≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第17話§

依頼は真夜中に

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ リバル村に向かう事 ▽ 領主の家に泊まる事 ▽ 呪われた女の事

リバル村に向かう事

【GM】 パチモーンと隊長が残していった、古文書の切れ端。そこに描かれた地図が、どこのものなのかを判定するんやね。
【シルヴィア】 とりあえず、地図をみんなのところに持って行こう。「これを見てみなよ」
【メイユール】 酢臭いやんか〜。なんで、そんなに目がキラキラしてんの?(笑)
【ティガー】 酢の呪い?(笑)
【シルヴィア】 匂いのことは、集中して忘れなさい。
【GM】 シルヴィアが地図をつきつけて、「第三感剥奪!」とか言うてるで。キミらは、嗅覚を失うで。
【メイユール】 遊ぶな〜!(笑) なに、この地図。
【シルヴィア】 この地図に記されたところに、たぶん、天の心があると思うんやけど。
【ティガー】 どこの地図なんやろ、これ?
【シルヴィア】 まずは、それを調べたいんやけど。
【GM】 では、セージ技能で判定してみよう。ティガーには、プラス4のボーナスがある。
【ティガー】 え、ウソ? (ころっ)失敗、ムリ。
【シルヴィア】 (ころっ)ダメや、届かない。
【サテラ】 (ころっ)成功。
【GM】 なら、サテラには見抜けた。そこに描かれた地形は、旧カルファン王国(現ロットバイル王国)の、キャフタ周辺のものに酷似している。
【ティガー】 俺は自分の故郷がわからなかった、と(笑)。
【メイユール】 忘却の彼方やな。
【ティガー】 過去のことは振り返らへん。忘れた。
【GM】 3つ前のことを覚えてられへんもんな。
【ティガー】 3つ後のことは考えてへんし。
【サテラ】 カルファン王国って遠い?
【GM】 遠いよ。徒歩で90日ぐらいかかる距離やからね。
【ティガー】 じゃあ、馬で。
【GM】 馬での旅は2倍のスピード、ということになってるから、45日程度の距離やね。それでも、片道1ヶ月半ぐらいかかる。
 ロバやと、30倍のスピードやけど(嘘)。
【ティガー】 速っ! 「ただし、10メートル進むごとに、2時間世話したってください」とかやろ(笑)。
【メイユール】 燃費悪ぅ(笑)。
【GM】 そうそう、ティガーは2Dを振って、ちょっと思い出し判定してみ。
【ティガー】 ん?? 何か思い出すん? (ころっ)成功。
【GM】 なら、地図に書き添えられてる「禍つ神の像の目を」という一文に、なんか思い出したことがあるよ。
【ティガー】 なに?
【GM】 キミの育ての親のリザロークが、昔、そういう謎解きのある遺跡に行ったことがある、と言うてたような覚えがある。
【ティガー】 じゃあ、みんなに「知ってるかも」って言う。「俺の知り合いが」
【シルヴィア】 その知り合いは、どこにおるん?
【GM】 オレンブルから東に8日ほど行ったところにある、リバルという村です。ティガーはそこで育てられた。
【サテラ】 馬で4日……。
【ティガー】 じゃあ、馬を買って行こか。金、あるし。

 というわけで、冒険者たちは街へ買い出しに行き、旅の準備を整えることにした。
 まずは、メイユール以外の者が馬を購入した。

【ティガー】 白色で、茶色のぶち模様があるやつね。
【GM】 前にレンタルした馬?
【ティガー】 そうそう、それそれ。「それ、売ってくれ」
【GM】 売ってくれって、それはレンタル用やから──。
【ティガー】 中古やから、安くして。
【GM】 ムチャ言うなよ。
【ティガー】 じゃあ、定価で買うから。な? それで新しい馬を購入したらええやん。あ、ついでに、まだ払ってないレンタル料、倍にして払うから。
【GM】 まあ、そこまで言うんなら、売ってあげるけど。牡の7歳。
【ティガー】 やったぁ。名前は『ぼち』ね。いっつも眠そうな目ェしてて、やる気のない馬やねん。
【GM】 ぶち模様は108個あるしな。
【ティガー】 煩悩の塊(笑)。馬の飾りとか、買おっかなぁ。目の前にニンジンをぶら下げる装置とか。
【GM】 そんなもん、あるか!(笑)

 新しく武器を購入する者もいた。

【シルヴィア】 馬上で戦うために、スピアを買ったよ。
【GM】 魔法使いの考え方じゃないな(笑)。
【シルヴィア】 めざすは魔法戦士やから。これから、ファイター技能を伸ばすつもりやし。
【メイユール】 わたしもスピアを買おうかなぁ。
【GM】 じゃあ、レッドゾーンと一緒に買いに行こう。
【メイユール】 「レッドゾーン、あんまり高いのにしないでね」って、言うとかな。技能がないから、武器を使う気はないし。
【シルヴィア】 投擲武器なら、レンジャー技能でいけるでしょ。
【GM】 レッドゾーンが、すでに高品質なランスをカウンターに出してるけどね。
【メイユール】 「あか〜ん! こらーっ」(笑)
【シルヴィア】 レドゾーンは、ランスにこだわってるねんな。
【メイユール】 じゃあ、ランスを買うわ。使われへんのに。
【GM】 キミが支払ってる隙に、レッドゾーンは軍馬用の甲冑を見に行ってる。振り向くと、ちょうど試着室のカーテンを閉めたところ。
【メイユール】 何してんのよー!?
【GM】 試着してんのよ。店員に「お似合いですよ」とか言われて、得意気やし。
【メイユール】 しゃあないから買う。めっちゃ、無駄遣いや。
【ティガー】 金持ちやな〜、俺ら。
【メイユール】 使っても使ってもなくならへんで。
【シルヴィア】 いや、なくなるよ(笑)。

 その他、各自いろいろ買い揃え、旅の準備は整った。

【GM】 で、いつ出発するのかな?
【ティガー】 今の時間は?
【GM】 4月8日の午後3時ぐらい。
【シルヴィア】 中途半端な時間やね。
【ティガー】 じゃあ、明日の朝、出発する。
【GM】 了解。では、4月9日の朝になりました。
【シルヴィア】 買った馬の慣らし運転がわりに、リバル村へ向かおうか。
【メイユール】 ブオンブオン吹かしてるで。甲冑を買ったから、レッドゾーン、めっちゃ機嫌ええねん。わたしは、しぶしぶランスを持ってるけど。
【GM】 では、キミたちはリバル村をめざし、東に向けてオレンブルクを発ちました。
 リバル村への道は、街道からそれた間道という感じなので、きちんと整備されたものではない。草原を通ってるうちに、自然にできた道って感じやね。危険なことはないけど。
【メイユール】 雨が降ったら大変やな。
【GM】 さて、リバル村までの間にも、村はいくつかある。4日の道程すべてが野宿、ということにはならないやろね。昨夜も小さな農村で泊めてもらえたし、2日目の夕方近くになった今も、行く手に村が見えてきたから。
【ティガー】 2日目ってことは、まだリバル村じゃないよね。
【GM】 リバル村までは、ここから、さらに2日かかるからね。見えてるのは、メルフェーという村です。
【メイユール】 大きい村?
【GM】 いや、普通の、どこにでもある小さな村。
【メイユール】 しけてるなぁ。
【GM】 現在、農作業を終えたひとびとが、そろそろ家路につこうかという時間。あちこちの家から、夕げのしたくの細い煙が立ち登ってます。
【ティガー】 いちばんおいしそうな匂いの家を、探してみる。
【GM】 ティガーがそうやって鼻を利かして村をさまよっていると、何人もの男が広場に集まって、何事か相談してるのを目撃する。
【ティガー】 何やろ?
【GM】 すごく深刻そうな感じやね。男たちは、キミたちに気づいた。
 そして、リーダーっぽいひとりの中年男性が、「冒険者の方ですよね?」と、キミたちに尋ねてくる。
【メイユール】 「もちろん」
【GM】 それを聞いた村人たちは、「おおー、助かった〜」と、パチパチ拍手する。
【メイユール】 拍手を浴びた。えへへ。もう、わたしは満足した。
【GM】 声をかけてきた男性の名は、マッカイさん。リーダーっぽいひとだけど、村長ではない。メルフェー村には、ロベルト・ベッカーという領主がいるからね。
【シルヴィア】 マッカイさんに、「いったい、どないしたん」と尋ねてみるよ。
【GM】 3日前のこと、南東の森から現れた1匹の巨人がメルフェー村を襲い、村人2名を食い殺した。
【ティガー】 その森、って村からどのぐらい離れてる?
【GM】 すぐそこ。目と鼻の先。
【サテラ】 それで、その巨人は?
【GM】 巨人は、出てきた南東の森の中へ去って行った。
 だけど、いつまた襲われるかわからない。村人たちは、ベッカー卿に対策を練るよう求めた。メルフェー村には、領主麾下6名の兵士が常駐してるしね。

領主の家に泊まる事

【シルヴィア】 でも、対策をとってくれないと。
【GM】 そう。ノプスの教会の神父が、「これは、神が与えたもうた試練なのです。皆で耐え忍びましょう」とか言うて、領主はその言葉どおりにしてしまってるねん。
【メイユール】 すごい村やな(笑)。
【GM】 しょうがないから、村人たちは「皆で金を出し合って、冒険者を雇おうか」と、相談してたんやね。そこに現れたのが、キミたち。
【シルヴィア】 なるほど。
【メイユール】 それは大変や。
【GM】 「そういうわけで、巨人退治をして欲しいのですが」
【シルヴィア】 まあ、別に急ぎの旅じゃないし。
【ティガー】 巨人1匹ぐらいなら、すぐ片づけられそう。
【GM】 ──と、まあ、そんなふうに話し込んでるところへ、馬に乗った20代後半の男がやって来る。4名の歩兵を引き連れてるよ。
【サテラ】 領主?
【GM】 そう。メルフェー村を治める、ロベルト・ベッカー卿です。傍らには、神父らしき中年の男もいる。
【ティガー】 ノプスの奴やな。
【GM】 ベッカー卿はキミたちを見て、「何者だ、おまえたちは。冒険者か?」と言う。
【ティガー】 「この馬は、煩悩の塊です」って、ぼちを紹介しとく。
【GM】 村人代表のマッカイさんが、キミたちを雇って巨人退治してもらう旨を、ベッカー卿に伝えた。
 するとベッカー卿は、「我が意も得ずに勝手なことをするな」と怒った。
 そしてキミたちに、「ご覧のとおり、我がメルフェー村は辺鄙で貧しい村だ。キミたちを雇うためのじゅうぶんな報酬を、用意することはできない」と、言ってくる。
【メイユール】 ──みたいやね。
【シルヴィア】 「じゅうぶんでないとして、いくらぐらいなら用意できるんです?」
【GM】 「1銭も支払うつもりはない」
【ティガー】 「タダ働きでもいい、って言ったら、退治しに行ってもいいのかな」って、聞いてみる。
【GM】 「我が領内で勝手なことをされては困る。今夜は我が家にて休み、明朝、さっさと立ち去るがよかろう」
【ティガー】 ん〜? なんか悪そう、こいつ。キラーン。
【GM】 領主の兵士たちが、キミたちが乗る馬の手綱を引いて、領主の館へ案内するよ。
【ティガー】 『連行』じゃないのかな(笑)。
【GM】 丁重な『ご案内』やね(笑)。では、ベッカー卿と共に移動〜。
【ティガー】 ぼちはよだれを垂らすから、手綱を引くひと、がんばってね。
【GM】 キミたちと共に去って行く領主の背中に、村人たちの抗議の声が浴びせられる。
「また巨人が現れたら、黙って食われろというのか!」
 すると、広場に残ったノプスの神父が、「今は試練のときです。皆で心をひとつにして祈れば、苦難はいずれ去って行くでしょう」と、なだめる。
【ティガー】 あの神父に、ダーツを投げたい(笑)。
【GM】 村人たちは、「巨人だけじゃねえ。この半年で、失踪した娘が4人もいるんだぞ! ベッカー卿は、村を守る気があるのか!」と、さらに憤ってる。
「それは、あなたのように祈る心を持たないひとが、和を乱すからです」と、神父。
【ティガー】 うさんくさい村に来ちゃったな。
【GM】 さて、小高い丘の上に、領主の家はある。2階建てで、村人の家と比べると大きなものだけど、オレンブルクにある貴族の館なんかには、はるかに及ばない。
 丘の周囲には、兵士が住む家屋があり、畑がある。普段、彼らは村人と同じように、畑仕事をして暮らしてるからね。領主も含めて。
【シルヴィア】 ほうほう。
【GM】 それじゃあ、領主の家に着いたよ。
 馬たちは厩に繋がれて、飼葉などをもらってる。レッドゾーンが「湿気てるなぁ」と、ぶちぶち文句を言ってる。
【メイユール】 レッドゾーン……(笑)。
【GM】 家の中に通されたキミたちを、ベッカー夫人が迎えてくれた。執事やメイドを雇う余裕はないので、家事はすべて、この若い奥さんがやってるんやね。
 ベッカー卿にはひとり息子もいて、3人家族。6歳になる息子は、初めて見る冒険者に興味津々。階段の上から、遠巻きにキミたちを覗いてる。
【ティガー】 変なニワトリもおるしな。
【GM】 キミたちが居間でくつろがされてると、息子は下に降りてきて、そのニワトリと向こうで遊ぶ。そのうち、向こうからシュゴ〜って音がするわ。
【ティガー】 ヒデヨシが、7色に光ってる(笑)。
【GM】 そして、質素な夕食をいただいて、キミたちは2階の部屋に案内された。ティガーとシルヴィア、サテラとメイユールという組になって、2部屋があてられる。
 ちなみに2階は、このふたつの部屋と、物置にしてる部屋の3つしかない。領主夫妻と息子は、1階で寝るみたいやね。
 2階の廊下には、兵士がひとり、ランタンを床に置いて警護に立つ。
【ティガー】 見張られてるんや。

 そうして、夜は更けていった。

【GM】 真夜中。ティガーとシルヴィアは、ちょっと目覚め判定をしてみ。
【ティガー】 (ころっ)おぉ〜っ!? 1ゾロ。俺、寝相が悪いから、ベッドから頭を垂らして、永眠してる。
【GM】 『永眠』なんかぃ(笑)。
【シルヴィア】 (ころっ)僕は目を覚ましたみたい。
【GM】 シルヴィアは、小石が鎧戸に当たる音に気づいた。
【シルヴィア】 じゃあ、開けてみるよ。
【GM】 窓を開け放つと、月の光が差し込んだ。闇に慣れてたせいで、めちゃくちゃ明るく感じるね。
 向こうに、いくつか人影がある。キミのほうに向かって、手を振ってるように見える。
【シルヴィア】 なんやろ?
【GM】 人影は、何か投げてきた。受け止め判定して──失敗やね。それは、木片というぐらいに短い棒。床に転がって、ハデな音を立てた。
【シルヴィア】 すぐに拾うよ。
【GM】 扉が開けられ、ランタンを持った警護の兵士が顔を覗かせる。「何事ですか?」
【シルヴィア】 木片を後ろ手に隠して、「ベッドから落ちたみたい」って答える。
【GM】 「ケガはないですか?」
【シルヴィア】 「大丈夫、大丈夫」
【GM】 兵士は顔を引っ込めて、扉を閉めた。
【シルヴィア】 この木の棒は何?
【GM】 手紙がくくりつけられてるみたい。
【シルヴィア】 木の棒に〈ライト〉をかけて、手紙を読んでみよう。
【GM】 手紙には、「領主に内緒で巨人を退治して欲しい」というようなことが、記されてる。報酬は2812フィス。
【メイユール】 かき集めた、って感じの金額やな。
【GM】 「OKなら、明日、南東の森の入口でマッカイさんが待つから、外の人間にこっそり合図して欲しい」とのこと。
【メイユール】 決めちゃえ、決めちゃえ。
【シルヴィア】 じゃあ、〈ライト〉の光をバックにして、OKのサインを出す。
【GM】 なら、人影は頭を下げながら、去って行った。
【シルヴィア】 手紙は、懐に入れて持っとくよ。

 そして、朝を迎えた。

【GM】 兵士に起こされて1階に降りると、すでに朝食が用意されていた。パンとみそ汁──みそ汁??
【サテラ】 すごい組み合わせ(笑)。
【シルヴィア】 小麦と大豆が名産の村なんやね。
【GM】 まあ、そういうのを食べ終えて、キミたちは出発することになる。ベッカー夫人が、手作りの弁当を渡してくれたよ。
【シルヴィア】 「これはこれは、ご丁寧に。じゃあ、坊主。また」と、領主の家族に挨拶しとこう。
【GM】 では、キミたちは兵士に付き添われて、村の外まで送られた。
【メイユール】 「さようなら、しけた村ー! みそ汁ありがとー!」
【GM】 メイユールは〈ウィンド・ボイス〉に声をのせて、村中に挨拶してる。
【ティガー】 けなしてるのか、お礼言ってるのか、どっちやろ(笑)。
【シルヴィア】 じゃあ、村から見えなくなったところで立ち止まって、みんなに昨日の夜のことを話す。で、手紙も見せるよ。
「勝手に引き受けたけど、よかったかな?」
【ティガー】 いいんちゃう。領主、ムカつくしぃ。
【シルヴィア】 丁重に扱ってもらったやん(笑)。
【メイユール】 お弁当も、もらったやん。
【ティガー】 でも、うさんくさいし。巨人退治に行こう。村から見えないように、ぐるっと回って、南東の森へ行く。
【GM】 森の入口には、マッカイさんが待っていた。
「よく来てくださいました」
【シルヴィア】 「ここから、巨人が出てきたんですか?」
【GM】 「そうです。そして、ここから去って行きました」
【シルヴィア】 森の中を案内できるひと、誰もいてないかな?
【GM】 いない。彼らは、「森には恐ろしい魔物がいる」と聞かされて育ってきてるので、森にはほとんど近づかないから。
【ティガー】 ホンマにおるしな。
【サテラ】 森の中って、馬で行けるかな。
【ティガー】 歩いて行ったほうがいいかも。
【シルヴィア】 じゃあ、マッカイさんに馬を預かってもらっとこうか。

呪われた女の事

【ティガー】 領主とかに見つからんように、ぼちを隠しといて。
【GM】 了解。村人の家の厩に入れとくから、仕事が終わったら取りに来て。そのとき、報酬も渡すし。
【ティガー】 OK〜。
【メイユール】 レッドゾーンと一緒に、ランスも預けとく。邪魔やし(笑)。
【ティガー】 じゃあ、巨人を探そう。メイユール、巨人の足跡とか調べてくれ。
【メイユール】 わたし?
【GM】 レンジャー技能の[足跡追跡]になるからね。
【メイユール】 1レベルしかないから、不安やけど。(ころっ)なに、この出目。ぜんぜん、目標値に届かない。「わから〜ん」
【GM】 それなら、メイユールは何も見出せない。他のひとは、ダイスの出目だけで挑戦できるけど?
【ティガー】【シルヴィア】【サテラ】 (ころっ)出た。
【GM】 技能のない3人が成功したんか(笑)。
【メイユール】 なんでー?!
【シルヴィア】 メイユールには、変な先入観があったんやろ。
【GM】 巨人の痕跡を見つけた3人は、セージ技能で巨人の種類を見極めることができるよ。かなり難しいけどね。
【シルヴィア】【サテラ】 (ころっ)失敗。
【ティガー】 (ころっ)おーッ、6ゾロ!
【GM】 なら、ティガーには、それがちょっと年齢が幼いフォレスト・ジャイアントのものだとわかった。幼いといっても、身長3メートルは下回らないけど。
【メイユール】 すごい、余裕や。蘊蓄垂れてるで。
【ティガー】 ぺらぺら蘊蓄垂れてるけど、途中からオムレツの話になってくねん。
【シルヴィア】 そのフォレスト・ジャイアントについて、わかることは?
【GM】 フォレスト・ジャイアントは、暗い色の体毛を生やした巨人で、きわめて凶暴。視界内の生き物には、とにかく襲いかかるらしい。しかし、オムレツは動くことがないので、襲われにくいだろう。ダービア=ベーレン店のオムレツはちょっと味が濃過ぎで、あまりケチャップをかけるべきではない──と、ティガーは言った。
【シルヴィア】 なるほど。話の後半はともかく、かなり危険なモンスターやね。用心して、追跡しよう。

 冒険者たちは、巨人が通った痕跡を追った。
 やがて、周囲の木の枝や茂みが激しく立ち折られている場所に来た。辺りの地面には、血痕も残されている。

【メイユール】 何があったんやろ?
【GM】 調べたければ、レンジャー技能でどうぞ。──また、失敗? なら、メイユールにはわからない。
【メイユール】 なに、このダイス?! ムカつくぅ〜!
【GM】 他のひとは、ひら目でチャレンジできるよ。
【ティガー】 (ころっ)はい、成功。
【GM】 どうやら、ここで巨大な生物が暴れたらしい。何かと争った形跡やね。
【ティガー】 どっちも巨大っぽい?
【GM】 いや、片方は人間サイズの足跡やね。
【メイユール】 ここでラジオ体操してたんや。
【ティガー】 で、大きいほうが手を振ったときに小さいほうの顔に当たって、鼻血がプーっと出た跡やねん(笑)。
 ……人間サイズの足跡って、どこにも向かってへんのとちゃうん。ここで食われて。
【GM】 調べたい? じゃあ、レンジャー技能でチェックしてみ。──今度は、ひら目の連中も失敗したね。じゃあ、見分けられなかった。大きいほうの足跡は、すでに成功してるので、見失わずにすむけど。
【ティガー】 大きいほうの足跡、まだ続いてるん?
【GM】 森の奥へ向かってるみたい。
【ティガー】 じゃあ、行ってみる。

 冒険者たちは、さらに森の奥へ踏み込む。しかし、追跡すべき足跡を、小川を渡った直後に見失ってしまった。
 冒険者たちは、巨人が小川を渡ろうとした方向から、渡河後の進行方向を推測し、そちらに向かった。
 やがて森が開けた場所に出た。そこには、古ぼけた2階建ての洋館があった。

【GM】 キミたちがいるのは、蔦に埋もれた門柱のところ。洋館の鎧戸はいくつかは開いてるけど、いくつかは閉まっている。玄関扉も、閉ざされてるね。
 時刻は昼過ぎぐらい。
【シルヴィア】 じゃあ、領主の奥さんがくれた弁当を食べよか。「腹が減っては戦はできない」というし。
【ティガー】 館を見ながら食べる(笑)。
【GM】 食べ終えた。で、どうするかね?
【ティガー】 入る。
【GM】 敷地内は草が生い茂っている。けど、門から玄関にかけて、細い道ができてるよ。
【ティガー】 人通りはある、ってことか? 誰か、住んでんのかな。
【GM】 では、玄関の前まで来ましたよ。両開きの大きな扉は閉まってる。
【ティガー】 普通に開くかな。開けてみる。
【GM】 きしんだ音を立てて、扉は開いた。
【ティガー】 中を見てみる。巨人はいない?
【GM】 いないよ。薄暗い館内は、不気味に静まり返っている。
【ティガー】 入ってく。
【GM】 すると、奥の扉が開いて、そこから若い女性が出てきた。
 女の人はキミたちに気づいて、「何をしてるんですか?」と聞いてくる。
【ティガー】 えっ? 「ここ、あんたの家?」って聞く。
【GM】 「そうではないですが……もしかして、冒険者の方ですか?」
【シルヴィア】 「そうですけど。じつは、メルフェー村を襲った巨人を追って──」
【GM】 シルヴィアの説明を最後まで聞かずに、女性は早足でやって来る。
【メイユール】 お、戦闘か?
【ティガー】 巨人の仲間?
【GM】 いや、戦おうとしてるようではないよ。首飾りをはずして、それをキミたちに差し出す。首飾りには、オレンジ色のビー玉のような石がくっついてる。
【サテラ】 玉?
【GM】 「メルフェー村から来られたのなら、これを村のイアンという者に渡して、『リンは無事だ』と伝えてください」
【ティガー】 っていうか、あんた、誰?
【GM】 「メルフェー村のリンです」
【メイユール】 「ここで何してんの?」
【GM】 「連れて来られてんです」
【シルヴィア】 ああ、4人ほど失踪してる、っていうひとのひとりなんやな。
【ティガー】 「誰にさらわれたん? 領主? 神父?」
【GM】 リンは答えかけて、電気で弾かれたように床に転がった。かなり痛がってる。
【ティガー】 〈ギアス〉か。おーい、シルビ〜。
【シルヴィア】 〈ディスペル・マジック〉してみるよ。
【GM】 いや、〈ギアス〉は〈ディスペル・マジック〉では解けない。
【シルヴィア】 あ、そうか、〈リムーブ・カース〉なんやな。ファンリーを連れてきてたら、何とかなったかも知れんけど。
【ティガー】 とりあえず、俺らと一緒に村に帰ろうぜ。
【メイユール】 わたしらが護衛してあげるから。
【GM】 リンは首を振る。どうも、ひどく怯えてるみたいやね。
【サテラ】 う〜ん……。
【GM】 そのとき、奥の扉の向こうから、「おい、リン。どうした」という男の声がした。
「メシはまだか。早くしろ」
【ティガー】 犯人か?
【GM】 声を聞いたリンは、すくっと立ち上がって「はい、わかりました」と、答える。そして、キミたちを外へ追い出した。
【メイユール】 なに〜?
【ティガー】 追い出されてもた。
【GM】 扉を閉めるとき、リンは「村を救ってください」と言う。玄関は閉ざされ、鍵がかけられた。
【メイユール】 えー? ここで彼女を救えば、すぐすむのに。
【シルヴィア】 何か、理由があるんやろね。〈ギアス〉をかけられてたみたいやし。
【ティガー】 失踪したんって、4人やったっけ。他の3人を人質にとられてて、あんまり自由に動けないとか。
【シルヴィア】 とりあえず、ここにいてもしょうがなさそうやし、メルフェー村に戻って、イアンとやらにお届け物をしてあげようか?
【メイユール】 巨人はどうするの?
【ティガー】 ん〜……先に届け物のほうをする。
【GM】 では、キミたちはメルフェー村に戻ってきました。時刻は午後3時ぐらい。
【シルヴィア】 マッカイさんに、事情を話そう。
【ティガー】 兵士に見つからんよーに、イアンの家に行きたい。その辺の村人に聞く。事情を話したいけど、あんまりしゃべってると兵士に見つかるから、手短に教えて。
【GM】 では、手短に教えて、こっそりと案内してくれた。村人は、家の中で待ってるように言い置いて、イアンを呼びに行った。
 しばらくして、イアンがやって来た。リンと年齢がかわらないぐらいの、若い男性やね。
【ティガー】 「これに見覚えはある?」って、リンのペンダントを見せてみる。

÷÷ つづく ÷÷
©2006 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2006 Jun Hayashida
Map ©2006 Moyo
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