≪REV / EXIT / FWD≫

§伏魔の街ルニオール:最終話§

果たされた野望

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ バツ印の地図 ▽ ユピノスの混沌、裏混沌 ▽ 衝撃の結末

バツ印の地図

【GM】 さて、現在、魔神騒ぎがあった日の夕方です。いちおう騒乱は収まり、街は平穏を取り戻しています。その騒ぎを引き起こしたアズナードの行方を調べるため、メルクと衛兵長は魔術師ギルドへ行ってしまいました。
【カーム】 ほんじゃあ、オレらは宿屋に帰ろか〜。
【GM】 では、宿屋に戻って来ました。そうそう、それから、デリーは風邪から復活したよ。
【デリー】 は〜い。
【GM】 で、皆さん。宿屋に戻って何をするんですか?
【シーザー】 宿の裏の小川で、リィンの軍馬の身体を洗ってやろう。みごと、メカリアまで駆け抜けたしな。
【カーム】 オレも一緒に、『シンザン』をブラシでゴシゴシ擦る。
【シーザー】 名前、変わってもとるやんけ。
【カーム】 それはもう、呼ぶたびに変わっていくから。
【リィン】 うちはふたりが馬を洗ってるところをそばで眺めてる。
【GM】 で、蛮族が茂みに隠れて馬を狙っとるんやろ。食うたろ、思うて。
【リィン】 追い返したんねん。「しっしっ!」
【GM】 というわけで追い返された蛮族は、再び伝説の剣を求めて旅に出るんやね。デリーはどうします?
【デリー】 メルクさんはギルド長の行方を調べてるんですよね。
【GM】 そう。現在、魔術師ギルド内のアズナードの私室を調べているところです。
【デリー】 じゃあ、それを手伝いに行ってもいい?
【GM】 どーぞ、どーぞ。
【デリー】 ほんなら皆さん、使い魔の猫、いちおうここに置いて行きますから。何かあったら知らせて。
【リィン】 その猫いじめて遊んどこ。
【シーザー】 肉球、ぎゅううぅぅって。
【デリー】 やめて〜。
【GM】 デリーは魔術師ギルドに行き、メルクさんや魔術師ギルドの偉いさん、それから衛士長といった面々に混じって、アズナードの私室を調べました。すると、メルクさんが1枚の地図を発見したよ。その地図には、いくつかの地点にバツ印が記されてるんやわ。
【カーム】 わかったぞ。アズナードの秘密基地の位置を描いてるんや。
【シーザー】 地図に描いた時点で『秘密基地』ではないな。その地図って、どこらへんの地図なん?
【GM】 メカリア王国から、オレンブルク周辺にかけての地図ですね。バツ印は、合計で5ヶ所あります。
【カーム】 けっこう多いな。
【デリー】 メルクさんに「その地図を写し取ってもいいですか?」と聞いてみる。
【GM】 メルクさんは「いいですよ」と了解してくれました。
【デリー】 じゃあ、写そう。それから、そのバツ印が何を意味してるのか、メルクさんに聞いてみます。
【GM】 それは、メルクさんも答えようがない。はっきりとしたことがわからんからね。「とりあえず、印が書かれた地点に行って、実際に探索してみないことには……。王都メカリアの魔術師ギルドに連絡し、ルオニールおよびメカリアの兵士たちの協力も仰ぎ、そこに調べに行ってみます」と、メルクさんは言うよ。
 え〜、ここでデリーはダイスを振ってみてください。
【デリー】 何かわからんけど、(ころっ)。
【GM】 なるほどね、じゃあ、デリーは何も気づきませんでした。
【デリー】 え? え? 何が?? めっちゃ気になるぅ〜。
【GM】 気にしなくてもいいですよ。忘れて。
【リィン】 そう言われてもなぁ。
【カーム】 余計に気になるやろ。
【GM】 ま、それはこっちに置いといて、ちょうどそのとき、領主マクベルの屋敷からの遣いと名乗る男が、「衛士長の報告〜」と、やって来ました。その話によると、ホルトーさんの娘が姿を消したそうです。
【デリー】 ホルトーさんに娘さんがおったんか。その遣いの人に質問します。「ホルトーさんの娘さんは、マクベルの屋敷にいたんですか? ホルトー関連のひとは屋敷に閉じ込められてると聞いてたんで……」
【GM】 「なぜ、おまえにそんなことを話さねばならん」
【デリー】 冷たいなぁ。
【カーム】 きっと、知られたくない情報なんやな。
【デリー】 で、魔術師ギルドの人たちは、ホルトーさんの娘さんの捜索をするんですか?
【GM】 いや、領主の遣いは衛士長に報告しに来ただけやから。その件に関しては、魔術師ギルドはまったく無関係ということで、ギルドが動くことはありません。
【デリー】 じゃあ、メルクさんたち魔術師ギルドが動くのは、バツ印の地点の捜索に関してだけやね。それはすべての地点に捜索隊を派遣するの?
【GM】 そうですね。明日にでも、魔術師や貸し出された衛兵などで構成された捜索隊を、各地点へ派遣するようです。
【デリー】 う〜ん、それならあたしらの出る幕はないか……。
【カーム】 オレらはホルトーの娘探しでもして、ヒマを潰しとこ。
【デリー】 『ヒマを潰しとこ』って……そんなことしてる場合じゃないんと違うの?
【GM】 そうこうしてるうちに、バツ印の地点捜索の打合せは終わり、衛士長は「私はホルトーの娘の捜索もしなければならないから」と言って退室していきます。
【デリー】 じゃあ、衛兵長を追いかけて「私も同伴してもいいですか?」と聞く。
【GM】 「いや、部外者に出しゃばられては困るんだが」
【デリー】 「でもわたし、ホルトーさんに依頼を受けている冒険者です。放っておくわけにはいかないんですけど……」
【GM】 「知ったことか。冒険者だか何だか知らんが、我々の捜査に首を突っ込むな!」
【デリー】 はあ、わかりました……。じゃあ、あきらめて宿屋に帰ります。そんで地図のことと、ホルトーの娘さんのことをみんなに報告する。
【カーム】 デリーが書き写した地図を見せてもらう〜。おー、砂漠や山や海の中にまで、バツ印があるなぁ。
【リィン】 バツ印を線で繋げたら、何かの模様になるとか。
【シーザー】 そういえば、全滅したゼム村の近くとか、壺男の遺跡の近くとか、モナル村の猟師が迷った霧の近くとかに印がついてるみたいやな。
【リィン】 このうちのどれかにホルトーの娘がおったりして。
【デリー】 いやいや、ホルトーの娘とギルド長は関係ないって。
【シーザー】 そう思うとこやけど、じつはな、ホルトーの娘はな、アズナードの魔法の儀式の生贄にされかかってんねん。
【カーム】 めっちゃ適当。
【リィン】 ホルトーの娘って何歳ぐらいなんやろ?
【シーザー】 そりゃ、生贄になるぐらいやから17、8ちゃうの。
【デリー】 また、適当なこと言うて……。
【GM】 さて、外はすでに宵闇に包まれつつあるやけど、皆さん、どうしますのん?
【シーザー】 とりあえず、我々は娘の行方を捜索をするぞ。アズナードの生贄にされるに決まってるから。
【デリー】 だから、決めつけはアカンて。それに、捜索って言っても、わたしたちには何の手がかりもないよ。
【リィン】 うちが盗賊ギルドに行って情報を集めてくるから、大丈夫、大丈夫。
【カーム】 そんならオレらは夕飯食ってるから、リィン、ちょっとダッシュで行ってこい。
【デリー】 夕食抜きか。かわいそ〜。
【リィン】 夕飯食べながら行くからええもん。食べ歩き。
【シーザー】 『食べ歩き』の意味がちゃう!
【GM】 では、リィンは毎度おなじみ盗賊ギルドにやって来ました。すっかり顔なじみになった目つきの悪い男が、「何の用だ」と言ってきます。
【リィン】 そいつに「ホルトーの娘、知ってる?」って聞く。
【GM】 なんちゅう質問のしかたや。ホルトーの娘を知ってるかと聞かれたら、そりゃあ「俺は知らん」と答えるしかないでしょう。
【リィン】 「いなくなったって、ほんま?」
【GM】 リィンは受け答えする気ないやろ、ひょっとして。
【リィン】 めっちゃする気ある、っちゅうねん。
【シーザー】 でも会話になってへんがな。
【GM】 ホンマや。ギルドの男も泣きそうな顔で「何のことか、さっぱりわからん」って言いよるわ。
【リィン】 「ほんなら、ホルトーの娘がおらんようになったから、そいつのこと調べて」
【GM】 「それはいいが、こっちだって商売なんだがね」
【リィン】 金が欲しいんか。そやろ。
【GM】 「……うん」
【リィン】 んじゃ、20フィス渡す。
【GM】 たったの20フィス?!
【リィン】 あー、そんじゃあ100フィスあげるよ。
【GM】 では、「明日の朝、いちばんに情報を届けるようにしよう」と約束されました。
【カーム】 地図のことも聞いとき。

【リィン】 そんじゃ、バツ印のついた地図を見せて「ここ、なに?」。
【GM】 「知らねえよ、そんなもん。だいたい何だ、この地図は?」
【リィン】 デリーが写してきてん。
【GM】 そんなこと聞いたんとちゃうわッ!! ギルドの男はぐったりした顔で、「でも、ま、そのバツ印の地点を調べたら、何かわかるかも知れないな」と言います。
【リィン】 じゃあ調べといて。
【GM】 印のつけられたところ、全部?
【リィン】 そう。海に書かれた印のところがいちばん気になるから、そこは特に力を入れて。
【カーム】 そこにはきっと、海のボスとかがおるんやろな。
【リィン】 タコとか。焼いて食ったるねん。
【シーザー】 それはぜひ、明石焼きにせんと。ソースを塗ったうえ、ダシ汁につけて食べるのが、明石市民による真の明石焼きの食べ方やね。
【カーム】 そんな話、聞いたことないわ。
【GM】 それは置いといて、盗賊ギルドの男は「地図の地点の捜査は、明日までにはムリだ。少し時間がかかるぞ」と、リィンに言うよ。
【リィン】 うん、いいよ。じゃあ、宿屋に帰るね。

ユピノスの混沌、裏混沌

【GM】 では、時間を進めて翌朝になりました。リィンたちが1階の酒場で朝食を食べていると、ホルトーの娘の情報を集めていた盗賊ギルドから、報告が入って来たよ。娘の名前はティナ。ホルトーの娘ということですが、養女です。
【デリー】 養女ってことは、ティナはホルトーとは直接血が繋がってへんのやな。
【リィン】 きっとアズナードの妹なんや。そんで連れていかれたんや。
【デリー】 また、そんな突拍子もないこと言うて。
【カーム】 ティナは魔術師とかじゃないん?
【GM】 ただの一般市民です。ちなみに年齢は十六ね。
【カーム】 そのティナとか申す娘の似顔絵を描いてよこせ。
【GM】 へーへー。似顔絵をよこされました。それなりに可愛いお嬢さんですな。
【シーザー】 それなりに可愛い16歳ってことは、やっぱり生贄なんやろな。
【リィン】 絶対アズナードの奴、妹を使って何か呼び出すんやで。
【シーザー】 破壊神や! 破壊神を呼び出すんや。破壊神を呼び出す祭器が盗まれてへんか、魔術師ギルドで調べよう。
【カーム】 祭器って、どんなアイテムや。
【シーザー】 よくわからんけど、召喚の儀式には強力なマジック・アイテムがつきもんやろ。
【GM】 えらい話が飛躍してますけど、とりあえず、そういうふうに動くわけね。それじゃあ、皆さんが魔術師ギルドの建物に入ろうとすると、慌てた様子で飛び出してくるメルクさんと出くわしました。
【リィン】 きっと何か盗まれたんやで。
【デリー】 「どうかなさったんですか?」と尋ねる。
【GM】 「ああ、実は我がギルドで保管しておいたはずの、危険なアイテムがなくなっているんだ!」と教えてくれます。
【カーム】 危険なアイテムってなんだ?
【GM】 『混沌の書』と『魔神の像』、それから『召喚の水晶球』と呼ばれる物です。
【シーザー】 そのまんまやな。
【カーム】 うむ、それは危険や。めっちゃ危険や。
【デリー】 その3つのアイテムについて、詳しく教えてくれるようにメルクさんに頼みます。
【GM】 じゃあ、メルクさんが知っている範囲で答えましょう。
 まず『混沌の書』には、混沌のことが書かれてあります。この世界における混沌というのは、創造神ユピノスがこの世を創るときに使った、まあ、世界の材料みたいなものです。その混沌から、大地や草木、神々とその眷属が生み出されたと。
【デリー】 つまり、この世界は混沌でできてるわけか。
【GM】 まあ、そういうことやね。ちなみに、ユピノスの混沌にはある特徴があります。それは、裏混沌というものができてしまうことなんですわ。
【カーム】 なんや、その裏混沌というのは。
【GM】 う〜ん……例えが難しいんやけど、「あるものを生むと、対になる存在ができる」という感じかな。
【デリー】 つまり、光を生み出すと、闇が生まれるみたいな?
【GM】 まあ、単純に言えばそうなるな。プラスに対するマイナス、善に対する悪という感じで、ユピノスの混沌から生まれたものと常に表裏を成す存在があるわけ。その対になる世界を形勢するのが、裏混沌というわけやね。
【シーザー】 その裏混沌があると、何か困るのか?
【GM】 もし、ユピノスの混沌と裏混沌が混ざり合えば、プラスとマイナスが混ざり合うということになるんで、すべてがゼロ──無に帰します。でも、裏混沌の世界は、ユピノスの世界とは別次元に存在してるので、ふつう、混ざり合うようなことはないはずです。
 で、『魔神の像』の説明なんやけど、これは魔神──デーモンを召喚するための祭器だそうです。この世界におけるデーモンとは、裏混沌の世界の住人とされています。
【シーザー】 じゃあ、こっちの世界に出てきたとたん、存在がゼロになって消えるんとちゃうの?
【GM】 ええ、だから賢者たちの間では、こっちの世界に出てきたデーモンの肉体は仮そめのもので、本来の肉体は裏混沌の世界にあるんじゃないか、という説が唱えられてるんですわ。「もし、その説が正しいなら、『魔神の像』はデーモンに仮の肉体を与える祭器なのではないだろうか」と、メルクさんは言います。
【リィン】 そんで、『召喚の水晶球』ってなに?
【GM】 『召喚の水晶球』はそのまま。召喚の儀式に使うものやけど、その対象は魂とか精神体とかいうものだけね。物質の召喚や、知能のないエネルギー体の召喚なんかはできんよ。
【シーザー】 なるほど。
【GM】 で、結論。古代文字が読めて、古代語をしゃべれる人物がこれら3つのアイテムを揃えれば、その技能が未熟でも、魔神──デーモンを召喚することは可能だそうです。ただ、呼び出した魔神を支配するには、高レベルの知識が必要ですけどね。
【デリー】 それらのアイテムは、研究材料だったんですか? それとも宝物庫に厳重に保管されてたとか……。
【GM】 3つのアイテムはすべて、禁断の部類のものとして、封印されていたそうです。
【シーザー】 あれ? 以前に、「そういう危険なものは、ルニオールの魔術師ギルドにはない」って言ってなかったか?
【GM】 言うたよ。ただ、今回なくなった3つのアイテムは、アズナードが個人的に保管していたもので、魔術師ギルドが保持してたものではないから。アズナードは、メルクさんたちに「友人の魔術師に頼まれ、預かっているのだ」と説明していたそうです。
【デリー】 アズナードに騙されてたんやな。
【GM】 う〜ん、騙してたのかどうかは、はっきりとはわからんけどね。ホンマに預かってたんかも知れへんし。
【カーム】 で、それはいつ盗まれたん?
【GM】 「なくなっているのに気づいたのは、今朝だ。しかし、おそらくアズナードが姿を消したときに、一緒に持って行ってしまったのではないだろうか」
【シーザー】 ……ずさんな管理してたんやな。危険なアイテムやのに。
【リィン】 たぶん、メルクらも処分はまぬがれへんで。
【デリー】 魔力探知の魔法で、そのアイテムの在り処がわかりませんか?
【GM】 それでわかってたら、苦労はしませんがな。メルクさんは「もちろん、わからない」と、力強く答えてくれます。あと、鑑定中だった謎の指輪も紛失しているそうです。
【カーム】 どんな指輪や。そいつの鑑定結果は出てへんのか。
【GM】 「鑑定中だったので、もちろん、結果は出てない」
【シーザー】 まあ、それも魔神関係の代物なんやろな。で、その指輪の出所は? 誰かが持ち込んだから、鑑定してたんやろ。
【GM】 「鑑定を依頼してきたのは、ホルトーだ」
【シーザー】 ほう。それをアズナードが持ち去ったんか。
【GM】 「たぶん」
【カーム】 自信なさげな太鼓判や。
【リィン】 とりあえず、アズナードの部屋を調べさせてもらおう。
【GM】 いいでしょう、案内されたよ。
【リィン】 [捜索]する。(ころっ)。
【GM】 リィンは本棚の一角に、不自然な箇所を発見しました。そこを調べてみると隠し棚があって、1枚の地図と、魔神関係の学問について記された、アズナードの書物が保管されています。
【リィン】 地図を見ちゃえ。
【GM】 その地図は、例の5つのバツ印が記されてあった地図と同じ地域を描いたものやね。ただし、バツ印は書かれてなく、そのかわりにある地点にマル印が記されています。その場所は、どのバツ印の地点とも符合しない。
【リィン】 きっと、マル印のところで召喚の儀式をしてるんや!
【カーム】 ということは、捜索隊は全員はずれか。じゃ、マル印のところに行こう。『ホクトベガ』発進! 砂の女王やで〜。
【シーザー】 砂の女王でも、今回は四人の移動やから、リィンの馬と一緒に馬車を引いてもらうぞ。
【GM】 では、皆さんはマル印の地点を目指し、馬車に乗って出発しました。ウン日旅して、すぐに到着したよ。待ち構えていたのは、行く手を阻む岩壁にぽっかり開いたひとつの洞窟。自然のほら穴のようで、外に見張りはいません。
【カーム】 洞窟か。入るしかないやろ。
【GM】 隊列はどうします?
【シーザー】 先頭はカーム、真ん中にリィンとデリーが並んで、しんがりが俺。たいまつは先頭のカームが持って、俺がランタンを持つ。
【デリー】 お〜、完璧。

 冒険者たちは最初のT字路を左に進み、広い空間に出た。その奥の岩壁には、明らかに人の手が入ったような箇所があり、そこが隠し扉となっていた。
 隠し扉の向こうは下り階段で、下りきったところから人工的な洞窟に変わった。隠し階段を下りてすぐのT字路を右に進んだ一行は、突き当たりの部屋で、またしても隠し扉を発見する。そして、その扉の向こうの隠し部屋には、スケルトン・ウォリアーが2体、待ち構えていた!

【GM】 行動順位は、リィン、デリー、シーザー、スケルトン・ウォリアー、カームになるね。では、リィンからどーぞ。
【リィン】 ショート・スピアで突いちゃえ。スケルトン・ウォオリアーAに、(ころっ)当たり、ダメージ9点。
【デリー】 魔法を使いたくないから、Aに武器で攻撃。(ころっ)1ゾロ!
【シーザー】 Bに攻撃、(ころっ)はずれ。
【GM】 では、スケルトン・ウォリアーたちの反撃。Aはデリーに攻撃して当たり、ダメージは1点。Bもシーザーに当てたけど、こっちは鎧で止められた。
【カーム】 スケルトン・ウォリアーBに攻撃。(ころっ)当たり〜、ダメージ13点。
【GM】 ちょこっと痛いね。

 冒険者たちは、カームが2点の負傷を受けたものの、4ラウンド目にスケルトン・ウォリアーAを、5ラウンド目にスケルトン・ウォリアーBを撃破した。

【リィン】 その部屋を[捜索]してみる。(ころっ)何も見つからない。
【カーム】 じゃあ、階段を下りたところのT字路まで戻って、今度は左方面に向かう。
【GM】 その先は、同じようにひとつの部屋に繋がってございます。入って右手の壁には、通路への出入口があり、その通路を進むと、すぐに隣の部屋に入ります。その部屋に入って左手の壁には、ひとつの扉があり、その扉は閉まっています。
【リィン】 ほんなら、閉まってる扉の前で[聞き耳]してみて、[罠発見]してみる。(ころっ)。
【GM】 扉の向こうからは、とくに何も聞こえませんね。扉に罠はありませんが、どうやら鍵がかかっているようです。
【リィン】 じゃあ[鍵開け](ころっ)6ゾロ!
【GM】 それなら、鍵は開きました。
【カーム】 扉を開けて、入るぞ〜。
【GM】 扉の向こうは、かなり広い空間です。奥には祭壇があり、その上にひとりの少女が横たえられているのが見えます。少女の側には、怪しげな像も供えられています。
【シーザー】 女はホルトーの娘のティナで、怪しげな像は盗まれた『魔神の像』やな。じゃ、とっとと持って帰ってしまおう。
【デリー】 えっ、そんなあっさり? その部屋、他に誰かいたりせんの?
【GM】 いるに決まってまんがな〜。
【シーザー】 ちっ、せっかくいないことにしてたのに。
【GM】 甘い、甘い。祭壇の前には、皆さんに背中を向けるかっこうで、何か一心不乱に呪文を唱え続けている男がいます。そしてその両脇に、見たことがない魔神が3体、ラグナカングが3体、立っているのがわかる。
【リィン】 その男って、アズナード?
【GM】 そうですな、見覚えのある、アズナードらしき後ろ姿かな。

衝撃の結末

【デリー】 とりあえず、初めて見る魔神を[怪物判定]する。(ころっ)。
【GM】 そいつはスポーンという魔神。魔神としては下っ端で、特殊能力などはありません。
【リィン】 下っぱか、けっこう弱いかも。よっしゃ、スポーンAに特攻したる。(ころっ)当たり、9点。
【デリー】 あたし以外の3人に〈プロテクション〉。(ころっ)かかった。召喚する奴を先に殺しとかんと、次から次に魔神を呼びよるかも知れんで。
【シーザー】 GM、アズナードに攻撃できるの?
【GM】 いや、スポーンとラグナカングがそれを阻むので、難しいでしょう。
【シーザー】 なら、スポーンBに攻撃。(ころっ)はずれ。
【GM】 アズナードは怪しげな儀式を続行中。
【カーム】 スポーンBに攻撃。たあッ! (ころっ)ヒ〜ット、15点のダメージ〜。
【GM】 スポーンAはリィンに、Bはカームに反撃──どちらとも回避された。その他の魔神は動かない。ほいでは、第2ラウンドに入りましょか。

 2ラウンド目にスポーンBがカームに、3ラウンド目にスポーンAがリィンに倒された。殺されたスポーンはドロドロと溶けてゆく。

【GM】 リィンの武器にも、溶けたスポーンの体液がべっとり付いてたりするんやね。
【リィン】 あー、汚れた〜。隣の人の服で拭いとこ。ふきふき♪
【シーザー】 なにしさらしとんじゃい!
【GM】 最低やな。
【デリー】 スポーンCに〈エネルギーボルト〉。(ころっ)10点行きました。
【シーザー】 魔法を使うなら、アズナードを狙ってほしかった。スポーンCに攻撃。(ころっ)ヒットでダメージは13点。
【GM】 スポーンCもドロドロ〜と溶けてしまいました。
【カーム】 スポーンが消えたということは、ついに直接アズナードのところへ行けるのかな?
【GM】 い〜え、まだラグナカングが立ちはだかってるよ。
【カーム】 しゃ〜ないなぁ、ほんなら〜、ラグナカングBに攻撃。(ころっ)おっ、久々にクリティカル・ヒットした。ダメージは28点。
【GM】 28点?! 戦士がクリティカルすると怖いなぁ。でも、死んでないよ。ラグナカングA、Bの反撃じゃ〜。……はずれ。第4ラウンド。

 リィンがラグナカングAにショート・スピアで、デリーがラグナカングBに〈エネルギーボルト〉で、それぞれクリティカル・ヒットを出した。瀕死状態にされたラグナカングBにシーザーがとどめ刺し、アズナードを護る壁はいよいよ薄くなってきた。
 ここで、ついにアズナードが動いた。いちど儀式を中断し、幻影の獣に襲わせる(ただし、ダメージは本物)呪文〈イリュージョナリー・ビースト〉をリィン、カーム、シーザーに唱えたのだ。

【GM】 では、[精神力抵抗]に失敗したリィンとカームの前に、緑と黒の斑模様の長い体毛に覆われた、体長2メートルほどの直立した獣人が現れます。顔は猫のようやけど、口は耳まで裂けていて、瞳がない目は血のように赤く輝いている。下半身は、闇の中に溶け込んでいて見えません。両手に鋭い鍵爪が生えてるよ。ちなみにこいつは、シーザーとデリーには見えません。
【カーム】 しゃあないな、とりあえず幻影を倒すか。行くぜ! (ころっ)はずれ。
【GM】 それははたから見てると、何もない空間に攻撃してるように見えるんやね。じゃあ、第5ラウンド。

 イリュージョナリー・ビーストの攻撃が、カームとリィンを捕らえる! ……しかし〈プロテクション〉のおかげでふたりはダメージを受けることがなく、幻影の獣人はすっかりザコ扱いされてしまう。
 だが、一度ダメージを被らなかったぐらいでなめてかかったのが悪かった。その次のラウンドで、リィンはイリュージョナリー・ビーストの打撃をくらい、生命力を半減させられた。カームもまた、幻影とラグナカングAにじわじわと生命力を削られてゆく。
 8ラウンド目、幻影獣人の妨害に苦しめられながらも、リィンはなんとかラグナカングAを撃破した。すると、そのラウンドの終わり、アズナードは4人に〈エネルギーボルト〉をかけてきた。

【GM】 シーザーに12点、カームにも12点、リィンに12点、デリーに13点いきました。レベルで止めてください。
【デリー】 げっ、倒された〜。あっ、でも気絶で助かってる、よかった。
【カーム】 幻影獣人に攻撃。くたばれ〜、(ころっ)ダメージは25点!
【GM】 まだまだ、くたばりまへ〜ん。では第9ラウンド。
【リィン】 イリュージョナリー・ビーストに攻撃、(ころっ)はずれ。
【シーザー】 全員に〈キュアー・ウーンズ〉。(ころっ)リィンは11点、デリーも11点、カームも11点、俺は10点、生命力が回復する。
【リィン】 おっ、生命力あふれた。
【GM】 鼻血になって出よるわ。

 このラウンドで、カームはイリュージョナリー・ビーストを倒した。そして、カームとシーザーはアズナードに襲いかかる。途中からはラグナカングCを倒したリィンと、精神力を使い果たした魔術師デリーまでもが、アズナードとの白兵戦に参加して、最終戦にふさわしい火の出るような攻防が繰り広げられる。
 そして14ラウンド目……。

【カーム】 もう戦闘にも飽きたし〜、とどめ刺そっかな〜。(ころっ)おっ、当たった。ダメージ17点やで〜。
【GM】 「ぐはあ〜!」と、アズナードは倒れました。
【デリー】 やったーッ! 苦労した〜。
【GM】 ──と、喜ぶ皆さんの目の前で、倒れたアズナードの姿が変わっていきます。
【カーム】【シーザー】【リィン】【デリー】 ……え??
【シーザー】 まさか、ドッペルゲンガーか!?
【GM】 ご名答。真っ黒けの3メートルの巨人の姿に変わるんやね。ちなみに、のっぺりした顔には、一文字に裂けた赤い口だけがあります。
【リィン】 気持ち悪ぅ〜。
【シーザー】 こんな奴のために1時間半(現実時間)もかけて戦ったんか!
【カーム】 とりあえず、娘だけでも持って帰ろうや。
【GM】 持てませんよ。というか、触ることもできませんのやわ。
【リィン】 ……幻覚??
【カーム】 オレら、騙されたんか!
【デリー】 魔神の祭器も偽物か。
【GM】 イエース。
【リィン】 じゃあ、アズナード本人は?
【シーザー】 知るかぃ。どっかで魔神を召喚でもしてるんやろ。……ドっと疲れが出た……。とりあえず、ドッペルゲンガーを持って帰ろう。
【GM】 では、皆さんはルオニールまで戻って来ました。すると、まあ、とんでもないことになってるんですな。
【カーム】 なんや、何が起こってるんや。
【GM】 アズナードがルオニールから姿を消して、今日で7日目。辺境の村が滅ぼされたり、魔神が出現したりということになっているそうです。
【シーザー】 魔神の召喚に成功した、ってことか。
【リィン】 地図に記されてたバツ印って、けっきょく何やったんやろ。正解の場所は、そのどっかにあったん? やっぱり海の中かな。
【GM】 バツ印の地点には、洞窟なり遺跡なりがあるんですが、そこにはそれぞれ下級魔神がいたそうです。で、いま判明したことですが、ホルトーから持ち込まれたという指輪は、『魔神支配の指輪』だったとのこと。かなり強力なアイテムで、使う人の技量によっては、上級魔神をも支配することができるそうです。
【シーザー】 ドッペルゲンガーもそれで支配されてたんやな。
【GM】 あとティナについてですが、リィンの読みどおり、彼女はアズナードの妹です。正確に言うと異母妹ですが。
【シーザー】 ま、とっくに生贄にされてるんやろな。相手が〈テレポート〉を使えることを考えたら、ティナが浚われた時点で手遅れやったんかも知れんな。
【リィン】 あ〜あ、レムリア大陸、やばいことになるんとちゃうの。
【デリー】 けっきょくアズナードって何が狙いやったん?
【シーザー】 魔神を呼び出すにしても、回りくどいこといっぱいやってたなぁ。
【GM】 アズナードの真の目的は魔神召喚ではなくて、世界征服です。
【シーザー】 月並みな。もっと意表を突いた目的は持てんのか。
【カーム】 何のために世界征服しようとしてたんや。
【GM】 征服の目的は、魔術師による魔法王国の再興です。アズナードは、魔法至上主義者なんですね。
【カーム】 それは阻止せねば。オレは魔法が使えないので〜。
【デリー】 あたしは使えるよ。
【リィン】 だからどーした。
【デリー】 いや〜、だから別に魔法王国が再興されてもいいかな〜、なんちて。
【GM】 それから後日談として、クーデターの疑惑があったルオニール領主のマクベルに対して、国王側は懐柔策に出たようです。やはり「証拠がない」ということで、強硬な姿勢はとれなかったんやろね。マクベルにしても、彼はアズナードに利用されてただけなので、あっさりと王国に従順な態度を示し、メカリア王国内のいざこざは、いちおう区切りを見せました。
 マクベルに拘束されていたホルトーさんは解放され、王都メカリアでは数日後、滞りなく新国王の戴冠式が執り行われます。
【シーザー】 じゃあ、俺らもホルトーの護衛でメカリアまで行こう。
【デリー】 最初に契約してた仕事やしな。
【GM】 とりあえず、このキャンペーンはこれで終了です。
【デリー】 え? じゃあアズナードの世界征服はどうなるん。そのまま成功?
【リィン】 たぶん、別のパーティが阻止するんやろ。
【GM】 阻止できたらええんやけどね。ま、どのみち、その話は別のキャンペーンになるでしょう。皆さんは、アズナードの野望の阻止には失敗しましたが、それなりに名の売れる冒険をしてきたので、それなりのNPCとしての引退生活が待ってるよ。
 カームは傭兵として、各地の戦場を転々としながら暮らしていくようです。
 シーザーはホルトーさんの口利きで、メカリア王国の騎士になり、やがて近衛騎士団長に出世しました。
 リィンはメカリアの盗賊ギルド幹部になり、デリーはルオニールの魔術師ギルドに入門し、最高導師となったメルクさんの補佐をするようになりました。
【リィン】 でも、デリーは『魔法王国が再興されてもいい』って言ってたよ。
【シーザー】 また、ルニオールの魔術師ギルドは、腹にいちもつを持つ人物を抱え込んでしまったな。
【デリー】 あんなん冗談やんか〜。
【GM】 そお? デリーがアズナードに共感しても、それはそれで面白いと思うけど……。
 とにかくこれ以降、レムリア大陸は魔神が闊歩する世になる。果して、真の平和が訪れるのはいつの日か。時にレムリア暦540年、クラリオン大戦終結から22年、世界は再び動乱の渦に巻き込まれてしまったのでありました──。
【シーザー】 しかし、いいのか〜? こんなキャンペーンの終わり方で。
【GM】 ま、新しい物語の布石やと考えれば、それなりに意味のあるキャンペーンやったと思うよ。では皆さん、ごきげんよう。

÷÷ おわり ÷÷
©2001 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2001 Jun Hayashida
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