▽ 冒険者たちテレポを求める事 | ▽ 危険な宿泊客の事 | ▽ ラヴァーズの行方の事 |
【GM】 キミたちは、魔術師ギルドの総合案内所にいます。来客や、掲示板を眺めてる学生とか、いっぱいいるね。
【ロートシルト】 用事なさそうやな、ロートシルトにとっては。「女、おれへん〜」って。
【GM】 女学生がけっこういるけど。2〜3人で掲示板見て、「図書館でバイトだって」とか何とか、言うてるよ。
【ロートシルト】 じゃあ、声をかけよう。
【パチモーン】 「この後、暇?」って?
【ロートシルト】 最悪や。まだ午前中やのにな。見境なしやな。
「俺、今、金持ちなんだよ」って。
【パチモーン】 あ、そうや。キャットクローを売って手に入れた金、半分こっちに渡して。
【ロートシルト】 あー、はいはい。
【ファンリー】 じゃ、そんなのを尻目に受付へ行く。
【ロートシルト】 そんなことされたら、「ファンリー! キミだけだよっ!」とかって、急いで戻って来るから。
【GM】 受付に行くと、事務のお姉さんが応対してくれるよ。用件は何かな?
【ファンリー】 〈テレポート〉を使えそうなひとがいないか、聞いてみる。
【GM】 受付のお姉さんは、「キルド長や、その他の高位の魔術師を合わせて、〈テレポート〉を使える魔術師は9人います」と、教えてくれた。
【ファンリー】 ティガーのためにやったら、〈テレポート〉を使ってくれるひとはいるかな。
【GM】 9人のうち7人は、昨年、“邪神の眠る島”でティガーとメイユールに助けられた魔術師やね。
【ロートシルト】 拍手してくれたひとたち?
【ファンリー】 じゃあ、〈テレポート〉して欲しいな。
【GM】 ところが、9人の魔術師のうち8人は、現在、コンタクトが取れない状況らしい。
【ファンリー】 なんで?
【GM】 今年の初めぐらいから、ギルド長とその側近が忙しく働いてて、ほとんどギルドにいない状態になってるらしい。
【パチモーン】 ほう。
【GM】 夏辺りで、〈テレポート〉が使える残りの8人のうち7人がギルド長に合流して、その手伝いをしはじめた。
【ファンリー】 残りの1人は何? 窓際族?
【GM】 残りの1人は、アレッサンドロ・ネオドールという魔術師。52歳と高齢で、激務に耐えられる体力がないのよ。だから、ギルドにて、自分の研究を続けてるらしい。
「でも、もしかすると、ネオドールさんもギルド長に呼ばれるかも」と、お姉さん。
【パチモーン】 なんで?
【GM】 ギルド長の手伝いをしてたうちの1人、アズナードという魔術師が、10月23日にプロジェクトからはずされて、11月1日付けでギルドから破門されたそうな。
【ファンリー】 何かしたん?
【ロートシルト】 女を呼んだんや。スキャンダルや。
【GM】 なんか、自分と同じレベルで考えてるな(笑)。
「詳しいことは知らないけど、噂では、ギルド長の大事なひとを殺したらしいよ」と、お姉さんは言う。
【パチモーン】 それは破門されてもしゃあないな。その噂がどこまで本当か、わからんけど。
【ファンリー】 じゃあ、残ってる爺さんに会いに行こう。
【GM】 それでは、アレッサンドロ・ネオドールさんとの会見のアポイントメントを取りつけた。会見まで、ちょっと時間かかるけどね。
【ファンリー】 どれくらいかかるの?
【GM】 まあ、昼過ぎ……午後3時ぐらいかな。
【ファンリー】 今日中ならいいよ。「1週間後です」とか言われたらイヤやな、って思ったけど。
【GM】 待ってる間、何かすることある? なければ、3時までさくっと飛ばすけど。
【ロートシルト】 べつにない〜。実りのないナンパをしてるぐらい。有意義な時間や。
【パチモーン】 実りがないのに?
【GM】 では、約束の時間になりました。キミたちは、ネオドールさんの研究室の応接間にいます。
テーブルを挟んで対面のソファに腰掛けてるのが、アレッサンドロ・ネオドール導師。召喚系の魔法を研究している、52歳の男性です。
【ロートシルト】 なんや、消える魔球とかの研究ちゃうんや。
【ファンリー】 そっちのほうがいい!(笑)
【GM】 『いい』って言われても……。ちなみに、彼も“邪神の眠る島”でティガーたちに助けられた魔術師のひとりです。
そうそう、会見の時間は15分ね。これでも忙しい身やから。
キミたちは、勧められるままに、ふかふかのソファに腰掛けています。
【ファンリー】 乞食のソファもふかふかやったな。乞食のソファのほうが、ふかふかやったかも知れへん。
【GM】 乞食のことを思い出してるんや。
【ファンリー】 あれ、すごかったな〜って。
【パチモーン】 そうやってファンリーが呆けてる間に、ネオドールさんに、こちらの事情を包み隠さず全て話すよ。
で、〈テレポート〉でボアに飛ばしてくれへんかな、って頼む。
【GM】 「うむ、事情はわかった。だが、その望みは叶えてやれん」
【ロートシルト】 なんで〜?
【GM】 「ワシはボアに行ったことがないのじゃ」と、ネオドールさんは、ちょっと照れくさそうに、頬を赤くしながら言った。
【ロートシルト】 内気なんや。シャイなお爺ちゃんや、珍しい(笑)。
【ファンリー】 じゃあ、どこやったら、行ったことあるの?
【GM】 「東は、ロメ王国のロッサまで。西は、メミンゲンまでじゃ」
【ファンリー】 オムスク地方ばっかりやん。近くにしか、行ったことないひとなん?
【GM】 うん。オレンブルクで生まれ育ったひとやねん。
【ファンリー】 わっ、ヘボい! って、心の中で思ってる。
【ロートシルト】 行って欲しいところに、全然届いてへんやん。
【パチモーン】 行ったことのある街のギルドに、〈テレポート〉が使える魔術師はおる? 中継してボアへ向かうしかなさそうやでな。ばさーっ。
【GM】 「残念ながら……」と言いかけて、ネオドールは何か思い当たった。
「そうじゃ。薬学部におる女魔術師が、〈テレポート〉を使えるかも知れんぞ」
【ロートシルト】 女!
【GM】 「なんでも、サリア地方から来たという噂じゃ。サリアから来たのなら、ボアには必ず立ち寄っておるじゃろう」
【パチモーン】 なるほど。そのひとが〈テレポート〉が使えるなら、ボアに行ける。ばさー。
【ロートシルト】 どういうひとなん? 若い?
【GM】 「若いらしいぞ。ワシは直接会ったことはないから、詳しいことは知らん。
半年ぐらい前から薬学部に出入りしとる女で、一部の若い学生たちの間で評判になっとるようじゃ。なんでも、日が沈んでからしか、姿を見せんそうじゃな」
【ロートシルト】 おおー、人妻ちっくや。
【GM】 ロートシルトのスイッチが入った。
【ロートシルト】 目が光ってるで。人妻に会いに行こう。
【パチモーン】 なんで、人妻って決めつけとんねや(笑)。たぶん、当たってるやろけど。
【ロートシルト】 そういう匂いを嗅ぎ取ってるねん(笑)。
【GM】 また、メイユールが反応しとんやろな……。
【ロートシルト】 「今日のは、すごいわ。すごい
【パチモーン】 じゃあ、爺さんに「もし、彼女がアカンかったら、また頼みに来るかも知れんけど、そのときはヨロシク」ばさ〜って、言うておく。
【ロートシルト】 人妻のとこに行く。
【ファンリー】 夜、来るの? 絶対。
【GM】 さあ。ネオドールさんは、会ったことがないから、わからへん。
【ファンリー】 じゃあ、若い学生に聞いてみる?
【パチモーン】 暇そうな学生に聞き込みをしよう。バサー。
【GM】 2〜3時間ほど聞いてまわれば、そのうち有益な情報を得られるかも。中庭とかに、暇そうなのがゴロゴロしてるしね。
【ファンリー】 こういうのって、男の学生のほうが知ってそう。
【パチモーン】 その辺の男子学生に、「これこれこういう女魔術師について、何か知らないかね?」バサーって、尋ねてみるよ。
【GM】 「ラヴァーズさんのこと? 知ってるよ。オレ、ファンクラブに入ってるし」と、ひとりの男子学生が答えた。
【ロートシルト】 あるんや、そんなん。
【GM】 現在、会員28名。
【パチモーン】 また微妙な人数やな。
【GM】 「なに? キミたち、入会希望かい?」
【ロートシルト】 いや、それはポリシーに反するから。
【パチモーン】 そうなんや(笑)。
【ロートシルト】 「ところで、そのひとって人妻?」
【GM】 「そうらしいよ」
【ロートシルト】 おお〜。
【GM】 「先週、旦那と名乗る男が、ギルド内をうろちょろしてたみたいだよ。何をしてたのか、オレは知らないけど」
【ファンリー】 「ラヴァーズさんって、いつも来てるの? 今日も会えるの?」
【GM】 「いや、11月に入ってから、全然、姿を見なくなったんだ。それまでは、図書館で助手と一緒に調べ物してる姿を、ちょくちょく見れたんだけど……」
【ファンリー】 助手がおるんや。
「その助手も来なくなった?」
【GM】 「知らないよ。興味ないし」
【パチモーン】 ということは、助手は男なんや。
【GM】 そのとおり。
【ファンリー】 ラヴァーズの家がどこにあるか、わからへん?
【GM】 「ギルドの近くの、『大いなるナマズ亭』っていう宿屋に泊まってるそうだよ。はるか南の知られざる島から来たひとだそうで、オレンブルクに住んでるわけじゃないみたい。
夜にしか現れない、とってもミステリアスな女性なんだ。ドキドキ」
【パチモーン】 魔術師ギルドって、夜、入れるの?
【GM】 夜遅くになると門が閉まるので、出入りはできなくなる。中にいる者が追い出されることはないけどね。
【ファンリー】 外に出られなくなるだけ?
【GM】 そう。ギルドのほとんどの施設は閉門前に閉鎖されるから、残っててもすることないけどね。最近まで、人妻見たさの学生で、図書館が夜も賑わってたみたいやけど。
【ロートシルト】 職員も大変やな。
【GM】 「ラヴァーズさんが出入りしてる薬学部は、ここ半年、昼夜を問わずに稼動してるみたいだよ。
何を熱心に研究してるのかは知らないけどね」と、男子学生。
【パチモーン】 とりあえず、『大いなるナマズ亭』に行ってみるかね。今は何時ぐらい?
【GM】 もう、日が暮れる寸前。間もなく街門は閉ざされて、夜が更けるとギルドの門も閉ざされる。
【パチモーン】 じゃあ、人妻がいる宿屋を訪ねてみよう。ばさーっ。
【GM】 では、キミたちは暮れなずむオレンブルク南区の、『大いなるナマズ亭』の酒場に入りました。
店主は少し生え際デンジャラスなナマズ髭のおじさんで、他、奥さんと若い料理人、給仕など7人ほどで切り盛りしてます。
【パチモーン】 夕食時やから、混んでそうやな。
【GM】 そうやね。旅人らしき者も多いけど、魔術師ギルドの近くにあるためか、若い学生の姿も多い。魔法について議論してるテーブルもあれば、コンパしてるテーブルもある。
【ロートシルト】 おっ、ええなぁ。若いな〜。俺もあの頃は……。
【GM】 ロートシルトはよそ見して、ぼ〜っとしている。
【パチモーン】 とりあえず、害はないから放っておこう。ばさー。
【GM】 給仕の若い娘がやって来るよ。そばかすが浮いてるね。
「すいません、今、満席なんです」やってさ。
【ファンリー】 「食事じゃなくて、店長に聞きたいことがあるんですけど」
【GM】 そしたら、そばかすの娘は、「ちょっと待ってください」と、厨房で働く店長を呼びに行く。
しばらくして、ナマズ髭のオヤジさんが、エプロンで手を拭きながらやって来た。
「へい、まいど。宿泊ですか?」
【ファンリー】 じゃなくて、宿帳とか見たい。人妻、まだおる?
【GM】 オヤジさんの厚意で宿帳を見せてもらうと、5月頃にラヴァーズという名前の人物が、チェックインしてることがわかる。チェックアウトはしてないみたい。
【ファンリー】 じゃあ、「このひと、まだ、ここに泊まってるの?」って聞く。
【GM】 「ラヴァーズさんかい? 1週間ぐらい前に、いつものように魔術師ギルドへ出かけてから、帰ってきてないね。心配した旦那が、昨日までいろいろ捜し回ってたようだが」
【パチモーン】 旦那は、今、どないしてんの?
【GM】 「昨日の夜遅くに帰ってきて、まだ部屋で寝てるようだな」
【ファンリー】 昨日から寝てるの?
【GM】 爆睡してる。23時間。
【ファンリー】 起してみようかな。
【ロートシルト】 旦那は会いたくないな。俺が会いたいのは、人妻やねん。
【パチモーン】 でも、ここで人妻の情報は途絶えたわけだから。旦那から手がかりを得ないと、人妻に会えないかも知れないよ。ばさーっ。
【ロートシルト】 ちくわやで、そんなん。突き抜けていくで、虚しく。
【パチモーン】 「ここをガマンすれば、会えるかも。いや、むしろ会える! 絶対、会えるっ」バサーっ。
【ロートシルト】 「ホンマやな、おまえ?」
【パチモーン】 「では、ファンリーくん、行ってみよう」ばさー。
【ファンリー】 2階に行ってみる。
【ロートシルト】 ふらふら〜っと、ついて行く。コンパに参加したいなーって、ちょっと後ろ髪を引かれながら。
【GM】 それでは、キミたちは、ラヴァーズさんと彼女の夫が宿泊してるという部屋の扉の前に来ました。扉は、とうぜん閉まってる。
【ファンリー】 ノックしてみる。
【GM】 返事はない。
【ファンリー】 もっと、どつく。「がすがすがすっ」
【ロートシルト】 ファンリー……荒っぽい……。
【GM】 やっぱり返事はない。
【パチモーン】 こっそり開けてみ。
【ファンリー】 開くかな? あ、シーフ技能、持ってた。
【パチモーン】 いや、まずは普通に開けようよ(笑)。
【ロートシルト】 気合が入ってるなぁ(笑)。
【ファンリー】 じゃあ、ガチャっと開けてみる。
【GM】 開かない。どうやら、内側から鍵がかかってるみたいやね。もちろん、ドアに鍵穴はある。
【ロートシルト】 ここでシーフ技能の出番や。
【ファンリー】 [鍵開け]〜。ニヤ〜って笑う。
【GM】 シーフ用ツールは持ってるの?
【ファンリー】 持ってない。
【ロートシルト】 あ、俺が持ってる。
【ファンリー】 じゃあ、借りる。
【ロートシルト】 借りてまで[鍵開け]したいんか。じゃ、貸すから頑張れ。
【ファンリー】 やってみたかって〜ん。(ころっ)あっ、ヘボい。でも開いた。
シーフ用ツールをロートシルトに返す。にっこり笑って、「ありがとうございます」
【ロートシルト】 「えへへ〜。また、いるとき言うてな〜」
【パチモーン】 これで、いざというときに疑われるのは、ロートシルトやねんな。ツールを持っとうから。
【ロートシルト】 全然、気づかずに、「えへへー」って言うてる(笑)。
【ファンリー】 ドアをちょっとだけ開けて、中をそ〜っと覗いてみる。
【ロートシルト】 3人で縦に並んで。
【GM】 中は明かりがついてなく、薄暗い。ベッドがふたつあって、そのうちの片方のベッドに、ひとが横たわってるのが見える。よく眠っているようだ……。
【ファンリー】 見に行く、見に行く。
【ロートシルト】 男?
【GM】 男やね。オレンジ色の長髪で、額の中央、眉間の辺りに赤い小さな石を埋め込んでる、おしゃれさん。
ファンリーは、この人物をよく知ってるよ。キミのところにちょくちょく出没してた、シュトルムです。
【ファンリー】 パチモーンのほうを見る。「起してあげてください」
【パチモーン】 じゃあ、「起きたまえ」バサーっ、と声をかけてみよう。
【GM】 声をかけるだけ? なら、「うぅ〜ん……むにゃむにゃ、あと23時間だけ……」と、寝返りをうつだけやね。
【パチモーン】 揺すってみるよ。
【GM】 そうすると、シュトルムは目を開ける。
では、パチモーン、[危険感知]してみて。
【パチモーン】 おお!? レンジャー技能ないから、ひら目やで。(ころっ)惜しい! 6ゾロじゃなかった。失敗。
【GM】 すると、寝ぼけたシュトルムが、「うぅん……ラヴァーズさぁん」とパチモーンに抱きつく。前髪は[危険感知]に失敗してるから、不意討ち扱いね。
マイナス4のペナルティで、回避を試みれるよ。回避する?
【パチモーン】 するよ、ばさーっ。
【ロートシルト】 前髪、本気で回避やで。
【パチモーン】 (ころっ)届かない。にょ〜。
【GM】 では、パチモーンはシュトルムに抱きつかれた。
さらに、タコのようになったシュトルムの唇が、パチモーンの顔面に迫ってくる。
【ファンリー】 うわーっ!(笑)
【ロートシルト】 よかった、起こさなくて(笑)。
【パチモーン】 「ひと違いだ〜!」バサーって、必死で抵抗するよ。
【GM】 では、シュトルムは我に返った。我が腕の中のパチモーンを見て、「なんじゃこりゃあ!?」と叫んでる。
【パチモーン】 「それは、こっちのセリフだー!」ばさーっ(笑)。
今回のシュトルムの行動は、シナリオ作成時に、『失翼の魔術師』のシュトルムのプレイヤーさんにご協力いただき、様々なパターンを考えてもらいました。シュトルムPLさん、ありがとうございました。
【GM】 びゃっとパチモーンから離れたシュトルムは、ファンリーに気づいた。
「あっ、ファンリーちゃん♪」と、嬉しそうに駆け寄って、ファンリーの手を握る。
【パチモーン】 「じゃあ、ファンリーくん。あとは任せたよ」ばさーっ。
【ファンリー】 えぇ〜?! って、思ってる。
【パチモーン】 「知り合いなんだろ?」ばさー。
【ファンリー】 「いえ、違います」(笑)
【ロートシルト】 「ファンリー、これはどういうことだ! あの男、なに!?」
【GM】 「おまえこそ、なんだ! ファンリーちゃんっ、俺というものがありながら……」
【ファンリー】 「お友達です。あなたもお友達ですけど」
【GM】 その頃、遠くボアの地にいるティガーが、ぴきーんと何かを感じ取った。
【メイユール】 「どうしたん、ティガー。あんたも
【GM】 うん。頼んだオムレツが、ごっつうまかってん。
【ティガー】 「これ、めっちゃうまい! もう1個、頼もっかな〜」って思ってるねん。
「頼んでいい?」
【シルヴィア】 誰に聞いてるんや(笑)。
【GM】 で、『大いなるナマズ亭』でシュトルムと会ってる3人は、どうするのかな?
【ファンリー】 「ラヴァーズさんに会いたいねんけど」
【GM】 ラヴァーズさんの名前を聞くと、シュトルムは泣き出す。
【ロートシルト】 おっ、逃げられたんや。
【ファンリー】 「どうしたん? 逃げられたん?」
【GM】 「ファンリーちゃん、ラヴァーズさんを助けてくれ!」と、シュトルムは頼む。
【ファンリー】 あんたのほうがレベル高いじゃん、って思ってよう。
【GM】 それがね、シュトルムでは助けに行かれへんのよ。
【パチモーン】 ほう。詳しい話を聞かせてもらおうかい。
はるか南方よりオレンブルクに来て、しばらくしてから、シュトルムの妻ラヴァーズは、ほとんど毎日、魔術師ギルドに通うようになった。
薬学部にて何か重大な研究に参加してるそうだが、何の研究か、夫であるシュトルムにも知らされてはいない。
どんなに忙しくても、朝には必ず宿に戻っていたラヴァーズだったが、10月27日の朝、彼女は帰ってこなかった。
翌28日の朝になっても戻らないことを心配したシュトルムは、その日の夜、魔術師ギルドに出向き、2日間の聞き込み調査を行った。
【GM】 「それで、ラヴァーズさんが最後に目撃されたのは、図書館の高位の学者専用のところだったとわかったんだ」
魔術師ギルドの図書館は、一般の学生が自由に立ち入れる場所の他に、特別の許可を得た高位の者のみが入れる場所がある。そこには、とても貴重な文献や、少し危険な知識が記された書物などが保管されている。
ラヴァーズは、助手のアレックス・ユーンという青年学者と共に、そこで何か文献をあさっていたらしい。
【GM】 「聞き込みをしてるとき、学生から気になる噂を聞いたんだ」
【パチモーン】 どんな?
【GM】 「なんでも、うっかり開くとその中に吸い込まれてしまう呪われた本が、図書館の奥に存在してるらしい、と」
【ロートシルト】 それは気になるな。
【GM】 シュトルムはさらに捜査を進め、ラヴァーズさんが消息を絶った日、一般人立ち入り禁止場所の床に、1冊の本が落ちていたことを突き止めた。
【パチモーン】 ほう。
【GM】 「『メルゼ百科事典』っていう、見るからに怪しい本だった。ラヴァーズさんは、その中に閉じ込められたんだ!」と、シュトルムは言う。
【パチモーン】 なんで、その本に閉じ込められたと思ったん? 根拠は学生の噂だけ?
【GM】 いや、違うよ。
その本はね、レムリア暦350年頃、現在のメミンゲン付近にあったニュルブルク王国の賢者、フィリップ・アダムスが記した書物。
古代の魔法帝国の滅亡からメルゼブルク王国の興亡、そしてニュルブルク王国建国までの歴史や、その地域の風俗と産業、動植物の生態などが書かれてるらしい。
はっきりいって、かなりローカルな百科事典で、現在ではあまり役に立ちそうにない。いつ廃棄されてもおかしくない本です。
【ファンリー】 そんなんが立ち入り禁止区域に保管されてたんや。
【GM】 その時点で、もう怪しいやろ?(笑)
シュトルムは、本を開けて、パラパラと中を読んでみた。大陸出身でない彼は、その内容を理解することはできなかったけど、だいたい、さっき言ったようなことが書かれてることは把握できた。
そして、読み進めてると、不審な箇所がポロポロ出てきたという。
【パチモーン】 ほう。どんな?
【GM】 350年以降の歴史が、一部、記されてたんよ。オムスク地方に限らず、サリアやミドル地方のことも、ちらほらと。もちろん、シュトルムはローカルな事柄はわからへんけどね。
【ロートシルト】 どういうこと?
【GM】 つまり、350年頃に書かれた本なのに、それ以降、402年のニュルブルク王国滅亡だとか、現オレンブルク王国の台頭だとか、518年に終結した“クラリオン大戦”のことだとかが、書かれてたわけ。
【パチモーン】 たしかにそれはおかしいな。ばさーっ。
【GM】 シュトルムの疑念を決定的にしたのは、大陸の人間――それも180年も前の人物が知ってるはずのない、彼の故郷の島のことが書かれてあった点やね。
その内容は――
サリア地方カローン島のはるか南に、大きな島がある。島には、ゼーエンブルク、ローリンエンというふたつの王国があり、長く争い続けていた。
レムリア暦523年。ふたつの王国は、互いに王家から人質を差し出し合う形で講和を結び、島に平和が訪れた。
しかし、平和を快く思わない人物がいた。ローリンエンの宮廷魔術師、エルフの男ナヴィである――
【GM】 ――『メルゼ百科事典』に書かれてたのは、ここまでやけど。
「ナヴィのことは、国際問題にならないように、表沙汰にしないで処理したんだ。だから、奴のことを知ってるのは、島でも限られた者だけなんだ」と、シュトルム。
【ファンリー】 で、ラヴァーズはそれを知ってた、と。
【GM】 うん。彼女は高レベルの魔術師やしね。ローリンエン王国の魔術師ギルドの依頼で、ナヴィの実験の後始末を手伝ったらしい。
【パチモーン】 要するに、ラヴァーズさんしか知らないようなことが書かれてあったから、その本の中に取り込まれてしまったんじゃないか、ということなんやね?
【GM】 「俺が推測するに、しょぼい助手が本に吸い込まれそうになったのを助けようとして、ラヴァーズさんは巻き添えをくったんだ」と、シュトルムは言う。
【パチモーン】 「ええひとなんやね」ばさー。
【GM】 「うん♪」
【ロートシルト】 のろけが始まったで(笑)。
【パチモーン】 で、自分では助けに行けないっていう理由は、何なん?
【GM】 シュトルムはラヴァーズさんを助けようと、必死で努力した。本を逆さにして振ってみても、ラヴァーズさんは出てこなかった。
【ファンリー】 そら、そうや(笑)。
【GM】 かといって、燃やしたり破いたりしたら、中のラヴァーズがどうなるかわからない。
何か方法はないかと、日が昇ってコウモリ姿になろうとかまわず調査し続けてたら、とある遺跡に、『呪われた本の中に入るアイテム』というマジック・アイテムが眠ってることが判明した。
【ファンリー】 なんじゃ、そりゃ。
【ロートシルト】 そのままや。
【パチモーン】 わかりやすいな(笑)。
【GM】 そして、昨日までの大冒険で、シュトルムはそれを入手してきた。
羽ペンのような形状で、本の表紙に突き刺すと、その本の中に入る時空の門が開くという。持続時間は12時間で、その門をくぐれるのは、人間のみらしい。
【パチモーン】 なんと。
【GM】 だから、シュトルムは助けに行けへんねんね。
「そこで、ファンリーちゃんに助けに行って欲しいんだ。ファンリーちゃんの強さは、よく知ってるから」
【ファンリー】 強いんかなぁ?
【パチモーン】 冒険者レベル5やでな。かなり強いほうやろ。
【GM】 シュトルムが提示する報酬は、3万フィスね。
【ファンリー】 おおー、すごい!
【パチモーン】 上等や。
【ファンリー】 人間やったら、何人でも入れるんやんな?
【GM】 いや、1回につき3人まで。さらにこのアイテムは、いちど使って持続時間を過ぎると、力を失う。
【パチモーン】 3人か。ちょうどええやん(笑)。
【ロートシルト】 「えっ、俺も行くの?」って。
【パチモーン】 「来ないのかい?」ばさーっ。
【ファンリー】 「ラヴァーズさんに、最初に会えるかも知れないよ」
【ロートシルト】 「あ、じゃあ、行く〜」
【GM】 「あいつ、大丈夫なのか……?」と、シュトルムはつぶやいてる。
【ファンリー】 「……まあ、あなたに似てますから」
【GM】 「だ、ダメじゃん!」
【パチモーン】 ダメなのか〜(笑)。
【ファンリー】 あ、自己否定した、って思って見てよう。
【パチモーン】 ところで、本に入れる時空の門は、一方通行ってことはないよね?
【GM】 ないよ。中がどうなってるかは知らんけど、入ったところから出てこれる。羽ペンは、出入口を作るアイテムやと思って。
【パチモーン】 了解。中に入って、危険はないの?
【GM】 それはわからない。事前に調べようがないからね。
【パチモーン】 そらそうやね。
じゃ、とりあえず善は急げってことで。人命がかかってるからな。バサー。
【ファンリー】 前髪が、まともなことを言っている……。
【パチモーン】 『人命救助』っていう言葉に酔ってるだけやけどね。
【ファンリー】 ファンリーは、「ラヴァーズさんを助けたら、ティガーに会える」って思ってるねん。
【パチモーン】 「人命救助♪」
【ファンリー】 「ティガ〜♥」
【ロートシルト】 大丈夫なんか、このパーティ(笑)。