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§銀月の歌:第13話§

容疑者ジーネ

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 髭の巨人の噂の事 ▽ 冒険者たち、無実を証明しようとるする事 ▽ 廃墟の対峙の事

髭の巨人の噂の事

【GM】 さて、メイユールたち3人が、『青い波の美し亭』の酒場で、「ジーネと思われる人物が捕まって、もうじき処刑される」という噂を耳にしたところから、続きやね。
【シルヴィア】 「ジーネ」という名前が出てなくても、噂の感じからすると、ジーネ以外には考えられへんねんな。
【メイユール】 とりあえず、ティガーはいつ頃、退院してくるの?
【GM】 今日の昼前には、ミフォア大神殿の診療所から帰ってくるよ。診療所の神官たちに見送られて、両手に花束を抱えて退院してくる。
【ティガー】 「うわー。全部、菊や」って思っとこ。
【メイユール】 人気者やなぁ(笑)。「おかえり」
【GM】 復帰したティガーは、なぜか、モヒカン頭になってたりする。
【メイユール】 うわー、モヒカンの主人公や〜。
【シルヴィア】 「どないしたんや」って感じやな。
【ティガー】 ヒデヨシとおそろいになったみたい。大きいおしゃれなバンダナを買ってきて、頭に巻いとこうっと。
【メイユール】 なんか、海賊の下っぱみたい。
【GM】 眼帯もしてるしな。
【ティガー】 酒場のマスターにオムレツを注文する。「オムレツ」
【GM】 ティガーは仲間に挨拶もせずに、オムレツを注文しに行くわけか。
【メイユール】 飢えてるな〜。
【ティガー】 1週間ぶりのオムレツやからな。禁断症状が出てるかも。
【GM】 手とかプルプルさせながら、「売ってくれよ。オムレツ、食わしてくれよォ!」と、注文するんやな。「頼むよォ」
【メイユール】 すごい必死や。
【ティガー】 やばぁいで。目とか、焦点合ってなかったりして。
【GM】 そのうち、パタパタと宙を飛びはじめて、「ボクはオムレツの妖精」とか言い出すんやろな。
【ティガー】 それ、完全にイッちゃってるやん(笑)。オムレツを食ったら、普通に戻る。
【メイユール】 ティガーが食べてるオムレツの数をカウントしとく。
【ティガー】 5枚目にいってる。
【GM】 わんこそばのように、どんどん皿が積み重ねられていってるんやな。オムレツを食べたので、ティガーは普通に戻った。久々に4人が顔をそろえたよ。
【ティガー】 ヒデヨシの身体に、発毛剤を塗っとこうっと。
【シルヴィア】 ティガーに、さっき聞いたジーネの噂を伝えとくよ。あと、『天の鍵』がどこに向かってるのかも、みんなに教えとく。その上で、今後の対策を練ろう。
【ティガー】 『天の鍵』はこの際、置いといて、ジーネはいつ処刑されんの?
【GM】 近いうち。明日か、あさってか、3日後か。
【サテラ】 けっこう、すぐ。
【シルヴィア】 何の容疑で捕まったん? やっぱり、ピーター博士の事件?
【GM】 そう。3月14日に起きたピーター博士と助手の殺人事件、魔術師ギルドへの放火事件の犯人として、捕まったらしい。
【メイユール】 ジーネ、そんなことしてたんや。
【ティガー】 「してへんねんけどな〜」と、思っとこ。
【シルヴィア】 前に、ティガーから「ジーネは犯人じゃない」ってことは、聞いてたよね。
【GM】 聞いてた。ティガーは「盗賊ギルドの情報」とだけ言って、詳しいことは伝えてなかったけど。
【メイユール】 「ティガー、ウソつきや」って思っとこ。
【ティガー】 あれぇ? なんでやろ。やっぱり、1週間のブランクは大きいな。あ、モヒカンがアカンのかな──って思うとく。
【シルヴィア】 「あんなこと言うてても、ティガーは仲間のことを信じてるんやな」って、僕は好意的に受け止めといてあげるよ。
 で、GM。ジーネは今、どこにおるの?
【GM】 衛兵の詰所の牢屋に、捕らえられてるらしい。
【シルヴィア】 とりあえず、詰所へ面会に行ってやろうか。
【サテラ】 わたしも行きます。
【ティガー】 オムレツを食い終わったら、一緒に行く。
【メイユール】 わたしも見物について行くよ。
【シルヴィア】 なんか、目的が違うひとが混じってるな。
【ティガー】 あ、髭が抜ける薬を、差し入れで持って行ってあげるわ。
【GM】 じゃあ、キミたちは、オーシュ神殿横の衛兵の詰所にやって来ました。
 これまでに何回か訪れたこの詰所は、じつはオレンブルクでいちばん規模の大きい詰所。警察署のような感じの扱いやね。
【ティガー】 で、交番みたいな詰所が、あちこちにあると。
【GM】 そう。キミたちは、そんな建物の入口前にいます。
 中は事務室。衛兵Bをはじめ数人の衛兵たちが、机に向かって書類の作成などを行ってのが見える。牢屋は、建物の奥のほうにあるみたいやね。
【メイユール】 いつもの隊長はいる?
【GM】 いや、見慣れない隊長ならいるよ。20代後半といった感じの、若い男性。キリっとして、奥で机に向かってる。
【ティガー】 やりにくそう。入りにくいな〜。
【シルヴィア】 後ろから、ティガーの背中を押したるわ。
【ティガー】 うわー、入ってもた!
【GM】 衛兵たちは手を止めて、ティガーを注視するよ。
【ティガー】 え〜??
「えっと、髭の巨人を処刑するって、本当ですか?」って、隊長に聞いてみる。
【メイユール】 『髭の巨人』って、なんでコードネームになってんの!?(笑)
【GM】 若い衛兵長はニコリともせずに、「うむ、そうだ」と答える。
【ティガー】 「じゃあ、最後に、この薬を渡してあげてください」って、髭抜け薬を渡す。
【シルヴィア】 「ちょっと待てぇー!」と、割って入る。
「『最後』とか言うな」
【ティガー】 だって、この衛兵隊長、やりにくそうやねんもん。
 いつもの隊長はどうしたん? 今日は休み?
【GM】 いや、解任されたらしい。失恋の精神ダメージで、仕事が手につかなくなったそうで。去年のときは仕事に没頭できたけど、今回のはかなりひどかったみたい。
【ティガー】 今頃、どこかで落ち込んでるんやろな。
【メイユール】 傷心旅行中とか。
【GM】 代わりに衛兵長に就任したのが、このデニス・ハードさん。かなり優秀な人らしい。下級貴族のバックアップも受けている、将来の有望株。28歳、独身。来年には、騎士叙勲も戴く予定だとか。
【ティガー】 やっぱ、やりにくそう。
【メイユール】 有望株と聞いたので、名刺をもらっとく。
【ティガー】 「で、髭の巨人には会われへんの?」って聞いてみる。
【GM】 「キミはいったい誰だね?」
【ティガー】 じゃあ、名刺を渡す。
【GM】 「キミがあの有名なティガーか。まあ、いいだろう」と、ハード隊長は許可してくれた。隊長が立ち会うのが条件だけど。
【ティガー】 いいよ。
【シルヴィア】 じゃあ、案内してもらおう。
【サテラ】 ついて行きます。
【メイユール】 怖いから、わたしは行かんとく。他の衛兵と一緒に、事務室でお茶を飲んどくわ。
【GM】 自分で勝手にお茶を入れてそうやな。
【シルヴィア】 刑事ドラマに出てくる、保険のおばちゃんみたいに(笑)。
【GM】 では、ティガー、シルヴィア、サテラの3人は、ハード隊長に伴われて、地下の牢屋にやって来た。空気は湿ってひんやりとし、カビの匂いが鼻をつく。
【ティガー】 いちばんに見てみるけど、牢屋の中にいるのはジーネ?
【GM】 うん。頑丈な鉄格子の向こうで、見慣れた肉塊が、ガシュインガシュインとうろついてる。もちろんその顔は、カ○ルおじさんのような髭に飾られてるよ。
【ティガー】 じゃあ、その髭の肉塊に薬を渡す。
【GM】 檻から手を出して薬を受け取ったジーネは、「なに、これ?」と怪しむ。
【ティガー】 「髭が抜ける薬」と、教えてあげる。
【GM】 「ふ〜ん」と言って、ジーネはその薬をゴクゴク飲みはじめた。
【ティガー】 ああーッ!
「えっと、飲むんじゃなくて、塗るんじゃないですか?」
【GM】 「そんなん、最初に言うてよっ」とジーネは怒り、ガシガシと鉄格子を揺さぶる。
【メイユール】 激しいな。
【GM】 ハード隊長が「暴れるな!」と怒鳴り、水をかけてジーネを牢の奥に追いやった。
【サテラ】 すごい扱い……(笑)。
【GM】 「あれはどういうわけか、水を異常に怖がるのだ」
【ティガー】 前に川で溺れたしな。
【GM】 牢の奥に行ったジーネは、ティガーからもらった薬を髭に塗ってみた。すると、髭はボロボロと抜けていった。
【メイユール】 元に戻ったんや。
【ティガー】 OK。もう、思い残すことはない。
【GM】 「死刑になってもOK」って口調やな。
【シルヴィア】 しょうがない。
「ティガー、この前、ジーネは無実とか言ってたけど、それはどういうことなん?」と、尋ねてみる。
【ティガー】 なんで、そんなこと言うたんやったっけ??
【シルヴィア】 思い出せぇー!
【GM】 魔術師ギルドで事件が起きたとき、ジーネはそこにいなかった、と聞いたからやろ。ジーネ本人の自供やけど。
【ティガー】 じゃあ、そのことを言う。
【シルヴィア】 それで僕は納得がいったので、ハード隊長に「ジーネの自供を、〈センス・ライ〉で判定してもらえませんか?」と、言ってみる。

冒険者たち、無実を証明しようとるする事

【GM】 「申し訳ないが、警備予算も無尽蔵というわけではないのでね」と、ハード隊長は応える。
【ティガー】 でも、前の隊長は〈センス・ライ〉を依頼してたよ。
【GM】 「私をあのような無能者と一緒にして欲しくないな」
【ティガー】 このひとは有能なんか。
【GM】 まあ、そういうふうに見られてるけど。
【シルヴィア】 「その輝かしい経歴に、冤罪で処刑したなんて汚点がつくのは、まずいんじゃないですかね」と、言ってみる。
【GM】 「奴を現場で目撃した、という証言は数多く寄せられている。もはや、ほぼ間違いない犯人に対して、莫大な費用をかけたくない」
【ティガー】 じゃあさ、自分らで〈センス・ライ〉を依頼するなら、別にいい?
【GM】 「好きにしたまえ。私は関与しない」
【シルヴィア】 費用はいくらぐらいかかるの?
【GM】 1500フィス。
【ティガー】 割り勘する?
【シルヴィア】 するやろな。
【サテラ】 4人で払うなら、ひとりにつき375フィスです。
【メイユール】 わたしは事務室でお茶を飲んでるから、呼びに来てね。

 冒険者たちは、魔術師ギルドで〈センス・ライ〉を使えるソーサラーを雇った。
 審査したソーサラーは、ジーネの「殺人と放火はやってない」という言葉に、偽りがないことを証言した。

【GM】 「しかし、グラランボンバーの発作で服用者が凶行に及ぶとき、その間の記憶を失っていると報告を受けている。ジーネがそのとき、グラランボンバーの発作を起こしていないという保証はない」
【シルヴィア】 グラランボンバーの発作は周期的に起こる、という話は──。
【メイユール】 それが証明される前に、博士と助手は死んでしまった。
【ティガー】 「真犯人を捕まえてきたら、ジーネの処刑はやめてくれる?」って、隊長に聞いてみる。
【GM】 「そんなものが存在するのなら」と、ハード隊長は言う。
「ただし、傷害の罪に関しては、現行犯なので言い逃れはさせないぞ」
【メイユール】 傷害? ジーネ、何をしたんや。
【GM】 ジーネが潜んでいた宿屋に衛兵が踏み込んで大捕り物になったとき、彼女は大暴れして、取り押さえようとした衛兵Aのあごを砕いてしまったらしい。衛兵Aは、全治3ヶ月の重傷を負ってしまった。
【ティガー】 それは捕まってもしゃあないわ。
【メイユール】 ジーネ、必死やったんや。
【GM】 彼女にしたら単に振り回した手が当たっただけなんやけど、何せ筋力が24あるから(笑)。
【ティガー】 人外の筋力やもんな。
【シルヴィア】 その件はその件で罪を償ってもらうとしよう。さすがに傷害ぐらいでは、縛り首にはならんやろ?
【GM】 まあ、故意じゃないし、数ヶ月の懲役程度で許してもらえそう。〈リジェネレーション〉の代金を支払えば、執行猶予をつけてもらえるかも。過失ってことで、左手の甲に押される犯罪者の烙印も免除してもらえるかな。
【ティガー】 「とりあえず、真犯人を連れてくるから、処刑は待っててな」
【GM】 「わかった。3日待ってやろう」
【メイユール】 真犯人って、目星はついてんの?
【ティガー】 あの銀髪のハデな男が犯人やと思う。
【サテラ】 ジョン・J・スミス。
【ティガー】 魔術師っぽいかっこうをしてたし、〈センス・マジック〉を使ってたっぽいし、たぶんソーサラー。
 魔法でジーネに化けて博士を殺して、サテラに化けてファンリーを連れ出したと見た。
【メイユール】 でも、なんでサテラに化けたんやろ? ティガーに化けたほうが、手っとり早いと思うけど……。
【シルヴィア】 ティガーやと、ちょっとした仕草の違いで、ファンリーに見抜かれてしまう危険があるからとちゃう? ファンリーも、サテラのことはあんまり知らんやろし。
【メイユール】 ああ、なるほど。愛の力やな(笑)。
【ティガー】 ジョン・J・スミスが真犯人やと思うけど、なんで博士を殺したのかが、わからん。
【シルヴィア】 違ってたら、違ってたときや。GM、〈ロケーション〉で調べた『天の鍵』は、オレンブルクから片道でどれくらい離れてるの?
【GM】 現在の位置は、徒歩で南へ7日ってとこ。
【ティガー】 往復で、最低2週間かかるね。
【GM】 「話にならないな」
【ティガー】 「でも、そこに真犯人がおることが、わかってるねん」
【GM】 「では、14日待ってやろう。15日後、4月11日の正午に、ジーネの首を刎ねる」
【シルヴィア】 じゃあ、詰所を出よう。さっそく追いかける?
【ティガー】 うん、すぐに出発するで。GM、今は何時ぐらい?
【GM】 昼過ぎ。午後2時ってとこ。
【メイユール】 『天の鍵』に追いつけるかな。
【シルヴィア】 向こうも移動してるからなぁ。
【ティガー】 ああ、それを忘れてた。徒歩やと、2週間以内に追いつくのはムリかな。
【シルヴィア】 移動手段は何がある?
【ティガー】 メイユールの馬が1頭。GM、馬を貸してくれるとこはない?
【GM】 あるよ。先日、シルヴィアたちが利用した、レンタル屋さんが。馬での移動は、徒歩の移動の2倍の速度としようか。
【メイユール】 ティガー、お金足りるの?
【ティガー】 たぶん、足りない。「後で払うわ」って言うて、名刺を渡しとく(笑)。白色で、茶色のブチ模様のやつを借りるね。
【シルヴィア】 僕とサテラも、1頭ずつ借りとこう。
【サテラ】 徒歩で南へ7日といったら──。
【シルヴィア】 地図上では、エルゴンという村があるね。
【メイユール】 お、どこかで聞いたぞ。いっぺん行ったことあるかも。
【ティガー】 ジーネの故郷やん。あの惨劇の村へ、もういちど行くというのか。
【シルヴィア】 じゃあ、出発しようか。ごちゃごちゃ考えてる時間はないし。
【ティガー】 今回は、ちゃんと鎧を着て行くで。あと、ミフォア大神殿に置いてきたカルファンの剣も、持って行く。
【メイユール】 わたしも、ちゃんと武装して出発する。
【GM】 では、キミたちは王都オレンブルクを発ち、ティガーとメイユールが1月に通った、エルゴン村への間道を旅する。
 冬には枯れ野だった草原は、若い緑と色とりどりの花のつぼみに飾られている。3月のまだ少し冷たい風が、キミたちの頬を撫でる。
【メイユール】 カラフルやな〜。蝶とかも飛んでそう。メルヘンやな。
【GM】 途中の道のそばには、大きなサソリの殻や、小さなビンのかけらなんかが、草に埋もれてたりする。
【メイユール】 まだ、残ってるんか(笑)。
【シルヴィア】 全ては、ここから始まったんやな。
【ティガー】 あいつが、あんな薬を飲んだから(笑)。

 冒険者たちは、エルゴン村をめざして、さらに南下する。
 シルヴィアは、毎日〈ロケーション〉をかけて、『天の鍵』のありかを確かめ続けた。
 どうやら『天の鍵』は、オレンブルクから7日(馬なら4日)ほどの距離から、動いていないようだった。
 そして3月30日の朝、一行は、ジーネの故郷エルゴン村に到着した。

【シルヴィア】 『天の鍵』との距離はどんな感じ?
【GM】 かなり近いことがわかる。南へあと数時間、ってとこやね。
【メイユール】 とりあえず、村長さんのとこに顔を出して行っとこか。
【GM】 はいよ。家を訪ねて声をかけると、中から村長さんが顔を出した。
「おお、久しぶりじゃのう」と、メイユールに挨拶する。「そっちの3人は、新しい仲間かいな?」
【ティガー】 俺、髪形が変わって、眼帯してるもんな(笑)。
【GM】 「ジーネは元気ですかの?」
【メイユール】 うん、元気、元気。めっちゃ元気。ピンピンしてるで。
【シルヴィア】 ──今のところはね……。
【GM】 「は??」
【メイユール】 「いやー、何でもない、何でもない」黙っとけ、シルヴィア(笑)。
【ティガー】 ジーネの教会って、今、どうなってるんやろ?
【GM】 あれ以来、無人のままのようやね。『シルファス大神殿・エルゴン大聖堂』という手書きの看板も、そのまま。
【ティガー】 どこが大聖堂やねん。
【GM】 そりゃあ、大きいか小さいかは、本人の主観によるから。幼い頃のジーネには、自分の教会が大聖堂に思えたんでしょう。
【メイユール】 あの看板、ジーネの作品やったんか!(笑)
【GM】 彼女が10歳ぐらいのときに作ったもの。娘が作ったものだから、神父さんは飾っといてくれたんやろね。
【サテラ】 かわいがってくれてたんや。
【ティガー】 それがあんな結末に。
【メイユール】 とりあえず、長旅で疲れてるから、1日休んで行こうよ。
【ティガー】 奴の死刑は4月11日やし、まだまだ余裕あるからな。あの教会で泊まるのはイヤやから、村長さんの家に泊めてくれ。
【GM】 では、キミたちは村長さんの家で1泊させてもらい、旅の疲れを癒した。
 翌4月1日の朝、キミたちは雨音で目を覚ました。
【ティガー】 雨!?
【GM】 うん。とくに意味はないけど、たまには天候を変えてみた(笑)。道はぬかるんでるよ。
【メイユール】 重馬場や〜。レッドゾーンが汚れるぅ〜。
【シルヴィア】 何を言うてんねん、『天の鍵』は近い、近い。
【メイユール】 なんでそんな興奮してんのよ?

廃墟の対峙の事

【GM】 台風とかで、テンションが上がるひとなんやろ。
【ティガー】 おるおる、そういう奴(笑)。
【シルヴィア】 それじゃ、出発するよ。
【GM】 ではキミたちは、雨の中を『天の鍵』めざして出発した。こういうとき、フード付のマントなどがあると便利やね。雨具を持ってないひとは、ずぶ濡れになる。
【シルヴィア】 僕はマントを持ってるから、大丈夫。
【ティガー】 俺は何も持ってないから、びしょ濡れ。いいねん、どうせモヒカンやし。
【GM】 シルヴィアのナビに従って、道なきぬかるみを進むことウン時間、山の谷間を抜けきると、目の前に平地が開けた。
 その中ほどに、一軒の2階建ての古びた館が建っている。シルヴィアは、その館から『天の鍵』の存在を強く感じた。
 メイユールとティガーは、その建物を知ってるよ。いちど、ここに来てるからね。
【ティガー】 え?
【GM】 1月にブロブを退治しに来たところ。あのとき、館の外にいるやつだけを倒して、キミらはそのままオレンブルクに帰ってしまったやろ?
【ティガー】 あー、あそこか。そういえば、中には入らんかったな〜。
【メイユール】 今日、初めて来たことにしとくわ。でも、ティガーの顔をジっと見る。
【ティガー】 メイユールの顔を、ジっと見る。
【シルヴィア】 その様子を見て訝しむ。
「何か知ってんの?」
【メイユール】 「んーん」と、激しく首を振る(笑)。
【ティガー】 やけにオーバー・リアクションやで(笑)。「絶対、何も知らない」とか言ってるねん。
【サテラ】 えっと、見張りとかは?
【GM】 見張りはいない。館の周りは無人やね。
【ティガー】 じゃあ、雨宿りのふりをして玄関に近づいてみるけど、中に気配はする? シーフ技能で[聞き耳]。
【GM】 [聞き耳]したいなら、まずは、その鎧を脱がないとね。
【ティガー】 ああ、そうか。じゃあ、脱ぐ。
【メイユール】 手伝ってあげるよ。
【シルヴィア】 大変やな。
【ティガー】 鎧を脱いだので、[聞き耳]。(ころっ)
【GM】 とくに気配を感じることはできなかった。扉には鍵がかかっている。
【ティガー】 みんなに「鍵かかってるよ」って言うてみる。
「開けていい?」
【シルヴィア】 開けなよ。
【メイユール】 ティガーがやらんかったら、誰が開けれるんよ(笑)。
【ティガー】 じゃあ、[鍵開け]する。(ころっ)
【GM】 軽快な音をたてて、鍵は開いた。ガラン! がらがらがっしゃん! ビービービー「鍵が開きました!!」──なんてことは、まったく起こらずに。
【ティガー】 どんな鍵やねん!
【シルヴィア】 ほとんど罠やな(笑)。
【メイユール】 じゃあ、中に入る?
【ティガー】 その前に、鎧を着る。
【GM】 また、みんなでそれを手伝うんやな。
【メイユール】 じゃまくさいな〜。

 冒険者たちは、玄関の扉をそっと開けて、館の中に入った。
 館は、廃棄されてから十数年経っているらしく、クモの巣や、埃だらけでかなり荒れていた。しかし、床を見てみると、人の出入りは頻繁にあるようだった。
 ティガーは、シーフ技能で床の足跡を調べ、もっとも足跡が多い道筋を見極めた。それは、館の地下への階段へ続いている。パーティは、足跡を追って地下へおりた。
 階段をおりきった先は、湿った空気の狭い通路だった。無骨に石材を積んだ通路の壁には、ろうそくが灯る燭台が据えつけられている。
 冒険者たちは、ティガー、メイユール、サテラ、シルヴィアの順で縦一列になり、細い通路を用心しながら進む。シルヴィアが感知する『天の鍵』の気配は、どんどん強まる。

【GM】 そこを曲がって先へ進むと、鉄製の扉の前にひとり、ひとが立っているのに出くわしたよ。
【メイユール】 どんなひと?
【GM】 キミたちに、見覚えがある人物やね。少し紫がかった銀の長髪で、若草色のローブを来た若い細身の男性。
 以前、オレンブルクの街で、サテラは「ハデなかっこうですね」と声をかけ、ティガーとメイユールは、ファンリーが捕らえられていた太古の寺院跡で目にしたね。シルヴィアも、寺院跡で使い魔の目を通して見ていたはず。
【サテラ】 ジョン・J・スミスか。
【ティガー】 向こうは、俺のことには気づいてないかも。モヒカンになってるから(笑)。
【GM】 そんなバカとちがうで〜。速攻で呪文の詠唱をはじめるで〜。問答無用で、戦闘ラウンドに入ったよ。もちろん、そちらが問答したいのならそうしてくれていいけど、銀髪の青年は、かまわず呪文を唱える。
【シルヴィア】 待ち構えてたみたいやな。問答無用なら、こちらも応戦するしかない。
【ティガー】 カルファンの剣で切りかかる。(ころっ)わー、10点も〜らい(1ゾロ)。
【GM】 ティガーは床を叩いて、腕がしびれている。
【サテラ】 〈カウンター・マジック〉を味方全員に。(ころっ)かかりました。
【GM】 淡く光る薄い魔法の障壁が、キミたちの身体を包み込んだ。
 じゃあ、次は銀髪の青年の番。キミたちのその一列縦隊の並びは、〈ライトニング〉をかけて欲しくてしょうがないって感じなので、恐ろしい電撃の魔法を放ってあげよう。魔法の稲妻が、一直線に並んだキミたち4人を貫くよ。
 しかし、全員がレジストに成功したみたいやね。ティガーに10点、メイユールに11点、サテラに10点、シルヴィアに11点のダメージ。おのれ、カンタマめ。
【シルヴィア】 ナイス、サテラ。
【メイユール】 男に〈シェイド〉をぶつける。(ころっ)効いた。ダメージは9点。
【シルヴィア】 こっちも〈ライトニング〉で反撃したいけど、前に仲間が3人いるからなぁ。ティガーの剣に〈ファイア・ウェポン〉。(ころっ)かかった。

 第2ラウンド、ティガーが燃えさかる剣でダメージを与えるも、倒すまでには至らない。サテラの〈エネルギーボルト〉は、敵にダメージを与えられなかった。
 そして、銀髪の青年が2発目の〈ライトニング〉を放った。
 この電撃で大ダメージを受けたのは、抵抗に成功したはずのシルヴィア。抵抗に失敗したメイユールとともに、残りの生命力がわずかとなった。
 サテラは抵抗に失敗したものの、GMが1ゾロを振ったためにダメージはなし。

【サテラ】 悪運が強い(笑)。

 本当なら、ここでメイユールは〈ヒーリング〉をかけたいところだが、ラウンド最初の行動宣言で〈シェイド〉を宣言しているため、やむを得ず、宣言どおりに闇の精霊を銀髪の青年にぶつける。青年の精神点を、わずかに削った。
 シルヴィアは、ダメージの確実性を期待して〈エネルギーボルト〉を2倍がけした。しかし、両方とも抵抗されて、微々たるダメージしか与えられなかった。
 そして、運命の第3ラウンド──。

【メイユール】 〈ヒーリング〉かけたいけど、耐えきれるかな。
【シルヴィア】 このラウンドで、ティガーが奴を倒してくれないと、まずいかも。
【GM】 メイユールは、銀髪の青年の後に行動やからね。
【ティガー】 倒せるかなー? とりあえず、ハデな男に攻撃。(ころっ)当たって、ダメージは13点。倒せんかった。サテラ、がんばってくれ。
【サテラ】 〈エネルギーボルト〉。(ころっ)あー、効かなかった……ダメージは8点。
【ティガー】 効いてたらクリティカル、の出目だったのに。
【シルヴィア】 敵は生きてる?
【GM】 生きてるよ。サテラの〈エネルギーボルト〉が効いてたら、ヤバかったけど。
 んじゃ、こっちの反撃。くらえー、〈ライトニング〉〜! (ころっ)レジストしてみろっ。
【ティガー】 えー!? (ころっ)いった! 抵抗できた。
【シルヴィア】 (ころっ)同じく。〈カウンター・マジック〉がなかったら、ヤバかった。
【メイユール】 まずいなぁ。(ころっ)おー、届いた。抵抗した。
【サテラ】 (ころっ)成功……です。
【GM】 なんじゃ、全員レジストできてしもたんか。それじゃダメージは、ティガーに12点、メイユールに11点、サテラに12点、シルヴィアに13点。
【ティガー】 残り生命力、2点! びしっ。
【サテラ】 わたしも2点残った。
【メイユール】 ぴったり0点になってしまった〜。
【シルヴィア】 シルヴィアはマイナス1点。
【GM】 なら、メイユールとシルヴィアは倒れた。[生死判定]してみよう。両者とも、1ゾロ以外ならOKやね。
【メイユール】 (ころっ)──うわっ、やばっ! 何とか生きてるけど、霊界が見えてる。
【シルヴィア】 (ころっ)──うわ〜、危ねー。かろうじて生きてるよ。
【メイユール】 もう、なんでこんな出目が低いかなぁ。
【ティガー】 どうすんの、これ? プリーストいないのに。
【サテラ】 次、くらったら死んでしまう。
【ティガー】 逃げるのはムリやんな〜。
【サテラ】 ふたりをかついで逃げるのは、ちょっと……。
【ティガー】 ここはやるしかない。敵も死にかけと信じて、攻撃する!
【サテラ】 わたしも、〈エネルギーボルト〉を。
【GM】 銀髪の男も、とうぜん、魔法を唱えようとするよ。次のティガーとサテラの攻撃で彼を倒せなかったら、ふたりともやられてしまうな。
【メイユール】 全滅?!
【GM】 そういうことになる。
【メイユール】 くそ〜。思ってた以上に強かったな。
【シルヴィア】 油断した。
【ティガー】 大丈夫、このラウンドでやっつける。攻撃! (ころっ)

÷÷ つづく ÷÷
©2006 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2006 Jun Hayashida
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ひと言ありましたら
 
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