ】 いったい、キバちゃんは何を探してるの?
【牙皇子】 ふっふっふ。ついて来ればわかるさ。
【フィナーレ】 じゃあ、ひと晩休んで精神点を回復させてから、出発しよう。
【GM】 わかりました。
翌日、キバちゃんたち一行は様々な障害を克服し、北のふたご火山の狭間にあるという館にやって来た。
【GM】 それは大陸でもよく見かける、2階建ての洋館だね。わりと古いようです。
【牙皇子】 竜の棲む島にの建物は、大陸とは違う造りだと聞いたが?
【GM】 たしかにそう言ったけど、それが古代魔法帝国時代のものだと話は別。
【牙皇子】 なるほど。
【フィナーレ】 サルサ(=使い魔のフクロウ)に、館を偵察させよう。
【GM】 カーテンがかかってたり、鎧戸が閉められたりしてるから、中はよく見えない。けど、明かりは灯ってるようだし、人の気配がするから、無人の館というわけではなさそうだね。
【牙皇子】 中に入ろう。ボスのところまで行ったというロスに、館の中を案内させる。
冒険者たちは館の中を探索し、途中、魔力にプラス1される指輪を発見した。その後、食堂でダークエルフを倒して、2階に上がった。
そして、2階にあった大広間で、3人はダークエルフ・キングと遭遇した!
【GM】 ダークエルフ・キングは、ある女の人……いや、女のエルフを抱えて、その首筋に毒を塗ったナイフを突きつけている。
【ロス】 人質ってわけかい?
【牙皇子】 私たちを相手にして、そんな行為に何の意味がある。
【GM】 あるんですね〜、これが。
【フィナーレ】 その女のエルフって、知ってるひとなの?
【GM】 フィナーレはめちゃめちゃ知ってる。知ってるも何も、ずばり、フィナーレのお母さんのディアーヌさんです。
【フィナーレ】 お母さんってホンモノ? 偽者とか、幻影じゃなくて?
【GM】 間違いなく、本物です。
【フィナーレ】 おかしいな〜。あたしのお母さんは、故郷の村にいるはずなのに。
【GM】 誘拐されてきたに決まってるじゃないか。お母さんは「フィナーレ、わたしのことはいいから、こんな黒エルフなんか殺っちゃいなさい!」と言っています。
そして、ダークエルフ・キング曰く「よくぞここまで来たな、我が主と対なす者、牙皇子! 貴様のことは、我が主より聞いている。主は、すでに竜剣を手に入れられている。あとは貴様の持つ、ふたつのアイテムを奪うのみ!」。
【牙皇子】 かばみこ(仮名)はここにはいないのか?
【GM】 見当たらないね。
【フィナーレ】 なんであたしのお母さんが人質にされなきゃいけないのよ〜?
【GM】 ダークエルフ・キングは「フッ。貴様らのような情に弱き下等生物どもは、こういう展開に弱いってことを知っているぞ。ハーフエルフの娘よ。母の命が惜しくば、牙皇子の竜杯を奪い、おまえ自身がこちらへ持ってくるのだ!」と言う。
【フィナーレ】 そんなムチャな。あたしに「死ね」と言うか(笑)。
【GM】 「母がどうなってもよいのだな? 人気投票に響くぞ」
【フィナーレ】 そ、それを言われると……。
【牙皇子】 つまりフィナーレは、母親の命よりも自分の人気の方が大切なわけだ(笑)。
【GM】 言い忘れてたけど、ここにはあと2匹、リーダー級のダークエルフがいます。そいつらは、キミたちが要求を飲まない場合、いつでも〈バルキリー・ジャベリン〉を撃ちこめるように準備している。
【牙皇子】 つまり、要求を呑もうが拒もうが、どのみち殺されるというわけだな。ならば力ずくで正義を通す以外にあるまい。
【フィナーレ】 よ〜し、それなら3倍消費で達成値にプラス2して、ダークエルフ・キングに〈パラライズ〉をかける。それッ! (ころっ)
【GM】 なるほど、ダークエルフ側の要求と警告は無視するんだね。この一撃で決められなければ、お母さんの命はないと思ってくれ。ちなみに、キングの抵抗値は高い──効いたようだね、そいつは。
【フィナーレ】 じゃあ、キングはマヒしてしまったよ。
いかにキングと言えど、麻痺してしまえば怖くない。ダークエルフ・キングは、何にもしないうちにキバちゃんのマトックによって脳天を貫かれ、殺された。
しかし、キバちゃん一行の弱点は、回復呪文の使い手がいないこと(前回のセッションから、完全版を使用。つまり、正規の竜語魔法を採用しています)。
ふたりのダークエルフ・リーダーの〈バルキリー・ジャベリン〉に、パーティは窮地に追い込まれた。GM、大いに喜ぶが、ロスの〈シェイド〉で精神点を削られ、魔法が使えなくなると、形勢はあっさり逆転。
最後にロスのクリティカル連打の〈バルキリー・ジャベリン〉を食らい、ダークエルフたちは轟沈した。
パーティはフィナーレの母親を助けると、2階のまだ行ってない部屋を探索し、宝箱をふたつ発見した。フィナーレがそれを開けてみると……。
【GM】 体長20センチぐらいの木製の人形が入ってます。
【フィナーレ】 セージ技能で[宝物鑑定]する。(ころっ)
【GM】 それは『スケープ・ドール』だとわかった。壊れるまでダメージを身代わりに受けてくれる、魔法の人形ですね。
【フィナーレ】 こいつは欲しいな、もらっておこう。
【GM】 ちなみに、人形自体がダメージを受けた場合、スケープ・ドールが破損するんじゃなくて、キャラクター自身の生命力が減ることになるから注意してね。
【牙皇子】 それはいいことを聞いた。私が徴収してやる。
【フィナーレ】 ダメっ! もう、荷袋に入れたからね!
【ロス】 ……〈スリープ〉……(ころっ)。
【フィナーレ】 [精神力抵抗]してやるぅ。(ころっ)ぱたっ。
【GM】 それはさすがにフィナーレのお母さんが助けようとするよ。
【牙皇子】 呪文が効いたあとでか?
【ロス】 すかさずレイピアで牽制するぜ。
【牙皇子】 では、スケープ・ドールを頂こう。そして、こんなこともあろうかと予め用意していた、スケープ・ドールそっくりの人形をフィナーレの荷袋を入れておく。
【フィナーレ】 あ、あんたって人は……(笑)。お母ちゃん、起こして。
【GM】 そいつはムリだ。フィナーレ・ママは〈ディスペル・マジック〉が使えないので、ロス自身に術を解いてもらう以外にない。
【ロス】 〈スリープ〉を解いてやる。
【牙皇子】 そして目を覚ますと、「大丈夫か?」と言って優しく抱き起こしてやっている私がいるんだな(笑)。
【フィナーレ】 そうするとあたしは、くらっとめまいがしたとしか思ってないわけ? そんで「キバちゃんって優しい〜」って思うわけ? プレイヤーはこのヒドイ仕打ちを知ってんのに、キャラクターは気づいてないなんて。
【GM】 なるほど。そうやって騙され続けてきたんだ、フィナーレは。ほとんどギャグ漫画や、おまえら(笑)。
【フィナーレ】 あ〜、情けない。あたしって、いったい……。
【ロス】 あとは、フィナーレの母親の口を封じればそれでよし、と。
【フィナーレ】 おいおい。そこまではちょっと。GM、もう片方の宝箱を調べます。
【GM】 すると、魔法のマントが入ってた。それを身につけると、空を飛べるようになるらしい。
【フィナーレ】 これは欲しいなぁ……っと。
【牙皇子】 いいだろう。私には必要のないものだし。
【フィナーレ】 じゃあ、袋にしまう。
【牙皇子】 さて、とりあえず、さっきの戦闘で使いこんでしまった精神力を回復させねばなるまい。もはやここに敵はない。どこか適当な部屋で休むとしよう。念のために、1箇所に固まっておくぞ。
【フィナーレ】 あと、扉とか部屋の近くには[ワナ設置]しておきます。
【GM】 そんで次の朝、自分で自分の罠にかかってまうんやろ。
【フィナーレ】 そこまでマヌケじゃないよ〜。
【GM】 そういうことにしときましょう。それで、見張りは立てないの?
【牙皇子】 ……これは何かあるらしい。じゃあ、フィナーレのおかんに徹夜しといてもらおう。私たちは精神力を回復させねばならんからな。
【GM】 げっ、ひとの母親に完徹させるか。
【フィナーレ】 お母ちゃん、総統命令には逆らわないほうがいいよ(笑)。
【GM】 「フィナーレ、あんたいつもこんな目に遭ってるの?」
【フィナーレ】 「うん。でも、ときどき優しいの」……って言うんだろーなぁ。早く気づけ、フィナーレ! あんたは騙されてるのよ!
【GM】 お母ちゃんも、その言葉が喉まで出かかってるだろうね。言ったら最期だけど。
【牙皇子】 まるで私が極悪人であるかのような言いぐさだな。
【GM】 まさか、この期に及んで「悪人じゃない」って言うつもりか?(笑)
【ロス】 そうッスよ! 悪人じゃないキバさまなんて、魅力ねえッスよ! 悪には悪のカリスマがっっ!
【GM】 それ、なんか違う(笑)。
【フィナーレ】 ロスは悪に惹かれて、仲魔になってるのね。邪悪に魅了された者と、騙されてる者。
【ロス】 キバさまにくっついて、甘い汁を吸ってやる。
【GM】 史上最悪のパーティやな。それじゃあ、フィナーレ・ママの完徹で見張りということで、皆さんは眠りに落ちていきました。
で、真夜中。ママが「みんな、起きて!」と叫びます。見ると、キミたちが使っている部屋の出口の前に、黒いローブの男が立っている。
【フィナーレ】 おっかしいな〜、出入口にはワナをしかけておいたはずなのに。
【GM】 ドアは開いてない。どうやら、その男は幻影のようです。そう、前回のセッションのラスト近くで登場した、かばみこ(仮名)だ。
かばみこ(仮名)の幻影は言う。「どうやら、彼らは失敗したようだね。あなたには小細工は効かないようだ。さすがは牙皇子、と褒めておこう」
【牙皇子】 フッ、褒められておいてやろう。……で、GM。牙皇子はかばみこ(仮名)のことを、知っているのか?
【GM】 残念ながら、プレイヤーにもキャラクターにも心当たりはないね。そして幻影は、「牙皇子、ここに竜剣がある」と言って、一振りの短剣を見せた。キバちゃんは、それの正体をすぐに見抜く。それが、キバちゃんの探している最後のアイテムに間違いない、ということを。
【牙皇子】 竜剣は人間が持っていてもしかたのない物だ。なぜ私の邪魔をするのか、尋ねてみよう。
【GM】 「フッ、僕とあなたは対なす者。しかし、その根底では同一のものなのですよ」
【フィナーレ】 いったい、何の会話なの? あたしにもわかるよーに言ってほしいな。
【GM】 「それを知りたければ、僕のところまで来なさい。僕はそこから東、かつて、竜とひとが共に暮らしていた町の、廃墟の城にいます。待ってますよ、牙皇子が最後のふたつのアイテムを持って来てくれるのをね」
【牙皇子】 そうだな、貴様の竜剣を頂きに行くとしよう。
【GM】 幻影は消える。そして、朝がやって来た。
【牙皇子】 出発するぞ。東の廃墟の城とやらに。
【GM】 OK。さーて、このキャンペーンも残すところ、あと2回。キバちゃんはいったい、何を求めているのか!? そして、かばみこ(仮名)の正体とその狙いは!? いよいよ謎の核心に迫る次回に乞うご期待!