≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第2話§

エルゴンの悪夢

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ ジーネ、帰郷する事 ▽ 両親との再会の事 ▽ 血塗られた大聖堂の事

ジーネ、帰郷する事

【GM】 ジーネの故郷エルゴン村をめざして旅していたキミたちは、途中、4匹の巨大サソリの襲撃を受けていた行商人ふうのおっちゃんを見つけました。
 そしてそのおっちゃんを助けるべく、巨大サソリたちと戦闘しようとしてるところやったね。
 じゃ、サクっとやっちゃって下さい。
【ティガー】 サソリAに攻撃。(ころっ)当たって、15点。
【ジーネ】 [パリィ(防御姿勢)]。
【メイユール】 サソリAに〈ウィル・オー・ウィスプ〉をぶつける。(ころっ)効いて、ダメージは11点。
【GM】 サソリAの殻はどんどん剥がれてゆく。
【ティガー】 すごいや、タマネギみたい(笑)。

 次のラウンド、ティガーはサソリAを叩き斬った。

【GM】 白い体液がびちゃっと飛び散る。ティガーは返り液を浴びた。
【ティガー】 うわッ、きもっ。
【GM】 巻き添えをくったヒデヨシは、「こけぇ」と怒ってる。
【ティガー】 知るかぁー! どっか行け〜(笑)。

 ジーネが生命力を半分にされたものの、冒険者たちは順調にサソリを蹴散らしてゆく。
 7ラウンド目。とどめを刺したのは、あの人のモーニングスターの一撃──。

【ジーネ】 (ころっ)当たった。しかもまわった。
【ティガー】【メイユール】 潰すで、潰すで(笑)。
【ジーネ】 ダメージは23点。
【GM】 潰れたというより、半径10メートルにわたって飛び散ったな、それは。
 天高く舞い上がった足やらハサミやら尻尾やらが、雨となった体液とともに降ってきます(笑)。
【ティガー】 怖いよ〜。
【メイユール】 あれから潰しかたがパワーアップしたのか……。
【GM】 体液まみれのおっちゃんは、恐怖に身を震わせながら、「あ、あ、ありがとうございましたッ」と、お礼を言う。
【ジーネ】 しかし、護衛も何もつけとらんのか、この馬車は。
【GM】 後方にグラスランナーがふたり倒れてるけどね。
【ティガー】 グラスランナーなんか護衛にすんなよっ。
【GM】 「ボクたちが守ってあげるよ!」とか言って、勝手について来たらしい。
【ティガー】 勝手について来て、勝手に死んだんや(笑)。
【メイユール】 ぜんぜん、護衛じゃないやん。
【ジーネ】 グラスランナーたちは生きてる?
【GM】 いちおうね。泡を吹きながら、ビクビク痙攣してる。
【メイユール】 虫の息やな。
【ジーネ】 じゃあ、〈キュアー・ウーンズ〉をかけよう。(ころっ)1ゾロ。もう1回かけなアカンのか、めんどくさいのぉ──(ころっ)治った。
【GM】 グラスランナーたちは、「ハッスル、ハッスル〜」と起き上がった。
【ティガー】 なんや、こいつら(笑)。
【ジーネ】 毒とかは受けてないのね?
【GM】 受けてないよ。「オレたちをナメるな〜!」と、グラランAは言ってる。
【ティガー】 いや、もうナメてるけど。
【メイユール】 さっきまで倒れてたのは、誰かな?
【GM】 「死んだふり〜」
【ティガー】 なんか、泡を吹いてたで。
【GM】 「泡を吹いた気分〜」
【ティガー】 いや、『気分』とかじゃなくって。
【GM】 「ボクたちはお花畑に行ってたんだよ」と、グラランB。
【ティガー】 それヤバイじゃん(笑)。
【GM】 そんなやりとりをしてると、「いや〜。どうもありがとうございました」と、馬車のおっちゃんが、サソリの体液をタオルで拭いながらお礼を言ってきます。
「私は、バーゼルで商いをしている、ヒビディ・ハミデブといいます」
【メイユール】 バーゼルって?
【GM】 レムリア大陸の南方、サリア地方の南端にある王国の名前です。メイユールの故郷のエストリア王国からは航路が開かれてて、船で行くことができるよ。
【メイユール】 じゃあ、わたしはその地名を知ってていいよね。
「ああ、あそこから来たんか」って思う。
【ジーネ】 この辺りって、こういうふうにモンスターが出るのが多いんでしょうか?
【GM】 「私は安全と聞いて、この道を選んだんですけどね」
 ジーネも、この道が危ないとは聞いたことがないよ。
【メイユール】 おっちゃんは商売をしに来たん?
【GM】 「もちろんですよ。オレンブルクで品をさばこうと思いまして」
【ティガー】 どんな商品?
【GM】 「これです」と取り出したのは、黄色い液体が入った小さなビン。
 ラベルには、グラスランナーが力コブを作ってるシルエットが描かれていて、サリア語で『グラランボンバー』と書かれてます。
【メイユール】 なに、それ。栄養ドリンクみたい(笑)。
【GM】 「“死霊都市”カナンという街で、ホールゲイトという博士が発明したという飲み薬です」
【ティガー】 それを飲んだらどうなるの?
【GM】 器用度、敏捷度、筋力が6点上昇します。その能力値のボーナスが1点上昇する、ってことやね。魔法のポーションです。
【ティガー】 うさんくさ〜(笑)。
【GM】 いや、よく見ると、さっきのグラランたちは妙にマッチョだよ。
【ジーネ】 薬の効果は持続するってことか。
【GM】 「オムスク地方にも、これから続々と入荷してくると思いますよ。私は他の奴らに先んじようと、近道を選んだわけですが──」
【ティガー】 ──そしたらサソリに襲われたのね。
【メイユール】 その薬、値段はいくらするの?
【GM】 「800フィスです」
【メイユール】 高いなぁ。
【GM】 魔法の薬品にしては、格安やけどね。
【ティガー】 どのみち、俺、所持金ないから買えないや。
【ジーネ】 私は買おうと思えば買えるけど……。
【メイユール】 話のネタに、買ってみようかな。1本ちょうだい。
【GM】 「はいはい、どうぞ。命の恩人ですし、お代はけっこうですよ」
【ジーネ】 私も欲しいなぁ。
 その薬を飲むとね、筋力が24になって、ボーナスがプラス4になるのよ(笑)。
【GM】 2本目からは、代金を払って買ってね。
【メイユール】 じゃあ、さっきもらったやつを、ジーネに渡す。
【ジーネ】 メイユールは飲まないの?
【メイユール】 わたしは、別に能力値が上がってもしょうがないし。
 手を腰にあてて、一気に飲んでください(笑)。
【ジーネ】 じゃあ、飲んだ。
【GM】 ジーネが『グラランボンバー』を飲み干すと、仕様書にあるとおり、器用度、敏捷度、筋力が6点上昇したよ。
【ジーネ】 やったぁ〜、筋力24〜。
【ティガー】 ジーネがマッチョになった。
【メイユール】 マッスル・ジーネが誕生した。
【GM】 そりゃ、もう、立派な筋肉やね。
 腹筋は6個のブロックになり、肩や腕、太ももはスイカぐらいに膨れ上がった。子供の胴ほどの太さになって盛り上がった首筋の中から、ジーネの顔がちょこんと飛び出している。
【メイユール】 怖いよぅ。
【ティガー】 もう2度と、メイドの恰好せんといてな(笑)。
【GM】 そうやね。霊食(たまぐ)いネズミがメイユールの髪の中に隠れ、ヒデヨシがティガーの足元で震えるぐらいの迫力だから。
【ティガー】 俺、飲まなくてよかった……。
【ジーネ】 そんなん、なっとらへん! 筋力24でも、かわいらしい女の子っておるやんか〜。
 私もかわいらしいままなのっ!
【GM】 何のペナルティもなしに能力値が上昇するわけないやん(笑)。いちおう、伏線はあったのに。
【メイユール】 「妙にマッチョなグラスランナー」ね(笑)。
【ティガー】 ジーネの育ての親、変わり果てた姿を見て泣き崩れるかも。
【GM】 見た目が筋肉ダルマでも、その動きは非常に軽やかなものだよ。イモムシみたいになった指も、じつに滑らかに動くし。
 それに、顔は以前のままだから、安心してください。
【ティガー】 よけいに気持ち悪いわッ。
【ジーネ】 誰が気持ち悪いねん。
【メイユール】 怖い、怖い。
「ジーネ、かわいい☆」って言っとこ(笑)。
【ティガー】 商人のおっちゃん、今のうちに逃げとかんと、頭を潰されるよ。
【ジーネ】 んなことせん、っちゅーに。
【GM】 「じゃあ、そういうことで」と、おっちゃんはオレンブルクへ向かった。
「ぐららん、ぐららん♪」
【ティガー】 「バイバ〜イ」
【メイユール】 「気をつけてねぇ」
【ジーネ】 それじゃあ、私らもエルゴン村に向かおうか。てくてくと。
【GM】 『てくてく』? ご冗談でしょう。『がしゅいん、がしゅいん』ですがな(笑)。
【ティガー】 ロボットや(笑)。
【GM】 では、4日後の昼過ぎ、行く手に噂のジーネの故郷、エルゴン村が見えてきました。
 畑の中に家屋が点在する、ごく普通の小さな農村です。「もぉ〜」という、のどかな牛の鳴き声も聞こえてくる。
【ティガー】【メイユール】 わーい、牛や〜!
【ジーネ】 しかしな〜、農村なのに至高神の教会があるって変なの。
【GM】 あんたが作った設定やん。
【ティガー】 ジーネの家はどれ? ジーネを見せに行かないと。「お宅のお嬢さんは、こんなに立派に育ちました」って(笑)。

両親との再会の事

【ジーネ】 神殿に行くよりも先に、村長のところに行こう。
【GM】 村長さんはたぶん、裏の畑で農作業をしているよ。小麦の世話でもしてるんじゃないかな。
【ティガー】 じゃあ、麦畑に行って、「村長〜!」って呼ぶ。
【GM】 「だぁれじゃ〜!?」と応えたのは、60歳ぐらいのおじさん。畑仕事の手を休めて、キミたちのところにやって来た。
【ティガー】 「え〜っと、ジーネの仲間なんやけど。一緒に村にやって来てんけど」
【GM】 「おお、あの娘が帰ってきおったか」
【ティガー】 「うん、こんなになって帰ってきたよ」(笑)
【GM】 「うわあぁぁぁーッ?!」
【メイユール】 「村長さん、大丈夫っ!?」(笑)
【ジーネ】 とりあえず、「かくかくしかじかで依頼を受けて来ました」と言うけど。
【GM】 「おお、そりゃ、難儀をかけるのぉ」
【ジーネ】 どうする、すぐ退治に行く?
【ティガー】 今から行くと、夜になっちゃうと思うの。
【ジーネ】 じゃあ、今日の夜に出発して、明日の朝に着くようにするとか。
【GM】 「まあ、何はともあれ、おやじさんやおふくろさんに、元気な顔を見せてやりなさい」と、村長さんは言うけど。
【ティガー】 お父さんやお母さんは目がいい?
【GM】 悪くはないよ。
【ティガー】 心臓は強い?
【GM】 弱くはない。
【ジーネ】 というか、なに、その質問。
【ティガー】 いや〜、ショックで死ぬかも知れんな〜、って。
【メイユール】 じゃあ、ジーネを見せに行く?
【ジーネ】 「見せに行く」って、挨拶ぐらいしに行くっちゅうに。ふたりを無視して、スタスタと神殿に行く。
【GM】 はいはい。やって来たのは、そこいらと変わらぬ民家やね。
 ただひとつ違うのは、屋根の上にシルファスの聖印があり、玄関の上に『シルファス大神殿・エルゴン大聖堂』という、手書きの看板が掲げられていること。
【メイユール】 手書きなんか。
【GM】 どうやら、子供が書いたようやね。『堂』の文字が、危うく看板からあふれそうになったので、妙に細くなってたりする。
【ティガー】 えっと〜、「ジーネ、ここ?」って聞いてみる。
【ジーネ】 こくっとうなずく。
【メイユール】 『神殿の娘』って言ってたから、すごいのを想像してた(笑)。
【ジーネ】 「お父さ〜ん」と、呼びかけてみる。
【GM】 玄関の扉を開けて顔をのぞかせたのは、養母のネフさん、53歳。典型的なおばちゃん体型の女性。
【メイユール】 お母さんの反応を見てみよう。
【ジーネ】 こいつらが変なことを言う前に、「かくかくしかじか」と説明する。
【GM】 ネフさんはほとんど腰を抜かしかけたけど、何とか踏みとどまって、「あのジーネだから、こんなことになるかも知れんなぁ」と言う。
【メイユール】 さすが、おかんや。
【ティガー】 肝っ玉母ちゃんやな。そんなに驚かんかったんや。
【GM】 ネフさんは「よく帰ってきたねぇ」と言い、ティガーを見て、「あらぁ、いい男。え? ジーネのコレかい?」と、親指を立てる。
【ティガー】 「ノンっ!!」って言う。
【ジーネ】 こっちだって、即座に否定するわい。
【GM】 「残念だねぇ、こんないい男なのに。どう? うちの娘を嫁にしてみては」
【ティガー】 「ノン! 怖い、怖い」(笑)
【GM】 「ひとを見た目で判断しちゃ、ダメ、ダメ」
【ティガー】 「見た目だけじゃなくて、言動や行動もこれまた邪悪でね」
【ジーネ】 なんでやねん。
【メイユール】 おとんはどうしてるの?
【GM】 養父のイヘミナさんは、麦畑で作業してるらしい。ネフさんは、昼食の準備ができたので、畑に呼びに行くところだったらしい。
【ジーネ】 じゃあ、私が呼んできます。
【メイユール】 ひとりで行って、大丈夫かなぁ。
【GM】 しばらくすると、遠くから「ぎゃああぁ〜!」という男性の悲鳴が(笑)。
【メイユール】 やっぱり(笑)。
【GM】 ティガーとメイユールは、ネフさんに教会の中へ招かれた。
 部屋の一部が礼拝室に改装されて、小さな祭壇が設けられています。
【メイユール】 この部分が神殿なわけね。
【ティガー】 祭壇を見て、「おお〜」と言うとく。
【GM】 ネフさんは、「狭いところで、ごめんねぇ」と言いながら、奥の部屋に案内し、テーブルについたふたりにお茶を出してくれた。
 ネフさんは台所に行き、新たに3人分の軽い昼食を作りはじめる。
【メイユール】 「あ、おかまいなく」
【ティガー】 「オムレツでいいよ」
【GM】 その頃、麦畑ではイヘミナさんが「ジーネでねぇか」と、驚いてる。頭のてっぺんの1本毛も健在ですぞ。風にたなびいてるね。
【ジーネ】 村に来た理由を説明します。
【GM】 「そうか、おめぇが行っでぐれるがか」
【メイユール】 すんごい訛ってる。
【ティガー】 これで神様にお祈りすんのかな(笑)。
【ジーネ】 「被害とかは出てるの?」と聞いてみる。
【GM】 村に被害が及ぼされてることはないらしい。今のところは、ね。
 ただ、何かあってからでは遅いんで、早めに退治を依頼したわけ。
【ジーネ】 つまり、「疑わしきは罰せよ」と──。
【メイユール】 怖いなぁ。
【GM】 イヘミナさんは、温厚なひとなんだけど。こんないい人に育てられて、なんであんなになったのか、わからん。
【ジーネ】 きっと、養父がいつもそんな感じでいるから、「あのように悠長にしてたら、いかん」と思ったんや。
【メイユール】 で、「こんな生ぬるいところには、おられへんわ」って、村を出たんや。
 お母さんに、「大変ですねぇ」と、同情しとこう。
【GM】 「でも、あれでも優しいところはあるんですよ。どうか、仲良くしてやってくださいね」と、ネフさんは言う。
【ティガー】 「善処します」(笑)
【GM】 それで、ブロブ退治にはいつ出発することにしたのかな?
【ジーネ】 今夜はここで泊まって、朝イチで行く──でいいの?
【ティガー】 うん、それでいいよ。
【メイユール】 この村には、宿屋はあるの?
【GM】 ありません。だから、この大神殿に泊まってもらうことになるね。
【ジーネ】 ま、積もる話もありますし。
【ティガー】 どうやってマッチョになった、とか(笑)。
【ジーネ】 それはもう説明した。
【メイユール】 じゃあ、ランダース騎士の頭を叩き潰した話とか。
【ティガー】 それは親がショックを受けそうやから、伏せとこ。
【ジーネ】 たかが1回、たまたまクリティカルを出しただけで、なんでここまで言われなアカンの〜!
【GM】 では、他にすることがなければ、時間を進めるけどいいかな?
【ティガー】 いいよ〜。
【GM】 それじゃ、大神殿でザコ寝ということで、1月15日の夜がふけていきます。
【ジーネ】 1月20日のオーディションに間に合わないね。
【ティガー】 ホンマや。
【GM】 さて、今宵は満月。
 中央に黒い点が生じて、巨大な目玉のようになった月が、寝静まったエルゴン村を冷めた光で包みます。
 風に流れる暗雲が、丸い月を隠したそのとき──。
【ジーネ】 ──狼が「ワオーン」と鳴くのかな?(笑)
【GM】 狼ではなく、キミが「ワオーン」と鳴くんだよ。
【ティガー】 は??
【ジーネ】 はい?
【メイユール】 あらぁ?
【GM】 ジーネは、1Dを振ってください。
【ジーネ】 (ころっ)出目は1です。
【GM】 なら、目標は眠っているイヘミナ神父やね。攻撃してください。
 ちなみに、現在、攻撃力がプラス2、回避力がマイナス4になっております。
【ジーネ】 でも、寝てたから、モーニングスターもチェイン・メイルも装備しとらんよ。
【GM】 だろうね。だから、その肉体で攻撃してよ。蹴るなり殴るなり、お好きなように。
【ジーネ】 (ころっ)当たり、ダメージは10点。
【メイユール】 拳が唸ってる、怖いよ〜。
【ティガー】 GM、[生死判定]してるし。お父ちゃん、生きてる?
【GM】 「うげっ」と悲鳴をあげて、死んじゃった。
【ティガー】【メイユール】 うわ〜!
【ジーネ】 お父ちゃんの生命力、10点しかないの?!
【GM】 イヘミナさんは一般市民ですぜ。しかも、年齢は51歳だと言ったでしょ。
【ティガー】 能力値にペナルティがあるのね。
【ジーネ】 プリースト技能1レベルぐらい、ないんか!
【GM】 一般技能の“クレリック”なら、3レベルあるけど。
 冒険者をやってると感覚がマヒしがちになるけど、神の奇跡を導けるのは、ごく一部の人間だけやよ。
【メイユール】 わたしら、起きていい?
【GM】 いいよ。
 ティガーとメイユールがこの騒ぎで目を覚ますと、怪しげな人影がむくりと顔をあげたところだった。
 そのとき、雲が晴れ、窓から月光が差し込む。
 照らしだされたのは、歯を剥き出しにして「ぐるるる」と唸る、尋常でない様子のジーネだった。

血塗られた大聖堂の事

【メイユール】 うわぁ〜……。
【ティガー】 その足元に、お父ちゃんが倒れてると。
【GM】 そう。胸がベコっとへこんで口から血を吐いてるイヘミナさんの死体が、転がってます。
 ネフさんも目を覚まし、「ひええええ!?」と、腰を抜かしてる。
【ジーネ】 ところでGM、私には意識があるんでしょうか?
【GM】 自我はない、と思って。
【ティガー】 あれは何や、グラランボンバーの副作用か? どこかでグラスランナーが凶暴化してる、っていう噂はある?
【GM】 今、ここで、それを確かめるのは不可能です。
【メイユール】 前に、ミフォア大神殿の神殿長が言ってたことのほうかも知れへんなぁ。
【ティガー】 どっちやろ?
【GM】 とりあえず、第2ラウンド。
 ジーネは、1Dで目標を決めてください。
【ジーネ】 (ころっ)……お母ちゃん……。
【ティガー】 ジーネを羽交いじめにして止める!
【GM】 組み合うってことやね。どっちの行動が先かな?
【ジーネ】 ちくしょう、敏捷度がプラス6やないけ。私がいちばん速い。
【ティガー】 ちがう、それでも俺のほうが勝ってる!
【メイユール】 おお!
【ティガー】 (ころっ)ああ〜、はずしちゃった。筋肉で滑った。オイルでてらてらしてるから。
【ジーネ】 してない、っちゅーに。
【メイユール】 GM、わたしは、お母ちゃんの前に立ちはだかります。
【GM】 ジーネのほうが速いね。ジーネは攻撃してください。
【ジーネ】 1ゾロ出ろ、1ゾロ出ろ。(ころっ)当たっちまったよ、ダメージは10点。
 追加ダメージだけで、8点あるんだよな〜。
【GM】 では、[生死判定]。出目が8以上なら、お母ちゃんは助かる。(ころっ)
【ティガー】 うわ〜。お母ちゃん、バイバイ。
【GM】 「何するんだね、ジーネぇ〜!」と叫びながら、首の骨を蹴り折られた。室内に、ゴキっというイヤな音が響く。
 ネフさんは息絶えた。
【メイユール】 あーあ……。
【GM】 メイユールはネフさんのところに駆けつけたけど、一歩遅かった。
 では、第3ラウンド。ジーネは、1Dで目標を決めてください。
【ジーネ】 (ころっ)相手はメイユール。
【GM】 弱い者から順に殺して行くわけか。いいねぇ、効率的な殺戮やね(笑)。
【メイユール】 お願い、止めてぇ。
【ティガー】 OK、今度は止めるで〜。(ころっ)止めた!
【GM】 では、ティガーはジーネを羽交いじめにした。ふたりはもつれ合うように、床に転がった。
 ジーネは、「がぁ! うがぁー!」とよだれをまき散らしながら暴れて、[組み合い]から脱出しようとする。
【ティガー】 ひぃぃーッ、人間じゃねえ!(笑)
【メイユール】 ティガー、放したらアカンよ。
【ティガー】 怖いよぉ!
「シルビぃ〜!」って叫んどこ。
【GM】 シルヴィアは今、病室で寝返りをうってる。いい夢を見てそうやね。
【メイユール】 ひとの苦労も知らないで〜(笑)。
【GM】 では、ジーネは脱出しようとしてください。
【ジーネ】 (ころっ)脱出に失敗。
【メイユール】 ジーネを〈スリープ〉で眠らしてしまおうか?
【ティガー】 うん。ロープとかで縛っても、引きちぎられそうやし、それがいい。
【メイユール】 (ころっ)6ゾロ! すばらしい。
【GM】 それは、6ゾロでないと抵抗できないな。いちおう、抵抗してみてください──失敗やね。
 では、ジーネは「うがぁ! うが……がぁ〜」と、眠ってしまった。
【メイユール】 なんとか静まった。
【GM】 さて、目の前の状況をどうします? 今は、夜中の1時ぐらい。
【ティガー】 村長に知らせる?
【メイユール】 うん、じゃあ、行ってくるわ。
【ティガー】 俺は、ジーネを見張っとこう。
 おとんとおかんの死体には、布団をかけとく。
【GM】 では、メイユールは、村長の家の前にやって来ました。
【メイユール】 ドアを叩いて、村長を呼ぶ。
【GM】 しばらくして、部屋の中にランタンのほのかな明かりが灯り、扉をあけて村長が出てきた。
 三角頭巾をかぶって薔薇柄のパジャマを着た村長さんは、「こんな夜更けに、なんの御用ですかな?」と、尋ねてくる。
【メイユール】 「えっと、ジーネが大変なことに……」
【GM】 「はあ、また寝小便ですかな。あの娘、10歳になるまで、寝小便が治らなかったんですよ」
【ティガー】 そんなんだったら、いいんだけどね(笑)。
【メイユール】 とりあえず、教会へ連れて行きます。
【GM】 では、教会に着きました。
【ティガー】 「村長さん、心臓強いですか?」(笑)
【GM】 「まあ、ワシの心臓は100年もつと言われておるが」
【ティガー】 じゃあ、おとんとおかんを見せて、事情を説明するけど──。
【メイユール】 ──ジーネが犯人というのは、隠しておいたほうがいいかな?
【ティガー】 「何かが襲って来て、おとんとおかんが殺されて、ジーネは魔法で眠らされてる」とか、適当なことを言ったほうがいいかも。
【メイユール】 じゃあ、そういうふうに説明して、お父ちゃんたちの死体を見せよう。
【GM】 村長は、「イヘミナ〜、なんてことじゃあ!」と嘆いた。
「ジーネは大丈夫なんですか?」
【ティガー】 「うん、これは魔法で眠ってるだけやから」
【GM】 「いったい、何者が襲ったんです? やはり、ブロブですか?」
【ティガー】 「いや、ブロブじゃない。なんか、ワーウルフっぽかったけど」(笑)
【GM】 「ブロブ以外にも、魔物が潜んでいるということですか」と、村長は恐れおののいてる。
【ティガー】 「そうみたい。でも、俺らがブロブと一緒に退治してしまうから、安心して」って、言っとく。
「じゃ、行ってくるわ」と、ジーネを引っ張って、家から出て行く。
【GM】 「今からですか?」
【ティガー】 「うん、早ければ早いほどいいやろ?」
【GM】 「はあ、しかし、ジーネは──」
【ティガー】 「起こし方知ってるから、大丈夫。ここで起こしたら、ショックを受けてしまうやろ? 後で俺たちがうまく話すから」
【メイユール】 「イヘミナさんたちの埋葬を、よろしくね」
【GM】 「はあ、それではお気をつけて」
【ティガー】 とりあえず、村の外まで行く。
【メイユール】 ジーネの荷物は、全部持って行っとこう。
【ティガー】 忘れ物を取りに戻ったりしないように(笑)。
【メイユール】 村の外で野宿して、夜が明けたら、ジーネを起こすよ。
【ティガー】 もし暴れても、ここなら俺らしかいないから大丈夫。
【GM】 では、朝になってジーネは起こされました。
【メイユール】 「ジ、ジーネ?」
【ティガー】 「昨日の夜のこと、覚えてる?」
【ジーネ】 GM、記憶はあるの? 個人的には、覚えてたくないんだけど。イヤじゃん、あんなの。
【GM】 なら、思い出せなくていいよ。気がついたら外にいた、って感じね。
【ティガー】 「じゃあ、ブロブを倒しに行こか」って言う。
【ジーネ】 「その前に、両親とかに挨拶に行かないと」(笑)
【メイユール】 「それはもう、すませてきたから。だってジーネ、起きへんねんもん」(笑)
【ティガー】 「ジーネ、よく寝てたから、そのまま連れてきてん。なんか、『今から集会をする』って言われたし」
【ジーネ】 「はて、そんな習慣、あったかな?」
【ティガー】 「たまたま、集会のある日やったんかも知れん」
【メイユール】 「早く行こう、往復で12時間かかるんやし」
【ジーネ】 じゃあ、腑に落ちないまま、ずりずりと引きずられるように行きますわ。
【GM】 それでは6時間旅すると、荒野の窪地の中央にそびえる館が見えてきた。話に聞いた、ブロブの館やね。
 その周囲には、紫色の不定形生命体が12体ほど、うじゅうじゅと蠢いております。
【メイユール】 スライムや。
【ティガー】 うわ〜、むっちゃ無害そうやなぁ。ツンツンって、触ってみよう。ぷにぷにしてる?
【GM】 してるよ。
 っつーか、もう、接敵状態にしたのね?(笑)
【ティガー】 うん。「にゅ〜ってして遊ぶねん」って、ファンリーに約束しちゃったし。
「かわいい〜っ♪」って抱き上げる。
【ジーネ】 なにぃ!?
【メイユール】 なんか、すごい無防備や(笑)。
【GM】 なら、抱き上げられたブロブAは、ティガーに変な液体を吐きかける。──しかし、回避されてしまったね。
【ティガー】 うわっ、何か吐いたぁ。ぷよぷよやのに、吐いた〜。
「かわいいー☆」って、ブロブAを振り回す(笑)。
【ジーネ】 は〜……何だか……。これでもう、戦闘状態に入ったわけ?
【GM】 入ったわけ。
 では、第2ラウンドに行きましょう。
【ティガー】 ぷよぷよ〜(笑)。

÷÷ つづく ÷÷
©2005 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2005 Jun Hayashida
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