≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第5話§

黄金の短剣を追って

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 天馬の翼亭の事 ▽ 呪いの傷痕の事 ▽ 友情の分け前の事

天馬の翼亭の事

【GM】 キミたち3人は、アンデッド・ナイトの宝物であるという、呪いのダガーの行方を追っています。
 それを遺跡から持ち去ったと思われる、赤髪の男の手がかりを探すため、まず、青髪の冒険者ディック・ジャシュアなる人物を、手分けして探している最中。
 広大なオレンブルクで、果して見つけられるかどうか。アンデッド・ナイトと約束した期日は、2月13日。
【ティガー】 今は、何日やったっけ?
【GM】 2月5日の夕方近く。あと8日やね。
 では、各自2Dを振ってください。
【ティガー】【シルヴィア】【メイユール】 (ころっ)
【シルヴィア】 1ゾロや。
【ティガー】 6ゾロ!
【GM】 いきなり!?
 午後7時、ティガーは、冒険者の店『天馬の翼亭』を訪れた。
 夕食に賑わう店のオヤジが、「ディックなら、ここに泊まってるぞ。今は2階で休んでるが」と、教えてくれた。
【シルヴィア】 ティガーにつけてる使い魔を通して、それを知ることはできる?
【GM】 もちろん。
【シルヴィア】 じゃあ、その『天馬の翼亭』に行く。
【GM】 しかし、キミはさっき1ゾロを振ってたんで、いちばん遠いところにいます。ティガーのところに到着するのは、かなり時間が経ってからやね。
【シルヴィア】 ガーン。
【GM】 さて、場面を『天馬の翼亭』に戻して、ティガーはどうするのかな?
【ティガー】 店のオヤジに、「会いたいんやけど、会っていい?」って、聞いてみる。
【GM】 「それはいいが、あんたは何者だね?」
【ティガー】 「えっと、“オムレツ好き”のティガー」
【GM】 その瞬間、酒場の喧騒が、水を打ったように静まった。
 吟遊詩人は演奏をやめ、客は食事の手を止め、給仕娘も立ち止まり、皆が皆、ティガーを注視する。
【メイユール】 西部劇や(笑)。
【GM】 「あんたが、あの有名なレギト王子か!」と、オヤジは驚く。
「なら、すぐに呼んでこよう」
【ティガー】 ひょっとして、俺が部屋に行ったほうがよかったかなぁ。
【GM】 しばらくして、呼びに行ったオヤジが戻ってきた。
 その後ろから、『青い波の美し亭』で見た青い短髪の30歳ぐらいの男性が、階段を降りてくる。
 その身体は無駄なく引き締まり、たたずまいには、一分の隙もない。
【シルヴィア】 そのひとがディックさんやな。
【GM】 そう。その筋では名の知れた、ベテラン冒険者です。
 酒場に居合わせた人々は固唾を飲み、ディック・ジャシュアと、レギト・グニク・イーニン・ハオト王子の対面を見守る。
【ティガー】 めっちゃプレッシャーや。ホンマ、大した用事とちゃうねん。
【メイユール】 ティガーだけ、キョロキョロしてるんやな(笑)。
【ティガー】 「うそぉ?!」って(笑)。
【GM】 ディックは、「キミが有名な邪神殺しの“オムレツ好き”レギト王子だね」と、握手してくる。
【ティガー】 「そうみたいだね」って、握手する。
【GM】 「で、オレに用というのは?」
【ティガー】 「えっとね〜、『青い波の美し亭』で、テレポートの石をオヤジに見せてたやん。
 あのとき後ろにいた赤髪の冒険者って、知り合い?」
【GM】 「誰だい、それは? オレはたいてい、ひとりで冒険してるよ」
【ティガー】 やっぱ、知らないかぁ。
「呪われてた奴やけど、名前も知らん?」
【GM】 このひとのほうが、先に店を出てたからね。
「いったい、何があったんだい?」と、逆に尋ねられるよ。
【ティガー】 「あのね、そいつが持ってた短剣、ちょっといるねんよ。親友と約束をしてしまったんだ」キラーン!
【GM】 「はあ」
【ティガー】 「でも、そいつ、捨てたらしいねんよ。で、短剣を探したけど、見つからないからさ〜。そいつを見つけようと思ってるんやけど、名前もわからへんねん」
【GM】 「それは、『短剣を捨てた』という場所を、探してみたのかな?」
【ティガー】 「いや、捨てた場所かどうかもわからへんねんけど、捨てたっぽい場所」
【GM】 「う〜む??」と、ディックは困ってるよ。
【ティガー】 とりあえず、飲もうや。
「みんなも飲もうよ。俺のおごりだー!」
【GM】 すると、静まっていた群衆が歓声をあげる。
 メイユールがディックを探して通りを歩いてると、ある酒場から、「レギト! レギト!」という声援が聞こえてきた。
【ティガー】 もう、できあがってしまってるで。俺、客の中に埋もれてる(笑)。
【メイユール】 その店に入って、ティガーを探す。
【GM】 「うわーっ、邪神殺しの“ドラマ好き”メイユールも来たぁ〜!」と、大騒ぎする客の真ん中に、ティガーと、青髪の冒険者がいるのを見つけた。
【メイユール】 じゃあ、一緒に飲んで盛り上がる。
【シルヴィア】 何しに行ったんや。
【GM】 シルヴィアは、使い魔を通して、一部始終を見ていた。
 急ぎ駆け足で『天馬の翼亭』にやって来た頃には、酒場の盛り上がりは最高潮に達してる。吟遊詩人も、ギュワ〜ンとリュートをかき鳴らす。
【ティガー】 すごいな。
【シルヴィア】 ティガーに詰め寄る。「もうちょっと、説明のしようがあるだろう」って。
【ティガー】 「どしたん?」って言うとく。先に宴会を始めたから怒ってるんやろ、って勘違いしとこ。
【メイユール】 「シルヴィアが遅いからやんか〜。まあ、飲もうよ」って、お酌するし。
【シルヴィア】 「もういい!」(笑)
【メイユール】 あ、キレた(笑)。
【シルヴィア】 「ディックさんと話をするから、そっちで飲んでて」
【ティガー】 じゃあ、リュート弾きと一緒に飲んでる。
【メイユール】 ティガー、一気飲みや。
【シルヴィア】 ディックさんに、「頼りない王子ですみません」と、謝っておこう。
「ああ見えても、戦闘では頼りになるんですよ」と、フォローもしておく。
【GM】 ディックは「キミも大変だね。まあ、飲みたまえ」と言い、酒をついでくれた。
【シルヴィア】 「いやー、すみません」
 で、「かくかくしかじか」と、ダガーを探してる事情を話す。
【GM】 「なるほど、事情が呑み込めたよ」と、ディックは言った。──ってか、事情を全部伝えるなら、『かくかくしかじか』のひと言ですむんやけどね(笑)。
【ティガー】 まあ、いいやん。こっちで盛り上がってるから。
【メイユール】 「飲んでないやろ〜!?」って、シルヴィアのとこにお酌に行くで(笑)。
【GM】 メイユールに酒を飲まされながら、ディックは、「そいつが捨てたという場所にないんなら、何者かが持ち去ったのかも知れないな」と言う。
【シルヴィア】 やっぱり。
「それを追う方法って、ないですかね?」
【GM】 「キミがその短剣をよく知ってれば、〈ロケーション〉で探すことも可能だろう。そうでなければ、シーフ技能で痕跡を調べて、追跡するしかないだろうね」
【メイユール】 でも、誰もシーフ技能を持ってない……。
【ティガー】 マンホールでも、ひら目で失敗したし。
【GM】 「知り合いにシーフがいるなら頼めばいいし、いなければ雇えばいいな」
【ティガー】 あっ、じゃあ、明日ファンリーに頼みに行こう!
【シルヴィア】 「アドバイスありがとうございます」と、お礼を言う。
【GM】 「じゃあ、がんばりたまえ」と言い残して、ディックは2階へあがって行った。
 酒場は、まだまだ盛り上がっている(笑)。
【ティガー】 リュートを借りて、ギュウゥ〜ンって弾いてる。バード技能持ってるし。リュート弾きとも友情が芽生えたで。
【GM】 やがて夜も更け、宴会はお開きとなった。
 静まった酒場では、オヤジや給仕娘が後片づけをし、他の客たちは2階へあがったり、テーブルに突っ伏して眠ってたりする。
【シルヴィア】 はい、おしまい、おしまい。ふたりとも、ちょっとそこに座りなさい。
【メイユール】 説教や。ふてくされて座ってよう(笑)。
【ティガー】 酔っぱらったから、でろ〜んとして座ってる。口から魂が半分抜けてるから、聞こえてないと思うよ(笑)。
【GM】 そんなこんなで夜が明けて、2月6日の朝になりました。
【ティガー】 「うわー、所持金、残り10フィスしかない」って、大騒ぎしてる。
【メイユール】 ジーネに1万以上貸してるやん。
【ティガー】 うん、あれが返ってきたら、いくらでもオムレツが食えるねんけどな。
【シルヴィア】 それじゃあ、ミフォア神殿に行って、ファンリーを呼んでこようか。
【ティガー】 おしゃれして行く。髪の毛もツンツンにするで。
【GM】 では、ミフォア大神殿にやって来た。
 手近な神官に、「ファンリーに会いたい」と頼んでしばらく待っていると、神殿の奥から、ファンリー助祭がやって来た。
【シルヴィア】 「久しぶり〜。元気になったよ」
【GM】 「それは何よりです」
【メイユール】 そっか。シルヴィアは風邪をひいた後、盲腸になってたもんな。
【シルヴィア】 「今日は、折入ってキミに頼みがあるんだけど」
【GM】 「何でしょう?」
【シルヴィア】 「ちょっと、ドブさらいを」
【ティガー】 最悪や!(笑)
【GM】 ファンリーは、「わかりました」と言って奥に引っ込み、しばらくして、長靴を履いてゴム手袋をはめ、シャベルを担いで出てきた。
【メイユール】 完璧や。やる気満々やな。
【ティガー】 そういうドブさらいじゃないんやけど──まあ、いいか。長靴のほうが濡れんですむし(笑)。
【メイユール】 じゃあ、現場に行こう。マンホールのところに行く。
【シルヴィア】 ファンリーのシャベルに〈ライト〉をかけて、下水道の捜索を開始しよう。
 ファンリーに事情を話して、調べてもらう。
「もし、ダガーを見つけても、呪いがかかってるらしいから、うかつに触らないように」
【GM】 「わかりました」(ころっ)
 ファンリーは、小さな4足歩行の生き物が何かを引きずって、街の中心に向かった痕跡を見つけた。
【メイユール】 じゃあ、それを追跡してみよう。

 4人が足跡を追跡して行くと、それは、下水道に注ぐ小さな排水口の中に入っていた。

【シルヴィア】 僕らじゃ入れないか。
【ティガー】 フクロウとかは、入られへん?
【GM】 入れないことはないけど、身動きはとれないやろね。
【メイユール】 じゃあ、霊食(たまぐ)いネズミに行ってもらう。
【GM】 「行くんスか〜? きー」
【メイユール】 「行け」
【GM】 「命令とかそーゆーのってさ〜、何か違うんじゃない〜?」
【ティガー】 すごいネズミやな(笑)。
【メイユール】 さすが精霊や(笑)。
「帰ってきたら、名前をつけてあげるから」

 霊食(たまぐ)いネズミが排水口をたどって行くと、どうやら、地上の公園につながっているらしいことがわかった。

【ティガー】 で、こいつの名前は?
【メイユール】 『たま』!
【GM】 ネズミなんだか、猫なんだか、よくわからん名前やな(笑)。

 4人はマンホールから外に出て、公園に向かった。

呪いの傷痕の事

【メイユール】 また、ファンリーに捜索してもらおう。
【GM】 (ころっ)ファンリーは、茂みの中に、小さな血痕を見つけました。小動物が争った形跡で、毛なども散乱している。
【ティガー】 ダガーは?
【GM】 見つからない。
【メイユール】 ここで何があったんやろ?
【GM】 ヒデヨシはそれを見て、「こけぇ」とうなずいてるけどね。
【ティガー】 「ヒデヨシ、どうしたん?」
【GM】 「こけっ、こけ〜」
【メイユール】 わからん〜。ティガー、通訳してよ。
【ティガー】 「腹減った」とは言ってないと思うけど(笑)。
 たぶん、ダガーを運んで来た奴が不幸になって、ここで襲われたんとちゃう?
【メイユール】 なるほど。
【シルヴィア】 あり得ん話ではないな。
 その毛を、セージ技能で調べてみる。(ころっ)
【GM】 どうやら、動物のネズミのようやね。
【メイユール】 猫に襲われたんや。
【ティガー】 じゃあ、次にダガーを持って行ったんは、猫??
【シルヴィア】 この公園って、誰かいない?
【GM】 真冬の午前中なんで、今は人影は見当たらないね。
 でも、隅っこのほうに浮浪者がいます。どこかで拾ってきた薄汚い毛布を、何重にもまとってる。
【シルヴィア】 浮浪者って、ずっとここに住んでるんかな。ちょっと話を聞いてみよう。
「最近、あの茂みで猫が騒いでなかった?」
【GM】 「ああ、6日ほど前、真夜中にうるさく騒がれたことがあったなぁ」
【シルヴィア】 「その猫って、ダガーを持ってなかった?」
【GM】 「猫はどうだったか知らねえけど、あんまりうるさいんで、短気なニコラスが追っ払いに行ったんだ。
 で、戻ってくると、金色のダガーを持ってて、『高く売れそうなのを見つけた』って、喜んでたっけ」
【メイユール】 それやー!
【シルヴィア】 「そのひとは、どうしてます?」
【GM】 「さあな。次の朝に出かけて、ここに戻ってないぜ。うまく売り飛ばして、今頃いい生活してんじゃねえのか? ちくしょう」
【メイユール】 というか、どこかで不幸になってるんとちゃうの。
【ティガー】 そのニコラスって、酒場の裏とかでゴミ箱漁ったりしてた?
【GM】 してたやろね。
【ティガー】 じゃあ、その酒場に行って、「5日ほど前に、不幸になった浮浪者はいませんか?」って、聞いてみる。
「名前はニコラスで、よく、この店のゴミ箱を漁ってた奴やけど」
【GM】 (ころっ)じゃあ、店のオヤジが答えてくれます。
「ああ、あいつなら、死んだらしいぞ。
 なんでも、オーシュ神殿のそばの通りを道を歩いてたら、民家の2階から植木鉢が落ちてきて、頭に当たって即死だったらしい」
【ティガー】 それ、いつの話?
【GM】 「2月1日の朝だったかな」
【シルヴィア】 2月1日というと、5日前の朝か。時間はぴったりやな。
【メイユール】 ダガーを売り飛ばしに行く途中やったんやろ。
【ティガー】 「そいつ、何か持ってなかった?」
【GM】 「知らないな。オレが直接目にしたわけじゃないんでね」
【シルヴィア】 その死体を葬ったんは、誰やろ。
【メイユール】 神殿のそばやから、神官とか。
【GM】 供養したのは、たしかにオーシュ神殿やけどね。その前に、オーシュ神殿横の衛兵の詰所から衛兵が急行して、現場検証を行ったらしいよ。
【シルヴィア】 じゃあ、その衛兵の詰所に行って、話を聞かせてもらおう。
【GM】 では、キミたちは、オーシュ神殿横の詰所にやって来ました。
「むっ、おまえたちか! 何の用であるか?」と、衛兵隊長が迎えてくれる。
【ティガー】【メイユール】 あーッ!!
【シルヴィア】 久しぶりやな(笑)。
【ティガー】 えーっと、「2月1日の朝に、植木鉢が頭に当たって死んだ、ニコラスって奴のことを聞きたいんやけど」って、言う。
「ニコラスの所持品に、変な金色の短剣が混ざってなかった?」
【GM】 すると衛兵Bが、ファイルをパラパラと調べて、「そのような物は、含まれてなかったようであります」と、答えた。
【ティガー】 ないんかぁ……。
 ニコラスが死んだときって、隊長たちが、いちばんに駆けつけたわけじゃないんやな?
【GM】 通行人の知らせを受けて出動したから、いちばん乗りじゃないよね。現場に到着したときには、すでにヤジ馬が集まってたらしいし。
【シルヴィア】 じゃあ、ヤジ馬の内の誰かが、持って行ったんやな。
「ニコラスの事故以降、大きな事故か事件に巻き込まれたひとって、いない?」
【GM】 再び、衛兵Bがファイルをめくる。
「いちおう、1件あるであります。
 2月2日の未明、ブレア川沿いのゆりのき通りに住むノルマ氏の家が、火事になっているであります」
【シルヴィア】 そのノルマさんって、まだ生きてる?
【GM】 家は全焼したけど、ノルマ一家は無事らしい。
 現在、染屋広場の前のノプス神殿で、保護を受けているそうです。
【シルヴィア】 じゃあ、ノプス神殿に行ってみるか。
【メイユール】 なんか、あちこち移動して忙しいなぁ(笑)。
【GM】 すでに日は高く昇って、昼になってしまってるね。
【ティガー】 腹減った〜。ぐぅ。
【GM】 ──とかなんとか言いながら、キミたちは幸運神ノプスの神殿にやって来ました。
 ノルマ一家7人は、大黒柱のお父さんを先頭に、施しのスープの配給の列に並んでる。服は古着らしく、みすぼらしい。
【ティガー】 俺もスープの列に並ぶ〜。
【シルヴィア】 ノルマさんに、「あなた、最近、家が燃えましたね?」と、尋ねる。
【メイユール】 ヤなこと聞くなぁ(笑)。
【シルヴィア】 「その前日あたりに、誰か、金色の短剣を拾いませんでしたか?」
【GM】 じゃあ、10歳ぐらいの少年が、おずおずと手を挙げた。
【シルヴィア】 そのせいで家が燃えた、ってわかったら、すごいトラウマになるやろね(笑)。
 とりあえず、「キミ、その短剣はどこにある?」と、聞いてみるよ。
【GM】 「家に置いたままになってるよ」
【ティガー】 えっ? じゃあ、燃えちゃった?
【メイユール】 焼け跡に行って、調べてみよう。
【シルヴィア】 ノルマさんに、「いろいろ大変でしょうが、くじけないでください」と言って、70フィスを渡す。
「家族で力を合わせてがんばってください」
【GM】 一家は「ありがとうございます」と、シルヴィアに深々と頭を下げて、涙を流す。
 ノプス神殿に居合わせた人々が、歓声をあげて拍手した。
【ティガー】 う〜ん。シルヴィアがプリーストになったほうが、いいと思うな。
【メイユール】 ホンマや〜。そっちのほうが、絶対いいって。
【シルヴィア】 「じゃ!」と、手を振って、火事の現場に行ってみよう。
【メイユール】 青いローブをひるがえして、さわやかに立ち去るんやな。
【GM】 では、場面は変わって、ブレア川沿いのゆりのき通り。そこは、住宅が密接して並ぶ居住区です。
 ノルマ家の焼け跡に来てみると、不思議なことに、ノルマさんの家だけがきれいに焼け落ちてる。密接した隣家には、焦げ跡すらありません。
【ティガー】 すごいな、あのダガー(笑)。
 じゃあ、ファンリーに捜索してもらう。
【GM】 (ころっ)しかし、ダガーは見つからない。
 かわりに、カラスの羽を見つけて、「これは何でしょう?」と、ファンリーは首を傾げている。
【ティガー】 カラス??
【メイユール】 焼けてないってことは、火事の後に、そこに落ちたんやろけど……まさか!
【ティガー】 カラスが持って行ってしまった!?
【シルヴィア】 光り物やからな。
【ティガー】 うわ〜……どこかに、不幸なカラスはおらへんかな〜。カラスの死体が落ちてるとことか。
【メイユール】 どうやって探すのよ、そんなの(笑)。
【ティガー】 GM、今は何時ぐらい?
【GM】 ここまでの探索で、午後4時を過ぎてます。
【ティガー】 どこかでカラスがギャーギャー鳴いてない?
【GM】 朱に染まった南の空を、カラスの群れが飛んでるよ。シルヴィアのフクロウが、「カラスってイヤですねぇ」とか言ってる。
【ティガー】 カラスって、拾った光り物を巣に持って帰るやんな。そいつらを追っかけてみたら、手がかりがあるかも知れへん。
【シルヴィア】 じゃあ、使い魔のフクロウを、そこへ飛ばす。
【GM】 「げっ」
【メイユール】 がんばれ〜。
【GM】 フクロウは、しぶしぶカラスの群れに近づいた。
 すると、カラスたちが「何だ、おまえは!」と、威嚇してきたよ。
【シルヴィア】 「キミたちに危害を加える気はない。ちょっと探し物をしてるんだ」と、言う。
「キミたちの中で、最近、急に不幸になった者はいないか?」
【GM】 「いないことはない」
【メイユール】 鳥の会話や(笑)。
【シルヴィア】 「それは、北のほうの焼け跡から、金色のダガーを持ち帰った奴?」
【GM】 「ああ。たしかに、カルカルはそういう物を拾っていた」
【ティガー】 カルカルって、その後どうなった?
【GM】 「カルカルは殺された!」と、カラスは怒ってる。
「人間の子供が放ったスリングで、カルカルは撃ち落とされてしまったんだ」
【ティガー】 クリティカルしたんか(笑)。
 カルカルが持ってたダガーは?
【GM】 「カルカルと一緒に落ちていった」
【シルヴィア】 どの辺に落ちたん?
【GM】 カラスによると、高級ホテルが立ち並ぶブレア川のほとり、北区と中央区を結ぶ橋の近くに落下したそうな。
【シルヴィア】 とりあえず、カラスには「あんまり、何でもかんでも拾わんほうがいいぞ」と、忠告しておこう。
【GM】 「何を言う。光る物を目にすればとりあえず拾うのが、カラスのアイデンティティというものだろう」
【シルヴィア】 「しかし、中にはあのダガーのように呪われた物もあるから、気をつけたほうがいいぞ」
【GM】 「なに、あれは呪われていたのか。さては、我々を陥れるための罠だったんだな」と、カラスは憤慨する。
「ありがとう。これからは、用心して拾うことにするよ」
【シルヴィア】 それじゃあ、カルカルの冥福を祈りつつ、使い魔を呼び戻す。
【ティガー】 よし、ブレア川の橋に行ってみよう。
【メイユール】 また、何か死んでるかな。
【GM】 キミたちが橋のたもとに来ると、橋上に、黒山の人だかりができているのが見えます。
 群衆は、川を覗き込んで、大騒ぎをしてるよ。
「大変だぁー! 誰か、溺れてるぞ!」
【ティガー】 まだ、死ぬ前やな(笑)。
【シルヴィア】 カルカルを撃ち落とした子供かな。
【メイユール】 ヤジ馬をかき分けて、川を覗いてみる。
【GM】 するとキミたちは、紫色の髪をした16歳ぐらいの女性が、川の中央で、浮いたり沈んだりしてるのを目にしました。
【ティガー】 ……ひょっとして、マッチョな体?
【GM】 体は水しぶきに隠れて見えません。
【ティガー】 ──ってか、その顔、ジーネっぽい?
【GM】 まあ、見ればすぐにわかるな。溺れてるのは、ジーネだよ。
 群衆は、「おい、可憐な美少女が溺れているぞ!」と、慌てている。
【ティガー】 違うねん! みんな、だまされたらアカンでー!(笑)

友情の分け前の事

【メイユール】 ジーネって、泳がれへんかったんか。マッチョになったせい?
【GM】 いや、メイユールは精霊使いだから、すぐに気づく。
 狂ったウンディーネが2体、ジーネにまとわりついて、溺れさせようとしてるんよ。
【ティガー】 そっか、あいつがダガーを拾ったか。ジーネの手に、ダガーは握られてる?
【GM】 握りしめられてるね。
【ティガー】 やっぱり(笑)。
「そのダガー、落としたらアカンで〜!」って言う。
【GM】 その声を聞いたジーネは、群衆の中からキミたちを見つけ出し、「助けてー!」と叫ぶ。
【メイユール】 うわ〜、目が合ってしまった〜。
【ティガー】 やばい、やばい。
【シルヴィア】 ジーネに、「その短剣をこっちに投げろ」と言う。
【メイユール】 GM、橋から水面まで、何メートルぐらい?
【GM】 約6メートルってとこやね。
【メイユール】 ちょっと難しくない? 失敗したら、川底を探すはめになってしまうよ。
【ティガー】 俺、おしゃれして来たから、あんまり濡れたくない。
【メイユール】 とりあえず、ジーネに〈ウォーター・ブリージング〉をかけて、エラ呼吸させる。
 (ころっ)成功。これで溺れ死ぬ心配はなくなったから、ゆっくり対策を練ろう。
【ティガー】 ジーネに、「水中呼吸ができるようになったから、川底を歩いて、岸に上がってこい」って言う。
【GM】 そうしたいけど、まとわりつくウンディーネが邪魔やね。
【シルヴィア】 なるほど。
 じゃあ、〈エネルギー・ボルト〉で、ウンディーネたちを退治してやろう。
【ティガー】 ファンリーも〈フォース〉を飛ばすよ。

 狂ったウンディーネは、わずか2ラウンドで駆逐された。

【シルヴィア】 誰か、ロープを持ってへん?
【メイユール】 20メートルのを持ってる。
【シルヴィア】 そいつでジーネを引き上げてやろう。
【ティガー】 あれを引き上げるのは、大変そうやな。めっちゃ重いんちゃうん。
【メイユール】 逆にこっちが川に引きずり落とされそうや。
 ロープを下ろして、ジーネに「これにそのダガーをくくりつけて」って、言おう。自分は川底を歩けばいいんやし。
【GM】 ロープが下りてきた時点で、ジーネは、見事なロープ・ワークでそれを体に巻きつけ、キミたちを見上げてる。
【ティガー】 あーッ!
【メイユール】 やめてぇーッ!
【シルヴィア】 まあ、4人がかりでなら、引き上げられへんこともないんちゃう? 僕の筋力は21やし、ティガーだって筋力20あるし。
 それでもムリなら、ヤジ馬たちにも手伝ってもらおう。
【GM】 では、大勢の人々が力を合わせ、ジーネを川から救出した。
 1977年にニュージーランド沖で瑞洋丸が引き上げた謎の巨大生物の死骸さながらにして、水がしたたる筋肉ダルマが、吊り上げられる。
【ティガー】 上がってきたのを見て、ヤジ馬たち、びっくりするんちゃう?
【メイユール】 「ぎぃやぁあ〜ッ!?」って悲鳴をあげて、クモの子を散らすように逃げるやろ?(笑)
【GM】 うん、あっという間に誰もいなくなった。
 2月の夕暮れ、人影が失せた橋の上を乾いた冷たい風が駆け抜け、遠くから、カラスの鳴き声が聞こえてくる。
【ティガー】 あ、カルカルの友達が鳴いてる……(笑)。
【メイユール】 すごい寂しい情景や(笑)。
【シルヴィア】 で、ジーネは、ちゃんとダガーを持って上がってきてる?
【GM】 持ってるよ。
【ティガー】 「それを渡して」って言う。
「それを持ってたら、不幸になるよ」
【GM】 「はっ? なんでそんなウソを言うの?」
【シルヴィア】 さっき、不幸になってたやんか。
【ティガー】 上から植木鉢が落ちてきたら、納得するかな。
【GM】 (ころっ)すると、ジーネの脳天に、カラスのフンが落ちてきた。
【ティガー】 「ほらな。そのダガー、盗品なんやで。持ち主に返さんと、子供が殺されるねん」
【シルヴィア】 「持ち主に返せば、子供は助かるし、何かいい物がもらえるらしいよ」
【GM】 「わかった」と、ジーネはにっこり笑った。
「報酬は山分けね」
【メイユール】 なんでよぉ〜!?
【GM】 「だって、これを見つけたのは私やん。私のおかげで、あなたたちはこのダガーを手に入れられるんやし」と、ジーネは言う。
「それか、私からこのダガーを買う?」
【ティガー】 よりによって、こいつに拾われてしまうとは(笑)。
【GM】 で、黄金のダガーを手渡してもらえるけど、誰が受け取るの?
【メイユール】 呪われそうやし、受けとらへん。
【シルヴィア】 報酬の分け前をもらうつもりみたいやし、ジーネに持って来させよう。
【GM】 いや、ジーネは、魔術師ギルドの薬学研究所に戻らないとダメらしい。まだ、ピーター博士の検査が終わってないからね。
【シルヴィア】 そうなんか。
【メイユール】 じゃあ、自分らで持って行くしかないか。
【ティガー】 手に持ってたら呪われそうやから、ロープに結んで引きずってみよか。
【GM】 では、ダガーを渡したジーネは、「がしゅいん、がしゅいん」と去っていった。
「山分けねッ」と、念を押してから。
【ティガー】 うわ〜。
【メイユール】 報酬は隠しとこう。
【シルヴィア】 山分けしたふりをしとけばええねん。
【ティガー】 んじゃ、アンデッド・ナイトの遺跡へ行こう。
【GM】 もう夕方だけど、今から出発するの?
【メイユール】 明日の朝、出発したほうがいいかな。
【ティガー】 このダガーを持って、一泊するの? 宿屋が燃えるかも。
【シルヴィア】 とりあえず、魔術師ギルドに預かってもらえば? あそこなら、呪われたアイテムの取り扱いにも慣れてるやろし、ひと晩だけダガーを預かってもらえばええやん。

 3人は呪いのダガーを魔術師ギルドに預け、オレンブルクで1泊した。
 そして翌朝、ファンリーと別れて、アンデッド・ナイトの遺跡へ出発した。
 その日の午前中、突然発生した地割れに、3人とレッドゾーンが飲み込まれ、ダメージを受けてしまった。
 さらに、その午後──。

【GM】 じゃあ、ダガーを持ってるひと、また1Dを振ってください。
【ティガー】 あいよ〜。(ころっ)1。
【GM】 すると、突然現れた5つの小柄な人影が、「待てぇーい!」と、行く手を阻みました。
【ティガー】 何それ、人間?
【GM】 いや、人間じゃないね。
【ティガー】 でも、「待てぇーい」ってしゃべって──もしかして、ゴブリン?
【GM】 そう。色とりどりのハードレザーに身を包んだ、5匹のゴブリンやね。
【メイユール】 出たぁ〜!!(笑)
【ティガー】 やった〜、見られた! これってさ、おもろいだけちゃうん。別に不幸ちゃうで。幸福(笑)。
【シルヴィア】 幸福なんか(笑)。
【ティガー】 あっ、カメラ買ってくるの忘れた!
【GM】 「キ!」「グンジョウ!」「チャイロ!」「ハダイロ!」「ムラサキ!」
「5人そろって、ゴブレンジャー!!」
【ティガー】 なに、その色!(笑) 気持ち悪ぅ!
【メイユール】 中間色ばっかりや(笑)。
【GM】 さらに右手から、「オレたちもいるぞっ」という声がする。
「ゴブリロンデニ!」「ゴブリウィス!」「ゴブリゴルド!」「ゴブリダース!」「ミススパニア!」
「ゴブリフィーバーJ!!」ばこ〜ん!
【シルヴィア】 全部で10匹か……。
【GM】 うんにゃ。さらに左手から、3匹のゴブリンが現れます。
「ゴブシャーク!」「ゴブファルコン!」「ゴブチーター!」
「太陽戦隊サンゴブリン!!」どど〜ん!
【メイユール】 あーっ! シャークに手を振ろう。「お〜い」
【GM】 ゴブシャークは、「あのときのようには、いかねえぞ!」と、言ってる。
【ティガー】 フィギュア並べてみたら、めっちゃおるやん。
【ティガー】【メイユール】 すご〜い!(笑)
【GM】 そりゃあ、3大ヒーロー勢ぞろいやからね。
 居間でテレビを見てる子供ゴブリンが、台所で夕飯のしたくをしてる母ゴブリンに、「お母さん、見てん見てん。ゴブレンジャーと、ゴブリフィーバーJと、サンゴブリンや! 見てんって!」と、大喜びで言い、母ゴブリンが「なにね、もう」と、ぼやく。
【シルヴィア】 こっちだって、赤、青、黒の鎧なんやから、戦隊と言えんことはない。
【ティガー】 黄色が欲しいとこやな。

 というわけで、3人の冒険者と、3大ヒーローの戦いが始まった。
 が、いくら数をそろえたところで、ゴブリンはゴブリン。
 ティガーに[なぎ払い]され、メイユールに〈ストーン・ブラスト〉をぶつけられ、シルヴィアに〈ファイア・ボール〉をかけられては、ひとたまりもない。
 あっという間に数を減らされたゴブリンたちは──。

【GM】 こうなったら、残った5匹で、最後の大技をかけてやる。
「くらえ、オーロラ・プラズマ返し〜!」
【ティガー】 こっちのほうが早い。
 ハダイロとムラサキ、ゴブチーターに[なぎ払い]。(ころっ)ハダに14点、ムラサキに12点、チーターに12点のダメージ。
【GM】 あんぎゃ〜!
【メイユール】 テレビの前で泣き叫べ、子供たち!
【ティガー】 もう、放送中断されてるかもよ。「しばらくお待ちください」って(笑)。
【メイユール】 笑顔のゴブリンが、花畑を駆けてる映像になってるわ(笑)。

 残った2匹は降伏し、ゴブリン3大ヒーローは、敗北した。

 冒険者たちは、アンデッド・ナイトに黄金の短剣を返し、人質の少年を取り戻した。
 そして、アンデッド・ナイトとの約束どおり遺跡を探索させてもらったが、見つけた宝箱は、いずれも荒らされた後だった。
 シノイ村で残りの報酬5940フィスを受け取った3人は、オレンブルクに帰還した。

【シルヴィア】 ひとり1980フィスか。
【ティガー】 端数の80フィスは、ファンリーにあげよっかな。
【メイユール】 ジーネに分け前を与えんとアカンのとちゃうん。
【ティガー】 そっか。じゃあ、ファンリーには、高級レストランでオムレツをおごってあげる。
【シルヴィア】 じゃあ、みんな所持金の端数を出し合って、これを『山分けした報酬』として、ジーネに渡そう。ダガー代ということで、僕は100フィス出す。
【ティガー】 俺は80フィス。
【メイユール】 わたしは50フィス……なんで、こんなことせなアカンの〜!?
【シルヴィア】 えらいこと約束させられたよな(笑)。

 ──などと言いつつ、合計で230フィスをジーネにあげた、気のいい3人であった。

÷÷ つづく ÷÷
©2005 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2005 Jun Hayashida
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