≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第12話§

鍵を求めるもの

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 一大事、伝わる事 ▽ くり抜かれた瞳の事 ▽ 人質奪還の事

一大事、伝わる事

【GM】 ティガーは16時に、ミフォア大神殿に到着した。ファンリーの友人のシューシャという若い女性が、たくさんの参拝客が行き来する神殿の門を掃除しています。
【ティガー】 そのひとに、「ファンリーいる?」って聞く。
【メイユール】 求めるものは、ひとつやな(笑)。
【GM】 ファンリーは、昼前に出かけて、まだ帰ってきてないそうだよ。
【ティガー】 ああー。
【GM】 「おかげんはよくなったんですか?」と、シューシャはティガーに尋ねてくる。
【ティガー】 は?? 何が?
【GM】 シューシャの話だと、今日の11時半頃、サテラという女性が、「ティガーが大ケガをして動けないので、すぐ来て欲しい」と、言ってきたらしい。
【サテラ】 えっ、わたし?
【GM】 それを聞いたファンリーは、サテラと名乗った人物とともに、慌てて神殿を出て行った。
「骨とか腸とか脳とかが飛び出て、大変なことになってるって──」
【ティガー】 もう聞いてない(笑)。手紙に書いてあった場所に行く。剣は持って行かない。そこに放って行くから、置いといてね。
【GM】 ティガーは17時に、指定のあった太古の寺院跡に到着した。
 聖堂のような石造りの建物がかろうじて原型をとどめているのみで、それ以外の建物はすべて崩れ去り、雑草に埋もれた壁の一部や、礎を残すだけの廃墟やね。聖堂も、いつ崩れてもおかしくない感じ。
【ティガー】 来てみたけど、どうしよう。
【GM】 とりあえず、キミが到着したとき、聖堂の中から女性の悲鳴が響いた。
【ティガー】 行く、行く、聖堂に突っ込む!
【GM】 ティガーが門の跡から聖堂に向かって駆けだしたとき、足元にすこーんと矢が突き刺さった。ティガーは、たたらを踏んで立ち止まった。
【ティガー】 おおー。矢はどこから飛んできたん?
【GM】 聖堂のほうやね。見ると、聖堂の屋上、張り出しになったところに弓を持った男がいる。
 男は二の矢をつがえながら、「何だ、おまえは!」と言ってくる。
【ティガー】 そいつは、見たことないひとやんな?
【GM】 見たことないよ。
【ティガー】 じゃあ、「メイユールの代わりに来た」って言う。
【GM】 「は??」
【ティガー】 「武器とか持ってないし。ほら」
【GM】 「『天の鍵』は?」
【ティガー】 「後から来るかも。仲間が持ってるねん。メイユールがどこにおるか、わからんねん」
【GM】 「ぜんぜんダメじゃん!」
【ティガー】 「とりあえず、ファンリーを助けたいねん!」
【GM】 「アホかぁーッ!!」
【ティガー】 「どけぇー!!」って、聖堂にダッシュする。
【GM】 なら、矢が飛んでくる。全力で走るなら、回避にペナルティがつくよ。(ころっ)おっと、スナイパーは6ゾロ! 避けてみろ。
【ティガー】 (ころっ)6ゾロ、回避!
【メイユール】 おおー。
【シルヴィア】 すごいハイレベルな戦いやな。
【GM】 じゃあ、ティガーは聖堂の玄関の前に着いた。そこに来られると、屋根の上から攻撃するのはムリやな。
 とりあえず、入口は戸板で閉ざされてる。戸板は比較的新しいね。入口の横には小さな窓があって、そこから人相の悪い男が顔を出して、「何しに来たん?」と聞いてくる。
【ティガー】 「メイユールが今、来れないから、代わりに来たねん」って答える。
「とりあえず、ファンリーに会わせろ。何もしないから。うん」
【GM】 「というか、メイユールに脅迫状を出したのに、なんでおまえが来るんだ?」
【ティガー】 「だって、メイユールを探してたら、間に合わへんもん」
【GM】 「で、品物は?」
【ティガー】 「だからぁ──あ、じゃあ、俺がファンリーの代わりになるよ。酒場のマスターに、脅迫状をメイユールに渡しといてって頼んでるし、もうじき『天の鍵』が来るよ」
【GM】 「じゃあ、ちょっと待ってろ」と言って、男は奥に引っ込んだ。奥のほうで、何やら相談してるみたいやね。
【ティガー】 あー、ジーネのヒゲ薬、誰かに「届けといて」って頼んどけばよかった。
【GM】 しばらくして戸板がはずされ、さっきの男と、もうひとりガラの悪そうな男が出てきた。手には荒縄が握られてる。
「身体検査するから、手を頭の後ろで組んで地面に寝ころべ」だって。
【ティガー】 じゃあ、しょうがないからそうする。
「あ、買ったばかりのコート、汚れんように置いといてな。ヒゲ薬も」
【GM】 男は、コートからリボンをつけた脱毛剤のビンを取り出して、「なんだこりゃ」って首をかしげてる。
【ティガー】 「それ、使うなよ。ヒゲが抜ける薬」
【GM】 男はポイっと、その辺にビンを投げ捨てた。
【ティガー】 捨てたらダメっ、捨てたらアカン。
【GM】 ティガーは後ろ手に縛られて、聖堂の中に連れていかれた。
 長い年月放置されてたみたいで、中は荒れ放題。一部屋根が落ちてたり、床の隙間から雑草が伸びてたりしてる。
 奥の祭壇のそばに、ファンリーらしき若い女性が、縛られて床に転がってるよ。傍らには、紫がかった長い銀髪の青年がいる。
【ティガー】 ファンリーは何もなってない? どこか足らへんとか。
【シルヴィア】 どういうこっちゃ(笑)。
【GM】 右目と、左目がありません。その辺に、くり抜かれた目玉が転がってるよ。
【サテラ】 えっ!?
【ティガー】 あ〜〜……。
【GM】 いちおう、止血はされてるみたいやけど、ファンリーは気を失ってる。
【ティガー】 ……ほぅん。くっそ〜。
【GM】 人相の悪い男は、銀髪の青年に「人質がふたりになったけど、どうするんスか?」って、聞いてる。
【ティガー】 「じゃ、ここから先は俺で」って言うとく。
「ファンリーはダメ! ファンリーには手を出すな」

【GM】 一方その頃、オレンブルクのサテラとシルヴィアは、魔術師ギルドの王立図書館で、それぞれ調べ物をしてるんやったね。

 シルヴィアは月の塔について調べた。
 月の塔を築いたのは、マティアス・メンデンという古代の魔法帝国の賢者だった。
 月の裏の塔で、宇宙空間(星界)に漂う『エーテル』というエネルギー体を集め、それを魔法の源になる魔力に変換しながら、月を貫くパイプで月の表の塔に送り、表の塔から地上へ魔力を照射する装置らしい。

【シルヴィア】 サテライト・キャノンやな(笑)。

 サテラは『天の鍵』について調べた。
 砂漠に眠るという、『月へ行く船』を呼び覚ますためのアイテムらしい。「守護の竜に五色の宝玉を示せ」という一文も見つけた。

【GM】 2時間で調べられるのは、この程度かな。時刻は16時30分になりました。
【シルヴィア】 じゃ、『青い波の美し亭』に帰ろうか。
【サテラ】 わたしも。
【GM】 宿に帰り着くのは、18時30分やね。
【シルヴィア】 ところでGM、使い魔のフクロウを通して、ティガーの様子は見れるの?
【GM】 聖堂の中まで入ったんかね?
【シルヴィア】 いや、そこまでするとまずいから、外に待機させてるけど。
【GM】 なら、ティガーが男に縛られて、聖堂の中に入っていったところまで見てたよ。
【シルヴィア】 それだけじゃ、何が起きてるか推察できないか……。「また、何をトラブルに巻き込まれてるねん」って思う(笑)。

【GM】 さて、その頃のメイユールは、どうしてんのかな?
【メイユール】 コロシアムを堪能したら、劇場に寄って、『青い波の美し亭』に帰る。劇場は何かしてる?
【GM】 いよいよ、ベルナルド・ジュノの最新作、『虎王のくちづけ』の前売り券が発売されるらしい。
【メイユール】 売れてる?
【GM】 行列ができてるね。「まだかなぁー」バサー、って待ってる奴もいる。
【メイユール】 前髪王子も並んでるんや(笑)。
【ティガー】 いちばん前やろ。ゴザとか持って、3日ぐらい前から並んでるねん。
【メイユール】 じゃあ、盛況ぶりに満足して、宿に帰る。
【GM】 では、メイユールは17時に『青い波の美し亭』に帰ってきた。
【メイユール】 「おっちゃん、ビール」
【GM】 その前に、「ティガーから手紙を預かってるよ」と、手紙が渡される。
「『すぐに渡せ』って言われてるから、ビールの前に渡すよー」
【メイユール】 なんでくしゃくしゃになってんの?
【GM】 預かったときから、そうなってたよ(笑)。

 GMから脅迫状を受け取り、メイユールもファンリーが誘拐されたことを知った。先のティガーの謎の行動の意味も、これでようやくわかった。

【GM】 で、メイユールはどうすんの?
【メイユール】 どうしよう。とりあえず、シルヴィアたちが帰ってくるのを待ってる。
【GM】 では、18時30分になると、サテラとシルヴィアが『青い波の美し亭』に戻ってきた。メイユールの前に置かれたビールは、すっかり気が抜けて麦汁になってるね。
【メイユール】 シルヴィアたちに、脅迫状を見せるわ。
【GM】 じゃあ、ふたりに手紙を見せといて。とりあえず、18時を過ぎたな。
【ティガー】 あーあ。

くり抜かれた瞳の事

【GM】 さて、廃墟の聖堂に捕らわれたティガー。ファンリーの左耳を削ぐのと、キミの左目をくり抜くの、どっちがいい?
【ティガー】 俺で。
【GM】 眼帯あるしな。
【ティガー】 ホンマに眼帯が必要になるとは。あっ、右と左が反対や! 「右にしてぇ」
【メイユール】 そういう問題なんや(笑)。
【GM】 じゃ、ティガーは右目をくり抜かれた。
【ティガー】 ファンリー抱いとこ〜。けっきょくこれ、デートしたことになってるんかも知れへん。
【シルヴィア】 イヤなデートやな。
【メイユール】 生涯、忘れられへんで。

【GM】 場面は再び『青い波の美し亭』、18時30分。
【シルヴィア】 脅迫状を読んだから、フクロウを通して見た光景の意味が、ようやくわかったわけやな。
【メイユール】 寺院跡に行ってもいいかな。
【シルヴィア】 うん。「っていうか、もう、ティガーが行ってるで」
【メイユール】 「えーっ!? じゃあ、行くわ」
【シルヴィア】 ここまできたら、もう、どうこう言ってる場合じゃない。
【GM】 別に、熱い議論で3時間ぐらい経ってもいいけど(笑)。
【ティガー】 「『天の鍵』を持って行くか」とか。「おやつを買って行くか」とか。
【GM】 「どうやって行く? 馬で行く?」
【ティガー】 「歩きのほうが、景色を見れていいんちゃう〜ん」
【GM】 「というか、もうじき門が閉まるしぃ」
【ティガー】 「明日にしよっか」やろ(笑)。
【シルヴィア】 ファンリーの命が懸かってるんやし、そんなことはしないよ(笑)。すぐに出かけよう。
【メイユール】 どうしよう、馬で行ってもいいんかな。
【シルヴィア】 いいと思うよ。
【メイユール】 GM、馬で飛ばせば、寺院跡まで何分ぐらい?
【GM】 5〜6分ほどやね。でも最初に言ったように、今回のシナリオは、すべてが30分単位で処理されるから。1分で終わることも、29分かかることも。
【シルヴィア】 今から出発して、寺院跡に到着するのは19時か。
【メイユール】 じゃあ、『天の鍵』だけ持って、レッドゾーンで出発する。武装はしない。
【GM】 脅迫状に指定されてた、チェイン・メイルも着ない?
【メイユール】 あっ、そうか。
【シルヴィア】 いや、そんなんしてる間に、さっさと行ったほうがいいと思うけど。ティガーが行った時点で、すでに約束は守られてないし。
【メイユール】 じゃあ、このまま出かける。
【シルヴィア】 僕も一緒に行きたいけど、何か交通手段はある?
【GM】 自分の足か、馬の足やね。
【シルヴィア】 どこかで、馬を借りられない?
【GM】 う〜ん、じゃあ、500フィスで馬を貸してくれる業者があることにしよう。さかな広場に面したところに、レンタル屋さんがあるよ。
【メイユール】 レンタカーや。
【シルヴィア】 500フィスなら、安いもんや。そこで馬を借りよう。
【GM】 サテラはどうすんのかな?
【サテラ】 ちょっと気になるから、脅迫状に書かれてた『オグルの棍棒亭』へ行ってみる。
【GM】 歩いて行くのかな?
【サテラ】 レンタル屋さんで馬を借ります。
【GM】 では、ここでふた手に分かれて行動するんやね。

【GM】 まずは、『オグルの棍棒亭』に向かった、サテラから。
 サテラは馬を借りて街の通りを飛ばし、開運門近くの北区鍛冶屋町の一角にある、『オグルの棍棒亭』にやって来たよ。裏路地に看板を出してる、細々とした雰囲気の酒場やね。
 時刻は19時。
【サテラ】 中に入ってみる。
【GM】 『オグルの棍棒亭』は、キミが宿泊してる冒険者の店とは、まったく違う感じの酒場やね。客のほとんどは屈強な体の男たちだけど、冒険者には見えない。
 なんか、職人のためのパブって感じかな。テーブルに固まって、自分の作品の品評会みたいなことをしてたりする。細工物とか、ナイフとか。ドワーフも何人か混じってるよ。どう見ても場違いなサテラは、すごい目立ってるね。
 酒場のオヤジの奥さんっぽい太った中年の女性が給仕をしていて、サテラに「いらっしゃい」と声をかけてくる。
【サテラ】 とりあえず、酒場のマスターに事情を説明して、チェイン・メイルのことを聞いてみる。
【GM】 「ああ、チェイン・メイル? 預かってるよ。あんたがメイユールかい?」と、奥で炒め物を作ってるオヤジが言う。
【ティガー】 「はい」って答えとき。
【サテラ】 じゃあ、「はい」。
【GM】 オヤジは奥さんに言って、店の奥からチェイン・メイルを持ってこさせた。
 奥さんが「よいしょ」とチェイン・メイルを置くと、鎧から錆がパラパラと落ちた。
【ティガー】 錆びてるの?
【GM】 うん。それに加えて、胸に大きな穴が開いてる。必要筋力は10で、錆と穴のせいで防御力がマイナス5されている逸品やね。
 向こうでドワーフ作の髪飾りを手に取っていた職人のひとりが、その鎧を見て大笑いした。「あんたも物好きだな〜。それ、うちのゴミだぜ」って。
【メイユール】 何よ、それ〜。
【シルヴィア】 要するに、メイユールに精霊魔法を使わせないためのものでしょ。
【サテラ】 じゃあ、その鎧を持って、ふたりを追いかける。
【GM】 ところが、街の門は閉められてるよ。
【サテラ】 ──ですよね。
【GM】 見張りの衛兵が、「こらこら、もうダメだよ。若い娘さんが、こんな時間にどこへ行くんだね。早く家に帰りなさい」と、行く手を阻む。
【サテラ】 しょうがないから、『青い波の美し亭』に戻る。で、太古の寺院跡について、誰か知ってないか聞いてみる。
【GM】 太古の寺院跡についての情報収集やね。誰に尋ねるのかな? 酒場には今、店の主人と、給仕をする奥さんと、それを手伝う11歳の息子。それに冒険者が6人ほどいる。
【サテラ】 とりあえず、酒場のマスターに。
【GM】 すると、話を聞かせてもらえた。
 オレンブルク北東にある太古の寺院跡は、オレンブルクが建国される前にあった、邪神を祭る神殿の跡だそうです。当時、この地にあった王国によって、寺院とそこに住む邪教徒たちは滅ぼされた。
 その後、19年ほど前に、やはり邪教の信徒である者たちが、その寺院跡に住み着いたんやけど、オレンブルクのシルファス神殿が聖騎士団を派遣して、邪教徒たちを成敗したらしい。
 それからは、まったく無人の廃墟になってるそうです。
【サテラ】 なるほど。
【GM】 他にすることは?
【サテラ】 とりあえず、ここで待機かな。

【GM】 そうこうしてるうちに、19時になった。シルヴィアとメイユールは移動中。
 19時になったので、太古の寺院跡の聖堂にいるティガーは、ファンリーの左耳と──。
【ティガー】 そんなん、聞かんでもいい。ファンリーには手を出すな。
【GM】 なら、今度はキミの左目がくり抜かれた。
【ティガー】 うわー、目ェなくなっちゃった。見えへんやん。
【GM】 見えへんねぇ。ちょうどそのとき、メイユールとシルヴィアが寺院の門の跡に到着したよ。
 聖堂の屋根にいるスナイパーが、弓矢をかまえて「止まれ」と、メイユールに警告する。
【メイユール】 止まる。「『天の鍵』を持って来た」って言う。
【GM】 「そっちの男は何や?」と、シルヴィアを指す。
【メイユール】 「えっ、ついて来たん!? しっしっ」って言うとくで。
【GM】 「男は門の外に行って、馬から降りろ」と、スナイパーは言う。「持ってる物は地面に捨てて、後ろを向いて両手を挙げてろ」
【シルヴィア】 言われたとおりにする。近くに潜んでる使い魔の目を通して、寺院跡の様子は見れるからね。でも、手を挙げたままなのは、しんどいな〜。
【メイユール】 スナイパーに『天の鍵』を見せる。
【GM】 「じゃあ、馬から降りて、両手で『天の鍵』を掲げて、ゆっくりこちらへ近づいて来い」と、スナイパーは言う。「ヘタな動きをすると、撃つぞ」
 そしてスナイパーは、鋭く口笛を鳴らした。
 聖堂の外から口笛が聞こえたとき、中にいた人相の悪い男たちが、「来たようですぜ」と銀髪の青年に話しかけた。
【ティガー】 「何? メイユール?」
【GM】 「ああ」と、青年は答えて立ち上がった。そして片方の男に、「見張ってろ」と言い残して、もうひとりの男と聖堂の外へ出て行く。
 メイユールがスナイパーに指図された地点まで来たとき、聖堂の入口を塞いでる戸板がはずされて、人相の悪い男と、紫がかった長い銀髪の青年が出てきた。
 青年は短く呪文を唱えると、「本物の『天の鍵』のようだね」と、満足そうに言う。
【メイユール】 「ファンリーは?」
【GM】 「中だ」と、人相の悪い男が答える。「あと、変な男も一緒にいる」
【ティガー】 『変』っていわれたぁ(笑)。
【メイユール】 まあ、いいや。「ファンリーを返してよ」
【GM】 青年は人相の悪い男に目配せした。男はうなずいて、聖堂の中に「おーい、娘を連れて来い!」と怒鳴った。
 見張りについてた男が、ティガーからファンリーを引き剥がす。
【ティガー】 「どこに連れて行くん?」

人質奪還の事

【GM】 「『天の鍵』が来たらしいから、とりあえず、外へ連れて行くんだよ」
 メイユールが外でしばらく待ってると、ガラの悪い男がファンリーを連れて出てきた。そして、キミのほうに近づいて来る。同時に人相の悪い男も近づいて来て、「『天の鍵』を渡しな」と言うよ。
【メイユール】 じゃ、『天の鍵』を渡して、ファンリーを受け取る。
「ファンリー、変な男って誰?」
【GM】 「ティガーです」
【メイユール】 やっぱりか(笑)。
「ティガーも返してよ。どうせ、殺したって何のメリットもないやろ?」
【GM】 「まあな。あんなの殺しても、しょうがないな」
【ティガー】 なんか、ひどい言われようやな(笑)。
【GM】 「とりあえず、シルヴィアのところに戻りたまえ」と、銀髪の青年が言った。
「そしたら、ティガーを連れ出してこよう」
【メイユール】 えー? 今すぐ返してよ。
【GM】 「別に、今すぐ殺してもいいんだよ。生かしておいても、メリットはないし」
【メイユール】 じゃあ、言われたとおりに、ファンリーを連れてシルヴィアのとこに戻る。
【シルヴィア】 いちおう、使い魔のフクロウの目を通して場を見てるけど、男たちに不穏な動きはない?
【GM】 とくにない。メイユールと交渉していた3人の男は、聖堂の中に消えた。スナイパーは、まだキミたちを狙ってる。
 聖堂の中のティガーは、戻ってきた男に足の縄を解かれて、立たされた。で、聖堂の外へ連れ出される。「このまままっすぐ歩いて行けば、仲間のところに戻れるぞ」やって。
【ティガー】 で、こけたりすんねんな(笑)。
【GM】 おまけに目が見えてないから、右に右にと曲がっていくしな。そうこうしながら、ティガーは、何とか仲間たちのもとにたどり着いた。
【メイユール】 ティガーを見て、「えらいことになってるやん」って言う。
【ティガー】 「なったみたい」
【GM】 「ファンリーとおそろい〜」とか言いそう。
【ティガー】 絶対、言う(笑)
【メイユール】 どうしよう、これ。シルヴィアに、「こんな感じになりました」ってふたりを見せる。
【シルヴィア】 「なんてこったい」って感じやな。どうしてくれようかな。
【GM】 スナイパーは「早く帰れよ」と言ってる。
【シルヴィア】 スナイパーは、まだいるんか。
【GM】 他の男たちは、聖堂の中に姿を消したけどね。
【メイユール】 このふたりをどうしよう?
【シルヴィア】 この状態で戦闘するのはつらいし、とりあえず、オレンブルクに連れて帰ろうか。ミフォア大神殿なら、この傷は治してもらえるかな。
【GM】 〈リジェネレーション〉やね? それを使えるひとはいるよ。もちろん、料金はいただくけど。

 シルヴィアとメイユールは、両目を失ったティガーとファンリーを、ミフォア大神殿に連れて帰った。
 〈リジェネレーション〉の料金は、ティガーがファンリーの分を出し、シルヴィアがティガーの分を出すことになった。

【シルヴィア】 貸すだけやから、後で返してもらうけどね。
【GM】 借金というわけやね。(シルヴィアがファンリーに貸し出せば、ややこしい話にならないのに)
【ティガー】 所持金がマイナスになってしまった。ジーネが返してくれたらな〜。1万5500フィスやで。
【メイユール】 ホンマや。わたしなんか、1万6200フィスやで。
【GM】 あ、そうそう。明日になったら、レンタル馬は返してな。
【ティガー】 返さんかったら、延滞料金を取られるんやな。

 また、同時にシルヴィアは、使い魔のフクロウに寺院跡で監視を続けさせ、逃亡しようとする4人を追わせた。
 しかし、途中で銀髪の青年の気づかれた上、散り散りになって逃げられたため、深く追跡することはあきらめた。

 明けて3月16日、開門と同時にメイユールとシルヴィアは『青い波の美し亭』に帰還し、サテラと合流して、事の次第を説明した。
 〈リジェネレーション〉をかけてもらったティガーは、眼球を再生されている間、1週間の安静が必要。神殿の診療所の個室で休むこととなった。

【ティガー】 うげー。ミフォア神殿、嫌いや〜。いつぐらいになったら、目が見えるの?
【GM】 まあ、6日ぐらい経てばほうたいも取られて、視力が戻ってるでしょう。その間、他のメンバーたちはどうして過ごしてるのかな?
【シルヴィア】 1週間、『天の鍵』に〈ロケーション〉をかけ続けるよ。(ころっ)
【GM】 すると、『天の鍵』がオレンブルクから南に向かって移動しつづけているのを、シルヴィアは感知した。
【シルヴィア】 う〜ん、逃げられてるなぁ。それにしても、何で『天の鍵』を奪ったんやろ。これを手に入れたことによって、何かごっつい悪いことができたりする?
【GM】 さあ、わかりませんねぇ。
【シルヴィア】 いちおう、魔術師ギルドで調べてみるよ。
【サテラ】 じゃあ、わたしも一緒に。
【メイユール】 わたしは別にすることないぞ。
【ティガー】 ジーネのヒゲ薬と俺のコート、聖堂の前に捨てられたままやから、拾ってきて。「ジーネのヒゲ薬」とは言わずに、「リボンがついた小ビン」って説明するけど。
【GM】 掛け布団から手をプルプルと差し出して、「頼む、持ってきてくれぇ〜」って懇願するんやな。
【ティガー】 「300フィスすんねん〜」
【メイユール】 めっちゃ必死や(笑)。OK、OK。レッドゾーンですぐに取ってくる。ついでに、寺院跡で他に何かないか調べてみるけど。どう見ても、その遺跡のものじゃないやろ、って感じのものはない?
【GM】 それじゃあ、レンジャー技能でチェックしてみよう──とくに見当たらないね。
【メイユール】 じゃあ、ティガーに言われたものだけ、持って帰ろう。「何、このビン」とか思いながら。
【ティガー】 「大事な薬やねん」──それにしても、何で髭が生えたんやろ?
【GM】 けっこう、カ○ルおじさんのような髭を生やしてるひとは多いけどね。体も妙にムキっとしてて、それでいて軽やかな足取りのひとたちが。
【ティガー】 なんや、グラランボンバーを飲んだひとは、みんな髭が生えるのか?
【GM】 わかりやすくなったね。
【メイユール】 副作用なんや!(笑)
【ティガー】 うぎゃー(笑)。
【シルヴィア】 そんなにカ○ルおじさん髭のひとって、多いの?
【GM】 けっこう、見かける。
【サテラ】 やばいな……。
【ティガー】 まあ、いいや。とりあえず、ジーネの髭はなんとかなるし。この薬って、永久脱毛?
【GM】 そう。
【ティガー】 よかったな、ジーネ。
【メイユール】 でも、ヒデヨシが……。発毛剤を全身に塗ってないんやろ? ヒデヨシって今、どうなってんの?
【GM】 もちろん、ティガーがもくろんだとおり、モヒカンになってるよ。しかも金髪。
【ティガー】 おおっ、悪そう! もともと目つきが悪いし。あー、見たかったぁ〜。
【GM】 いちおう、ヒデヨシはお見舞いに来てくれるけどね。鉢植えの菊の花を、部屋の隅に飾ってくれている。
【ティガー】 それ、葬式やんか。椿とかも飾られてそう。
【シルヴィア】 わざとやな。
【GM】 窓の外に立つ木は、1枚だけ葉が残ってたり。
【ティガー】 1枚だけ残して、全部ヒデヨシが葉っぱを落としたんや(笑)。
【GM】 夜になったら、刃物を研ぐ音とともに、「コケケ」という含み笑いが聞こえる。
 で、翌朝になると、部屋に来たティガーの世話役のミフォア神官が、悲鳴をあげるんやな。ティガーのモヒカン頭を見て。
【メイユール】 ヒデヨシとおそろいや。
【GM】 これでティガーとヒデヨシは、モヒカン師弟コンビになったわけや。
 そんな感じで1週間が過ぎるけど、いいかな?
【ティガー】【シルヴィア】【メイユール】【サテラ】 いいよ。
【GM】 それでは、3月26日になりました。魔術師ギルドで文献をあたっていたサテラとシルヴィアは、セージ技能でチェックしよう。
【シルヴィア】 僕はソーサラーを1本伸ばししてるから、セージは1レベルしかないねんな〜。(ころっ)
【GM】 セージ技能は、サテラがいちばん高いね。
【サテラ】 はい。(ころっ)
【GM】 残念ながら、前にサテラが調べた以上のことはわからなかった。わかったのは、「月へ行く船を蘇らせるために必要」ということだけやね。
 さて、メイユールたち3人が、いつものように『青い波の美し亭』で朝食をとってると、ある噂が耳に入ってきた。
「貧民街で、髭の筋肉ダルマが捕獲されたらしいぜ」
「髭で筋肉だが、女だと聞いたぞ」
「シルファス神殿に巣くってた奴だよ」
【シルヴィア】 ジーネのことか?
【GM】 「もうじき処刑されるらしいぜ」
【メイユール】 処刑!?
【サテラ】 うわあ……。

÷÷ つづく ÷÷
©2005 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2005 Jun Hayashida
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