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§竜婚の贄姫:第4話§

五重塔の怪

著:龍神裕義
▽ あやかしの商人 ▽ 最後のボスも楽じゃない

あやかしの商人

【GM】 さて、朝になったよ。
【牙皇子】 セオリーとしては、このまま敵のアジトに乗り込んで、悪者をやっつけるんだろうが、そのままでは何のひねりもなく終わってしまう。そこで、このドクロの壺をその悪人どもに5万ガメルで売り、金を受け取ったところで始末して、壺を奪回するという作戦に出るとしよう。
【フィナーレ】 3人で行商人の恰好になるの? で、売りつけに行くわけ?
【GM】 ちゅーか、村人はどーなんねん。
【牙皇子】 別に村人の救出を依頼されたわけではないし、知ったことではない。
【ロス】 金さえ手に入れば、それでいいのさ。
【GM】 あのなぁ。村の人が無理やり墓地で働かされてるねんで?
【フィナーレ】 え? ツボの探索に出掛けてるんじゃないの?
【GM】 いや、「墓地にドクロ・ツボーンがある」ということまでは、悪人たちもわかっているからね。村人たちは、墓場を掘り返す作業をやらされてるわけ。
その墓地の周りは柵で囲まれてる。もともとは、グールなんかに墓を荒らされないように作ったもの。ちなみにアジトは、墓地の奥の小高い丘の上に建てられている。いかにも急ごしらえって感じのヒョロヒョロとした小さな塔ね。
【フィナーレ】 その柵に電流みたいなのは、流れてるの?
【GM】 さあ、昔はなかったけど、いまはわからない。
【牙皇子】 猫に触りに行かせればすぐわかる。
【フィナーレ】 おいおい〜。
【GM】 毛がブワ〜と逆立つかも知れないけど、大丈夫だな、毛がないから(笑)。
【ロス】 猫を柵の中に投げ入れて、偵察させるとか。
【牙皇子】 敵のアジトの内部を把握しておかねばならんしな。
【フィナーレ】 いやだ〜!
【GM】 敵のアンデッドとかも、墓場を掘り返してるからな。その偵察猫のところに、ゾンビがブワ〜って寄ってきたらどうするん?
【ロス】 そしたら逃げるんじゃないか。
【GM】 「うわ〜っ、来たぁ〜!」って(笑)? そんでまた静まったら、行かせるんやろ。
【フィナーレ】 ひどい(笑)。
【牙皇子】 とりあえず、敵のアジトの下までトンネルを掘ってみるとか。フィナーレが大司祭の恰好で「命の保証はする」と敵を説得しつつ油断させといて、その間に私たちがトンネルを掘り進めておくのだ。
【GM】 めちゃくちゃ時間がかかるんじゃない?
【牙皇子】 まあ、半年は覚悟してもらわんと。
【ロス】 でも1週間だろ、契約は。
【GM】 そう。いいところに気がついたね。
【フィナーレ】 今で何日目?
【ロス】 移動するのに3日かかって、1日休んだから4日目だ。1週間以内に商人に壺を渡せば、帰りの日数は関係ないらしいから、あと3日だ。
【牙皇子】 ふむ。とにかく商人を助け出さねばならんのなら、猫に偵察に行ってもらわねばな。
【フィナーレ】 だめっ! リシュは今、あたしが抱いてるから、行かせない。
【牙皇子】 ならばフィナーレ、きさま自身に行ってもらうしかないな。
【ロス】 そうだな。さっさと行ってこい、フィナーレ。
【フィナーレ】 いやじゃ〜!! いやじゃ、いやじゃ、いやじゃ〜!
【牙皇子】 偵察に行けば、猫の毛を生やせてやるぞ。
【フィナーレ】 あのね、そんな魔法はないでしょ。
【牙皇子】 〈キュアー・ウーンズ〉で毛根を復活させてやるさ。
【フィナーレ】 え〜っ、毛が焼けただけじゃなかったの?
【牙皇子】 違うな。きさまの猫の毛根は、焼けて死んだのだ。ニキ・ラウダみたいな顔になってるんだぞ。
【フィナーレ】 ウソぉ?!
【GM】 ああ、それでキバちゃんは「気持ち悪い」って手放しとんのや(笑)。
【フィナーレ】 か、かわいそうなリシュ……。次から猫、やめよかな……。
【GM】 新入りが入ってから、あっという間にいじめられっ子になってしまったな、フィナーレ(笑)。3日経ったら、立場が逆転してる。
【ロス】 イェ〜イ!
【フィナーレ】 くそ〜っ。でも、偵察にはぜったい行かない。
【牙皇子】 しょうがないな。フィナーレを縛って、「こんな娘はいりまへんか?」って売りに行くふりをして、取り入られるか?
【ロス】 そうだな、いちおう女の子だから、商売になるだろう。
【フィナーレ】 ちょ、ちょっと待て〜い。抵抗してやる。
【牙皇子】 押さえつけてやる。
【ロス】 なんか眠らす魔法とかない?
【牙皇子】 そんなものなくても、ぶん殴ればいい。
【フィナーレ】 そしたら顔に傷がいくから、売り物になんないでしょ。
【ロス】 みぞおちを殴るだけだから、大丈夫。
【フィナーレ】 うわっ、ひでぇ。こいつら人間じゃねえ!
【ロス】 俺はエルフだからな(笑)。
【牙皇子】 そういうわけで、フィナーレを殴って気絶させた。
【フィナーレ】 「どーゆーわけでだ〜!」……がくっ(笑)。
【GM】 ……(信じがたい連中だな)……。
【ロス】 俺たちも服装を変えなきゃ、ヤバイんじゃないか? あの宿屋の婆さんにでも、借りて来ようか。
【牙皇子】 そんなことしなくても、どうせ村人はいないんだ。その辺の家から適当に持っていこう。鎧の上からローブを纏って怪しい商人のふりをする。
【ロス】 俺は耳を隠して、つけ髭して、年寄りっぽくしとこ。
【GM】 許可しよう。
【牙皇子】 フィナーレを縛りあげる。いちおう、簡単に抜けられるような縛りかたにしといてやる。
【フィナーレ】 そんなこと、できんの?
【牙皇子】 シーフ技能があるからな。それくらいのトリックはできる。私が合図したら、縄を解くんだぞ。
【GM】 それで敵のところまで行くんだな? ……いいのか、フィナーレ?
【牙皇子】 こいつは気絶してるから、否応など言えない(笑)。
【フィナーレ】 昔は『ジャンケン』っていうルールがあったのにぃ〜。
【GM】 それじゃあ、キミたちは墓地の門の前まで来た。墓地への入り口はここしかなく、昔は墓守がいたんだけど、いまは3人の警備兵がいる。そいつらは、「何だ、きさまらは?」と問いかけてきたよ。
【牙皇子】 「いや〜、ワタシのトモタチ! とてもイイ商品、持てきたアルよ。このオンナ見てくたサ〜イ」
【GM】 「ほう。なかなかいい娘じゃないか」
【ロス】 「この娘、売りま〜す。あなたのボスに直接商談したいんで、中に入れてくだサ〜イ」
【GM】 「ボスも、女に不自由しているみてぇだしな、いいだろう。ただし、その前にボディ・チェックをさせてもらうよ」
【牙皇子】 シーフのトリックで、何か武器を隠し持てないか?
【フィナーレ】 モノによるでしょう。ヘビー・メイスなんか、ぜったい無理だよ。
【GM】 背中に入れとくんやろ(笑)。
【ロス】 背筋伸ばして?
【牙皇子】 「なんでお前、そんなに背筋ええねん」って言われるわ。とりあえず、ダガーの2本ぐらいは隠せるだろう。
【GM】 いいだろう。残りのものは、その門のところに置いてってもらうからね。フィナーレのメイジ・スタッフも。
【フィナーレ】 なんで〜?
【GM】 だって、若い娘がそんなの持ってたら、すぐに魔術師だってバレるよ。ふつうの恰好しておかないと、ヤバイでしょう。
【ロス】 その杖は俺が持っておく。お爺さんのふりをしてるから。
【GM】 なるほどな、それならいいよ。
【牙皇子】 よかったな、フィナーレ。
【フィナーレ】 いいんだか、悪いんだか。気絶してるから、何とも言えない(笑)。
【GM】 じゃあ、中に通されるよ。
【牙皇子】 ボスのところまで連れてってもらおう。
【フィナーレ】 そろそろ起こしてくれ〜。
【牙皇子】 気絶したふりを続けるんならな。では、こっそりと〈トランスファー・メンタルパワー〉で気づけをしてやろう。
【GM】 さて、門と塔の中間あたりに差しかかったとき、入ってきた門が背後でガシャンと閉まる。で、警備兵の頭の中には「ここにはモンスターがいっぱいいるから、とりあえず男ふたりを殺して、女を横取りしてボスのところに持って行けば、オレは昇格できるぞ」という考えがあるんだな(笑)。
【牙皇子】 では、バッと振り向いて、「きさま、私たちを殺そうとしているな?」と言おう。
【GM】 「ほほう」
【牙皇子】 「そしてきさまの次のセリフは、『おまえたちを殺して、その女をボスに献上して、オレの手柄にしてやるぜっ!』だ」と言ってやる(笑)。
【GM】 「フフフ……おまえらを殺したあと、ボスに女を献上して、オレの手柄にしてやるぜっ……はッ!(笑) おのれ、なかなかいい頭をしているな。だが、きさまのその頭脳も今日までだ。ここで死んでもらおう!」
 そして40匹ぐらいのモンスターたちが、ブワ〜って集まってくる。その内訳は、ゾンビ20匹にコボルド20匹ね。
【フィナーレ】 そろそろ起きるよ。起きても気絶したふりを続ける、って約束だったから、気絶したふりをしてただけだし。
【ロス】 じゃ、フィナーレを地面におろす。
【GM】 そのとき、見えないところにいた人間の兵士が、さらに15人ほどキミたちのほうに向かってくるよ。
【牙皇子】 では、ゾンビは私が相手にするから、人間とコボルドはロスとフィナーレが相手しろ。ダガーの1本をロスに渡す。ロスは杖をフィナーレに渡してくれ。
【ロス】 OK〜。
【GM】 じゃあ、まず、キミたちを案内しようとしてた3人の兵士が襲いかかってくる。あとのモンスターたちは、まだ集まって来る途中だから、次のラウンドまで接敵状態にならないよ。
【フィナーレ】 杖を返してもらったから、魔法が使える。一直線上に敵がいちばん多く並んでいるところに、〈ライトニング〉!
【GM】 すると、兵士5人が範囲に入る。
【フィナーレ】 (ころっ)1匹目13点、2匹目15点、3匹目13点、4匹目14点、5匹目は[精神力抵抗]されて11点。
【GM】 5人目だけが生き残って、あとはバタバタと倒れた。
【ロス】 案内役兵士Aに、ダガーで攻撃。(ころっ)当たって7点。
【牙皇子】 〈ターン・アンデッド〉の範囲内にゾンビは何匹入る?
【GM】 今のところ4匹。
【牙皇子】 じゃあ、10匹以上入るまで待つ。
【GM】 拡大はしないんだね、OK。

 このラウンド、フィナーレは案内役兵士Bから2点のダメージを贈られた。そして、次のラウンドに再び〈ライトニング〉を放ち、向かってくるふたりの雑魚兵を倒した。ロスはダガーで案内役兵士Aに手傷を負わせる。
 そして、そのとき……!

【GM】 突然、門のそばの柵がバキバキと壊れていく。なんか、変な戦車みたいなのが、柵を破壊して乗り込んできた!
【牙皇子】 ……燃やしたのに……。
【GM】 いや、『2号』と書かれてあるけどね(笑)。「とうとう見つけたよ。その袋の中に入ってある壺を、お渡し!」と、例のマージュの声がする。モンスターや兵士たちは、その戦車をキミたちの仲間だと思って、「まだ仲間がいたぞーっ!」と叫び、慌ててる。
【牙皇子】 戦車に向かって、「いいところに来てくれた! 助けてくれ!」と言ってやろう。
【GM】 キバちゃんがそう叫ぶと、兵士たちは「あっちを先にやっつけろー」と怒鳴り、モンスター軍団を伴って、戦車に向かって行った。そして戦車のほうも、「何だ、こいつらは!?」と言いながら、バリスタなどをバンバン撃って、乱戦になっていく。
【ロス】 じゃあ、どさくさにまぎれて自分の武器を取り戻す。
【牙皇子】 そして、ボスのところに行くぞ。塔に向かう。

最後のボスも楽じゃない

【GM】 塔の扉に鍵はかかっていなかったので、簡単に中に入れたよ。とりあえず、その塔は5階建てね。細い塔だから、入り組んだ構造ではなさそうだ。中は薄暗く、部屋の奥に上へ行く階段が見える。
 その階段の前には男がひとり立っていて、「よく来たね。わたしがこの塔を守る、1番目の戦士」と言う。
【牙皇子】 無視して先へ行くか。
【フィナーレ】 そだね。
【GM】 「バカめ。わたしを倒さぬ限り、先には進めぬぞ。1対1で勝負しないか? わたしは棒使いのアラハーン」
【ロス】 じゃあ俺が行こか。

 かくして、ロスとアラハーンのサシの勝負が始まった。身の軽いロスは、敵の攻撃をことごとくかわしながら、レイピアでちくちくと打撃を与えてゆく。
 そして、勝負は4ラウンド目、もちろんロスの勝利で決着がついた。
 冒険者たちは、アラハーンの死体から魔法の鍵を手に入れて、2階へとあがっていった。

【GM】 階段をあがったところに、扉があるよ。
【牙皇子】 では、私は扉に向かってロング・ボウを構えよう。そしてフィナーレが扉を開けるのだ。
【フィナーレ】 GM、それは引いて開けるドア? 押して開けるドア?
【GM】 押すドアだね。ところがいまは、鍵がかかっているので開かない。
【ロス】 なるほど、魔法の鍵を使えってか。
【フィナーレ】 じゃあ、鍵をつかって扉を開ける。もちろん、キバちゃんのボウに当たらないように、端のほうで隠れてながらね。隠れられる場所的な余裕はある?
【GM】 まあ、階段のつきあたり一面が扉というわけじゃないから、いちおうあるだろうね。
開けてみると、中はけっこう明るい部屋だった。サンドバッグなどが天井から吊るされている。で、奥の階段の前に、褐色の肌の筋肉質な大男が立っていた。
「よく来たな。わたしが──」
【牙皇子】 ロング・ボウ発射。(ころっ)クリティカル・ヒット、14点。
【GM】 卑怯やなぁ(笑)。じゃあ、男は矢が突き刺さったまま、牙皇子のところに突進してくる。次のラウンドには届くからね。
【牙皇子】 フィナーレのほうに先に着くんじゃないのか?
【フィナーレ】 大丈夫、あたしは扉のところで隠れてるから。キバちゃんしか見えてないはずだよ。
【牙皇子】 そうか。ではフィナーレ、隠れたまま、そいつの足を引っかけてやれ。階段を転げ落るぞ。
【GM】 でも、マイナス4のペナルティで回避すりゃいいんだろ。オープン・ダイスで回避してやるさ。(ころっ)──1ゾロ!(←自動失敗)
【牙皇子】【フィナーレ】【ロス】 (爆笑)
【フィナーレ】 また、狙いすましたようなタイミングで……おいしすぎる(笑)。
【牙皇子】 もちろん私は、脇にどくからな。
【ロス】 右に同じ。
【GM】 「うわあ〜ッ?!」という絶叫を引きながら、褐色の男は階段の下、1階まで超特急で転げ落ちて行きました。首があり得ぬ形で曲がった男は、うめき声すらあげない。もちろん、ピクリとも動かない(笑)。あ〜あ、一撃目のボウがけっこう痛かったからなァ……。
【ロス】 じゃあ、鍵を奪って3階に上がりますか。
【GM】 また同じように、階段を上がったところに扉がある。
【フィナーレ】 鍵を使って扉を開ける。
【GM】 すると、今度の部屋は真っ暗だね。闇の向こうから、声が聞こえてくる。「よく、ここまで来れたな。2階のウッドを倒すとは。まあ、奥に入りたまえ」
【フィナーレ】 キバちゃんとロスには耳を塞いでもらって、〈ダンス〉の歌を歌おう。〈ダンス〉の呪歌は直後に効果が出るからね、(ころっ)。
【GM】 [精神力抵抗]成功。「残念だったな、こざかしいマネは私には効かん!」。そして部屋に明かりがつく。
【フィナーレ】 どんな奴がいるの?
【GM】 そこにはね、日本風の真っ赤な鎧を着た、二刀流の男が立っている。「我が名はムザジ。私の相手は、誰がしてくれるのかな?」
【牙皇子】【ロス】 こいつで〜す(→フィナーレ)。
【GM】 「ははあ、レディ・ファーストとはよく言ったものだ(笑)」
【フィナーレ】 初歩的な攻撃として、〈エネルギーボルト〉。(ころっ)12点のダメージ。
【GM】 (まずいな)とりあえず、男はフィナーレに向かって来るよ。次のラウンドには届く。
【フィナーレ】 じゃあ、もう1発。(ころっ)11点のダメージ。
【GM】 ──死んだ。
【牙皇子】【フィナーレ】【ロス】 (爆笑)
【GM】 おい〜、二刀流やで? 使う間、あらへんかった。
【ロス】 剣、パクったれ。
【GM】 筋力8の剣と、筋力7のショート・ソードね。
【牙皇子】 よし、では4階に行こう。
【GM】 4階の扉は自動ドア。前に立つと、ウィ〜ンって開いた。部屋の四隅には、それぞれ石像が1つずつ置かれている。
【ロス】 [センス・オーラ]してみよう。
【GM】 すると、その石像から何かの魔法の力が発せられているのがわかる。
【フィナーレ】 すごいな。精霊力を調べる能力で、魔法が感知できてしまうなんて。
【GM】 し、しまった。〈センス・マジック〉と勘違いした。
【牙皇子】 私たちが部屋に入った瞬間、石像が動きだすかも知れんな。
【フィナーレ】 じゃあ〈ディスペル・マジック〉。4倍消費で全部が範囲に入るようにしよう、(ころっ)。
【GM】 (そう来るとは思わんかったな)手応えはちょっとあった。魔法が消せたかどうか、〈センス・マジック〉で調べてみたら?
【フィナーレ】 そんじゃあ、リシュの精神力で〈センス・マジック〉、(ころっ)。
【GM】 2つの石像の反応が消えてる。あと、ついでに奥の扉の前に魔法の反応があるよ。その瞬間、そこからフィナーレに〈エネルギーボルト〉が飛んできた。
【フィナーレ】 (ころっ)[精神力抵抗]成功。
【GM】 では、ダメージ7点ね。レベルで止めてくれ。するとその時、扉の前に男が現れた。〈カメレオン〉で隠れていたわけ。
【牙皇子】 おかしいな。[センス・オーラ]を使ったとき、人間の存在こそわかったんじゃないのか?
【GM】 さあ、魔法の力でもかかってんのかも知れんね(笑)。そいつは、攻撃してみたらわかるんじゃないかな。
【フィナーレ】 でも精神力が……キバちゃん、分けて。
【牙皇子】 では〈トランスファー・メンタルパワー〉で10点分けてやろう。
【GM】 じゃあフィナーレは、その10点に2点を足して精神力を回復してくれ。
【フィナーレ】 なんで?
【牙皇子】 何か魔法の力でもあるんだろう。
【ロス】 俺は扉の前の男にダガーを投げる。(ころっ)5点のダメージ。

 この後フィナーレが〈エネルギーボルト〉を放ち(またしても謎の2点のボーナスを受けた)、ロスがレイピアで特攻。これで一気にケリを着けるつもりだったのだが、その目論見ははずれ、逆にロスは〈ライトニング〉で反撃されてしまい、瀕死の重傷を負う。
 その次のラウンド、フィナーレの〈エネルギーボルト〉が、敵の息の根を止めた。

【牙皇子】 では、ロスに〈キュアー・ウーンズ〉をかけてやろう。(ころっ)12点回復した。
【GM】 それに2点を足して回復してな。
【ロス】 完全回復だ。ちょっとはみ出したぞ(笑)。
【フィナーレ】 けっきょく、2点のボーナスの意味はわからずじまいね。
【牙皇子】 よし、上に行くぞ。
【GM】 すると、今までとは違った豪華な両開きの扉がある。
【牙皇子】 ボスの部屋だな。誰が扉を開ける?
【フィナーレ】 それはシーフが……。
【牙皇子】 いや、罠はないぞ。
【フィナーレ】 調べたの?
【牙皇子】 見ればわかる。どこの世界に、自分の部屋の扉に罠を仕掛ける奴がいるんだ。
【フィナーレ】 それもそうだね。開ける。
【牙皇子】 またロング・ボウを構えておく。
【GM】 開けると、中は外の光が入る、けっこう明るい部屋。真ん中に黒い服を着た男がひとり立っている。「ほう。よく3階のムザジと、4階の──」
【牙皇子】 ボウ発射。(ころっ)。
【GM】 オープン・ダイスで回避してやる。(ころっ)ほら、当たった(笑)。でも、鎧でガイ〜ンしたった。
【フィナーレ】 懲りずに〈エネルギーボルト〉。(ころっ)13点。
【ロス】 特攻隊、突撃ィ〜!! (ころっ)はずれ。俺、そのままどっかに行ってもた(笑)。
【牙皇子】 では、私もマトックで特攻。
【GM】 おお〜、久々やの〜黒幕。
【牙皇子】 (ころっ)クリティカル・ヒット2連発、ダメージは26点。
【ロス】 力ずくや(笑)。
【フィナーレ】 こ、こわい〜(笑)!
【GM】 ……マトックってツルハシやで、やめてくれ……。脳天に突き刺さったな、それは……。たぶん、もう息はしてないと思う(笑)。
【牙皇子】 影の総統の実力発揮、と言ったところかな。
【GM】 すると、奥の突き当たりの壁がクルっと回転してだな、隠し部屋から本物のボスが登場する(笑)。「よくも私の影武者を殺ってくれたな」
【牙皇子】 おいおい、急遽シナリオが変更されたぞ(笑)。
【GM】 「ここまで来るとは思わなかったぞ。きさまらのその腕を見込んで、私の仲間にしてやろうじゃないか。ドクロ・ツボーンが手に入れば、私は世界の王となる。そうしたら、きさまらに世界の半分をやろう」
【ロス】 そんなことより、ドクロ・ツボーンの使い方を聞き出そう。
【GM】 「使い方か。ドクロ・ツボーンの中に水を入れ、それを飲んだ後に願い事を言うのだ。古の時代より、そういう言い伝えがある。そしてその壺は、ここの村の墓場に埋まっているという噂だ」
【牙皇子】 ロスが背負ってるのにな。ま、それは黙っておこう。
【フィナーレ】 背負ったまま、よく特攻とかしてたね(笑)。
【ロス】 中で砕け散ってたりしてな(笑)。
【GM】 「どうだ、私の仲間にならんか? 世界の半分が手に入るのだぞ」
【フィナーレ】 イヤぷぅ〜。そんなんシンドイしィ、冒険者の方が気楽やしィ。
【GM】 「金だって使いたい放題だぞ!」
【ロス】 いやぁ、世界を征服したら、金なんて使い道ないでしょう。
【GM】 「世界の半分が手に入るのだぞ!」
【牙皇子】 全部くれ。
【GM】 「おまえなぁ」
【フィナーレ】 ま、お約束というやつですね(笑)。
【牙皇子】 あんなに振られると、言っとかんとな(笑)。
【ロス】 交渉は決裂か。
【GM】 交渉というのか、さっきのは(笑)。
【フィナーレ】 戦闘だね。ロスとキバちゃんの武器に〈ファイア・ウェポン〉。(ころっ)かかった。武器を替えちゃダメだよ。
【GM】 「おい! 私を倒すと、ドクロ・ツボーンの在り処はわからなくなるぞ!」
【ロス】 背負ってるのにな(笑)。
【牙皇子】 黙っとこう。攻撃、(ころっ)15点のダメージ。
【GM】 倒れた(笑)。「バ、バカな……私が死ぬと、ドクロ・ツボーンは永遠に見つからぬぞ……」
【ロス】 え? 持ってるよ。
【牙皇子】 死の間際に拝ませてやるか。
【GM】 「フッ、バカめ。そいつはただの壺だ。ドクロ・ツボーンとは聖杯のことだ」ガクっ。その時、下からひとりの兵士が駆けあがってくる。「見つかりました! ドクロ・ツボーンが見つかりましたァ!! ……アレ?」
【ロス】 ボスは死んでる、と(笑)。
【GM】 で、そいつの手には金色の盃みたいなのが握られてる。
【ロス】 そいつにひと言。「よこせ」
【GM】 しかしその兵士は、クルリと向きを変えて下へ走り出す。
【牙皇子】 逃がすか。ゆけッ、特攻隊長!
【ロス】 おう、炎のレイピアで特攻! (ころっ)10点。
【GM】 倒れた。でも死んではないよ、倒れただけ。
【牙皇子】 とどめを刺して、聖杯を奪おう。……『聖杯』か……、フッ。
【フィナーレ】 じゃ、塔から出て、働かされてる村人たちに、解放したことを伝えよう。
【GM】 外には兵士やモンスターの死骸がいくつも転がっている。そして、フィナーレの言葉を聞いた村人たちは、歓声をあげて喜んだ。
【ロス】 ところで、あの悪玉トリオはどうなったんだろう。
【牙皇子】 相討ちになってるといいんだが……ま、死んでないだろうな。
【GM】 モンスターの死体に混じって、戦車の残骸は残ってるけどね。彼らの姿は見えないよ。

 牙皇子の言ったとおり、悪玉トリオは生きていた。そして、冒険者たちが『ドクロの壺』を解放された風水の村の商人に届けに行く途中、まんまと金の聖杯『ドクロ・ツボーン』を奪っていったのだった……。

【GM】 キミたちがお婆さんに宿屋に戻ると、穴を掘らされていたひとりの村人が、「ドクロ・ツボーンの説明書が出てきた」と持ってきたよ。読んでみると、あの聖杯は願いを叶えるものではなく、そこに水を入れて飲んだ者の悪の心がなくなり、善の心が芽生えるという物だったらしい。
【牙皇子】 私が探し求めている聖杯とは、まったく別物であったようだな。
【GM】 そして、「宝箱も見つけたんで、これは助けてもらったお礼に、ぜひあなた方に」と手渡してくれた。
【ロス】 中は何が入ってんの?
【牙皇子】 開けてみよう。まずは[罠発見](ころっ)。
【GM】 罠はないけど、鍵がかかってるね。
【牙皇子】 [鍵開け](ころっ)。
【GM】 中にはね、王冠や金貨や宝石などが入っていたよ。

 この後、『ドクロの壺』を風水の村の商人に渡して証文を得、無事に冒険を果たしたのであった。

【GM】 1ヶ月後キミたちは、東の方で道具屋を営みながら、売上のほとんどを恵まれない子供たちに寄付している善良な3人組の噂を耳にするよ。出来た人もいるもんだ、と。
【牙皇子】 私たちのおかげだな。

÷÷ つづく ÷÷
©2000 Hiroyoshi Ryujin
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