≪REV / EXIT / FWD≫

§伏魔の街ルニオール:第8話§

ルニオール擾乱

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 黒い影との遭遇 ▽ ギルド長との面会 ▽ 魔神出現する

黒い影との遭遇

【GM】 さて、メルクに嫌疑がかけられた殺人事件の目撃者の事情聴取も終わって、これからどう行動しますか?
【アルフレッド】 う〜ん、メルクの濡れ衣にしても、ホルトーの濡れ衣にしても、それを晴らす決め手となるものがないんやな〜。
【シーザー】 まあ、メルクに関しては、俺らがアリバイを証言できるけどな。
【GM】 でも、その証言を信じてもらえるかどうかは、わかりませんよ。
【アルフレッド】 そうやねん。相手に信用してもらえるだけの材料がいるわけだ。
【リィン】 うち、領主の館に忍び込みたいなぁ。
【アルフレッド】 どうやって?
【リィン】 うちが『黒い人影』になんねん。そんでわざと衛兵に捕まって、領主の館に連れて行かれるねん。
【カーム】 二人羽織でいけば、オレも入れる。
【シーザー】 「はッ! 手が4本ある!」って。そりゃ、確かに魔神や。ついでに蛮族が〈インビジビリティ〉で姿を消して、一緒に館に侵入するとか。
【アルフレッド】 ほう、なるほどな。とりあえず、決定的な証拠がないと、僕らには何もできんからな。やるだけの価値はあるかも知れん。
【リィン】 じゃ、[変装]する。(ころっ)かなりいい目が出た。たぶん、リアルな魔神に変装できたと思う。
【GM】 それはいいけど、二人羽織は無理やからね。
【カーム】 ほんじゃ、オレは『黒い人影』の一味ということで、ヘロヘロ〜ンと捕まる。
【シーザー】 そんじゃ、ふたりをビロビロ〜ンと領主の館へ連行する。
【アルフレッド】 〈インビジビリティ〉で透明になって、それについて行く。
【GM】 では、領主の館の前まで来ました。シーザーたちは、門兵に止められますよ。「いったい、どうしたんだ」
【シーザー】 「巷を騒がす『黒い人影』一味を捕らえた。マクベル様に引き渡したい」
【GM】 衛兵は「ホントに『黒い人影』なのか?」と疑わしく言います。
【シーザー】 「間違いない! 俺の手柄だ!」と、騒がしく言う。こんなけ騒げば、館の中から誰か出て来るやろ。その隙に蛮族が忍び込むんやな。
【GM】 では「なんだ、なんだ」と館の門が開いて、衛兵などが大勢出てきます。
【アルフレッド】 よし、今のうちに館に入る。
【GM】 それは成功しました。でも、けっきょくリィンとカームは、シーザーが働く街の詰所へ連行されてしまった。シーザーも外勤衛兵の恰好なので、館内に入ることはできんかったよ。
【リィン】 あ〜あ、せっかく[変装]したのに。
【シーザー】 とりあえず、ひとりでも潜り込ませることに成功したから、よしとしよう。しゃあないから、詰所でおまえらを取り調べる。「さあ、吐いちまいなよ。カツ丼でも喰うか?」
【カーム】 「オレは無実だ〜!」
【リィン】 ……何やってるんやろ。
【GM】 コントやね。さて、蛮族は館の庭にいます。どうするんですか?
【アルフレッド】 とりあえず、館のまわりを1周して、建物内に入れそうな場所を探そう。
【GM】 館と言っても、王子の従兄弟が住むところですから、小規模な城ぐらいの大きさだと考えてください。ちなみに、建物は2重の塀に囲まれていて、蛮族がいまいるのは外塀と内塀の間。内塀にも衛兵が立つ門があり、固く閉ざされています。
【アルフレッド】 塀を越えることはできへんの?
【GM】 かなり高い塀なので、無理ですね。とくに、姿を消すために精神集中したたままでは。
【アルフレッド】 しゃあない、僕、端っこの茂みの中に隠れとく。朝になったら門が開くかも知れんから、それまで待っとこう。「やっぱり、こんな作戦ムリだったんだよ」とブツブツ言いながら。
【GM】 わかりました。シーザーたちはどうすんの? もう、だいぶ時間は進んで、真夜中になってるけど。
【シーザー】 取り調べの結果、ふたりは無実だとわかったので解放する。「もう、あんなイタズラはするなよ」
【リィン】 んが〜。
【カーム】 こうなったら、本格的に『黒い影』を探すか。『黒い影』を捕まえて、何もかもしゃべらせてしまおう。
【リィン】 じゃあ、3人で街をうろつこう。
【GM】 3人といっても、シーザーはいちおう勤務中ですよ。詰所を出れますかね。
【シーザー】 このふたりを送って行くフリをしたらええねん。そんで街に出たら、バラバラに分かれて『黒い影』を探す。
【GM】 わかりました。では、月夜に寝静まったルニオールの街を、3人それぞれにうろつくこと数十分──(ころっ)カームは、「ぎゃー」という男性の絶叫を耳にします。
【カーム】 ほんじゃ、バスタードソードを抜き放ちつつ、絶叫が聞こえたほうへサーッと走って行く。
【GM】 カームはある裏路地に入りました。前方で、ピチャピチャという音がする。月明かりに目を凝らしてみると、黒い異形の人影が、人間男性の死体を抱え込んでいます。
【カーム】 さてはデーモンやな。血ィ吸うてるんやろか。
【リィン】 斬っちゃえ!
【カーム】 ほんじゃあ、攻撃。(ころっ)当たり、14点いった。
【GM】 黒い影は「ぷぎゃあ!」と叫んで、逃げようと背中の翼を広た。まるで、蝙蝠のような翼です。
【カーム】 もう1回、攻撃しよーかなぁ。そりゃっ、(ころっ)ヒット、ダメージ12点。どうよ?
【GM】 「ぷぎぃ」と悲鳴をあげた黒い影は、翼をはためかせて宙に浮かんだ。そして、ピューっと闇夜に飛んで消えていったよ。敵の傷から流れ出た体液が、地上の石畳に点々と青い染みをつけていく。
【カーム】 よし、それを辿って追跡するで〜。
【リィン】 うちら、カームと合流でけへん?
【GM】 う〜ん……(ころっ)じゃあ、カームが追跡している途中、運よく合流できたことにしよか。
 3人が黒い影の流した体液を追跡して行くと、行く手に、ひときわ目立つ3階建ての塔が見えてきた。そして、空を飛ぶ黒い影が、その塔の最上階の窓から中に入って行くのを見ました。
【リィン】 その塔って、もしかして……。
【GM】 さよう、魔術師ギルドの建物です。
【リィン】 きっとその怪物、ギルド長が呼び出したデーモンや。
【シーザー】 その怪物のこと覚えてるか、カーム?
【カーム】 うん、強かったで。
【シーザー】 そうじゃなくて[怪物判定]しろ、っちゅうとんねん!
【カーム】 おう、そっか。(ころっ)。
【GM】 カームにはちょっとわからんね。
【カーム】 オレにわからんということは、あれはきっと、レア・モンスターや。
【リィン】 ちがうと思う。
【アルフレッド】 あの〜、GM。僕、そろそろ領主の館から脱出したいなぁ。姿を消したまま、外壁の門を内側からダンダンと叩いて「開けてくれ!」と叫ぶ。
【GM】 すると、外門が開いたよ。そして、内側を覗いた外の衛兵が「誰もいないぞ?」と不思議そうな顔をしてます。
【アルフレッド】 その隙に外に出よう。
【GM】 じゃあ、アルフレッドは外に脱出した。それで、どこに向かうの?
【アルフレッド】 まあ、宿屋やろな。
【GM】 わかりました。で、魔術師ギルドのそばにいる連中はどうします? 真夜中なので、魔術師ギルドには人影もなく、入口の扉はもちろん固く閉ざされてるよ。
【リィン】 中へ入ろう。玄関の扉に[鍵開け](ころっ)。
【GM】 開きません。どうやら、魔法の鍵がかかってるようですね。
【カーム】 ああ、〈アンロック〉使える奴が寝込んでおらへん!
【リィン】 しゃあないな、うちが[登攀]でギルドの壁を登るか。そんで、窓から中に入る。(ころっ)。
【GM】 それなら、何とか2階の窓まで登りついたよ。ちなみに、窓にも鍵がかけられてるようやね。
【リィン】 じゃあ、[鍵開け]する。(ころっ)。
【GM】 窓の鍵は、解除することができました。
【リィン】 そんなら、窓から建物の中に入りま〜す。そんでロープを下に垂らして、ふたりに上がって来てもらう。
【GM】 では、シーザーとカームは[登攀]判定しましょう。
【カーム】【シーザー】 (ころっ)成功。
【GM】 それでは、3人ともギルドの中に入れたよ。
【カーム】 よし、てっぺんを目指すぞ。黒い影が入ったそうな部屋に行く〜。
【GM】 皆さんは、月明かりが窓から差し込む薄暗い、しんと静まった廊下を、足音を忍ばせてヒタヒタと走ります。そして、見つけた階段を駆け登り、3階を目指す。ところが、登り切ってみると、3階の廊下は扉で閉ざされていました。
 どうせ開けようとするでしょうから、最初に言っときましょう。それは魔法の鍵で閉ざされています。
【カーム】 ほんなら、ブチ壊すしかないな。材質は?
【GM】 木です。でも、魔法がかかってるので、強化されてますよ。
【カーム】 3人がかりでやれば大丈夫。『メガスラッシュ』を使うで、オレは。
【シーザー】 なんやそれ、必殺技かぃ。
【カーム】 そうや、いつも宿屋の裏庭で練習してきてたんや。ついに、その成果を見せるときが来たな。ま、空中の敵を死に追いやる技なんやけどな。
【シーザー】 じゃあ、いま、扉に対して使う技じゃないやろ。
【カーム】 だから、誰かあの扉を空中に放り投げて。
【シーザー】 それができるんなら、そもそもその技を使う意味がないやろ!
【カーム】 『メガスラッシュ』やのに〜。
【リィン】 なあ、扉、壊してまうの?
【アルフレッド】 やめとけって。てっぺんまで行ったからって、さっきの黒い影がおるとは限らんのやし、ギルドの人間に見つかったらヤバイで。
【カーム】 じゃあ、宿屋に帰るか。
【GM】 帰るのね、わかりました。
【シーザー】 とりあえず今日は休んで、明日の朝から活動再開や。
【アルフレッド】 気をつけたほうがええぞ。僕らいろんな情報を手にしてるから、相手側に命を狙われる可能性がかなりある。
【シーザー】 そうなったら、願ったり叶ったりなんやけどな。
【リィン】 うん、犯人自ら来てくれるんやから。
【シーザー】 さっきの怪物、絶対、ギルド長が召喚した奴やと思うねんけどなぁ。
【リィン】 召喚の魔法が得意やとか言ってたもんな。
【アルフレッド】 ただ、証拠がないねんな。
【GM】 特にすることがなければ、時間を進めますよ〜。では、暗殺者が訪れることもなく、無事に翌朝になりました。

ギルド長との面会

【アルフレッド】 朝になられてもな〜、事件がありすぎて、何から手をつけてええんかさっぱりわからん!
【GM】 それなら、今、できることからやってみれば?
【リィン】 今、できること……やっぱり、メルクのアリバイを証言しに行く?
【アルフレッド】 でも、それは信用されん可能性がある、ってGMが言うてたからなぁ。
【GM】 あくまでも、可能性としての話ですよ。
【シーザー】 ま、やるだけやってみるか。
【カーム】 意味もなくGMが警告するとは思えんけどな。
【GM】 そう思うのはそっちの勝手やけどね。
【シーザー】 あッ! きのう、魔術師ギルドに忍び込んだとき、別にギルドの連中に見つかっててもよかったんやんけ! 事情を話して、魔法の鍵を開けてもらって、一緒にギルド長の部屋に突入しとけば──。
【リィン】 ──現場、押さえられてたんや!
【アルフレッド】 いや〜、不法侵入で捕まってた可能性のほうが高いよ。
【GM】 それも、そう思うのはそっちの勝手。
【カーム】 オレら、GMの裏を読み過ぎてんのか。
【シーザー】 とりあえず、今から詰所にメルクのアリバイについて証言してみよう。俺は衛兵の変装をやめて、冒険者の姿に戻す。
【GM】 わかりました。それは全員で行くの?
【リィン】 うん。
【カーム】 ついて行ったほうがええやろ。
【GM】 では、皆さんは詰所に来ました。ま、衛兵シーザーの顔を見知ってる同僚は、運よく非番だったことにしよう。
【シーザー】 前に、領主への紹介状を書いてくれた衛兵長に、「『書店の店主殺し』について証言したいんです。我々はメルクが犯人じゃないことを証明できるんです」と言ってみる。
【GM】 それを聞いた衛兵長は、腕を組んで「う〜ん……」としばらく悩んだ後、「それは重大な証言だな」と言います。そして、再び領主マクベルに会えるよう手配することを約束してくれました。
【カーム】 よっしゃ、領主の館に行くぞ〜。
【GM】 今回は紹介状という形ではなく、衛兵長が直接取り次いでくれるそうです。皆さんは衛兵長の後をゾロゾロと、カルガモの子供のようについて行きます。
【アルフレッド】 その途中で、〈インビジビリティ〉で姿を消すことは可能?
【GM】 衛兵長に気づかれずに魔法を使うこと自体は可能やけど、「ひとり足りないぞ」ってことになるかも知れんよ。
【カーム】 しゃあない、そんときはうまくごまかしたろ。
【アルフレッド】 じゃあ、姿を消す。
【GM】 では、皆さんは館の外門の前まで来ました。衛兵長がふたりの門番に「かくかくしかじか」と事情を説明し、領主に取り次いでくれるように頼みます。それを聞いた門番のひとりが館に走り、しばらくして、6人の衛兵を引き連れて戻って来ました。そして、「衛兵長と代表者1名が来るように」と言ってきます。
【リィン】 じゃあ、シーザーに行ってきてもらおう。
【カーム】 うむ、頼んだぞ。
【シーザー】 へーへー。そっちこそ後は頼んだぞ。
【カーム】 おう、その辺で遊んどけばええんやろ。
【シーザー】 なんでやねん!
【GM】 それじゃあ、シーザーと衛兵長は6人の衛兵に囲まれて、まるで連行でもされるように館に連れて行かれます。
【アルフレッド】 僕は姿を消したまま、その後をこっそりついていく。
【GM】 では、蛮族も含めた3人は館内に入りました。シーザーは衛兵長と別れて、前回セバスチャンと面会した応接室に通された。蛮族はどうするんですか?
【アルフレッド】 とりあえず、メルクとホルトーを探すよ。
【GM】 じゃあ、シーザーの場面の処理からいきます。応接室で待たされることしばらく、セバスチャンとは別の若い執事、ラングという男がやって来ました。
【シーザー】 さっそく「かくかくしかじか」とメルクのアリバイについて証言する。
【GM】 「しかし、重要参考人であることには変わりはない」
【シーザー】 アホか。事件にまったく関わってない人間のどこが参考になるねん。
【GM】 それは口に出して言うんですか?
【シーザー】 うん、思わず。
【GM】 するとラングは、気押されたように額の汗を拭きながら、「ただ、そちらが責任を持ってくれるのなら、仮釈放にしてもいい」と言います。
【シーザー】 「あ、それなら責任持つから解き放ったってくださいよ」
【GM】 「わかりました」。シーザーは宣誓書にサインし、血判を押して、メルクの身許引受人になったよ。
 それからしばらく待たされ、応接室にメルクが連れて来られた。さすがに少し疲れてるようですが、とくにやつれた様子もなく、いちおう元気です。
【シーザー】 ほんなら、メルクを連れて宿屋に帰る。「ほな、また何かあったら呼んでください。まいどっ!」
【GM】 ラングさんは「誰が呼ぶかぁ!」って感じで、引きつった笑顔をしてます。
【アルフレッド】 お〜い、GM。メルクが解放されたんなら、僕は、なんとかホルトーを探し出そうとするよ。
【GM】 しかし、館内はかなり厳しい警備が敷かれてますね。廊下の角とか、階段の上がりきったところや降りきったところには、必ず騎士が立って目を光らせてるよ。

 というわけで、部屋の扉すら開けることのできないアルフレッドは、ロクな探索もできないまま館内で息を潜めるしかなかった……。

【アルフレッド】 ああ、僕、またこんな役や。だからこんな作戦、イヤだったんだよ。
【カーム】 とりあえず、オレらは宿屋に戻るぞ。そんでメルクに、昨日の夜のデーモンのことを話すで。
【シーザー】 「そういうわけで、魔術師ギルドの長はクロだよ。真っ黒だ」
【GM】 するとメルクさんは、「まさか、あのアズナード様が……」と驚きます。
【シーザー】 「じゃあ、今から確かめに行くかい?」
【リィン】 行こう!
【GM】 「わかりました、行きましょう」と、メルクさんは決意しました。
【リィン】 うちら、魔術師ギルドの中に入れるかな?
【カーム】 そら、メルクが入れるように何とかしてくれるやろ。
【GM】 まあ、そうやな。では、場面は変わって魔術師ギルドです。3人とメルクは、魔術師ギルド3階の一室、アズナードの私室に来ました。そこにいる30代の細身の男性が、ルニオールの魔術師ギルド長、アズナードです。
 アズナードは「私は忙しいんだ。用は手短に済ませてくれたまえ」と迷惑そうな顔をします。
【シーザー】 ここはメルクに任せよう。俺らはついて来ただけやからな。雲行きが怪しくなってきたら、俺らの出番や。

【GM】 じゃあ、メルクさんが「アズナード様、例の冒険者たちが持ち込んだ魔神についての情報の検証、どうなっているんでしょうか」と、アズナードを問い詰めます。
 それに対してアズナードは、「あれは信憑性のない噂だと、導師議会で判断したはず。おまえも納得しただろう」と答える。
 するとメルクは、「しかし、あの情報を持ち込んだ者たちがここにいます。そしてその信憑性は、極めて高いと言えるのです」と言い、さらに「昨夜もこの街に魔神が出現したようですしね」と、挑発的に続けた。
【カーム】 それに対するギルド長の反応はどうだ!
【GM】 オロオロしているのは、一連の成り行きを見守っているアズナードの側近たちで、ギルド長自身は、眉ひとつ動かさない。しかも、「ほう、昨夜も魔神が現れたか」と不敵にニヤリと笑います。
【リィン】 うちはこっそりと、この部屋の床に召喚の魔法陣がないか見てみる。
【GM】 この部屋の床には、それらしいものはないね。ま、あったとしても、リィンには魔法陣の種類などは判別できへんやろうけどね。
【カーム】 ここって、昨日デーモンが逃げ込んできた最上階やろ?
【GM】 最上階には違いない。しかし、この部屋にはさらに昇り階段があって、もうひとつ上に続いてるようやね。
【シーザー】 天井裏にでも上がる階段か。
【GM】 シーザーの視線に気づいたメルクさんが、小声で「あれは、ギルド長以外には入れぬ部屋です」と、耳打ちする。
【カーム】 そこに入れろ〜。
【GM】 だから『入ってはいけない』部屋なの!
【カーム】 でも、デーモンがそこに逃げ込んだんや〜。
【GM】 カームがそう言うと、アズナードが「そんなバカな」と笑う。そして、「そこまで言うなら、調べさせてやろうじゃないか」と言い、その立入禁止の部屋に通してくれた。ただし、アズナードの側近たちの監視付きですけどね。
【リィン】 召喚の魔法陣を探す。種類がわからんから、とりあえずそれらしいやつを。
【GM】 その部屋は、入ってきた扉以外に出入口も窓も採光のための穴すらなく、昼でも明かりを灯さないと真っ暗です。四方の壁には本棚がビッシリ並んでいて、そこには呪文書などがギッシリ納められています。
 そして、床にひとつの魔法陣が描かれているのが、すぐ目についた。
【シーザー】 メルクに小声で「これは何の魔法陣だ?」と聞く。
【GM】 メルクは「召喚実験用の魔法陣ですね」と答えます。
【シーザー】 「これでデーモンを呼び出すことも可能なん?」
【GM】 「可能でしょう」
【カーム】 じゃあ、昨日のデーモンの体液が付着してないか調べる。(ころっ)。
【GM】 それなら、人間のものではない体液が、ほんの少し床についているのを発見したよ。
【カーム】 「ここにデーモンの体液があるで」とメルクに教えたろ。
【GM】 するとメルクさんは、「これはどういうことですか!」とアズナードに詰め寄ります。すると、ギルド長はそれを手拭いで拭き取りながら、「これは以前、召喚した異形の者の体液だ。襲いかかって来たので、ここで退治したんだよ」と言います。
【リィン】 絶対ウソや。
【GM】 でも、嘘だという証拠はないですからね。メルクさんも言葉に詰まります。
【シーザー】 証拠なんているかぃ。だいたい至高神の信徒である俺にしてみれば、デーモンを呼び出す行為そのものが許されへんねんからな。その手拭いを取り上げる。
【GM】 はあ、そんでどうすんの?
【シーザー】 ギルド長に『この手拭いに付着した体液は、自分の私室で呼び出した魔神のものです』と書かせてサインさせ、血判を押させる。
【GM】 それにギルド長が素直に従うかどうか。確かにシルファス神殿にしてみれば、魔神を召喚することは許されないかも知れませんが、魔術師ギルドにしてみれば、それは邪悪な行為でも何でもありませんから。
【シーザー】 そんなこと言ってんじゃないの。別に査問委員会にかけようってんじゃないんやから、素直に書けって。

魔神出現する

【GM】 じゃあ、アズナードは訝しそうにしながらも、シーザーの言ったように書いてサインし、血判を押します。「これでどうするつもりだ?」
【シーザー】 これを王都メカリアの魔術師ギルドに持って行くねん。そこのギルド長に会って、「これはルニオールの街で何人もの命を奪ったデーモンのものです」と証言する。
【GM】 しかし、その手拭いの体液がシーザーの言う魔神のものであるという証拠は、どこにもありませんよね?
【シーザー】 だからカームを連れて行くねやん。斬ったろ、昨日。
【カーム】 おうよ。オレはめったに剣の手入れをせえへんからな〜。まだ、あいつの体液がついたままやで〜。
【GM】 なるほど、これは盲点やったな。でも魔法陣の体液と、カームの剣の体液が一致するということは証明されてませんよね。
【リィン】 100%一致するって。
【シーザー】 これは賭けやけど、勝率が限りなく高い賭けや。メカリアの魔術師ギルド長への紹介状は、メルクに書かせる。
【アルフレッド】 完璧やな。さっそく実行してくれ! 僕は館を脱出すること以外、何もでけへんから。
【リィン】 そんじゃ、うちはこの部屋のどっかに[潜伏]して、ギルド長を監視しといたろか。もう一度魔神を召喚するなら、現場を押さえたるねん。
【シーザー】 蛮族も、こっちにおってくれたらよかってん。
【アルフレッド】 何を言う。僕が領主の館におるんは、作戦の欠陥のせいやろ!
【GM】 ところでリィンは、アズナードの見ている前で[潜伏]すんの? ギルド長の側近たちだっておるのに。
【カーム】 ギルド長がサインしてるときに隠れれば大丈夫。オレが「みんな、こっちに注目〜」って言うから。
【GM】 不自然さ爆発やな。ま、いいけど。
【リィン】 じゃあ、[潜伏]するね。(ころっ)ほら、大丈夫やろ。
【GM】 でも、当然、人数が減ったことには気づかれるよ。リィンはハーフエルフの女性で、かなり目立ちますから。側近のひとりが「おや? ひとりいなくなったようだが?」と言う。
【シーザー】 「さっき、トイレに立ちましたよ」とごまかす。
【GM】 アズナードは「ギルド内を勝手にうろついてもらっては困る!」と怒ってます。
【シーザー】 怒っとけ、怒っとけ。「それじゃあ、そろそろ失礼しますよ」と言って、俺らは退散しよう。そんでそのまま、王都メカリアを目指す。
【カーム】 我が優駿『松風』の出番や。
【シーザー】 俺はリィンの軍馬を貸してもらう。すぐに出発。徹夜で走り抜けるぜ。
【カーム】 泡を吹くまで走りやがれ!
【シーザー】 心臓が破れるまでなぁ!
【GM】 では、時間を進めて昼過ぎになったことにしよう。リィンがギルド長室に[潜伏]してアズナードを見張ってると、ギルド長は、例の魔法陣の部屋に上がって行きました。
【リィン】 こっそり部屋の中を覗いてみる。
【GM】 しかし、扉には鍵穴もなく、また開けることもできません。
【リィン】 どーせまた、魔法の鍵がかかってんのやろな。ギルド長の私室って、着替えとか置いてる?
【GM】 まー、予備のローブぐらいあるんじゃないでしょうかね。
【リィン】 じゃあ、それを着て魔術師に変装して、メルクを呼びに行く。
【GM】 なるほどね。リィンは廊下でメルクさんと出会ったよ。声をかけると、メルクさんは「帰ったんじゃないんですか?!」と驚きます。
【リィン】 「ここの生徒になったのよ!」
【シーザー】 そんな2秒でバレる嘘ついてもしゃあないやろ。
【カーム】 メルクに嘘をつくメリットは何や。
【GM】 「いったい、どうしたんです?」と、メルクさんは聞いてくるけど。
【リィン】 ギルド長の魔法陣の部屋に連れて行きながら、「ギルド長がたぶん、今、魔神を召喚してる」と説明する。
【GM】 メルクさんは「なるほど、急ぎましょう」と答える。ふたりは魔法陣の部屋の扉の前に来ました。
【リィン】 魔法の鍵がかかってそうやから、メルクに〈アンロック〉してもらう。
【GM】 メルクが〈アンロック〉を唱え、扉は開きました。部屋の中では、アズナードが魔法陣に向かって呪文を唱えてます。そして、その傍には魔神が2体いるよ。「ラグナカングとダブラブルグだ!」とメルクさんは言う。さらに、魔法陣からはザルバードが今にも出てこようというところです。
【リィン】 うわ〜、魔神だらけ!
【GM】 「アズナード導師!」とメルクさんが叫び、アズナードが歪んだ笑みを浮かべて振り向く。ちなみにそのとき、ザルバードは実体化したよ。
【リィン】 こんなん、勝てるわけがないやん。メルクを連れて逃げ出す。ギルドの外に行くからね。
【GM】 リィンたちが魔術師ギルドの建物から出ると、ザルバードとラグナカングが、3階の窓から飛び降りて、ふたりを追いかけてくるよ。
【リィン】 よし、領主の館の方へ逃げよう。「魔神が出たー!」言うたら、騎士が戦ってくれるやろ。
【アルフレッド】 ちなみに僕は、その混乱に乗じて脱出するわけ。
【GM】 わかりました。では、リィンとメルクは、領主の館の外門の前まで走って逃げてきました。もちろん、2体の魔神も追いかけて来てるよ。アルフレッドは、館から脱出してくれたことにして構いません。リィンたちがいる、外門の前に出ました。
【アルフレッド】 「お〜い、リィン! ──ってなんじゃそりゃあ!?」
【GM】 騒ぎを聞きつけた衛兵や騎士たちも、「怪物だ!」と驚いてます。白昼の怪物騒ぎに、街のひとびともパニックに陥ってるよ。
【カーム】 戦わんのか、パン屋の主人とかが。
【シーザー】 どんなパン屋やねん。
【リィン】 追いかけて来たん、2匹だけやんな。ダブラブルグはどこに行ったんや?
【アルフレッド】 とりあえず、僕は魔神と戦うぜ!
【GM】 ──というところですが、ちょっと場面を変えて、シーザーとカームが馬で街道を走っているところです。前方に、突然、得体の知れないものが現れた!
【シーザー】 知ったことか、無視して駆け抜けてやる。
【カーム】 たったか、たったか♪
【GM】 もちろん、そいつは後ろから追いかけて来るよ。
【カーム】 追いつけるかぁ? 『松風』は速いぞ、おい。
【シーザー】 果してこの、『音速の貴公子』シーザー・マルケスを捕らえることができるかな?
【GM】 追いかけて来るのは、ドラゴン頭の魔神と、ガーゴイルに似た魔神です。馬は全力で走っているので、ちょっとずつ引き離して行く。が、馬がいつまで全力走行に耐えられるかは、わかりません。
【シーザー】 大丈夫、ずっと全力走行なんかはさせない。引き離したら速度緩めて、近づいてきたら速度を上げて、つかず離れずの関係にする。『妖怪通せんぼジジィ』と呼ばれるこの俺になら、できるはず。
【GM】 では、そうやって逃げててください。リィンと蛮族の場面に切り換えよう。2体の魔神が襲来してきたところやったね。
【リィン】 戦闘は衛兵たちに任せて、うちは隠れて[パリィ]しとく。
【アルフレッド】 僕は戦うぜ! 1発殴ったんねん、どりゃッ! ザルバードに、(ころっ)クリティカル・ヒット、21点。
【GM】 衛兵たちの攻撃でも、魔神たちは少し傷つきます。そして、魔神たちの反撃。蛮族には炎が吹きかけられる。[精神力抵抗]に成功したようなので、ダメージは6点ね。ラグナカングは、リィンの前の衛兵を殺した。2ラウンド目。
【リィン】 メルクにも戦ってもらおっと。

 リィンの要請で、7レベル魔術師メルクも参戦した。
 3ラウンド目、やむを得ず戦闘に参加したリィンがザルバードを撃破し、ラグナカングはメルクに〈ブレードネット〉をかけられ悶絶死した。
 メルクは「犯人は魔術師ギルド長、アズナードだ!」と叫び、衛兵たちを引き連れて、魔術師ギルドへ向かう。
 同じ頃、カームとシーザーの行く手に新たに3体の魔神が現れ、ついに戦闘に入った。5体の魔神に苦戦するカームとシーザー。
 その頃、リィンたち3人はようやく魔術師ギルドに辿り着いたのだった。

【GM】 魔術師ギルドの廊下で、ギルド長アズナードに出会いました。
【リィン】 槍で刺す。(ころっ)ヒット、7点。
【アルフレッド】 攻撃! (ころっ)はずれ。
【GM】 アズナードは顔を歪め、「おぼえていろ。こんなことで、私の野望は終わらない!」と言い残し、〈テレポート〉を唱えて姿を消してしまいました。
【リィン】 ちっ、逃げられた!

 しかたなく、メルクも〈テレポート〉し、メカリアの魔術師ギルドへ向かった。

【シーザー】 俺らの苦労はなんや〜。
【カーム】 戦えるから、ええやん。(ころっ)ほい、クリティカル・ヒット。25点のダメージね。
【GM】 一体やられましたね。
【カーム】 よっしゃ〜!
【リィン】 カーム、幸せそう。

 ふたりが苦労して戦っていると、突然、魔神のうち2体の姿が消えた。そして、残りの魔神も飛んで逃げてしまったのだった……。

【アルフレッド】 いったい、何が起きたんや?
【カーム】 「待てー、戻って勝負しろ〜ッ!」
【シーザー】 何を言う、ボロボロのくせによ。〈キュアー・ウーンズ〉で治してやろう。傷が癒えたら、メカリアに向かう。
【カーム】 メルクがすでに知らせてしまってるねんけどなー。
【GM】 では、シーザーとカームは王都メカリアに着きました。魔術師ギルドに行ってみると、そこにはメルクさんがいるんですね。
【カーム】 ちっ、先を越されたか!
【シーザー】 悔しいから、ホルトー濡れ衣事件のことから、領主のクーデター疑惑についてまで、あることないこと全て話してやる〜。
【GM】 シーザーの話を聞いたメカリアの魔術師ギルド長は、「アズナードが関わる魔神事件は、我々が責任を持って捜査しましょう。しかし、領主マクベルのクーデターやホルトー濡れ衣事件のことは、あくまで疑惑に過ぎないので、それとなく調べておくぐらいのことしかできませんよ」と言います。
【カーム】 じゃあ、ルニオールへ戻る。メルクに〈テレポート〉で送ってもらおう。
【GM】 では、ルニオールに戻ってきました。全員、合流していいですよ。
【シーザー】 あ〜あ、けっきょくギルド長を取り逃がしただけに終わったな。
【カーム】 ホルトーほったらかしやし。
【リィン】 ま、次回なんとかなるやろ。
【GM】 なればいいんですけどね。

÷÷ つづく ÷÷
©2000 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2000 Jun Hayashida
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