▽ 介護に励む妖魔たち | ▽ 闇でがんばる妖魔たち | ▽ 豊穣をもたらす妖魔たち |
【GM】 キミたちは、乾き大根の洞窟に入る合言葉を思い出してもらうため、目の見えないお爺さんの頼みを聞いてあげることにした。
【ジロウ】 森で適当な木々を拾って、手斧で割って薪を作る。
【ノア】 爺さんに「薪ができたよ」って言う。
【GM】 「うむうむ、ありがとうのぉ」と、爺さんはお礼を言う。
そして、何かを思い出したらしく、「そういえば、鍋の焦げがなかなか取れんでのぉ〜。あれがピカピカになったら、思い出すかも……」と言う。
【ノア】 「取ったるから、洞窟の合言葉を思い出せ!」って、鍋を洗う。
【GM】 なら、モンスターレベル+筋力ボーナスに2Dの出目を足して、どれくらい焦げが取れたか判定してみよう。
【ジロウ】 筋力を使うなら、わたしのほうが向いてる。(ころっ)かなりいい感じやで。
【GM】 その達成値の高さなら、すごくきれいになったよ。
【ノア】 「すごいな〜」って見てよう。「鍋洗い、楽しいんかな〜」
【ジロウ】 爺さんに触らせてみよう。「ほら、こんなにツルツル」
【GM】 「おー、これはまるで、死んだ婆さんが買うたばかりの頃のようじゃ」と、爺さんは喜んでる。
「婆さんを思い出すのぉ〜」
【ノア】 そんなん思い出さんでいいからさ!
【GM】 「何ですかのぉ?」
【ノア】 だから、ドアを開けたいねん。洞窟の──。
【GM】 「おお、思い出したぞ! トイレのドア、最近、開けにくくなって、困っておったのじゃ」
【ジロウ】 トイレかぃ!
【GM】 「ついでに、トイレがきれいになったら、嬉しいのぉ」
【ジロウ】 便器磨きまでさせられるんか(笑)。
【GM】 そのとおり。クモの巣まで張られてる始末やからね。
【ジロウ】 クモを食べるっ。
【ノア】 「あっ、食べられた!」って思いながら、トイレ掃除をする。「なんでこんなことしてるんやろ〜!?」(笑)
トイレ掃除に励む、2匹の妖魔。トイレの中はきれいにできたものの、ドアの修繕の判定には失敗しました。
【ジロウ】 爺さん、ごめん。ドアは治らんかったわ。便器はピカピカにできたけどね。
【GM】 「そうか、それは残念。そういえば、さっき、猫がベッドに粗相をしてしもうてな、ジクジクして気持ち悪いのじゃ。誰かシーツを替えて、藁を入れ換えてくれんかのぉ〜」
【ノア】 あっはっは。入れ換えたるから、もう!(笑)
【GM】 「それは助かる。藁は、ここから東に30分行ったところにある、ルアト村で分けてもらってくだされ」
【ジロウ】 人里に行くのはまずいんスけど……。村人はここには来ないの?
【GM】 週に1〜2回来るよ。食べ物を持ってきてくれるらしい。
【ジロウ】 じゃあ、そんとき藁を分けてもらい?
【GM】 「えぇ〜? それじゃあ、ベッドで眠れんじゃないか。猫の小便は臭いし」
【ジロウ】 自分だって、臭いやろ〜?
【GM】 「そうじゃのぉ、風呂に入るのも大変で……誰かが風呂を沸かして、体を洗ってくれたら、助かるんじゃが」
【ジロウ】 なにぃ!?
【ノア】 それは村人に頼みぃな。週に1回は来るんやろ?
【GM】 「さっぱりしたら、扉を開ける合言葉を思い出すかもなぁ」
【ノア】 ウソじゃあー! そんなことで思い出すかーッ!
【GM】 「喉元まで、思い出しかけとるんじゃが。『は──』なんじゃったかのぉ〜」
【ノア】 ……風呂はいいとして、藁がめんどくさいな。
【ジロウ】 藁の代わりになるようなものはない? 乾燥した雑草とか。
【GM】 牛が食す干し草みたいなのなら、あるね。ルアト村に(笑)。
【ノア】 しゃあないな〜。村に行って、牛小屋から借りてくるか。
【ジロウ】 今の時間はどれくらい?
【GM】 一連の作業で、けっこう夜も遅くなってる。
【ノア】 じゃあ、ちょうどいいかも。闇夜に紛れて行ってくるわ。俺は空を飛べるし。
【ジロウ】 ほんなら、わたしが爺さんを風呂に入れてあげる。
【GM】 では、ジロウが風呂を沸かし、爺さんの体をせっせと洗ってやってる間に、ノアはルアト村に飛んだ。
村には、民家がまばらに建っている。干し草があると思われる牛小屋は、どこも民家に隣接していて、土間から牛の様子を見れるようになっている。村人は今、各々の家で夕飯を食べているようやね。
【ノア】 牛小屋って、別に明るくはないやんな?
【GM】 まあ、照明はないよな。
【ノア】 じゃあ、闇に紛れて牛小屋に入る。暗視能力があるから、闇の中でもOK。
【GM】 では、物音を立てずに小屋に侵入できたか、チェックしてみよう。
【ノア】 (ころっ)おっ、1ゾロ!(笑)
【GM】 なら、「ガタン!」と大きな音を立ててしまった。牛がびっくりして「モぉ!?」と鳴き、何事かと思った家の住人が、ランタンを持って土間から小屋に入ってくる。
【ノア】 あちゃ〜。まあ、いいや。干し草をごそーっと抜いてる。
【GM】 家の住人は見た。ほの暗いランタンの明かりの中、牛小屋でせっせと干し草を抜き取るインプの姿を。「うわああーッ!?」と驚いてるよ。
【ノア】 驚いてる隙に「干し草、もらったで〜」って言うて、パタパタ〜と飛んで逃げる。
【GM】 「何しに来たんだ、あの妖魔は〜!?」
【ノア】 「ベッドを作るね〜ん」
【GM】 ノアがじいさんの家に帰ってくると、ジロウが爺さんの体をタオルで拭いてやってるところだった。髭まで剃ってもらってさっぱりした爺さんは、鼻唄なんか歌ってる。
【ジロウ】 介護や、介護(笑)。
【ノア】 なんで、こんなことしてるんやろ。爺ぃ、目が見えたらビビるやろな(笑)。
【GM】 そしてジロウとノアは、ベッド作りに取りかかった。
それがひと段落ついた頃、爺さんが言う。「そろそろお腹がすいたじゃろ。夕飯でも食べていきなされ」
【ジロウ】【ノア】 やった〜!
【GM】 「台所にパンや干し肉、カボチャにニンジン、白菜などがあるでのぉ」
【ジロウ】 おお、ゴージャスや。
【ノア】 すごいな。今までで、いちばんいい料理やん。
【GM】 「それらを使って、料理をしてくだされ」
【ジロウ】【ノア】 俺らが料理するんかぃ!
──なんて文句を言いつつも、成功ロールの結果、ジロウがとてもすばらしい料理を作ってしまいました。ゴブリンなのに……。
【GM】 爺さんは感激してるね。「こんなうまい料理は、婆さん以来じゃ!」
【ジロウ】 すげえ、素質あるやん。何でもできるで。『ホームヘルパー・ジロウ』やな。新しい肩書を手に入れたで。
【ノア】 ホンマや(笑)。で、爺さん、合言葉を思い出してくれた?
【GM】 満腹になった爺さんは、おねむになってる。
【ノア】 おねむじゃないよ!
そして夜は更け、朝を迎えました。
【GM】 「いやいや、どこの誰かは存じませぬが、親切にしてくださってありがたいことですじゃ」と、爺さんは礼を言う。「こうして人と触れ合うのも久々でのぉ」
【ノア】 「人ちゃうねんけどなー」って思っとく。
【ジロウ】 あの、爺さん、合言葉は思い出してくれた?
【GM】 「おお、思い出したぞ。あの扉に向かって、『はがねのかぎ』と唱えなされ」と爺さんは言い、「それから、これは親切にしてくださったお礼じゃ」と、小さな袋を差し出す。
【ジロウ】 何が入ってるの?
【GM】 なんか、乾燥した小さな木の実がボロボロと入っている。爺さんの猫が、「にゃああん」と興奮して、擦り寄ってくる。
【ノア】 何、これぇ!?(笑) マタタビか?
【ジロウ】 何か知らんけど、もらっとこ。それじゃ、洞窟に行く。「じゃあな、爺さん」
【ノア】 ばいばーい。
【GM】 では、キミたちは例の洞窟にやって来ました。あいかわらず、人面レリーフの扉が行く手を閉ざしております。
【ジロウ】 人面レリーフの鼻を触ってみる。
【ノア】 目とかいじってみる。
【GM】 「ああん」ってイヤがってる。「もう、帰れや〜」
【ジロウ】 じゃあ、「はがねのかぎ」って言ってみる。
【GM】 すると、人面レリーフの目が赤く光り、表情がキリっとした。重々しい音を立てて、扉が開いたよ。「汝らの前に道は開かれた。正しき答えを持つ者よ、いざ進むがよい」
【ジロウ】 おおー、かっこいい!
【ノア】 口調も違うし!
【GM】 でも開ききると、また、ほげーっとしてるけどね。
【ノア】 なんじゃ、こいつ。ずっとキリっとしとけよ!(笑)
2匹は乾いたダイコンが眠る洞窟に入りました。中は人工的な地下迷宮です。暗視能力がある彼らには、地下の闇など脅威になりません。
しかし、シーフ技能がないことは、別の脅威となります。
【ノア】 そのドアを開ける。
【GM】 開けるのね。じゃあ、ノブを回そうとしたとき、その手を毒針が突き刺した。生命力抵抗に成功されたんで、毒はまわらないけど。
【ノア】 いてぇ〜。「鼻ピアスのときより痛いわ」って思う。
【ジロウ】 新しい快感やね。
【ノア】 目覚めたかもね(笑)。やったー、じゃあ、肩書に『マゾ』って書いとこ。
【GM】 ……「しばいてぇ」って、冒険者ににじり寄ってそうやな……。
介護ゴブリンとマゾインプは、さらに地下迷宮の奥を目指します。
【ノア】 あ、俺、宙を飛んどくから。落とし穴があってもいいように。
【ジロウ】 便利やなぁ。
その危惧どおりに──。
【GM】 落とし穴が、パカっと口を開けたよ。ジロウは落っこちた。
【ジロウ】 あ〜れ〜。
【GM】 ダメージは鎧で消されてしまったね。
【ノア】 「大丈夫ぅ?」パタパタ〜。
【ジロウ】 引き上げてよー。
数々の罠に苦しみながら、2匹はある部屋にたどり着きました。
【GM】 その部屋には、台座の上にとまっている、2体の石の悪魔像が置かれている。その容姿は、ノアにそっくりやね。
【ノア】 「うわー、俺や」って思う。
【GM】 そうやって眺めていると、石像が動きはじめた。まるで生き物のようななめらかな動きで、尻尾をふりふりしてる。
【ジロウ】 ノア、真似してみ。
【ノア】 尻尾をふりふりする。「仲間、仲間♪」
【GM】 「ちっちっち」と、動く悪魔像は言う。「おまえ、インプだろ? 俺たちはガーゴイルさ」──って、正体を明かしてしまってどーすんねん。
【ノア】 偽インプか。
【GM】 「おまえが偽ガーゴイルや。石にもなれない、下等なガーゴイル」
【ノア】 ちゃうわ! 石なんかなりたくないもん。ムカデ食われへんし。
【GM】 「石になっとったら、飯なんか食わんですむやん」
【ノア】 ムカデ、うまいよぉ?
【GM】 「じゃあ、おまえを食ってやる」
【ノア】 えー? 俺はまずいって。
【ジロウ】 なんで素で会話してんのよ(笑)。GM、わたしはガーゴイルAに噛みつくよ。石像ってどんな味がするか、試してやる。
戦闘能力に秀でたホームヘルパー・ジロウは、自慢の牙で、着実にガーゴイルAの生命力を削っていきます。3ラウンドで、ジロウはガーゴイルAを撃破しました。
【GM】 噛み砕かれたガーゴイルAは、元の石に戻ってバラバラと崩れてしまった。
【ジロウ】 「あぁー、食べられへんかったぁ〜」って泣く。
その一方で、マゾインプはガーゴイルBの尻尾の一撃を受けて、喜んでいます。
【ノア】 ニヘラ〜って笑う。もう、目の焦点が定まってへんで(笑)。
【ジロウ】 よだれ垂らしとらんと、ちゃんと避けぇな。こっちは片づいたし、そっちに援軍に行くけど、いい?
【ノア】 うん、来て来てぇ。
【GM】 ──「噛んでぇ」って続きそう(笑)。
ジロウの牙と、ノアの〈ウーンズ〉で、ガーゴイルBも倒されてしまいました。
ガーゴイルたちを撃破した2匹は、宝箱が置かれた部屋にたどり着きました。
【GM】 その部屋には、高さ2メートルほどの大きな植物が、2本生えている。紫の花は、つぼんでいる。
【ジロウ】 洞窟の中に植物が生えてるの?
【ノア】 日の光なんて入ってこんよな。きっと、まともな植物じゃないと思う。
【ジロウ】 用心しながら、部屋に入る。
【GM】 キミたちが部屋に踏み込むと、2本の植物の花弁が開いた。中には猫の頭が収まっていて、金色の瞳をらんらんと輝かせながら、「ふーっ」と威嚇の鳴き声をあげた。
【ジロウ】 何、それ(笑)。
【ノア】 あっ、じゃあ、あの爺さんからもらった、不思議な木の実をあげてみる。
【GM】 すると猫型植物は、「にゃあん☆」とノアにすり寄って来た。
【ノア】 うわ〜。懐かれた!(笑)
【ジロウ】 その木の実を、部屋の反対側に放り投げてやろ。
【GM】 猫型植物たちは、先を争って床に落ちた木の実にじゃれつく。
【ノア】 どんな花やねん!(笑)
【ジロウ】 今のうちに、宝箱を開けてしまおう。
【ノア】 また、針に刺されるのを期待しながら、開けてみる。
【GM】 しかし、宝箱には鍵がかかってるよ。
【ノア】 [鍵開け]なんか、できん。じゃあ、箱ごと爺さんのところに持って帰ってまえ。
【ジロウ】 入口の扉の顔は、まだホエ〜っとしてる?
【GM】 してるよ。出てきたキミたちに、「もう、ええのん?」と聞いてくる。
【ノア】 もう、ええのん。宝箱、取れたし。
【ジロウ】 バイバーイ。
2匹は別の部屋でも宝箱を拾って、森の爺さんの家まで戻りました。
【ジロウ】 斧を借りて、宝箱を壊してしまおう。
【GM】 なんちゅう、乱暴な。宝箱は壊れたよ。片方の箱には乾いた大根、もう片方の箱には、黄金に輝く横笛が入っていた。
【ジロウ】 乾いた大根、発見〜。
【ノア】 爺さんに「この金色の笛って、なに?」って尋ねる。
【GM】 「金色の笛じゃと? そういえば、ワシの爺さんから『あの洞窟には、月にある銀の竪琴が慕う、黄金の横笛が祭られている』と聞いたことがあるが、それのことかのう」
【ジロウ】 月の竪琴??
【ノア】 ふーん。まあ、いいや。ひからびた大根を手に入れたし、あとは“生命の滝”で、水を汲んでくればいいんやな。
【ジロウ】 じゃあ、行こか。金の笛も一緒に持って行く。
ジロウとノアは爺さんに別れを告げ、大根の森を後にしました。
【ジロウ】 “生命の滝”に行こうと思ったら、ニトラ湖を渡らんとアカン。
【GM】 ニトラ湖を渡ろうと思ったら、リーザの街と、クルスク王国の都クルスクを結ぶ定期便に乗るしかないね。
【ジロウ】 でも、それ、人間じゃないと乗られへんやん。
【ノア】 とりあえず、リーザの近くまで行く。で、街には入らずに、湖沿いに小さな漁村がないか探して歩いてみる。
【ジロウ】 もちろん、人間の道からはずれて歩くよ。
【GM】 漁村か……。まあ、ないことはないやろね。リーザから湖畔沿いに30分ほど西へ行くと、さびれた小さな村があった。
【ノア】 じゃあ、近くの茂みに隠れる。夜になったら、乗れそうな小舟がないか探すよ。
【GM】 やがて夜になり、キミたちは村に忍び込んだ。湖のほとりに、何艘かの小さな漁船が舫われている。
【ジロウ】 周りには誰もいない? いちおう、見回して確認する。
【GM】 (ころっ)夜も遅いし、人の気配はしないね。
【ジロウ】 今のうち、今のうち(笑)。
【ノア】 勝手に縄をほどいて、舟を借りた。「ぎぃ、ぎぃ」って、舟を漕ぐ。
こうして2匹の妖魔はニトラ湖を渡り、クルスク王国の西のはずれに上陸することに成功しました。
2匹は、そこからミドル地方ハインベル王国北西の“生命の滝”をめざします。
その途中、どうしても人間の街道を横切らなければならない場所があります。妖魔たちは、なるだけ人けのない場所を選択しましたが、運悪く、4人の冒険者のパーティと遭遇してしまいました。
【GM】 冒険者たちの内訳は、戦士、司祭、盗賊、魔術師。そこそこ腕が立ちそうやね。彼らは「うわっ、街道にモンスターが!」と、驚いてるよ。
【ノア】 あー、夜になってから、街道に出ればよかった。
【ジロウ】 とりあえず、族長に言われたとおり、にこやかに手を振ってみよう。
【GM】 「な、なんだ、あいつ。やけに愛想のいいゴブリンだな」
【ノア】 「じつは、俺らは旅の牧師やねん」って言うてみる。
【GM】 「牧師……ハァ??」
【ノア】 うーん、通じへんかったか。
【ジロウ】 それ、いちど使った手やし。
【ノア】 あいつら、弱そうやったら、食ってやるねんけど。
【ジロウ】 ちょっと強そうやもんな。
【GM】 ──というキミたちのやりとりを聞いて、戦士がグレート・ソードを構えた。「とりあえず妖魔なんだから、やっつけちまえ」
【ノア】 グレート・ソードには当たりたくないなぁ。
【ジロウ】 そうなん?
【ノア】 だって、これに殴られたら、快感を通り越してまっぷたつになりそう。ふよ〜っと空へ飛んで逃げて行く。
【ジロウ】 あッ、こらーっ!
【ノア】 「がんばって逃げろよ〜」
【GM】 (ひでぇな)冒険者たちは、仲間に置き去りにされた気の毒なゴブリンを前に、ちょっときまり悪そうな顔をしてるね。
【ジロウ】 えっと〜……愛想笑いを浮かべとく(笑)。「に、逃げてもいいッスかね?」
【GM】 (ころっ)彼らは、キミの態度に戦意を削がれたみたいやね。戦士があごをしゃくって、「行け」と言ってくれるよ。「2度と人前に出てくるんじゃねぇぞ」
【ジロウ】 ぴゅーっと逃げる。助かった〜。ドキドキや(笑)。
難を逃れた2匹の妖魔は、ついに“生命の滝”に到着したのでした。
【GM】 天突く絶壁のはるか上から、ごうごうと水が落ちる雄大な滝が、キミたちの目の前にあります。滝の端から端まで走っても1時間はかかりそうやね。
ニトラ湖から12の川が“アインホルンの森”を走り、コマールノ山脈を割って、ここで滝を作っているらしい。
【ノア】 あ、なんや。舟で“アインホルンの森”を流れる川を通ってくれば、簡単にここに来れてたんや。
【ジロウ】 でも、それ、滝の上から落ちてくることになるやんか。
【ノア】 落ちそうになったら、空を飛んで脱出する。
【ジロウ】 わたしはどうなんのよ!?(笑)
【ノア】 あははー(笑)。
【GM】 さて、キミたちは、滝の下の湖のほとりに立っています。水しぶきは靄になって辺りに漂い、景色を白いベールで包み込んで神秘なものにしている。
【ジロウ】 じゃあ、樽に水を汲んで持って帰ろう。
【GM】 キミたちが水を汲んでると、湖の奥、滝のほうから、靄をかきわけて近づいて来る、大きな黒い影がある。
【ジロウ】 なに、それ?
【GM】 とても大きな怪物です。首長竜のような形状を想像してください。ネッシーとかみたいなの。
【ジロウ】 滝の主や。『ヌッピョン』やー!
【ノア】 ヌッピョン〜!(笑)
【ジロウ】 ヌッピョンの体長は2メートル。グランドヌッピョンになると、10メートルの大きさやで。
【GM】 ……じゃあ、キミたちの前に現れたのは、13メートルの体長を誇る、巨大な『ヌッピョン』です。
【ジロウ】 ヌッピョンは「キュー」って鳴くねんで。
【ノア】 かわいいーっ☆
【GM】 じゃあ、「きゅ〜」って鳴いてから、「誰に断って水を汲んどんのじゃあ」と言うてくるよ。これは耳に聞こえる言葉というより、脳に直接響いてくる『声』やね。
【ノア】 「水がいるんやけど」って言う。「どうせすぐに増えるやろし、樽の一杯ぐらい、持って帰ったってええやろ?」
【GM】 「あほう。ワシに断りなく、持って帰っていいと思っとんのかぁ」
【ジロウ】 じゃあ、今、断る(笑)。「もらって帰るけど、いい?」
【GM】 「タダでか?」
【ノア】 あ、黄金の笛をあげる! あれ、別に俺らはいらんし。
【ジロウ】 これでどうよ?
【ノア】 何かの宝物らしいで。金色やし、吹いたら音が出る。
【GM】 ヌッピョンは鼻を寄せてきて、黄金の横笛をくわえた。そして、「ぴーっ♪」と音を鳴らしてみる。
【ジロウ】 器用なやっちゃな。
【GM】 (ころっ)彼はこれをいたく気に入ったようやね。「では、水を汲んで早く立ち去るがよい」と言い残して、滝のほうに帰って行く。「ぴーっ♪」という笛の音が、ヌッピョンの影とともに、靄の彼方へ消えていった。
【ノア】 じゃあ、水を汲んで帰ろう。
ノアとジロウは、乾いた大根と“生命の滝”で汲んだ水を持って、故郷の集落へ戻ってきました。
【GM】 族長のアントニオ様が、「うむ、ご苦労であった」と出迎えてくれた。「今日から、おまえたちの族内番付も上がるぞ。十両に昇進だ」
【ジロウ】 やった〜。名前の文字が、ちょっと大きくなったで。
【GM】 「付き人として、コボルドをそれぞれに1匹つけてやるから、思う存分使い倒してやれ」
【ノア】 付き人はダークエルフがいいなぁ。
【GM】 ノアは「どアホっ!」と、族長に殴られてしまったよ。
【ノア】 ニヘラ〜って喜ぶ。
【GM】 「な、なんだ、こいつは。どうしたんだ?」
【ジロウ】 「見たままです」(笑)
【ノア】 ちょっと目覚めたみたい。覚醒?(笑)
そして妖魔たちは、集落の仲間たちとともにがんばって大根を育て、ここを豊かな大根の地としたのでした。
【ジロウ】 大根って、あんまり嬉しくないなぁ。
【ノア】 ムカデの地がよかったな〜。