≪REV / EXIT / FWD≫

§久遠の旅人:第4話§

エルフの島

著:龍神裕義 地図:もよ
▽ インディアン・エルフ ▽ 砦に侵入 ▽ カイ救出

インディアン・エルフ

【GM】 じゃあ、始めるで。今日はカノンがNPC やから、あんまりしゃべらへんで。
 みんなな、なんか知らんけど、エストリア王国の王都エストリアに来てん。

【ルミオス】 あ、もうサリア地方に着いてんな。
【GM】 そうそう。ホントはボア王国を通らな来られへんねんけど、なんでか来れてん。で、なんで知らんけど、船に乗ってバーゼル王国の王都バーゼルに行こうと思ってん。
 それで船に乗ってんけど、漁師の島を過ぎたところで嵐にあって、とある島に流れ着いてん。
【ムードロ】 なんか、途中がごっついはしょられてる。
【バルバッツァ】 それだけで1つの冒険になりそうな気がするんやけど。
【ルミオス】 その島ってのは何なん? カローンとかいうところ?
【GM】 いや、そっちじゃなくて、エルフの島。そこの“神々の涙”の近くの海岸。
【バルバッツァ】 それはなんや、樽かなんかにつかまって流されてきたんか。
【GM】 ううん、船ごと。
【ルミオス】 乗ってた船がその海岸で座礁かなんかしたんやな。
【バルバッツァ】 船ごとやったら、他の乗客や乗組員もおるわけか。
【GM】 じゃあ、そう。
【ルミオス】 「じゃあ、そう」?!
【バルバッツァ】 で、俺らはいったいどーしたらいいの。
【GM】 船長はこの島にエルフの集落があるのを知ってるから、「船を修理する材料をもらって来よか」と言ってる。
【ムードロ】 じゃあ、行ってこい。
【GM】 「みんな手伝ってよ〜」
【バルバッツァ】 「手伝ってよ」って、俺ら客やぞ?
【GM】 「だって、ひとりやったらしんどいもん」
【ムードロ】 水夫とかはおらんのか?
【GM】 「いるけど〜」
【バルバッツァ】 その島は危険なんか?
【ムードロ】 島の南半分は危険そうやけどな。ダークエルフの集落らしいし。
【GM】 あ、でも、エルフの集落のほうは大丈夫。
【バルバッツァ】 大丈夫やったら、俺らいらんやろ。なんでついて行かなアカンねん。
【GM】 「だって木ィ重いやん」(笑)
【バルバッツァ】 ちょっと待て、労働さす気かぃ!
【ムードロ】 このわたしに肉体労働しろと?
【ルミオス】 そんでその船長って、この島のエルフとは仲がいいの?
【GM】 「いや、難破したん初めてやし。行ってみよっかなー、ってそれだけ〜」
【ルミオス】 じゃあ、ひょっとして、エルフの集落がある場所、把握してへんとか。
【ムードロ】 きっと「話には聞いたことある、確か向こうのほうに〜」って感じやな。
【バルバッツァ】 最悪や、えらい船に乗ってもた。材木って、その辺に木とか生えてないんか?
【GM】 少しは生えてるけど、材質がちゃうから。でも、ほとんど荒野。
【ムードロ】 別に応急処置ができるんなら、材質なんか何でもええんちゃうの。
【GM】 だって、気持ち悪いやん。
【ルミオス】 なんや、それ。
【バルバッツァ】 まあ、百歩譲って仕事手伝うとして、報酬はいくらなん?
【GM】 「船が直ったら大陸に帰れるやん」
【ムードロ】 つまり帰れることが報酬だと?
【バルバッツァ】 俺ら金払って船に乗って、そのうえ肉体労働させられるねんで。納得いくか!
【GM】 「じゃ、船代タダってことで」
【ムードロ】 なんや、それ〜。
【バルバッツァ】 でも、手伝ってやらんとゲームにならんのやろな、きっと。
【ルミオス】 しゃあない、手伝おか。
【ムードロ】 んで、そのエルフの集落まではどのくらいかかんの?
【GM】 近いで。ここから西に1日もかからんと着くから。“神々の涙”っていう、この島のエルフの集落ではいちばん大きいとこ。
【ムードロ】 じゃ、そこに行く。
【GM】 じゃ、着いた。インディアンみたいな恰好してエルフがいっぱいいるよ。頭に羽根飾りつけて、男は腰ミノだけやったりするねん。
【ルミオス】 うお〜! 「酋長、ウソつかない。これ、ジ○ポニカ学習帳」とか言うんやろ。……失礼しました〜。
【バルバッツァ】 でもエルフやから、耳長くて金髪碧眼なんやろ?
【GM】 いや、髪の毛は銀髪。銀髪が好きやねん。
【ムードロ】 GMの趣味で決まったんやな。
【GM】 ほんでこいつら、生活スタイルもインディアンやねん。聖なる山に住む大長老でシャーマン技能が10レベルのアークさまは、年に1度の祭りの日しか皆の前に出てこない。そんで、ダークエルフたちとは仲が悪い。
【ルミオス】 ほう。地図によるとエルフとダークエルフは、南北二分にして縄張りを持ってるみたいやな。島の南半分がダークエルフの領土で、首都が“暗黒の翼”か。大長老はカンスさま、シャーマン8レベル。
【ムードロ】 ダークエルフのほうが弱そうやな。
【バルバッツァ】 カンスさまだけが8レベルで、残りのダークエルフは10レベルやったりして。
【GM】 そんなん大長老とちゃう〜。
【ルミオス】 エルフもダークエルフも、レムリア大陸との交流はないらしいな。大陸があることは知ってるみたいやけど。
【ムードロ】 ちなみに聖なる山のアークさまは、ムードロの叔父さんやから。じつは。
【バルバッツァ】 あんた、姪っこやったんか!
【ルミオス】 じゃあ、ムードロはこの島に出身なん?
【ムードロ】 いや、親父が大陸に渡ってから生まれたから、大陸出身。じゃあ、会いに行くわ、叔父さんに〜。
【GM】 知るか!
【バルバッツァ】 こんなに強力なコネがあるのにぃ。
【GM】 コネがあっても会えません〜。それに別にムードロの叔父さんじゃないし。
【ルミオス】 ムードロが勝手に「叔父さんや」って言うてるだけやな。
【GM】 あ、でも、もうじき会えるかも。会えるっていうか、祭壇の上におるのが見えるかも。何かね、1週間ぐらい祭りやるねん。で、いま、祭りの期間に入ってるんやけど、6日後ぐらいにアークさまが出てくるから。
【バルバッツァ】 その祭りって、いったい何を祭るんや。
【GM】 え?? ……アークさま?
【バルバッツァ】 『アーク祭り』かぃ!(笑)
【ルミオス】 えらいこっちゃ(笑) 。
【GM】 でもね〜、それは最後だけ。
【ムードロ】 それまでは何をすんの?
【GM】 いろいろ。えっとね〜、この祭りって、強くなったエルフが一人前の戦士として認められる祭りやねん。
【ルミオス】 ははあ、一種の儀式なんやな。
【バルバッツァ】 祭りの期間に入ってるってことは、いまの“神々の涙”はけっこう賑やかなんやな。
【GM】 騒ぐのは最後の日だけやから、いまは静か。最初のほうは静かに過ごすから。大晦日の除夜の鐘が鳴る寸前みたいな感じ。
【バルバッツァ】 よくわからん(笑) 。
【ムードロ】 とりあえず、材木もらいに行かなな。家とか立ってるの?
【GM】 うん、藁のテントみたいな家とか、木で作った家とか、偉そうなところは土で家を作ってるみたい。
【バルバッツァ】 ところで、言葉は通じるのかね。
【GM】 うん、エルフ語やったら通じる。船長はエルフ語しゃべれないから、困ってるけど。
【ルミオス】 知るか!
【ムードロ】 じゃあ、材料がもらえそうな家に行ってみよっかな。
【GM】 1個、見つけた。家の裏に柵で囲われたところがあって、そこに木がいっぱい生えてる。いっぱいって言うても、15本ぐらい。
【バルバッツァ】 柵で囲われた範囲にしか、木は生えてないんか?
【GM】 うん。他の家には木はないし、周りは荒野。アメリカ・インディアンが住んでそうなところやから。
【ルミオス】 ここのエルフは森に住んでるんじゃないのね。普通のエルフのイメージからすると、かなりかけ離れてるなぁ。
【バルバッツァ】 じゃあ『エルフ』と言わずに、新しい名称をつけたらええねん。これからはこの種族のことを、『ホムセレフォ』と呼称しよう。
【GM】 なにそれ、いや〜!(笑)  『岩エルフ』でいいやん。
【ムードロ】 固そうやな。
【GM】 で、船長もその家の木を見て、「あれだけあったら足りるなぁ」って言う。
【ムードロ】 どれだけ取って行く気や。
【GM】 「10本ぐらい」
【バルバッツァ】 10本も取るんかぃ! いったい、どういう壊れ方したんや、あの船は。まさか、イカダを作るつもりちゃうやろな。
【GM】 「じゃあ、5本でいいよ」
【ルミオス】 そこに生えてる木って、そんなに小さいの?
【ムードロ】 そんな細い幹じゃ、大した木材にはならんぞ。
【GM】 細くはないよ。普通ぐらい。
【バルバッツァ】 普通ってのもあいまいやけどな。とりあえず、そこの所有者に木を分けてくれと交渉しようやないか。
【ムードロ】 「たのもう!」ドンドンドン。
【GM】 「なんじゃー!」ってドアが開くよ。女のエルフが出てきた。
【ムードロ】 「木が欲しいのだが」
【GM】 「いやよ。何であげなアカンねん」
【ムードロ】 「船を〜、直したいんです〜」
【GM】 「船って、どこから来たの?」
【ムードロ】 「マグロがよく捕れる、エストリア領の漁師の島方面から……」
【GM】 「どこやねん、それ」

砦に侵入

【バルバッツァ】 まあ、この島のエルフにはわからんわな。とにかく、大陸から来たってことよ。
【ムードロ】 「そういうことで、木が5本ほど欲しいわけ〜」とか言うとこ。
【GM】 「タダじゃあげれないなぁ」って言うてる〜。
【バルバッツァ】 ここのエルフに、大陸の貨幣は通用するんかね。
【GM】 ここは物々交換。だから、金は別にいらん。木ィあげてもいいけど、頼み事があるねんて。
 なんかね、この女の子にお兄さんがいるんやけど、この家、この村では大きいほうやから、ダークエルフとの境界に見張りの砦みたいなん持ってんねんやん。でもな、ダークエルフに占拠されて、お兄さんがまだ中に残ったままやねんて。「助けに行くの、ついて来て」
【ムードロ】 ずいぶん……木ィ5本のために、命懸けか!
【GM】 「お礼に宝石あげるし」って言ってる。「足りんかったら、ダークエルフの耳もあげるし」
【ルミオス】 耳ィ〜?!
【GM】 これいっぱいためたら、一人前の戦士と認められて、アークさまが〈バルキリー・ジャベリン〉を使えるようにしてくれるねん。耳、10個から15個の間でしてくれるらしい。
【バルバッツァ】 ってことは、16個集めてまうとアウトなんや。
【GM】 いや、16個集めたら絶対なれる(笑) 。ちなみに左耳しか数に入らへんねんて。
【バルバッツァ】 なんや、5人倒したら10個の耳が集まるって思ったのに。
【ムードロ】 とりあえず、砦に行こっか。宝石に目がくらんで。
【ルミオス】 どんなエルフや、ムードロは。
【GM】 でな、お姉さんは「ダークエルフは強いから、追い返すだけでもいい」って。
【ルミオス】 こっちが追い返される可能性のほうが高いんやけど。
【バルバッツァ】 綿密な作戦が必要やな。
【GM】 それから、お姉さんもついてくって。
【ムードロ】 来んでいい。
【ルミオス】 いや、お姉さんのほうが、我々より強いと思うねんけど。
【GM】 あと、お姉さんの弟も「一緒に行きたい」って言う。
【ルミオス】 あ、弟もおるんかいな。3人兄弟?
【GM】 うん、3人兄弟で、お父さんとお母さんもこの家にいる。
【バルバッツァ】 ひょっとして、ここのエルフは人間ぐらいの短命なん?
【GM】 ううん、めっちゃ生きるよ。
【バルバッツァ】 じゃあ、そんな調子で子供つくってたら、この島、すぐにエルフで溢れかえってしまうで(笑)。
【GM】 うん、大変やな(笑) 。
【ルミオス】 ところで、何でお父さんは助けに行かへんの?
【GM】 うん、なんかな、祭りの期間は戦士は動いたらアカンらしい。
【バルバッツァ】 ほんなら、いまダークエルフに攻めてこられたら終わりやん。
【GM】 でも、ダークエルフはそんなこと知らへんもん。気が向いたときに攻めてくるだけやもん。
【ムードロ】 アホや。
【ルミオス】 この島のダークエルフは、おつむが足りへんねんな。
【バルバッツァ】 このサリア地方全体が、のほほんとしてるんやろ(笑)。
【GM】 でも、カローン島とかすごいかも知れへで、じつは。
【ルミオス】 ああ、そこは何か「謎の島」とか書いてあるしな。ノスレア大公国というのもすごそうやな。「偉そうなヒゲの爺ぃがよくいる」やって。
【バルバッツァ】 でも「偉そう」なのであって、ホントに偉いのかどうかの保証がない(笑)。
【ムードロ】 で、その姉ちゃんと弟と、助けを待ってる兄貴の名前を教えてくれ。
【GM】 じゃあ、ねえちゃんエリヤ、弟がイル、兄貴がカイ。この中で、カイは〈バルキリー・ジャベリン〉が使えるらしい。
【バルバッツァ】 ということは、5レベル以上のシャーマンやな。
【ルミオス】 それで捕まってるって、相手はかなり強いで。私らが行って、役に立つのか?
【バルバッツァ】 その砦にいるエルフは、5レベルの兄貴ひとりか?
【GM】 うん、いまはカイだけ。おとんも一緒におってんけど、逃げてきてん。カイも一緒に逃げてると思ってたら、捕まっててん(笑)。
【バルバッツァ】 じゃあ、すぐに取って返すやろ。
【GM】 怖かってん。いっぱいダークエルフがいたから(笑)。
【ルミオス】 とんでもない親や。この家庭は崩壊してしまうんちゃうか。
【GM】 え? こいつら、仲いいねんで。
【バルバッツァ】 きっと、脳ミソがとうもろこしなんやろな(笑)。
【ムードロ】 で、エリヤとイルの強さはどれくらい?
【GM】 エリヤは4レベルで、イルは1レベル。
【ムードロ】 イルは来なくてよしっ!
【GM】 でも、耳が欲しいから行くねんて。
【バルバッツァ】 俺らに働かせて、自分は耳だけいただくつもりか?
【ルミオス】 せこっ!

 冒険者たちは、砦の見取り図をもらって、エルフの集落を後にした。
 カイが捕らえられている砦は、島南部に住むダークエルフたちが北部のエルフたちの侵攻に備えて、南北の境界にある山岳地帯に築いたものだという。
 その2階建ての砦は、北部に面した山の斜面を削って建設されているので、島北部のエルフの集落側から砦に向かう冒険者たちは、正面から乗り込むことになる。それを嫌って山を迂回し、山頂側から砦に向かった。
 冒険者たちは、砦南側の岩場の砦を見下ろせるところに身を潜めて夜になるのを待ち、カイ救出の案を練った。

【GM】 砦の北側にある見張り台には、ダークエルフの警備がひとりいるからね。
【ルミオス】 見張りはどっちを向いてるの?
【GM】 エルフの集落のほうを見張ってるから、みんながいるところには背中を向けてる。
【ムードロ】 砦には塀とかはないんか?
【GM】 あるよ。砦の周りは高さ3メートルの石壁の塀で囲われてる。
【バルバッツァ】 砦自体は、重力に対して垂直になるように、斜面を削って建ててるんやんな。塀は斜面に対して平行に作られてるの?
【GM】 ううん、砦と一緒。
【ムードロ】 ってことは、山の上側にしてみれば、塀は低くなってるんやな。
【ルミオス】 砦の背後に回ったんは正解やったな。
【GM】 んで、そろそろ夜になったよ。見張り台と、食堂と、2階の東側の部屋に明かりがついてるよ。あとの部屋は、中に誰かいるかも知れないけど真っ暗。
【バルバッツァ】 なるほど、寝てるかも知れへんわけやな。
【ルミオス】 ダークエルフがどれだけ砦にいるのか、わからんのは怖い。
【バルバッツァ】 内部を探る必要があるな。肝心のカイがどこにいるのか把握してなかったら、救出のしようがないし。
【ムードロ】 これは誰かに偵察に行ってもらわんとな。エリヤに〈インビジビリティ〉で行ってもらおう。そして、そのまま救出してまえ〜。
【GM】 エリヤはシーフ技能を持ってないから、扉とか開けたりしたらバレそうやで。壁とか登れへんかも知れんし。
【ムードロ】 「忍び足っ」ガタッ! ──と、なるわけやな。
【バルバッツァ】 わかった、わかった。じゃあ、俺が行ってこよう。

 砦には各部屋に窓が設置されている。バルバッツァは、明かりがついている部屋は中を覗き、真っ暗の部屋に対しては[聞き耳]をたてた。すると、食堂でふたりのダークエルフが酒を飲んでいるのを発見。さらに、1階の明かりがついていない3つの部屋のうち、ひとつの部屋から寝息を聞き出した。

【ルミオス】 現段階では、見張りの奴を合わせて4人のダークエルフがおると判明したな。寝息の奴がダークエルフかどうかは、わからんけど。あとは2階やな。
【ムードロ】 さ、2階に行ってくれ!
【バルバッツァ】 え??
【ムードロ】 ジェスチャーで指令を伝える。親指で上をさして、「行けっ」と。
【バルバッツァ】 ジェスチャーで指令を拒否する。手を振って、「無理、無理」と。
【ルミオス】 ブロックサインの応酬が繰り広げられてるんやな(笑)。
【バルバッツァ】 しゃあないな。2階のベランダには手すりか何かあるの?
【GM】 あるよ。
【バルバッツァ】 じゃあ、そこにロープを引っかけて、ベランダから2階に浸入しよう。もちろん、ロープにはエイトノットで足場を作って、登りやすくしておくからな。(ころっ)するする、シャっとロープを投げて引っかけて登攀した。

 バルバッツァはベランダに登り、明かりがついている2階東側の部屋を窓から覗いた。すると、中には3つの人影があった。ふたりはダークエルフだが、ひとりは縛りあげられたインディアンっぽいエルフだった。

【ムードロ】 カイ、発見〜。
【ルミオス】 ダークエルフと一緒におるんか。
【バルバッツァ】 西側の部屋は、明かりが灯ってないんやな? じゃあ、[聞き耳]をたててみる。(ころっ)
【GM】 何かいそうな気配がする。
【バルバッツァ】 じゃあ、みんなのところに戻ってそれらを報告する。「この俺の、尋常ならざる比類なき高度な偵察によって、件のごとく正確無比な情報をもたらすことができた」と。
【ルミオス】 報告というより、自慢やないか(笑) 。
【ムードロ】 「よくやった」と褒めてあげよう。
【GM】 イルが「耳っ」と手を差し出す。
【バルバッツァ】 「バカやろう! 自分で倒して取らないと、何の意味ないじゃないかっ」と、胸ぐらを掴んで厳しく諭す。
【GM】 「だって、怖いもん」(笑)
【バルバッツァ】 「逃げるんじゃない! やめるなんて言うなっ」
【ルミオス】 「さあ、あの太陽に向かって走ろうっ」──ひと昔前の音楽がかかりそうやな(笑)。

カイ救出

【ムードロ】 さ、本格的にカイを助けに行こう。
【ルミオス】 ダークエルフは、確認できただけで5人おるわけやな。で、正体不明なのが、少なくても2人。
【バルバッツァ】 真正面から行くのは無謀すぎる。一点突破の奇襲作戦でいこう。2階のベランダから浸入して、一気に東の部屋に乱入してカイを連れ出す。
【ルミオス】 奇襲というのはいい作戦やと思うんやけど、問題はベランダに上がれる人間がどれだけおるかやな。足場を作ったロープを垂らしてるから、シーフでなくても登れんことはないやろけど、気づかれないようにするのが難しい。
【バルバッツァ】 じゃあ、ロープの周辺に〈サイレンス〉をかけておこう。
【ルミオス】 なるほど。ところで、ベランダから直接、カイのいる部屋に侵入することはできへんねんな?
【GM】 できないと思う。窓はあるけど、そんなに大きな窓じゃないから。ベランダには、廊下から出入りするねん。
【ルミオス】 とすると、まずベランダから廊下に入り、そこから部屋に突入せんといかんのか。
【ムードロ】 部屋の突入すると、まず間違いなく戦闘が起こるな。
【ルミオス】 戦闘中に1階から敵の救援が来ないようにしときたいな。〈ダークネス〉で暗闇にしといて、階段に油をまいとけば少しは時間稼ぎになるかな。
【ムードロ】 その階段って、幅はどのくらいあるの?
【GM】 ひとり分ぐらい。
【ムードロ】 じゃあ、階段を上がりきったところにカノンを配置しとけば、もぐら叩きの要領で追い払えるな。〈ダークネス〉から顔を出してきたところを不意討ちで階下に蹴落とせば、奴らはなかなか上がってこられへんぞ。
【バルバッツァ】 あと、廊下に入ったところで、寝息が聞こえた西の扉に〈ロック〉をかけておけば、背後を突かれることもない。
【ムードロ】 そうしてるうちにカイと一緒にいるダークエルフを倒して、カイを助けるわけやな。
【ルミオス】 倒せるかどうかはわからんけどな。ま、カイを助け出したあとは、脱出経路や。
【バルバッツァ】 砦に乗り込むのは、イル以外の5人でいいな? じゃあ、その5人に、あらかじめ〈フォーリング・コントロール〉をかけとこう。カイを助けたら、すぐにベランダから飛び降りて逃げる。
【ルミオス】 それはいいけど、精神力を15も消費してしまうで?
【バルバッツァ】 なら、その後、カノンにカノンに〈トランスファー・メンタルパワー〉で精神力を補充してもらっとき。砦で〈ロック〉と〈ダークネス〉も唱えなアカンからな。
【ムードロ】 さらにエリヤが〈トンネル〉で塀にくぐり穴を作っておこう。そしたら、塀を登って逃げる必要がなくなるやん。あと、この岩場に罠を作っとこう。ロープを切ったら、でかい斧が「ザーン!」と敵を襲うようなやつ。
【バルバッツァ】 それは無理やろけど、岩がゴロゴロ転がってくる程度のならできるやろ。
【ムードロ】 あと、うちは〈ダンス〉を歌う可能性があるので、みんな耳栓をつめておくように(笑)。

 冒険者たちは奇襲作戦の準備に取りかかった。
 まずはバルバッツァが、レンジャー技能で岩が転がる罠を作ろうと試みる。しかし、1ゾロで失敗! やむを得ず、ムードロが立案した「バラが降ってくる罠」を代わりに設置した。
 続いて、ルミオスが突入する5人に〈フォーリング・コントロール〉をかけ、カノンがルミオスに〈トランスファー・メンタルパワー〉で精神力を譲渡した。
 そして、エリヤが〈トンネル〉で侵入及び脱出用のくぐり穴を作り、最後に呪歌対策の耳栓を装着して、準備は完了した。

【ルミオス】 それじゃ、行きますか。
【バルバッツァ】 〈フォーリング・コントロール〉も〈トンネル〉も18ラウンドしかもたへんからな。3分以内にミッションを終了させるぞ。
【ムードロ】 突入〜。
【GM】 じゃあ、ベランダの下まで来たよ。
【バルバッツァ】 エリヤに〈サイレンス〉をかけてもらう。で、ベランダにあがって、東部屋にカイがいるのを確認したら、下の連中にブロックサインで「あがってこい」と指示する。鼻を押さえた次のサインが本物やからな。耳の後に出したサインはダミーやから。
【ムードロ】 誰に対するダミーや。
【バルバッツァ】 ダークエルフに決まってるがな。
【GM】 ダミー出してても、そこにおるのがバレたら終わりやん(笑)。

 誰ひとり失敗することなく、冒険者たちとエリヤは2階のベランダにあがった。脱出後、追手がベランダを降りてこないように、ロープは回収された。
 そして屋内に侵入し、ルミオスが西部屋の扉に〈ロック〉をかけ、それと同時に、ムードロ、バルバッツァ、エリヤの3人が東部屋の突入した!

【ムードロ】 バラ吹雪がぶさ〜って部屋に渦を巻きながら舞うで。
【バルバッツァ】 んで、「誰だっ!?」って振り向いたら、開け放たれた扉のところにムードロが腕組みして立ってるんやな。
【ムードロ】 後ろからライト当てて、シルエットにしといてや。そして〈ダンス〉で踊る〜。(ころっ)はい、1ゾロ。ムードロひとりで踊ってるわ。
【バルバッツァ】 ダークエルフAに攻撃しとくから、エリヤはカイを持って部屋から脱出してや。(ころっ)はずれ。
【ルミオス】 階段に〈ダークネス〉で暗闇を作る。そんで、カノンが油瓶を投げる。これで私の任務は終わり。カノンは階段の上のところで待機。
【GM】 じゃあ、ダークエルフAが〈ファイアボール〉を唱えた。部屋におるひと、みんな抵抗してな。
【バルバッツァ】 こんなとこで唱えたんか! (ころっ) 失敗。
【ムードロ】 (ころっ) 失敗。
【GM】 エリヤも失敗、カイとダークエルフは両方とも成功。失敗したひとにはダメージ10点ね。
【バルバッツァ】 ダークエルフBは怒ってダークエルフAに攻撃するやろ。
【GM】 Bは「何するんだ!」って言いながら、〈バルキリー・ブレッシング〉の魔法を唱えた。エリヤはカイに駆け寄って縛ってる縄を切る。カイは「やあ、妹よ」って言う。

 第2ラウンド、ムードロはバラの花を投げて〈ホールド〉を唱えるが失敗。バルバッツァはクリティカルでダークエルフAを倒した。
 そして、ムードロがダークエルフBの〈スリープ〉を抵抗している隙に、エリヤとカイは部屋を脱出した。

【GM】 そろそろ、階段の下がうるさくなってきてるよ。じゃあ、第3ラウンド。
【バルバッツァ】 よしよし、カイが脱出したんで目的は果たしたな。
【ムードロ】 心置きなく、ダークエルフBに攻撃!
【バルバッツァ】 攻撃すんのかぃ! 俺は逃げるからな、あとは知らんぞ。おまけにダークエルフBは、バルキリーに守られてるし。
【ムードロ】 しゃあないな〜。うちも逃げる、逃げる。レイピアを使う間がぜんぜんなかったやん。
【ルミオス】 じゃあ、敏捷度の高い者から順番にベランダから飛び降りよう。
【ムードロ】 そして、フワ〜っと降りていくんやな。
【GM】 でも、ダークエルフBがベランダまで追いかけてきてるよ。んで、カノンに〈スリープ〉を唱えた。(ころっ)カノンは寝たよ。
【ムードロ】 落ちながら寝てるんや。
【バルバッツァ】 しゃあない、俺がかついで逃げよう。全速力でダッシュするからな。
【ルミオス】 トンネルから脱出。で、全員が抜け出したら、〈ディスペル〉で〈トンネル〉を解除する。(ころっ)成功。
【GM】 追手は追いついてこられへんよ。
【ムードロ】 なんや、せっかくのバラ吹雪の罠が使えわれへんやん。悔しいから、無意味に罠を発動させる。ブワ〜。
【バルバッツァ】 月明かりにバラの花びらが舞い散るんや(笑)。

 そして冒険者たちは、カイ、エリヤ、イルとともに、来た道を辿って“神々の涙”に帰ってきた。

【GM】 じゃあ、木をもらえて、船長は喜んでる。1週間ぐらいで直るって。
【ムードロ】 えらい、あっさりしとんな。
【バルバッツァ】 せっかくやから、アーク祭りを見学していこか。ムードロは叔父さんに会わんといかんしな。
【ムードロ】 アークさまに「叔父さ〜ん!」って駆け寄るで。
【GM】 「誰じゃー!」って言われる(笑) 。「取り押さえろ〜っ」
【ルミオス】 で、アークさまは見れるのかね?
【GM】 うん、高い祭壇の上で偉そうに立ってるよ。で、下で他のエルフたちが騒いでるねん。ちなみにアークさまは銀髪で、髪の先っちょが緑やねん。
【バルバッツァ】 なるほど、苔むしてるんやな。
【GM】 ちゃうわーッ!
【バルバッツァ】 次回はいよいよ、省地方やな。なんか、恐ろしそうなとこやなぁ。
【ルミオス】 他の地方とは、明らかに毛色が異なってるからな。外界と切り離された、謎の地域やし。しかし、どうやってそこに行くんやろ。
【ムードロ】 あ、じゃあ、船でバーゼルに行かずに、この島の“異界への道”に行こ。そこで竜巻に巻き込まれて、省地方に行くことにするから。
【ルミオス】 なるほど。それがいちばんええかも知れんな。
【GM】 じゃあ、船長は海で待ちぼうけやん。「せっかく船が直ったのに、あいつら帰って来うへん〜」って(笑)。

÷÷ つづく ÷÷
©2001 Hiroyoshi Ryujin
Map ©2001 Moyo
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