≪REV / EXIT / FWD≫

§モンスター・リプレイ[1-1]§

求めるは大根の地・前編

作:Crazy Heaven 著:龍神裕義
▽仕事に励む妖魔たち ▽南に旅立つ妖魔たち ▽言葉を求める妖魔たち

仕事に励む妖魔たち

 レムリア大陸オムスク地方オレンブルク王国の南方、人が足を踏み入れることのない険しい山麓に、とある集落がありました。
 集落の住人は妖魔。9年前に終わったクラリオン大戦で、人間に敗北して逃げてきたダークエルフやゴブリン、コボルド、インプたちです。
 不毛の地の集落のこと、作物を育てるだけでもひと苦労。いくら開墾に精を出しても、やせた土はわかずかにヒエやアワを実らせるだけ。こんな土地ですから、獲物になる小動物もほとんどおりません。

 ある日の午後、集落を支配する族長のダークエルフ、アントニオ様が、ゴブリンのジロウと、インプのノアを呼び出しました。

【GM】 アントニオ様は、他のダークエルフ幹部たちとともに、昼飯を食べています。キミたちふたりは、その前にひざまずいてます。
【ジロウ】 昼飯って、作物はほとんど採れないんとちゃうん?
【GM】 そのわずかな作物は、カースト制の上位にいる者たちが口にする。このダークエルフたちのように。キミたちは下っ端なので、余り物を食する身です。
【ノア】 そうなんや。
【ジロウ】 で、なんで呼ばれたん?
【GM】 お仕事があるからです。さっきも言ったけど、この地は不毛の土地。どうしたって、食糧が不足してくる。不足したものを補うには、どうしたらいいか。
【ノア】 動物を狩ってくる。
【GM】 うんにゃ。ダークエルフは菜食なんで、肉はどうでもいい。近くの人里に行って、作物を拝借してくるんだよ。
【ノア】 大根とか、カボチャを借りてきたらいいわけ? 返さないけど(笑)。
【GM】 そういうわけ。今日はキミたちふたりに、この重大な任務が与えられる。カーストの頂点に君臨する族長の言葉は絶対なので、逆らうとひどい目に遭うよ。〈バルキリー・ジャベリン〉が飛んで来たりして、何がどうなることやら、考えただけでも恐ろしい。
【ジロウ】 家畜は借りたらアカンの?
【GM】 「その余裕があれば、借りてきたらいい。ただし、人間を殺してはアカンよ。そんなことをすると、あいつらムキになって、冒険者を雇いよるんや。そうなったら、この集落も危ない。また、移住せねばならなくなる」
【ジロウ】 こっそり借りれてくれば、いいんやな。
【GM】 「そう、こっそりとやで」と、キミたちは指令を受けた。「万が一、人間に見つかったりしたら、フレンドリーに接したり、情に訴えたりするんやで」
【ノア】 なんか、せこいリーダーやな(笑)。
【GM】 期限は明日の夜まで。できるだけ、たくさん借りてくるように。
【ジロウ】 わたしらだけで行くの?
【GM】 そう。別のグループは別のグループで、キミたちが行く村とは違うところに、食物を借りに出かけてる。
【ジロウ】 わかりました。
【ノア】 ニワトリの卵を盗ってこようっと。
【ジロウ】 牛も行こうや、牛。
【ノア】 ああ、牛もいいな。キャトル・ミューティレーションしたろ。
【ジロウ】 じゃあ、人里に行く。
【GM】 では、その日の夜遅く──というかほとんど夜明け前、いちばん暗いときに、キミたちはある人里にやって来た。ジロウはゴブリン、ノアはインプなので、夜目が利くね。闇が妨げになることはない。
【ノア】 とりあえず、大根とかカボチャとかジャガイモとか、うまそうなやつを探す。
【ジロウ】 畑に入ってみよう。
【GM】 では、ふたりはレンジャー技能による[罠感知]をしてください──技能を持ってない? じゃあ、ダイスでの出目だけでどうぞ。
【ノア】 俺は空を飛ぶよ。ぱたぱた〜。
【ジロウ】 (ころっ)あっ、1ゾロや!
【GM】 するとジロウは、イノシシ避けの鳴子を踏み鳴らしてしまった。静寂の村に、はでな鳴子の音が響く。
【ノア】 それを見て、上空で「えー!? マジで!」って、大声を出してしまう(笑)。
【GM】 付近の飼い犬が「わんわん!」と狂ったように吠えはじめた。「モ〜!」という鳴き声もする。
【ノア】 「あ、牛、発見〜」って思ってよう。
【GM】 寝静まっていた民家にほのかな明かりが灯り、たいまつを手にした男たちが6人ほど、あちこちからやって来る。「なんだ、なんだ?」
【ノア】 ほんなら、さらに上空へフワ〜っと飛んで行く。
【ジロウ】 あ、こら。逃げやがった〜!
【GM】 たいまつの光は、鳴子の音がした辺り──つまり、ジロウがいるところに向かって来るよ。
【ジロウ】 あら。じゃあ、愛想笑いを浮かべとく(笑)。
【ノア】 族長に言われたとおりに、愛想よく(笑)。
【GM】 なら、いよいよジロウのところへやって来た人間たちは、たいまつの明かりの中で愛想笑いを浮かべる、1匹のゴブリンを目にするわけやね。
 イノシシだと思ってた村人たちは、腰を抜かして驚く。「ゴブリンだぁーッ!!」
【ジロウ】 「いや〜、そんなつもりじゃ、なかったんですけどね」ぽりぽり。
【GM】 さっきの叫びを聞いて、さらに男たちが8人ほど、クワや鋤を手にして家を飛び出してきた。
【ノア】 この隙に、明かりが届いてないところで、野菜とか盗みたいんやけど。
【GM】 では、ダイスを1個振ってみてください。
【ノア】 (ころっ)1。
【GM】 なら、短いゴボウのような細くて小さい大根を抜いた。葉っぱはすごく立派なんやけどね。
【ジロウ】 暗視能力でそれを見て、「おっ、ごっつい葉っぱや」って思う。
【ノア】 でも、ごっついんは葉っぱだけやで。
【GM】 そうこうしてるうちに、とうとうジロウは村人たちに取り囲まれた。愛想笑いを浮かべてるのが余計に不気味らしく、「何を企んでるんだ、こいつは!?」「怪しげだ〜!」とか言ってるよ。
【ノア】 どうしたろっかな……。
【ジロウ】 頼む〜。なんとかして〜。
【ノア】 頼まれたって、どーすればええんよ!?(笑) じゃあ、盗った大根をどこかに隠して、出ていってみよう。どうなるやろ。
【GM】 当然、村人たちはアゴがはずれるほど、驚きますわな。「うわーッ! インプもいたぞー!」と、大騒ぎになりました。
【ノア】 「じつは、私たちは巡礼の牧師なんですけど、悪い魔法使いの呪いで、こんな姿にされてしまいました」って言ってみる(笑)。「そのゴブリンは、弟子」
【ジロウ】 わたしも「うん、うん」とうなずいてるよ。
【ノア】 証拠に〈キュアー・ウーンズ〉をかけたいんやけど、ケガした村人はいない?
【GM】 さっきの騒ぎで転倒したエンリケさんが、腰を傷めたらしいけど。
【ノア】 じゃあ、「偉大なるシルファスよ〜」と、〈キュアー・ウーンズ〉。(ころっ)「ほら、治ったよ」
【GM】 キミの神は、暗黒神クートラでしょうが。
【ノア】 そのへんは、ボロボロっとぼやかしてごまかす。
【GM】 (ころっ)まあ、村人たちは信じてくれたみたいやけど。
【ノア】 ちょろい、ちょろい(笑)。
【GM】 「大丈夫ですか、牧師さま」と、村人たちは心配してくれる。「いったい、このような時間に、何をなさってたんですか?」
【ジロウ】 「いやー、ちょっと道に迷ってしまって」
【GM】 そこへ、年老いた村長がやって来た。「それは難儀ですな〜。よろしければ、我が家で休んでいきなされ」
【ノア】 やったー! 「ありがとうございま〜す」
【GM】 では、キミたちは村長さんの家に招かれました。朝の4時ぐらいです。もうじきすると、農夫たちが畑に出かける時間やね。
 囲炉裏にかけられた鍋で昨夜の残りのスープが温められ、それを村長の奥さんが器によそいで、キミたちに差し出してくれた。「お口に合いますか、どうか……」
【ノア】 めっちゃ、合うって。
【GM】 「見てのとおり、何もない村でして。旅人もめったに訪れないんですよ」
【ノア】 普通にしゃべってるんや。めっちゃ、なごんでる〜!(笑)
【ジロウ】 ええひとらや(笑)。

南に旅立つ妖魔たち

【GM】 「しかし、そんなお姿になって、大変ですなぁ」
【ノア】 「うん、どこに行っても怖がられるし。夜にしか行動できないんスよ〜」
【ジロウ】 「罠にはかかるし〜」
【ノア】 家の中を目で物色するけど、その辺の壁に、タマネギとかぶら下がってない?
【GM】 軒下に大根やタマネギ、干し柿なんかが吊り下げられてるよ。
【ジロウ】 他には?
【GM】 土間に、漬物が入った樽がある。土間の奥は、牛小屋に続いてるみたいやね。
【ジロウ】 「あの、裏の牛は?」って、村長に聞いてみる。
【GM】 「あれは、20年連れ添った我が家の牛ですよ」と、村長さんは言う。「最近はすっかり老いて、くたびれてしまってますけどね」
【ジロウ】 そうなんか。食うとこなさそうやな。
【GM】 ──で、いつまでなごんでるの?
【ジロウ】 もうじき、夜が明けてしまうな。
【ノア】 このふたりに〈ブラインドネス〉をかけて、目を見えなくしてから、家の中の物をあさって逃げるというのは?
【ジロウ】 それ、いいね。GM、外の様子は? 農夫が出勤しはじめてる?
【GM】 そうやね、そろそろ畑に出てるひともいる。まだ、外は薄暗いけど。
【ジロウ】 じゃあ、急ごう。
【ノア】 〈ブラインドネス〉をふたりにかける。(ころっ)成功。
【GM】 村長さんたちは、「おお、目が見えない!」と慌ててるよ。
【ノア】 「それは神が与えた試練なのです」とか適当なことを言うて、大根とタマネギと干し柿を取って、さーっと裏口から出る。ついでに卵も2個持って行く。
【ジロウ】 わたしは漬物の樽を持って、牛を連れて出る。「おじゃましましたー!」
【GM】 それを、畑に行く途中の村人に見咎められた。「おや、村長さん家のアオじゃねぇか。いったい、どうしたっぺ?」
【ジロウ】 「いや、ちょっと散歩に──」
【ノア】 しゃーっと空に逃げる!
【ジロウ】 えーッ、逃げた!?
【ノア】 「うまく逃げろよ〜!」
【GM】 「あーッ、やっぱりだっぺか! 村の衆〜」

 村人の追撃を振り切るため、ジロウは、年老いて走れない牛をあきらめて逃げざるを得ませんでした。

【ジロウ】 あーあ、牛ぃ……。
【GM】 今頃、村では大騒ぎやろな。「やっぱりあいつら、妖魔だったんだべ」「村長さん、大丈夫だっぺか?」
【ノア】 そろそろ魔法が切れて、目ぇ見えるようになってるんとちゃう? スープも食ったし、満腹、満腹(笑)。
【GM】 ひどい奴らやな、キミら。
【ジロウ】 だって、妖魔やもん(笑)。じゃあ、集落に帰ろか。
【GM】 族長はキミたちが持ち帰った戦利品を見て、「うむ。まあまあだな」と褒めてくれた。「あまり、変な騒ぎにしなかただろうな?」
【ジロウ】【ノア】 全然OKッスよ。
【GM】 「うむ。では、褒美を取らせよう」と、干し柿をひとつずつ、与えてくれた。
【ノア】 わ〜い。
【ジロウ】 わたしらが取って来たものやのにぃ〜。
【GM】 すると、「何か言ったか?」と族長がジロウを睨む。その背後に、光の槍を携えた戦乙女が現れてるけど(笑)。
【ジロウ】 「何にも言ってませんやんかぁ〜」(笑)
【GM】 そして、数日が経過した。キミたちふたりは、今までよりもちょっと待遇がよくなり、ご飯も少しいい余り物が食べられるようになっている。
【ジロウ】 格が上がったんや。
【GM】 そう。番付が序二段から三段目に上がった感じやね。
【ジロウ】 そんだけか。字の大きさは変わらんやん。
【GM】 そんなキミたちは、再び族長のアントニオ様に呼び出された。
【ノア】 今度もまた、何か盗んで来るの?
【GM】 「いや、違う」と、族長。その話によると、昨日、キミたちと同じように作物を盗みに行ったゴブリンのタロウが、ある情報を持ち帰ってきらたらしい。
【ジロウ】 タロウ? 兄ちゃんか!(笑)
【ノア】 どんな情報を持ってったん?
【GM】 何でも、不毛の地に豊かな実りを恵ます、大根の伝説だそうです。
【ノア】 大根??
【GM】 そう。この集落から遙か南、アルジェント山脈を越えた先に、リーザという人間の街がある。その北東に広がる森の中に、伝説の『乾き大根』を祭る洞窟があるらしい。
 乾き大根を土中に埋め、ミドル地方ハインベル王国西にある“生命の滝”から汲んだ水を与えれば、その地は豊かな大根の土地になるそうな。
【ノア】 大根だけか〜。
【GM】 「何を言う。ひとつでも豊富に収穫できる作物があれば、それをもって、人間たちが育てた別の作物と交換できるだろう」
【ノア】 なんか、人間に対してすごいフレンドリーな妖魔やな(笑)。
【ジロウ】 人間のほうが交流を断ってきそうやけど……。
【GM】 「交流を持ちかけるときは、我々ダークエルフが、〈ディスガイズ〉で肌の白いエルフのふりをするさ」
【ノア】 呪われた牧師のふりでもOK!
【GM】 「というわけで、おまえたち、乾き大根を取って来なくちゃイカンわな」
【ノア】 取ってこなイカンのん?
【GM】 無言でノアを冷たく見下ろす族長の背後に、戦乙女が光の槍を手にして現れた。
【ノア】 見えてないふり。「今、〈ブラインドネス〉にかかってるねん。自分でかけちゃった〜」って言うとこ。
【GM】 戦乙女のこめかみに、青筋が浮かんだ。
【ジロウ】 ノアの口をふさいで、「行きます、行きます〜」って言う。
【GM】 「うむ。この任務を果たしたならば、一気に十両ぐらいに昇進できるから、がんばるのだ」と、機嫌を直した族長は励ましてくれた。
【ジロウ】 OK〜。
【ノア】 大根を取って、水を汲んでこなアカンねんな。樽か何かある?
【ジロウ】 あの漬物樽を持って行こう。中身は集落に置いとく。

 こうして2匹は、『乾き大根』と『生命の水』を求めて、南に旅立ちました。
 まずは、乾き大根の洞窟があるという、リーザ北東の森をめざします。道なき険しいアルジェント山脈に入りました。

【ノア】 妖魔に保存食はないから、虫とか捕まえて食ってる。
【ジロウ】 虫とかネズミとかを生のまま、頭からバリバリ食うで。
【ノア】 余ったムカデとかは、腰のベルトにぶら下げてるから、保存もOK。
【ジロウ】 たまに保存ムカデに噛まれたりして。
【ノア】 そうそうそう、「痛〜」って思うけど、俺も毒を持ってるから大丈夫やねん。
【ジロウ】 なんか、集落にいるときより、腹いっぱいに食べれてそう(笑)。
【ノア】 木の実とかも採ってるし。「うまいわ〜」って。
【GM】 そういった感じで山を越え、斜面を下って行くと、やがて、背の高い木々が鬱蒼と生い茂る地域に入った。
 そのとき、向こうから低く唸って近づいて来る、1匹の大きな動物と遭遇します。正体を知りたければ、セージ技能……は持ってないだろうから、ダイスの出目だけで判定をどうぞ。──ノアが見抜いたね。その獣はゴリラです。
【ノア】 ゴリラ!? すっごーい、猿や、猿や!
【ジロウ】 肉が食べれるー!
【GM】 どうやらキミたちは、知らぬ間に彼のテリトリーを侵していたらしい。ゴリラは激しくドラミングして、キミたちを威嚇する。「ウホウホ!」
【ノア】 糞を投げてくるんちゃう?
【GM】 そやな。じゃあ、怒ったゴリラは糞を投げてあげよう。(ころっ)目標はジロウの顔。回避してください。
【ジロウ】 いやぁー! ウンチ飛んできた〜!
【ノア】 うわ〜、避けろよ〜。
【ジロウ】 (ころっ)回避した。こめかみの横を通り過ぎていった。ウンチが後ろの木に当たって、飛び散ってるで。
【GM】 それを見たゴリラの怒りは頂点に達した。「なめやがってぇー! ウホっ」
【ジロウ】 こっちも怒ったわ!(笑)

言葉を求める妖魔たち

 かくして、ゴブリンとインプと、ゴリラの戦いが始まりました。ジロウが噛み、ノアが〈ウーンズ〉を飛ばして攻撃します。
 対するゴリラは、接敵するジロウを抱き抱えようとします。

【ノア】 うわ〜、愛されてるなぁ、ジロウ。
【GM】 違うがな。抱きしめて骨を砕こうとしてるんやがな。

 けっきょく、ゴリラの攻撃はうまくいかず、逆にジロウの噛みつきのクリティカルをくらって、わずか2ラウンドで轟沈しました。

【GM】 頸動脈を噛み切られたんやろな。鮮血が、天を覆う木々の梢にまで届きそうなほど、噴き出してるで。
【ノア】 うわー、すげーっ。「噴水や〜」って喜んどこ。
【ジロウ】 さっそく食べるで。新鮮な肉やし。
【ノア】 「うまい、うまい」言うて、食べる。血ィとか飲んで、骨をしゃぶっとく。
【ジロウ】 内蔵も残さず食べてしまうから。
【GM】 最悪や、こいつら(笑)。

 数日後、2匹は山を下りきり、リーザ北東の森に入りました。
 森の中では、巨大ムカデに襲われました。

【ノア】 腰にぶら下げた普通のムカデを見て、「こいつのお兄さんかな?」って思ってる(笑)。

 巨大ムカデもあっさり倒され、妖魔たちの腹を満たすエサになっただけでした。

【ノア】 足をもいで、チュルチュル〜って中身を吸う。
【ジロウ】 蟹みたい。グルメの旅や(笑)。

 そして、乾き大根の洞窟を探して森をさまよう2匹の前に、一軒の古びた小屋があらわれました。

【ノア】 窓から中をそうっと覗いてみる。
【GM】 小屋の中は、かなり散らかってますな。でも、人は住んでるようです。安楽椅子に座った白髪白髭のお爺さんがいて、その膝の上では、猫が丸くなっている。
 猫は気配を感じたのか、ピクっと顔をあげて、ノアが覗いている窓を見た。
【ノア】 「イエーイ」って手を振る。
【GM】 猫は「ふーっ」と唸ってるね。お爺さんは、「どうしたんだい、タマや?」と語りかける。
【ノア】 「あの猫、『タマ』っていうんや」って思って、ひょいっと隠れよう。
【ジロウ】 中にいたのは、爺さんだけ?
【GM】 他にひとがいる気配はなかったね。
【ジロウ】 独り暮らしか……なんでこんなとこに住んでるんやろ?
【ノア】 何してるんやろな? 南に行けば、街があるのに。大根の番人かな。
【ジロウ】 どうしよう。声をかけたりしたら、いろいろ手伝わされそうな気がする。
【ノア】 俺らを見ても、驚かなさそうやしな。ほって行こか。

 ほどなくして、2匹は、半ば草や蔓に埋もれかけている、怪しげな洞窟の入口を見つけました。
 石を積み上げて築かれた小さな祠のような洞窟の入口は、木々の隙間から細い筋となって差し込む日の光に、静かに照らし出されています。
 妖魔たちは、さっそくその中へ入って行きました……。

【GM】 キミたちには暗視能力があるから、照明がなくとも闇を見通すことができるね。中に入ると、鉄の扉が閉まっていて先へ進めない。
【ジロウ】 扉を開けてみよう。
【GM】 開かない。
【ノア】 開かない? 鍵がいるの?
【GM】 鍵穴は見当たらないけどね。その扉には、南米でよく見る仮面のような、奇妙なデザインの人面が彫り込まれている。
【ノア】 そのレリーフに触ってみる。
【GM】 「ほげっ?」と、人面レリーフは寝ぼけ眼でノアを見る。
【ノア】 あ、生きてんの!? 「扉を開けてよ」
【GM】 レリーフは「へっ」と、鼻で笑った。
【ジロウ】 扉に笑われたぁ〜。
【GM】 扉は鼻で笑った後、また、ほげ〜っとして過ごしている。
【ジロウ】 やる気がない奴やな〜。ムカデをあげたら、やる気を出すかな。
【ノア】 腰にぶら下げてるやつを取って、扉にあげてみる。「ムカデ、食う?」
【GM】 「食うかっ」と怒られた。
【ノア】 あははー、ムカデは嫌いなんや(笑)。
【GM】 「物は食わへんのじゃ。食事がいるんやったら、とっくに餓死しとるわっ」
【ノア】 ああ、それもそうやなぁ。
【ジロウ】 扉につっこまれたで(笑)。
【ノア】 「あんた、関西人?」って、扉に聞いてみる。
【ジロウ】 わたしらと、気ぃ合うかもよ?
【ノア】 一緒に来ない?
【GM】 扉は答えず、また、静かにほげ〜っとしている。
【ジロウ】 どうやったら、開くんやろ。
【GM】 「然るべき者が、然るべき言葉を唱えるならば、道は開かれよう」ほげ〜。
【ジロウ】 合言葉がいるんか。
【ノア】 『開きやがれ』。
【GM】 ブー。「帰れ」
【ジロウ】 やっぱり、さっきの爺さんかな。
【ノア】 爺さんが合言葉を知ってるかも知れん。戻ってみよう。
【GM】 それではキミたちは、例のオンボロ小屋まで戻って来たよ。そろそろ、夕暮れを迎えようとする時刻になっています。
【ジロウ】 じゃあ、フレンドリーに行こうか。「毎度ー」って、ドアをノックする。
【ノア】 爺さん、こんちわ〜。
【GM】 すると、軋んだ音を立てて扉が開けられた。オンボロ小屋の中から、杖をついた爺さんが顔を出し、「どなた様ですかな?」と言うよ。
【ノア】 うちらを見た爺さんは、どういう反応すんの?
【GM】 いや、目は見えてないようやね。
【ノア】 あ、目が悪いんか。じゃあ、普通の冒険者のふりをしとこ。「あそこの洞窟、扉が開かへんねんけど、開ける方法、知らん?」
【GM】 爺さんは「はぁ〜?」と言ってる。
【ジロウ】 耳遠いんや(笑)。じゃあ、大声でもう一度言ってみよう。
【GM】 「そんなに大声を出さんでも、しっかり聞こえとるわっ」と、爺さんは怒鳴る。「あぁ〜、しかし、薪が足りんでのぉ〜。この盲た爺には……」
【ノア】 薪を取ってきてあげるから、教えてよ。
【GM】 「薪が増えたら、思い出すかも知れんの〜」
【ジロウ】 先に薪を拾って来い、ってことか。
【ノア】 思い出さんかったら覚えときよ、って思っとく。〈メンタル・アタック〉かけたるねん(笑)。
【ジロウ】 じゃあ、薪を集めに森に行ってくる。
【ノア】 またムカデがおったら、食べるから。
【GM】 というところで、この続きはまた後ほど。

÷÷ つづく ÷÷
©2002 Hiroyoshi Ryujin
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お名前
ひと言ありましたら
 
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