▽ 天への道を見出す事 | ▽ 庭師の願いの事 | ▽ お届けものの手段の事 |
【GM】 さて、部屋(G)でボロボロになりながらも、見事、フレッシュ・ゴーレムを倒したピエール・パチモーンとロートシルト。これから、どうしますか?
【ロートシルト】 残り生命力2点。ぜーぜー言うてるで。
【パチモーン】 ボクは5点。ダメージを受け過ぎた。生命力を回復させたい。
【ロートシルト】 全快させたいぞ。
【GM】 全快させるのは、魔法が必要やと思うけど。自然治癒を待ってたら、すごい時間がかかるんちゃうかな。
【パチモーン】 14日かかる。2週間もじっとしとかんとアカン(笑)。
【ロートシルト】 イヤや〜。厳しいな。
【パチモーン】 とりあえず、宝箱を開けようよ。ばさーっ。
【ロートシルト】 「開けよう」って、俺?
【パチモーン】 キミなら大丈夫だ。ばさーっ。
【ロートシルト】 残り生命力2点なんやけど。毒針で死ぬで。
【パチモーン】 でも、もし、罠があったら、キミじゃないと対処できへん。バサーっ。
じゃあ、2日ほど安静にしとく?
【ロートシルト】 ……生命力、4点になるで〜。
【パチモーン】 おお、2倍や(笑)。ばさー。
【ロートシルト】 2倍やけどさ(笑)。4点やん。
【パチモーン】 あの猫クンがなんとかしてくれへんかな。ダメもとで頼んでみる?
【ロートシルト】 じゃあ、プールの部屋(A)に行ってみよう。
【GM】 では、キミたちは部屋(A)に戻った。マーキャットが、何事かとプールから顔を出したよ。
【パチモーン】 「ケガした」ばさーっ。
【GM】 「知りません」と、マーキャット。
【パチモーン】 「どこか、何かないっすかね。薬草とか」ばさーっ。
【GM】 「薬草は、表に生えてるかも」
【パチモーン】 薬草なんか、見分けがつくんかな。
【GM】 「まあ、がんばってくださいね」ぽちゃん! と、マーキャットは水の中に姿を消したよ。
【パチモーン】 どうしようかね、ロートシルトくん。ばさー。
【ロートシルト】 生命力2点じゃ、ちょっと動きたくないな。
【パチモーン】 じゃあ、安静にしとく?
【ロートシルト】 2週間? こんなとこで、おまえと? うわ〜、つらいよぉ。
【パチモーン】 背に腹は換えられないからね。あの石碑の部屋(B)(C)で、別々にいよう。ばさーっ。
【ロートシルト】 GM、2週間泊まると、何日になる?
【GM】 日付のこと? それなら、10月23日になるね。
【ロートシルト】 2週間は長過ぎるかも。
【パチモーン】 じゃあ、1週間にしとく?
【ロートシルト】 生命力が9点になる。まあ、こんなもんかな。4点よりはマシ。
【GM】 プリーストや女シャーマンがいないパーティは、大変やね(笑)。
というわけで、ふたりは、部屋(B)と(C)で1週間、安息の日々を過ごした。
自然治癒で共に生命力が7点回復し、パチモーンは生命力12点、ロートシルトは生命力9点になった。
そして、ふたりは部屋(G)に戻った。
【パチモーン】 宝箱を調べようじゃないか。ばさーっ。
【ロートシルト】 [罠発見]、(ころっ)。
【GM】 罠は見当たらなかった。鍵もかかってなさそう。
【ロートシルト】 見当たらん? イヤやな〜。「罠、ないで! 開けて」
【パチモーン】 「本当かね、ロートシルトくん?」ばさー。
【ロートシルト】 「ないない、見た感じない」
【パチモーン】 じゃあ、前髪王子が、おそるおそる開けてみよう。
【GM】 蓋は開いたよ。
【パチモーン】 よかった、よかった。痛くなかったよ、ばさーっ。
【GM】 中には、赤い布切れが入ってる。広げてみると、どうやら、男物の真っ赤なビキニパンツやね。お尻のところに、金の毛筆体で『天』と書かれてあります。
【ロートシルト】 これはキツイなぁ。厳しいな(笑)。
【GM】 どこからともなく、低い声が響く。
「よくぞ、『天の衣』を見つけた。その衣は、おまえたちに与えよう」
【ロートシルト】 ほう、すごいな。パチモーン、穿いてみ。
【パチモーン】 キミにあげるよ。
【ロートシルト】 いらね〜。
【パチモーン】 ボクもいらないよ。ばさーっ。
……それでだね、この宝箱をちょっとどかしてみて、その下の床を調べてみよう。
【GM】 宝箱をどかしたけど、床には何もなかったよ。しかし、宝箱を動かしたとき、中で何かが動くような音がした。
【パチモーン】 二重底とか。この宝箱を、ちょっと調べてみようじゃないか。
【ロートシルト】 誰が?
【パチモーン】 それはもちろん適材適所だよ、ロートシルトくん。ばさーっ。
【ロートシルト】 まあ、調べてみるけど。
【GM】 それと目的を持って調べるなら、すぐに見分けられる。予想通り、この宝箱は二重底になっていました。
【パチモーン】 中には?
【GM】 免許証ぐらいの大きさのカードが一枚入ってます。
【パチモーン】 何か書かれてある?
【GM】 意味がありそうなことは、とくに書かれてない。
【パチモーン】 これが『天の衣』かな……。
【ロートシルト】 「これちゃうーん?」ってパンツを広げるで。
【パチモーン】 部屋(G)にあるのって、それだけ?
【GM】 目につくのは、それだけやね。
【パチモーン】 あの広い通路に架かってた渡り廊下って、何やったんやろな。気になる。中庭(E)の水車も。
【ロートシルト】 行けるとこは全部行ったもんな。壁とかどうやろ? 部屋(G)の壁を、ちょっと調べてみる。(ころっ)
【GM】 そしたら、ロートシルトは、壁の一部が隠し扉になってることに気づいたよ。向こうは、通路になっているようです。
【パチモーン】 でかした、ロートシルトくん! では、通路を進んでみよう。ばさーっ。
【GM】 その通路をずっと進んでゆくと、例の広い通路と立体交差する渡り廊下に続いています。
【ロートシルト】 ほう。
【GM】 渡り廊下を渡り、さらに先へ進むと、ひとつの扉の前に辿り着きました。扉は金属製のもので、閉められてます。
【ロートシルト】 開けてみよう。
【GM】 開かない。
【パチモーン】 鍵がかかってるんか。
【GM】 鍵穴は見つからないけどね。
扉には、南米でよく見るようなデザインの人の顔のレリーフが、はめられてる。人面の口はスリットになっていて、瞳が赤くほのかに光ってます。
【ロートシルト】 そいつ、しゃべらへん?(笑)
【GM】 しゃべらない。
【パチモーン】 スリットに、さっきのカードを差し込むといいかも知れないね。バサー。
【ロートシルト】 カードキーや。差し込んでみ。バサーっと前髪を跳ね上げながら。
【パチモーン】 「じゃあ、いくよ」って、ちょっとだけへっぴり腰で、カードを人面の口に挿入してみる。
【GM】 すると、瞳の赤い光は緑の光にかわって、「カチン!」と、錠前がはずれる乾いた小さな音がしたよ。
【ロートシルト】 おおー。じゃあ、ドアを開けてみる。
【GM】 向こうは、部屋(H)です。そこには、幅が70センチ、長さが5メートルほどの、半円のでっかい
【パチモーン】 なるほど。こいつで、中庭(E)の滝と水車を結びつけたったら、ええねん。
【GM】 その重さは、大人がふたりががりで持てそうなぐらい。
【パチモーン】 この部屋、他には何もなさそう?
【ロートシルト】 いちおう調べてみる。[捜索]、(ころっ)。
【GM】 ロートシルトは、何も見つけられなかった。
【パチモーン】 じゃあ、
ふたりは、
そして、
【パチモーン】 池のY字型の支柱に、
【GM】 滝の水は
水車の回転は徐々に加速し、いいリズムで回りだす。そして、はずれて壊れちゃった――とか言うたら、びっくりやね。
【ロートシルト】 泣いちゃうやろな、もう(笑)。
【GM】 そういうことは当然起こらず、水車は順調に回ってます。
【パチモーン】 じゃあ、部屋(D)の奥にあった小部屋へ行ってみようか。レバーがあったところ。
【GM】 やって来ました。小部屋に入ると、どこからともなく、「ぐぉんぐぉん」という低い音が、重々しく聞こえてきてるよ。
【ロートシルト】 おっ、変化が起きてる。
【パチモーン】 レバーを下げてみよう。ばさーっ。
【GM】 すると、引き開けておいた扉が、すっと閉まった。小部屋が「ガコン」と一瞬揺れて、遠くから聞こえる低い音が、少し大きな唸りとなった。小部屋は細かく振動しつづけ、低い音がどんどん下へ流れて小さくなってゆく。
やがて、小部屋の振動は止まり、音も聞こえなくなりました。
【パチモーン】 扉を開けてみよう。開くかな?
【GM】 開いたよ。太陽のまぶしい光が目に突き刺さり、一瞬、視界が真っ白になった。視力がじわ〜っと戻ってくると、よく手入れされた芝生の世界が目に入ります。
【ロートシルト】 芝生?
【GM】 そう。10月中頃になってるので、もう緑萌ゆるという感じではないけどね。
その中を、キミたちがいる小部屋から、白い砂利の小道がまっすぐに伸びています。円形の池を取り囲む円形の広場に続いてるみたい。
【ロートシルト】 庭園?
【GM】 そうそうそう、そんな感じに見える。
円形の広場からは、前方、左右に白い道が伸びる。左右への道は、色とりどりの秋の花が咲く花壇に、前方への道は、大きな2階建ての屋敷に続いてます。
庭も、年代物の屋敷も、左右対称のデザイン。周囲をきちんと刈られた低木の垣が囲い、その向こうに黒い森があります。
淡青色の空の下、そうした清々しい風景が広がってるんやね。
【ロートシルト】 世界が一変した。「おまえ、何をした〜!?」って感じやな(笑)。
【パチモーン】 「んー。まあまあ、古代遺跡にはよくあることだよ」ばさーっ。
おそるおそる、砂利道を進んでみよう。
【GM】 振り返ってみると、キミたちが出てきたのは、石造りのホントに小さな建物。この庭にマッチしたデザインやね。
【パチモーン】 池のことまで行くよ。池は浅い?
【GM】 見ただけじゃ、わからないと思う。
池のふちで休んでた亀が、キミたちが近寄ってきたのに気づいて、ぽちゃんと水の中に逃げ落ちた。
池には、大きな蓮の葉が、いくつか浮いてます。ついでに花も咲いてるけど、それは形が蓮だというだけで、普通じゃなうね。透明な――というか、透き通るような、スケルトン仕様の花だし。
【ロートシルト】 すごいな。不思議なとこや。
【GM】 ところで、屋敷のそばの垣に、うずくまってる人影が見えるよ。ずいぶんな猫背やね。しゃがみ込んで、雑草を抜いてるようです。
【ロートシルト】 人間?
【GM】 人間ではなさそう。腰から下と肘から先には、金色の体毛が獣のようにびっしりと生えてるし。
【パチモーン】 声をかけてみようか。「そこのキミ」バサーっ。
【GM】 その人物は、立ち上がって振り向いた。首がないから、体ごと振り返った。
【ロートシルト】 首がない?? あ〜っ、出たぁ!(笑)
【GM】 首がない代わりに、胸に顔がある。タラコ唇で、困ったような表情の顔が。
【ロートシルト】 けっこう、あちこちに存在してるやん、こいつら。
【GM】 体毛は金色やで。ゴールデン・チロカニントです。
【パチモーン】 上位種や。
「キミは何者だね?」ばさーっ。
【GM】 「この屋敷の庭師です」
【ロートシルト】 いちおう、雄か雌か聞いてみて。
【パチモーン】 気になるんか?(笑)
【GM】 残念ながら、ゴールデン・チロカニントには性別はないらしいです。実験の中で突然変異で生まれたものなんやね。
【ロートシルト】 そうなんや。
【GM】 普通のチロカニントの寿命は200年ほどやけど、ゴールデン・チロカニントの寿命はすごく長い。
このゴールデン・チロカニントは、すでに500年生きてるらしいよ。
【パチモーン】 「この屋敷は、誰のものなん?」ばさーって、聞いてみよう。
【GM】 「私の古い友人、ケルヴィン・バートのものです」
【パチモーン】 『ケルヴィン』って、どこかで聞いたことがあるな。……笛吹き? 黄金の笛の持ち主。
【GM】 そうそう。よく覚えてたね。
「私は、ケルヴィンの望みを叶える者が現れるのを待ちながら、彼とポーラが住むはずだったこの家を守っています」
【ロートシルト】 ポーラっていうのは?
【GM】 ケルヴィンの恋人で、竪琴の名手。月の裏に魔力を集める塔が建設されるとき、塔の設計者である父親マティアス・メンデンによって、人柱にされてしまった娘。
【パチモーン】 あの広い通路のステンドグラスに描かれてたのが、ポーラなんやな。
【ロートシルト】 じゃあ、この屋敷って、今は無人?
【GM】 そういうことになるね。庭師のゴールデン・チロカニントしかいません。
「あなた方が、ケルヴィンの望みを叶える者ならば、『天の衣』を与えましょう」と、ゴールデン・チロカニントは言った。
【パチモーン】 「もちろん、叶えるさ。だから、天の衣をくれたまえ!」ばさーっ。
【ロートシルト】 それが物をもらう態度か(笑)。
【パチモーン】 いちおうギブ・アンド・テイクやから、立場は同等さ。バサー。
【GM】 ゴールデン・チロカニントは、屋敷に姿を消した。
しばらくして、小さな木の箱を抱えて出てきました。その箱を、キミたちに渡す。
「これが、『天の衣』です」
【パチモーン】 確かに、受け取った!
【GM】 「もし、叶うならば、ケルヴィンの黄金の笛とポーラの銀の竪琴を、ここに持ってきて欲しい。ふたりが暮らすはずだったこの庭に、共に埋葬したいのです」と、ゴールデン・チロカニントは言う。
【パチモーン】 「うん、わかった」ばさーっ。
【ロートシルト】 えーッ?! そんな簡単に?
【GM】 安請け合いや(笑)。
【パチモーン】 「その願い、このレギト・グニク・イーニン・ハオトがしかと聞き届けた!」バサーッ!
【ロートシルト】 そんなにしっかりと引き受けるな〜!
【パチモーン】 いいじゃないか。せっかく、ここまで来たんだし。ばさーっ。
ちなみに、『天の衣』ってどんな形をしてんの?
【GM】 箱を開けて見てみると、6×9センチほどの長方形のカードが、6枚入ってます。ネームプレートみたいな形状、といえばわかるかな?
【パチモーン】 何か書かれてない?
【GM】 下位古代語の文字で、「エーテル収集塔物品管理部」という名称と、適当な6桁ほどの数字、適当な氏名が書かれてるよ。
【ロートシルト】 何これ。社員証みたい。
【GM】 「それを左胸につけておかないと、月の塔には入れません。ポーラの銀の竪琴は、月の裏の塔の最上階に眠っているそうです。
塔内部の構造は、“中の砂漠”で月へ行く船を守るドラゴンが、よく知っています。彼に聞いてください」
【パチモーン】 “中の砂漠”とは?
【GM】 現在の、アステア大砂海のことやね。
【パチモーン】 ところで、『月へ行く船の守護者のドラゴンに捧げる5色の小さな玉』のことは、知らないかな?
【GM】 「私は、天の衣以外のことは知りません」
【パチモーン】 そうか。
【ロートシルト】 じゃあ、もう、ここには用はなさそう。
【パチモーン】 帰ろうかい。ばさーっ。
【GM】 では、キミたちは例の小部屋に戻って、レバーを操作し、地下へ戻って行きました。
【パチモーン】 部屋(A)の猫クンのところへ行こう。
【GM】 マーキャットが水の中から顔を出した。
「どうやら、『天の衣』を手に入れたようですね」
【ロートシルト】 ビキニパンツ、びっしぃ!(笑)
【パチモーン】 それ、違う(笑)。
【GM】 「それじゃ、がんばって月へ行ってくださいね」ぽちゃん!
【ロートシルト】 ちょっと、待て!
【パチモーン】 「キミに聞きたいことがある」ばさーっ。
【GM】 なに?
【パチモーン】 「『月へ行く船の守護者のドラゴンに捧げる5色の小さな玉』を知らないかね?」ばさ〜。
【GM】 「玉? ……ん〜、忘れました」ちゃぽん! マーキャットは、姿を消してしまいました……。
【ロートシルト】 むかつくぅ! アカンやん〜。
【パチモーン】 なんていい加減な守護者なんだ、バサーッ。
【ロートシルト】 もしかして、このダンジョンも崩れ出す?
【GM】 いや、ここは崩壊の兆しはありません。ただ、プールに波紋が残るのみ。
【パチモーン】 やれやれ。とりあえず、オレンブルクへ戻ろうか、ロートシルトくん。
【ロートシルト】 ああ。もう、ずいぶん長いこと女を見てないから、ロートシルトは、早く街に帰りたいんやで、きっと(笑)。
そしてふたりは、11月6日の夕刻、オレンブルクへ帰還したのだった。
【GM】 メカリア方面から来ると、オレンブルクの街へは『日の出門』から入ることになるから、ミフォア大神殿の前を通るね。
オレンブルクの街並みの向こうへ、赤い夕日が今にも沈みそう。少し切ない秋の夕暮れ。
【パチモーン】 ミフォア大神殿の前とくれば――。
【ロートシルト】 ――ファンリー! いる?
【GM】 いるよ(笑)。元衛兵隊長と、何か話し込んでます。
【ロートシルト】 おお〜。久しぶりの女や〜。ファンリ〜……。
【GM】 いちおう、メカリアに寄って帰ってきてるんやから、そんなに飢えることはないと思うけどなぁ。
【ロートシルト】 金がないし、遊ぶことなく、まっすぐに帰ってきてんもん。
あ、そうや。キャットクローは売ってしまおう。
【パチモーン】 売るの?! 持っとけばええのに。
【ロートシルト】 持ってても、そんなに戦うことはないし。ロートシルトとしては、武器より金のほうがいい。パーっと遊びたいから(笑)。
【GM】 なんて冒険者な奴(笑)。
【ロートシルト】 それに、借金を返さんとアカンし。パチモーン、キャットクローを買う?
【GM】 パチモーンが3万2500フィスで買うなら、キャットクローの売り値を折半したのと同じになるね。
【パチモーン】 んー、ボクはいらないや。ロートシルトくんが売ると言うんなら、それでいいと思うよ。ばさーっ。
【ロートシルト】 じゃあ、後でキャットクローを売りに行こう。
【パチモーン】 ところで、衛兵隊長がここにおるの? ファンリーと何を話してたん?
【GM】 「じつは先日、ファンリー殿の付き添いで、ストト村に行ってきたのである」と、元衛兵隊長。
【ロートシルト】 はあ。
【GM】 ファンリーは、前髪王子から『天の衣』を探しに行くと聞いて、それがティガーからの依頼だと初めて知ったらしい。
【パチモーン】 そうなん?
【GM】 ティガーは「3ヶ月ほど出かけてくる」としか言わなかったし、イリア・ザーマス上助祭が怖いから、ファンリー単独では、冒険者の店に行くことはなくなってるし。
【ロートシルト】 ティガーめ、3ヶ月なんか、とっくに過ぎてるやん(笑)。
【GM】 ファンリーも心配してたけど、ティガーは元気にやってると、わざわざ教えてくれるひとがいるからね。
もうじき日が暮れるし、たぶん、今日も来るんじゃないかな。
【パチモーン】 で、ストト村に、何しに行ったん?
【GM】 ファンリーは、ティガーが『月へ行く船の守護者のドラゴンに捧げる5色の小さな玉』も求めてる、と話に聞いて、思い出したことがあった。
4月頃、ストト村で開催されたオムレツコンテストの優勝賞品が、それらしき宝玉だったんじゃないかと。
【パチモーン】 それを手に入れてきたんだね? バサーっ!
【GM】 差し出されたファンリーの手のひらに、ビー玉ぐらいの大きさの、黄色い玉がのってるよ。
【ロートシルト】 やるやん、ファンリー。
【パチモーン】 「ボクたちも、見事、『天の衣』を手に入れてきたよ!」ばさーっ。
【ロートシルト】 ちょっと死にかけたけど(笑)。
【パチモーン】 それで、ファンリーは、何を深刻そうに話してたん? 隊長と。
【GM】 入手した宝玉を、どうやってティガーに届けるかについてやね。
ボアに行くには、馬でも2ヶ月半以上かかる。その上、ティガーが設定した期日は11月までで、もう6日も過ぎてる。
ファンリーは何とか届けてあげたいんやけど、どうしたものかと悩んでたんやね。
【パチモーン】 なるほど、それは重要な問題だね。ばさーっ。
【ロートシルト】 俺らも他人事じゃないで、パチモーン。『天の衣』を届けんと、報酬がもらえない。
【パチモーン】 「はっはっは。困ったねぇ」バサーっ。
【ロートシルト】 ホンマに困ってるんか、こいつ?(笑)
【GM】 ――と、4人が顔をつき合わせて悩んでるうちに、日は姿を隠してしまい、遠く街から、閉門を知らせる鐘の音が聞こえてきました。
【ロートシルト】 門が閉まる前に街に入るで。キャットクローを売ってしまいたいし、深刻な話に興味ないし(笑)。
【GM】 じゃあ、ロートシルトは街に姿を消した。
【ロートシルト】 手にした大金で借金返して、夜通し遊ぶで〜。
【パチモーン】 ボクの取り分、残しといてよ。ばさー。
【ロートシルト】 それは大丈夫。たぶん。
【GM】 そして、街の門は閉ざされた。11月6日の夕方。
先月の末ぐらいまで、この時間帯になると、ちょくちょくファンリーのところへ遊びに来る男がいたけど、ここ最近、あまり来ないね。
【ファンリー】 シュトルムか。
【ロートシルト】 ああ、あいつね。
【GM】 まあ、ファンリー自身、10月30日から昨日まで、外に出かけてたんやけど。今日も来る気配はないね。
【ロートシルト】 ファンリーは、その新しい男と、どれぐらい会ってるの?
【GM】 会った回数は、もうわからへん(笑)。先月の20日あたりまでは、2〜3日に1回ぐらい、神殿に来てたよ。
【ロートシルト】 いつぐらいから来てんの?
【GM】 そうやね、5月の初めぐらいやっと思う。1〜2ヶ月ほど、現れないこともあったけどね。
【ファンリー】 信密度は?
【GM】 それはキミが決めて。向こうはもう、信密度マックスのつもりやと思う(笑)。
【ロートシルト】 一途やな。なんか違う気もするけど(笑)。
【GM】 とりあえず、今、キミたちが考えんといかんのは、その『天の衣』と『黄色の玉』を、どうやってティガーたちに届けるかやね。
【パチモーン】 普通の方法では不可能やね。バサー。
【ファンリー】 シュトルムやったら、何日で行けるの?
【GM】 ボアへ行くとなると、彼がどれだけ急いでも、さすがに1ヶ月以上はかかると思う。
【パチモーン】 飛んで行くしかないで。
【ファンリー】 〈テレポート〉、〈テレポート〉。
【ロートシルト】 異議なし。めんどくさいのはイヤや。
【パチモーン】 「今、それを言おうと思ってたところなんだよ」ばさーっ。
「いいところに目をつけたね」
【ファンリー】 イヤな大人、って思ってよう(笑)。
【パチモーン】 ファンリーを誉めつつ、微妙に自分を高みに置いてみたり。そこんとこは、ぬかりないで(笑)。
【ファンリー】 知ってる人で、誰か〈テレポート〉使えへんかな。
【パチモーン】 たしか、ファンリーは薬草を届けに魔術師ギルドへよく行ってたみたいやし、顔見知りでそういうひとはおらんかな?
【GM】 個人的な知り合いで〈テレポート〉が使えるひとはいないけど、ギルドに9人ほど、〈テレポート〉の使い手がいるよ。いずれも地位の高い、偉〜い魔術師やけどね。
【パチモーン】 ティガーの名前を出したら、なんとか取り次いでもらえるんちゃうかな。
【GM】 なんか、キミは自らを“ティガー”と名乗りそうやけどな。
【ファンリー】 それは、バレそうやから(笑)。
【パチモーン】 「彼もティガーなら、ボクもティガーだ」バサーって。
【ファンリー】 「うさんくさい」って追い返されそう。
【パチモーン】 ま、そんなことはしないけどね。
【GM】 では、方針は決まりましたかね?
【ファンリー】 うん。明日になったら、ギルドに行ってみる。
【GM】 では、街で夜遊びするロートシルトを除いて、今夜はミフォア神殿に泊まることになるね。ファンリーは、ここに住んでるわけやけど。
翌朝になったよ。ファンリーが朝のお勤めを終える頃、パチモーンや隊長が起きてくる。
【パチモーン】 一所懸命、前髪をセットしようで。
【ファンリー】 それ見て、ちょっといじってみたいな〜、って思ってるねん。
【パチモーン】 いろんな角度からチェックするで。
「今日は湿気てるなぁ。ひと雨きそうだ」とか言うねん。
【ファンリー】 わかるんや。
【GM】 便利な前髪やなぁ(笑)。
【パチモーン】 ほんなら、魔術師ギルドへ行こうかい。辻馬車があったよね?
【GM】 あったよ。運賃は100フィス。マック交通の馬車が、日の出門を7時ちょうどに出るのが始発。
【パチモーン】 それに乗って、ギルドに行こう。ばさー。
【ファンリー】 ヒデヨシとネネも連れて行く。
【GM】 ネネは今、卵を温めてるから出かけられないよ。
それから、元衛兵隊長は、今日は別の用事があるんで、日の出門で別れた。
【ロートシルト】 ロートシルトはどこかで酔い潰れてるから、拾ってね。
【パチモーン】 ゴトゴト進んでた馬車が、急に止まるんやな。「ひひーん」とか言うて。
【GM】 路上で寝てるんかいな、ロートシルト!?
【ロートシルト】 そうらしい(笑)。
「なんだよ、もう、飲めねえよ〜」とか言うで。
【GM】 〈キュアー・ポイズン〉でもかけてやり。
【ファンリー】 えぇー? (ころっ)ヘボいのがかかったよ。
【ロートシルト】 ええ子や。さすが、ファンリーや。
【ファンリー】 外面はいいねん(笑)。
【ロートシルト】 じゃあ、ロートシルトは、ファンリーについて行く。ふら〜っと。
【ファンリー】 なんか来たぁ、って思ってる。
【ロートシルト】 「えへへ」って笑ってるで。ファンリーの背後で、目がキラーンって光ってるで。
【ファンリー】 いや〜ん。怖い、怖い、怖い。「メイユールぅ」って思ってよう。
【GM】 今、遠くボアの地で、メイユールがピキーンと何かを感じた。
【メイユール】 「またか!」とか言うてるねん。
【パチモーン】 もう、慣れっこやろ。
【メイユール】 毎日、1回はピキーンとなるで。逆にそれがない日は心配やねん。「どうしたんやろ?」って。
【ロートシルト】 馬車に乗る。ちょっと酒臭いかも。
【GM】 馬車に居合わせた貴婦人が、ハンカチで鼻と口を覆って、顔をしかめてる。
【ロートシルト】 「すみませんねぇ〜」って笑って、ファンリーの隣に座るで(笑)。
【ファンリー】 「えぇー? 臭〜い」って思ってる。顔はにこにこしてるけどね。
【GM】 そんなことを言いつつ、キミたちは、魔術師ギルドに到着しました。