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§銀月の歌:第4話§

甲冑魔人の宝

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ ピーター所長の報告の事 ▽ シノイ村の依頼の事 ▽ 宝物の探索の事

ピーター所長の報告の事

【GM】 キミたちは、魔術師ギルドの薬品研究所長ピーター博士に呼び出され、魔術師ギルドへ行くところ。辻馬車に、ゴトゴト揺られてるところです。
【メイユール】 楽チンや〜。
【GM】 馬車は、オーシュ神殿のそばを通り、ノプス神殿がある染屋広場をかすめ、劇場前広場で左折する。
 高級ホテルが立ち並ぶブレア川沿いの道を横切り、王城など国の中枢が集まる中央区へ渡る橋に差しかかった。
【ティガー】 その高級ホテルって、フリーパスが使えるところ?
【GM】 そう、キミがよく食事に来てるところ。フリーパスが有効なのは食事だけなんで、宿泊するなら1泊150フィスが必要。
【メイユール】 高っ!
【GM】 それを横目に見ながら、馬車は橋を渡ります。
 すると、「がしゅいん、がしゅいん」と、ジーネが向こうから歩いてくるのを見つけた。たぶん、商港へ働きに行くんでしょう。
【メイユール】 「シルヴィア、見て見て。あれがジーネ」
【シルヴィア】 「うーむ、すごい筋肉やなぁ。負けてしまった」
【ティガー】 目立ってるんやろな〜。オレンブルクの新しい名物やな。
【メイユール】 オレンブルク・ウォーカーとかに載ってたりして。写真入りで。
【GM】 そんなことを言いつつ、キミたちは、すっかりおなじみとなった魔術師ギルドの薬品研究所にやって来ました。
 白衣を着たピーター所長が、「どうぞ、おかけください」と、椅子を勧めてくれる。
【シルヴィア】 なんか、医者から話を聞くときみたいやな。
【ティガー】 「あと1ヶ月の命です。次の桜が見れるかどうか」
【メイユール】 「ああ〜、ジーネぇ〜!」(笑)
【GM】 とりあえず、ピーター所長から検査結果の報告をいたしましょう。
 グラランボンバーは、魔法のポーションです。薬効は、器用度、敏捷度、筋力をそれぞれ6点上昇させる。
【ティガー】 で、その代わりに満月の夜にバーサクする、と。
【GM】 「精神に異常をきたし、バーサクするのは間違いなさそうです」と、所長は言う。
「ただし、何が引き金になっているかは、今の段階では何とも言えません」
【メイユール】 満月のせいじゃないの?
【GM】 「それが、採取したジーネの血液を調べたところ、ルティネルトキシスが検出されなかったんですよ」
【ティガー】 なんじゃ、それ。
【GM】 「満月に反応して精神を狂わし、殺戮や破壊行動を行わせる成分です。ライカンスロープの血液には必ず含まれているもので、ライカンスロープでなくとも、満月に狂う者は、この成分に冒されてることが多いのです」
【メイユール】 ジーネはワー・ウルフになったんじゃなかったんか。
【シルヴィア】 少なくとも、そういった病気に冒されてるわけじゃないんやね。
【ティガー】 じゃあ、なんで、満月の夜にバーサクしたんやろ。
【メイユール】 オレンブルクでも、グラランボンバーを飲んだひとが、あの満月の夜に暴れたらしいのに。
【シルヴィア】 それに、その満月の日以外は、そういう暴走事件みたいなんはないんやろ?
【メイユール】 うん。少なくともジーネは暴走してない。
【ティガー】 あの時、満月以外に何か変なことあったっけ。
【メイユール】 う〜ん……わからん。
【シルヴィア】 グラランボンバーの効き目は、いつまで続くの?
【GM】 「一時的なものではなく、永続のようですね。薬はすでに抜けてるようですが、変化した肉体はそのままです」
【ティガー】 ジーネを元に戻す方法はないのか。
【GM】 「すでに薬は体内から消えてしまってるので、もはや〈キュアー・ポイズン〉でも、〈リムーブ・カース〉でも、〈パーフェクト・キャンセレーション〉でも、元の肉体に戻すことはできません。
 別の薬でもって、肉体を再変化させるしかないでしょう」
【シルヴィア】 治す薬はすぐに作れる?
【GM】 「もちろん、作ります」と、ピーター所長。
 じつは、魔術師ギルド長を通して、このことはすでに国王に報告されている。
 街道に警備を敷き、オレンブルク国内にグラランボンバーが流入してくるのを、防いでいます。
 同時に、ここ魔術師ギルド薬品研究所には、グラランボンバーを治す薬の開発の命令が来てるんやね。
【シルヴィア】 打つ手が早いね。
【GM】 これは王国の意向だけど、グラランボンバーの危険性については、しばらくの間公表しないことになってるらしい。
 その正体をまだ突き止めてないのに、変な噂がひとり歩きして、パニックが起きたりしないように。
【シルヴィア】 なるほど。
【ティガー】 俺らにも、ひとに話したりするな、ってことやな。
【GM】 そういうこと。
【メイユール】 大丈夫、黙っとく。ジーネの耳に入ると大変なことになるから(笑)。
【GM】 ああ、そうそう。そのジーネのことなんやけど、ピーター所長は何か気になることがあるらしく、「もう少し彼女を調べさせてくれませんか?」と、言ってくるよ。
【メイユール】 どうぞ、どうぞ。
【ティガー】 たぶんうるさいから、〈スリープ〉で黙らせて持ってくるわ。
【シルヴィア】 おいおい(笑)。
【GM】 とりあえず、ピーター所長のお話はここまでです。
【ティガー】 じゃあ、港に行って、ジーネに〈スリープ〉をかけよう。
【メイユール】 背後から忍び寄って──って、普通に連れて行こうよ(笑)。

 3人は商港でジーネを捕まえ、薬学研究所に連れて行った。
 その日はそれだけで日暮れとなり、3人は『青い波の美し亭』に戻った。

【ティガー】 オムレツ〜。
【シルヴィア】 いつもどおりの注文やな。
【GM】 でも、まちがえて目玉焼きが届いてしまったりするんやな。
【ティガー】 「えぇー? これ、ちがうよ〜」
【GM】 「おお、すまん」と、オヤジは謝る。
「まあ、カンベンしてくれ。歌にもあるじゃないか。『十月(とつき)に一度の目玉月。取って炒めて目玉焼き』って」
【ティガー】 なに、その歌?(笑)
【GM】 なんせ、この夕食時、『青い波の美し亭』の酒場は、目が回るような忙しさだから。
【メイユール】 そんなに賑わってるんや。
【GM】 ああ、賑わってるね〜。
 吟遊詩人の歌が流れる中、冒険を終えて帰還した冒険者たちが、入手した銀貨の数をチェックしたり、レベル上げの作業をしてたりする。
【シルヴィア】 GMから経験点をもらったんや。
【メイユール】 「何を上げよっかな〜」とか言ってたりして。
【GM】 手に入れたけど正体がわからないアイテムは、元冒険者だった酒場のオヤジに頼めば、鑑定してもらえる。
【ティガー】 タダで?
【GM】 いや、1品につき10フィスで。
 今も、料理作りにひと段落をつけたオヤジが、30歳ぐらいの青髪のファイターが持ち込んだ拳大の青い玉を、入念にチェックしている。
 オヤジの目利きはなかなかのもので、しばらく鑑定して、その正体を見抜いた。
【ティガー】 何やろ〜?
【メイユール】 聞き耳をたててみる。
【GM】 「いいものを拾ったな。これは、“テレポートの石”だ。魔法を発動させるには、コマンド・ワードが必要のようだな。
 だいぶちびてるんで、あと1、2回使えば壊れるだろうけど、売れば2万フィスは下るまい。もっと詳しいことが知りたければ、魔術師ギルドにでも頼むんだな。
 おめでとう」と、言ってる。
【ティガー】 いいなぁ。
【GM】 オヤジと握手した青髪の男は、「経験点は1000点か〜。あと、8000点いるなぁ」と言いながら、酒場から出て行った。
【ティガー】 おー。そいつ、すごいな。高レベルな冒険者や。
【GM】 次に、順番待ちしていた赤髪の不精ヒゲを生やしたシーフふうの男が、ワクワクしながら、怪しげな紋章の入った黄金の短剣をオヤジに差し出す。
【シルヴィア】 それも高そうなアイテムやな。
【メイユール】 ジーネが欲しがるんとちゃう? 「これで借金を返せる」って(笑)。
【GM】 しばらくチェックしていたオヤジは、それを男に返してこう言った。
「すごいものを手に入れたな。どこで拾ったか知らんが、それは呪われてるぞ。かなり強力にな。
 さっさと魔術師ギルドにでも引き取ってもらったほうがいい」
【ティガー】 呪いのアイテムやー!(笑)
【メイユール】 楽しいなぁ、ここ。
【GM】 赤髪の男の笑顔は凍りつき、あわてて酒場を飛び出した。
 そして、いきなり辻馬車にはねられた。
【ティガー】 ああ〜、呪われてるぅ。
【GM】 起き上がった赤髪の男は、ひぃひぃと言いながら、片足を引きずって、魔術師ギルドへ向かう。
 すると、なぜか蓋が開いてたマンホールに落ちてしまった。
【ティガー】 すげー!
【GM】 そこへ通りかかった屈強な男たち10人が、運んでいたティガーとメイユールの石像をマンホールの上に置き、「そろそろメシにするか」と、近くの酒場に入って行ってしまった。
【ティガー】 赤髪の奴、上がられへん(笑)。
【メイユール】 あの短剣には気をつけとこう(笑)。
【GM】 オヤジは、「あれで死なないんだから、運がいいとも言えるな」と、つぶやいた。
 そんな楽しい夜は更け、翌朝、1月30日になりました。
【メイユール】 今日は何をしよう?
【シルヴィア】 僕は、魔術師ギルドへ行ってみるよ。
【GM】 まだジーネの検査結果は出てないと思うけど?
【シルヴィア】 別にいいよ。検査結果を聞きに行くんじゃなくて、様子を見に行くだけだから。手伝えることがあれば、手伝うし。
【メイユール】 わたしは劇場に行って、ジュノさんと劇について話し合う。その後、賭場に行って遊ぶ。

シノイ村の依頼の事

【GM】 ホンマに好きやな、賭場が(笑)。
【ティガー】 俺は何しようかなぁ。することないな〜。
【メイユール】 ファンリーに会いに行けば?
【ティガー】 会いに行ってんけどな、仕事中やってん。
【シルヴィア】 かまってもらえない幼稚園児やな(笑)。
【ティガー】 「ヒマやわ〜」って、たれてる。
【メイユール】 たれティガーや。
【GM】 では、シルヴィアとメイユールは出かけた、と。
 ティガーは、『青い波の美し亭』のテーブルにアゴを乗せて、足をぶらぶらさせてるんやね?
【ティガー】 椅子をかじったりはせえへんで。
【GM】 昼飯も終わった午後3時頃、そんなティガーに、酒場のオヤジが声をかけてきました。
【ティガー】 「なに〜? 今、ええ夢見とってん」
【GM】 「頼みたい仕事があるんだが」と、オヤジは言う。
【ティガー】 ん、なに?
【GM】 おっ、顔つきが変わったな。
 カウンターのそばには、いかにも田舎者という風体の青年2人が、おどおどした様子で立ってます。
「とりあえず、彼らの話を聞いてやってくれ」
【ティガー】 そのひとら、グラランボンバーを飲んでそう?
【GM】 いや、そんなふうには見えない。
 彼らは、オレンブルクより南東2日のところにある、シノイ村というところから来た、村人だそうです。
【ティガー】 グラランボンバーとは関係ない仕事か。
【GM】 「1月27日の夜遅く、村に、甲冑に身を包んだ魔物が現れました」と、村人A。
「兜の奥の赤く光るひとつ眼は、すげぇ恐ろしかっただ!」と、村人B。
「魔物は、『盗んだ宝物を返せ』と、言ってきました」と、村人A。
「地の底から響くようなおどろおどろしい声で、オラぁびびっちまっただ!」と、村人B。
【ティガー】 なんか盗んだん?
【GM】 「いや、身に覚えがないんです。心当たりがあれば、すぐに返しますとも」と、村人Aは言う。
「そして魔物は、『7日後、再びこの村に現れる。そのとき返さねば、おまえたちを皆殺しにしてくれよう』と言い残し、村の子供をひとり人質にして連れ去りました」
「オラぁ、皆殺しはイヤだっぺ!」
【ティガー】 そのときから7日後って、2月4日か。今が1月30日やから、じゅうぶん間に合うな。
 で、オヤジを見て、「俺なん?」って聞く。
【GM】 「彼らの話からすると、その魔物は、アンデッド・ナイトだ。腕の立つ冒険者でないと、相手にするのは危険だろうからな」
【ティガー】 そっか〜……。
【GM】 「まあ、気乗りがしねえなら、無理強いはしないけど」
【ティガー】 いや、やるやる。
【シルヴィア】 報酬のことを聞かんとアカンのちゃう。
【ティガー】 「報酬はいくら? 大根1年分?」
【GM】 そんなんでええの?(笑)
【メイユール】 イヤぁ〜!
【GM】 やろね。報酬は、村の財産をかき集めた6600フィス。アンデッド・ナイトの驚異を取り除き、人質を取り戻せたなら支払われる。
 前金は、1割の660フィスね。
【ティガー】 ホントにかき集めたっぽいな、その端数が。
 いいよ、引き受ける。
【GM】 引き受けてくれるんやな。他に聞きたいことは?
【ティガー】 別にないよ。
【GM】 では、ティガーは契約金の660フィスを手に入れた。
 そんなこんなで夕方近くになったので、とりあえず村人たちはこの宿屋に泊まり、明日の朝いちばんに出発することになりました。
【ティガー】 OK。
【GM】 シルヴィアとメイユールは、そろそろ帰って来ていいよ。そちらでは、大したイベントはなかったしね。
【シルヴィア】 じゃあ、『青い波に美し亭』に戻った。
【ティガー】 シルビーに、「なんか、依頼を受けちゃった。てへっ♪」って言う。
【シルヴィア】 「はあ??」って感じやな。詳細を教えてよ(笑)。
【ティガー】 ん〜、アンデッド・ナイトを倒せばいいみたい。
【シルヴィア】 シルヴィアは、アンデッド・ナイトについて知ってていいのかな?
【GM】 知識の判定に成功したらね。
【シルヴィア】 (ころっ)さっぱり知らないみたいやな。
 ティガーもセージ技能を持ってるんやから、知識の判定をしなさいよ。
【ティガー】 (ころっ)俺は、名前は知ってた。「ああ、あれか」って思う。
【シルヴィア】 アンデッドというくらいやから、アンデッド・モンスターなんやろな。
【ティガー】 そうやろな。目が赤くて、地の底から響いてくるような声らしい。で、「宝物を返せ」って言うてくるらしい。
 そうそう、前金の分け前をあげるわ。220フィスね。
【シルヴィア】 はいはい、どうも。
【メイユール】 わたしも戻った。「また、半分スってしもたわー!」
【ティガー】 じゃあ、220フィスあげる〜。
【メイユール】 「どうしたん、これ?」
【ティガー】 「なんか、死んだナイトを倒してこい、って言われた」
【メイユール】 「は??」
【GM】 どんどん変わっていってるやん。ひとり伝言ゲームやな。
【シルヴィア】 シルヴィアが知ってる範囲で、横から注釈をつけてやらんと(笑)。
 すでにティガーが前金まで受け取ってしまったから、僕らも引き受けざるを得んわけよ。
【ティガー】 何も知らずに、いばっとこ。

 翌朝、冒険者たちは旅の準備を始めた。
 今度は、ティガーも防寒のために毛布を購入し、野宿に備える。

【GM】 キミ、背負い袋ぐらい買えば?
【ティガー】 お金ないねん。
【GM】 さっき、前金で220フィスもらったやろ?
【ティガー】 食べ物を買ったら、なくなっちゃいました。
【GM】 じゃあ、どうやって荷物を運ぶの。
【ティガー】 毛布でくるんで、がんばる(笑)。

 メイユールは、〈コントロール・スピリット〉で、小袋にシルフを封じた。

【メイユール】 袋がふくらんだ。
【シルヴィア】 風神さまや(笑)。

 準備が整ったところで、冒険者たちは、村人を伴ってシノイ村へ出発した。
 道中、危険にみまわれることもなく、2日後、無事にシノイ村に到着した。

【メイユール】 牛、おる?
【GM】 おるよ。「もっもっ」と、鳴いてる。
【ティガー】 「もっ」って言うてるんや。かわいい〜。触りに行こ。
【GM】 すると、牛は「もう」と怒った。
【ティガー】 嫌われてもた(笑)。
【シルヴィア】 村長さんのところに行ってみよう。
【GM】 出迎えてくれたのは、若い新鋭の村長さんやね。48歳、熱く燃える炎の村長です。
「よく来てくださったぁー!」
【メイユール】 熱い、熱い(笑)。
【ティガー】 村長に、「村の宝って、なに?」って聞く。
【GM】 は? 村の宝って、なに?
【ティガー】 盗んだから取り返しに来てる、って聞いたで。
【GM】 何が??
【ティガー】 え? だって、アンデッド・ナイトの宝を、村人が盗んだんとちゃうん。
【メイユール】 そんな話してたっけ?
【GM】 村人たちは、「失敬な!」と、怒るよ。
「だいいち、あんな危ないとこ、近づくのは冒険者ぐらいのもんだべさ!」
【シルヴィア】 「いやー、お怒りはごもっとも」となだめつつ、もういっぺん、整理をつけてみよう(笑)。
「宝を盗まれたのはアンデッド・ナイトで、それを『返せ』と、この村に文句を言いに来たわけですね?」
【GM】 村長は「そうです」と答える。
「しかし、我々はそんな宝など知らないので、返しようがない。
 なのにアンデッド・ナイトは納得せず、村の少年を人質に取り、『1週間後に取りに来るから、そのとき返すように』と、脅してきたのです」
【ティガー】 ほら、俺の言ってること、だいたい合ってるんちゃうん。
【メイユール】 全然はずれてるよ。村人が盗んだことになってたやんか(笑)。
【ティガー】 あれ??
【シルヴィア】 内容を再確認してよかった。
「で、そのアンデッド・ナイトがどこに住んでるか、わかる?」
【GM】 ここから東へ2時間ほど行ったところにある、森深くの遺跡だそうです。
 ずいぶん古くからあるそうで、「危険だ」と言い伝えられてきた村人たちは、誰も近寄らないらしい。
【シルヴィア】 アンデッド・ナイトが村に来る前に、その遺跡に近づいたひとは、本当に誰もいない?
【GM】 「オラたちは近づかねぇ。だども、その前の日、村に来た4人の冒険者たちが、しきりに東の遺跡の話を尋ねてただ」
【シルヴィア】 で、その後、どうしてた?
【GM】 「翌朝、どこかに出かけて行ったよ。その後、戻って来なかったけど」
【ティガー】 そいつらちゃうん。アンデッド・ナイトの宝を持って帰ったの。
【メイユール】 そんな気がするな。
【シルヴィア】 その冒険者たちについて、何か特徴を覚えてる?
【GM】 「あー、男が3人、女が1人だった」
「女はエルフだったぞ。オラ、エルフなんか生まれて初めて見ただ!」
「とりあえず、うさんくさい奴らだったぞ」
【シルヴィア】 そりゃ、普通のひとから見れば、冒険者は皆うさんくさいやろ(笑)。
【ティガー】 その冒険者を探すのは、ムリっぽい。
【メイユール】 でも、盗まれた宝が何かわからんと、探しようがない。
【シルヴィア】 アンデッド・ナイトを倒せば、話は早いんやけどね。
【ティガー】 とりあえず、東の遺跡へ行ってみよか。

宝物の探索の事


 3人は、村から2時間のところにある、森深き遺跡へやって来た。

【GM】 木々の開けたところに、大きな石を組み立てて築かれた、1階建ての建物が見える。
 長い年月を経て苔むし、蔓が張りついて、半ば緑に埋もれてるね。たしかに不気味で、普通の人間なら近づこうとしないでしょう。
 ちなみに、見張りはいない。
【ティガー】 入口に行ってみよう。
【GM】 玄関とおぼしきところには、やや赤錆が浮いた黒い鉄の大きな扉があるよ。
 ごていねいにも呼び鈴が取りつけられていて、なぜか、その紐は妙に新しい。
【メイユール】 もしかして、アンデッド・ナイトがつけたんかな。宝を返しに来る村人のために(笑)。
【ティガー】 じゃあ、呼び鈴を鳴らしてみよう。
【GM】 しばらく待ってると、鉄の扉が、重々しい音をたてて、開いた。
 そして、錆びた甲冑に身を包み、兜の奥深くに恐ろしげな赤い光をたたえる怪人が現れた。
【ティガー】 アンデッド・ナイト?
【GM】 「いかにも」と、怪人は答える。その言葉はオムスク語なので、ティガーにしかわからない。
【ティガー】 そいつ、しゃべるんや。「共通語をしゃべろうよ」と言ってみる。
【GM】 「共通語はしゃべられへんのじゃ」
【メイユール】 フレンドリーやな。
【シルヴィア】 とりあえず、〈タング〉を使って、オムスク語を理解できるようにしたほうがいいかな。
【GM】 今の状態だと、ティガーを通じて話すしかないね。
【シルヴィア】 それは危険や。
【メイユール】 シルヴィア、お願い(笑)。
【ティガー】 なにを〜!?
【シルヴィア】 (ころっ)〈タング〉成功。
【GM】 では、シルヴィアも彼の言葉を理解できるようになった。
 アンデッド・ナイトは、キミたちに「宝を返しに来たのか?」と、聞いてくるよ。
【ティガー】【シルヴィア】 「まだ」
【ティガー】 っていうか、何を盗まれたんか、わからへんねんもん。
「盗まれた物を教えてよ」って言う。
【シルヴィア】 「返すべき物を教えてくれないと、返せるわけがないやん」
【GM】 「おおっ」と、ポンと手を打つ。
【ティガー】 あはは。こいつ、俺に似てる!
【メイユール】 オムスク地方って、人もモンスターも、こんなんなんや(笑)。
【GM】 彼の話によると、盗まれた宝物というのは、短剣だそうです。
 それは魔法のダガーで、あるものを封印しておくために必要な物らしい。
【シルヴィア】 『ある物』というのは?
【GM】 それは、アンデッド・ナイトも知らない。ただ、彼の主に封印を守るように命じられてるだけだから。
 今から6日前、4人の冒険者が、この遺跡を荒らし、封印のダガーを抜いたらしい。
 契約により目覚めた彼は、冒険者たちと死闘を繰り広げ、3人までは葬ったものの、戦闘中にひとり逃してしまった。
【ティガー】 そいつが、ダガーを持って行ってしまったんやな。
【シルヴィア】 やられた3人って、アンデッドになってたりしない?
【GM】 「ゾンビやワイトは嫌いだから、裏庭に埋葬しておいたぞ」
【メイユール】 なんていい奴や(笑)。
【ティガー】 一緒に記念写真を撮りたくなってきた(笑)。
【シルヴィア】 で、そのダガーって、どんな感じの剣?
【GM】 「我が主の魔力の文様が刻まれた、黄金の短剣だ」
【メイユール】 それ、呪いがかかってるやろ?
【GM】 「よく知ってるな」
【ティガー】 あれかーッ!
【シルヴィア】 めちゃくちゃ心当たりがあるんやけども……。
【ティガー】 「それ、あの村には関係ないで」
【シルヴィア】 「僕たちが取り戻してきてあげるから、あの村に危害を加えるのは、やめてくれないか」と、持ちかける。
【GM】 「うーむ、まあ、いいだろう。ただし、人質は、おまえたちが短剣を持って来るまで、預かっておくぞ」
【ティガー】 「10日ぐらい待ってね」
【GM】 「わかった。期限は10日後だ」──2月13日が期限ってことやね。
【シルヴィア】 「で、取り返してきたら、僕らに何かもらえるかな?」
【GM】 「人質を無事に返そうじゃないか」
【シルヴィア】 「他には?」
【GM】 「人の命ほど尊いものが、他にあるかね?」
【シルヴィア】 「さすが、いいこと言うね〜。そんじょそこらのアンデッド・ナイトとは、ひと味違うね」
【メイユール】 ヨイショしてる(笑)。
【シルヴィア】 「……で、人質の命以外に、何かいい物はもらえる?」
【GM】 「わかった、わかった。この遺跡内に残っている宝物を、勝手に持って行っていいことにしよう。ただし、短剣を取り戻してからの話だ」
【シルヴィア】 「今日、会えたのが、あんたでよかったよ」と、握手しよう。
【メイユール】 シルヴィア、すごーい。キラキラしてるで。
【ティガー】 「アンデッド・ナイトと友達になれた〜」って、思っていよう。
【メイユール】 でも、あのダガーを、ここまで持って来なアカンのか。怖いなぁ。
【ティガー】 ホンマや! 穴にはまるわ。
【シルヴィア】 まあ、それは、短剣を見つけてから考えよう。
【ティガー】 とりあえず、村のひとたちに事情を説明してから、オレンブルクに戻る。

 というわけで、3人は、2月5日にオレンブルクに帰還した。
 シノイ村からの報酬5940フィスは、人質を取り戻したときに支払われることになった。

【ティガー】 魔術師ギルドへ行く。
 で、宝物鑑定してくれるところの受付に行って、1月29日か30日に、変な宝物を持って来た奴がいないか、聞いてみる。
【GM】 かの有名なレギト王子の頼みだし、簡単に協力してもらえるかな。
 受付の青年は、「少し待ってください」と言って、名簿を出してきた。
 それには、鑑定したアイテムの名称か見た目の特徴、それから、鑑定を依頼したひとの署名が書かれてあるらしい。
【ティガー】 「見た目は金色のダガー。赤毛の傷だらけの男が持ってきたと思うねんけど。
『穴にはまった』とか言ってなかった? すごい呪われてるねん」
【GM】 青年は、パラパラと名簿を調べて答えた。
「29日から今日にかけて、そのようなダガーを持ち込んだひとは、いませんね」
【ティガー】 来てないんか。
 青髪の男は? “テレポートの石”を拾ってきてた奴。
【GM】 「その方なら、30日の午前に、鑑定を依頼されてます。昨日、鑑定結果と合わせて、品物をお返ししております」
【ティガー】 「名前はわかる?」
【GM】 「え〜、ディック・ジャシュアさんですね」
【メイユール】 赤髪のほうは、途中で力尽きてしもたんちゃう?
【シルヴィア】 まず、あのマンホールの近辺に行って、調査してみよか。
【GM】 では、キミたちは、あのマンホール近くに来ました。まあ、『青い波の美し亭』の近所、ってことになるんやけどね。
【ティガー】 その辺りの酒場に行って、聞いてみる。
「1週間ほど前に、馬車にはねられて、そこのマンホールに落ちた赤毛の男って、知らん?」って。
【GM】 すると、チェイン・メイルを着た戦士ふうの男が、「ああ、あのマヌケな男か。上がってこようとしてるのを、手伝ってやった覚えがあるぞ」と、答えた。
「そうそう、あんたによく似た石像を、何人かでどかしてやったんだ」
【ティガー】 そうなんや(笑)。
「そいつ、どこに行った?」
【GM】 「さあな。それはわからんが、『あんなアイテム、こりごりだ』って、泣いてたぜ」
【シルヴィア】 『あんなアイテム』ってことは、マンホールでダガーを捨てたんやろね。手にしてたんなら、『こんなアイテム』って言うはずやし。
【メイユール】 照明を持って、マンホールの中を調べてみよう。
【GM】 しかし、黄金のダガーは、見当たらなかった。
【シルヴィア】 〈センス・マジック〉で、辺りを見回してみるよ。(ころっ)
【GM】 キミたちの装備品以外に、反応する魔力はないね。
【ティガー】 水の流れはどんな感じ?
【GM】 チョロチョロとした浅い流れ。ダガーを押し流すほどの勢いはない。
【シルヴィア】 足跡とかも調べてみたいんやけど。
【GM】 では、シーフ技能でチェックしてもらおう……って、誰もシーフ技能を持ってないんやね。
 なら、ダイスの出目だけでどうぞ──キミたちには、怪しい痕跡を見分けることはできなかった。
【シルヴィア】 現状では見つかりそうにないね。赤毛本人を探してみようか。
【メイユール】 でも、そいつがどこに行ったのか、わからん。名前すらわからんし……。
【ティガー】 青毛のディックのほうが、見つけやすそう。そいつ、赤毛の知り合いやったりせんかな?
【メイユール】 それなら、簡単なんやけどねぇ(笑)。
【シルヴィア】 まあ、何でもいいから手がかりが欲しいし、そのディック・ジャシュアっていう冒険者を探してみようか。高レベルやったし、ひょっとしたら、有名人かも知れんで。
【メイユール】 わたしら、その名前に心当たりはない?
【GM】 ならば知力でチェックしてみ──誰にも心当たりがない名前やね。
【ティガー】 とりあえず、手分けして探してみようよ。
【シルヴィア】 ティガーには、僕の使い魔のフクロウをつけておこう。
【メイユール】 監視されてるんや(笑)。
【ティガー】 俺は単について来ただけ、と思ってるから、「なんか、動物王国みた〜い」って喜んでる(笑)。
【GM】 それじゃあ、この続きはまた後ほど、ということで。

÷÷ つづく ÷÷
©2005 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2005 Jun Hayashida
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お名前
ひと言ありましたら
 
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