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§銀月の歌:第26話§

石の奥に眠る心

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 隠された道を探す事 ▽ ゴーゴンとの戦いの事 ▽ 庵に供えるオムレツの事

隠された道を探す事


 部屋(L)に戻った冒険者たちは、丹念に部屋を調査してみた。
 その結果、穴が穿たれている壁が扉になっていて、隣に部屋が隠されてるのを発見した。

【キャロット】 入ってみる。
【GM】 狭い部屋やね。隠し扉を閉めてランタンのシャッターをおろすと、真っ暗闇の中に、部屋(L)の魔法の灯火の光が、細い一条の線となって穴から差し込む。
【キャロット】 爺ぃからもらった鏡で、その光を反射させてみる。
【GM】 すると、反射して壁に鏡と同じ円形に映った光の中に、文字が浮かんで見える。
【プレセア】 魔鏡や。
【ファベル】 文字を読んでみる。
【GM】 古代の文字で、「汝の名は“月へ行くもの”である」と書かれてある。
【キャロット】 ふーん。これが『爺ぃが真実の名を告げる』ってやつ?
【プレセア】 部屋(K)で見つけた石版には、そう書かれてたね。
【キャロット】 じゃあ、爺ぃのとこに行ってみる? で、名前を言う。
【GM】 では、キミたちは地下1階Bパートの部屋(S)に来ました。
 が、そこにお爺さんの姿はない。
【ファベル】 あらぁ?? ……徘徊しとんや。
【キャロット】 「おじいちゃん、ダメですよ〜」って(笑)。
【ファベル】 「パンツ、はかなきゃ」(笑)
【GM】 ダンジョンでそんなんとエンカウントしたらイヤやん(笑)。モンスターと遭遇するよりタチ悪いで。

 冒険者たちは、くまなく部屋(S)を調べてみたが、何も発見できなかった。

【キャロット】 部屋(E)の魔法陣が、何か関係してるんかなぁ。

 そこで、部屋(E)の魔法陣を調べるため、冒険者たちは地下1階Aパートに戻った。
 みんなで手をつないで、思いきって部屋(E)の魔法陣に乗ってみる――。

【プレセア】 んで、「“月へ行くもの”である」って言ってみる。
【GM】 プレセアの声が、部屋(E)に虚しく響く……。
【プレセア】 むう。

 冒険者たちは、向かいの部屋(B)に入り、そこに設置されているレバーを元どおり左に倒してみた。どこからともなく、重々しい仕掛けが動く音が聞こえる……。
 何が変わってるのか調査してみると、地下2階から地下1階Bパートへ行く階段(b)が、階上に収納されて天井と化していた。

【ファベル】 爺さんのとこに行けなくなってしまった。
【キャロット】 部屋(B)のレバーを右に倒し直しとく?
【ファベル】 そうしてたほうがいいかも。徘徊してる爺さんが、部屋に戻れなくなる(笑)。
【GM】 んじゃ、また、地下1階Aパートの部屋(B)に行くわけね。
 そうそう。悪魔像――T&Tのガーゴイルは、倒されても30分経つと復活するらしい。
【プレセア】 なんと。
【ファベル】 不死身なんか。
【GM】 そう。しかも、復活するとすべての能力値が元の2倍になって、『最初の一撃の機会』もくれずに襲いかかってくる。
【ファベル】 能力値2倍?!  激しいな〜。
【キャロット】 激しいけど、大丈夫ちゃう? コロコロってやっつける。
【GM】 まあ、そういうわけで、部屋(H)を通るとき、ひと回り大きくなった再生悪魔像と戦闘になるんやね。

 再生悪魔像は、やっぱり2戦闘ターンで倒された。

【プレセア】 爺さんがくれた鏡が、『天の心』であるはずがないねんけどな。
【キャロット】 そういえば、まだ毒の罠がないよね。「5枚目の扉は毒の吐息」っていうの。
【ファベル】 それ、どこにあるんやろ?
【キャロット】 どっか、隠れてる?
【プレセア】 かも知れんで。
【キャロット】 まだ調べてないとこを、捜索し直してみよう。

 冒険者たちは、さらに能力値2倍になって蘇りそうな悪魔像を避けて、地下2階の各部屋から、調査し直してみることにした。

【キャロット】 プールも調べる。(ころっ)
【GM】 せっかく耳まで濡らしたのに気の毒やけど、とくに何も見つからなかった。
【キャロット】 『耳まで』って、深さ2メートル以上あったんですか?(笑)
【GM】 うん。水面にはウサ耳の先っぽしか出てなくて、そいつが向こうにスーっと行って、またこっちに戻ってきた。
【ファベル】 怪しい〜(笑)。

 その後、冒険者たちは、再び地下1階Bパートに行った。
 部屋(S)(Q)(R)で、キャロットが捜索しまくり経験値を荒稼ぎしたが、隠し扉は見つからない……。

【キャロット】 そういえば、石版がある部屋って、どれも調べてないみたいやけど。
【ファベル】 ホンマや。じゃあ、調べてみよう。
【GM】 (KもQもRも、きれいに避けてたね(笑))どの部屋から調べるのかな?
【ファベル】 地下2階の部屋(K)。
【キャロット】 (ころっ)3レベルで成功。
【GM】 隠し扉があったよ。ついに見つけられたね。扉が「しまった!」とか言うてる。
【ファベル】 ざまーみろ!(笑)

「最も光から遠き場所、されどそこから光を見とおすことができる場所、その壁は、心の扉を閉ざしている」の『光』とは、部屋(L)の魔法の灯火。『心の扉を閉ざしている』のは、部屋(K)の壁のことだった。
 冒険者たちは、隠し通路を進む――。

【GM】 鉄製の扉が、行く手を阻む。鍵はかかってない。
【キャロット】 そっとあけてみる。
【GM】 そのまま通路が続いてて、すぐ向こうに、また扉がある。
【キャロット】 これが5枚あるの? とりあえず、開けるぞ。
【GM】 開いた。同じくそのまま通路が続いてて、すぐ向こうに、また扉がある。
【キャロット】 じゃあ、4枚目までは普通に開ける(笑)。
【GM】 キミの読みどおり、扉は5枚あった。キミたちは、4枚の扉を抜けて、5枚目の扉の前にいます。
【キャロット】 この扉がやばいんやろ。鏡をかざして行け、ってことかな。メドゥーサがいんのかな。
 鏡を構えて扉を開ける。
【GM】 ノブを回すと、鍵穴から毒ガスがぶしゅ〜っと噴き出してきた。全員の耐久度に1Dのダメージが行くので、各自でダメージを決めてください。
【キャロット】 あー、そういうことやったんか。(ころっ)4点。
【プレセア】 (ころっ)3点。
【ファベル】 イヤやな。(ころっ)うわ、6やって! やらし〜。残りの耐久度が4点。
 全快するまでポーション飲みまくる。もし足りんかったら、誰か分けて。(ころっ)(ころっ)2本ですんだ。
【プレセア】 プレセアも飲んどこう。(ころっ)んー、微妙な回復。全快まで2点足りへん……まあ、いいか。
【キャロット】 ウサギも飲んどこー。(ころっ)全快。

 冒険者たちは毒の扉の先へ進み、やがて、通路の突き当たりに来た。
 その壁には、「虚像を見て戦う者は、死をまぬがれるだろう」と書かれた石版が、はめ込まれてあった。

【キャロット】 なんか隠されてるかな〜。(ころっ)3レベルで。
【GM】 はいはい、石版がはまってる壁が、隠し扉になってたよ。キャロットが触れると、壁が上にスライドして開いた。
 その向こうは、すごく広い部屋(N)やね。
 部屋の中央には、2体の石像が立ってます。地下1階Aパートの部屋(F)でやっつけた、リビングスタチューにそっくり。
【キャロット】 メドゥーサはいる?
【GM】 リビングスタチューにもたれて眠る、ひとりの人物がいるよ。女性っぽい感じやね。
 その髪は無数のヘビ。1匹のヘビがキミたちに気づいて、鳴き声をあげた。女は目を覚まし、ゆっくりと顔をあげる……見てるひとはいる?
【キャロット】 いや、見ない(笑)。鏡で見る。
【ファベル】 サングラスかけたらええんちゃうん。視線、合わへんように。
【キャロット】 3Dの絵を見るときみたいな感じの目で行くとか。
【GM】 いや、その顔を直接目にしたら石化するんで、相手の視線は関係ないよ(笑)。
【プレセア】 声かけてみ。
【キャロット】 「メドゥーサですか?」
【GM】 「はい、そうですよ」ちなみに、正確には『ゴーゴン』という名称のモンスターね。
「そういうわけで、あなたたちを殺しますね」と、ゴーゴン。
【プレセア】 「それは困る。『天の心』が欲しいねんけど」

ゴーゴンとの戦いの事

【GM】 「だったら、わたしが敵だ。最初の一撃の機会は与えないけど、とりあえず、ひとと話しをするときは、相手の目を見てください」
【キャロット】 「イヤです。あんたはひとじゃないねんもん」
【プレセア】 ちなみに、ゴーゴンに鏡を見せたらどうなる?
【GM】 別に石化はしない。ただ、自分の醜さを再認識させられるので、キレるらしい。
【ファベル】 それはまずい。とりあえず、鏡を見ながら戦う。
【GM】 OK。片手に鏡を持ちながら戦うなら、両手用武器の使用や、片手用武器と盾の併用は不可能やからね。
【プレセア】 自慢の両手用ブロード・ソードが使えないか。
【ファベル】 私のは片手半ブロード・ソードやから、いけるけど。
【GM】 ゴーゴンを直に見るなら、もちろん、両手用の武器は使えるよ?
【プレセア】 速攻で石になるわ。
【ファベル】 剣を振り上げたかっこうのまま(笑)。
【GM】 勇ましいやん。アクアマリン家の庭先に飾ってもらい(笑)。
【プレセア】 予備武器のシミターを使うよ。
【キャロット】 俺の盾は鏡やけど。
【GM】 それは盾として使いながら、鏡としても使える。
【キャロット】 OK〜。
【GM】 んじゃ、戦闘を始めます。
 リビングスタチュー2体が前に出て、石の腕でぶん殴り攻撃。後方のゴーゴンは魔法を唱える。〈これでもくらえ!〉がファベルに飛んでくるよ。
【ファベル】 魔法?!
【GM】 ファベルは、その敵の魔法の回避を試みれるよ。耐久度で、術者の経験レベルと同じレベルのセービング・ロールに成功すれば、魔法のダメージは受けない。
【ファベル】 何レベルの成功ならOKなん?
【GM】 このゴーゴンのモンスターレベルは2なので、目標は2レベル。
【ファベル】 2Dで11以上がいるん? 出ぇへんのとちゃうん。魔法のダメージって、どれくらい受けるんやろ。
【GM】 術者の知性度と同じ数がくる。この場合、12点やね。
【ファベル】 12点も?! 死ぬって、それ(笑)。
【GM】 ふっふっふ。能力値表記のモンスターをなめてたらアカンで。
【プレセア】 こういうときこそ、ハイパー・ポイントを使えばええねん。
【ファベル】 んじゃ、ハイパー・ポントを使う。(ころっ)おおー、5レベル成功!
【GM】 なら、ファベルは敵の魔法を回避したので、ノーダメージ。今回、モンスター側は〈これでもくらえ!〉のダメージを、ヒットに加えることはできない。
 では、そちらの戦闘に参加するひとは、ヒットを出してください。
【キャロット】 (ころっ)14。
【ファベル】 (ころっ)24。
【プレセア】 (ころっ)27。
【GM】 (ぽちっ)そうすると、そちらはそれぞれ3点のダメージを受ける。
【プレセア】 なに〜?

 これまでたやすくモンスターどもを屠ってきた冒険者たちも、さすがにボス戦ともなると、苦戦を強いられた。
 圧倒的な破壊力を誇ってきたプレセアの両手用ブロード・ソードが使えないことも大きいが、ゴーゴンが放つ魔法がうるさくてかなわない。

【GM】 今回の〈これでもくらえ!〉の目標のウサギさん、魔法を回避してください。
【キャロット】 技能に[魔法抵抗]ってのを1レベル持ってるねんけど、これ、何?
【GM】 かけられた魔法を回避するとき、セービング・ロールの目標レベルを、技能レベル分だけ下げられるスキル。だから、キミのセービング・ロールの目標値は1レベルになる。
【キャロット】 OK〜。
【GM】 ただし、基準値になる耐久度は現在の値を使うから、キミは7点+2Dで1レベル成功せなアカンわけやね。出目が8以上必要。
【キャロット】 そうなんや。じゃあ、ハイパー・ポイントを使う。(ころっ)小さい目やったけど、ゾロ目出まくりで成功。わーい♪
【GM】 ゴーゴンは、ちょっと傷ついてる……。

 それでも、プレセアの武器が貧弱なぶん、リビングスタチューたちは受けるダメージが少なくてすむ。
 ……と、たかをくくっていたら、第4戦闘ターンに冒険者たちが大ヒットを放ち、リビングスタチューたちは、一気にボロボロにされてしまった。
 次の第5戦闘ターン。
 怒りに燃えるゴーゴンの〈これでもくらえ!〉が、身長194センチメートルのウサギ男を再び襲う――。

【キャロット】 (ころっ)あっ、回避できないよ。
【GM】 んじゃ、耐久度に12点のダメージね。
【キャロット】 あ、じゃあ、死んだ。
【ファベル】 え〜?!
【GM】 キャロットは倒れた。幸運度で1レベルのセービング・ロールをしてみて。成功したら、かろうじて生きてる。失敗したら、仏になる。
【キャロット】 (ころっ)成功。
【GM】 では、ウサギさんは死んではいない。でも、ポーションで回復してもらうか、1時間経つまでは、倒れたまま行動不能。
【プレセア】 ひとり減ったら、こっちのヒット数にかなり影響があるで。
【GM】 ひとりあたりのダメージ配分もでかくなるしね〜(笑)。
【ファベル】 めっちゃ、やばいやん。芋づる式に死んでいくと思うねんけど。

 第6戦闘ターン。
 攻撃ヒットに6のゾロ目があったプレセアは、バーサークすることを選択した。
 ボロボロになってるリビングスタチューには、たまらない。おまけに、ゴーゴンも体力を使い過ぎて、魔法が尽きてしまっている。
 そして第7戦闘ターンで、2体のリビングスタチューは破壊された。残るは肩で息をするゴーゴンのみ。

【GM】 第8戦闘ターンね。
【ファベル】 フクロや、このアマ。
【キャロット】 やっちゃえ、やっちゃえ。
【GM】 いくかね。メンチ切るかね?
【ファベル】 切る感じで、鏡を見ながら攻撃。(ころっ)あ、ゾロ目出た。じゃあ、ハイパー・バーサークします。鼻血出るで。(ころっ)全部で23点。
【プレセア】 (ころっ)おっ、また6でゾロ目が出てる。44点。
【ファベル】 なに、それぇ!?
【GM】 (ころっ)はい、ゴーゴンは死んだよ。モンスターは全滅しました。
【ファベル】 ムダにバーサークしてもた。
【GM】 ところで、そのバーサークは誰が沈静化させるの?
【プレセア】 [慰撫]できる奴が倒れてる。
【キャロット】 1時間経ったら、起きるらしいけど。
【プレセア】 バーサーカーの体力度が5点以下になったら、自動的に沈静化するらしいから、それを待つしかない。
【GM】 バーサーカーは1戦闘ターンに2点、ハイパー・バーサーカーは1戦闘ターンに3点、体力を消費していくから、両者とも鎮静まであと3戦闘ターンかかる。
【ファベル】 その間、バーサークしたまま?
【GM】 そういうことやね。暴れまくるというとこで、幸運度で1レベルのセービング・ロールに失敗したら、仲間を攻撃する(笑)。
【ファベル】 こんなんと殴り合うの、イヤ〜! (ころっ)成功。
【プレセア】 (ころっ)成功。
【GM】 じゃあ、キミたちはその辺の柱とかを殴ってるよ。
【キャロット】 チョビ、逃げ回りや。
【GM】 キャンキャン鳴いてるね。必死でウサギを起こそうとしてる。
【キャロット】 ムリ。起きない。そのうち、チョビが恐怖でキレるわ。
「血祭りじゃあ〜。ワシも混ぜろや〜」キラ―ン(笑)。

 そうして3戦闘ターンが経って、プレセアとファベルのバーサークは沈静し、キャロットはポーションで回復させられ、意識を取り戻した。
 キャロットが部屋(N)を捜索し、ふたつの隠し扉を発見した。
 冒険者たちは、隠し部屋(P)の扉の前に来た。

【GM】 石の扉で、今は閉ざされてます。そしてその扉には、南米ふうの仮面のようなデザインのレリーフがはめ込まれてる。
【キャロット】 ここで名前を言うとか。
【GM】 そうやね。レリーフの目が赤く光り、「汝の名を告げよ」と言ってるし。
【キャロット】 プレセア、今度こそ!(笑)
【プレセア】 「“月へ行く者”」と答えるよ。
【キャロット】 「ファイナルアンサー?」(笑)
【プレセア】 「ファイナルアンサー」(笑)
【GM】 「…………正解!」ってことで、扉が上にスライドして開く。あ、レリーフが天井につっかえて、半分しか開かんかった。
【プレセア】 ムリやり開けるよ(笑)。
【GM】 んじゃ、レリーフがはがれて落ちてきて、扉は完全に開いた。
【ファベル】 レリーフ回収。持って帰り。
【プレセア】 キャロットの荷物にしのばせとく。
【キャロット】 「いや〜ん」って思っとく。ティガーにあげよう。「おめん(生きてる)みのさん」って書いとこっと。
【GM】 マジでアイテム欄に書いてるし(笑)。重量点は5ね。
【ファベル】 部屋(P)の中はどんな感じ?

庵に供えるオムレツの事

【GM】 小さい部屋やね。宝箱がひとつあります。
【キャロット】 開けたら?
【GM】 中には、拳大の六角形の宝石がひとつ入ってる。青透明の石やね。
【キャロット】 たぶん、これが『天の心』か。

 部屋(O)の床には、魔法陣が描かれていた。
 冒険者たちがそれに乗ると、部屋(E)の魔法陣にテレポートした。一方通行の移動装置だったらしい。
 地上に戻るべく、ダンジョンの出口へ向かう冒険者たち。
 すると、部屋(A)で、最初に会った羽猫が待っていた。

【キャロット】 猫に「これ?」って、青い石を見せる。
【GM】 「そう、それが『天の心』です。おめでとう。お疲れさま」と、ホバリングしながら羽猫は応えた。
【プレセア】 残すは『天の衣』やな。
【キャロット】 それは、ティガーが取りに行くんやったっけ?
【GM】 ん? たしか、オレンブルクで冒険者を雇ってたやん。クエストの張り紙を見た前髪王子が、兆戦してるはず。
【ファベル】 えーッ!?
【キャロット】 あいつが行ってんの?!
【GM】 猫の前とかで、前髪をバサーっとはねあげてるよ、きっと。
「さあ、ボクの前の扉よ。開いてごらんよ」ばさーって。
【キャロット】 ムリだ。絶対、ムリだ!(笑)
【GM】 「五色の玉は、船の番人への贈り物」と、羽猫は歌うように言う。
「青の玉は、スズメバチの紋章浮かぶ谷の狭間に。
 緑の玉は、もっとも大きな湖に浮かぶ島に。
 黄色の玉は、大陸でいちばん遅い朝の廃墟に眠る。
 橙の玉は、風に舞う女神たちの長姉が持ち。
 赤の玉は、オムレツの仙人が守る」
【ファベル】 オムレツの仙人??
【プレセア】 そんなんおるんや(笑)。
【GM】 「ええ。困ったときは、塩の湖の南の庵に住まう彼を訪ねるといいでしょう」
 それだけ言うと、羽猫の姿は、ふっと消えてしまった。
 一瞬の静寂の後、不吉な地鳴りが響きはじめ、天井から細かい土埃がぱらぱらと降ってきはじめた。
【キャロット】 壊れよん?
【GM】 うん、壊れよるねぇ。まあ、出口はすぐそこなんやけど。
【ファベル】 脱出しよか。
【キャロット】 ここの猫は助けられへんねんな?
【GM】 消えてしまったしね。
【キャロット】 よっしゃ、『天の心』を持って南へ行こう。ティガーに渡しに行こう。
【GM】 OK。キミたちは、来た道を辿ってバウツェンに戻り、そこから、待ち合わせ場所のミドル地方のボアに向かうことになるね。

 プレセアたちは、9月12日にバウツェンへ帰還した。

【GM】 経験レベルが上がったのは、ウサギだけやね。キミは、新たな言語を覚えるチャンスがあるよ。ダイスを振ってみ。
【キャロット】 (ころっ)
【GM】 ウサギは、カエル語とドワーフ語を覚えました。
 それから、キャロットは呪術師やから、呪術師ギルドで2レベルの魔法を買うことができるよ。というか、買わないと新たな魔法は覚えられない。
【キャロット】 金がないから、1個ぐらいしか買えないよ。何にしよっかな……戦闘系の魔法ないで、こいつ。
【プレセア】 そういう系統は、魔術師の魔法やから。
【キャロット】 じゃあ、杖をヘビに買える魔法にしようっと。〈蛇作り〉を覚えた。
【ファベル】 呪術師って、アニマル・サーカス系しかないんか。役に立たね〜。
【GM】 いちおう、耐久度を回復させる魔法とかもあるけど……。
【キャロット】 そんなん、あんまり興味ないねん。動物王国作るねん。自分もウサギやし。
【GM】 で、キミたちは、ティガーたちとの待ち合わせ場所の、ボアへ向かうわけやね。
【キャロット】 そう、南へ行く。
【GM】 ところが、5月20日にバウツェンを発ったティガーたちがボアに到着したのは、9月8日頃。途中寄り道したのを除いても、馬で3ヶ月ちょっとの道のりってことやね。
 つまり、キミたちがボアに到着するのは、12月末ってことになる。そして、グラランボンバーの暴走は、11月15日。
【キャロット】 じゃあ、ミッション失敗で。
【ファベル】 ゲームオーバー(笑)。
【キャロット】 誰か、テレポを使えるひとはいないかな。
【GM】 いるかも知れないけど、キミたちでは会えないかもね。
【ファベル】 馬より速い足を調達せな。
【GM】 そうやって困ってると、キミたちの脳裏に、『天の心』の洞窟の羽ネコの言葉がよみがえった。
「困ったときは、塩の湖の南の庵に住まう、オムレツ仙人を訪ねるんですよ」――と。
【キャロット】 マジで?! 行くの?
【ファベル】 行ってみよう。
【キャロット】 行ってみるか。……でも、「困ったときは、このオムレツを食え」で終わったら、イヤやな。
【プレセア】 まあ、溺れる者は藁を掴むって言うし。藁にすがってみよう。
【キャロット】 めっちゃ細い藁や(笑)。
【GM】 ちなみに、オムレツ仙人に会いたくば、彼の庵の玄関の前にできたてのオムレツを置き、3度柏手(かしわで)を打たなければならない。
【ファベル】 オムレツを持って行かなアカンの。
【プレセア】 どこかで調達せんと。
【キャロット】 『できたてのオムレツ』とか言うたな。卵と肉とタマネギだけ持って行って、向こうで作ればええんちゃうん。
【GM】 料理の判定などは、器用度を用いたセービング・ロールになるね。
【キャロット】 ウサギは器用度15。
【ファベル】 私は12。
【プレセア】 18。プレセアがいちばん強いみたい。
【ファベル】 じゃあ、プレセアに任せよう。キミ、女子やし。
【プレセア】 それじゃ、材料を買って出かけようかい。
【GM】 “塩の湖”までは、2日の旅。道が敷かれ、宿場が設置されており、大きな岩みたいな塩の塊を積んで運ぶ馬車の列と、何度もすれ違うよ。
 やがて、“塩の湖”が見えてきた。湖と呼ばれてるけど、水はとっくの昔に干上がっていて、雪原のような真っ白い世界が広がってるね。湖のそばには、主に塩を切り出す労働者が暮す町があって、そこが街道の終点になってます。
 ちなみに、塩を切り出す労働者は“塩ギルド”に所属してなければならず、勝手に塩を切り出すことは禁止されてる。
【プレセア】 なるほど。
【GM】 関係ないけど、この辺りは水が貴重そう。川は干上がってるし、井戸を掘っても出てくるのは塩水やし。水を売るのも、いい商いになりそうやね。
【プレセア】 ほほう。
【GM】 今のキミたちにはそんなこと関係ないので、スルっと町をそれて、湖の南にあるというオムレツ仙人の庵を探します。南へ向かえば向かうほど、人外の魔境になっていくね。
 バウツェンを発って3日後、キミたちは、シダ植物が生い茂る鬱蒼とした森に入ったよ。変に尾の長い鳥とかが飛んでたりする。
【キャロット】 恐竜とかいそう。
【ファベル】 めちゃめちゃ密林やん(笑)。こんなとこにいるのかな?
【GM】 森の開けたところで、それらしい古びた建物を見つけたよ。
 木製で合掌造りで高床式の、粗末な小屋。壁や柱に地面から伸びた蔓が絡まってたり、土台がちょっと苔むしてたりしてる。床が高いので、玄関には短い階段が設けられてるね。
 薄暗い森の中で、そこだけ日の光が差し込み、すごく幻想的で厳かな雰囲気に見える。
【ファベル】 なんか、文化遺産かも(笑)。
【キャロット】 触ったら怒られるかも。
【プレセア】 じゃあ、さっそく料理の準備をしませうか。
【ファベル】 うん、頼むわ。
【キャロット】 応援してるわ。
【プレセア】 手伝え。
【GM】 では、プレセアは器用度によるセービング・ロールを行って、成功レベルを教えてください。
【ファベル】 いちおう、私らも手伝うか。
【GM】 なら、キミらの成功レベルを合わせたレベルを教えて。
【キャロット】 合わせられるんか。ほんなら、ウサギも手伝う。
【プレセア】 (ころっ)全部で10レベル成功。
 じゃあ、このオムレツをお供えして、柏手(かしわで)を打つとしませうか。
【ファベル】 横一列に並んで。
【GM】 キミたちが3度柏手(かしわで)を打つと、観音開きの玄関扉が、「ギ〜っ」と開いた。

÷÷ つづく ÷÷
©2007 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2007 Jun Hayashida
Map ©2007 Moyo
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