≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第18話§

メルフェー村の傷

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 館の捜索の事 ▽ 闇司祭との対決の事 ▽ 父のもとに帰る事

館の捜索の事

【GM】 ティガーにリンのペンダントを見せられたイアンは、「あっ、これは女房のペンダント!」と、驚いている。
「これをどこで?」
【シルヴィア】 じゃあ、森の中であったことを説明する。
【ティガー】 「その嫁さんって、誰かに誘拐されたっぽいよ。いつ、いなくなったん?」
【GM】 えーっと、2ヶ月前の夕方、ひとりで井戸に水を汲みに行って、そのまま帰ってこなかったらしい。2番目に失踪した女性です。
【ティガー】 いなくなったのは、全部で4人やったっけ
【シルヴィア】 ちなみに、他に失踪した3人は、どういう感じのひとたちなん?
【GM】 3人とも、メルフェー村に住む若い女性。16歳の娘、17歳の娘、22歳の人妻。
【ティガー】 失踪した時期とかは?
【GM】 最初に行方知れずになったのは、村はずれに薪を拾いに行ってた16歳の娘で、それが1月の末頃。最後にいなくなったのは、22歳の人妻で、10日ほど前。
 この間、定期的に失踪事件が起きてたわけではない。
【ティガー】 それって、みんなひとりでいるとき?
【GM】 たぶんね。目撃者がいないから。
【シルヴィア】 「これから、もういちど森の館に戻るつもりなんやけど、リンさんに何か言づけはある?」って、イアンさんに聞くよ。
【GM】 「というか、生きてるのなら、連れて帰ってきて欲しいです」
【ティガー】 じゃあ、今から森に行ってみよう。
【GM】 今は夕方だから、じきに暗くなるよ?
【メイユール】 行こうよ。あの館、不夜城かも知れんで(笑)。
【ティガー】 今から出かければ、暗くなる前に行けるかな?
【GM】 途中で真っ暗になるやろね。
【ティガー】 途中まで行けるんなら、いいよ。行く。
【GM】 では、キミたちは薄暗い森の中に入った。
【シルヴィア】 ランタンに灯をつけるよ。
【GM】 ところで、館へ通じる道に、何か目印などは残してるかな?
【ティガー】 そんなこと、してない。
【GM】 なら、もう辺りは暗くなりかけてるし、難易度を高めにして、レンジャー技能で迷わなかったかどうかの判定をしてもらおうか。
【メイユール】 レンジャーで振るのイヤ〜。(ころっ)あっ、出た。よかった。夜の蝶や。
【シルヴィア】 夜行性か。暗くなったら、元気になるんや。
【GM】 んじゃ、やがて、あの館が見えてきた。辺りはすでに闇の底。月の冷めた光の下に、あの不気味な洋館はたたずんでいる。
【シルヴィア】 ランタンのシャッターを閉めて、向こうから見えないようにする。
【GM】 月光だけが、唯一の頼りになったね。
【ティガー】 館に明かりはついてる?
【GM】 1階の一室の窓から、明かりが漏れてる。門のところにいるキミたちから見ると、玄関の左側の部屋(B)の窓やね。
 玄関を挟んで反対側にある部屋(D)には、明かりはついてないみたい。
【シルヴィア】 明かりのある部屋(B)に、動いてる影は見えたりせえへんの?
【GM】 見えない。
【ティガー】 鎧を脱いで、部屋(B)の窓の下に行く。で、[聞き耳]、(ころっ)。
【GM】 何も聞こえない。気配はないね。
【ティガー】 あの女に会いたいな。じゃあ、明かりのついてない、玄関の向こう部屋(D)の窓の下に行く。窓に鍵はかかってる?
【GM】 かかってるよ。
【ティガー】 じゃあ、[鍵開け]。(ころっ)成功。
【メイユール】 他人の家の鍵を開ける王子様や。
【ティガー】 中、誰かいる? [聞き耳]、(ころっ)。
【GM】 中に気配は感じない。ティガーが鍵をいじってても、誰も出てこなかったし。でも、そういうのって、普通[鍵開け]する前にせえへん?(笑)
【ティガー】 じゃあ、窓をそおっと開けて、こっそりおじゃましてみる。
【GM】 ティガーは部屋(D)に進入した。中は真っ暗です。
【ティガー】 見えない(笑)。この部屋、どこかからか、明かりが漏れてるとかはない?
【GM】 ドアがひとつあるみたいで、その隙間から明かりが漏れてる。外から見た感じでは、そこは玄関ホールのはず。
【ティガー】 ドアのそばまで行ってみて、ちょっと開けてみる。
【GM】 予想どおり、玄関ホールやね。昼間、リンと会った場所です。

 リプレイでは、すでに完成した館の見取り図が載せられていますが、セッションのときは、ティガーが調べたところを、その都度、GMがメモ用紙に描き足して説明していました。
 つまりティガーは、未探索の場所がどのような造りになっているか、知っていません。

【ティガー】 こそ〜っと見てみるけど、誰かいる?
【GM】 人影はない。ホールには、上に行く階段と、今、キミがいるところも含めて5つの扉がある。
【ティガー】 ホールから明かりが入ってきたから、部屋(D)の様子が見れたりしいへん?
【GM】 ああ、見えるよな。そこは書斎っぽい。机があるし、窓と反対側の壁際には、からっぽの本棚が並んでる。
【ティガー】 からっぽか。館の主が何者か、わかりそうな本はないのか。
【GM】 残念ながら。ちなみに、本棚には埃が溜まってる様子もないよ。
【ティガー】 じゃあ、玄関ホールに出てみる。リンが出てきた扉はどれ?
【GM】 部屋(D)の扉の斜交いにある扉。
【ティガー】 そこに行って、[聞き耳]する。(ころっ)──気配はない、と。ドアを開けてみよう。
【GM】 そこは部屋(A)。真っ暗だけど、ホールの明かりが差し込むので、多少は中の様子が見える。どうやら、厨房のようやね。無人です。
【ティガー】 誰もおれへんの? 怖いな〜。帰ろうっと。入ってきた部屋(D)の窓から出る。鍵は開けたままで。
【メイユール】 窓からティガーがカサカサと出てきたで。玄関を開けて出ようよ〜。
【ティガー】 「とりあえず、部屋をふたつ見たけど、誰もおらんかった。女の人も、昼いたとこにはおらんかったよ」って言うとく。
【シルヴィア】 明かりがついてる部屋(B)は、何やったん?
【ティガー】 さあ? 誰かいそうやったから、中を見るのやめてん。
【シルヴィア】 誰かいそうなとこを調べてよ(笑)。
【ティガー】 え〜!? いそうなとこ見るのん? じゃあ、見てくる。
 もう1回、部屋(D)から中に入って、明かりがついてた部屋(B)の扉の前で[聞き耳]。(ころっ)
【GM】 気配は感じない。
【ティガー】 そぉ〜っと開けて、中を覗く。誰かいる?
【GM】 誰もいないよ。部屋(B)は食堂っぽいね。もちろん、テーブルの上にごちそうが並んでたりはしない。
【ティガー】 じゃあ、部屋(D)の隣の扉のとこに行って、[聞き耳]。(ころっ)──気配はないのか。どうしよう、中を見てみようかな〜……開けていい?
【GM】 いや、俺に聞かれても(笑)。
【ティガー】 そ〜っと開ける。
【GM】 倉庫のようで、誰もいない。奥の一角に、毛布がきちんとたたまれて置かれてある以外は、ガラクタばっかり。変なお面とか。
【メイユール】 王子様、もらっとき(笑)。

 これで完成した館の見取り図を見ていたティガーは、何かに気づいた。

【ティガー】 ん?? 部屋(C)と部屋(D)の間に、不自然な隙間が。なに、これ?
 ……部屋(D)の本棚を動かしてみたい。
【GM】 ティガーが本棚のひとつに手をかけると、本棚がガコンと奥に引っ込み、隠し通路が口を開けたよ。
【ティガー】 あはははは(笑)。中はどんな感じ?
【GM】 地下へおりる階段があるけど、その先は真っ暗で何も見えない。
【メイユール】 さっき戻って来たとき、照明を持って行けばよかったのに。
【ティガー】 2階には何もなさそうやから、調べなくてもよさそう。どうせ、照明がないし。怪しいのは地下と見た。
【メイユール】 今ので、「行ける」と思い込んでしまったんやな(笑)。
【ティガー】 とりあえず、みんなのところに戻って、「地下へ行く階段を見つけた」って言う。あ、今度は玄関の扉を開けて出るから。

 4人は、その隠し階段から、地下へ行ってみることにした。ティガーは戦闘に備えて、鎧を着なおした。
 隠し階段は幅が狭く、螺旋状になっていた。ティガー、メイユール、サテラ、シルヴィアのの隊列で進む。
 長い長い螺旋階段を下ってゆくと、やがて、鉄製の扉の前にたどり着いた。
 冒険者たちは、扉を開けた。

【GM】 中は照明が灯っていて明るい。部屋の奥の壁には、こちらと同じ鉄製の扉があり、その前に、寝台がある。
 寝台の上には、薄絹の衣を着せられたリンが、横たえられている。意識はないみたい。
 その向こうに、黒いローブを纏ってダガーを手に持した、40代ぐらいの男がいる。
【ティガー】 そいつは、領主じゃないねんな? ノプスの神父でもない?
【GM】 そのどちらでもないよ。
 黒いローブの男は、「我が主、全き自由の神クートラよ……」とか何とか、ごにょごにょと祈りを捧げてる。
【ティガー】 「ちょっと待てーッ!」って言う。
【シルヴィア】 クートラとか言うてる時点で、悪者確定やね。
【GM】 「あ、クートラじゃなくて、シルファスかも」

闇司祭との対決の事

【ティガー】 間違えるな!(笑)
【シルヴィア】 とりあえず、いきなり〈エネルギー・ボルト〉をかけるよ。
【メイユール】 荒っぽいな。
【シルヴィア】 まずは、あのヤバそうな儀式を中断させんと。はったりかます。
【メイユール】 『はったり』って、マジ撃ちやんか(笑)。
【GM】 じゃあ、戦闘ラウンドになるね。ティガーからどうぞ。
【ティガー】 祭壇に行って、お姉さんを降ろす。
【サテラ】 男に〈エネルギー・ボルト〉をかける。(ころっ)抵抗されてしまった……8点のダメージ。
【GM】 メイユールと男は同時行動。
【メイユール】 男に〈シェイド〉。(ころっ)あッ、1ゾロ! もう、イヤや〜。
【GM】 シェイドは、メイユールの呼びかけに耳を貸してくれなかった。
 黒ローブの男は、背後の扉から逃げだしたよ。
【シルヴィア】 〈エネルギー・ボルト〉の目標がなくなったので、キャンセルする。
【GM】 では、第2ラウンド。

 冒険者たちは、男を追って寝台の奥の扉を飛び出した。その先も細い螺旋階段で、地上に向かっていた。
 4人は、敏捷度順にティガー、サテラ、メイユール、シルヴィアの隊列となり、男を追って螺旋階段を駆け登る。

【ティガー】 お姉ちゃんを担いでるからね。

 ティガーに追いつかれそうになった男は、魔法を唱えた。

【GM】 戦闘を走るティガーの目の前に、行く手を塞ぐような感じで、モコモコモコと石の壁ができあがった。
【ティガー】 シャーマンか?
【メイユール】 幻覚かもよ。
【ティガー】 ちょっと触ってみる。
【GM】 ティガーの腕はすり抜けた。
【ティガー】 幻覚か(笑)。じゃあ、先へ行く。レベル6シャーマンかと思ってびっくりしたけど、ソーサラーやった。
【シルヴィア】 これが〈イリュージョン〉やとしたら、相手はレベル5ソーサラーってことになるけど。もしそうなら、どっちにしろかなり凶悪やで。

 やがて、螺旋階段を登りきると、そこは粗末な小屋の中だった。男は外に出たようだ。
 冒険者たちも外に出てみると、どうやら、館の裏庭らしい。隠し階段の出口になっていたのは、納屋だった。向こうには、厩も見える。
 男はそこにいた。

【GM】 ついに追いつかれたか。では、改めて戦闘ラウンド。
【ティガー】 お姉ちゃんを、納屋のとこに置いとく。
【GM】 置くという行為で1ラウンド使うよ。投げ捨てるなら、即座に武器を手にして攻撃できるけど。
【ティガー】 そんなん、しない。
【GM】 ティガーがお姉ちゃんを投げ捨てて、サテラとシルヴィアが、ふたりで〈フォーリング・コントロール〉したらええがな。
【ティガー】 するかーッ!
【シルヴィア】 「生贄に何すんねん」って、敵も一緒にかけたりして。
【ティガー】 ちやほやや(笑)。
【サテラ】 男に〈エネルギー・ボルト〉。(ころっ)ああ、ダメ……6点。
【GM】 男に当たったエネルギー弾は、バシュっと消えた。
【ティガー】 うわっ。そいつ、レベル6?
【メイユール】 男に〈ホールド〉。(ころっ)抵抗された。
【GM】 それと同時に、黒ローブの男は厩のかんぬきをはずし、「出でよ!」と、中のものに叫んだ。
【メイユール】 ロバが出てくる。
【シルヴィア】 フォレスト・ジャイアントやな。
【GM】 シルヴィア、正解。ただし、そのフォレスト・ジャイアントの胸には、ぽっかり穴が開いてるけどね。傷口が焦げてるところを見ると、魔法でやられたみたい。
【メイユール】 風通しよさそう。
【GM】 これで空力性能が30%向上してるからね。軽量化も図れて動きも俊敏に──というわけではない。動きはひどく緩慢です。
【ティガー】 「なんだ、ありゃー!?」って言う。
【GM】 メイユールは、そいつから黄色いオーラを感じる。「カレー味!」とか言ってる。
【メイユール】 オムレツかも。ティガー、食べ。
【ティガー】 イヤや〜。まずそう。
【GM】 男が、ジャイアントに「あの者たちを殺せ!」と命じたところで、敵方の行動は終わり。シルヴィア、どうぞ。
【シルヴィア】 男に〈エネルギー・ボルト〉。(ころっ)抵抗された。ダメージ8点。
【GM】 次のラウンド。
【ティガー】 どっちを殴ろうかな。黒ローブの男に攻撃。
【シルヴィア】 情報を聞きたいから、とどめを刺したらアカンで。
【ティガー】 OK〜。(ころっ)あっ、2回まわっちゃった! ダメージ30点。手加減、手加減!
【GM】 刃物で手加減はできんよ。おまけに後付けで宣言してるし(笑)。男は倒された。(ころっ)いちおう、死んではないけど。
【メイユール】 あーあ、一撃や。
【ティガー】 あははは(笑)。

 その後、胸に穴の開いた黄色いオーラのフォレスト・ジャイアントを倒した。

【シルヴィア】 男を縛りあげて、[応急手当]しよう。
【GM】 では、男はメイユールに[応急手当]されて、意識を取り戻した。あ、寝たふりしとこう。
【ティガー】 ぺちっ。
【GM】 「痛え。……なぜ、殺さない?」
【シルヴィア】 まだ、聞くこと聞いてないから。とりあえず、質問。「キミは、あそこで何をしてたん?」
【GM】 「暗黒神に生贄を捧げ、我が望みを叶えてもらうための儀式だ」
【シルヴィア】 「どんな望み?」
【GM】 「ちょっとバンパイアにしてもらおっかな〜、とか」と、闇司祭の男は答えた。
「最初のひとりを捧げたとき、暗黒神から『さらに3人の魂を捧げよ』と言われたから、協力してもらって、生贄を捧げ続けてたのだ」
【ティガー】 なんで、リンをさらって、すぐに儀式せんかったん?
【GM】 儀式には準備がいるし、縁起のいい日じゃないとアカンし。それまでの間、身の回りの世話とかさせてたんやね。ゾンビとかサーバントよりか、使い勝手がいいし。
【メイユール】 リサイクルや。
【GM】 そう、リサイクル、リサイクル。環境にやさしいね。
【シルヴィア】 他の3人はすでに生贄にされたん?
【GM】 「したよ。リンでちょうど4人目やったんやけど」
【メイユール】 残念やったね〜。
【GM】 「まあ、いいや。また、別のところでやろうっと」
【ティガー】 いや、『次』なんてないから。
【GM】 「なんで?」って、イヤな予感がよぎってる。
【メイユール】 ここで、あんたの人生が終わるからかも。
【GM】 「そんな、ひとの生命を軽々しく扱うべきではない」と、闇司祭は説教する。
【ティガー】 おまえがな、そんなこと言われへんな?(笑)
【シルヴィア】 「何で死にたい?」って聞いてあげよう。
【ティガー】 選ばしてあげるわ。剣か、魔法か。魔法の種類もいっぱいあるよ。
【GM】 「法に則ってさ、官憲に突き出すとかして欲しい」
【ティガー】 それでも死刑やで、きっと。絶対。うん。
【GM】 「たとえそうでも、裁判を受けた結果なら納得できる。だから、メルフェー村の領主に突き出してくれたら、ええがな」と、闇司祭は言う。
【ティガー】 グルっぽいから、ダメ。あいつは怪しいねん。
【GM】 「怪しくないって〜!」
【シルヴィア】 あの領主とは、どういう関係なん? ちなみに〈センス・ライ〉を使うのは、めんどくさいねんけど。
【GM】 「じゃあ、使わなきゃいいじゃん。精神力をムダ使いするのは、よくないなぁ」
【ティガー】 「精神力をムダ使いしないために、今、殺す!」ちゃき!
【GM】 「わーッ、待ってくれぇ!」
【シルヴィア】 「もう、全部言いなさいよ。白状したら、共犯者と一緒に官憲に突き出してあげるから。キミだけここで死ぬのはイヤやろ?」
【ティガー】 「巻き添えにしたいやろ? もしあれなら、ノプスの神官もつけてあげるよ」
【GM】 「……領主には、ちょっと手伝いしてもらったかも」と、闇司祭は答える。
【ティガー】 何をしてもらったのかな?
【GM】 生贄の提供。「この儀式は、領主の提供でお送りしました」
【シルヴィア】 じゃあ、村に戻ろうか。こいつは、縛ったまま連れて帰ろう。証人や。
【ティガー】 お姉ちゃんも連れて帰ろう。

 冒険者たちは、メルフェー村に戻った。
 夜明け近いが、まだ陽が昇る気配はなく、深闇の底に村は眠っている。
 4人は、イアンの家にリンを送り届けた。イアンにすべての事情を話し、村人リーダーのマッカイに伝えてもらうように頼んだ。
 そして、闇司祭を連れたまま、まず、ノプス神父がいる教会に踏み込んだ。

父のもとに帰る事

【GM】 2階が神父の寝室。キミたちが踏み込むと、神父はベッドでぬいぐるみを抱いて寝ていた。
【ティガー】 そのぬいぐるみを取る。
【GM】 取られたので、目を覚ました。「な、なんですか、あなたたちは?!」
【ティガー】 さっき捕まえた闇司祭を見せる。
【メイユール】 闇司祭の顔を、ランタンでガーっと照らして。
【ティガー】 「見覚えあるやろ」
【GM】 「あーッ、お師匠〜!」と、神父は驚く。
【サテラ】 えー?!
【ティガー】 師匠!?
【メイユール】 めちゃめちゃ親しいやんか〜(笑)。
【GM】 神父は「誰ですか、それは」と、言い直してるで。
【ティガー】 ふざけんなっての(笑)。

 冒険者たちはノプス神父(に、なりすましていた男)を捕らえ、闇司祭とともに領主の館へ連行した。

【GM】 館に近づくと、見張りの兵士に「何をしてる」と、咎められるよ。
【ティガー】 兵士は関係ないんやんな、きっと。
【GM】 「いや、あいつもグルだ」と、闇司祭が言う。
【メイユール】 じゃあ、違うわ(笑)。

 4人は、見張りの兵士とひと悶着起こしつつも、強引に領主ベッカー卿の寝室まで案内させてしまった。

【GM】 寝巻の上に質素なガウンを羽織ったベッカー卿が出てきた。
「なんだ、おまえら。立ち去ったのではないのか」と、キミたちに言う。
【シルヴィア】 じゃあ、連れて来た闇司祭と、ノプス神父の実体を話す。「で、あなたも闇司祭のグルだと聞いたのですが」
【GM】 「何かの間違いだろう」と、ベッカー卿はそっけなく答える。

 しかし、シルヴィアには〈センス・ライ〉がある。卿の言葉の真偽など、簡単に看破できるのだ。
 かくして冒険者たちは卿の嘘を見破り、一連の失踪騒ぎはベッカー卿、ノプス神父によって行わたものと判明した。
 ベッカー卿はこの小さな村の領主という立場に不満を持っていた。しかし、直接的な戦争をしてないオレンブルク王国では、武勲で成り上がることができない。
 コネを作り、政敵を滅ぼして上に昇るしかないが、そのためには資金がいる。
 卿は、暗黒神に生贄を捧げる儀式〈イモレイト〉を行えば何でも望みが叶う、という闇司祭の誘いに乗って、村の女性をさらう手助けをした。
 誘拐を実行したのは、闇司祭の助手のノプス神父もどき。
 冒険者を森に近づけさせようとしなかったのは、万が一、森の中の闇司祭の住処を見つけられては、困るからだった。

【GM】 ベッカー卿は、「自ら官憲に出頭しよう」と言う。嘘ではなさそう。
【メイユール】 20年後かも知れん(笑)。
【シルヴィア】 ベッカー卿がそういうことしてたの、奥さんや息子さんは知ってるの?
【GM】 知らないよ。
【シルヴィア】 じゃあ、奥さんにはいちおう説明しとくけど、息子には黙っとこう。
【ティガー】 村人にも、息子には言わんように言うとく。
【GM】 でも、村人はおさまりがつかんでしょう。娘や嫁さんを殺されてるからね。ブーイングしてる。
【シルヴィア】 たしかに、領主と闇司祭とノプス神父の3人は悪い奴やけど、領主の奥さんや息子さんには罪がないねんで。
【メイユール】 いたぶるなら、領主をいたぶれと。
【シルヴィア】 そこまで言わんけど。「ちょうど犠牲者3人分やし」とは言わへん(笑)。
「人の道に背くようなことはしたらアカンで」と、言うとく。
【GM】 魔術師がそう言うので、村人たちはしぶしぶ了解した。
 では、長い長い夜が明け、朝になった。マッカイさんが、巨人の退治と事件解決のお礼として、キミたちに2820フィスを渡す。
【サテラ】 ひとり、705フィス。
【シルヴィア】 僕の分は返すよ。これから、何かと入り用やろしね。
【GM】 じゃあ、シルヴィアにはリンからお礼がある。イアンに届けるように頼んだ、彼女の首飾り。オレンジ色のビー玉みたいな石がついてるペンダントやね。
【シルヴィア】 それはもらっとこう。

 4人は馬に跨がり、リバル村をめざしてさらに東へ旅立った。
 そして2日後、ついにリバル村に到着した。カルファン王国を脱したレギト王子が、リザロークやアイザックによって匿われ、育てられた村である。

【GM】 何ら変わったところのない、ごく普通の農村です。
【シルヴィア】 ここに、ティガーの育ての親がおるねんな。
【GM】 まあ、アイザックはこの村に来てしばらくして結婚したんで、リザロークが男手ひとつでティガーを育ててくれたんやね。何度も挫折しながら。
【メイユール】 そうやろなぁ。
【ティガー】 あははー(笑)。じゃあ、自分の家に行く。
【GM】 やって来た。村はずれのオンボロ小屋が、ティガーが幼少期を過ごしたリザローク・ハウス。
 帰ってきたティガーを見て、昼食中のリザロークは驚いた。驚いたはずみで茶碗を落とし、転がった茶碗が壁に立てかけてあった鍬を倒し、倒れた鍬がザルの端をぶっ叩き、ザルに入れてあった鎌がテコの原理で発射され、ティガーの頬をかすめて入口の柱に突き刺さった。
【ティガー】 なんやねん、これ!(笑)
【GM】 「おお、よう帰ってきたな」と、リザローク。
【ティガー】 よう帰ってきたわ!
【GM】 「どないしたん?」
【ティガー】 「ちょっと聞きたいことがあるねん。何やったっけ? なんちゃらかんちゃの──目ェのぉ──……洞窟ぅ?」
【GM】 「『どおくつぅ?』 ……わからへんわ!」
【ティガー】 俺にもわからへんわ!
【シルヴィア】 「かくかくしかじか」と言えば通じるねん。
【GM】 それなら、事情はわかる。リザロークは、サテラたちに「まあ、お上がりください」と言う。
「オムレツでも食べますか?」
【ティガー】 「食う、食う!」
【メイユール】 お茶じゃないんや。
【GM】 このひと、オムレツしか作られへんから。
【ティガー】 だから俺、オムレツ好きになってん。他に選択肢がなかってん。
【GM】 「で、何が聞きたいの?」
【ティガー】 何が聞きたいんやったっけ??
【サテラ】 古文書の地図の、竜の絵が描かれてあった場所に、何があったか。
【シルヴィア】 古文書の地図を見せて尋ねる。
【メイユール】 「酢くさいけど、ガマンしてね」(笑)
【GM】 「ああ、難しい謎解きをすると、地下への入口が開く館があったな」
【ティガー】 地下には何かあったん?
【GM】 「ミミックだ。ミミックがいてなぁ。オレはケツを噛まれた」
【ティガー】 それだけ!?(笑)
【GM】 「いや、宝箱には水晶でできた、竜の彫像があった。頭と両翼と尻尾で玉を支えた──ちょうど、その地図のイラストと同じような感じのやつだ。リーダーに取られたけど」
【シルヴィア】 『リーダー』って誰?
【GM】 「ラザラス・ミリガンという、レジスタンス組織“ガーヴェン”のリーダーだ。じつは、ロットバイル王国の工作員だったらしい。
 オレたちがティガーを連れて逃げた後、母国に謀叛を起こそうとして、返り討ちにされたと聞いたが」
【ティガー】 じゃあ、竜の玉ってどこに行ったん?
【GM】 「さあな。ガーヴェンの財産は、ロットバイル王国に没収されたと聞いた。使い道があるものは、本国に持ち去ったらしいが、使い方がわからない物や使えない物は、カルファンの城に置いてるらしい」
【メイユール】 竜の玉は、使い道があった?
【GM】 「オレたちには、使い方がわからなかった」
【シルヴィア】 ロットバイルにあるのか、カルファンにあるのか。
【サテラ】 う〜ん……。
【メイユール】 んー……。
【GM】 悩んだままやと、ティガーの友達が来てしまうで。ティガーの頭をぱこんと叩く。
【ティガー】 「何すんねん、久しぶりー」って言うて、どこかに遊びに行った。
【メイユール】 バンジー・ジャンプしに行ったんや。
【GM】 「オレのほうが、10センチ深かったな」
【ティガー】 「いや、俺のほうが2センチ!」
【GM】 ──で、家に残ってる方々は、何かすることはある?
【サテラ】 古文書のバツ印がついてる場所には、何があるか心当たりなし?
【GM】 「うん、そっちは知らないなぁ」
【シルヴィア】 とりあえず、質問はこんなもんかなぁ。
【GM】 それじゃ、今日はここまでということで。

÷÷ つづく ÷÷
©2006 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2006 Jun Hayashida
Map ©2006 Moyo
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