≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第15話§

チロカニントの町

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 下水道の捜索の事 ▽ 謎の生命体の事 ▽ ファンリーを探す事

下水道の捜索の事

【GM】 ファンリーが、前髪王子やロートシルト、元衛兵隊長とともに行方知れずになったことを聞いたティガーは、仲間にそのことを知らせるために、魔術師ギルドにやって来た。
【メイユール】 わたしは『青い波の美し亭』で寝てたところを起こされた(笑)。
【ティガー】 みんなに、「ファンリーがこの辺の下水道に行って、行方不明になってん」って教える。
【メイユール】 それにしても、不思議なパーティ編成や。
【ティガー】 なんで、隊長が混じってるんやろ?(笑)
【GM】 そりゃ、衛兵をクビになったし、働かんと食うていかれへんし。いちおう、戦う訓練は受けてるから、たぶん、前髪あたりに誘われたんやろね。
【メイユール】 ロートシルトなら、女を誘いそうやしな。
【シルヴィア】 ロートシルトの意向で、ファンリーが誘われたとか(笑)。
【ティガー】 くっそー、あいつめ〜。
【サテラ】 で、その下水道というのは、どこに……?
【ティガー】 この辺の近く! ──やと思う。
【シルヴィア】 冒険者の店とかで、情報を仕入れてみよう。
【ティガー】 「1週間ぐらい前に、『下水道から地下遺跡に行く』とか言うてた冒険者はいなかったか」って、酒場の冒険者とかに聞いてみる。
【GM】 「あー、いたぜ。10日ぐらい前かな。『大商人から依頼された、けっこうな金になる』って、はしゃいでた奴らがいたな」
【ティガー】 前髪の長い奴? それとも、エロい奴?
【GM】 いや、違うみたい。別の冒険者が、「ジョニーたちだろ? あれから見てないし、くたばったんとちがうか?」と、横から口をはさんでる。
【シルヴィア】 ファンリーたちは、そのジョニーたちを捜しに行ったんやな。
【ティガー】 ジョニーに依頼した大商人に、雇われたんかな。
【シルヴィア】 捜索隊の捜索の仕事は来てないか、酒場のマスターに聞いてみる。
【GM】 「いや、来てないな。もともと、冒険者の店を通した仕事じゃないんだよ」と、オヤジは答える。
【サテラ】 え?
【GM】 つまり、その大商人は、ジョニーとか前髪とかに、直接依頼したってことね。
「そのくせ、ちょっと前まで、『宝を持ち逃げしたんじゃないか』と、しつこくオレに言って来て困ったよ。最近それもないし、もう、あきらめたんじゃないか?」
【ティガー】 その大商人って、どこにおるの? なんて名前の奴?
【GM】 「フェス・パーマーだったかな。うちに来てたのは、お遣いの者らしいが。どこにいるかは知らんよ。流れの商人じゃないか?」と、オヤジは答える。
 冒険者の中にも、フェス・パーマーなる人物の居場所を知ってるひとはいないみたい。
【シルヴィア】 困ったな。
【ティガー】 じゃあ、「ジョニーが行くって言ってた場所、誰かわかる?」と聞いてみる。
【GM】 (ころっ)冒険者のひとりが、酔ったジョニーから聞いたらしい。そのひとは、ちょうどゴブリン退治に出かけるところだったので、あまり熱心に聞かなかったそうだけど、運良く覚えていた。
 ティガーは、その場所を教えてもらったよ。
【ティガー】 ちなみに、ジョニーのパーティって、何人やったん?
【GM】 4人。
【ティガー】 OK〜。よし、そこに行ってみよう。

 冒険者たちは、オレンブルク南区の下水道に入った。

【GM】 教えてもらった場所の壁は、一部が崩れて、大きな口を開いている。壁の向こうは、垂直な穴になってるね。
 崩れた箇所の対面の壁には、石材の隙間にくさびがいくつか、しっかりと打ち込まれていて、ロープが結びつけられている。ロープは、穴の中に下ろされている。
【ティガー】 じゃあ、鎧を脱いで降りる。あ、先に鎧をうちのロープで降ろしてからね。
【GM】 ティガーはシーフ技能があるから、1ゾロ以外で成功やね。
【メイユール】 わたしらは落っこちるかも。
【シルヴィア】 僕らは大丈夫やろ。サテラは冒険者レベルが低いから、ちょっと気ィつけんとアカンかも。
 落ちたら、〈フォーリング・コントロール〉を使えばええな。

 全員、無事に下水道の地下に降り立つことができた。

【ティガー】 その辺に、倒れてるひととかいない?
【GM】 いないよ。
 どうやらそこは、すでに使われていない下水道のようやね。オレンブルクは、古代の都市の上に築かれた街なので、はるか昔のものなんでしょう。
 とうぜん、上と違って水は流れてない。天井や壁から滲み出てきた水が、水たまりを作ってるところはあるけど。
【シルヴィア】 ただの地下道みたいになってるんやね。
【GM】 そう。幅は4メートルほどあるけど、かなり脆くなってるみたいやね。ときどき、天井から小石が落ちてきたりするし、床には石材の破片が転がってたりする。
【シルヴィア】 〈ファイア・ボール〉とか使うと、やばいかもな。

 冒険者たちは、古代の下水道を進む。
 やがて、壁の一部が壊れ、大きな穴が開いている場所を見つけた。

【GM】 上の下水道の壁にあったのと、同じような穴やね。人ひとりが入れそうなぐらいの大きさです。
【ティガー】 中を覗いてみる。
【GM】 穴は少し下りながら、奥へ続いている。人工的なものではなくて、何かの拍子に開いてしまった穴、って感じやね。
【ティガー】 とりあえずここは置いといて、先にこの階の行ってないとこを全部行って、マップを完成させちゃおうよ。

 そこで、冒険者たちはそうした。
 古代の下水道は非常に入り組んだ構造で、まるで迷路だった。
 行き止まりの場所には、上へ続くはしごが設置されていたが、天井にある蓋(マンホールのようなもの)を開けることはできなかった。
 天井や壁が崩れた箇所から流れ込んだ土砂や瓦礫のせいで、先へ進めない場所もあった。
 行く手を阻むものは、それだけでない。
 それは、巨大なゴキブリであったり──

【GM】 数は4匹。(ころっ)そのうち2匹は、驚いてカサカサと逃げ去ったけど、あとの2匹は、何をとち狂ったか、キミたちのほうに「ブ〜ン」と飛んでくる。
【ティガー】 斬り落とす、斬り落とす。触られる前に、はたき落とす(笑)。

 ──あるいは、蝙蝠の翼のような膜状の襟巻きがある、巨大なネズミ型の生き物などであったりした。

【GM】 ネズミの数は、3体ね。
【ティガー】 襟巻きのあるネズミ?? トノサマネズミ? めっちゃ、かわいいな。
【GM】 霊食(たまぐ)いネズミが嫉妬してるね。「襟巻きがなんだー!」って。
【メイユール】 あんなん欲しいんか(笑)。「あんた、精霊やん」ってなだめとこ。
【サテラ】 セージ技能で、そいつらを調べる。(ころっ)
【GM】 どうやら、名もなき異世界の動物のようやね。古代の魔術師が召喚して、そのまま放置されたものでしょう。一般の、駆け出しの冒険者には、恐ろしい相手かも。
【メイユール】 トノサマやもんな。
【GM】 トノサマネズミたちは、襟巻きを広げて「シャーっ」と、キミたちを威嚇してる。「控えおろう」
【ティガー】 「王子やのに、そっちこそ控えおろう」
【GM】 交渉は決裂やね。なら、戦闘になるよ。
【サテラ】 交渉……?

 こうした困難を乗り越え、冒険者たちはマップを完成させた。

【ティガー】 これで、この階の行けるところは、全部行ったな。冒険者の死体とかは、なかったわけね。
【GM】 うん、見当たらなかった。
【ティガー】 ゴキブリが食ったとか、そんなんやったら、知らんけど(笑)。
【メイユール】 じゃあ、さっきの壁の穴のところに戻ろう。
【GM】 戻ってきたよ。
【ティガー】 穴にニュルっと入る。
【GM】 3メートルほど行ったところで、ティガーの進む穴は、人工的な垂直の大穴に繋がった。その縁に、ロープを結びつけたくさびが打ち込まれている。ロープは、大穴の中にロープが垂らされてるよ。
【ティガー】 ああ、みんな、ここに来たんや。トノサマネズミには、やられんかったんや。
【GM】 ちなみに、その大穴は上にも下にも続いている。

 冒険者たちは、ロープをつたって穴の底へ降り立った。

【GM】 その床には、直径4メートルほどの大きな金属の円盤がある。上のほうから落ちてきた感じやね。石材の破片や土砂などに埋もれて、長い年月が過ぎた感じ。
 キミたちは、その上に立ってます。
 壁には、通路への出口がひとつある。扉はない。
【ティガー】 その円盤、最近、俺ら以外に誰か乗った跡はある?
【GM】 じゃあ、シーフ技能で調べてみ──それは、ちょっとわからない。自分たちの足跡か、他の誰かの足跡か、ティガーには見分けがつかなかった。

謎の生命体の事

【ティガー】 ヒデヨシの足跡だけは、すぐにわかるねんけどな。
 じゃあ、通路へ出ていっちゃおか。
【GM】 通路はまっすぐ続いていて、ちょっと進むと、広い空間に繋がる場所に着いた。その前に、立て札があるよ。下位古代語の文字で、何か書かれてる。
【ティガー】 なんて書いとん?
【GM】 ティガー、サテラ、シルヴィアの3人は、読むことができるね。
『この先は、チロカニントの町です。命が惜しかったら帰ってください。先日も、4人が死にました』って、書かれてる。
【サテラ】 『死んだ』?
【メイユール】 その立て札って、新しい?
【GM】 かなり新しい。
【ティガー】 とりあえず、入ってみる。
【GM】 入った先は、自然の岩肌むきだしのままの広い空間。単に大きくくり抜いただけ、っていう造りやね。
【ティガー】 その空間の中に、死体とかはある?
【GM】 見当たらない。見えるのは、正面奥のほうにある、鉄製の大きな両開きの扉。扉は閉められた状態です。
 そして、その扉の前に立っている、身の丈3メートルほどの2体の人型の像。
【ティガー】 どんな像?
【GM】 肉でできてるみたい。正体を知りたければ、セージ技能でチェックをどうぞ──サテラが見抜いた。
 それは、フレッシュ・ゴーレム。屍肉で作られたゴーレムやね。
【シルヴィア】 行方不明者は、どこに行ったんやろ? ジョニーたちのパーティは、ここで全滅したっぽいけど。
【メイユール】 わからへんやん。ファンリーたちのほうかも知れん。
【シルヴィア】 それは考えたくないな(笑)。ファンリーたちは、『帰れ』と言われて帰ったのかも。素直な娘やから。
【メイユール】 入れ違いで、家にいたりして?(笑)
【シルヴィア】 ファンリーたちのパーティって、下位古代語の文字を読めたんやろか。
【ティガー】 ファンリーは読めないよ。
【GM】 メイユールは知ってるけど、ロートシルトも読めない。
【ティガー】 隊長も読まれへんと思うで。
【GM】 わからんで〜。意外と博学かも。
【ティガー】 ムリ。それはない。ムリ。よくわからんのは、前髪。
【GM】 ピエール・パチモーンは、じつはセージ技能を1レベル持ってる。
【シルヴィア】 おお、優秀やな。
【GM】 ただ、ちょっと知力が足りんから、セージ技能1レベルで共通語の読解を習得してるんやけど。
【ティガー】 なんじゃ、それ(笑)。
【メイユール】 じゃあ、誰も読まれへんのや。わけわからずに、突撃してしまったかも。
【ティガー】 とりあえず、奥にある扉を開けようとしてみる。
【GM】 ティガーが扉に近づこうとすると、フレッシュ・ゴーレムたちが動き始めた。
 2体のゴーレムは、ティガーに襲いかかる。逃げ出さないのなら、戦闘になるよ。
【シルヴィア】 ティガーの剣に、〈ファイア・ウェポン〉をかける予定。
【サテラ】 ティガーの筋力を、〈フィジカル・エンチャント〉で強化します。
【GM】 それがかかると、ティガーの筋力は一時的に26になるね。
【ティガー】 人間を越える! やったー。じゃあ、ふたりの魔法を待つから、行動をラウンドの最後にする。
【GM】 では、サテラから行動をどうぞ。
【サテラ】 〈フィジカル・エンチャント〉、(ころっ)成功。
【GM】 ティガーの筋肉が、はちきれんばかりになった。都合により、鎧のサイズは考慮しません。
【ティガー】 むきむき〜。ジーネや〜。
【GM】 続いて、メイユールの行動。
【メイユール】 〈ウィル・オー・ウィスプ〉を、ゴーレムAにぶつける。(ころっ)抵抗された、ダメージは10点。
【シルヴィア】 〈ファイア・ウェポン〉、(ころっ)無駄にええ目が出た。
【GM】 2体のゴーレムは、ティガーに攻撃──はずれ、当たり。ダメージ4点。
【ティガー】 [なぎ払い]で、2体に攻撃。(ころっ)当たり、当たり。ゴーレムAに18点、ゴーレムBに19点。
【GM】 じゃ、第2ラウンド。

 駆け出し冒険者には恐ろしいフレッシュ・ゴーレムも、ティガーたちの前ではザコ同然だった。
 豊富な生命点をあっという間に削られて、3ラウンドで壊された。

【GM】 そのとき、奥の鉄の扉がそっと開けられた。しかし、「ひーッ」という悲鳴が聞こえて、すぐに扉はガチャンと閉められた。
 ドシドシと足音が遠ざかる。
【ティガー】 なんやねん!(笑) 扉をガーンと開けて、追いかける。
【シルヴィア】 隊長か?
【GM】 違うよ。てか、隊長に対して、どんなイメージを持っとんねん(笑)。
【ティガー】 どんな奴? 見たことないひと?
【GM】 通路を走り去る後ろ姿は、見覚えがないね。2足歩行ではあるけど、たぶん、人間ではないと思う。身長2メートルぐらいで、ずいぶん猫背な感じ。
 そいつは、すぐに闇の中に消えてしまったんで、詳しく見ることはできなかった。
【ティガー】 奥へ行ってみる。
【GM】 短い通路の先から、ホワホワした淡い光が漏れてる。
 通路を出ると、そこは広い空洞だった。壁や天井の一部が青白く光っていて、夜明け直前のような青い世界になってる。
 空洞の規模は、ゴーレムたちのところよりも、はるかに広い。町がひとつ入ってしまいそうな規模やね。
 というより、町があります。
【サテラ】 は?
【GM】 空洞の壁付近には、丘陵地帯の住宅地みたいに、段々にして建造された家が密集している。集合住宅のような、個性のかけらもないデザインやね。
 その家々は、石材や木材で建てられたのではなく、この辺の地層を掘り抜いて作った感じがする。
 空洞の中心部にも家が密集して作られていて、こんもりとした丘みたいになっている。
【ティガー】 さっきの奴の町か?
【GM】 どこからか、「バタン!」と扉が閉められ、鍵がかけられる音がした。
【シルヴィア】 逃げ足が速いな(笑)。
【GM】 ちなみに、空洞の天井を支えるような形の柱が、あちこちにある。家と同じように、柱の形にして彫り残したって感じ。
 その柱とか家とか空洞の壁をよく見てみると、地層の文様がそのまま残っているのがわかる。もしかすると、魔法で岩や鉄のように強化してるのかも知れない。
【サテラ】 すごいな。
【ティガー】 いちばん近くの家に行ってみる。とりあえず、どんな奴が住んでるのか、見てみたい。
【GM】 では、近くの家にやって来た。扉には、鍵がかけられている。
【ティガー】 [鍵開け]、(ころっ)成功。
【GM】 中の住人は、「ひゃー!」とパニックになってるよ。その数、大小合わせて3体。部屋の隅に身を寄せ合って、ガタガタ震えてる。
【ティガー】 どんな奴? どんな顔してる?
【GM】 屈強な人間のような体躯をしてる。ただし、頭がなくて、人間でいう胸にあたるところに、顔がある。
【メイユール】 UMAや。
【GM】 タラコ唇で、眉を寄せて困ったような表情をしてるけど、それが彼らの素の顔つきなのかも知れない。今は、おびえきってるので、よりいっそう困った表情になってます。
 ま、そうとう難しいけど、セージ技能で正体を見抜くチャンスはあるよ。
【サテラ】 (ころっ)成功。
【GM】 あら、すごいな。
【メイユール】 なんで、そんなん知ってるの、サテラ(笑)。
【ティガー】 どこで見たん(笑)。
【GM】 そいつは、チロカニントという魔法生物で、記録にもほとんど残ってない、忘れられた生き物です。
 手先が器用で、力も人間より強いけど、臆病な性格で争いは好まない。もともとは兵器として開発されたらしいけど、性質がそんなんだから、欠陥品とされてます。
 たぶん、ここにいる奴らは、失敗作として捨てられたものの末裔なんでしょう。
【メイユール】 手を振ってみる。
【GM】 チロカニントは、ビクっとした。
【シルヴィア】 言葉は通じるの?
【GM】 何語でしゃべるんかな? それによる。
【ティガー】 立て札には、下位古代語が書かれてあったよね。
【シルヴィア】 じゃあ、下位古代語でしゃべる。「手荒なことはしないから、おちついてくれ」と言う。
「最近、ここに人間が来なかった? 僕らの前に」
【GM】 「死体なら、ゴーレムの間に4つあったそうだ」と、3体のうちの1体が答える。
【メイユール】 ん? そんなん、あったっけ。
【シルヴィア】 「その死体は、どこに片づけたん?」
【GM】 「墓地に埋めたらしい。オレは怖くて見てないが」
【シルヴィア】 「それは、いつぐらい?」
【GM】 10日ほど前。
【ティガー】 じゃあ、ジョニーのパーティのほうやな。
【シルヴィア】 「それからは、誰も来てないの?」
【GM】 「生きてる人間は、あんたらが初めてだ。オレも生まれて初めて見た」
【メイユール】 やっぱり、ファンリーたちは途中で帰ったんや。
【シルヴィア】 「フレッシュ・ゴーレムは、ちょっとつらいな」って?(笑) で、依頼主に任務失敗を言いだしにくくて、どこかに隠れてるのかも。

ファンリーを探す事

【ティガー】 前髪とか隊長はともかく、ファンリーは隠れたりしないと思うけど。
【サテラ】 どこかで、道に迷ってるだけかも?
【ティガー】 とりあえず、その墓地に行ってみたい。
【GM】 「墓地は奥のほうにあるから」と、チロカニントは教えてくれた。
【シルヴィア】 「案内して」
【GM】 「えーッ!?」
【ティガー】 「怖ない、怖ない」
【シルヴィア】 「悪いようにはせんから」
【GM】 じゃあ、チロカニントは脅されたと勘違いして、震えながらキミたちを先導する。
 家に残ったちょっと小柄なチロカニントと、もっと小柄なチロカニントが、「あなたー!」「お父ちゃーん!」と、泣いている。
【ティガー】 大丈夫やって(笑)。
【シルヴィア】 この町には、この一家しかいないの?
【GM】 いや、道中、周囲の家に気配を感じるよ。たくさんいるみたいやね。家の中に隠れてて、姿は見えないけど。
【メイユール】 遠巻きに覗いてるんやな。
【GM】 では、墓地にやって来た。小さな石の墓標が、ずらりと、整然と並べられている。墓標には、芸術的な模様が細やかに彫り込まれている。
【サテラ】 あー、手先が器用とかいってた。
【ティガー】 彫刻家とか、おる?
【GM】 おるよ。石を削った人形を1000個作る、とか言ってる奴が。1000個作ると、何かいいことが起こりそうな気がしてるらしい。
【ティガー】 気がしてるだけや(笑)。
【GM】 でも、もう936個作ってるんやで? 残り64個。1000個目の彫像には、町に伝わる赤い玉をはめ込むという。
【サテラ】 赤い玉?
【GM】 そう。ビー玉ぐらいの大きさで、よくわからんけど、昔からこの町に伝わっているらしい。で、みんなで記念の祭りとかすんねん。
【ティガー】 1000個目祭り?(笑)
【シルヴィア】 GM、墓標に名前は刻まれてる? 読んでもわからんかな。
【GM】 文字は読めても、見たことのない名前ばかりやからね。
【ティガー】 4人組の人間の墓は、どれ? たぶん、新しめの墓やと思うけど。
【GM】 案内された。墓標には、『拾った人間』と刻まれてる。
【メイユール】 手厚いんだか何だか、よくわからん(笑)。
【シルヴィア】 これ、掘り返すの?
【サテラ】 えー? それは……。
【ティガー】 掘り返すのはイヤだ。GM、この町に偉いひとはいる? 族長とか。
【GM】 いるよ。
【ティガー】 族長に会いたいな。
【GM】 チロカニントは「えー?」って言ってる。
【シルヴィア】 「危害は加えへんから」
【GM】 じゃあ、彼は脅されたと勘違いして、キミたちを族長の家に案内した。別に他の家に比べて立派な家、というわけではない。
 出てきたチロカニントは、年齢を重ねたように見える。
 案内してくれたチロカニントは、キミたちを族長に引き会わせると、すぐに帰ってしまった。
【ティガー】 族長も怯えるの?
【GM】 いや、ちょっと頑張ってる。気ィ張ってるで。さすが族長といったところ。
【シルヴィア】 いちおう、ここに来た経緯を説明するよ。で、「キミら、いつからここに暮らしてるの?」と、聞いてみる。
【GM】 「さあ? わかりませぬ。私ら、生まれたときから、ここにおりますけん」
【メイユール】 なんで、あんなに厳重な守りやったんやろ。
【シルヴィア】 「あのフレッシュ・ゴーレムは、誰が作ったん?」
【GM】 「さあ? 昔からおりましたけん、わかりませぬ」
【シルヴィア】 「あれ、壊しちゃったけど、ゴメンね」って謝っとこ。
【メイユール】 あれは、そのひとらの味方やったん?
【GM】 チロカニントが襲われたことはないそうだけど、よくわからない。彼らは、あまり町から出ようと思わないらしいから。
「外の世界は、きっと恐ろしいですけん。外の世界の生き物に出会ったら、きっと、なぶり殺しにされる」
【ティガー】 それはされると思う(笑)。気持ち悪いから。
【サテラ】 あの立て札を立てたのは、このひとら?
【GM】 そう。ゴーレムが暴れる音がして、様子を見に行ったら人間が4人死んでた、と。
 で、また人間が入って来たりしたらかなわんから、恐ろしい脅し文句で警告しようとしてたんやね。
【メイユール】 あんまり恐ろしくなかったけど。
【シルヴィア】 僕らが入ってきたところ以外に、この町の出入口はないわけ?
【GM】 ない。
【ティガー】 この町に入るためには、あそこだけ?
【GM】 あそこだけ。というか、キミたちが入ってきたところだって、最近できた入口なのかも知れない。
 だって、ゴーレムに殺された4人が現れるまで、外から誰かが来たことはなかったからね。町ができたばかりの時代は、どうかわからんけど。
【ティガー】 このひとらの時代では、死んだ4人が最初?
【GM】 「そう。もしかしたら、上のほうは崩れやすくなってるのかも。早いとこ、帰ったほうがいいんじゃないですか」と、族長は忠告してくれる。これは忠告ね。助言。アドバイス。けっして、「はよ帰れ」と言ってるわけじゃないで。
【ティガー】 怖いから、はよ帰って欲しいんやな(笑)。
【メイユール】 ここにいても、しかたなさそうや。
【ティガー】 ファンリーたち、どこ行ったんやろ?
【メイユール】 現在の下水道のマンホールから出て行って、家に帰ってるんとちゃう。
【ティガー】 それか、古代の下水道の瓦礫に埋もれてるところが、そのときは通じてて、ファンリーたちが通った後に崩れてしまったとか。で、閉じ込められてるねん。
【シルヴィア】 もし、そうやとしても、どこの瓦礫に埋もれてるのかがわからん。
【メイユール】 全部、掘り返してみる?
【ティガー】 う〜ん……。

 冒険者たちはあれこれ考えるが、なかなか結論が出ない。

【GM】 かなり長いこと話し合ってるね。じゃあ、気を張る続けてる族長が、「上に行って、足跡を調べてみてはどうですか? 上に行ってさあ!」と言う。
【シルヴィア】 急かされてるで。
【メイユール】 早く行って欲しいんやな。
【ティガー】 じゃあ、上に行く? 族長がガマンの限界らしいから。俺らが帰った後、ヘタ〜ってなるんやろな(笑)。
【シルヴィア】 じゃあ、僕らと行き違いでファンリーたちが来たら、「ティガーたちが探してた」って、言づけしといてもらおう。
【GM】 「わかりました。ただ、私らのことは、くれぐれも秘密にしといてくださいね」
【ティガー】 「はいはい」って言うとく。
【メイユール】 態度、悪いな〜。
【ティガー】 今はモヒカンにバンダナやから、悪っぽいねん。

 冒険者たちは、古代の下水道に戻ってきた。

【ティガー】 族長は『足跡を調べろ』とか言うてたけど、広いっちゅうねん。あ、そうか。瓦礫の前の足跡だけを調べたら、いいんや。

 ティガーは、瓦礫や土砂で道を塞がれている場所を調べてみた。足跡は、自分たちのものも含めて、たいてい行き止まりの前で引き返していた。(自分たちの道程は見分けやすい。ヒデヨシの足跡を見ればいいから)
 中には、土砂の中から現れている(!)足跡もあって混乱させられたが、それは、そこを通った後に通路が崩れたものとわかった。
 そして、1箇所だけ、瓦礫の向こうに足跡が続き、なおかつ瓦礫の向こうに回り込める道がない場所を見つけた。
 つまり、その足跡をつけた者たちは、今は不通になっているこの場所を通り、戻ることができていないと考えられるのだ。

【ティガー】 シャーマン!
【メイユール】 〈トンネル〉、(ころっ)成功。
【GM】 行く手を阻む瓦礫や土砂は押し退けられ、向こうに行けるようになった。メイユールが開けたトンネルを抜けると、通路に出た。
【ティガー】 足跡はある? [足跡追跡]、(ころっ)成功。
【GM】 あるよ。ニワトリの足跡はない。その出目ならば、通路に残されている足跡は4人分で、そのうちひとりが女性であるとわかる。
【ティガー】 ファンリーか。よし、追いかける!
【GM】 ──ってところで、以下次回。

÷÷ つづく ÷÷
©2006 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2006 Jun Hayashida
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