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§烙印の天使:第19話§

前髪同盟

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ よからぬ噂の事 ▽ ひとときの平穏の事 ▽ 前髪の陰謀の事

よからぬ噂の事

【シルヴィア】 女騎士の反応はどうなん?
【GM】 悲鳴のような声でアレックスの名を叫び、いきりたってティガーに襲いかかってくる。
 が、その攻撃はかわされた。
【シルヴィア】 これ以上、無駄な戦闘を続ける必要はないんやけど、その様子だと、説得には応じてもらえなさそうやね。
【メイユール】 そりゃ、部下が殺されてるからなぁ。
【シルヴィア】 しょうがない、〈スリープ・クラウド〉で眠らせてしまおう。(ころっ)眠ったよ。
【GM】 ついでに範囲に入るティガー、ジーネも抵抗してください。
【シルヴィア】 がんばってくれ(笑)。
【ティガー】 (ころっ)成功。
【ジーネ】 (ころっ)成功。
【シルヴィア】 うん、計算どおり。
【メイユール】 そうなんや(笑)。
【ジーネ】 じゃあ、女騎士をロープで縛りあげてしまおう。アレックスの死体はどうする?
【メイユール】 そのままでいいんじゃない?
【シルヴィア】 埋葬ぐらい、してあげればええやんか。
【メイユール】 ええ〜? 手間や。
【GM】 それじゃあ、ファンリーが埋葬したことにしよう。これを放置しておいたら、司祭の名に恥じるからね。
【ティガー】 じゃ、ファンリーを手伝う〜。
【シルヴィア】 それが終わったら、女騎士を捕虜として連れて帰る。
【ジーネ】 ああ、とうとうキル・マークがついてしまった。
【ティガー】 俺はまだ、人間を殺したことはないけどね。
【シルヴィア】 パーティ初の殺人者やな。
【ティガー】 シルファスの司祭なのに(笑)。
【メイユール】 「できごころなんですぅ〜」って、懺悔せな(笑)。
【ティガー】 「できごころで脳を潰しましたぁ」
【GM】 「ぱっと花が咲いたように血が飛び散り、とても美しかったです〜」
【ジーネ】 それって、懺悔でもなんでもないやん! 街に帰って落ちついたら、シルファス神殿に行こう……。
【GM】 そんなことを言いつつ、キミたちはゴルドの街に戻りました。
 キミたちは、解放軍戦士に捕虜を預け、もういちど森に向かう。残存勢力の掃討作戦は、夜を徹して行われるらね。
【メイユール】 う〜ん、こき使われてるなぁ。
【GM】 ──などと文句を言いながらも、キミたちは忠実に任務を果たした。
 そして翌朝、朝日が昇る頃、フラフラになってゴルドの街へ戻ってきた。他の戦士たちも、次々と帰ってくる。
【メイユール】 「疲れた〜」とか言うてるんやろな。
【GM】 そうやね。キミたちも含めて、みんな、目の下にべっとりクマができてたりする。
 ちなみに、王城はすでに陥落して“暁の将軍”ヴィンケルホックは討ち取られており、掃討戦の終了をもって、ゴルドの戦いは幕を閉じた。
 偉い方々にはこれから事後処理などがあるけど、とりあえず、一兵卒に過ぎないキミたちは、ゆっくり休んでください。
【ティガー】 シーフとカルファン騎士のおっちゃんは、どうすんの?
【GM】 彼らは、ここでキミたちと別れる。シーフのフィリップは『山猫の歓談亭』に行き、カルファン騎士ペドロは、『甘き清流亭』に行くらしい。
「また、一緒に剣を振り回そうな」と、ペドロ・チャベス。
【ティガー】 「おう!」(笑)
【ジーネ】 じゃあ、私らも宿屋に行こうか。
【GM】 では、キミたちは手頃な宿を見つけて、そこで休むことにした。非常事態であるけれど、しっかり営業してるから、1泊30フィスを払うよーに。
 ちなみに、5人でひと部屋ね。
【ジーネ】 男の子と女の子で分けてくれぃ。
【GM】 そんなことしたら、他の戦士たちから苦情が出るよ。どの宿も満杯なんやから。
【シルヴィア】 とにかく、僕はベッドに入ったら泥のように眠るよ。
【メイユール】 やっと、靴を脱ぐことができる(笑)。
【GM】 それじゃ、キミたちはぐっすり眠った。
 で、目を覚ましてみると、次の日の朝になっていた。窓の外では、スズメが「ちゅんちゅん」と、鳴いている。
【ジーネ】 24時間眠ったのか……。
【シルヴィア】 よほど疲れてたんやろな。
【メイユール】 もう、わたしらは解放軍として働かんでいいんよね?
【GM】 うん、キミたちの仕事はもう終わってる。ゴルド解放作戦は、明日の正午、王城で行われるゴルド解放宣言をもって、達成されたことになる。
【ティガー】 じゃあ、城を見に行こうっと。
【メイユール】 まるで観光客やな(笑)。
【ジーネ】 彼女は連れて行かないの?
【GM】 ファンリーはまだ、ベッドの中でもぞもぞ寝返りをうってるよ。
【ティガー】 じゃあ、連れて行かへん。
【GM】 では、ティガーは城を見るために広場にやってきた。
 解放軍戦士や街の住人が、行き交っております。
【ティガー】 城はどんなん?
【GM】 周囲を堀で囲まれた、2階建ての小さな石造りの城です。
 広場に面した城門の上に、演説用のバルコニーがある。明日の、解放宣言とゴルド王国の新体制の発表は、ここで行われる。
【シルヴィア】 僕は魔術師ギルドに顔を出す。
【GM】 シルヴィアは、城を眺めてるティガーを見ながら、広場を抜け、街の北東にある魔術師ギルドにやって来た。
 で?
【シルヴィア】 挨拶だけして、宿に戻ります。
【ジーネ】 それだけ!?
【メイユール】 まじめやなぁ(笑)。
【シルヴィア】 ま、ただの散歩のつもりだからね。そのついで。
【ティガー】 俺も、城を見たら、宿屋に帰る。
【GM】 一方、その頃、メイユールとジーネはどうしてるんかな?
【メイユール】 わたしは、1階の酒場で朝御飯を食べてます。
【ジーネ】 同じく。
【GM】 ふたりは、それぞれ朝食を注文し、しばらくして運ばれてきた料理を、食べ始めた。
 そこへ、ティガーが広場から帰ってきた。
【ティガー】 「あ、メシや。いいなぁ」
【メイユール】 「いいやろ。卵、ついてるねんで」(笑)
【ティガー】 あ、じゃあ、メイユールと同じのを頼む。
【GM】 「すまんな。スーパー・モーニングは、今ので最後なんだ」と、酒場のオヤジ。
【ティガー】 「うっそ〜ん?! じゃあ、何でもええわ。くっそー、城のバカヤロー!」
【メイユール】 城が悪いんか(笑)。
【ジーネ】 城を見に行きたくなるから、朝ご飯を食いそこねた、って考え方なんやな。
【GM】 そのとき、2階からファンリーがおりてきて、昨日のうちに予約しておいたオムレツを受け取ってる。
【ティガー】 予約制か、くっそ〜!
【GM】 じゃあ、ファンリーは「食べますか?」と、半分差し出してくれるよ。
【ティガー】 「うん、食べる〜」
【GM】 そんな感じで賑やかな酒場に、シルヴィアは帰ってきた。
【シルヴィア】 また、賑やかやなぁ。
【GM】 ──と、言いつつ、もはや酒場に自分の座席がないことに気づく。
【シルヴィア】 弱ったなぁ。
【GM】 さて、そんな感じで、みんなは食事をしてます。
 そのとき、他の席で解放軍戦士の冒険者ふう男数人が話してるのが、漏れ聞こえてきた。
【メイユール】 何やろ?
【GM】 例のレギト王子が、参謀のアルヌーさんともめて、解放軍と決別したらしい。
 で、王城を飛び出したレギト王子が、元カルファン騎士や傭兵などを集めて、何やらよからぬことを企んでいる、という噂がたっている。
【ティガー】 前髪同盟! 40人ぐらい、前髪の長い奴らがおるねん(笑)。
【GM】 それは、『よからぬ企み』なのか?(笑)
【ティガー】 うん、すごくよからぬ。
【ジーネ】 そのひとたちに、詳しい話を聞いてみよう。
【GM】 このひとたちも噂で聞いた程度だから、詳しいことは知らないよ。
「前髪王子は、アルヌー暗殺を企ててる」というぐらいの話かな。
【メイユール】 おお、すごい。
【GM】 「もっとも、そんなことすれば、レギト王子たちが返り討ちになるだけだろうな」
【シルヴィア】 だろうなぁ。
【GM】 さて、そんなこんなで朝食が終わったけど、キミたちは、これからどうするのかね?
【ジーネ】 私は買い物に行く。一般装備を、海に落っこちたときになくしちゃったから、いろいろ買いなおさないと。
【メイユール】 わたしは、アルヌーさんに会いに行ってみる。
【シルヴィア】 僕もお供しよう。ひまだし。
【ティガー】 じゃあ、俺とファンリーも行く。
【GM】 アルヌーさんは、魔術師ギルドにいます。ということで、メイユールたち4人は、魔術師ギルドに来た。
 受付のお兄さんが、「何かご用ですか?」と、尋ねてくる。
【ティガー】 「アルヌーさんはいる?」って聞く。
【GM】 「おられますよ。私室で、明日の解放宣言の準備をなさっておられるはずです」
【ティガー】 「会える?」
【GM】 「アポイントメントは、お取りになってますか?」
【ティガー】 「いや、ないけど、顔パス?」
【GM】 『顔パス』て(笑)。
「あなた方は、どちら様ですか?」と、言われるよ。
【ティガー】 「ティガー」って言うて通じるかな。アルヌーさん、覚えてるかな。ウソついた、ってことは覚えてると思うけど。
【メイユール】 「焼き肉食べに行きたかったティガーです」って(笑)。
【ティガー】 じゃあ、そんなふうに名乗って、「ちょっと、伝えなアカンことがあるねん。大事なことやねん、たぶん」と言う。
「メイユールもいるし」
【GM】 では、待つこと十数分、アルヌーの腹心の部下の、偉い魔術師さんがやって来た。

ひとときの平穏の事

【シルヴィア】 どんなひと?
【GM】 エマニエル・ピロという、20代後半のしゃきっとした男性で、この魔術師ギルドのナンバー4ぐらいの地位のひと。
【メイユール】 おお〜。
【シルヴィア】 ランディなら、絶対サインをもらってるなぁ。
【ティガー】 なんや、アルヌー本人じゃないんか……。
【GM】 アルヌーさんは、ここのギルド長でもあるからね。よほど身分が高いひとじゃないと、飛び込みで会うのは難しいよ。
【シルヴィア】 ナンバー4が用件を聞きに来てくれただけでも、大したもんや。
【メイユール】 「ふっ、わたしの名前が効いたな」と、思うとく(笑)。
【ティガー】 ティガーは、「ウソついてよかった〜」って思ってる(笑)。
「やっぱ、インパクト大きいよなぁ」
【GM】 じゃ、ファンリーが「さすが、ティガー」と、思っといてあげるわ。
【メイユール】 目をキラキラさせてるんやな(笑)。
【GM】 ナンバー4のピロさんは、「大事なお話があるそうで。アルヌー様はご多忙ゆえ、私が承りましょう」と、言う。
「で、お話というのは何ですか?」
【ティガー】 シルヴィア、後は任せた!
【シルヴィア】 僕かぃ!?
「えー、ひとに聞かれるとまずいんで、どこか、話が漏れないところで、お話したいんですが」と、言う。
【GM】 「はあ、わかりました。では、私の部屋で伺いましょう」ということで、キミたちは、ピロさんの私室に案内された。
「まあ、おかけください」
【シルヴィア】 レギト王子が何か企んでる、という噂を話す。
「こんな噂が、まことしやかに流れてるんですが──」
【メイユール】 「アルヌーさんの身の回りに、最近、変わったことはなかったですか?」
【GM】 「いや、何か危ない目にあったという話は、聞いてないですね」と、ピロさんは答える。
「しかし、いちおう、気をつけておきましょう。アルヌー様にも、伝えておきます」
【ティガー】 ん、伝わった。じゃあ、帰る。
【GM】 ピロさんはギルドの外まで見送ってくれ、別れ際に、「少ないですが、これは謝礼です」と、10フィスが入った小袋を手渡してくれた。
 すでに昼を過ぎてるよ。
【シルヴィア】 僕は、ギルドの書庫で読み物をしたいんですけど。
【GM】 「一般公開されているものなら、受付で手続きをすませたあと、自由に閲覧できます。ただし、持ち出しは禁止ですよ」
【ティガー】 勝手に持ち出したら、ブザーが「ビーっ」て鳴るねん(笑)。
【シルヴィア】 さすがは魔術師ギルドや。
【GM】 ちなみに閲覧料は、30フィスね。
【メイユール】 金取られるんや。
【シルヴィア】 マンガ喫茶みたいやな。
【GM】 ドリンクを注文する必要はないけどね。
 んじゃ、シルヴィアは書庫に行くと。
【シルヴィア】 使い魔のフクロウだけ、宿に戻しておくよ。
【GM】 ティガーとメイユールは?
【メイユール】 広場の東の公園に行って、絵を描きます。
【GM】 ところが、公園は現在、捕虜になったランダース兵のキャンプになっている。ゴルド騎士などが見張りに立ってるよ。
【ティガー】 じゃあ、捕虜を描こう(笑)。
【GM】 絶望に沈んで疲弊しきった様子を描くんやな。
【メイユール】 あんまり描きたくな〜い。……しょうがない、どこかで買い物して、帰ります。
【ティガー】 俺は、そのまま宿屋に帰る。
【GM】 帰り道、ティガーは、買い物袋を抱えたジーネと合流したよ。
 メイユールは、それと入れ替わりで、道具屋に入っていった。
【ジーネ】 私は、宿の部屋で買ってきたものの整理をしておきます。将来、バード技能を取ろうと思って、竪琴も買ったんだ。
【ティガー】 俺は1階の酒場にいる。
【GM】 酒場では、解放軍戦士たちが、まだどんちゃん騒ぎをしている。
【ティガー】 まだやってるんか(笑)。じゃあ、それに混ざる〜。
【GM】 「おう、おまえも飲め、飲め」と、並々と注がれたビールジョッキを突きつけられた。ティガーが一気に飲み干すと、「おお〜」と歓声があがる。
 んじゃ、生命力抵抗して。
【ティガー】 (ころっ)成功。ほろ酔い気分。
【メイユール】 おお、強い!
【GM】 戦士たちは、「やるじゃねーか、坊主」と大喜び。
【ジーネ】 ファンリーはどうしてるの?
【GM】 ティガーと一緒に、宿屋に戻ってきてる。これから買い物に行きたいそうだけど、ファンリーの所持金は、海底都市に落ちたあたりで、ティガーに渡してたよね。
【ティガー】 じゃあ、ファンリーについてく。
【ジーネ】 私は、シルファス神殿にでも、お祈りに行っとこうかな。
【GM】 ゴルドの国教は至高神シルファスなので、かなり大きく立派なシルファス神殿が建てられている。
 先の戦いで負傷した者が、たくさん神殿に運び込まれていて、今も治療が続けられている。
【ジーネ】 とりあえず、「ひとを殺してしまいました」と、懺悔しよう。
【GM】 「あのときの、頭を潰す快感が忘れられなくて──」(笑)
【ティガー】 「どうか、次の獲物をお与えください」(笑)
【メイユール】 こうしてジーネは、モーニングスターを振り回しながら、夜の街を徘徊するようになるんやな。
【ジーネ】 ちがーう!! なんでみんな、喜々として盛り上がってんの。
 普通に懺悔して、その後は、奉仕として治療のお手伝いをしますわ。
【GM】 じゃあ、ジーネは、婦長さんの指示の下、シーツを洗ったり、繃帯を取り替えたりして、奉仕活動に従事している。
【メイユール】 殺人の罪滅ぼしやね。
【GM】 宿に残るのは、シルヴィアのフクロウだけか。
【シルヴィア】 みんな出かけたな、と思いながら、書物を読みあさってる。
【GM】 ティガーとファンリーは、さまざまな店が立ち並ぶ通りに来たよ。先にメイユールが立ち寄ってる市場やね。
【メイユール】 わたしは、道具屋に来てるよ。
【ティガー】 ファンリーは何を買いたいの?
【GM】 武器や防具が欲しいそうだ。
【ジーネ】 わざわざそんなの買わんでも、ティガーが守ってくれるでしょ。
【GM】 「自分の身は、自分で守ります」とのこと。
【ティガー】 じゃあ、武器屋に行こう。

 先に市場に来ていたメイユールは、道具屋で一般装備を買い求め、ファンリーは、武器屋でショート・ソードやスモール・シールドなどの武具防具を買いそろえた。

【GM】 ただいまの時刻は、午後4時ぐらい。
 そろそろ、魔術師ギルドの書庫の一般開放が終了する頃。神殿の奉仕活動は、気がすむまでやってくれていいけど。
【シルヴィア】 書庫が閉鎖されるギリギリまでねばって、「閉館ですよ」と言われてから、ようやく席を立つ(笑)。
 その後、街をぶらぶらしながら、宿屋に戻ります。
【ジーネ】 しかし、メイユールはずいぶん買い込んだね。何を買ったの?
【メイユール】 水袋とか、毛布とか、旅の道具。
【シルヴィア】 出て行く気、満々やな(笑)。
【メイユール】 そら、契約は終わったんやし、いつまでもこんなところにいないよ。
 ラクダも買えるんだけどな〜。
【ティガー】 ラクダ!? 脱出用?(笑)
【GM】 ゴルドは山岳地帯の街やし、ラクダは売ってないなぁ。ロバなら、売られてるけど。
【メイユール】 ロバかぁ。いいや、ロングボウでも買っておこう。フッ、これで呪文を封じられても、地面に絵を描いて過ごさなくてすむ(笑)。
【ジーネ】 ティガーのほうは、買ったの武器だけ? あなたもファンリーも、一般装備は何も持ってないやんか。
【ティガー】 剣だけあれば、何でもできる。それに、所持金があと11フィスしか残ってへんから、一般装備なんか買われへん。
【GM】 それどころか、宿にも泊まれへん(笑)。
【ティガー】 この11フィスは、その辺の乞食にあげた。
【GM】 ボロを纏った小汚い乞食のおっちゃんは、大感激して礼を言う。
【ティガー】 OK、所持金ゼロ!
【メイユール】 すっきりや(笑)。
【ジーネ】 ファンリーの宿代は立て替えてあげる気になるけど、ティガーの宿代を出してやる気にはならんなぁ。
【ティガー】 広場で寝るから、別にかまわん。
【GM】 「じゃあ、寝やすい場所を見つけておきましょう」と、ファンリー。
【ティガー】 あっ、そういえば、毛布がないけど……ま、いっか。
【メイユール】 そんな会話をしてるふたりを見て、「たいへんなことになってるな〜」と思いながら、宿屋に帰る(笑)。
 部屋に荷物を置いたら、1階の酒場で飲んで過ごす。
【GM】 山ほど買い物袋を抱えて帰っていくメイユールを見送りながら、ファンリーは、「ミフォア神殿に行ってみましょうか? 泊めていただけるかも」と、言う。
【ティガー】 おー、行こか。
【GM】 では、ふたりはミフォア神殿にやって来た。
 ところが、ミフォア神殿にも負傷者が担ぎ込まれてて、泊めてあげる余裕がないらしい。
【ティガー】 しゃあないな、ファンリーだけでも宿屋に預けてこよう。
【GM】 そうしてしょんぼりと神殿を後にするキミとファンリーに、さっきの乞食が声をかけてきた。
「旦那、一部始終聞いてましたぜ」
【ティガー】 げっ、聞かれてたんや。カッコ悪ぅ〜って思うとく。
【GM】 「何でしたら、あっしの住処(すみか)にお泊めいたしやしょうか?」
【ティガー】 家、あったんか。
【メイユール】 どんな家やろ。
【ジーネ】 家があるのに乞食をやってるなんて、何だかな〜。
【GM】 乞食も立派な職業やからね、ここでは。
 ゴルドでは、貧乏人に優しくすると天国に行ける、という教えが信じられており、そのために彼のように『恵まれてやる』という職業が成り立ってたりするんやね。
【シルヴィア】 なるほど。
【ティガー】 すごい職業や。

前髪の陰謀の事

【GM】 もちろん、彼には他の仕事もあるけど。
「しかし、11フィスも恵んでくださる方は、めったにおりやせんぜ」
【シルヴィア】 ティガーは、めっちゃ幸せになれそうやな(笑)。
【ティガー】 乞食の家がどんなんか見てみたいから、ついてく。
【GM】 魔術師ギルドから宿屋に戻る途中のシルヴィアは、ボロボロで汚いおっさんについて行くティガーとファンリーを見た。
【シルヴィア】 「あいつら、何やってんのやろ?」と思いながら、宿に帰るよ。
【GM】 宿屋に帰ると、酒場でメイユールが酒を飲んでるところだった。
【メイユール】 「こんなところに連れてこられて……わたしの青春を返してっ」と、近くのひとに絡んでます。
【GM】 絡まれた男性も、「まったくだ、何が『いい儲けになる』だ!」と、酒を仰いでる。
【メイユール】 「飲もう、飲もう」と、すっかり意気投合する(笑)。
【シルヴィア】 えらいところに帰ってきたな。
 夕食の時間になるまで、部屋で剣を振って体を鍛えておきます。
【GM】 その頃、ティガーとファンリーは、乞食に案内されて、ゴルドの街の西区、市街を流れる小さな川のほとり、橋の下にやって来た。
 そこには、粗末なほったて小屋が建っている。
【メイユール】 やっぱり(笑)。
【ジーネ】 さ、ファンリーを宿屋に帰しに来てねっ。ティガーは好きにしていいから。
【GM】 ティガーとファンリーは、乞食に勧められるまま、ボロ小屋の中に入った。
 するとそこは、外観からは想像もつかないほど、豪華な内装の家だった。
 天井にはシャンデリアがあり、床には雲のようにフカフカな絨緞が敷かれ、比類なき荘厳な調度品やソファが並び、芸術的なテーブルに椅子、王族ご用達かと思うような、でっかいベッドなどが設置されてある。
【ティガー】 うわっ、すげー!
【GM】 ファンリーもびっくりしてる。
【メイユール】 すごいアンバランスな家やな(笑)。
【GM】 そりゃ、乞食は商売やから、外観はそれっぽいのを保っとかんとね。おっさんが小汚いのも、じつはメイクやで。
【シルヴィア】 あのボロの服も、じつは、商売用のコスチュームなんやな(笑)。
【GM】 そう。でっかいタンスを開けたら、貴族のような礼服や、一般市民の通常服に混じって、ボロの服が何着かハンガーにかけられてる。
【ジーネ】 貴族の礼服なんか、いつ着ることがあるんだろう……。
【ティガー】 きっと、乞食同士の会合のとき。
【メイユール】 うっ、その会合、ちょっと見てみたい(笑)。
【シルヴィア】 裕福なのがバレたらアカンから、きっと、秘密の会合なんやろな。
【ジーネ】 ちゅーか、それだと現場を目撃しても、誰も乞食の会合だなんてわからないと思うよ。
【メイユール】 でも、会話の内容は、「おまえ、いくら恵んでもらえた?」とかやねん。
【GM】 その話、じつはそんなにはずれてない。といっても、おっちゃんが出席するのは、盗賊ギルドの会合。
 このおっちゃんは、ベイカーを装いながら、諜報部の部長を務めるひとなんやね。
【メイユール】 おお、偉いひとなんや。街に座って、いろんな情報を集めてるんやな。
【ティガー】 そうなんか。じゃあ、裕福なこと、秘密にしといてあげるわ。
【GM】 乞食のおっちゃんはメイクを落とし、もわもわしたスリッパを履いて、豪奢なガウンに身を包んでいる。
 ソファに腰掛けて、ブランデー・グラスを傾けながら、「まあ、やってくださいよ」と、ティガーに勧める。
【ティガー】 ソファに座る〜。ブランデーを飲む〜。
【GM】 身が沈みそうなぐらい、ふかふかしたソファやね。
 ティガーがブランデーをラッパ飲みしてるのを見て、おっちゃんは、「お強いですなぁ」と感嘆する。
【ティガー】 ファンリーはジュースで。
【GM】 もう遅い。ひと口ブランデーを飲んでしまった。しばらくすると、ゲラゲラ笑ってティガーの背中をバシバシ叩きだすから。
【ティガー】 ひぃ〜!
【ジーネ】 ああ〜、ファンリーのイメージがぁ〜……。
【GM】 ティガーの前に並ぶ夕飯は、とんでもないごちそうやね。
 タレをたっぶりかけて焼き上げた鳥のもも肉とか、新鮮な魚介類をふんだんに取り混ぜたスパゲッティとか、幻の高級野菜を惜しみなく使った極上のスープとか──。
【ティガー】 11フィス恵んだだけで、すごいお返しや。ラッキー♪
【シルヴィア】 日本昔話で出てきそうな展開やね。
【GM】 その頃、シルファス神殿での奉仕活動を終えたジーネは、シルヴィアとメイユールがいる宿屋に帰ってきた。
 シルヴィアたちは、酒場でいつもの夕食をとっている。しかし、ティガーとファンリーの姿が見あたらない。
【ジーネ】 テーブルについて料理を注文しながら、「あのふたりはどうしたの?」と、聞くでしょう。
【メイユール】 なんか、市場で「宿に泊まれないから、広場で寝よう」とか言ってたのを、見たよ(笑)。
【シルヴィア】 僕は、乞食について行くふたりを見たよ(笑)。
【ジーネ】 その説明だけ聞くと、「いったい、何が起こったんだ?」って、思うやろな。
【GM】 さて、ティガーたちが乞食の家でごちそうを食べてると、そこに、ひとりのシーフらしき若い男がやって来た。
 男は、玄関のところで、小声でおっちゃんに何やら報告する。おっちゃんは、真剣な顔でうなずきながら、それを聞いている。
【ティガー】 何やろ? シーフ技能がないから、ダイス目だけで[聞き耳]をたててみる。(ころっ)
【GM】 なら、何となく内容が聞こえた。
 どうやら、やって来たシーフは、「レギト王子が行動を起こす」という情報を掴んだらしい。それを、諜報部長のおっちゃんに知らせに来たんやね。
【ティガー】 行動ってなにするん?
【GM】 噂どおり、アルヌーをはじめとする政府要人の暗殺。
【ティガー】 いつ?
【GM】 明日の明け方。現在、街の北の“野蕗通り”にある廃棄された屋敷に、元カルファン騎士や傭兵などが集まって、行動の準備をしているらしい。
 報告を聞き終えた乞食のおっちゃんは、
「旦那、すみませんが、ちょいと野暮用ができちまいやした。
 あっしはこれから出かけますが、どうぞ、ゆっくりしていってくだせぇ。ベッドは好きに使ってくれて、かまいやせんぜ」と、言い残して出ていった。
【ティガー】 俺もすぐに出てく。ファンリーを連れて、宿屋に戻る!
【GM】 ティガーが外に出ると、すでに夜の帳が降りていた。ふたりは宿へ走る。
 シルヴィアたち3人が、夕食後のお茶をすすっていると、腹がぽっこりふくれたティガーとファンリーが戻ってきた。
 そして開口一番、げっぷした。
【メイユール】 どこ行っとったんやー。
【ティガー】 「そんなことより、これから、フクロウ親父が殺されるよ」って、さっき聞いたことを、みんなに話す。
【ジーネ】 アルヌーさんのことね。“前髪王子”に“フクロウ親父”、ろくでもない名前ばっかりつけて……(笑)。
【ティガー】 いいから、早く行こうぜ!
【シルヴィア】 じゃあ、魔術師ギルドに急ごう。
【ティガー】 いや、前髪王子は、『“野蕗通り”の廃屋』におるねん。
【シルヴィア】 “野蕗通り”は、どこにあるの?
【ティガー】 酒場のオヤジに聞いてみる。
【GM】 魔術師ギルドの近く。というより、魔術師ギルドは“野蕗通り”の東端にある。
【シルヴィア】 それなら、僕は、まずギルドに直行して、アルヌーさんに急を知らせよう。
【メイユール】 わたしも魔術師ギルドへ行きます。
【ティガー】 俺とファンリーは、前髪王子のところに直行。
【ジーネ】 私は、リーダーのほうについて行こう。果してリーダーが心配なのか、ファンリーが心配なのか。
【GM】 ところで、キミたちの装備はどうなってる? くつろいでたところだし、まさか、ガチガチに武装してるとは思えないけど。
【ティガー】 鎧は着てない。剣はいつも持ってる。
【ジーネ】 私も奉仕活動してたし、チェイン・メイルは着てないよなぁ。部屋に戻って、モーニングスターだけ取ってくる。
【メイユール】 クロースとクラブしか装備してないやろなぁ。
【シルヴィア】 僕は魔法のクロースやし、常に着こなしてるよ。杖を持てば完全。
【GM】 了解。
 では、キミたちは夜の街に飛び出した。城の前の広場を抜けて、北に走ってゆく。
 T字路で“野蕗通り”に出た。東西にのびる大きな通りです。シルヴィアたち3人とファンリーは、昼間、魔術師ギルドへ行くのに通った道やね。
 東に行けば魔術師ギルド、西に行けば、噂に聞いた廃棄され無人となっている屋敷がある。
【シルヴィア】 ここで、ふた手に分かれるわけやな。
【ティガー】 廃屋を探す〜。
【メイユール】 魔術師ギルドに行く〜。
【GM】 では、メイユールとシルヴィアは、魔術師ギルドに来た。
 閉館の準備をしていた受付のお兄さんが、「どうしたんですか?」と、ふたりに声をかける。
【シルヴィア】 「今朝、ここに来た者ですが、火急に知らせなきゃいけない、大変なことができたので、導師のピロさんに取り次いでほしいんですが」と言う。
【メイユール】 わたしたちの顔を覚えてるかな。
「ウソつきティガーの仲間です」というのも、つけ加えとこう(笑)。
【GM】 では、帰宅寸前のピロさんが呼ばれて来た。
「火急の知らせというのは、何ですか?」
【シルヴィア】 「かくかくしかじか」と、ティガーから聞かされた話を伝える。
【GM】 「なるほど。アルヌー様は現在、城のほうに詰めておりますので、使者を送り、念のため警備を強化しておくよう、伝えておきましょう」
【ティガー】 俺ら、廃屋を見つけれた?
【GM】 そうやね。ちょうどその頃、ティガーたちは、それらしき寂れた廃屋を見つけたよ。
 窓という窓には木板が打ちつけられ、中の様子をうかがうことはできない。
【ティガー】 ひとがいる気配はする? [聞き耳]してみる。(ころっ)無理、わからん。大失敗。
 ファンリーにやってもらう。
【GM】 (ころっ)「ひとがいる気配がします」
【ティガー】 前髪王子の声はする?
【GM】 「します。『今宵、アルヌーを討つ』と、言ってます」
【ティガー】 お〜!?

÷÷ つづく ÷÷
©2003 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2003 Jun Hayashida
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