▽ ぶらり納税の旅 | ▽ さよなら村長 | ▽ モゴチャ村の秘密組織 |
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【GM】 では、生まれて初めて故郷から出たキミたちのために、カルファン王国の地図を見せてあげよう。これで自分の国の地理を理解しなさい。
【リザローク】 ええ〜と、キャフタに税金を収めに行かなアカンから、まずは、北に行くわけやな。
【GM】 そのとおり。ちなみにキャフタまでの時間は、半日程度。朝早く出発しても、到着は夜になってしまう。
【アイザック】 俺らは朝に出発したから、今日の夜に着くわけか。
【GM】 平野に開かれた街キャフタは、人口約9000のカルファン王国第2の都市。王都レギトと同様に、領主の館を中心に広がる。領下の鉱山の村モゴチャから精製された鉄が運ばれて、ここで加工されたりしている。ちなみに、その鉄は『カルファン鉄』と呼ばれ、軽くて丈夫なことで有名。カルファン王国の経済を支える、大切な資源でもあります。少し色が黒っぽいのが特徴。
【アイザック】 生まれて初めての都会や。ドキドキする(笑)。
【GM】 3年前までは、徴税史がキャフタ配下の各村まで税金を取りに来てたんだけど、2年前に前領主ランガ・スコエ・ハオトが亡くなって、息子のカリム・スコエ・ハオトに代替わりしてから、キミらみたいに村のほうから遣いが出されるようになった。
【リザローク】 そのおかげで、オレたちは旅立てたというわけだね。
【GM】 ついでに、カルファン王国の解説もしておきましょう。カルファン王国は、レムリア大陸オムスク地方北西部に栄える王国で、最近では『眠れる虎』などと呼ばれています。現在の国王は、第13代サパロ・ツルファ・イーニン・ハオト。サパロ5世陛下です。王城はタイガーファング。騎士団は『猛虎騎士団』。
【リザローク】 タイガースか。弱そうやな(笑)。
【GM】 さて、キミたちはキャフタを目指し、右手にアルカーラ山脈を眺めながら、意気揚々と街道を歩いてるところ。
【アイザック】 はっ?! 歩いてることになってしまった。馬車とかじゃないんや。
【GM】 あたりまえでしょうが。そして、昼食休憩を終えて再び歩きはじめたところで、行く手から3匹のゴブリンが現れてこう言う。「よ〜、テメーらよ〜、その袋の金をオレたちによこしな〜」
【アイザック】 ──と、共通語で言うんだな?
【GM】 流暢な共通語をしゃべってるよ。
【アイザック】 「これは村のみんなの大事な税金なんだ! 渡すわけにはいかないね」と、答える。
【GM】 「じゃあ仕方ね〜なー、死んでもらうかッ!」
──という間に、ゴブリンA、Bは蹴散らされた。
【GM】 ゴブリンCは土下座します。「ごめんなさい」
【リザローク】 謝って許してもらえると思ってんのかー!?
【GM】 「いや、ボクが『やろ』言うたんちゃうんですよ」
【アイザック】 「その程度の実力では、わたしたちは倒せん。もっと、経験を積んで来い!」と言って、解放してやろう。
【GM】 ゴブリンCは逃げました。「おぼえとけよー! オネットさんに言いつけてやるからな〜」ぴゅー。
【アイザック】 オネットの差し金か。
【リザローク】 さてと、ゴブリンA、Bは何か特別な物とかは持ってないんかな。
【GM】 冒険者恒例の死体あさりをするんをするんだな。んなことしたって、何も見つからないよ。たかがゴブリンやのに。
【アイザック】 たかがゴブリン、されどゴブリン……といったところですか。
【GM】 何がやねん。
【リザローク】 じゃ、夜になる前にさっさとキャフタへ行ってしまおう。
【GM】 というわけで、夕暮れ時にはキャフタが見えてきた。
【リザローク】 どういう街なん? やっぱり城壁とかあんの。
【GM】 もちろん、街壁に囲まれてるよ。街に入るには、門を通らなくてはならない。当然、その門には警備兵がいて、それなりの審査を受ける必要がある。
【アイザック】 じゃあ、その審査を受けて街に入ろう。
【GM】 審査は形式的なもの。キミたちにはやましいことなど何もないから、すんなり街に入れたよ。そのときには、未練がましく顔を覗かせてた夕日も、すでに沈んでしまってます。今から納税の手続きをすることは不可能だね。
【リザローク】 つまり、宿屋に泊まれってことだな。宿屋へ行こう。
【GM】 宿屋にやって来ました。街に入ってすぐのところにある便利なその宿の名は、『虎の穴亭』といいます。
【アイザック】 イヤな名前やな。
【リザローク】 翌朝いちばんに納税に行くよ。
【GM】 納税の手続きは、領主の館にて行われます。領主の館は、街の中心の小高い丘に建てられている。キミらの泊まった宿屋は、街のいちばん外側──いわば下町にあるんやけど、そこからでもよく見える。
【リザローク】 見えてるんやったら、迷わんと行けそうやな。
【GM】 しかし、下町は建造物が無秩序で煩雑に建てられてるから、事情を知らない人間にとっては迷路みたいになっている。大通りを使ってさえ、ゴールは見えてるのに、なかなかそこにたどり着けない。
【アイザック】 下町の人らに館への行き方を聞きながら行く。
【GM】 そうしてキミたちは、何とか領主の館の門の前までやって来ました。そこで衛兵に止められた。「なんだおまえたちは」
【リザローク】 「我々は税金を納めに来た、カリーニョ村の者です」
【GM】 リザロークはそう言いながら、村長から渡された身分証明書を提示した。衛兵はそれを確認して、「よし、通っていいぞ」と言う。
【リザローク】 「イエス・サー!」
【アイザック】 なんか、田舎モン丸出しだな(笑)。
【GM】 領主スコエ・ハオト家の館は、広い庭を持った大きな館です。そのうちのひと部屋で、キミたちは役人の指示に従って、いろいろと手続きしました。大事な金袋も渡しました。これで終わりかな、と思ったんやけど、どういうわけかその部屋で待たされる。
【アイザック】 なんだろう。
【GM】 1時間ほど待たされたかな。召使がキミらのところにやって来て、領主様が呼んでると告げました。
【アイザック】 行ってみよう。
【リザローク】 きっと仕事や。俺たちのデビュー戦や。
【GM】 案内されたはのは、謁見の間──というのはおかしいかな、まあ、広い立派な応接間に通されました。その豪奢な椅子に短い足を組んで座ってる、似合いもしない口髭を生やしたガマ顔の太った男が、領主のカリム・スコエ・ハオトです。ソーセージみたいな10本の指には10個の指輪が嵌められてて、国王でもないくせに冠を被ってる。
【アイザック】 あんまり、お目通りしたくなかったかも。
【リザローク】 でも、領主なら払いもいいはず。用件を聞こうじゃないか。
【GM】 「おまえたちな〜、納めた額は2万4000フィスだったけど、これじゃ足りんのだよ。あと、5万フィス持ってこい!」
【アイザック】 なにぃ?
【リザローク】 ヤなかんじ〜。
【アイザック】 「そう言われても領主様、我々の村では、これが精一杯なんです」と、言うしかないじゃないか。
【GM】 「いいから、村長のところへ行けや〜。わっはっは。下がってよいぞ」と言って、カリムは椅子から立ち上がり、応接間から出て行ってしまう。そして4人の衛兵が、キミたちを両脇からガッチリ挟んで、屋敷の外へと送り出してしまった。
【リザローク】 え? 情報聞きたいな。館の給仕とかに。
【GM】 残念だけど、キミたちは館の門の前まで連れ出されてしまったよ。
【アイザック】 5万フィス? ……ムリ。
【リザローク】 何とかするしかないよな。とりあえず、虎の穴亭に戻るか。その宿屋って、酒場も兼ねてんの?
【GM】 もちろん。標準的な宿屋やね。
【リザローク】 昼飯食べながら、オヤジと話をしよう。「税金高くなったんちゃう?」
【GM】 「高なったで〜。あのドラ息子が領主になってからなァ」
【アイザック】 ああ、「2年前に領主が替わった」って言うてたな。
【リザローク】 カリーニョ村以外にも、ここの領主が支配してる村があったよな。
【アイザック】 アクシャ村と、モゴチャ村。
【リザローク】 そこでも、同じように税金高くなってんのかな?
【GM】 「ああ、税金がハネ上がってるらしいよ。ったくあのドラ息子、自分が国王になれないもんだからって、ワシらにやつ当たりしやがって」
【アイザック】 どういうことかな?
【GM】 簡単に言うと、現国王サパロ5世には跡継ぎがいなかったと。なもんで、分家筆頭のスコエ・ハオト家が王位継承の第1位だった。しかし、いまから7年前、レムリア暦512年に、サパロ5世52歳にして待望の王子を賜った。高年齢の王妃の子ではなく妾腹の子だけど、嫡男は嫡男。
【アイザック】 それで、あいつは国王になれなくなったんだな。
【リザローク】 そのやつ当たりって、いい迷惑や。
【アイザック】 あんなのが国王になれないのは、幸いかもな。ま、とりあえず、一度カリーニョ村に帰って村長に報告するしかないか。
【リザローク】 そうやな。
【GM】 それでは、半日かけて帰って来ました。盛大な見送りをしてから、まだ2日しか経過してないので、村人たちはちょっと驚いてる。
【リザローク】 気まずいから、村長の家にさっさと行こう(笑)。
【GM】 キミらは村長の家に来ました。「お!? 帰ってきたのか??」
【リザローク】 「じつは、『かくかくしかじか』で、税金高なってん」
【GM】 「な、なにぃ!? バ、バカな! わしャ書状にある分だけ、ちゃんと手渡したはずじゃぞ。その書状は、去年いただいたものぢゃ。それをいまさら……」と、もう、血管切れそうな感じで村長は憤る。
【アイザック】 でも、「5万フィス支払え」と言われたんだよ。
【GM】 「こ、これ以上払ったらワシら、おまんまの食い上げじゃ! え〜い、ワシがじかに領主の阿呆に文句言ってやるッ! リザローク、アイザック、ついてこいッ」
【アイザック】 「ついてこい」って言うの?
【GM】 うん。80歳だけど、矍鑠としてるからな。昔、冒険者を目指してたし。
【リザローク】 最悪や。ハッスル爺さんや(笑)。
【アイザック】 俺らが行かなアカンのかと思うた。直訴の書状を竹棒の先に挟んで。
【GM】 村長は、気持ちは矍鑠としてるけど、足腰は弱ってる。だから、リザロークがおぶってやってくれ。その背中の上で杖を振り回しながら、「ほれ、急ぐのぢゃ!」。
【リザローク】 最悪や〜!(笑)
【アイザック】 ええねん、ええねん、どーせリザロークはベルト・ポーチとマントしか持ってへんやろ。アイテム欄に『じじぃ』とつけ足しても、大丈夫や。
【GM】 『じじぃ』って言うな! エスティバン・トゥバイエっていう、立派な名前があるんやぞ。
【リザローク】 んじゃ、まあ、村長を背負って街道を走り抜けよう。
【GM】 再びキャフタに着きました。でも今回、領主の館へ入れたのは村長だけです。キミたちふたりは、虎の穴亭で待機やね。
【アイザック】 ひょっとして、その宿屋って訓練とかできるの?
【GM】 できるよ。「虎だ! 虎になるんだ!!」とか言うて、でかい鉄球がぶらさがったヘルメットを被ってのスクワット1000回とか、グルグル回るアームの上から煮えたぎる溶岩の中に用意されたほんの1点の安全地帯めがけてジャンプさせられたりとか。
【アイザック】 さすが、虎の穴や。
【GM】 でも、それをしたところで、冒険者レベルは上がらんねんけどな。ちなみに、この宿屋の宿泊費は食事別で1泊15フィスな。
【リザローク】 所持金から引けってか?
【GM】 あたりまえやろ。昨日とおとといの分も合わせて、45フィス引いとけよ。んで、キミたちは都合1往復半の旅に疲れて、部屋でくつろいで過ごしている。そんな感じで夜もけっこう遅くなってきたけど、村長エスティバンは帰ってきまへん。
【リザローク】 領主の館へ行って、門番に聞いてみよう。「カリーニョ村の村長が帰ってこないんですけど」
【GM】 「それは私の知ったことではない。夜も更けた。明日にでも出直して来るがよい」
【アイザック】 やはり、そうなるか。しゃあない、「わかりました」と、そこはいったん素直に退いて、裏口を探そう。そこから館に忍び込むねん。
【GM】 館の塀のまわりを1周するんやね。裏口はあったけど、当然、そこでも衛兵が見張っている。
【アイザック】 どこか塀に穴が開いてるようなところはないかな?
【GM】 (ころっ)アイザックは、草むらに隠れていた塀の穴を見つけ出した。よほど大きな荷物を持ってなければ、何とか入れるぐらいの穴やね。
【アイザック】 俺らにはシーフ技能はないが、忍び込むぞ!
【リザローク】 おう。
【GM】 草をかき分けて穴を潜ると、庭のほうも雑草が生い茂っています。といっても、すぐにちゃんと手入れされたところに出てしまうけどね。キミたちがいるのは、背後に塀、目の前に館の壁といったところです。右手に行けば正面の庭、左手に行けば裏庭に出る。
【リザローク】 とりあえず、館の窓を探すでしょう。
【GM】 しかし、キミたちに向かって「ウ〜……ワンワン!!」と、吠えたててくるものがあります。鳴き声からわかるように、いわゆる番犬って奴だな。ドーベルマンみたいな犬が3匹、キミたちを怖い目で睨んで激しく吠えている。
【アイザック】 〈スリープ・クラウド〉(ころっ)効いた。
【GM】 犬たちは寝ました。でも、今の尋常ならざる鳴き声を聞きつけた衛兵たちが、左右から「何だ、何だ!」と、駆けつけて来ます。
【リザローク】 果してそんなに大きな鳴き声だったんだろうか。
【GM】 ちゃんと犬の鳴き声を読め。感嘆符がふたつ飛んでるでしょうが(笑)。衛兵たちは「あっ、侵入者や!」と叫んで、手にした槍を構えます。
【アイザック】 「待て! 怪しい者ではないッ」
【GM】 「おもいっきり怪しいわァ! そこ、動くんやないでッ」
【アイザック】 「俺たちは村長を探しに来ただけなんだ!」
【GM】 「知るか、そんなもん! 引っ捕らえろ!!」──というわけで、キミたちは捕まりました。武器や一般装備などは、すべて取り上げられてしまう。
【アイザック】 しゃあない、おとなしくしとこ。
【GM】 それが賢いね。衛兵たちが手にしてるのは槍。そして、カルファン王国では槍術が盛ん。
【リザローク】 暴れてもやられるだけ、ってことやな。
【アイザック】 まあ、いいやん。とりあえずは、屋敷の中に入れたんやし。
【GM】 キミたちは、地下へ降りる階段を連行される。階段を降りきると扉があって、その向こうは、まっすぐ伸びた短い廊下。廊下の左右の壁には3つずつ、計6つの鉄の扉がある。扉には鉄格子付きの覗き窓があるので、田舎モンのキミたちでも、ひと目でそれらが牢屋だと分かるね。
【リザローク】 あ〜、シーフ技能を取っとけばよかったな〜。
【GM】 キミたちふたりは、そのうちのひとつの牢に放り込まれました。「ガチャン!」と、鉄の扉は閉められて、外から鍵がかけられた。
【リザローク】 その牢屋の中には誰かおらへん? 村長とか。
【GM】 んな都合のええ話がどこにあんねん。
【アイザック】 鉄格子を掴んで、「開けろ!」ガンガンガン!!
【GM】 そのとき、扉が開けられて、アイザックはゴロゴロゴロと廊下に転がり出て、向かいの鉄の扉にガツン。
【リザローク】 お約束やな(笑)。
【GM】 アイザックが頭のコブを押さえながら顔をあげると、衛兵がふたり立っている。「来い。領主様がお取り調べになる」
【リザローク】 素直に行くしかないでしょ。
【GM】 では、再び応接間です。キミたちは後ろ手に縛られて、ガウンを羽織って椅子にふんぞり返っている、領主カリムの前に跪かされています。
【アイザック】 尋問される前に、こっちから「村長をどこへやった?」と聞く。
【GM】 「あ〜? 村長?」眠そうなカリムは、ずいぶん機嫌ななめ。で、側に立ってるピシっとした執事に「こいつら、どこの者だ」と聞く。すると執事が「おまえたち、どこの者だ」と聞いてくるよ。
【リザローク】 このオレを知らないなんて。「オレはカリーニョ村の正義のヒーロー、リザローク様だぁ〜!」
【アイザック】 「同じくアイザック!」……ってゆーか、昨日会ったやろ。
【GM】 「ああ、昨日のカリーニョの遣いどもか」
【アイザック】 「村長をどこへやった!?」
【GM】 「カリーニョの村長? どうしたっけ」と、カリムは執事に聞くんやね。ほんなら執事が「はっ、夕刻に処刑いたしました」と、ピシっと答える。
【リザローク】 は??
【アイザック】 しょ、処刑?!
【リザローク】 バ、バカな……!
【アイザック】 「処刑しただと!?」
【GM】 領主は口髭を弄びながら、「5万フィスを払えんと言いおったからな、仕方なかろう。ま、邪魔くさいからおまえたちも明日処刑するか」と言います。
【アイザック】 くそッ、悪と呼ばれてもいいから、ここでこいつら皆殺しにしてやりたい。
【GM】 すると、アイザックの脳裏に、老師よろしく村長の声が響くんやね。「落ち着くのじゃ、アイザック。怒りに身を委ねては、己自身を窮地に追い込むことになるぞ」(笑)
【アイザック】 「そ、その声は……村長!」(笑)
【リザローク】 オレにも聞こえるの?
【GM】 ああ、聞こえるよ。「リザローク、亢龍覇を使ってはならぬ」
【アイザック】 何やねん、亢龍覇って。
【リザローク】 使ったらアカンのやったら、そんな技、教えるなよ!
【GM】 領主は「おまえたち農民は私のために働き、私の言われたとおりに金を出せばよいのだ。なあ、セバスチャン」と言う。すると執事が、「はっ、そのとおりでございます」とピシっと答える。
【アイザック】 俺は領主に「農民はおまえの奴隷なんかじゃないんだぞ!」と言う。
【GM】 領主は鼻で笑って、「そうだ。おまえたちを、カリーニョ村で公開処刑にしよう。私に逆らう者の末路を、愚民どもに示すのだ。名案だと思わないか、セバスチャン」と執事に言う。すると執事は、「はっ、素晴らしいお考えです」とピシっと応える。
【リザローク】 逃げる。まわりの衛兵を振りほどいて、逃げようとする。
【GM】 無理やね。だいたい、『後ろ手に縛られてる』って言うたやろ。領主は「愚鈍な村民どもは思い知るだろう。私の偉大さを!」と、ひとりで悦に浸ってる。
【リザローク】 思い知るのはおまえのほうだ! オレの嫁さんの怖さをなぁ(笑)。
【GM】 「フン。牢にぶち込んでおけ」と領主が言ったので、キミたちは再び地下牢に入れられました。
【アイザック】 出口を探せ。
【リザローク】 隠し扉を探せ。どっかにあるはずや!
【GM】 どんな牢屋やねん。──まあ、そうやって牢の中でごちゃごちゃやってると、地上へ昇る階段のところにいた見張りの警備兵が、「うッ」と呻いて倒れました。
【リザローク】 何かな? 覗き窓からそっちを見てみる。
【GM】 リザロークが扉に近づいたとき、牢の鍵が外されて扉が開けられました。廊下の灯を背に立つそのシルエットは、子供のようにしか見えない。
【リザローク】 グラスランナーだ。
【GM】 そのとおり。そのグラスランナーは「早く出なよ」と、少年のような声で言う。
【アイザック】 よし、出よう。
【GM】 グラスランナーは、キミたちを後ろ手に縛っている縄をダガーで切る。そのとき、階段を降りてくる者がいます。やって来たのは、キミたちをを助けたのとそっくりなグラスランナー。「ベリー、取ってきたぜ!」と、得意気に言う彼が抱えてるのは、キミらの武器や一般装備だよ。
【リザローク】 よっしゃ!
【GM】 ただ、ベルト・ポーチなどに入ってた金銭は、この館の者に抜かれているから、所持金をゼロにしといてな。グラスランナーたちは、「早くこっちに来るんだ!」と、階段のところで急かします。
【リザローク】 行く。
【GM】 アイザックとリザロークは、グラスランナーたちに導かれて、領主の館を駆け抜けて行く。途中で中庭を通ったとき、その片隅に、ゴミのように捨てられている見慣れた老人の死体を見る。
【リザローク】 村長か。おのれ!
【アイザック】 村長の遺体から、ペンダントを頂きたい。商品的には価値がないけど、それを身につけてると、時々村長の声が聞こえてくるという(笑)。
【GM】 そのぐらいなら、別にいいよ。じゃあ、形見のペンダントを手に入れたことにしよう。ふたつに割って、リザロークと一緒に持ってなさい。んで、それがひとつに合わさるとき、村長は蘇るねん。
【リザローク】 それやったら、今すぐ合わせるわ!(笑)
【GM】 グラスランナーたちは、逃げながら簡単に自己紹介する。キミたちを牢から出したのがベリーで、装備を持ってきたのがハックという名前。ふたりは双子の兄弟だそうです。
【アイザック】 それでそっくりやねんな。
【GM】 兄弟は、どうやら東に向かって逃げて行くようです。走って行き着いた先には、高い壁が立ちはだかる。しかし、壁には縄梯子が垂れ下がっている。その下に、ひとりの衛兵がいます。「急げ!」と、その衛兵は急かす。
【リザローク】 そいつもグラスランナーの仲間か?
【アイザック】 それとも罠か。ま、いいや。とりあえず、登ろう。
【GM】 ベリーが最初に壁を越えて、次にアイザック、続いてリザロークの順で、壁を乗り越えようとするんやね。ところが、リザロークが壁のてっぺん近くまで登ったときに、見回りの衛兵ふたりが近づいて来る。ハックは、慌てて近くに茂みに隠れる。
【リザローク】 うおおお〜、まずいぜぇ!
【GM】 「異常はないか」という見回り兵たちに、壁のところにいた衛兵は、敬礼しながら「異常ありません」と、答える。見回り兵たちは行ってしまった。
【アイザック】 助かったな。どうやら、罠ではなさそうや。
【リザローク】 ほんじゃ、さっさと脱出してしまおう。
【GM】 ハックも茂みから出てきて、リザロークの後に続く。グラスランナーの兄弟は、キミたちを導きながら、アルカーラ山脈方面へ走ってゆく。
【アイザック】 見失わないように、Z注目しながら追う(笑)。
【GM】 やがて、東の空が白ばみはじめて、アルカーラ山脈のシルエットを浮かび上がらせた頃、キミたちは鉱山の村モゴチャに着きました。よかったね。
【アイザック】 鉱山の村か……。村の中央に、たたら場みたいなんがあったりして。
【GM】 あるよ(笑)。
【アイザック】 あるんかぃ!
【リザローク】 そこはもう大丈夫なん? 追手が来るとか……。
【GM】 双子は口を揃えて、「大丈夫だよ」と答える。
【アイザック】 でも、グラスランナーの言うことじゃあなぁ。
【GM】 兄弟は、キミたちを1件の家に導きます。どうやら、そこは酒場のようやね。宿泊施設はないようだけど。ベリーが「入んなよ」と言う。
【リザローク】 入る。
【GM】 酒場のカウンターには中年のおじさんがいて、「うまくいったようだな」とグラスランナーたちに声をかける。兄弟は、キミたちを連れて厨房に入ると、地下へ潜る階段を下りて行く。その先はひんやりとした食糧庫なんやけど、ハックが壁の一角を押すと、その部分がクルリと回って隠し扉が口を開けた。
【リザローク】 こ、これはいったい!?
【GM】 「入れば分かるよ。ついてきな」双子はそこから中へ入って行きました。
【アイザック】 ついて行こう。
【GM】 さらに階段を下りていった先は、かなり広い部屋だった。天井のランタンのほのかな明かりの下には、長テーブルがあり、椅子がたくさん並べられてる。壁には、大きなカルファン王国の地図が張られている。ベリーが、「ここは会議室だよ」と教えてくれる。
【リザローク】 会議室?
【GM】 しばらくして、ハックが奥の戸口から、ひとりの男を伴って入って来る。歳は30前後といったところで、精悍な顔つきのひとです。
【アイザック】 よう分からんけど、会釈しとこう。
【GM】 男も軽く会釈しかえすと、「ようこそ、ガーヴェンへ。私はラザラス・ミリガンだ」と、握手してくる。
【リザローク】 「助けてくれて、どーもありがとうございます」
【GM】 「礼には及ばん。我々は腐った王家の打倒と、カルファン国の建て直しを目指す組織……いわゆるレジスタンスだな」
【リザローク】 レジスタンス?
【GM】 ちなみに『ガーヴェン』とは、レムリア大陸の古き伝説に現れる、強大かつ心優しき巨人の名前です。
【アイザック】 虎VS巨人というわけね。
【リザローク】 なんて安易な。でも、個人的には鯉がよかった。
【GM】 「スコエ・ハオトの屋敷に忍ばせている仲間から、キミたちのことを聞いた。カリーニョ村出身のキミたちならば、身に染みて思い知っているだろう。キャフタ領主カリム・スコエ・ハオトの愚行の数々を」
【アイザック】 それは、まあ、そうですけど。
【リザローク】 村長を殺されたしな。
【GM】 「カリーニョ村と同じく、アクシャ村、ここモゴチャ村も、カリムに苦しめられている。我々は、モゴチャ村長の協力を得て、悪政はびこるカルファン王国の健全化を目指して、日夜がんばっているのだ」
【アイザック】 村長が協力してるってことは、モゴチャ村のひとたちは、レジスタンスの存在を知ってるの?
【GM】 知ってるよ。ここは鉱山の村で、王国の経済を支える重要な拠点。なので、モンスターなどの襲撃から村を守るために、王国兵が3人ほど常駐してる。村人たちは、ガーヴェンの存在を彼らに悟られないように隠す役割を担ってたりする。
【アイザック】 なるほど。
【リザローク】 で、レジスタンスは、具体的にどんな活動をしての?
【GM】 それはもう、いろいろと。というより、まだ準備段階だったりする。何といっても、まだまだ人手不足、戦力不足だからね。とくに、魔法使いは喉から手が出るほど欲しい。
【アイザック】 それで俺らを助けたわけか。
【GM】 「そういうことだ。いまは、ひとりでも多くの勇士が必要なのだ。どうだろう。キミたちも我々に力を貸してくれないか? 明るい未来を共に築こうではないか!」
【リザローク】 「わかりました、力になりましょう!」がしっ!
【GM】 「ありがとう、同志よ!」がしっ!
【アイザック】 た、単純な奴らや(笑)。……と思うわけやけど、幼なじみはノリノリのようやから、俺も黙って協力しよう。
【GM】 ちなみにガーヴェンのメンバーは、ラザラスを含めて17人。全員が何らかの冒険者技能を持ってるけど、ソーサラーはひとりしかいない。ほとんどがファイター系の人間やね。
【リザローク】 ということは、ファイターであるオレは、その他大勢の部類に入ってしまうんだね。
【GM】 あと、ここにいる限り、生活の保証をしてもらえるよ。寝泊まりは、会議室の奥に用意されている部屋で、ということになる。ちなみに、4人でひと部屋ね。
【リザローク】 ああ、高校時代の寮生活を思い出す。
【GM】 「リザローク君は4号室、アイザック君は5号室に入ってもらう」
【アイザック】 どんな奴がルームメイトになるんかな?
【GM】 リザロークのルームメイトは、セセルバ・カルバロというドワーフの司祭と、エフゲニー・カフェルニコフという人間の戦士。
【リザローク】 ドワーフもいるのか。
【GM】 アイザックのルームメイトは、マッシミリアーノ・ビアッツァという人間の盗賊と、ステファノ・ペルジーニという人間のレンジャー。
【アイザック】 盗賊と同室というのはイヤだなぁ。
【GM】 大丈夫。キミらのルームメイトたちは、今、仕事で出払ってるから。
【リザローク】 ああ、やっぱり仕事はせなアカンのか。
【GM】 そりゃあ、そうだろう。タダ飯を食わすために、連れてきたんじゃないんだから。「とりあえず、疲れてるだろう。今日はゆっくりと休んでくれたまえ」と、ラザラスさんは言いました。
【リザローク】 では、お言葉に甘えて……。
【GM】 ──というわけで、丸1日、キミたちは泥のように眠りました。ちょっと枕を涙で濡らしながら。
【アイザック】 「そ、村長……」って?(笑)
【GM】 そして、次の日の朝になりました。女性メンバーのアミニアシィ・ラベタという戦士が、キミたちを起こします。
【リザローク】 「うわあ〜ッ、リム、すまない〜! ……アレ??」(笑)
【GM】 ラベタさんは「なに寝ぼけてんだい。リーダーが呼んでるよ」と、呆れたように言う。キミたちは、会議室へやって来ました。待っていたラザラスが、「おはよう。疲れはとれたかね?」と、声をかけてきます。
【リザローク】 「初めての部屋だったし、枕が違うから全然」とは言わない。「おかげさまで、疲れはすっかりとれました」
【GM】 「それはよかった。では、さっそくだが、キミたちにやってもらいたい仕事がある」
【アイザック】 はあ。何でしょう?
【GM】 そいつは次回のお楽しみだ。