≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第33話§

黄金の笛の勇者たち

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 妖魔たち、使命を受ける事 ▽ 妖魔たち、グルガーと会う事 ▽ 妖魔たち、選ばれる事

妖魔たち、使命を受ける事


 時は再び巻き戻り、レムリア暦530年5月16日となります。『天の心』を求めてオレンブルクを発ったティガーたちが、バウツェンへ向けて、街道を西へ進んでいる頃です。
 舞台は、オレンブルクの街の南東にある森の奥深く、沼のほとりに拓かれた、妖魔たちの集落です。

 半年程前、この沼の集落で、“カンス祭り”という祭りが行われました。
 カンスというのは、レムリア土着の妖魔たちの頂点に立つ、偉大なダークエルフの名前。サリア地方の南に浮かぶ“エルフの島”に住んでいるという――。

【GM】 そのカンスさまが、ペットの子山羊に暗黒神クートラを降臨させた日を記念して行われるのが、“カンス祭り”。とくに前回の祝祭は、300周年のメモリアルで、ここ沼の集落でも、すごい気合の入りようでした。
 そして、沼の集落の祭りは、樹齢300年のエントの木を持ち帰り、祭儀をとり行う闇司祭を人間どもから救い出した、ダークエルフの男性アヤと、雄ゴブリンのキラの活躍によって、大成功を収めました。
【ミホ】 このミホちゃんっていうダークエルフは?
【GM】 ミホちゃんは、闇司祭と共にオレンブルクの牢屋に囚われてたところを、キラたちに助け出されて、この集落に住むことになった人物。
 いちおう、キラたちの部下、ってことになってます。
【ミホ】 OK。……52歳の男ね。
【アヤ】 アヤちゃんは120歳の男やで。精神年齢は、永遠の10歳。ガングロ。
「あ〜、渋谷行きてぇなぁ」(笑)
【GM】 さて、アヤたちの活躍で大成功した沼の集落の“カンス祭り”は、妖魔界で噂になり、その評判は、遠く南の“エルフの島”まで届いた。
 “エルフの島”におわすカンスさまは、沼の集落の祭りの評判を耳にして、「これは褒めてやらねばならん」とて、なんと、この集落に行幸(ぎょうこう)あらせられるそうな。
【キラ】 すごいな。
【GM】 それを受けて、沼の集落は、上へ下への大騒ぎ。
【アヤ】 カンスさまって、ヒマやねんな。
【ミホ】 しょぼい村やのに。
【GM】 だから、しょぼくないようにしないといけない。わかるね?
 族長のマレイツさまは、アヤとキラを呼びつけた。ミホは彼らの部下なので、ふたりに付き従って、族長のもとへ行く。
 キミたち3匹は、マレイツさまの前に畏まっています。
 2匹の強そうなダークエルフを従えたマレイツさまは、この部族でもっとも強いダークエルフ。呼び出しをくらうと、やっぱり、ちょっと緊張するね。
【ミホ】 何も悪いことしてへんで。
【GM】 叱るためじゃなくて、使命を与えるために呼んだの。
【キラ】 仕事か〜。
【GM】 「4ヶ月後、カンスさまがこの地へおいでになるのは、すでに知ってのとおり。
 私は、森に住むパンというサテュロスの若者にの笛の演奏で、カンスさまをお慰めすることにした。パンは、笛の名手として名高いからね」と、マレイツさまは言った。
【ミホ】 サテュロス?
【GM】 上半身が毛深い人間、下半身が山羊という、音楽とお祭騒ぎが大好きな森の種族のことです。耳はちょっと尖ってて、頭の横から短い角が生えてるらしいよ。
【ミホ】 ふうん。
【GM】 「カンスさまの御前で演奏する条件として、名手パンは『黄金の笛でなら、演奏してもいい』と、言ってきた。
 そこで、キミたちに、黄金の笛を取ってきてもらう」
【アヤ】 は??
【GM】 「黄金の笛は、この集落にはないんだよ」
【アヤ】 じゃあ、普通の笛を金色に塗って、ポンって……。
【GM】 マレイツさまは、部族の偵察インプから笛の情報をしっかり聞いてるので、そんなごまかしは通用しない。
 もし、バレたら、〈バルキリー・ジャベリン〉が飛んできたりして、それはそれはもう、恐ろしいことになるよ。
【ミホ】 怖い、怖い。
【GM】 「偵察インプは、『黄金の笛』の在り処について、調べてきてくれている」と、マレイツさま。
「南のほうに、大根の産地として有名な、クラリオン系妖魔族の集落がある。
 その部族のゴブリンとインプが、3年前、ミドル地方“生命の滝”の主であるグランドヌッピョンという怪獣に、黄金の笛をあげてしまったらしい」
【キラ】 勝手なゴブリンやな、って思う(笑)。
【アヤ】 ホンマやな。いらんことしやがって。
【GM】 「キミたちは、“生命の滝”へ行き、グランドヌッピョンと話をつけて、黄金の笛を入手してきてくれたまえ」
 ヌッピョンは、首長竜のような生き物です。グランドヌッピョンともなると、その体長は13メートルにも及ぶらしい。
【アヤ】 ヌッピョン殺そかな、って思ってよう。
【GM】 「グランドヌッピョンは、私でも倒せないかも知れないよ? それこそ、カンスさま程の力がないと、力で渡り合うのは不可能だろう」
【アヤ】 ダイスの出目によっては。向こうがずっと1ゾロ振るとか。
【GM】 キミがずっと6ゾロ出すとか。
【キラ】 ムリや(笑)。
【GM】 「力押しで何とかなるなら、集落の四天王を遣わしてるよ。武力よりも知力が必要だから、キミたちに白羽の矢を立てたのだ」と、マレイツさまは言う。
【ミホ】 知力なんか期待されても……。
【GM】 「大丈夫だ。アヤとキラには、樹齢300年のエントの木を持ち帰った実績があるからね。私は期待しているよ」
【アヤ】 そんなん、ハッタリかませる相手じゃないとムリ。
【GM】 「グランドヌッピョンには、ハッタリが効くはずだ」と、マレイツさま。
「偵察インプの情報によると、グランドヌッピョンは、珍しいものが好きらしい。何か、奴が喜びそうな物を持っていけば、快く黄金の笛を譲ってくれるだろう」
【アヤ】 その喜びそうなものを、族長、くれよ。
【GM】 「そんなものはない。単なるお遣いなら、わざわざキミたちに頼んだりしないよ」
 ちなみに、族長は宝物を持ってる。それは、その場にいる死者の霊の姿を映して会話ができるという、魔法の鏡。
【ミホ】 そんなもの、ヌッピョンは欲しがらないと思うで。
【GM】 なら、自分たちでおみやげを探して。
【キラ】 む〜。
【GM】 「それはそうと、“生命の滝”までは、普通に歩いてたら3ヶ月もかかってしまう。往復で半年。これでは、4ヶ月後のカンスさまの歓迎会に間に合わない」と、マレイツさま。
「そこで、移動手段として、ヒッポグリフを3頭用意した」
【アヤ】 カバ?
【GM】 それはヒパポタマス。ヒッポグリフはグリフォンと馬のハーフ。体の前半分が鷲で、後ろ半分が馬という幻獣です。翼を持っていて、空を飛ぶことができるんよ。
 これなら、“生命の滝”まで片道1ヶ月半で行ける。
【キラ】 ひとり1頭ずつか。
【GM】 「それはキミたちに与えるものだから、ちゃんと世話をするんだよ」
【キラ】 「よろしくね〜」って、ヒッポグリフをなでとく。
【GM】 「では、急いで『黄金の笛』をもらってきなさい」ということで、キミたちは、マレイツさまの前から退出しました。
【キラ】 とりあえず、ヌッピョンが喜ぶものを探してみよう。誰か、相談できそうなひとはいない?
【GM】 偵察インプとかなら、情報に精通してるけど。
【キラ】 じゃあ、よさそうな物がないか、そいつに聞いてみる。
【GM】 では、キミたちは、偵察インプのところに来た。インプは、頭に手ぬぐいを乗せて、気持ちよさそうに湯船につかってるところ。
「そうだな〜。ここから東へ8日ほど行くと、ムニュという村がある。人間たちの農村だ。その村はずれに、グルガーという有名な人形師の家がある」と、教えてくれた。
【ミホ】 人形?
【GM】 「ただの人形じゃないぞ。精巧なからくりによって、動く人形だ。お茶を運んだり、絵を描いたりするんだ」
【キラ】 それはすごい。
【GM】 「成長した子供たちは町へ出て行き、グルガーは6年前に老衰で死に、今は、年老いた妻が独りで住んでいるようだ。
 人形は売られてしまってほとんど残ってないようだが、ひとつぐらいは、残ってるんじゃないかな」
【キラ】 じゃあ、行こう。ムニュ村へ。
【GM】 ヒッポグリフを手繰って東へ行くこと4日、眼下に、ムニュ村が見えてた。まばらに建つ民家が、夕日の中で長く陰をひく、小さな農村です。
 そのはずれに、偵察インプから聞いた、人形師グルガーの未亡人が住むという家が見える。かまどの煙突から、夕餉の煙が細く立ち昇ってるね。
【アヤ】 留守じゃなかったか。お婆さんが、ダークエルフやゴブリンという種族を知らなければ、問題ないねんけど。
【キラ】 でも、パっと見、僕ら人間じゃないよね。
【アヤ】 「仮装大会してまして」って言い訳する。
「ちょっと、日焼けし過ぎちゃってぇ」とか。
【キラ】 とりあえず、窓から家の中を覗いてみよう。
【GM】 キミたちが覗いたのは、台所と一緒になってる、小ぎれいに整理されてる居間やね。独り暮らしなので、家具はそんなに多くない。あるのは、タンスやテーブル、ベッドくらい。
 台所で鍋をかき回してる、お婆さんの後姿が見えます。
【キラ】 何を作ってるんやろ?
【GM】 日持ちするカレーとか。
【ミホ】 カレーも欲しいな。
【アヤ】 カレーが欲しい。
【キラ】 目的、変わってるで(笑)。
【GM】 奥の小さなタンスの上には、全高50センチほどの人形が、大事に置かれてる。
 おかっぱ頭の女の子の人形で、何かをねだってるのか、それとも渡そうとしてるのか、両手を前に差し出すポーズをとってます。
【キラ】 きっと、お茶を運ぶんや。どうやってゲットしよう。
【アヤ】 婆さんが寝静まった隙を見計らって、家の中に入る。で、人形と、カレーの残りをいただく。
【ミホ】 盗むか。
【アヤ】 盗むよ。
【キラ】 じゃあ、婆さんが寝静まるのを待つ。
【GM】 それでは、時間は進み、真夜中になりました。
 お婆さんは、居間のベッドで眠ってます。
【キラ】 窓からこっそり入ろう。
【GM】 それでは、シーフ技能と敏捷度ボーナスで、気づかれずに入れたか判定しよう。
 全員、技能がないの? なら、ダイスの出目だけでチャレンジ。――みんな、失敗したね。
【ミホ】 気づかれたかな?

妖魔たち、グルガーと会う事

【アヤ】 婆さん、耳が遠いから大丈夫やで。
【GM】 じゃあ、お婆さんもダイスで判定してあげるよ。
 (ころっ)お婆さんは起きなかった。寝返りうっただけ。
【キラ】 やべ〜。
【アヤ】 じゃあ、そ〜っと歩いて、人形と、カレーが入った鍋をもらっていく。
【GM】 アヤが人形に手を伸ばしたとき、部屋の隅に、宙より生じた靄が集まった。靄は、半透明な人間のお爺さんの形を成した。
「こりゃっ」と叱る声が、まるでテレパシーのように、キミたちの脳裏に響く。
【キラ】 おっ、何や? 人形師のひとか?
【GM】 「そのとおり。わしが、人形師グルガーじゃ」
【アヤ】 「ちょっと、人形を借りてくで。すぐ返すから」
【GM】 「ダメじゃ」
【ミホ】 「なんで?」
【GM】 「それは婆さんが大事にしてるもので、唯一、婆さんの手元に残った、ワシの作品じゃ。そいつがなくなると、婆さんが悲しむやろ?
 ワシの愛する婆さんを悲しませる奴には、モンスターレベル5の幽霊になったこのワシが、精神力奪取してやるぞ」
【アヤ】 「じゃあ、鍋はOK?」
【GM】 「鍋もダメ!」
【アヤ】 ケチ。どっちかひとつ、渡せっつーの!
【キラ】 必要なのは、人形やろ(笑)。
【ミホ】 爺さん、なんで幽霊になってるんやろ?
【GM】 人形師グルガーは、人生の集大成として手がけていた最後の作品を製作中に、寿命がきて自然死してしまったらしい。
 最終作を完成させられなかった無念と、売れない人形師だった頃、さんざん苦労をかけた妻に、ちゃんと別れを告げられなかった心残りで、幽霊となって、ここに留まってるんやね。
「というわけで、泥棒は許さんぞ」
【ミホ】 どうしたら、人形をくれるん?
【キラ】 その、製作中の人形を完成させてくれたら、ええねん。
【アヤ】 ホンマや。さっさと完成させてぇな。
【GM】 「そりゃ、ワシとて完成させたいが、肉体を失ったワシには、ノミを持つことができんのじゃ」
【ミホ】 憑依するとか。
【GM】 「ほう。では、肉体を貸してくれるか?」と、グルガーはミホに言う。
【ミホ】 わたし?!
【キラ】 言い出しっぺやし(笑)。
【GM】 「完成した最終作は、おまえたちが持って行っていいぞ」
【ミホ】 んー、じゃあ、まあ、いいけど。
【GM】 では、グルガーの霊が、ミホに憑依しました。
【アヤ】 じゃあ、人形作って。
【キラ】 っていうか、物音で婆さんが起きへんか?
【GM】 アトリエは家の奥にあるんやけど、木槌の音はすごく響くから、さすがに起きてしまうやろね。
【アヤ】 起きへんように、こう、婆さんの首を絞めとくとか。
【キラ】 そんなことしたら、人形を作ってもらわれへんぞ。
【GM】 「起こして、事情を話せばいいんじゃよ」と、ミホ・グルガーは、お婆さんを起こしにかかる。
「婆さんと話すのは、久々じゃ。わくわくするのぅ」
【キラ】 僕とアヤは、アトリエに隠れとこう。
【GM】 アトリエは、生前、グルガーが使ってた頃のままに残されてます。いちおう、埃が溜まらないように掃除されてるし、ある程度、整理されてるけどね。
【キラ】 ほう。
【GM】 部屋の隅に、木材が積み重ねられ、いろんな型紙がいっぱい入った箱も置かれてる。
 塗料や、それを粉末にする白い陶器製の擂鉢(すりばち)擂粉木(すりこぎ)、白皿と筆もまとめて保管されてます。
【ミホ】 道具がいっぱいや。
【GM】 人形に色を塗るとき、湯で溶かして使う(にかわ)もあるよ。これ、茹でてると、すんごい臭い匂いがするねん。
 グルガーが若い頃、塗料の調合の準備をしてたら、子供たちが「くさ〜い!」って、大はしゃぎしてたやろね。
【キラ】 そうなんや(笑)。
【GM】 机には、緻密に書き込まれた設計図が広がっていて、その上に、目鼻の位置だけを荒削りした人形の顔、成形されただけで、まだ組まれていない木の歯車が置かれてます。
 脇には、木槌や、大小さまざまなノミや、彫刻刀がきちんと並べられてる。
【キラ】 それが作りかけの最終作やな。
【アヤ】 じゃあ、婆さんに事情を話してもらって、早く完成させてもらおう。
【ミホ】 婆さん、腰抜かすで。ミホの姿を見たら。
【アヤ】 婆さんが[怪物判定]に失敗すればええねん。どうせ、ヒラ目やろ?
【GM】 そうやね。じゃあ、アヤがお婆さんの[怪物判定]をしてあげて。
 ――それは、失敗やね。ミホがダークエルフだということは、お婆さんは知りません。どっちにしたって、真夜中の侵入者自体に、びっくりするやろけどね。
【キラ】 「婆さん、ワシじゃ、ワシじゃ」って、ダークエルフが言うねん。
【ミホ】 『オレ、オレ詐欺』みたい(笑)。
【GM】 では、それがグルガーの霊魂だとお婆さんが気づけたかどうか、アヤがダイスで判定してみて。
 ――それは成功。「おお、爺さん!?」と、驚いてる。
【ミホ】 じゃあ、爺さん、事情を話して。
【GM】 話した。ついでに、心残りだったお婆さんへのメッセージも伝えた。
 そしてミホ・グルガーは、制作途中だった、最後のからくり人形の仕上げに取り掛かりました。

 ミホ・グルガーは、鬼神のように、からくり人形の作成に打ち込んだ。
 いちばん鶏が夜明けを告げる頃、ミホ・グルガーは、人形に瞳を描き入れた筆を、そっと置いた。
 グルガーの最終作、『宝を伝える少年』が完成したのだ。

【GM】 机が設置された台座に載る紅顔の少年の胸像で、右手に羽ペンを持ち、何か書き物をしてるような感じやね。じっさい、からくりによって、書き物をするんやけど。
 ぜんまいを巻いて、背中のスイッチを入れると、少年は、まるで本当の人間のような滑らかな動きで、机の上に置いた紙に、何か文章を書き込みます。
【キラ】 ちなみに、どんな文章?
【GM】 んー、人間の文字だから、キミたちにはちょっと読めないかな。
【ミホ】 この人形って、すごいの?(笑)
【GM】 すごいよ。キミらには、技術的なことはわからないだろうけど、今までにない精密なからくりで、今までにないスムーズな動きを行ってるから。
【アヤ】 じゃあ、“生命の滝”のグランドヌッピョンのところへ、持って行こう。
【GM】 グルガーの霊は、お婆さんに最後の別れを告げて、成仏していきました。

 3匹の妖魔たちは、“生命の滝”へ行ってグランドヌッピョンに会い、首尾よく、からくり人形と『黄金の笛』を交換してもらった。
 そして、沼の集落に戻ったのだった。

【GM】 キミたちが『黄金の笛』を持ち帰ってからしばらくして、はるか南の空から、ロック鳥が飛来した。翼を広げると、20メートルにもなる巨鳥です。
 ロック鳥が着地するとき、その羽ばたきですごい風が巻き起こり、体重が軽いインプやグレムリンなんかは、どこかへ吹き飛ばされてしまうほど。「ワシは300歳」が口癖のエントの木も、風に煽られ、えらいことになってるよ。
【キラ】 すげー。キラはビビっとるで。
【ミホ】 ウェーブでお出迎えや。3人で。
【GM】 3人で? 寂しいウェーブやな(笑)。族長マレイツさまをはじめ、みんな、ひれ伏してるのに。
【アヤ】 仲、悪いねん(笑)。
【GM】 そんな中、まず、カンス親衛隊のダークエルフ8人が、〈フォーリング・コントロール〉で、ゆっくりと地上に降りる。全員が〈バルキリー・ブレッシング〉を使えるほどの、精鋭ぞろいです。
 つづいて、オーガー2匹が、天蓋付きの輿を担いで、やはり、〈フォーリング・コントロール〉でゆっくりと降りてきた。
【ミホ】 大名行列や。
【GM】 輿には御簾がかけられていて、中の様子は窺えない。でも、そこに、とんでもなく強そうなオーラを放つ誰かがいることはわかる。
【ミホ】 「ビッグな小宇宙(コスモ)だ!」とか言うとくわ。

 そして、カンスさまをもてなす厳かな宴が始まった。
 インプやグレムリン、コボルドたちの雅楽が流れる中、カンスさまはじめ親衛隊のダークエルフたちに、優美で高級な食事が献上された。
 メインイベントは、もちろん、サテュロスの笛の名手パンが黄金の笛で奏でる、心に染み入る音楽である。

【GM】 じゃあ、全員、精神力抵抗してください。失敗すると、踊ってしまうから。――みんな成功したのね。
【アヤ】 カンスさまを、振ってもいい?
【GM】 いいけど、まず失敗にならんと思うよ。
【アヤ】 (ころっ)1ゾロ出そうとしたけど、ムリやった……。
【GM】 (何を企んでるねん)では、踊ってるのは、抵抗力の低い小妖魔たちだけやね。すごく陽気に踊ってるよ。
【キラ】 じゃあ、つられて踊ってしまうよ。
【アヤ】 (ころっ)あっ、エントは失敗した♪(笑)
【GM】 なら、エントの木が、体を揺すって踊ってる。
【ミホ】 エント、怖〜!
【アヤ】 「なに、あいつ!?」(笑)
【キラ】 ダンシング・フラワーや。

妖魔たち、選ばれる事

 3日間に渡るカンス行幸(ぎょうこう)の儀は、最後に、カンスさまが沼の集落の住人すべてに暗黒の祝福を授けて、終了とあいなった。
 カンスさまたちは、再びロック鳥に乗り、南へと去っていった。

【GM】 そして、8月21日の夜。
 キミたちや集落のみんなは、コオロギや鈴虫の音を聞きながら、眠りについてます。
【ミホ】 蚊を叩きながら。
【GM】 そんな中、キミたちに呼びかける声がします。
「勇者よ……勇者よ……」
【ミホ】 「誰か呼んでるで」って、アヤをつつく。
「勇者って、誰?」
【アヤ】 「知らんわ。族長のことちゃうん?」って、またバフって布団に倒れて寝る。
【GM】 「勇者よ、目覚めなさい!」と、声は大きくなり、アヤはぽこっ、ミホはぱこっ、キラはゴン! と殴られた。
【ミホ】 ひとりだけ、なんか変な音した(笑)。
「なんやー?!」って、起き上がって見てみるで。
【GM】 すると、淡い光に包まれた黄金の笛が、暗闇の中に浮いてます。そして、その後ろに、半透明のお爺さんがいる。
 そのお爺さんは、グルガーではないよ。着てるものが時代がかった衣装で、かなり昔の人間だと思われます。
【アヤ】 「何ですか、あなたは?」
【GM】 「私は、この黄金の笛の主、ケルヴィン・バートという。最近、月へ行く船を目覚めさせるための道具が集まりつつあり、私は目覚めた」
【キラ】 ほうほう。
【GM】 「私の積年の夢は、我が形見の黄金の笛を、月の銀の竪琴のもとへ届けてもらうことなのだ。
 そこで、選ばれし勇者たちよ。月へ行かんとしている者へ、我が笛を届けていただきたい」
【アヤ】 いや、ムリっしょ!(笑) 俺ら、ムリっしょ。見た目にムリ。妖魔やねんで?
【ミホ】 こっそり届けるしかないで。朝、起きたら枕もとにある、って感じで。
【アヤ】 「サンタさんより♪」って。
【キラ】 届けるにしても、どこに届ければええんか、わからんし。
【GM】 「アイテムは、現在の世界では『ボア』と呼ばれている街に、集まらんとしているようだ」と、ケルヴィンの霊。
「我が願いを叶えてくれたら、そなたたちの願いも叶えよう。可能な範囲で」
【アヤ】 どの程度の願いなら、叶えてもらえるんやろ?
【キラ】 まあ、しゃあないから、行っとくかい。
【ミホ】 ボアまで遠いぞ。
【GM】 ヒッポグリフを使うなら、70日の旅になるね。空を飛ぶから、道など関係なく、一直線で行けるし。
【アヤ】 じゃあ、それで行く。「探さないでください」って置手紙をして、ボアへ行く。
【GM】 抜け妖魔と勘違いされて、追っ手がかかったりして。
 とりあえず空の旅やから、街道で人間たちに行く手を邪魔されたりする心配はないね。
 キミたちは70日ほど旅をして、レムリア暦11月1日、ミドル地方ボア王国の王都ボアの上空に到着しました。
 時刻は昼頃。眼下の街路を、忙しく行き交うアリンコのように、たくさんの人間たちが往来してます。
【アヤ】 で、どこに笛を落とせばいいの。
【ミホ】 わたしら、アイテムを集めてる奴らの顔を知らない。どうするよ?
【キラ】 今、白昼やろ。僕ら、目立てへんかな。
【GM】 都会の人々はみんな忙しくて、誰も空を見上げようとしない……かも。
 ボアに集結中のキャラたちは、どうなんでしょう?
【シルヴィア】 僕は魔術師ギルドで会食しながら、今後の予定を考えてる。
【ファベル】 どこかで黄昏てる。
【ティガー】 お食事中。オムレツを食べてる。というか、オムレツしか見えない。食事のときは、視界が狭くなってるから。
【キャロット】 ウサギも、ニンジンしか見えてへんで、当然。ぼりぼりぼり……。
【プレセア】 武器屋を物色中。
【メイユール】 競馬場の帰りやで。
【GM】 では、表にいるふたり、メイユールは冒険者レベルと知力ボーナスで、ファベルは知性度による1レベルのセービング・ロールで、上空にいる不可解な生き物に気づいたかどうか、判定してみて。
【ファベル】 (ころっ)失敗。川面を眺めてる。石を投げながら。
【メイユール】 (ころっ)成功。
【GM】 するとメイユールは、体の前半分が鷲、後ろ半分が馬という、謎の四足歩行の生物が3頭、空に佇んでるのを見つけました。
【メイユール】 「あっ、UMAや! 飛んでる〜!」
【GM】 それらの背に、何か、人影が跨ってるのも見える。
【メイユール】 宿屋に戻って、仲間に教えてあげよう。「すごいの飛んでるよ」って。
【GM】 キミたちが泊まってる宿『三叉路亭』の酒場には、ティガーとウサギ男がいるね。
【キャロット】 ウサギは、ニンジンを食べ終わったから、防具屋に行ってウサギスーツを試着してる。「似合うじゃん、オレ」って。
【メイユール】 そんなん、売ってるんや。どんな防具よ(笑)。
【GM】 (……着ぐるみ? ウサ耳全身タイツ??)
【ティガー】 俺はオムレツ中。
【メイユール】 じゃあ、オムレツ中の奴を引っ張り出してきて、空を見せる。
【ティガー】 もぐもぐもぐ。「なんだよぉ?」(笑)
【メイユール】 「ほら、UMAやで。飛んでるで」
【ティガー】 「おー、ホンマや。あいつら、オムレツ好きかな〜」
【メイユール】 手ぇ振ってみよう。
【ティガー】 「食べるー?! ここのうまいで」って言う。
【GM】 妖魔たち。街の一角で、キミたちを思いっきり見上げながら、手を振ってる人間の男女がいるよ。黒髪の若者と、赤髪の娘。
【アヤ】 『食べる』って、何を食べるんやろ?(笑)
【ミホ】 カレーかもよ。
【キラ】 キラは、「食われる!?」って言うてるねん。
「『食べる』って言うてるし!」
【アヤ】 ゴブリンって、人間に食べられる種族やったっけ? そんなんやったっけ??(笑)
「『食べる』って、カレー!?」って聞いてみる。
【ティガー】 「違うで、オムレツー!」
【アヤ】 「それ、ゴブリンじゃないよね〜!?」
【ティガー】 「そんなもん食えるかぁー!!」(笑)
【キラ】 ちょっと、ホっとしてる。
【ミホ】 おまえ、まずそうやしな。
【キラ】 そんなことないけど。
【ミホ】 うまいのか?!
【GM】 今のところ、妖魔たちに気づいてるのは、あのふたりだけ。
 でも、大騒ぎを続けてると、そのうち通りを行く他の人間たちも、空を見上げ出すかもね。
【ミホ】 あいつらに笛を預けるのもよさそうやけど、このまま街に降りるのはやばいよな。
 どこか街外れに誘い出して、笛を渡す?
【キラ】 そうしよう。ひとに見つかる前に。
【GM】 街外れには、小高い丘があるよ。
【アヤ】 「じゃあ、ついてきて〜!」って言うて、その丘に飛んで行く、
【GM】 川辺で黄昏るファベルは、どこかへ飛んで行く得体の知れない生き物たちを見た。
【ファベル】 変なの……。
【GM】 ティガーとメイユールは、どうするのかな?
【メイユール】 行く行く、UMAについて行く。
【ティガー】 酒場のオヤジに、「オムレツ5つ、5つ!」って、急いで作ってもらって、走ってついて行く。みんなで食べようと思って。
【GM】 では、妖魔たちは丘の上に降り立ち、ほどなくして、ティガーとメイユールがそこへ到着しました。
【ティガー】 「ほらほらほらほら、5人分! みんな、座って」って、オムレツを広げる。
【GM】 いや、そこにいるのは、妖魔たちなんやけど……。
【ティガー】 オムレツのおいしさを説くことしか考えてないから、そんなん気にしてない。っていうか、気づいてない。
【メイユール】 UMAしか目に入ってないから、謎の生き物のところにダッシュするで。
【ティガー】 「俺、もう食うで? 走ったらお腹減った」
【アヤ】 ピクニックやな。
【ティガー】 はよ食わな、なくなるで。
【メイユール】 ひとりで食う気や(笑)。
【アヤ】 じゃあ、オムレツを食べる。
【ミホ】 ミホちゃんも食べる。
【キラ】 ゴブリンは、「油断したらダメや〜」って思ってる。
【メイユール】 そのゴブリンをUMAのところに引っ張って行って、「このUMA、なんて生き物? こいつ、ちょうだい」って言う。
「餌は? どうやって手なずけたん?」
【キラ】 「それは――秘密!」
【メイユール】 「吐けーッ」って、揺さぶるで(笑)。
【キラ】 「殺さないで〜」って言うとく。
【ティガー】 オムレツを食べ終えたら、「あれ!? ダークエルフや!」って驚く。
【メイユール】 「うそー!?」って振り向くで。
「あ、ホンマや」
【ティガー】 「でも、オムレツを食べたから、ええ奴やろ」って思ってる。
「……何しに来たん?」
【ミホ】 事情を説明しよう。
【アヤ】 黄金の笛を見せて、「ほら、これ」って言う。
「なんか、この街に、月へ行くためのアイテムを集めてるひとがおるらしいねんけど、そいつに渡して、って言われてん。
 俺たち、選ばれてん」
【ティガー】 「すげー!」って言うとく。
【GM】 いや、あの、『月へ行くためのアイテムを集めてるひと』って、ティガーたちのことでしょ?
【ティガー】 じゃあ、笛をもらって帰るわ。
【キラ】 では、受領書にサインを。
【ティガー】 なに書こ? 「オムレツ王子☆」って書いて、オムレツの絵とか描いとこ。
【キラ】 「それじゃあ、黄金の笛を、ちゃんと月へ持って行ってくださいね。くれぐれも、頼みましたからね」と、念を押しとく。
【ティガー】 なんか、ゴブリンに偉そうに言われた。
【キラ】 「僕らの役目は終わったから、早く帰ろうよ」って、ダークエルフたちに言うで。
「人間、怖い〜」(笑)
【ミホ】 ほんじゃ、帰るか。
【GM】 妖魔たちは、ヒッポグリフに跨って、北へと飛び去っていきました。
【メイユール】 「ああ、UMAが……」って、いつまでも飛んで行った方向を眺めてるで。
【ティガー】 じゃあ、黄金の笛とメイユールを持って、宿屋に帰る。

 黄金の笛をティガーたちに渡した3匹の妖魔たちは、再び70日ほど旅をして、沼の集落へ戻った。

【GM】 その日の夜、キミたちが眠ってると、「勇者よ……勇者よ」と、語りかけてくる声がします。
【ミホ】 お爺ちゃんか?
【GM】 そう。黄金の笛の主、ケルヴィン・バートの霊です。
「勇者たちよ、よくぞ勤めを果たしてくれた。約束どおり、そなたたちの願いを叶えよう」
【ミホ】 どんな願いがいいやろ?
「カレーが食べたい」
【GM】 そんなんでいいの? じゃあ、大盛りのカレーライスが現れたよ。お腹いっぱい、食べれるよ。
【アヤ】 俺はオムレツで。
【GM】 オムレツ?!
【ミホ】 目覚めたんや。オムレツ教が広まっていく……。
【GM】 じゃあ、でっかいオムレツが現れた。
【アヤ】 ほくほくほくほく(笑)。
【GM】 キラは何が望み?
【キラ】 キラは普通に賢くなりたい。知力を上昇させたい。
【GM】 じゃあ、能力値ボーナス1つ分、知力が6点上昇したよ。頭がモコモコモコって、大きくなったよ。
【キラ】 すごいすごい。
【ミホ】 イヤやー。きもいゴブリンや(笑)。
【GM】 願いをすべて叶え終えると、ケルヴィンの霊は、すっと消えてしまいました。
【ミホ】 ばいばーい。

 こうして、妖魔たちの冒険は終わったのでした。

÷÷ つづく ÷÷
©2007 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2007 Jun Hayashida
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