≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第6話§

サテラの古文書

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 訪ねてきた魔女の事 ▽ 森の小人たちの事 ▽ 迷宮の探索の事

訪ねてきた魔女の事

【GM】 さて、現在は2月12日。まだまだ寒い冬の日の夕暮れです。
 キミたちは、いつものように、『青い波の美し亭』の酒場にたむろしております。
【ティガー】 オムレツを食べてる。あ、そうそう。今日から、右目に眼帯してるから。
【GM】 ……その眼帯は、カルファン騎士の“マサムネ”が忘れていったやつか?
【ティガー】 そうそう(笑)。
【メイユール】 わたしは旅行のパンフレットを見てる。「蟹ツアーか!」
【ティガー】 「えっ、カニ? 行こう、行こう」って、パンフレットをのぞく。
「眼帯、見にくぅ〜」
【シルヴィア】 じゃあ、眼帯なんかいらんやん(笑)。
【ティガー】 でも、カッコいいかな、って思い込んでるから。
【メイユール】 思い込みや。
【GM】 そんな酒場に、ひとりの若い女性が入ってきた。身なりからすると、冒険者、それも魔術師のようやね。女性は誰かを探しているらしく、酒場を見回す。
 んじゃ、サテラ。酒場のあっちのテーブルに、聞いたとおりの様相の3人組がいますよ。足もとには、7色のニワトリもいるし。
【サテラ】 そこへ行って、ティガーさんに声をかけます。
【ティガー】 「ほら! 俺、モテるやん!」って、みんなに言う。
【メイユール】 「えー!? うそ〜。マジ?」って、女のひとの顔を見よう。
【ティガー】 で、なに?
【サテラ】 とりあえず、呆れつつ、アンドリューさんからいただいた紹介状を渡します。
【ティガー】 アンドリュー? ああ、“アンディー”か。じゃあ、見てみる。
【メイユール】 手紙にプリクラ貼ってあるで。
【ティガー】 『アンディ〜より♥』何かな〜?
【GM】 紹介状には、その女性がサテラという名前の魔術師で、将来、カルファン王国再興のときには、助けになってくれそうな有能な人物である、と記されている。
 何やら、力を貸してやって欲しい、というようなことも書かれてるよ。

 サテラは、3人の仲間とともに冒険をする、旅人だった。
 そこへ、カルファン王国再興のための人材を探して旅していた、元カルファン騎士のアンドリューが加わった。
 5人パーティとなった彼らは、ある日、人里を襲い12歳の少年を連れ去ったゴブリンたちの集落へ行き、少年を保護すると共に妖魔たちを掃討する、という仕事を請け負った。
 彼らにとってゴブリンなど恐れる敵ではなく、簡単に追い詰めることができた。
 しかし、そこへひとりの人間が現れ、冒険者たちの前に立ちはだかった。少し紫がかった銀の長髪の若い男で、魔術師だった。
 サテラたちは、青年の魔法に苦しめながらも、何とか、妖魔の群れと魔術師を撃退することができた。倒された魔術師の体は、土となって跡形もなく崩れ去った……。
 仲間たちが、妖魔の里にため込まれていた貴金属や、青年が持っていた宝石に心奪われているとき、サテラは、魔術師の古文書に興味をひかれた。
 その古びた羊皮紙には、どこかの地図と、古代文字が記されていた。古文書の損傷は激しく、古代文字は『月へ行った男の──』という一文しか、判読することができなかった。
 サテラはこの古文書を調べたいと思い、大きな魔術師ギルドがある、王都オレンブルクへ行くことを決めた。仲間たちはミドル地方へ行くつもりだったので、別れることになった。
 アンドリューは、「オレンブルクに行くのなら、『青い波の美し亭』のティガーという若者を訪ねるといい。きっと、力を貸してもらえるだろう」と、紹介状をサテラに渡した。

【GM】 ──というわけで、サテラはキミたちを訪ねて、ここに来たんやね。
【ティガー】 OK。アンディーやし。
【シルヴィア】 来る者拒まず。
【サテラ】 じゃあ、よろしくお願いします。
【シルヴィア】 で、その古文書は、サテラが持ってるの?
【サテラ】 はい、持ってます。
【シルヴィア】 場所を移して、その古文書を見せてもらおうかな。
【ティガー】 ひとがいないところで? じゃあ、2階の泊まってる部屋に行こう。
【GM】 キミたちが宿泊しているのは4人部屋で、今はキミたち3人が使っています。
 部屋に入ると、洗濯物が干されてたりする。
【ティガー】 慌ててかたづける。
「見たらアカンで、今の」
【メイユール】 上からシーツをかけとこう。
【サテラ】 なんか、王子様のイメージが……。
【メイユール】 アンディーに、美化された話を聞かされてたんやな。かわいそうに。
【シルヴィア】 じゃあ、さっそく古文書を見せてくれるかな?
【サテラ】 あ、はい。
【GM】 古文書には、さっきも説明したとおり、どこかを描いた地図と、『月へ行った男の──』という古代文字が書かれている。
 ちなみに、地図に描かれた森の真ん中には、バツ印が記されてるよ。古代文字は、メイユール以外のみんなが読めるね。
【ティガー】 『月へ行った男』??
【メイユール】 「なに、これ? 地図があるし、スキー場のパンフかな」って、思ってる。
【ティガー】 なんか、月に行けるって。
【メイユール】 おー!
【シルヴィア】 その地図に関して、心当たりはないかな?
【GM】 なら、セージ技能でチェックしてみようか──誰も成功しなかったね。キミたちには、その地図がどこを描いているものか、判別がつかなかった。
【ティガー】 「知ってるけど、今は言えない」って言うとく。魔術師ギルドで鑑定してもらうか。
【シルヴィア】 それしかないな。
【GM】 現在は夜なので、明日の朝、持って行くことになるね。
 では、翌朝になったよ。
【ティガー】 じゃあ、オレンブルク案内をしながら、魔術師ギルドへ行く。
【メイユール】 「ここがマッチョが溺れてた“筋肉橋”やで。怖かってん」(笑)

 冒険者たちは、魔術師ギルドで地図に描かれた場所を調べてもらった。
 それは、オレンブルク王国北部を描いたもので、バツ印がつけられているのは、王都オレンブルクから北東へ2週間ほど行ったところにある森ということだった。

【ティガー】 その森に何か噂とかはないん?
【GM】 まあ、モンスターは出るみたいやね。その森の南端は、街道の近くまで張り出しています。街道沿いには、いくつか砦が築かれていて、森のモンスターが旅人を襲ったりしないように、警備されているらしい。
 だけど、森の奥──北ね──に行けば、もう、そこは人外の魔境なので、何が起こるかわかったものではないそうな。
【メイユール】 それは怖い。
【GM】 だから、ひとがその森の奥深くに近寄ることは、ほとんどない。ということは、まだ荒らされていない遺跡が、そこに眠っているのかも知れない、ってことやね。

 冒険者たちは、地図に記された場所を探索してみるため、この日は街で買い物などをして旅の準備を整え、翌2月13日の朝に出発することにした。

【ティガー】 ファンリーのとこに遊びに行こうっと。鍵開けを教えてもらうねん。
【シルヴィア】 買い物は?
【ティガー】 保存食を60個買ったから、もう終わり。寝袋も買ったし。
【メイユール】 わたしも買い物終わったから、レッドゾーンでその辺を走っとく。
【シルヴィア】 僕は買い物が終わったら、宿屋に戻って古文書を調べとくよ。とくに何かが知りたいわけじゃなくて、眺めてるだけ。
【サテラ】 わたしもそうします。
【GM】 他にとくに何もすることがないなら、翌日にするよ。
 2月13日の朝です。空はカラっと晴れわたっております。冬なので寒いですが、気持ちのいい朝です。
【シルヴィア】 ジーネに言づけしてから、出かけようか。
【ティガー】 じゃあ、シルファス神殿に行く〜。
【GM】 キミたち4人がシルファス神殿をめざして街の通りを歩いていると、劇場の前でしょんぼりしている前髪王子がいた。
【ティガー】 どないしたん?
【GM】 じつは、ジュノの新作劇のティガー役オーディションに出るために、わざわざメカリアまで行って黒いプレートメイルを買ってきたらしい。なのに、帰ってきてみると、オーディションはとっくに終わっていたそうな。
【メイユール】 オーディションを受ける以前の問題やん(笑)。
【ティガー】 じゃあ、黒い鎧やし、「おそろい!」ってなぐさめてあげる。
【GM】 前髪王子は、一瞬うれしそうに表情をほころばせたけど、ティガーの眼帯を見て、ショックを受けた。
「オプションが増えてるぅ!」
【メイユール】 かわいそ〜(笑)。
【シルヴィア】 そっとしといてあげよう。さっさと神殿に行く。
【GM】 キミたちは、頭を抱える前髪王子を後に残して、シルファス神殿にやって来た。手近な神官に事情を話すと、すぐにジーネを連れて来てくれた。
【ティガー】 ジーネに、「4週間ぐらい、留守にしま〜す」とだけ言う。
【GM】 「えっ、なになに? 何か、仕事があるの? 報酬は?」
【ティガー】 「いや、儲け話じゃないから、報酬はないよ〜。小さい子に、森の怪物退治を依頼されてん」って、ウソを言うとく。
【メイユール】 善意の仕事やから(笑)。
【GM】 「ちゃんと、金になる仕事をしなさいよッ」と、ジーネは怒ってるよ。
【ティガー】 「だって──おまえの借金じゃん……」
【GM】 ジーネは、がしゅがしゅと地団駄を踏んで、神殿の奥へ去っていった。
【ティガー】 後ろ向いて、サテラに「見たやろ、あれ?」って言う。
【メイユール】 「あれがジーネ」
【シルヴィア】 運よく、サテラには気づかないままやったようやけど(笑)。
【サテラ】 とりあえず、去って行く後ろ姿だけ見ました(笑)。

森の小人たちの事


 というわけで、冒険者たちはオレンブルク北東の森をめざして、出発した。

【GM】 森の南端近くまでは、大きな街道を通るので、旅に何の支障もないね。数時間ごとに小さな村や、宿場町があるので、荒野を行くのに比べてずっと楽です。
 もちろん、快適に寝泊まりするなら、それなりに金が飛んでいくけど(笑)。
【メイユール】 そういえば……2月の満月って、いつ?
【GM】 2月15日。キミたちがオレンブルクを発ってから、2日後やね。レムリアも30日でひと月となっていて、毎月15日が満月です。
 15日に立ち寄った村の夜空を、一点の汚れもない真円の月が、青く照らし出していたよ。
【ティガー】 ということは、その頃、オレンブルクは大変なことに(笑)。
【シルヴィア】 いちおう、ピーター博士や王国の偉いさんには、グラランボンバーの暴走のことを伝えてるんやろ? 対策を練ってくれてると信じよう。
【ティガー】 立ち寄った村では、騒ぎは起きなかったん?
【GM】 起きなかった。まっさらな皿のような月を見上げるまで、15日の夜が満月であることに気づかなかったぐらい、平穏だった。
【メイユール】 「今夜は妙に明るいな〜。あーっ、満月や〜!」って感じやな(笑)。

 そして、オレンブルクを出立してから約2週間後、冒険者たちは、森の南端近くの街道から北にそれて、森の中に入った。

【GM】 枯れ木立の冬の森は、しんと静まって、なんとなく寂しい。ときおり、遠くのほうから「けけけけけっ」と、変な動物の鳴き声が響いてきたりするけどね。
【ティガー】 さすが、人外魔境や。
【メイユール】 ツチノコとかおるかな?
【GM】 メイユールが向こうをむいた瞬間、後ろの茂みでガサっと物音がした。ガサササと落ち葉の上を這いずる音が遠ざかる。
【メイユール】 あーッ、惜しい! ……次はカエル男に期待しよう。
【ティガー】 そんなんがおるんや(笑)。
【シルヴィア】 冬眠してると思うな。いたとしても。
【GM】 ちなみに、食べ物が少なくなってる冬の森のモンスターは、常に腹をすかせているので、通常の3倍の危険性を秘めてると考えて。
【シルヴィア】 普段よりも3倍、周囲に注意を払っておかんといかんな。
【GM】 この森には、とうぜん道などありません。地図に記されたバツ印の地点まで、迷わずに行けるかどうか、レンジャー技能で判定しよう。
 メイユール、ダイスを振ってみてください。
【メイユール】 (ころっ)成功。
【GM】 メイユールは迷うことなく、「あっち、あっち」と仲間たちを先導している。
 そんな感じで、順調に森の奥へと向かうキミたちの前方から、何やら怪しげな4体のひと影が近づいてくる。
【シルヴィア】 どんな奴?
【GM】 1体は、全身をびっちりキノコに覆われた、人間のような姿の怪物。
【サテラ】 キノコ? うわ……。
【ティガー】 気持ち悪っ。
【メイユール】 殴ったら、煙を噴きそう。
【GM】 他の3体は、とんがり帽子をかぶったグラスランナーぐらいの背丈の小人です。
【メイユール】 なんか、メルヘンチックやな。
【ティガー】 魔法の森、って感じ?
【GM】 小人は鉤鼻でニヤ〜っと笑ってて、靴の先がツンと尖ってそり返ってるけどね。
【ティガー】 あー、悪い魔女の部下や。
【シルヴィア】 セージチェックをしてみようか。
【GM】 では、セージ技能をお持ちの方は、判定してみてください──誰もわからなかったね。キノコ人間と悪い小人のようです。
【メイユール】 見たままやん(笑)。
【GM】 3匹の小人は、歩きながらキノコ人間のキノコをむしって食べて、「ウヒョヒョヒョ」と笑っている。
【シルヴィア】 幻覚でも見てるんかな。
【サテラ】 怖い……。
【GM】 小人たちは、下位古代語の言葉で「おまえらもキノコになれ!」とか言っている。
「キノコ好きやね〜ん」
【メイユール】 知らんわよ!(笑)
【GM】 そして、小人たちがキノコ人間に「行け!」と命令し、キノコ人間が「うがー」と、キミたちに襲いかかってきました。
【ティガー】 キノコ人間はエサなんか。これをやっつけたら、小人たち悲しむかな?
【GM】 ティガーからオムレツを取り上げるようなものやね。
【ティガー】 あー、そりゃ、キレるね。
【シルヴィア】 キレるんや。気をつけなアカンな(笑)。
【メイユール】 キノコ人間って、強いかな?
【ティガー】 ティガーは弱いと思い込んでるけどね。
【シルヴィア】 いちおう、ティガーの剣に〈ファイア・ウェポン〉をかけてあげるよ。
【ティガー】 その魔法を待つから、このラウンドの最後に、キノコを攻撃する。
【GM】 では、戦闘になります。ティガーが行動を遅らせたので、サテラからどうぞ。
【サテラ】 キノコ人間に、〈エネルギー・ボルト〉をかけます。(ころっ)効いて、ダメージは8点。
【GM】 しかし、サテラが放ったエネルギー弾は、キノコ人間の表面ではじけて消えた。
【メイユール】 キノコ人間に〈ウィル・オー・ウィスプ〉をぶつける。(ころっ)抵抗されて、ダメージ8点。
【GM】 そいつもパチンとはじけて消えた。ダメージなし。
【メイユール】 ムカつく〜。何、このキノコ?
【シルヴィア】 ティガー、「もしかして、そいつ強いかも」とか思ってるやろ?(笑)
【ティガー】 うん、思ってる(笑)。そいつ、レベル8以上ある。
【メイユール】 なにぃ〜。バカにしすぎたか。
【シルヴィア】 ティガーの剣に〈ファイア・ウェポン〉。(ころっ)かかった。
【GM】 キノコ人間の反撃、ティガーをキノコで殴る。──当たったけど、ガイーンと防がれて、ダメージはなし。ティガーもレベル6あるからなぁ。
【シルヴィア】 サテラだけ冒険者レベルが低いから、辛いね。
【サテラ】 小人に攻撃したほうがいいかな。
【ティガー】 キノコに攻撃。(ころっ)へぼ〜、ダメージ13点。
【GM】 ティガーに切られたところから、黄色い胞子がもわ〜っと噴き出た。ティガーは胞子を吸い込んで、ゴホゴホと咳き込んでる。
 それを見た小人たちは、「きゃっきゃ」と大喜びしてます。
【ティガー】 喜ばれた〜。何やろ? 次のラウンドは普通に行動するから、俺がいちばん早い。キノコに攻撃。(ころっ)あっ、2回まわしちゃった。ダメージは39点。
【GM】 うそ!? キノコ人間は、3つのブロックに切り分けられて倒された!
【ティガー】 小人たちに、「食べる?」って聞く(笑)。「こんなんなっちゃったけど」
【GM】 小人たちは、「あー!」と悲しんでる。
「でも、いいもん。新しいキノコ、手に入るもん」
【ティガー】 「俺?」
【GM】 「うん」
【ティガー】 「まだ、キノコちがうもん!」
【メイユール】 子供のケンカや(笑)。
【サテラ】 小人Aに〈エネルギー・ボルト〉。(ころっ)効いて、9点のダメージです。
【GM】 ──あっ、死んじゃった。「ぎゃふん!」
【メイユール】 弱〜。小人Aへの〈ストーン・ブラスト〉は、キャンセル。
【シルヴィア】 〈ファイアボール〉を唱えるよ。(ころっ)小人Bに9点、Cに11点。
【GM】 「うひょ〜」と言いながら、小人たちは焼き殺されてしまった。……たった、2ラウンドで戦闘終わり!?
 ところで、ティガーはちょっと生命力の抵抗をしてみてください。
【ティガー】 あの胞子かな。(ころっ)なんか、失敗したっぽい。どうなる?
【GM】 いや、見た目は何も変わらないよ。少し気分が悪いけど。(ティガーはファンガスの胞子に冒された)
【ティガー】 じゃあ、肺の中にキノコが生えるんかな?
【メイユール】 そのうち、鼻からキノコが出てきたりして。
【ティガー】 前髪王子、めっちゃショックやん。「これはムリやー!」って(笑)。
【メイユール】 いちおう、〈レストア・ヘルス〉をかけとく? 1時間ぐらい経ったら、キノコ人間になったティガーの後ろで、わたしらが「うひょひょ」って言ってるかも知れんし。
 (ころっ)どうかな?
【GM】 ティガーは、なんとなく気分がよくなった。(ティガーのファンガス化はなくなった)

 冒険者たちは探索をすすめ、やがて、森が開けた場所に出た。
 こんもりとした小さな丘のふもとに、ぽっかりと洞窟が口をあけているのが見える。どうやら、大きな石材を積み重ねて築かれた、人工的な洞窟のようだ。もしかすると、丘そのものが人工的なものかも知れない。

【GM】 洞窟は、入口のところから、下に向かってるようやね。長い年月のうちに、流れ込んできた土砂に覆われて、短い草が生える斜面になってしまった階段がある。
 奥は真っ暗で、どうなってるかわからない。
【ティガー】 石を投げ入れて、洞窟の深さをはかってみよう。
【GM】 ころころころ……カツン!
【ティガー】 底はあるんや。
【GM】 ──ポチャン。
【ティガー】 「ポチャン」??
【GM】 ──ゲコっ。
【ティガー】【サテラ】 「ゲコ」?!
【メイユール】 カエル男や!(笑)
【シルヴィア】 そんなアホな(笑)。
【メイユール】 照明用にウィスプを呼び出そうか。(ころっ)出た。

迷宮の探索の事

【シルヴィア】 隊列は、ティガー、メイユール、サテラ、僕でいいね? 僕がしんがりを勤めるよ。
【ティガー】 OK。じゃあ、洞窟に入ろう。
【メイユール】 「ゲコ」って言うたから、カエル男がおるかも知れん。
【GM】 ティガーが洞窟に踏み込むと、奥からカエル男が走り出てきて、キミたちの脇を駆け抜け、森のほうへ消えて行った。
【メイユール】 あーっ。ティガー、もっとそっと入ってよ〜。

 冒険者たちは、入口から下りきった先にある鉄製の扉の前に来た。

【GM】 扉は閉まっていて、キミたちの行く手を阻む。
【シルヴィア】 ティガー、開けて。
【ティガー】 あー、そうや、シーフ技能を取ったんや。やったー、開ける。(ころっ)
【GM】 ……? 何してんの、それ?
【ティガー】 え? [鍵開け]。
【GM】 鍵なんか、かかってないよ。
【ティガー】 じゃあ、「カチーン」と自分で効果音をつけて、「開いたぜ」って言う。
【メイユール】 「いかにも開けました」って感じで、汗をぬぐうんやな(笑)。
【ティガー】 んで、扉を開けて中に入る。
【GM】 そこは部屋(A)やね。キミたちが部屋(A)に踏み入ると、「そこで止まりなさい」と、下位古代語の言葉で警告する声がしました。
【メイユール】 古代語はわからないので、奥に進もうとします(笑)。
【GM】 なら、精霊語、フェアリー語でも同じ警告をしてあげよう。
【メイユール】 精霊語ならわかる。じゃあ、止まって揺れとく。
【ティガー】 揺れるんや(笑)。
【シルヴィア】 3ヶ国語の放送か。すげぇ。警告してきたのは、どんな奴?
【GM】 キミたちが視線を床に落とすと、そこに、1匹の黒い猫が座っていました。尻尾が2本生えてる黒猫やね。
 その正体を知りたければ、セージ技能でチェックを──みんな失敗したので、ただの2本尻尾の黒猫に見えます。
【シルヴィア】 その猫が語りかけてきたんか。「誰かの使い魔かな?」と思ってる。
【メイユール】 猫に「タマ〜」って呼びかけてみる。
【GM】 「なんですか?」と、霊食(たまぐ)いネズミが返事した。
【ティガー】 俺は「触ったらアカンかな」と思いながら、珍しい猫を見てる。
【サテラ】 わたしは猫が好きなので、「かわいい」って見とれてます。
【ティガー】 「ここってさ、おまえん家?」と、猫に聞いてみる。
【GM】 「いいえ、我が主の築いた迷宮です。私は魔法で縛られた守護者のひとつです」
【ティガー】 主人って、きっとソーサラーやな。主人はこの洞窟におるの?
【GM】 「いえ、とうの昔に亡くなってますよ」と、2本尻尾の黒猫。
「で、この迷宮に何か御用ですか?」
【シルヴィア】 じゃあ、「かくかくしかじか」と、ここに来た経緯を話す。
「この遺跡が何か知りたくて、やって来ました」
【GM】 「なるほど」と、黒猫は納得した。
「あなたの言葉に、ウソはないようですね」
【シルヴィア】 それじゃあ、洞窟の中を案内してもらえる?
【GM】 「それはできません。私が動ける範囲は、決まっているので」
【ティガー】 じゃあ、勝手に見学していっていい?
【GM】 黒猫は、ゴニョゴニョと何か呪文を唱える。そして、「いいでしょう」と答えた。
「この洞窟には、隠された宝が眠っています。がんばって見つけてください」
【サテラ】 宝を探していいの?
【シルヴィア】 見つけてもいいけど、持って帰ったらアカンとか(笑)。
【GM】 「いいえ、あなた方の物にしてもらって、かまいません」と、黒猫は答える。
「ただし、見つけた物を、私に見せに来てくださいね」
【シルヴィア】 条件はそれだけ?
【GM】 「それだけです」と、黒猫。
「契約により、あなた方の手助けはできませんが、月の部屋では15日待つんですよ」
【サテラ】 え? 15日??
【GM】 それだけ言い残して、黒猫は姿を消した。
【シルヴィア】 なかなかやるな〜。

 冒険者たちは洞窟を奥に進み、部屋(B)にやって来た。入口以外に扉は見当たらず、何もない部屋のように見える。
 冒険者たちは、とりあえず部屋(B)に入ってみることにした。

【GM】 キミたちが部屋(B)に入ると、背後で扉がバタンと閉まり、ほわ〜っとかき消えてしまった。そして、床がもごもご動き出す。
【ティガー】 なに、これ。ぺちっと叩いてみる。
【GM】 「いてっ」と、床から声がする。
【ティガー】 もしかして、モンスター?
【GM】 それを知りたければ、セージチェックをしてみよう。──誰も正体を見抜けなかった。
 けど、床に生じた顔は、なんだか襲ってくる気満々です。
【シルヴィア】 襲ってくるのなら、戦うしかないね。ティガー、がんばれ。
【ティガー】 「えー? 何が〜? ぷにぷに〜」って、動く床で遊んでる(笑)。
【シルヴィア】 この床を斬ることを許す。
【ティガー】 「えー? いいのん?」って剣を抜く。で、ざくっと攻撃する。(ころっ)
【GM】 ちなみに足場が不安定なので、攻撃と回避にペナルティを受けるからね。
 ティガーの剣は、床の顔に突き刺さった。ダメージは14点か。けっこう痛いな。
【サテラ】 [パリィ(防御専念)]します。
【メイユール】 わたしも[パリィ(防御専念)]。
【シルヴィア】 〈エネルギー・ボルト〉を床の顔に放つ。(ころっ)うわっ、レジストされて、ダメージ10点。効いてたら、クリティカルの出目だったのに……。
【GM】 床はニュ〜っと腕を伸ばして、メイユールを殴る。──おっと、1ゾロ? それじゃ、回避はできんわな(笑)。
【メイユール】 きっと、床の顔が男前で見とれてたんや。
【GM】 ダメージは5点。
【メイユール】 痛〜。

 次のラウンド、ティガーは殴ってダメージを与え、サテラは[パリィ]、メイユールは〈ヒーリング〉で自分を治癒し、シルヴィアはメイジスタッフを捨ててグレート・ソードに持ち替え、白兵戦の準備をする。
 床の化け物のティガーへの反撃は、はずれた。
 そうして戦闘は続き、第4ラウンド、ティガーがクリティカルを出して、床の化け物にとどめを刺した。

【GM】 床の顔は、べと〜っと崩れていった。
【メイユール】 いやー、もう。きれいに倒してよ、ティガー。
【ティガー】 知るかー!(笑)
【GM】 あッ!
【ティガー】 どしたん?
【GM】 (特殊攻撃の判定、忘れてた。ま、いいか)ん? なんでもないよ。
 床の顔が崩れ去ると、入ってきた扉が現れて、元どおりになった。
【ティガー】 宝箱とかは現れない?
【GM】 現れないね。
【シルヴィア】 じゃあ、引き返して別のところに行こう。

 冒険者たちは部屋(D)にたどり着いた。

【GM】 部屋の中央に、床を貫いて立つ大きな円柱があります。大人3人が手をつないで輪になるぐらいの大きさ。てっぺんは、キミたちの背丈よりも高いところにあるけど、天井には届いていません。
 その円柱の表面には、時計周りに、黒い丸、左半分が白で右半分が黒の丸、白い丸、右半分が白で左半分が黒の丸、その4種類の図形が等間隔で彫り込まれてます。
 今、キミたちが入ってきた扉に向いているのは、黒い丸です。
【ティガー】 その丸は月?
【メイユール】 ──みたいやな。
【ティガー】 この部屋は、それだけしかないん?
【GM】 円柱以外は、何も見当たらない。
【ティガー】 円柱に触ってみてもいい? ぺちっ。
【GM】 ひんやりしてるね。その材質は、石なのか鉄なのか、判別がつかない。
【メイユール】 まあ、いいや。とりあえず、ほっとこう。
【シルヴィア】 ちょっと、ここで休憩していかへんか? 精神力を回復させたい。
【メイユール】 扉を閉めて、鍵をかけとけば大丈夫かな。
【シルヴィア】 サテラに〈ロック〉を使ってもらおうか。僕はもう、10点ほど精神力を使ってしまってるし。「何事も練習だよ」って(笑)。
【サテラ】 じゃあ、唱えます(笑)。
【GM】 というわけでキミたちは、どこからともなく聞こえてくる、「バフー、バフー」という獣のような声にビビりながら、円柱の部屋(D)で一夜を明かした。
 2月28日の朝です。地下迷宮の中なので光は差し込まないけど、キミたちの体内時計は、朝だとぬかしております。
 光が差し込まないどころか、ウィル・オー・ウィスプは、とっくに自分の世界に帰ってるので、辺りは真っ暗。鼻をつままれてもわからない。
【シルヴィア】 寝る前に〈ライト〉を唱えとけばよかった。12時間もつし。じゃ、たいまつに火を灯そう。
【GM】 こんな暗闇の中で、どうやって?(笑)
【メイユール】 じゃあ、ウィスプを呼び出す〜。
【シルヴィア】 それから、たいまつも使っておくよ。いざというとき、〈ファイア・ボルト〉が使えるしね。
【GM】 では、明かりが灯ったところで、続きは次回。

÷÷ つづく ÷÷
©2005 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2005 Jun Hayashida
Map ©2005 Moyo
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