▽ ガーヴェン出陣 | ▽ 王都レギト | ▽ 未来に託して |
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【GM】 さてさて、キミたちは前回、苦戦しながらもみごとモゴチャでの陽動作戦を成功させ、キャフタでのクーデターの成功にひと役買ったわけだ。
【アイザック】 そのクーデターの詳細を、まだ聞いてなかったんだよな。
【GM】 詳細を話すとなると、とてもじゃないけど枚数が足りなくなる。つーことで、あらましを簡単にお話しよう。
【リザローク】 聞かせてもらおう。
【GM】 今回の革命、目に見える形で蜂起してからはわずか4日で成功したことになる。が、水面下での準備は、このキャンペーンが始まるもっとずっと前から進められてたわけだ。民衆の不満を煽ったり、領主側の人間を味方に引き入れたり。
【リザローク】 スパイか。
【GM】 まあ、そんな感じかな。たとえば、革命後の政権を握ったのはガーヴェンのリーダーではなく、領主側ナンバー4だったおじさん。このおじさんは領主側にいながらなかなか甘い汁を吸えなくて、イライラしていた。そこへラザラスがやって来て、権力をやるから協力しろと誘ってきたんやね。で、いま、領主の座について喜んでるわけ。
【リザローク】 いいのか、そんな奴を新領主にして。
【アイザック】 腐敗した政治を正すのが、ガーヴェンの目的だったはず。
【GM】 それはあくまでプロパガンダやけどね。ちなみにラザラスは、ちゃっかりキャフタのナンバー2におさまってたりする(笑)。
【アイザック】 なるほどな。元ナンバー4を領主にしとくけど、実権はラザラスが握ってるわけや。
【GM】 他には軍の偉いさんも仲間に引き込んでいて、アクシャやモゴチャから戻ってきた領主の軍勢に武装解除を命じさせたりもした。ちなみにキャフタに残ってたほとんどの軍は、内通したひとの手勢だったりする。
【アイザック】 ってことは、キャフタでは大きな戦いにならんかったんか。
【GM】 どっちかというと、モゴチャのほうが激戦だったりした(笑)。アクシャ村には運よく内通した軍が行ってたし。
【リザローク】 なんてこった。これは給料をはずんでもらわんと(笑)。
【GM】 それはもちろん。キミたちは報酬として1万フィスを受け取ったよ。
【リザローク】 おおッ! 1万!
【GM】 これからもガーヴェン軍の士官として、活躍してもらわんといかんからね。組織の中でもけっこう重要なポストに位置づけられてるよ。
【リザローク】 出世したな〜。リムとファンリーに見せてやりたかった。
【GM】 さて、そうしてモゴチャ攻防戦から3ヶ月が流れた。年は明けてレムリア暦520年の初春。
【アイザック】 その間は平和やったわけ? とりあえず、前回ラザラスさんが「キャフタ占領後、3ヶ月耐えればいい」と言ってたような気がするけど。
【GM】 直接の戦闘はなかったよ。ただし、オールOKというわけではない。
ガーヴェンがキャフタを押さえた直後から、カルファン王国はキャフタの明け渡しを要求してきた。しかし、当然ガーヴェンは拒否する。逆にガーヴェンがカルファン王国に対して、サパロ5世の退位と王家の解体、タイガーファング城の明け渡しなどを要求して、話はこじれるばかりだったり(笑)。
【リザローク】 なんでそーゆーややこしいことするかな〜。
【アイザック】 キャフタに戦いをしかけたときと同じだろ。要は、話し合うつもりなんかないわけや。
【GM】 まあ、そのとおりやね。素直にキャフタを明け渡せば、キミたちを含む反乱軍はことごとく打ち首やし、「はい、そうですか」とあっさり降伏するわけにもいかない。王国に対する要求は、カリム・スコエ・ハオトみたいな男にキャフタ領を委任してたことへの責任追求、ということになってる。
【リザローク】 で、王国は責任をとってくれない、と。
【GM】 もちろん。互いの交渉は接点すら見出せず、もはや武力による解決しか道はない。ということになってる。
【アイザック】 ということは、戦争の準備は進んでるんや。
【GM】 そう。ちなみに正規の兵士は、ガーヴェン・メンバーを含めて約400人ほど。あとはキャフタ、モゴチャ村、アクシャ村から志願した民兵を加えて、総勢1500ほどという状態になってる。
【リザローク】 民兵って使い物になるんか?
【GM】 さあね。いちおう、この3ヶ月の間にキミたちが軍事訓練を施してはいるけどね。
【アイザック】 う〜む、冒険者からかけ離れてしまってるなぁ。これじゃあ、まるで軍人じゃないか。
【GM】 軍人だねぇ。いまさら組織を抜けることもできないし(笑)。
【リザローク】 マジっすか。
【アイザック】 まあ、しゃあない。こうなったら「慣れていくのね。自分でもわかる」とか言うとくしかない。生き残るためには、カルファン王国と戦うしかないわけや。
【リザローク】 自分の祖国と戦うのか……。しょせん、血塗られた道か。
【アイザック】 そりゃ、革命を起こそうという組織に入ってしまったんやからな。国をよくするために反乱を起こしてる、って考えればええねん。
【リザローク】 なるほど。
【アイザック】 ところでGM、民兵に軍事訓練を施すなら、俺は弓矢部隊を作りたいんやけど。飛び道具で攻撃する部隊やねん。
【GM】 ほう、いかにも傭兵や冒険者の発想でいいな。この世界の戦争の花形は騎士の突撃。飛び道具で戦うのは臆病者で、弓兵は卑しい者と相場が決まってるからね。
【アイザック】 実用性が第一よ。
【GM】 ラザラスさんは、もちろんアイザックの申し出を許可する。反乱軍に名誉ある戦いなんて必要ないからな。こうして、30名からなる弓矢中隊が編成された。
【アイザック】 あと、リーダーに進言したいことがあるんやけど。
【GM】 何かな?
【アイザック】 民兵を数多く集めたって、同じだけの数の職業軍人が出てきたらおしまいなわけや。だから傭兵を集めたり、オレンブルク王国かメカリア王国に支援を求めてみたらどうだろう?
【GM】 いいアイデアやね。ただキャフタの物流は、すべて王都経由の街道でなされてきてたんだけど……。
【リザローク】 要するに道がない、と。南の砂漠を越えていけばどう?
【GM】 荒ぶる砂漠をか? そんな危険を冒してまで来てくれる傭兵がいるとは思えないけど……よしんば来てくれても、かなり高額な報酬を要求されるやろしね。
【アイザック】 金がないわけか。……オレンブルクとかの支援はどうなん?
【GM】 同じく支援の見返りに何を渡すかが問題になるやろね。向こうが魅力的に思える出し物がなければ、手を貸してくれはしないよ。
【アイザック】 そっか……。
【リザローク】 カルファン鉄だけじゃ、どうしようもないか。
【GM】 ただ、アイザックの提案を聞いてたガーヴェンのリーダー、ラザラスさんは「大国のバックアップを受けるという案は正しいよ。そして、もう手を打ってるから安心したまえ」と言う。
【アイザック】 ありゃ、そうなんや。
【GM】 そう。だから「3ヶ月耐えればいい」と言ってたんだね。
【リザローク】 OKじゃないッスか。で、いつ王都へ撃って出るんスか?
【GM】 「もう、間もなくだよ」──というようなこういうやりとりも、モゴチャ攻防戦から3ヶ月の間にあったんやね。そしてついに、出撃の日がやって来た!
【リザローク】 はやっ!(笑)
【GM】 ガーヴェン軍の勢力は、志願してきた民兵を含めて約1500。ガーヴェン軍はキャフタを発ち、モインツィ河を渡って北上。王都レギトを目指す。
【アイザック】 1500人か……モゴチャ防衛戦で使ったのは、150の軍勢やったな。
【リザローク】 ざっと10倍の軍隊になったんや。で、敵側はどうなん?
【GM】 ガーヴェンにもたらされた斥候の報告によると、ガーヴェンの出陣を察知して王都レギトを発ったカルファン王国軍は、ムジェロ・ボガード将軍に率いられた3400。ほぼ、総力戦に近いと思われます。
【アイザック】【リザローク】 ちょっと待てぇーッ!!(笑)
【GM】 しかし、斥候の報告を聞いたラザラスは「勝ったぞ!」と叫んだ。「諸君、敵は総力戦を挑んでくるようだ。これで我々の勝利は約束された。戦場はコカンド草原になろう。名うての将軍、ボガードの采配は手強いものとなるであろう。しかし、たった1日! 1日耐え忍んでくれ。そうすれば、我々の手に勝利の栄光はもたらされるのだ!」
【アイザック】 1日ねぇ……。
【リザローク】 アレか? それを耐えきれば、モゴチャのときのように敵が退散してくれるのか?
【GM】 ラザラスは、ニヤリと笑う。
【アイザック】 なるほど、王都で何か起きるように仕込んでるわけか。だから総力で出てきたと聞いて、「勝った!」となったわけやな(笑)。
【リザローク】 まんまと罠にはめてやったわけか。ボガード将軍って、じつは大したことないんとちゃう?(笑)
【GM】 「油断は禁物だよ」とラザラスさん。「将軍にほぼ総力となる軍勢をあずけたのは、城の貴族様たちさ。ご自慢のお抱え騎士に功績を挙げさせるために、競って討伐隊に編入させたんだろう」
【アイザック】 なるほど、腐ってやがる。これで負けたら将軍のせいになるんやろ。
【リザローク】 将軍も災難やな(笑)。
【GM】 さて、そうこうしてるうちに、ガーヴェン軍はコカンド草原に到着した。草原といっても、ただの広い原っぱではない。西には南北に走るちょっとした丘陵地帯が連なり、東には同じく南北に走る谷がある。
【アイザック】 西が山脈、東が谷に阻まれてるわけやな。
【GM】 さらに草原のド真ん中には、西の丘陵地帯から東に向けてそびえる、アフヨン山という小さな山がある。それによってコカンド草原は、アフヨン山と東の谷に挟まれた箇所で、大きくくびれるような形になってるんやね。
【リザローク】 つまり、北と南の部屋をつなぐ狭い通路、というわけだね。
【アイザック】 ということは、その通路の出口の前に陣をしいて出てくるところを叩いてやれば、軍勢の差は関係なくなるわけや。
【リザローク】 でも、敵も同じことを考えそう。
【アイザック】 それでもいいやん。そうなったら、睨み合っておけばええんやし。俺らの目的は討伐隊の殲滅じゃなくて、誘い出しといて本国を留守にしといてもらうことやろ?
【リザローク】 そっか。
【GM】 ただし、睨み合いをするにしても、アフヨン山の占領は重要課題になるよ。
【リザローク】 なんで?
【GM】 もし、カルファン王国軍がアフヨン山を獲得したら、王国軍はアフヨン山を越えてガーヴェン軍の背後に回ろうとするやろ。そうしたら、西に山、東に谷で逃げ場がないところに挟み撃ちされてしまうわけや。とくに王国軍は、軍勢を2つに分けてもまだガーヴェン軍を上回るほどの戦力を持ってるし。
【アイザック】 なるほど。
【GM】 さて、総勢1500のガーヴェン軍は150人からなる10個の大隊に分けられる。そこから5個の中隊に分けられ、1個中隊は5個小隊、1個小隊は2個分隊に分けられる。モゴチャで功績のあるキミたち2人は、1つの大隊を率いる大隊長としてこの戦争に参加する。ちなみにアイザック大隊のうち1個中隊は、飛び道具オンリーの弓矢部隊である。
【アイザック】 俺が手塩にかけて育てた部隊や。
【GM】 今回は、元キャフタ騎士だった騎兵や元正規兵が各大隊ごとに40騎配属されてるから、適当に配置してくれ。……といっても、今回のキミたちに騎兵はあまり関係なかったりする。
【リザローク】 なんでや?
【GM】 キミたちふたりには、アフヨン山占領の命令が下されてるから。馬で行くのは、ちと辛い。
【リザローク】 せっかくの騎兵が使えんのか(笑)。
【GM】 さて、アフヨン山占領作戦だけど、実際にこの作戦を指揮するのはリザロークで、アイザックには弓矢部隊で支援するように言われている。
【アイザック】 おお、けっこう評価が高いやんけ、俺の弓矢部隊は。
【GM】 あ、アフヨン山占領作戦に投入するリザロークの部隊は、3個中隊ね。これでアフヨン山を占領してくれ。
【リザローク】 きっついの〜。敵はどれくらいでアフヨン山に来るんやろ?
【GM】 さあね。ちなみに、アフヨン山は麓から中腹まで林で覆われ、中腹から頂上にかけて原っぱになってる構造。頂上を敵より早く占領すれば、林から出てくる敵をモグラ叩きの要領で討てるよ。
【アイザック】 そうなったら、俺の弓矢部隊が大活躍できるわけやな。
【GM】 矢が尽きなければね。ひとり24本ぐらいしか持ってけないよ。それで、指揮官はどうする? リザロークの部隊は、もちろん重要な作戦であるので大隊長自ら出撃してもらうけど、弓矢部隊はあくまで支援のための出撃だからね。NPCを中隊長として同行させて、アイザックは草原で待っててもいいぞ。
【アイザック】 何を言う。親友のための出撃なんやから、もちろん俺が行くよ。
【リザローク】 ありがとう、友よ! ぜひ、オレの手足となって働いてくれ!(笑)。
【アイザック】 なんか違うな〜、その言葉。とくに後半が(笑)。
【GM】 アフヨン山占領作戦に従事しないリザローク大隊とアイザック大隊の残りの部隊は、草原に布陣するガーヴェン軍の後詰めとして、後方に配置されるよ。
【リザローク】 よっしゃ、いっちょアフヨン山を取ったろかぃ!
リザロークは作戦に従事させる部隊に、40名の元キャフタ騎士・正規兵を配備した(もちろん、馬には乗らない)。さらにアイザック大隊から20名の騎士・正規兵を借り受け、職業軍人を20名ずつ配属した3個中隊を編成した。
リザロークの3個中隊と、それに続くアイザックの弓矢部隊はアフヨン山を登った。
先頭をゆく部隊が頂上に着いたとき、向こうから登ってきていたカルファン王国軍の部隊と鉢合わせになった!
敵は1個大隊をアフヨン山攻略に投入していた。
山の側面を回って背後を突こうとする敵を、リザローク隊の2個中隊がそれぞれ迎え撃つ。しかし頂上をとってはいるものの、民兵が混ざるリザローク隊は若干不利で、徐々に押されはじめる。もし敵に頂上を敵に奪われたら、一気に軍勢が崩壊しかねない。
アイザックは使い魔のフクロウを飛ばし、山の反対斜面にいる敵の位置を割り出した(アイザックはレンジャー技能も持っている)。そして、弓矢の曲線射撃で各所のリザローク部隊を援護する!
思わぬところからの攻撃に不意を突かれたカルファン王国軍は、浮足立ってしまった。
これで勢いづいたリザロークの部隊は、勢いに任せて敵を押しまくった。いったん後退を始めた王国軍は、文字通り山の斜面を転げ落ちるように敗走していった。
アフヨン山占領作戦は、みごと成功したのである!
山の頂から、勝鬨をあげて草原に展開する自軍に手を振るリザローク隊。応えてガーヴェン旗を振る友軍の戦士たち。
そして、翌朝──。
【GM】 山頂にいるアイザックとリザロークは、薄い朝靄の中を王都に向けて退却していく王国軍の姿を見た。
【リザローク】 きたな(笑)。
【アイザック】 いま、王都はどないなってるんやろ?(笑)
【GM】 そのとき、ガーヴェンの本陣から「ヒュー」と風切り音を発する矢が放たれた。追撃の合図やね。キミたちはそのままの編成で、山を下って王国軍を追うことになる。後ほど本隊と合流して、正規の編成に戻ってもらうけどね。
【アイザック】【リザローク】 了解!
ガーヴェン軍は退却する王国軍を襲いながら、北へ、王都レギトへ向かう。
やがて、レギト近郊に辿り着いたガーヴェン軍の兵士たちが見たものは──。
【GM】 夕焼けに染まった王都レギトからは、真っ黒な煙が上がってる。悲鳴や怒号も上がってる。コカンド草原で対峙した王国軍の兵士たちは、将軍に率いられて慌てて王都に向かう者、追跡者の存在も忘れて呆然と立ちすくむ者、さまざまやね。
【リザローク】 それは、王都が何かに襲われてるってことだね?
【GM】 そのとおり。それを見たラザラスさんは、「ふはははは!」と大笑い。「よーし、我々もレギトに向かう。まずは、あの敗残兵たちの掃討からだ!」とガーヴェン軍に指示。ガーヴェンの戦士たちは、「うおーッ」と鬨の声をあげて突進してゆく。あ、元々のレジスタンス・メンバーはラザラスのところに集合してね。久々に最初の14人大集合。
【リザローク】 何でございましょう?
【アイザック】 ってゆーか、あれは何やねん。
【GM】 「我々の味方だよ」
【リザローク】 味方って何者?
【GM】 「ロットバイル王国の軍勢だ」
【アイザック】 ロットバイル……ロットバイル?! って、たしか、カルファン王国と敵対してた国やんけ。大丈夫なんか、あんなのカルファンに入れてしまって。
【GM】 「大丈夫だ、友軍を信じるんだ。そんなことより、キミたちレジスタンス・メンバーには大事な役目がある」
【リザローク】 何かな?
【GM】 いま、王国軍が必死で守ってる王城タイガーファングには、伝説の巨大な白虎マドナガルの骨より削りだしたという秘蔵の剣があるらしい。
【アイザック】 なに、それは魔法の剣なん?
【GM】 そう。作られたのは古代の魔法帝国時代といわれてる、間違いなく魔法のかかった剣。もちろん、王族イーニン・ハオト家の宝だけどね。「タイガーファングが落とされる前に忍び込み、その魔剣を見つけ出すのだ。決してロットバイルに奪われてはならん」
【リザローク】 友軍だから信じろと言ったり、「奪われるな」と言ったり(笑)。
【アイザック】 そんなもんよ。しかしな〜、なんか「カルファン王国をいい国にする」というガーヴェンの目的からズレてるような……。
【GM】 「マドナガルの剣の捜索は、夜にやってもらう。夜はさすがにロットバイル王国の攻撃も静まるだろうからね。2人ひと組になって、城にもぐり込んでくれ。それじゃあ、好きな者同士、コンビを組みなさい」
【アイザック】 どうしよっかな〜。俺はセルナード・ロストとコンビを組もっかな〜。
【GM】 「すまんな、アイザック。オレはエステルと組んぢまったよ」。つーか、もうみんなコンビを組んでしまってる。残ってるのは──。
【リザローク】 オレか!(笑) 「やあ、アイザック。オレも余っちまったんだ。コンビを組もう」
【アイザック】 けっきょく、こうなるんか(笑)。
【GM】 それでは夜になった。レギトへ攻め込んだガーヴェン軍は、いったん戦闘を中断していまは街を囲む城壁の外にいる。もちろん、街門はガーヴェン軍が押さえてるので、キミたちはすんなり街に入ることができる。
【リザローク】 ラザラスさんはどうしとくの?
【GM】 同じように戦闘を中断して街の外で野営してる、ロットバイルの陣営に挨拶に行くらしいよ。明日の攻撃の打ち合せもあるんでしょうな。
【アイザック】 そんじゃ、タイガーファング城に行きますか。
【GM】 城に潜入するまでは、14人で行動することになる。潜入後、バラバラに城内を捜索することになるよ。
【リザローク】 OK。シーフに先導してもらわんといかんしな。
【GM】 タイガーファング城は、思ったよりも警備が手薄だった。きっと、昼間の戦闘で疲弊しきってるんやろね。ベリーと、マッシミリアーノ・ビアッツァという2人の盗賊が城壁を越え、キミたちが入りやすいように縄梯子を垂らしてくれる。
【アイザック】 そんじゃ、城に忍び込もう。
【GM】 ここから別行動になるね。仲間たちは、さっと散って行った。
【アイザック】 俺たちも行くぞ。
アイザックとリザロークは、タイガーファング城の中を走る。怪しそうな部屋を片っ端から調べるが、それらしい宝剣は見つけられなかった。
途中、王国兵と戦っている仲間を助けたりもした。この戦闘でガーヴェン・メンバーの1人が死亡し、パートナーを失った盗賊のマッシミリアーノ・ビアッツァを仲間に加えて3人で捜索することになった。
やがて3人は、階段を駆け上がり、3階のとある一室にやって来た──。
【アイザック】 開けるよ、迷うことなく。
【GM】 扉は簡単に開いた。部屋の中の様子は、まず最初に天蓋付きのベッドが見える。そしてその上にいる6〜7歳の黒髪の少年が目に入る。それを庇うように抱きしめる30歳ぐらいの女性、そしてその前に立ちはだかる黒いプレート・メイルを纏った、20代後半ぐらいの騎士。
【リザローク】 騎士?!
【アイザック】 やべッ!
【GM】 盗賊のマッシミリアーノは、ベッドの少年を見て「おい、ついてるぜ。あいつは、カルファン王国の王子様だっ」と叫ぶ。
【アイザック】 王子? それでなんで俺らがついてることになるの?
【GM】 「決まってるだろ、生きたままロットバイルに渡せば、いい金になる。ひょっとしたら、一生遊んで暮らせるかもな。わざわざラザラスのために何たらの剣を探してやる必要なんてありゃしねぇ!」と嬉しそう。
【リザローク】 おいおい、王子は関係ないやろ。
【アイザック】 騎士の反応は、ひょっとして──?
【GM】 黒い騎士はスラリとバスタードソードを抜き放つ。
【アイザック】 やっぱり〜!
【GM】 騎士は「我が主君に指一本触れること、断じて許さん」と言う。
【アイザック】 「許さん」って言われてもな〜。俺らとしたら、マドナガルの剣のありかを教えてくれたら、すぐにでも退散するけど……。王子をロットバイルに売る気はないし。
【リザローク】 そうそう。王子を見逃してやるから、宝剣がある場所を教えてくれ。
【GM】 「ふざけているのか? これ以上、賊の跳梁を許すわけにはいかん。我が命に懸けて阻止してみせる」
【リザローク】 そうなるか……。よし、1対1で勝負してやる。オレが勝ったら、宝剣のありかを教えろ。
【アイザック】 正気かッ?! 1対1で勝てる相手なんか!?
【リザローク】 大丈夫や、こっちには大地母神の加護がある。殺さんように手加減して倒して、剣のありかを教えてもらおう。
【GM】 大地母神というより、戦神のプリーストみたい(笑)。
【リザローク】 「我が名はカリーニョ村のリザローク。おまえに恨みはないけど、王国に殺された嫁と娘の仇を討たせてもらう!」と、バトル・アックスを構えてカッコつけてみる。
【GM】 「我が名はステファン・ベロフ。朋友ガブリエルの剣と王国の威信にかけて、貴公らを成敗してくれる!」
黒い騎士ステファン・ベロフと、リザロークの一騎討ちが始まった。
しかし、どう考えてもリザロークは無謀過ぎた(笑)。ステファンの太刀筋は見事なもので、リザロークの生命力は確実に削られてゆく。
対してリザロークの攻撃は、そのほとんどがステファンの丈夫なプレート・メイルに阻まれて、有効な打撃を与えられない。
【アイザック】 やばいやんけ、やばいやんけ。死んでまうぞ、おまえ。
【リザローク】 なんの、〈キュアー・ウーンズ〉! (ころっ)ほら、完全回復。こちにはミフォアの加護があるんやから。
【GM】 「大地母神から奇跡を得るとは、大した男よ。だが、回復する暇も与えねばいいだけのこと」
【リザローク】 ふっふっふ。できるかな? いくらでも回復してやるぜ。
【アイザック】 ってゆーても、精神力が切れたら終わりやんけ。
【GM】 とりあえず、ステファンの攻撃──ヒットして、9点のダメージ。次のラウンド。
【アイザック】 しゃあない、リザロークに〈プロテクション〉! (ころっ)かかった。
【リザローク】 げっ、やめろよ。一騎討ちじゃなくなるやんか。
【アイザック】 んなこと言うてる場合か! 自分の実力、考えろよ(笑)。
【GM】 「私のほうは、キミに援助があろうと一向に構わないがね」と、ステファン。
【リザローク】 くっそ〜、攻撃。(ころっ)当たったけど、鎧で弾かれるぅ!
【GM】 ステファンの攻撃はリザロークにヒット。7点のダメージ。
【アイザック】 ほらみろ、〈プロテクション〉がかかっててよかったやろ? 次のラウンドで〈ファイア・ウェポン〉をかけるからな。
13ラウンドにも及ぶ、長い死闘だった。
〈プロテクション〉の守りを得てもなお、ステファンの一撃はリザロークに確実に傷を負わせる。リザロークは〈キュアー・ウーンズ〉で自分を治癒させて回復するが、それも精神力がある限りのこと。
リザロークの残り精神力が乏しくなり、敗戦が濃くなった頃、たまらずアイザックが〈エネルギー・ボルト〉でステファンを攻撃した。リザロークの激しい抗議を受けた〈エネルギー・ボルト〉だったが、それもステファンに致命傷を負わせることはなかった。
もはや、ステファンの剣で生命力を削られるがままになるしかなかった……。
【アイザック】 しゃあない、逃げよう。GM、俺とマッシミリアーノは逃げようとするよ。リザロークも逃げて来い。
【リザローク】 う〜……あと1回だけ、攻撃する。どのみち、アイザックたちが逃げる時間稼ぎをせんとアカンやろ? 「友よ、後は任せた!」って(笑)。最後の攻撃、(ころっ)……おおッ、クリティカル出たっ!
【アイザック】 おおー! マジかぁー!?
【リザローク】 (ころっ)うおおおおおーッ!! 2連続クリティカルしたぁ〜ッッ!! しかも、〈ファイア・ウェポン〉がかかってるぞぉー!
【GM】 ちょっと待てぇーッ! こっちは金属鎧やぞ? アックスは6ゾロでないとクリティカルせんはずやのに……マジかぃ……そんなもん、生きてるわけないやんけ。
【アイザック】 え? 死んだん?? 死んでもたん!?
【リザローク】 あ、それはちょっとまずい。GM、ステファンの[生死判定]をしてくれ。生きてたら、アイザックが[応急手当]をしてくれるし。
【GM】 (ころっ)かろうじて生きてるみたいやね。王子が「ステファンー!」と叫んで駆け寄ろうとするのを、侍女らしき女性が「レギト様っ、なりません!」と制する。
【アイザック】 生きてるなら、レンジャー技能で[応急手当]するよ。王子には「ご安心ください」と言っておこう。……賊である俺が言うのも何やけど(笑)。
【GM】 が、まだ戦闘ラウンドは終わっちゃいない。アイザックはステファンに[応急手当]をしようとするんやね?
【アイザック】 もちろん。
【GM】 リザロークは?
【リザローク】 別に何も。応急手当てを見守っとくよ。
【アイザック】 なに、ステファンが息を吹き返して、攻撃してくんのか?
【GM】 うんにゃ、キミより敏捷度の高いひとが先に行動するだけ。
【アイザック】 まさか……。
【GM】 マッシミリアーノ・ビアッツァが、刀身が変にぬめるショート・ソードでステファンにとどめを刺した。
【アイザック】 毒かッ!
【リザローク】 なにぃ!?
【GM】 レギト王子の悲鳴が室内に響く。このラウンド、アイザックは[応急手当]の目標をなくして行動キャンセル、リザロークは見てるだけだったね。次のラウンド、いちばん早いのはマッシミリアーノ。ショート・ソードをかざして王子と侍女のほうへ歩いて行く。もちろん、攻撃するつもりだろう。おふたりさんの行動は?
【アイザック】 ばっきゃろー! 〈エネルギー・ボルト〉じゃ!
【リザローク】 許さん! 背後から攻撃してやるッ!
【GM】 では、行動の処理ね。マッシミリアーノは侍女に攻撃。(ころっ)当たり。侍女は「あっ」と悲鳴をあげて倒れる。傷を負わせただけで、一撃で殺せた。
【アイザック】 〈エネルギー・ボルト〉! (ころっ)効いて8点のダメージ。
【リザローク】 まだ〈ファイア・ウェポン〉効いてるよな? 攻撃、(ころっ)ヒットして11点ダメージ。
【GM】 マッシミリアーノは「ぐわッ!」と言って倒れた。「い、痛ぇじゃねぇかよォ……仲間を裏切るのかよ……」
【リザローク】 おまえみたいな奴、仲間なんかじゃないやい。
【アイザック】 俺たちゃ、カルファン王国をよくするために、ガーヴェンに入ってたはずやぞ。
【GM】 「……マジでそんなこと信じてたのかよ。バカな奴だ……ラザラスは、ロットバイルのスパイなのに……」やってさ。
【リザローク】 やっぱり、そうか。「宝剣を探せ」って言われたあたりから、そんな気はしてたけど。
【アイザック】 ホンマか、おまえ? いままでそんな疑問、いちどだって言わんかったやんけ(笑)。それはいいけど「じゃあ、なんでラザラスは『マドナガルの剣をロットバイルに渡すな』って言ったんだ?」と聞く。
【GM】 「ラザラスは野心家だからな、自分の国でも欲しくなったんじゃねぇのか。あのひとは食えねぇぜ……せいぜい気をつけるこった……ぐふっ」
【リザローク】 死におったか。王子の様子は?
【GM】 侍女の死体の前で、声もなくガタガタ震えてる。
【アイザック】 どうする? このまま王子を放っておいても、ガーヴェン・メンバーの中にマッシミリアーノみたいな奴がおったら、王子、ロットバイルに売られてしまうで。俺はそういうの、イヤなんやけど……。
【GM】 その時、「レギト王子、ご無事で!?」という太い声とともに、部屋の中に入ってくる人影がある。いぶし銀のプレート・メイルに身を包み、カルファンの剣ツヴァイハンダーを手にした壮年の騎士ね。白いものが混じった髪は乱れ、返り血か自分の血かは知らないけど、全身に黒く変色した血がついている。室内の様子を見て、騎士は目を剥く。
【リザローク】 あのう、GM。ステファンとどっちが強そうッスか?
【GM】 同じぐらい強そう(笑)。ただ、壮年の騎士からは、若いステファンにはない無言の迫力というか、年輪を重ねた大木の威厳のようなものを感じさせられる。
【アイザック】 とりあえず、敵意がないことを示す。これ以上、ガーヴェンに協力する気はないぞ、俺は。
【リザローク】 それはオレもや。ロットバイルのスパイに利用されてただけやもんな。オレにも戦う気はない。部屋の状況については、全部ホントのことを話す。
【アイザック】 嘘偽りなくな。俺たちの身の上話もしておくよ。
【GM】 いぶし銀の騎士は深くため息をついて、ステファンの遺体に自らのマントを、侍女の遺体にベッドのシーツをかけてやった。そして、まだ震えている王子の肩を抱いて、目線を王子の位置まで落として、「レギト様、わかりますか? ボガードです」と優しく言う。
【リザローク】 ボガードっていうたら、コカンド草原で戦った敵の将軍?
【GM】 そのとおり。ボガード将軍は立ち上がり、キミたちを振り向く。で、「キミたちの話はわかった。その目を見れば、嘘を言っているわけでもなさそうだ」と言う。
【リザローク】 おお、さすがは将軍様や(笑)。
【GM】 「キミたちのカルファン王国を思う気持ちにも、偽りはないのだろう。ついては、ひとつ頼まれて欲しい」
【アイザック】 何でしょうか?
【GM】 「無念ではあるが、我が国はほどなくロットバイル王国の手に落ちよう。噂に名高い摂政ルートンの手腕は、実際大したものだ。だが、王家の、イーニン・ハオト家の血筋を絶やすわけにはいかん」
【リザローク】 ははあ、それで王子を連れて逃げ出せと。
【GM】 「そうだ。レギト様を連れて、オレンブルクにでも逃れてくれ。各地からさまざまな人種の集うあの国なら、まぎれて暮らすこともできよう。どうか、よろしく頼む」と、ボガード将軍はキミたちに頭を下げる。
【リザローク】 オレは引き受けてもいいよ。アイザックは?
【アイザック】 「将軍も一緒に逃げましょう」と言うてみる。
【GM】 ボガード将軍は、「ありがたい申し出だが、私には最後まで陛下をお守りする役目がある。この国と命運を共にすることになろう」と答える。
【アイザック】 「わかりました。レギト殿下は、必ず我々が逃がしてみせます」と言っておこう。
【リザローク】 そうと決まれば、すぐ逃げよう。夜が明けないうちに。さらば、ボガード将軍!
【アイザック】 王子の手を取って外に出る。
【GM】 すると王子は「放せ、国賊!」と暴れるよ(笑)。「ボガード、ボガード、助けてくれっ」
【リザローク】 こらこら、さっきの話を聞いてなかったのか?(笑)
【アイザック】 説得してる時間はない。ボガード将軍も何か言ってやってくれ。
【GM】 じゃあ、将軍は「王子、その者たちは味方です。その者たちを信じてください」と言おう。「強くなってください。そしていつの日か、カルファン王国の再興を! 白虎の加護が、あなた様と共にありますように──」
【アイザック】 レギト殿下、おとなしくしとれよ(笑)。
【リザローク】 ウリィィィーッ、逃げてやるぅ〜! リム、ファンリー、村長、オレたちを守ってくれ〜!(笑)
この2日後、カルファン王国の王城タイガーファングは落城した。
王都を失ったカルファン王国はロットバイル王国に併合され、レムリア大陸の地図からその姿を消す。時にレムリア暦520年の春──。
これが、後に『十四年戦争』と呼ばれるオムスク地方を揺るがした大戦争の幕開け、動乱の序曲であった。
秘宝マドナガルの剣を手にしたラザラスは、旧カルファン王国の割譲を求めてロットバイル王国に反乱を企てた。しかしその野望は、ロットバイルの摂政“知恵と血を啜る者”ルートンによって、あっさりと潰されてしまう。
ラザラスは野望の中で死に絶え、マドナガルの剣はロットバイル王国の物となった。
一方、カルファン王国最後の王位継承者、虎の遺児レギト・グニク・イーニン・ハオトを託されたアイザックとリザロークは、無事にオレンブルク王国へ逃げ落ちた。
時代の変動に翻弄された彼らは、英雄への夢を捨て、冒険者から足を洗うことにした。オレンブルク王国の辺境の村に居を構え、畑を分けてもらい、そこでレギト王子を育てることにしたのだ。
彼らが愛したカルファン王国の再興のために。
祖国に踏みにじられた、彼らの故郷を再建するために。
土と共に生きる決意をしたのであった。
未来に夢を託して──。