≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第21話§

封印の老人と少年

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 半妖精の少年の事 ▽ 老人の正体の事 ▽ カオス・ティガー大暴れの事

半妖精の少年の事

【GM】 では、明けて5月10日の朝を迎えました。
 キミたちは宿屋をチェック・アウトし、オレンブルク王国第2の都市メミンゲンを出発して、街道をさらに西へ向かいます。順調にいけば、5月21日頃、オレンブルク王国西端の都市バウツェンに到着する予定。
 ところが、キミたちが移動中のオレンブルク南西部は、5月18日頃から低気圧にみまわれ、雨が降ったりやんだりのぐずつく天気となった。
 5月20日の正午からはまとまった大雨となり、バウツェンを目の前にして、キミたちの旅足は遅くなってしまった。いくら整備された道でも、やはり雨には弱いからね。
 その大雨も夕方にはやみ、切れゆく雲間から夕日が顔を覗かせる。
【メイユール】 重馬場やで。レッドゾーン、怒ってるやろな。
【GM】 レッドゾーンは誇り高き軍馬だから、それが使命とあらば、どんな悪条件にも文句は言わないよ。あからさまにやる気を失ってるのは、ティガーのぼちやね。
【ティガー】 こいつは、普段からやる気がないから(笑)。
【GM】 ぼちはもう歩く気をなくして、立ち止まってる。
【メイユール】 レッドゾーンはそんなの待たへんで。先々行くで。
【ティガー】 「みんな、行ってまうで」って、ぼちに言う。
【GM】 誰も待ってくれないので、ぼちはふてくされて寝そべってしまった。「ぷひー」
【ティガー】 「起きぃや〜」
【GM】 そのとき、ぼちは、街道を北にはずれた向こうのほうに、小さな集落があるのに気づいた。夕餉の支度の煙が何本も立ち昇ってます。
 ぼちはムクリと起きあがり、ティガーを乗せたまま、そっちへ歩き始めた。
【ティガー】 「あれぇ??」って困ってる(笑)。
【シルヴィア】 まあ、時間も時間やし、今晩はあの村で軒下を借りようか。
【GM】 じゃあ、みんな行くわけね。
 集落に向かって移動してると、やがて左手より川があらわれる。たぶん、この川のそばに開かれた村なんやろね。一昨日からの雨のおかげで、川の水量は増えてるみたい。濁った水が、勢い良く流れてる。
【メイユール】 街道の橋が落ちてたりしたら、イヤやな。
【シルヴィア】 氾濫まではいってへん?
【GM】 そこまでひどくはないよ。でも、泳いで渡れといわれたら、キツイかも。
 川沿いには小さな道がある。もしかすると、もうちょっと街道を西に行ったところで、この小道と交わってたのかも知れない。キミたちは、その小道を進んで行きます。
 集落のはずれに差しかかったとき、10歳ぐらいのひとりの少年が、川原で大きな石をどけたり、穴を掘ったりしてるのを目撃した。
【ティガー】 「なにしと〜ん?」って、聞いてみる。
【GM】 「探し物してんね〜ん」と答える少年の耳は、少し尖ってる。どうやら、ハーフエルフのようやね。
【ティガー】 「何かなくしたん?」
【GM】 「こういうの、探してるねん」と、少年はズボンのポケットをまさぐって、右手を差し出す。手のひらに、小さな玉が載ってるよ。
【ティガー】 ぼちから降りて、見に行ってみる。
【GM】 少年の泥だらけの手の上で、沈みかけの日の光を映してキラリと輝くのは、ビー玉ぐらいの大きさの青い玉です。
【ティガー】 俺が持ってる緑の玉と、そっくり?
【GM】 うん、そっくり。
【サテラ】 あ……。
【メイユール】 ライバルが出現した(笑)。
【ティガー】 「それ、どこで見つけたん?」
【GM】 「ここ。で、おっちゃんが『これは5色の玉のひとつで、5つ揃えると、月の王国へ行ける』って言うから、探しててん」
【ティガー】 あと4個の玉も、ここにあるって思って探してたんやな。でも、ここにはもうないと思う。
【GM】 「そうかなぁ」
【ティガー】 たぶんね。それに、川の水が増えてるし、危ないよ。「今日は、もうやめとき?」って言う。
【GM】 「そやな、もう暗くなるし」と言い、少年はポケットに青い玉をしまって、ティガーと共に土手を上がる。
【シルヴィア】 「ところで、あの村で、どこか泊まれるような場所はない?」って、その子供に聞いてみる。
【GM】 「じゃあ、おっちゃんのとこに来るか?」と、少年は言う。
【メイユール】 『おっちゃん』って、誰?
【GM】 「おっちゃんは、おっちゃん。オレ、そこに住んでるし」
【メイユール】 泊めてもらおう。で、夜になったら、青い玉を持ってこっそり出て行くねん。
【ティガー】 それは、ちょっとなぁ。子供を仲間にして、一緒に来てもらったらええねん。
【シルヴィア】 でも、10歳ぐらいなんやろ? 僕らのレベルを考えたら、敵だって強力になるやろし、ついてこれないと思うよ。
【メイユール】 とりあえず、そのおっちゃんのとこに行こう。
【GM】 では、キミたちは少年に案内されて、おっちゃんの家にやって来た。集落からかなりはずれたところにある、おんぼろ小屋です。玄関は(むしろ)
 (むしろ)をふぁさっとくぐって中に入ると、囲炉裏にかけた鍋の雑炊をかき回してる老人がいた。
「おっちゃーん、友達連れて来たで」と、少年が老人に言う。
【シルヴィア】 「やあやあ、どうもおじゃまします」と、挨拶しよう。
【メイユール】 そのおっちゃんって、人間?
【GM】 見た目はね。70歳ぐらいかな。
【ティガー】 おお、すげー。
【シルヴィア】 めっちゃ、長生きや。
【GM】 おっちゃんは、「おお、旅の方とは珍しいのう」と言うて、居間に上がるように勧めてくれたよ。
【メイユール】 馬も?
【GM】 馬は軒下にでも繋いどいて。
「何のおもてなしもできませんがのう」と言いながら、おっちゃんは、鍋の雑炊を人数分のぼろっちい茶碗にわけて、差し出してくれた。
【シルヴィア】 いやいや、おかまいなく。
【ティガー】 お礼に、俺の干し肉をあげようっと。
【シルヴィア】 あの青い玉についてやけど、そのお爺さんは何か知ってる?
【GM】 いや、少年に話して聞かせた以上のことは知らないよ。キミたちが持ってる情報のほうが、詳しいと思う。
【シルヴィア】 問題は、どうやって青い玉を子供からもらうかやね。
【メイユール】 子供は、青い玉とかを集めてどうすんの?
【GM】 「『空の彼方、月の世界に、耳の長い妖精たちが住む国がある』って、おかんから聞いたから、おっちゃんと一緒にそこに行きたいねん」
【メイユール】 なんで?
【GM】 「行きたいから」
【シルヴィア】 そういえば、この子の親はどうしてんの?
【GM】 両親ともにいない。母親がエルフだったそうなので、父親が人間なんでしょうな。
 母親は、まだ幼かった少年と共に故郷の森を追い出されて、この集落に流れてきたそうな。そのときすでに、母親は疲労と飢えで病に冒されていて、ほどなくして息を引き取った。
 それ以来、このお爺ちゃんが少年の面倒を見てるらしい。
【メイユール】 父親は?
【GM】 この集落には来なかったみたい。母親も、とくに何も言い残してなかったし、どこでどうしてるのかはわからない。

 冒険者たちはその小屋にひと晩泊めてもらい、翌朝を迎えた。

【GM】 さて、おんぼろ小屋の木板の壁に、バンバンと石がぶつけられる音で、キミたちは目を覚ましたよ。
【ティガー】 「なに〜?」って思いながら、起きる。
【GM】 馬は外に繋がれてたよね。じゃあ、「ヒヒン、ヒヒン」と、馬たちが嫌がってる声が聞こえる。
【メイユール】 なにぃ!? それは表に出るよ。
【GM】 ひとつ石つぶてが飛んできたから、回避してみ――それは軽く回避やね。
【メイユール】 「わたしの馬に、何すんねん!」って言う。
【GM】 石を投げつけてるのは、12〜14歳ぐらいの、いかにもクソガキという少年5〜6人やね。頭の横に十銭ハゲがあったり、青バナを垂れてたりする奴ら。
【メイユール】 古き良き時代の子供や。
【GM】 その内のひとりが、「うっさい、ハゲ!」と応える。
【メイユール】 『ハゲ』?!  ボキャブラリー貧困やな。
【シルヴィア】 ハゲはそっちやろ、って(笑)。
【ティガー】 ティガーも出ていこうっと。おもしろいから、石は回避せんとこっと。鎧を着てなくても、ダメージ減少が6点あるし(笑)。
【GM】 石が当たってもビクともしないティガーに、クソガキどもはますます調子こいて、石を投げてくる。「うっさい、ハゲー」「うっさい、ハゲー」と言いながら。
【ティガー】 なんか、こう、ガーンとやってやりたいな〜。子供の頬をかする感じで、大きな石を投げつけてみる。(ころっ)
【GM】 それは、岩のような石が、子供の右頬のわずか5ミリ横をかすめて飛んでいったね。そのガキは、凍りついてしまったよ。
【ティガー】 「石、投げられたら、怖いやろ? やめろや、ボケ」って言う。
【GM】 すると別の子供が、「うっさい、悪者のくせに!」と怒鳴る。
【ティガー】 「おう、悪者じゃ!」
【GM】 「悪者やったら、石ぶつけてもいいんですー。やっつけてもいいんですー」
【ティガー】 「やれるもんなら、やってみてくださいー」
【メイユール】 互角や(笑)。
【GM】 「おぼえてろ〜!」と言い残して、クソガキどもは走り去っていった。
【シルヴィア】 爺さんに事情を聞こう。「何ですか、あれは?」って。

老人の正体の事

【GM】 集落の子供たちだそうです。こんなことが、たびたびあるらしい。
【サテラ】 『たびたび』?
【GM】 そう。集落の人間からしてみれば、この爺さんと少年は、「村はずれに住む、変人となりそこないの子供」ということになるらしい。
【シルヴィア】 村の大人も、そう思ってるの?
【GM】 思ってる。だから、クソガキが爺さんと少年に何かしても、誰も叱ったりしない。
 それどころか、前にハーフエルフの少年がいじめられてるのを爺さんが助けたとき、逆ギレした集落の大人たちに、家に火をつけられたりしたよ。
 それで、前の家の近くで放棄されていた、今のおんぼろ小屋に移ったんやね。
【シルヴィア】 それで「『月の王国』に行きたい」って、小年は言うてたんやな。
【ティガー】 わざわざ玉を探して月の国に行くより、オレンブルクに行けば、いいんちゃうかな。あそこって、ハーフエルフでもいじめられへんし。
【GM】 「おお、それはいいのう」と、爺さんは言う。
「この子を、オレンブルクへ連れて行ってもらえんかのう?」
【メイユール】 爺ちゃんは?
【GM】 爺さんは、この地を離れることはできない。
【メイユール】 なんで?
【GM】 それを説明するには――そうやね、爺さんは少年に「そろそろ、お客さんに朝食のしたくをしようかの」と言った。
 少年は、「じゃあ、タオさんのとこに、野菜をもらいに行ってくる」と言って、家を出た。
【ティガー】 俺、保存食いっぱい持ってるのに。まあ、いいか。保存食は、宿代の代わりに置いてくわ。
【GM】 そして爺さんは、キミたちに説明してくれる。
 この爺さんはね、恐ろしい怪物を閉じ込めてる封印の番人なんやね。

 かつて冒険者であった爺さんは、若かりし頃のある日、この地にあった崩れかけた洞窟に潜った。
 そして、地下に遺されていた古代の建築物を発見し、宝を求めてその遺跡を荒らしまくったのだった。
 そのとき爺さんは、誤って、遺跡の奥深くに残されていた怪物の封印を壊してしまった。恐ろしい怪物が、永き眠りから目覚めんとする不気味な気配が、地下遺跡の中に満ちた。
 すると、その遺跡を築いた古代の魔術師の亡霊が現れ、自らに残された魂の力と爺さんの力をもって、目覚めかけた怪物を再封印した。
 そして、封印を壊し、怪物を目覚めさせかけてしまった爺さんは、魔術師の亡霊によって、封印の遺跡を守り続けるようにさだめられたのだった……。

【シルヴィア】 それって、何年ぐらい前の話?
【GM】 「もう、覚えておらんのう。集落が築かれる前の話じゃて、200年ぐらい前かの」
【サテラ】 200年?!
【メイユール】 天然記念物や。
【GM】 心臓が1年に1万回しか動かない……か、どうかはおいといて、精霊使いのメイユールならすぐにわかるだろうけど、この爺さんはアンデッドです。[センス・オーラ]してみたら、きっと負の生命力を感じるでしょう。
【シルヴィア】 〈ターン・アンデッド〉は、厳禁やね。
【GM】 集落の人間にしてみれば、現在60歳の長老が子供の頃からずっと同じ姿で生きてるような人物やし、気持ち悪いことこの上ない存在なわけやね。
 おまけに、今はハーフエルフまでいるし。
 ついでに今朝は、右目に眼帯した男が、集落の子供に石を投げつけてきたし。
【ティガー】 ちょっと、びびりあがらせてしまいました(笑)。
【メイユール】 すっかり、悪の館や(笑)。
【ティガー】 で、ハーフエルフの子供は、爺さんが封印の番人ってこと、知ってるの?
【GM】 いや。まだ、ちゃんと教えてない。
【シルヴィア】 村人には、自分が「封印の番人や」ってこと、説明せんかったん?
【GM】 しても、信じてもらえない。80年ぐらい前の、集落ができたばかりの頃の住人は、信じてくれてたけど。
 今の住人は、「あれはモンスターに違いない」とか言って、聞く耳を持ってくれない。
【シルヴィア】 あながち、はずれではないけども(笑)。
【メイユール】 村中が敵って感じやな。
【GM】 まあ、ひと家族だけ、作物を分けてくれたりするけどね。
【ティガー】 今、子供が野菜をもらいに行ってるとこ?
【GM】 そう。
 爺さんには食事は必要ないけど、少年にとっては大切。川で魚を釣ったり、森で山菜なんかを採ったりするけど、やっぱり苦しい。
 それで、その家族に、野菜などを乞うたりすることもあるんやね。
 まあ、その家族にしたって、村八分にされたら大変なんで、懇意というほど交流をもってくれてるわけではないよ。
【シルヴィア】 なるほど。
 ところで、封印されてる怪物って、僕らで倒せんかな?
【GM】 やってみないと、わからない。でも、倒せれば問題ないけど、失敗したときは、えらいことになると思う。
【シルヴィア】 試すにはリスクがあり過ぎるか……。
【メイユール】 倒さなアカンの?
【シルヴィア】 いや、この爺さんが封印を守る必要がなくなったら、少年と一緒にオレンブルクに連れて行けるやろ? あの子供、爺さんと一緒にいたがってたし。
【ティガー】 オレンブルクに行くことになったら、青い玉を譲ってもらえる……あ!
 アンデッド爺ぃがここを離れられへんのなら、あの子供も『月の王国』をあきらめるような気がする。
 爺ちゃんが封印の番人ってこと、子供に話したらダメ?
【GM】 「そうですのう、いずれ話すことですし……今日、話しましょうかの」
【メイユール】 『月の王国』をあきらめんかったら、どうする?
【シルヴィア】 そのときは、そのときやん。
【サテラ】 夢をあきらめさせるのは、なんとなく後ろめたいけど。
【ティガー】 とりあえず、今すぐに青い玉は必要ないやん。たぶん、キャフタに行った帰りに、またここを通ると思う。
 それまでの間に、青い玉を俺らに渡してアンデッド爺ぃとここに残るか、俺らと一緒に来るか、子供に決めといてもらおうよ。
【メイユール】 そっか。ここでゆっくりしてる時間はないんや。
【シルヴィア】 出発するにしても、ハーフエルフと爺さんが、村人から迫害を受けんような手立てを施してからにしとこうよ。
【メイユール】 どんなふうに?
【シルヴィア】 んー、村人に中途半端な恐れを抱かしてるのが、誤解や迫害を招く原因になってると思う。
【ティガー】 じゃあ、本気でびびらせれば! 村長の家に乗り込んで、ツヴァイハンダーでテーブルをザクっと切って、「今度あいつらを迫害したら、おまえの鼻がなくなるぜ」って言うねん。
【シルヴィア】 それもひとつの手かも知れんけど(笑)。
【ティガー】 じゃあ、俺が魔界の住人のふりをして、「あいつらをいじめたら、俺が召喚されるんじゃ」って、村長たちをびびらせる。
【メイユール】 どうしても、恐怖の対象にしたいんや(笑)。
【シルヴィア】 まあ、ハーフエルフや不気味な老人と、友好的になれというのはムリやと、僕も思う。
【ティガー】 わかった。村長にこう言うねん。
「あのおんぼろ小屋は、この世の秩序を保つための何かのシステムで、爺ぃはその守護者やねん。で、爺ぃをやっつけたりすると、世の中がカオスになるねん」――
【GM】 ほうほう。
【ティガー】 ――「で、俺が召喚されてきたんだよぉ〜!」
【GM】 けっきょくそこへ持っていくんかぃ!(笑)
【ティガー】 ちょっとメイクで黒っぽくしてみたり、黒いマントを着て行くから。
【GM】 背中にコウモリみたいな羽をつけたり?
【ティガー】 そうそう。剣もそのときだけ、何か黒いの塗っとくから。黒い液体が、ポタポタしたたってるねん。
「カラー・コンタクト、赤いのがいいかな」とか、妄想中。牙も付けよう。
【メイユール】 それがやりたいだけとちがうん?(笑)
【ティガー】 村長の前だけじゃなくて、村人全員が揃ってるところに出て行きたいな。教会とかに集まったりしてるとき。
 ……っていうか、いいの? 誰も止めへんのやったら、このまま行っちゃうよ?
【シルヴィア】 とりあえず、僕とメイユールとサテラは、普通に村長さんのところに行くよ。
【メイユール】 ティガーは、コスプレして、ここでスタンバっといて。
【ティガー】 OK〜。ファンリーに手伝ってもらって、メイクしとこうっと。いちおう、シーフ技能の[変装]ということで。
「ファンリーも魔界の女帝になる?」って聞いてみる。
【GM】 ファンリーは、右手でティガーをどつく。
【ティガー】 どつかれた?? 「怒られたぁ」って思っとく。
【メイユール】 ムシの居所が悪かったんや。
【GM】 では、変装中のティガーを除く3人は、集落の中にある村長の家にやって来ました。
「何ですかな、旅の方」と、村長。
【シルヴィア】 単刀直入に言うよ。「あのふたりを迫害するのを、やめて欲しい」と。
【GM】 「はあ??」と、村長。
「よそ者のあんたらには、関係ねーじゃん。怪物をどうしようと、ワシらの勝手。今朝も、村の子供が石を投げつけられたそうで、危険極まりない害虫なんですぞ」
【サテラ】 『害虫』って……。
【GM】 「あんたらは、見たところ冒険者ですな。あの害虫を、駆除してくれませんかな? 報酬は払いますとも。600フィスを用意しましょう」と、村長は言ってきた。
【シルヴィア】 そんなはした金で雇われません。
【GM】 「やはり、冒険者というのはがめついですな。では、800フィス払いますよ。800フィスももらって、おまけに人助けできるのですから、文句はありますまい」
【ティガー】 すごい村やな。これは壊滅させねばならぬ。〈フォース・エクスプロージョン〉とか、誰か使い?

カオス・ティガー大暴れの事

【GM】 〈ファイア・ボール〉を撃てるのが、ふたりいてるけど(笑)。
【シルヴィア】 それはひとまず置いといて、「害虫、害虫って、彼らがあんたらに何かしたの?」と、村長に聞く。
【GM】 「だから、今朝、子供たちが石をぶつけられたんですよ」
【メイユール】 それをやったのは、ティガーやし。
【シルヴィア】 「そもそも、子供たちが彼らの家に石を投げつけてたから、そういうふうになったんですよ」
【GM】 「害虫を凝らしめる、善い行いじゃんか。なぜ、正直者がバカを見なければならんのです?」
【メイユール】 ダメだ、これは。どうする、魔界作戦発動ですか?
【ティガー】 ティガーは、爺ぃの小屋で爪を赤く塗って、「すげー」とか言うて喜んでるよ。
【メイユール】 だいぶ仕上がってるみたいやし(笑)。
【GM】 ティガーのメークアップがひと段落ついたところで、ファンリーは、「散歩に行ってきます」と言って、小屋から出ていった。
【ティガー】 じゃあ、ヒデヨシを黒く塗っとくわ。闇のニワトリ。
【GM】 何されてるねん、ヒデヨシ(笑)。
【メイユール】 もう、村長を説得しても、しかたがないような気がするねんけど。
【GM】 村長は、「害虫退治をしてくれないなら、帰ってくれませんかね? あんたら、よそ者なんだし」と、言ってるよ。
【シルヴィア】 埒が開かへんね。
【メイユール】 もう、引き下がろう。
【シルヴィア】 「そういう性根でいたら、いつか神罰が下るでしょう」と、捨てゼリフを吐いて帰ってあげるよ。
【GM】 そうしてキミたちは、村長の家を出た。
 するとキミたちは、村の大の男たちが5〜6人、手にクワや棒きれを持って、あのハーフエルフの少年を追い回している光景を目にするよ。男だけでなく、女や子供も、少年の行く手を遮ったりしている。
 少年は、必死で逃げ回ってるね。
【サテラ】 なんか、ヤバそう。
【GM】 とりあえず、尋常な様子じゃない。少年を追いかけてる男たちは、「今日という今日は、絶対、許さねえ!」と、目を血走らせながら怒鳴ってるし。
【メイユール】 今朝の一件が、火に油を注いでしまったかな。
【シルヴィア】 とりあえず、追いかけてる男たちの前に立ちはだかる。
「おやめなさい!」
【GM】 男たちは、「うっさい、ハゲ!」って怒鳴る。
「邪魔すんじゃねえよ、よそ者!」
【サテラ】 ハーフエルフの少年はいずこへ?
【GM】 向こうで、そばの家から出てきたおばちゃんに捕まった。そこに大勢の村人たちが殺到して、棒きれや何やで少年を叩いてる。今朝のクソガキどもも、大喜びで蹴ってるよ。
【サテラ】 とりあえず、捕まえてる奴ごと〈スリープ・クラウド〉をかけて、眠らせてしまう。(ころっ)6ゾロ。
【GM】 それはもう、誰も抵抗できないわ。ハーフエルフの少年も、村人たちも、みんな眠ってしまった。
 シルヴィアとメイユールに止められてる男たちは、バタバタと倒れる愛する者たちの姿を目にして、色めき立つ。
「ああ、メアリー! なんてことをするんだ、人殺し〜!」
【サテラ】 ハーフエルフの子供を抱えて、爺さんの小屋に戻ります。
【GM】 そこには、魔人のコスプレの準備を終えたティガーが待ち構えていた。
【ティガー】 子供、ケガしてる? 死にそう?
【GM】 殴られた跡はある。幸い、サテラがすぐに助け出したから、大きなケガではないよ。
【ティガー】 じゃあ、血糊とかで大ケガしてる感じに子供をメイクして、一緒に村人の前に行こう。子供は起こして、「ちょっとの間、弱ってるふりをしといてな」って言う。
 子供を持って村人のとこに行ったら、「こいつが弱ったせいで、俺の封印が解けたぜ!」って言うねん。
 そんとき、サテラの〈ファイア・ボール〉が欲しいんですけど。
【サテラ】 〈ファイア・ボール〉っすか!?
【ティガー】 誰にも当たらんところで爆発させてな。俺、そこに出て行くから。
【メイユール】 細かい演出やな(笑)。

 ティガーとサテラは、ハーフエルフの少年を伴って集落に戻った。
 そこでは、シルヴィアとメイユールが、村人たちや、騒ぎを聞きつけやって来た村長と、押し問答していた。
 ティガーたちは、物陰に隠れて、登場するタイミングを計る――。

【サテラ】 じゃあ、誰にも当たらないように、〈ファイア・ボール〉。(ころっ)
【GM】 シルヴィアたちの近くで、突然、「ドーン!!」と大爆発が起きたよ。
【シルヴィア】 「なんや!?」って、振り向く。
【GM】 もちろん村人たちや村長も驚いて、爆発が起こったほうを見る。
【ティガー】 爆発の炎が消えかけたところから、ハーフエルフの子供を抱えて、ぬ〜っと出ていく。
【GM】 爆炎の中から現れたティガーと、黒いニワトリの姿を見て、村人たちは「あ、悪魔だーッ!!」と、騒いでるよ。
【ティガー】 「こいつを傷つけてくれて、ありがとうよ。おかげで俺様が復活できたよ」と、ニヤ〜って笑う。
 で、村人の足下に、ズバーっとプラス1の槍を投げつけてやろ。ヒデヨシも暴れる。
【GM】 「わーッ!」
「おい。冒険者、何やってんだ! あいつらをやっつけろよ!」と、村人は叫ぶ。
【メイユール】 いやー、あれはムリや(笑)。
【ティガー】 今度はグレート・アックスをその辺に投げようっと。ドカっ!
【GM】 村人たちは大パニックやね。
【ティガー】 もうちょっとパニックに陥れたい(笑)。GM、教会とかありますか?
【GM】 まあ、小さなそれっぽい建物があるけど。
【ティガー】 じゃあ、俺が村人たちを追い回すから、メイユールたちが逃げる奴らをそこに誘導して集めて。
 んで、教会にみんな集まったら、俺を追い返して、「あの小屋は魔人の封印で、爺ぃとハーフエルフはその番人」とか、適当なことを言うて脅しといて。
 それまでティガーとヒデヨシは、破壊行為に尽力するのでヨロシク。
【シルヴィア】 ほんじゃあ、3人で手分けして、村人たちを教会に誘導しようか。「みんな、あそこへ逃げ込め!」と、言いながら。
【ティガー】 俺は、ハーフエルフの子供を地面に置いて、剣を抜いて村人を追いかける。鼻先をギリギリかすめる感じて、剣を振り回してみたり。
【GM】 今朝、ハーフエルフに石を投げてたクソガキが、泣きながら逃げてるよ。
【ティガー】 じゃあ、そいつをひょいっと捕まえて、その辺を悪そうに歩く。
【GM】 「子供に乱暴するんじゃねえよ! 最低だぞ」と、大人たちが抗議してるよ。
【ティガー】 「子供の魂はうまいんだよ」
【メイユール】 めちゃ、なりきってるで(笑)。
【ティガー】 捕まえたクソガキを、その大人に放り投げたろ。
【GM】 そのクソガキ、トラウマになるんとちゃうか(笑)。
【メイユール】 わたしは、ハーフエルフの子供を助けるような感じで、教会に連れて行く。
【ティガー】 燃え移るものが少なそうな地面に、油をまいて火をつけとくから、後で消しといてね。

 逃げ惑う村人たちは、シルヴィアたち3人の誘導によって、礼拝堂に集められた。
 魔人に扮したティガーは、3人に追い払われたふりをして、おんぼろ小屋に帰って行った。
 そしてシルヴィアが、打合わせどおりの作り話を聞かせて、懇々と村人たちに説教した。
 村人たちは、しぶしぶながら「もう、あのふたりにはかまわない」と、神の前で約束した。

【シルヴィア】 ま、友好的になるのはムリとしても、迫害を受けずにすむのなら良し、というところかな。
【メイユール】 そんじゃあ、おんぼろ小屋に戻ろう。
【ティガー】 あ、もう、メイクを落として、ノーマル・ティガーに戻ってるから。「もっとやりてぇ〜」って言いながら。
【メイユール】 じゅうぶん、暴れたやんか(笑)。
【シルヴィア】 ハーフエルフ少年の傷を治してあげたら? いちおう、殴られてケガしてるんでしょ。
【ティガー】 ファンリー、治したって。
【GM】 「わたしがですか?」
【ティガー】 じゃあ、俺が治すわ。でも、俺、〈キュアー・ウーンズ〉あんま使ったことないからな〜。うまくいくかな……(ころっ)いちおう治ったよ。
【GM】 軽い負傷だったんで、それで全治したよ。「ありがとう」と、少年はお礼を言う。
 封印の爺さんも、「本当にお世話になりましたのう」と、深々と頭を下げた。
【シルヴィア】 いえいえ。
【ティガー】 ところでさー、青い玉のことなんやけど。俺らの旅の目的を子供に話して、「その玉がいるねん」って言う。
 で、アンデッド爺ぃのことも話してもらって、青い玉を俺らに渡して爺ぃとここに残るか、俺らと一緒に旅するか、決めて欲しいねんけど。
【GM】 じゃあ、少年は全ての事情を知った。知ったけど、どうしていいのか、決めかねてるみたい。
【ティガー】 別に、今すぐ返事せんでもいいよ。俺ら、またここに来るから、そのときに決めてくれたらいい。
【GM】 「うん、わかった」
【シルヴィア】 じゃあ、出発しますか。
【GM】 キミたち5人は、封印の主のおんぼろ小屋で1日休み、翌朝、旅路についた。
 そして5月22日の昼過ぎ、予定よりじゃっかん遅れて、オレンブルク西端の都市バウツェンに到着しました。
 ――ってところで、続きはまた後ほど。

÷÷ つづく ÷÷
©2006 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2006 Jun Hayashida
Map ©2006 Moyo
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お名前
ひと言ありましたら
 
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