≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第34話§

前髪の冒険

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 天の衣の手がかりの事 ▽ 遺跡探索の事 ▽ 恐るべき敵との激闘の事

天の衣の手がかりの事


 レムリア暦530年4月25日――。
 オレンブルクの冒険者の店に、あるアイテム探索依頼の告知が張り出された。
 依頼主は、かの有名な“オムレツ王子”ティガー。
「『天の衣』と、月へ行く船の守護者のドラゴンに捧げる3色の小さな玉を、3ヶ月以内に見つけてきて欲しい」という依頼で、後に「ボアに届けて欲しい」と条件が追加された。
 アイテムを1個見つけるごとに2500フィスが支払われるという報酬に釣られて、数多くの冒険者が挑戦した。
 しかし、広い大陸で漠然とアイテムを探し出すことは困難を極め、けっきょく、誰も何の手がかりも掴めないまま、期限の3ヶ月が過ぎてしまった……。

【GM】 そんなわけで、ほとんどの冒険者たちは、ティガーの依頼をあきらめた。とりあえず、手っ取り早く報酬がもらえる仕事をしとかないと、生活できへんからね。
 そんな中、ただひとり、期限が過ぎても『天の衣』を見つけ出そうとチャレンジし続けている者がいました。
 それがキミ、“前髪王子”ことピエール・パチモーンです。
【パチモーン】 ほほう。
【GM】 キミの執念は実を結び、9月19日、ついに、『天の衣』の在り処を示す手がかりを得ることができた。
【パチモーン】 どこら辺にあるの?
【GM】 『天の衣』は、メカリア王国の南に広がる“炎の蠍の砂漠”を越えた先、未開の山中に隠されているそうです。例によって、ダンジョンの探索になりそうやね。
【パチモーン】 距離はどのぐらい?
【GM】 徒歩で38日、馬なら19日です。
 パチモーンは、そこへ出かけることになります。そして、キミに選ばれたパートナーは、ロートシルトです。
【ロートシルト】 広場でナンパしてたところを、声かけられた。歌を歌って、女の子を集めててん。
【パチモーン】 〈チャーム〉の呪歌を歌ってたんや。歌をやめたら、効果も消えるけど。
【ロートシルト】 集めるだけ集めて、その中から選り抜きするねん。
【GM】 呪歌をそんなことに使わんといて(笑)。
【パチモーン】 「それはともかく、キミの力が必要なんだよ、ロートシルトくん」ばさーっ、と誘いをかけるよ。
【ロートシルト】 行くけど、馬がいる、馬が。
【パチモーン】 パチモーンは、シマウマを持ってるらしい(笑)。
【GM】 どうしても、あのぶち模様の馬が売ってないから、それで妥協してるんやね。ちなみに、名前は『ほぢ』です。
【パチモーン】 ふたり乗りできる?
【ロートシルト】 男同士でふたり乗りするのはちょっと(笑)。
 乗用馬を買おうにも金が足りない。
【パチモーン】 何か、売れそうなものは持ってないの?
【ロートシルト】 コモン・ルーンを持ってる。〈ライト〉と〈エンチャント・ウェポン〉。両方売ったら、いくらになるんやろ?
【GM】 3000フィスやね。
【ロートシルト】 売っても意味なさげ。
【パチモーン】 せっかくやから、持っとき。何かの役に立つかも知れん。
【ロートシルト】 どこかで5000フィス借りてくるわ。
【GM】 借りれたよ。ひと月に3%の利子がつくけどね。
【ロートシルト】 OK。いきなり借金やで〜。じゃあ、馬ゲット。
【パチモーン】 牝馬やね。ロートシルトなら。
【ロートシルト】 雌なら何でもいいのか、ロートシルトは(笑)。
 名前は『バクテリオファージT4』。
【GM】 他に買い物などがあるなら、今のうちにしといてね。メカリアまでは街道を通るから、行く先々で必要になったものを買えるんやけど、「目的地に着きました」のひと言で移動が終わってしまうから(笑)。

 ふたりは、ダンジョン探索に向けた準備を整え、翌朝、オレンブルクの街を発つことにした。

【GM】 では、翌9月20日の朝を迎えました。ティガーたちがエストリア王国に入った頃で、プレセアたちがオムレツ仙人に会った頃です。
 出発しますか?
【パチモーン】 するさ。いざ、天の衣のダンジョンへ。ばさーっ。
【ロートシルト】 「また、この4人か」って思いながら。
【GM】 ん? ふたりやで。NPCは参加しないから。
【ロートシルト】 あ、そうなんや。ファンリーも一緒かと思ったのに。
【GM】 あてがはずれたね。キミが待ち合わせ場所に行ってみたら、前髪しかいない。
【ロートシルト】 「なんだよー」って、ぶちぶち言うとく。
「ギャルと冒険できると思って、借金までしてきたのに」
【パチモーン】 「あれ? 言ってなかったっけ?」ばさー(笑)。
【ロートシルト】 「来るんじゃなかったぁ〜!」
【GM】 日の出門から街を出るから、ミフォア大神殿の前を通ることになるし、明けたての陽光を浴びながら道を掃除するファンリーを目にすることはできるよ。
【ロートシルト】 おお、ファンリー……。
【GM】 彼女の足もとには、ネネとヒデヨシがいる。
【ロートシルト】 ヒデヨシ、復活したんや。
【パチモーン】 ファンリーに挨拶しとこう。「ついに、『天の衣』を見つけられそうだよ」ばさー、って。
「今から、それを取りに行くところなのさ」
【GM】 「そうですか。お気をつけて」
【パチモーン】 「それじゃ行こうかね、ロートシルトくん」ばさー。
【ロートシルト】 しぶしぶ、かなり離れて後ろをついて行くわ。

 ふたりの冒険者は、19日間の旅をした。
 街道を通ってメカリア王国へ向かい、王都メカリアから南に向う。
 襲いくる魔物を蹴散らしながら、苦労して“炎の蠍の砂漠”を越え、険しい山を2つ越えて、ついに、『天の衣』が隠されていると思われる洞窟の前に到着したのだった。

【GM】 洞窟の入り口は、切り立った崖のふもとにあります。崖の高さは10メートル以上はありそう。
 てっぺんは台地になってるのかな? 青い空をバックに、こんもりと黒い森が広がってるように見える。
【パチモーン】 入り口はどんな感じ?
【GM】 石の両開きの扉が閉まってる。そうとう古いみたいで、苔むしてるね。
 その扉を挟むようにして、台に座ったライオンの石像が雌雄1体ずつ、計2体置かれてあります。目には黒い宝石だかガラス玉だかが、はめ込まれてるみたいやね。
【パチモーン】 「さあ、ロートシルトくん、行くよ。ついてきたまえ」ばさー。
【ロートシルト】 「あー、はいはい」
【パチモーン】 こらこら。従者たるもの、もっとハキハキしないと。
【ロートシルト】 『従者』って何や〜! 前髪、引っぱるで。
【パチモーン】 「はっはっは。落ち着きたまえよ、ロートシルトくん。話は後だ。とりあえず、あの中に入ろうじゃないか」
【GM】 丸め込めに入ってるで。
【ロートシルト】 力なくうなずきそうやな。ドっと疲れて。
【GM】 パチモーンは、カルファン騎士7人を欺いてた男やし。
【パチモーン】 ゲームが違えば、[言いくるめ]とかいう技能を持ってそうや。
【GM】 だいたい、ここで『天の衣』を見つけたとしても、得られる報酬は2500フィスやろ。運良く3色の玉も合わせて発見できても、報酬は最大で1万フィスやん。
【ロートシルト】 で、こいつと山分けになるから、報酬は最高で5000フィスか。借金の利子分、赤字やん。
【GM】 だまされ気味やね(笑)。
【ロートシルト】 最悪や。ただ、集合場所にファンリーがおると思って参加しただけやのに、割に合わん。
【パチモーン】 「まあ、そんなに気に病むことはないよ、ロートシルトくん。この冒険から帰ったら、モテモテさ!」ばさーっ。
【ロートシルト】 「あー、そうかなぁ。OK。じゃあ、行こうぜ!」って感じやな。
【GM】 そうして、キミたちが石の扉に手をかけたとき、両脇のライオンの黒い瞳が赤く輝き始めたよ。
【パチモーン】 おっ、やばい。
【GM】 「汝ら、天の衣を求める者か?」と、声がする。
【パチモーン】 「そのとおり」バサーっ。
「我が名は、レギト・グニク・イーニン・ハオト王子!」
【ロートシルト】 そこは『パチモーン』とは名乗らんのや(笑)。
【GM】 「ならば、我らが敵だ。力なき者に、天の衣をまとう資格はない。我らに打ち勝てる者のみが、その扉の向こうへ行ける」と、獅子は応えて、動きだした。
 まるで本物のライオンのような動きで、2体の獅子の石像が、キミたちに襲いかかってきます。
 ロートシルトには、雌ライオンがくる。
【ロートシルト】 おお、雌や〜! やったー!
【GM】 前髪王子には、雄ライオンが向かってくる。
【パチモーン】 「どこからでもかかってこい!」ばさーっ。
【GM】 「ゆくぞ!」雄ライオンは、豊な鬣をバサーっとはね上げた。
【パチモーン】 ん〜、やるな。
【ロートシルト】 どこに敵愾心を燃やしてるんや。

遺跡探索の事


 シーフ技能で戦うロートシルトは、硬い石像の防御力に悩まされたが、第4ラウンド目にクリティカルを放って、雌ライオンを撃破した。
 一方、パチモーンと雄ライオンは、互角の戦いを繰り広げる。

【GM】 「おまえ、なかなかやるな」バサーっと、雄ライオン。
【パチモーン】 「そっちこそ」ばさーっ。
【GM】 男たちは、戦いの中で友情を育んでるで。髪の毛対決やね。
【パチモーン】 どっちの髪のほうが、威厳に満ちてるか。
【ロートシルト】 つまんねー対決(笑)。そっちの世界に行きたくないから、座って鼻ほじって見とくわ。

 第7ラウンド。
 パチモーンはクリティカルを出して、雄ライオンを倒した。

【ロートシルト】 おー、やるじゃん。拍手、拍手。
【GM】 ライオンたちは、元の場所に戻って、再び石像となった。瞳の輝きも失われる。
「おまえたちには、挑戦者の資格がある。行くがよい」と声がすると、石の扉が、ゆっくりと左右に開いた。
 中は暗そうです。
【パチモーン】 じゃあ、照明を点けて入っていこう。前髪王子は両手持ちの武器やから、ロートシルトくんが照明を持ってくれたまえよ。
【ロートシルト】 コモン・ルーンの〈ライト〉を武器にかける。
【GM】 ロートシルトの武器は、レイピアとライトメイスやね。どっちにかけるの?
【ロートシルト】 ライトメイスに使う。
【GM】 ふふふ、伝説のライトメイス・ライトの復活やね。
【ロートシルト】 はあ?(笑)
【パチモーン】 それでは行こうかね、ロートシルトくん。ばさー。
【GM】 まずは、通路がまっすぐ伸びてるね。ふたり並んで剣が振るえるぐらいの幅があります。けっこうひんやりしてて、湿っぽい。カビ臭い。
【パチモーン】 警戒しながら進むよ。

 ふたりは、最初の部屋(A)に入った。

【GM】 部屋の中央には、水がいっぱいにたたえられた小さなプールがあります。
 キミたちが部屋に入ると、水の中から、1匹の猫が顔を出しました。
「どうやら、資格ある者が訪れたようですね」と、猫は言う。
【ロートシルト】 入浴中? 何色の猫?
【GM】 黒色で、光が当たるところは緑。瞳は金色やね。何よりの特徴は、彼がプールサイドに上がったときに見ることができる。
 その黒猫の下半身は、なんと魚です。“マーキャット”ってところかな。
【パチモーン】 ウナギイヌみたいなものやな。サカナネコ。
【GM】 大好物と一緒になってるという、とてもおいしい体をしてるんやね。
【ロートシルト】 雌?
【GM】 雄です。
【ロートシルト】 雄か……ちっ。
【パチモーン】 「キミは何者?」
【GM】 「天の衣の迷宮を守護する者です」
【パチモーン】 「では、さっそく案内してくれたまえ」ばさーっ。
【ロートシルト】 「案内? パチモーン、そいつ、雄やで」って言う。
【パチモーン】 だから?(笑)
【GM】 「契約により、あなた方のお手伝いはできません。しかし、あなた方が天の衣をまとうにふさわしい知恵者なら、水が天の衣へ導いてくれることでしょう。では、がんばってください」
 マーキャットはそう言うと、身をひるがえして、「ちゃぽん!」とプールに潜って姿を消しました。
【パチモーン】 逃げられた。
【ロートシルト】 じゃあ、奥へ行こう。
【GM】 このAの部屋には、入ってきたところ以外に、ふたつの出口があるね。ひとつは、ふつうの幅の通路、もうひとつは、7メートルほどのすごく幅の広い通路。
【ロートシルト】 広い通路を行ってみよう。
【GM】 キミたちはAの部屋から、広い通路へ出ました。
 出てみると、通路は横に広いだけでなく、上にも高くなってることがわかる。5〜6メートルほどの高さのところに、アーチ型の天井があります。
【パチモーン】 ジャンプしても、天井には届かへん。
【GM】 ここは、けっこう明るい。通路の終点に両開きの鉄の扉があるんやけど、その上に、大きなステンドグラスがはめられていて、外の光が極彩色の筋になって注がれてるから。
【パチモーン】 ほう。
【ロートシルト】 ステンドグラスか。
【GM】 描かれてるのは、森の中で小動物たちに囲まれながら竪琴を奏でる、若い女性の姿。
【パチモーン】 すごいな。なんか、不思議な空間や。
【GM】 さらに、目につくものがあるよ。
 通路の中ほどを、高さ3メートルのところに架けられた渡り廊下が横切ってます。通路の両壁に開いている通行口を結ぶ連絡橋、って感じやね。
【ロートシルト】 なるほど。
【GM】 渡り廊下の中央辺りの欄干には、滑車がひとつ取り付けられています。
【ロートシルト】 滑車? 何やろ?
【パチモーン】 とりあえず、奥の鉄の扉のところへ行こう。
【ロートシルト】 そして、開けてみる。
【GM】 扉は簡単に開いたよ。空けた瞬間に、水が高いところから落ちる音――滝の音が、飛び込んできた。
 扉の向こうは、外(E)です。
【ロートシルト】 外?
【GM】 そう。ただし、10メートルほどの高さの垂直に切り立った崖に、周りをぐるりと囲われてるけどね。大きな穴の底、って感じかな。
【ロートシルト】 えらいとこやな。
【GM】 また、地下の建造物が一部露出しています。これは、長い年月の間に自然とそうなったわけじゃなく、最初からそういう造りにしてるみたい。
【パチモーン】 ほう。
【GM】 周囲の岩壁に、ひとつ、中腹から水が溢れ出る個所があって、落差3.5メートルの滝ができている。さっきから大きな水音を轟かせているのは、その滝やね。
【ロートシルト】 む〜。
【GM】 流れ落ちた水は池を成し、小川となって、建物下の排水溝に消えてゆく。
 池には、Y字型の柱が3本、直列に並んで立ってます。まるで、滝と小川を結ぶように。
 小川の脇の建造物には、大きな水車が取りつけられてます。でも、水車は回ってない。なぜなら、水面から80センチほどの高さに設置されてるから。
【パチモーン】 その水車は、取り外せない?
【GM】 ちょっとムリやね。破壊してしまえば、取れるかも知れないけど。
【ロートシルト】 池のY字型の支柱って、全部、同じ高さ?
【GM】 いや、滝にいちばん近い支柱が最も高くて2.5メートル、小川にいちばん近いものが最も低くて2.3メートルほど。
【パチモーン】 ここにうまいこと管か何かを架ければ、水車に水がかかるようになってるんとちゃう。架け渡せそうな物は、何も持ってないけど。
【ロートシルト】 気になる支柱やけど、とりあえず、先にダンジョンの他のところを探索してみよう。

 冒険者たちは、Bの部屋とCの部屋で石碑を発見した。
 Bの部屋の石碑には、下位古代語の文字で、このような文が刻まれていた。
「月へ昇るもの『天の鍵』『天の心』『天の衣』を見出さん。ここに眠るは『天の衣』。衣は衣の形にあらず。形に惑わされることなかれ」

【パチモーン】 「ん? どういうこっちゃ。衣が衣の形をしてなかったら、それは衣とは言えないんじゃないのか? まあ、それは、ひとまず置いておこう!」ばさーっ。
【ロートシルト】 理屈っぽいな(笑)。

 同じくCの部屋の石碑には、こう刻まれていた。
「衣に目を奪われる者は、その下に隠された天への道を見失う」

【パチモーン】 ほうほう。これは重要そうやな――。
【GM】 ――「この石碑を持って行こう。ロートシルトくん!」ばさーっ(笑)。
【ロートシルト】 なにぃ〜!?
【パチモーン】 「持てる?」
【GM】 「キミ、モテるよね?」
【ロートシルト】 意味が違〜う(笑)。メモしとけ、メモ!

 Dの部屋の奥には、横に引き開ける扉があり、その向こうは、とても小さな部屋になっていた。

【GM】 その壁、入り口の横には、上下に動くレバーがあるよ。今は上がってる状態です。
【パチモーン】 レバーを下げてみる。
【GM】 レバーは下がった。しかし、何も起きない。
【パチモーン】 手応えも何もなし? とりあえず、元に戻しておくよ。
「んー、なんなんだろねぇ」ばさーっ。

 ふたりは、階段をのぼって2階の探索をすることにした。
 そして、部屋(F)に入った。

【GM】 Fの部屋には、宝箱が1つあります。蓋は閉まってます。

恐るべき敵との激闘の事

【パチモーン】 「開けてみたまえ」ばさー。
【ロートシルト】 「俺が?」
【パチモーン】 シーフやろ。
【ロートシルト】 普通に開けてしまおうよ、おまえが。
【パチモーン】 しかたないなぁ。じゃあ、ボクが蓋を開けようとするよ。
【GM】 それじゃ、シーフ技能の[罠感知]をやってみましょうか――シーフ技能がない? じゃあ、ダイスの出目だけでどうぞ。
【パチモーン】 (ころっ)失敗。
【GM】 なら、キミが箱を開けようと蓋に手をかけたとき、蓋の隙間からピュっと小さな針が飛び出て、キミの右の中指を突き刺した。
【ロートシルト】 王子がやられた。
【GM】 では、生命力抵抗をしてください。――それは成功。何も影響はないよ。
【パチモーン】 「チクっとしたよ、ロートシルトくん!」
【GM】 「血ぃ出た、血ぃ出た!」ばさーっ、ばさーっ!
【ロートシルト】 髪、振り乱してうろたえてるんや。脳震盪、起こすで。
【パチモーン】 10秒ぐらいパニクったら、元に戻るよ。
【GM】 「はっはっは。取り乱したりして、悪かったね」バサーって。
【パチモーン】 「もう、すっかり落ち着いたよ」(笑)
【ロートシルト】 疲れる奴や。
 じゃあ、箱の蓋を開ける。
【GM】 そのまま開けようとするの? なら、毒針が飛び出てキミの指を刺したよ。生命力抵抗をどうぞ。――成功したので、毒の影響はありません。
【パチモーン】 罠をはずしなよ(笑)。キミ、シーフだよね?
【ロートシルト】 シーフだよ。[罠解除]する。(ころっ)成功。蓋を開ける。
【GM】 中には、変わったナイフが入ってます。湾曲した鋭い刃の小さなナイフです。その正体を知りたければ、セージ技能で[宝物鑑定]をどうぞ。
【パチモーン】 (ころっ)ギリギリ成功。
【GM】 そいつは、『キャットクロー』という、ミスリル銀製の魔法の武器です。
 打撃力はそれほど高くないけど、クリティカル値が大幅に下げられてるので、クリティカルが起こりやすいんやね。
【パチモーン】 おお、すごい、すごい。上等やで。
【GM】 売値は6万5000フィスになりそう。
【ロートシルト】 すげー!
【パチモーン】 この武器は、シーフのロートシルトくんが持てばいいよ。ばさーっ。
【ロートシルト】 ありがとう。
【パチモーン】 ……この洞窟から出るまで。
【ロートシルト】 なに〜!?
【GM】 「洞窟の中ではキミが持って、外ではボクが持つということは、五分五分の条件ってことじゃないか!」ばさーっ(笑)。
【ロートシルト】 だまされるか〜!

 冒険者たちは、部屋(G)に入った。

【GM】 部屋の奥のほうに、宝箱らしき物が見えます。
 しかし、その前に、大きな人型の像が佇んでます。その像の材質は、あまり考えたくないけど、肉のように思われる。
【ロートシルト】 肉??
【GM】 フレッシュゴーレムです。
【パチモーン】 つついてみる?
【ロートシルト】 つついてみ。前髪で。
【GM】 キミたちが部屋に入ると、どこからともなく声がする。
「我は、天の衣の番人。天の衣を欲するならば、我を倒せ」
【パチモーン】 よし、戦うぞ。がんばるぞ。バサーっ。
【ロートシルト】 がんばれ〜。
【パチモーン】 キミもだ。さっき拾ったキャットクローで、縦横無尽の活躍を見せてくれたまえ。ばさー。
【ロートシルト】 まあ、試し斬りにはいいかもね。
【パチモーン】 蝶のように舞い、ハチのように刺すのだよ。バサーっ。
【GM】 行動順は、ロートシルト、フレッシュゴーレム、パチモーンです。
【ロートシルト】 フレッシュゴーレムより遅いの、パチモーン。
【GM】 フレッシュゴーレムは、見た目よりも俊敏な動きをしてるね。
【ロートシルト】 キャットクローで切り裂く。(ころっ)はずれ。
【GM】 フレッシュゴーレムの反撃はロートシルトへ――6ゾロでかわされた。
【パチモーン】 シャムシールで攻撃。(ころっ)当たった。ダメージ11点。
【GM】 微々たるダメージ。
【パチモーン】 軽いジャブやから。
【GM】 では、第2ラウンドいきましょう。
【ロートシルト】 攻撃〜。(ころっ)はずれ。
【GM】 フレッシュゴーレムのロートシルトへの反撃もはずれた。
【パチモーン】 攻撃だー。(ころっ)はずれたよ、バサーっ。
【ロートシルト】 なんだ、このスカスカの戦いは(笑)。
【GM】 あるいは、神業的回避の応酬か。戦いは第3ラウンドへ。
【ロートシルト】 攻撃。(ころっ)もうちょっとで10点もらえたのに〜。はずれ。キャットクローって、呪われてるんとちゃう?
【GM】 フレッシュゴーレムはパチモーンを殴ろうとして、避けられた。
【パチモーン】 反撃するさ。(ころっ)むー、やっぱり当たらん。
【GM】 どうやら神業的回避というより、程度の低い攻撃の応酬のようやね。

 第4ランドから、ようやくロートシルトの攻撃がヒットしはじめた。しかし、出目7でクリティカルできるキャットクローを使っているにも関わらず、全然クリティカルを起こせない。
 そうこうしてるうちに、フレッシュゴーレムの攻撃もパチモーンに当たりはじめた。

【パチモーン】 (ころっ)7点防御。
【GM】 なら、ダメージ9点とおった。
【パチモーン】 うわ〜。
【ロートシルト】 ダメージ、でかいぞ。意外と強いぞ。
【パチモーン】 反撃。(ころっ)おっ、当たった。ダメージ11点。
【GM】 微々たるダメージ。
【ロートシルト】 あぁ〜。

 第6ラウンドには、再びフレッシュゴーレムのパンチがパチモーンを捕らえ、3点のダメージを与えた。

【パチモーン】 残りの生命力が、7点になってしまったよ。ばさーっ。
【ロートシルト】 けっこう減ってる。怖いな。
【GM】 回復役がおれへんしね。
【パチモーン】 あんまり当てられるわけにはいかないね。
 攻撃し返す。(ころっ)はずれ。いかん、ジリ貧やで。
【GM】 第7ラウンドね。
【ロートシルト】 キャットクロー! (ころっ)
【GM】 (ころっ)ごめん! 6ゾロで回避してもた。
【ロートシルト】 はっはっは。いっこも当たらへんなぁ(笑)。
【GM】 フレッシュゴーレムはパチモーンへぶん殴り攻撃――当たった。けど、ダメージは黒いプレート・メイルに止められたね。
 じゃあ、はりきって第8ランドへ。
【ロートシルト】 いい加減に当てとかんと、全然ダメージがいってない。(ころっ)
【GM】 (ころっ)ごめん!
【ロートシルト】 もう!(笑) 何回目よ、GMが6ゾロ出すの。
【GM】 というか、さっきから出目が7以上しか出ない。
【パチモーン】 期待値以上の活躍やね。ばさーっ。
【ロートシルト】 キャットクローなら、クリティカルしまくりやな。
【GM】 呑気なこと言うてないで、フレッシュゴーレムはパチモーンを狙ったから、回避してよ。ダイス、他のに替えてあげるから。
【パチモーン】 (ころっ)回避。回避できた。
 でもなぁ、こっちの攻撃を当てんことには、どうにもならんで。攻撃、(ころっ)ほら、当たらへん。

 第9ラウンドはパチモーンの攻撃がフレッシュゴーレムに当たったが、ほとんどダメージを与えられない。
 第10ラウンド。ロートシルトは、コモン・ルーンの〈エンチャント・ウェポン〉をパチモーンの武器にかけて、打撃力を強化させた。

【GM】 パチモーンの前髪が、しゃきーっんキラキラ〜ってしてるで。
【パチモーン】 いやいや、シミターやろ。シミターにかけてくれたんやろ?(笑)
【ロートシルト】 それはどうかな(笑)。

 パチモーンは強化されたシミターを振るい、第11ラウンドにはクリティカルを放って、フレッシュゴーレムを沈黙させた。
 ただし、その間に、ロートシルトがフレッシュゴーレムの攻撃を受けて、残り生命力を2点にさせられてしまった……。

【パチモーン】 ボクは残り生命力5点。ふたりとも、あと1回、フレッシュゴーレムの攻撃を受けてたら、けっこうヤバかったね。ばさーっ。
【GM】 とりあえずキリがいいところで、この続きは、また後ほど。

÷÷ つづく ÷÷
©2007 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2007 Jun Hayashida
Map ©2007 Moyo
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