≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第32話§

白銀の氷狼

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ エントに通せんぼされる事 ▽ トンネルの化け物の事 ▽ マドナガルの目覚めの事

エントに通せんぼされる事

【GM】 エントは、「精霊使い、おまえとそこの黒髪の男は、あの娘の邪魔をしたからの」と、ティガーとメイユールを指して言います。
【メイユール】 あは〜、そういうことか。
【ティガー】 え、なに? 何かしたっけ??
【メイユール】 去年、邪神の降臨を阻止したやん。たぶん、ここにエントを置いたの、あのときの黒幕やからさ。“魔王の娘”。
【ティガー】 あー、はいはい。そうか。
【GM】 「ここを閉ざすは、108つの星と散った、あの娘の頼みじゃからの。おまえたちを、通すわけにはいかんの」
【ティガー】 ……エントって、ひとり?
【GM】 今、メイユールの呼びかけに応えてるのはね。
【ティガー】 ふーん。まだ他にもおるんかな。全部倒すの、めんどくさーい。
【メイユール】 え?! 戦う気なん?
【シルヴィア】 そんな、ムチャなことを言うてたらアカン。
【ティガー】 燃やす(笑)。
【メイユール】 イエ〜!(笑)
【GM】 そんなん、消される。エントの力をなめてたらいかんで。モンスターレベル18もあるんやから。
【ティガー】 え〜!? なんや、にこに○ぷんの樫の木お○さんを想像してたのに。
【メイユール】 あ、それそれそれ! わたしもそれを想像してた(笑)。
【シルヴィア】 穏やかなときはそれかも知れんけど、怒らしたらえらいことになるねん。
【GM】 「まあ、わしは雪の村のフェンリルと違って、慈悲深いからの。森に入っても、外へ追い返すだけじゃ。
 だが、森に害を及ぼすとなると、そうはいかん。その魂、精霊界に取り込んでくれようぞ」
【シルヴィア】 〈フライト〉で上空から攻められへんかな。……木の枝で、はたき落とされそうやな。
【メイユール】 キミしか飛ばれへんし。
【シルヴィア】 エントに、「探し物に来てんけど。それさえ取り戻せたら、すぐに出て行くから」って訴えても、たぶんムリなんやろな……。
「盗られてん」
【GM】 「気の毒にの」
【ティガー】 俺のアイテム欄にある、『過去の鏡』って何?
【GM】 は?? それは、対象の過去の姿を映す魔法の鏡やろ。ウサギ男に召喚されたとき、レギトの城から持って帰ってきてたんか。
【ティガー】 うん、なんか書いてあった(笑)。
 じゃあ、木を映して、エントに「ほら、芽」って言う。「おまえ、こんなんやってんて」
【GM】 「めんこいのう、わし」
【メイユール】 行動の意味がわかんね〜(笑)。
【ティガー】 何にも使えないね、こんなの。遊び道具や。
【シルヴィア】 さあ、どうしよう。どうやって雪の村へ行こう。
【メイユール】 燃やすしか思いつかない。
【ティガー】 魔術師ギルドのおっちゃんって、「雪の村へ行ったことある」って、言うてなかったっけ?
【シルヴィア】 言うてたな。
【ティガー】 〈テレポート〉!
【シルヴィア】 なるほど。
【メイユール】 使えるんかな?
【シルヴィア】 使えるやろ、たぶん。レベル7の遺失魔法が使えるらしいねんから。
【メイユール】 じゃあ、アルファンの街へ戻ってみる。
【GM】 もう、夕暮れになるんやけど、夜通し旅するの?
【シルヴィア】 するさ。時間的に余裕がないし。
【GM】 では、キミたちは疲れた体に鞭打って、翌朝、アルファンの街に戻りました。馬たちもヘロヘロやね。
【メイユール】 わたしらが魔術師ギルドへ行ってる間、宿の厩で休ましてもらっとこう。
【シルヴィア】 ギルドへ行って、「緊急事態につき、すぐにマティアスさんに会いたい」と申し出るよ。
【GM】 では、ギルド長に面会できた。
「何事ですかな?」
【ティガー】 「〈テレポート〉を使って欲しいねんけど。雪の村に行ったことあるねんね?」
【GM】 「は??」
【シルヴィア】 まずは、事情を説明するよ(笑)。「かくかくしかじか」と。
【メイユール】 テレポをお願いできる?
【シルヴィア】 「雪の村へ飛ばすだけでいいから」
【GM】 「わかりました。微力ながら、お手伝い申し上げましょう」
【ティガー】 「で、もうひとつ聞きたいねんけど、ボアへ行ったことはありますかね?」
【GM】 ボア?
【ティガー】 エストリアでも可。
【GM】 んー、じゃあ、ダイスで決めよう。運試しやね。
 ……(ころっ)おっ、「ボアには行ったことがある」ってさ。
【ティガー】 よし。「じゃあ、もう1回、テレポを頼みに来るかも知んない」
 これで時間短縮!(笑)
【GM】 では、まずは雪の村へ飛ばせばいいんやね?
 マティアスさんは、〈テレポート〉の呪文を唱える。彼のしわ深い手のひらが、キミたちの肩に軽く触れた瞬間、目の前の景色が一変したよ。
【シルヴィア】 無事にテレポできたか。
【ティガー】 テレポしたんはいいけど、どうやって帰るんやろ?(笑)
【GM】 キミたちは、一面の銀世界の真っ只中に立ってます。小高い緩やかな山の中腹の開けたところやね。遠くを木々が囲ってる。
【ティガー】 エントの森や。
【GM】 ところどころ、積もった雪がこんもり盛り上がってたりしてる。どうやら、その下に民家が建ってるらしく、ほんの少しだけ屋根が顔を覗かせてる。
【シルヴィア】 えらいとこやな。
【GM】 そうやね。冬でも温暖なサリア地方にあって、ここは吐く息が白くなる寒さ。青空が広がってるのに、耳がもげそう。
【ティガー】 いや、夏仕様で来たのに!(笑)
【メイユール】 わたしはジャージや。
【GM】 それじゃあ、全員、ダイスを振ってみようか。失敗したら、風邪をひくから。――みんな、頑丈やね。誰も風邪をひかない。
【ティガー】 江戸の服やから、大丈夫やねん。さらしやけど(笑)。
【GM】 鼻水がだら〜って垂れるで。「チーンしなさい」って言われるで。
【ティガー】 「フーン」って、そっぽ向く。
【メイユール】 そしたら、鼻水が弧を描いた形で凍りつくねんで。
【ティガー】 「えいっ」バキっ、って折る。で、投げ捨てる。
【メイユール】 「こっちに投げるな〜!」(笑)
【GM】 で、どうすんの、キミら? 遊んでる場合と違うで。
【シルヴィア】 探し物をせな。
【メイユール】 なんか、全部雪に埋もれてそうやけど。
【GM】 そうやね。雪の下に眠る数多の墓標も、放置されたダークエルフの死体も、氷柱と化した冒険者の死体も、キミたちには見えない。
 でも、向こうのほうに、うずくまるひとの姿を発見できたよ。その背にうっすらと雪が積もってるみたいやけど、若草色のローブを着ているのがわかる。
【ティガー】 紫? 行ってみる。
【GM】 雪に足を取られ、こけつまろびつ駆けつけてみると、それは、紫がかった長い銀髪の青年の死体でした。何かを抱えるような形で、カチコチに凍りついている。
【ティガー】 なに持ってるの?
【シルヴィア】 お探しの物?
【GM】 そう。体の隙間から見えるのは、『天の鍵』です。
【ティガー】 何で凍ってはるねやろ?(笑) ガンガンガンって、『天の鍵』を取ろうとするけど。
【GM】 カキンカキンカキン。硬くてどうにもなんないね。
【ティガー】 アックスで砕くか。『天の鍵』に当たんないとこら辺を狙って。
【GM】 ティガーがグレート・アックスを用意したそのとき、メイユールは、とんでもなく強烈な精霊力がやって来るのを感じた。
 晴れていた空が一転、黒い雲に覆われて、白い雪が降ってくる。雪は渦巻きながら、巨大な銀狼の姿を成した。キミらの倍ぐらいのでかさの狼やね。
【ティガー】 フェンリル?
【GM】 そう。メイユールには、調べるまでもなくその正体がわかる。モンスターレベル18の、氷の上位精霊フェンリルです。
【メイユール】 出た〜。怒ってる?
【GM】 かなり怒ってる。
「汚らわしい人間どもめ。ミーアの聖域に踏み込む者は、なんぴとたりとも許さぬ」
【ティガー】 「この紫の髪の奴ってさ、エントに通されたのに、凍りつかされたん?」
【GM】 「その者は、自ら望んで凍てついたのだ。どちらにしろ、私はエントの爺ぃのように甘いことはせんがな。誰であろうと、ここに立ち入る者は許さん。
 おまえたちの魂も、凍てつかせてくれようぞ」
【ティガー】 んー、凍りそうな気がするな。
【GM】 フェンリルが吼えると、それに呼応するように雪が舞う。そして、馬ほどの大きさの白い狼が、2体現れた。
【ティガー】 なに、お子さん? 誰?
【GM】 その正体を知りたければ、セージ技能で調べてみましょう。――シルヴィアが見抜いたね。
 それは、フェンリルの眷属だといわれている、スノーウルフという幻獣です。モンスターレベルは8。牙で噛みついてくる他に、吹雪を吐きかけてきたりもするらしい。通常の武器は有効で、炎に弱い。冷気に耐性あり。
【メイユール】 フェンリルはどうしてるん?
【GM】 彼は、とりあえず手下に襲わせるつもりらしい。
【シルヴィア】 やるしかないのか?
【ティガー】 緑のビー玉とか、見せてみる。
【GM】 え?
【ティガー】 意味がないか。「あっ、それは!」とか言うかと思ったけど(笑)。
【メイユール】 変な空気が流れただけやで(笑)。
 でも、スノーウルフを倒したからって、どうなんやろ。
【ティガー】 後ろにフェンリルがおるねんもんな。
【シルヴィア】 手下はともかく、フェンリルには勝ち目があらへんよ。
【メイユール】 「こいつらを倒したら、帰してくれる?」って、聞いてみる。
【GM】 「ほう、こやつらに勝てるつもりか」と、フェンリルは笑う。
【メイユール】 「もし、倒したら。帰っていいの?」
【GM】 「勝てるものならな」
【ティガー】 マジで?
【シルヴィア】 じゃあ、やるか。ティガーは7レベルやし、何とかなるっしょ。
【GM】 それでは、戦闘を始めましょう。雪に足を取られるので、攻撃と回避にマイナス2のペナルティを受けるからね。
【シルヴィア】 なんてこったい。
【メイユール】 スノーウルフは、炎に弱いらしい。

トンネルの化け物の事

【シルヴィア】 なら、ティガーの武器に〈ファイア・ウェポン〉をかけよう。どの武器にかけたらええんかな?
【ティガー】 弱点を突いたら、ダメージはどうなんの?
【GM】 打撃力にプラス10されたダメージになる。
【ティガー】 すると、アックスなら打撃力50ですか(笑)。グレート・アックスにお願いしま〜す。
【GM】 フェンリルはダーツを熱望するけど。「ダーツで戦ってるところを見たい」
【シルヴィア】 んな、アホな(笑)。アックスにかけるさ。
【ティガー】 その魔法を待つから、行動は最後に遅らせるよ。
【GM】 ならば、次はスノーウルフたちの行動。
 スノーウルフAはティガーに、Bはシルヴィアに噛みつこうとする。――ティガーは回避できたけど、シルヴィアには当たり。ダメージは……がい〜ん。あれぇ?
【ティガー】 なんや、その程度か。
【シルヴィア】 意外と硬いぞ、マジック・クロース。
【GM】 続いて、メイユールが行動。
【メイユール】 何しよう……〈ウィル・オー・ウィスプ〉を、スノーウルフBにぶつける。(ころっ)効いた、ダメージ12点。
【シルヴィア】 〈ファイア・ウェポン〉を、2倍がけで自分のグレート・ソードにもかける。(ころっ)かかった。
【メイユール】 これで〈ファイア・ボルト〉を出せる。
【ティガー】 じゃあ、スノーウルフAに攻撃。(ころっ)当たり。あーッ、出目がヘボいけど、打撃力が50なのでダメージ16点。
【GM】 では、第2ラウンド。
【ティガー】 今度はティガーが最初やで。(ころっ)あっ、まわった! スノーウルフAに37点。
【GM】 うそ〜ん!? スノーウルフAは死んだ。
【ティガー】 すげー、打撃力50!(笑)
【GM】 くそ〜、スノーウルフBはシルヴィアに攻撃。――避けられた。冷気を吐けばよかった。何とか次のラウンドまで生き延びて欲しいな。
【メイユール】 ティガーのアックスから、スノーウルフBに〈ファイア・ボルト〉。
【GM】 ティガーの斧に宿る炎が一直線に伸びていき、雪の幻獣を打つ。
【メイユール】 (ころっ)効いた、ダメージ14点。
【シルヴィア】 目の前のわんこを、ソードで攻撃。(ころっ)はずれ。さすがや。
【GM】 それじゃ、第3ラウンドね。スノーウルフBは、大きく息を吸い込んだ。
 ティガー、どうぞ。
【ティガー】 攻撃。(ころっ)当たり、20点ダメージ。
【GM】 よし、へろへろやけど生きてる。
 スノーウルフBは、前方半径5メートル範囲に、一発逆転の吹雪の息を吐きかける。シルヴィアはもちろん、ティガーも吹雪を受けるので、ふたりは精神力で抵抗してください。
【ティガー】 (ころっ)あ、1ゾロ。
【シルヴィア】 (ころっ)耐えた。
【GM】 ティガーにはクリティカル、ダメージ18点。シルヴィアには11点。
【メイユール】 ティガー、やばい?
【ティガー】 んーん。生命力、あと5点残ってるよ。
【メイユール】 スノーウルフに〈ファイア・ボルト〉。(ころっ)抵抗されてしまった。ダメージ14点。
【GM】 ぐはあ〜! もう1匹、出しとけばよかった。ティガーのクリティカルが、かなり余計やった(笑)。
【メイユール】 「燃えたぜ」って感じ(笑)。
【GM】 なんかね、フェンリルは怒ってる。
【メイユール】 えー?! だって、約束したやん〜。
【GM】 「3ラウンドしか、戦ってへんやん〜」
【ティガー】 知らんやん〜!(笑)
【メイユール】 「約束は約束やでー」
【GM】 フェンリルは不服そうに、「早く去ね」と言う。
「5分以内に立ち去らねば、今度は、私が相手をするぞ」
【ティガー】 じゃあ、急いで『天の鍵』を取るわ。燃えてるアックスで、凍った紫の奴をガーンってする。
【GM】 青年の体は粉々に砕け散り、『天の鍵』が雪の上に落ちた。
【ティガー】 拾う、拾う。で、いちばん近い森にダッシュ。
【GM】 キミたちは、森の中に逃げ込めたよ。フェンリルも追ってきてたんやけど、時間内に逃げ切られてしまったので、忌々しそうに舌打ちして、あきらめた。
【シルヴィア】 タタリ神様や。
【ティガー】 で、どうやって森から出よう? 絶対、あの爺ぃが邪魔してくるねん。
【GM】 そうやね。「帰すわけにはいかんの」と、エントの意思が響いてくる。
【メイユール】 けちぃ〜。
【GM】 「しかし、フェンリルと遭って、よう無事でいられたのう。彼奴も甘うなったものじゃの。
 ……それで、あの村で何を見きた?」と、エントは聞いてくるよ。
【ティガー】 「え? 凍ってた」
【GM】 「は?」
【ティガー】 「凍ってる紫の奴と、雪。それから、フェンリル」
【GM】 「本当にそれだけか?」
【ティガー】 他に何かあったっけ?
【シルヴィア】 たぶん、見られたくないものがあったんやろ。
【GM】 「ふむ。ならば、よかろう」とエントが言うと、木や茂みが左右にサーっと開けてゆく。向こうに、トンネルの出口のように、小さく日の光が見えるよ
【メイユール】 おっ、帰れる。
【GM】 「あの光をめざし、このまままっすぐ進むがよい。我が森から出るまで、決して振り向いてはならぬ。異界で異界の様を見ようとする者は、狭間に魂を捕らえられるでの」
【メイユール】 どういうこと?
【GM】 「とにかく。約束を違えるなら、その魂、容赦なく精霊界に引きずり込んでやる、ということじゃ」
【ティガー】 精霊になれるんや。オムレツの。
【GM】 なる? オムレツの精霊に。
【ティガー】 もうちょっとしてからでいい。
【メイユール】 ゆくゆくは(笑)。
【シルヴィア】 じゃあ、森から出ようかい。
【ティガー】 何を見てたら、出してくれへんかったんやろ?
【メイユール】 物干し竿の下着とか。
【ティガー】 それや!(笑)
【GM】 そうして、木々のトンネルをてくてく歩いてると、後ろからファンリーが声をかけてくるよ。
【メイユール】 きた。
【シルヴィア】 無視して行くよ。
【GM】 すると、「あっ」と、ファンリーは驚いた声をあげる。「助けて!」って、言うてるけど?
【シルヴィア】 「助けられない!」(笑)
【ティガー】 振り向かずに、こう、助けに行こうとする。
【メイユール】 難しいこと言うてるで。バックすんの?
【ティガー】 そうそう(笑)。
【シルヴィア】 いらんことせんでよろし。どうせ、声だけやねんから。
【メイユール】 でも、何が起きてるんか、少し気になる。
【GM】 振り向くなら、描写してあげるけど(笑)。
【メイユール】 オムレツの精霊になってしまうから、いい。
【シルヴィア】 ティガーの手を引っ張って、出口に向かうよ。
【GM】 そしたら、何かが潰れるイヤな音と、ファンリーの断末魔の悲鳴が……!
【メイユール】 いや〜! もう。
【ティガー】 犯人はジーネか?
【GM】 ファンリーの悲鳴がすすり泣くように消えたあと、「がしゅいん、がしゅいん」と、足音が近づいてくる。
【ティガー】 逃げる、逃げる! 走って逃げる。
【GM】 そしたら、それに合わせて「がしゅ、がしゅ、がしゅ」と、背後の足音も走って追いかけてくる。
 しまいに足音はすぐ後ろまで近づき、「フフーン、フフーン」と、生暖かい鼻息がキミたちの首筋にかかる。耳のすぐ後ろを、鎖に繋がれたドリアンがかすめていくのを感じる。
【メイユール】 そんなん、「振り向くな」って言われてなくても、振り向かへんで。
【シルヴィア】 一目散に逃げるしかない(笑)。
【GM】 では、キミたちは森を抜けることができたよ。外に出ました。
【ティガー】 後ろを見てみる。
【GM】 なんてことはない、来たときと同じように、薄暗い森が広がっている。トンネルはもう、塞がれてしまってるけどね。
【シルヴィア】 やれやれ。えらい回り道やったな。二度と『天の鍵』を盗られないように、厳重に保管しとかんと。
【ティガー】 ギルド長のおっさんに、テレポでボアへ飛ばしてもらおう。

 冒険者たちは、マティアス・エクストロームの〈テレポート〉で、ボアへ瞬間移動した。
 10月27日、グラランボンバー大暴走まで、あと18日。

【GM】 ティガーたちは、白昼の大通りに、ひゅっと出現しました。
【ティガー】 かっこつけて現れる。江戸の服を着てるから。
【シルヴィア】 肩をすくめとくわ。
【GM】 忙しく通り過ぎるひとびとは、誰も気に留めない……都会の寂しさやね。
【シルヴィア】 『天の心』を託したパーティが到着してるかどうか、探してみようかい。
【ティガー】 たぶん、冒険者が立ち寄る酒場とかにおると思う。
【GM】 そうやってキミたちが通りを歩いてると、人込みの向こうに、頭ひとつぶん飛び抜けてるエルフの姿が見えました。
 その頭上には、ウサ耳が揺れている。
【メイユール】 「あれやー!」って、指さすわ(笑)。
【キャロット】 今、観光中 (笑)。ニンジンのバター焼きとか食いながら、歩いてる。
【GM】 ウサギ男は、近くの宿屋『三叉路亭』に入っていった。
【シルヴィア】 そこに行こう。
【GM】 昼食時を過ぎた『三叉路亭』の酒場は、がらがらに空いてる。旅人などの姿が、ちらほらある程度やね。
【プレセア】 プレセアは部屋にいる。スパイク・アーマーの手入れをしてるねん。
【ファベル】 食後のお茶を飲みながら、経済新聞を読んでるで。
【GM】 ウサギは、そんなファベルがいるテーブルにつく。ニンジンを食べながら。
【ファベル】 「またかよ。よく飽きへんなぁ」
【キャロット】 これも、ウサギに近づくための修行。
【GM】 ウサギ男を追って酒場に入ったメイユールたちは、そん光景を目にしたよ。
【ティガー】 どんなパーティなんやろ(笑)。
【メイユール】 こっちも、大したことは言えへんと思うなぁ。
【シルヴィア】 ファベルたちに、「やあ」と声をかけてあげる。
【ファベル】 あ、じゃあ、プレセアを呼んでこようか。「依頼者が来たよ」って。
【プレセア】 手入れ中のスパイク・アーマーを持って下りるわ。
【ティガー】 「うわっ、なにそれ?!」って、ひく。「ジーネや〜!」って思う(笑)。
【メイユール】 わたしもひく。「見て、あれ、ジーネやで」って、ひそひそ言う(笑)。
【ティガー】 「うん。でも、ムキムキちゃうなぁ」

マドナガルの目覚めの事

【プレセア】 うらやましがられてると、勘違いしとく。
【シルヴィア】 「やれやれ」って思う。「こいつ、盗賊やったはずやのにな?」
【ファベル】 じゃあ、『天の心』と、赤の玉を渡そう。それから、チロカニントのタペストリーも見せて、言い伝えのことを教える。
【GM】 シルヴィアが相手したので、引継ぎ作業は滞りなく行われました。ウサギたちが持ってる情報は、すべてティガーたちに知らされました。
【キャロット】 「オレ、オムレツ仙人に会ったんスよー。ウサギにしてもらうんスよ、今度」
【ティガー】 「マジで? ええなぁ」とか言ってそう。
【メイユール】 おまえもなりたいのか、ウサギに(笑)。
【GM】 残りの4人は頭を抱えてる。
 とりあえず、ウサギたちはミッションを達成したので、ティガーたちから、成功報酬の金貨4500枚を受け取ったよ。
【ファベル】 おお〜、すごい。ひとり1500枚。
【キャロット】 豪遊しよー。もう、世界の危機とか関係なしに、豪遊しよう。っていうても、あんまり大した豪遊にならんと思うけど。
【GM】 そうかな? 金貨1500枚といえば1万5000フィスやから、けっこう遊べると思うよ。
【シルヴィア】 残すアイテムは、『天の衣』やな。
【ティガー】 玉は5つやったよね。俺、さっきの赤と、緑と青を持ってる。
【シルヴィア】 僕はオレンジの玉。
【メイユール】 わたしのは――あ、これ、霊食(たまぐ)いネズミの“たま”や(笑)。じゃあ、1個足りない。黄色の玉が足りない。
【GM】 とりあえず、無事に『天の鍵』を取り戻せて、『天の心』も入手できたので、今夜はちょっとした打ち上げパーティーになりそうやね。それまでは、各自自由行動ということで。
【ティガー】 じゃあ、外に遊びに行く。観光。ツヴァイハンダーとか、グレート・アックスとか背負ったまま。ガランザンの鎌も持ってるで。着てるの、江戸の服やし。
【メイユール】 「出ていってもたぁ!」と焦ったけど、疲れてるから放置(笑)。
【プレセア】 プレセアは、部屋に戻って、また鎧の手入れをしとく。
【キャロット】 ウサギは、酒場でニンジンをポリポリポリって食ってるわ。ウサ耳が、風でときどきぴこーんって動くし。
【GM】 なんで、リスみたいな持ち方やねん(笑)。
【メイユール】 ウサギになりきってるなぁ。ある意味、本物かもって思う。
【キャロット】 それを感じて、ニマ〜ってしてる。至福。ほっぺたピンク色。
【メイユール】 わから〜ん!
【ファベル】 その空気に耐え切れずに、外に出て行く(笑)。
【シルヴィア】 僕はプレセアと一緒に宿泊部屋に行って、タペストリーでも見とくよ。
【GM】 さて、ティガーは街をぶらぶらしてます。
 ボアの通りはひとの往来が激しく、馬車なんかもひっきりなしに行き交ってるね。
 そのせいで、大きな荷物を背負ったお婆さんが、道を渡りたいのになかなか渡れなくて、困ってたりしています。
【ティガー】 じゃあ、でかい荷物ごとお婆さんを持ちあげて、道を渡る。
【GM】 無事に道を渡れることができたお婆さんは、「ありがとうございました」と、ティガーに頭を下げる。
 お礼に、タイヤキをひとつくれたよ。
【ティガー】 わ〜い! ホクホクホク……。
【GM】 キミもリス持ちか!(笑)
 ……そこを通りかかったファベルは、ティガーがタイヤキを頬張ってる現場を目にしてしまった。
【ファベル】 「うわー、ニンジンかと思った!」やな。
【ティガー】 武器とかいっぱい持ってるのに、顔だけ子供やねん。ニマ〜ってしてる。
【GM】 口のまわりが、あんこだらけ。お婆さんにチリ紙をもらってる。
【ファベル】 「ウサギから逃げてきたのに〜」って、泣きながら走り去るわ。
【GM】 酒場に逃げ帰ると、まだウサギがニンジンを食べている……。
【メイユール】 わたしは、競馬新聞に没頭してる。
【GM】 眉根を寄せて記事に見入り、ときどき舌打ちしてるんやね。
【ファベル】 安息の場所がないやん(笑)。えらいキャラになってもた。
【プレセア】 おかしいな。
【ファベル】 元凶は、あんたじゃないですか(笑)。
【GM】 さて、お婆さんと別れたティガーは、空き地の前の道に差しかかりました。
 すると、空き地に生えてる木の根元の茂みから、「ぴーぴー」という、雛が鳴く声が聞こえてくる。
【ティガー】 今日は何や?! 雛が巣から落ちてんの?
【GM】 そうみたい。木を見上げると巣がある。そこから落ちたんやろね。
 そして、その雛を、1匹の野良猫が虎視眈々と狙っています。
【ティガー】 猫アターック! 猫にダーツを投げる。当てないけど。
【GM】 驚いた猫は、バリっと逃げた。塀の上に飛び乗って、恨めしそうにティガーを振り返ってから、向こうに姿を消してしまった。
【ティガー】 じゃあ、雛を巣に帰してあげる。
【GM】 ツヴァイハンダーの先っぽに乗せたら、楽に巣に届くね。
【ティガー】 雛が刺さる〜。普通に手に持って、木に登る。で、親鳥に「また卵産んだら、ちょうだいな。オムレツにするから」って言うて、去っていくねん。
 ……何のイベントなんやろ?
【GM】 その頃、ファベルは『三叉路亭』の酒場のカウンター席で、ひとり酒を飲んでいる。ウサギやメイユールがいるテーブルに背を向けてるので、イヤなものは見えない。……でも、ウサギがニンジンをかじる音は聞こえる。
【ファベル】 胃が痛くなるで(笑)。
【シルヴィア】 じゃあ、タペストリーを荷袋に閉まって、酒場に下りよう。
 ファベルの隣に座って、酒を勧めてあげるよ。「まあ、飲みねぇ」
【ファベル】 酒をあおりながら、「おたくの親族がね――」って、愚痴っとくわ。
「あれ、何とかならんのでしょうかね」
【シルヴィア】 「あれが何とかなったところを、想像できる?」
【ファベル】 「んーん。どう考えても、鉄球娘にしか……」
【シルヴィア】 「じゃあ、ムリ」(笑)
【GM】 その頃、川沿いの路地を歩いてるティガーは、前方から漂うオムレツの匂いを嗅ぎ取ったよ。
【ティガー】 そら、駆け寄るわな。
【GM】 オムレツの屋台があるのを見つけた。キミがひとの間を縫ってそこに近寄ろうとしたとき、背後で若い女性の悲鳴があがったよ。
【ティガー】 立ち止まって、ちらっと振り返ってみる。「……オムレツぅ」って思いながら。
【メイユール】 切ないな(笑)。
【GM】 そこには、4匹のゴブリンがいる。川伝いに洛中に侵入してきて、岸から上がってきたんやろね。
 ゴブリンのうちの1匹が、ファンリーと同じ年頃の娘の腕を掴んでいる。他の3匹は、街のひとたちを威嚇してるね。
 恐れおののいたひとびとは、遠巻きにそれを見ています。「おい、誰か衛兵を呼んでこいよ」と、ひそひそ言い合うだけ。
【ティガー】 じゃあ、コブリンをしばきに行く。
【GM】 では、ティガーが駆けつけようとしたとき、マドナガルの剣の宝石が、緑色の光を放ち始めたよ。
【シルヴィア】 おっ。剣に認められたっぽい。
【ティガー】 えっ、こんなんで認められるん!? お婆さんをかついだり、雛を助けたり。安っぽ〜(笑)。
【シルヴィア】 そういうもんやねん(笑)。
【GM】 キミは最終試験を3つともクリアしたので、剣の攻撃力と追加ダメージが、プラス3されます。それから、剣に知性が宿っているので、クリティカル値がマイナス1されるのは、前にも言ったとおり。
 必要筋力は14だけど、高品質な剣なので、打撃力は片手で19、両手持ちで24です。
【メイユール】 めちゃめちゃ力が解放されてるで。さっきの善行で。
【シルヴィア】 無意識にええことしてるから。
【GM】 ――で、ティガーはどうすのかな? 娘は今にも連れ去られそうやけど。
【ティガー】 どつく。武器、何でもそろってるで。
【シルヴィア】 せっかく認められたんやから、マドナガルの剣を使ってみたら。
【ティガー】 じゃあ、使ってみる。
【GM】 敵は、ゴブリン4匹ね。川辺に下りようとするゴブリンたちの最後尾の奴が、娘を引きずってます。
【ティガー】 横から近寄って、ズバっと[なぎ払い]。(ころっ)全部、当たった。ゴブリンAに20点、Bにはまわった33点、Cは低いや17点、Dには18点のダメージ。
 で、娘さんの前で、ピタっと寸止め。「おお、やばい」
【GM】 ゴブリンは、4匹とも一撃でやられたね。ティガーがマドナガルの剣に付着した血を振り払うと同時に、妖魔どもはバラバラと(くずお)れた。
【シルヴィア】 鬼や(笑)。
【ティガー】 じゃあ、何事もなかったかのように、オムレツ屋に向かう。
【GM】 その頭に、コツンと当たるものがあるよ。
【ティガー】 なに?
【GM】 銀貨やね。野次馬たちが、やんややんやと喝采して、お金を投げてくる。(ころっ)全部で40フィス。
【ティガー】 わーい(笑)。
【メイユール】 人気者や。
【ティガー】 じゃあ、オムレツを買いに行く。
【GM】 その背中に、助けられた娘が「せめてお名前を……」と、呼びかけるけど?
【ティガー】 もう、頭の中が黄色くなってるから。オムレツのことで頭がいっぱい。
【GM】 ティガーは、娘の声に応えず、着流しの江戸の服をたなびかせて、砂塵舞う路地を去っていくんやね。
【ティガー】 で、オムレツ屋でオムレツを買う。40フィスで買えるだけ。
【GM】 両手に余るほど買えるよ。
【ティガー】 そんなにいらんから、3人分買って宿屋に帰るわ。
【メイユール】 めちゃめちゃクールやのに、最後の行動だけが、街のひとに謎を残すんやな(笑)。
【GM】 『三叉路亭』帰ると、ファベルがシルヴィアに愚痴をこぼし続けてる。
【ティガー】 じゃあ、「1個どうぞ」って、オムレツをあげる。
【ファベル】 「オムレツですか」
【ティガー】 で、ティガーは向こうでホクホクホクって食べるねん。
【GM】 ウサギは、その隣でニンジンをポリポリポリって食べてる。
【ファベル】 あぁ〜。リス持ちイヤ〜!
【キャロット】 めっちゃ早いで。前歯だけで食べるねん。1分で10本ぐらい。
【ティガー】 「おまえ、ニンジンしか食べへんの?」って言うわ。
【キャロット】 「あなたは、オムレツしか食わないじゃないっすか」
【ティガー】 「肉も食います」
【キャロット】 「オレはパセリも食うっすよ」
【ティガー】 「俺はキャベツも食えますよ」
【メイユール】 バトルや。どっちが勝っても、どうでいいって感じやな。
【GM】 まあ、そんな感じで、キミたちは『天の衣』の到着を待つわけやね。
【メイユール】 大丈夫なんかなぁ。
【ティガー】 きっと、届かない。クエストしてるの、前髪王子やもん(笑)。
【GM】 なめてるな、パチモーンの実力を(笑)。

÷÷ つづく ÷÷
©2007 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2007 Jun Hayashida
Map ©2007 Moyo
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