≪REV / EXIT / FWD≫

§烙印の天使:最終話§

虎王のくちづけ

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 思わぬ再会の事 ▽ 最終決戦の事 ▽ 奇跡の大団円の事

思わぬ再会の事

【GM】 さて、2年以上にわたってお送りしてきた『烙印の天使』も、ついに最終回となりました。
【メイユール】 う〜ん、長かった。
【GM】 今、ティガーとメイユールの前には、真紅の騎士が立ちはだかっている。そして、彼との戦いの火蓋が切って落とされようとしてるところ。
【ティガー】 真紅の騎士に攻撃! (ころっ)うわっ、へぼ〜。避けられた。
【GM】 「まだまだ甘いですな」と、真紅の騎士。
「踏み込む前に左足を引く癖、少しも治っていませんな」
【ティガー】 は?? 知らんわ、そんな癖。
【GM】 「あれほど、治すよう申し上げていたのに」
【ティガー】 あんた、誰よ?
【GM】 じゃあ、知力で思い出チェックをしてみよう。ダイスを振って、成功ロールしてみてください。
【ティガー】 (ころっ)成功。
【GM】 するとティガーは、目の前の人物に、あるひとの面影を見出した。歳はとってるし、髪の色も変わってるけどね。
【ティガー】 誰?
【GM】 キミの王子時代のお守り役で、剣技の指南役でもあったひと。
 かつて、王国最強と称されていた、“漆黒の騎士”ステファン・ベロフです。
【ティガー】 え!? なんで、敵なん? っていうか、生きてたん?
【GM】 生きてたんやね。
 そして、王子を守るという使命も果たせず、祖国の崩壊を目のあたりにし、生き恥の苦悩を重ねて、今日に至ったわけやね。
【ティガー】 進む道、まちがえ過ぎ!(笑)
「今なら、まだ間に合うよ。俺は、あのときのこと、気にしてへんし」
【GM】 「ありがたきお言葉。しかし、私の今の主君はミーア様です。2度も主を裏切るようなまねは、したくないのです」と、ステファンは答える。
「もっと早く、殿下に再会していれば……」
【メイユール】 おお〜、ドラマや〜(笑)。
 嬉しいわたしは、防御しながら、なりゆきを見守ります。
「ティガー、負けるなー!」

 ティガーとステファンの激しい剣戟が始まった。
 優勢なのは師匠ステファン。少しずつ、ティガーに手傷を負わせてゆく。
 対するティガーの攻撃は、ほとんど赤い鎧に弾かれてしまう。
 しかし、ティガーには心強い味方がついている。受けた傷は、メイユールが〈ヒーリング〉で癒してくれた。
 らちが開かないと見たステファンは、コモン・ルーンの〈エンチャント・ウェポン〉を、自らのツヴァイハンダーにかけた。

【メイユール】 どうする? 時間がかかってると、ファンリーが死んでしまう。
【ティガー】 シルビーがいてくれたらな〜。魔法でちょちょいとやってくれるのに。
【メイユール】 あっ、あれ使う? エウロギアがくれたスクロール。武器のダメージを精神点に与えるようになる魔法。
【ティガー】 そういえば、そんなのもらってたな。
【メイユール】 師匠の精神点、ひょっとしたら低いかもよ。さっき、魔法も使ってたし。
【ティガー】 よし、じゃあ、かけてくれ。
【メイユール】 スクロールを広げます。
【GM】 スクロールは水で濡れてて、ベリっと破れた──なんていうと、ひんしゅくを買うやろな。
 大丈夫、無事に魔法は発動して、ティガーの武器は18ラウンドの間、精神点に打撃を与えるようになった。
【メイユール】 スクロールは、これでゴミになるの?
【GM】 そう。力を使い果たしたスクロールは、白紙に変わったよ。
【ティガー】 ステファンに[強打]で攻撃〜。(ころっ)やった、まわった! 精神にダメージが22点!
【GM】 うそッ!?
 ……じゃあ、ステファンは、「おみごとです」と言って、気絶した。
【ティガー】【メイユール】 やったぁ〜!
【メイユール】 珍しく作戦勝ちした。
【GM】 しかも、殺してはいないしな。
【メイユール】 うまいこといった。
【ティガー】 じゃあ、反対側の部屋(D)に行ってみよか。

 ティガーとメイユールは、師匠との激戦を終えた部屋(E)を出て、国王の幽霊が言っていた、もうひとつのレバーがあるという部屋(D)にやって来た。

【GM】 部屋の造りは似たような感じやね。正面奥の壁に王家の紋章グリフィンのレリーフがあり、その横にレバーが設置されている。
【ティガー】 じゃあ、入ってみる。中には誰もいない?
【GM】 見当たらない。
【メイユール】 レバーのところまで行ってみよう。
【GM】 ならば、メイユールは、[危険感知]してください。
【メイユール】 なに、なに? (ころっ)成功。
【GM】 メイユールには、すんでのところで危険に気づいた。
 慌ててその場を飛びのくのと同時に、左の壁が爆発して、穴があいた。
【ティガー】 何が出てくるの?
【GM】 人間の戦士がふたり出てきた。
 兜にツノがあるほうの戦士が、「まちがえたのである!」と言ってる。
【ティガー】 えッ?! た、隊長?
【GM】 うん。衛兵Aもいて、「隊長! 玉座の間は、こんな地下にはないと思うであります!」とか言っている。
【メイユール】 また、ティガーの知り合い?
【ティガー】 うん。
【メイユール】 たくさん知り合いがいるなぁ(笑)。
【ティガー】 っていうか、隊長たち、こんなところで何してんの?
【GM】 なんでも、ブレインのカジノで大負けして借金をこさえ、借金のカタにスパニアの傭兵隊に売り飛ばされ、ランダース攻略戦に参加させられ、今、玉座の間をめざせと指令を受けているそうだ。
「それで、隠し通路を必死で探しているのである」
【ティガー】 ああ、そう。「でも、ここはちがうよ」(笑)
【GM】 「ガッデムである! マジック・アイテムをひとつ無駄にしたのである!」と、隊長は悔しがる。
【メイユール】 気の毒に。
【GM】 「隊長! まだ、自分のぶんがあるであります!」と衛兵Aが言い、気を取り直した隊長が、「よし、ならば上をめざすのである!」と号令して、ふたりはもと来た道を引き返して行った。
【ティガー】 ばいばーい。
【メイユール】 不毛や。
【GM】 あのときメイユールが気づかなければ、飛び散る破片でダメージを受けててんけどなぁ。ある種のトラップやね。
【メイユール】 うわっ、感じ悪ぅ〜。
【ティガー】 じゃあ、レバーを同時におろそう。俺は師匠の部屋に戻る。
【GM】 それはいいけど、どうやって同時にレバーを引くの?
【ティガー】 「同時っぽいな〜」って思った瞬間に、適当におろしてみる。
【GM】 それなら、ふたりで1Dを振って、出目が同じなら、同時に引いたことにしようか。
 1回の挑戦で、1ラウンド消費することになるからね。

 ティガーとメイユールは何回も挑戦するが、なかなか出目はそろわない。

【メイユール】 そうか、あの通話の護符を使えばよかったんや。
【ティガー】 でも、そんなの持って来てない。
【GM】 なにぃ?!
【メイユール】 誰もアイテム欄に書いてないから、たぶん、あれも宝箱の中に入ったままだと思う。
【GM】 あれほど忘れ物がないように、って言うたのに。
【メイユール】 なんかもう、幼稚園児と先生みたい(笑)。
【GM】 最終回なんやから、しっかり盛り上げてや。
【メイユール】 大丈夫、大丈夫。
【ティガー】 盛り上がってるやん、ピンチな方向に(笑)。
【メイユール】 しゃあないから、出目がそろうまでやるか。

 その後、何度も1Dを振り、ようやく同時にレバーを引くことができた。

【GM】 すると、ティガーの部屋(E)では左の壁、メイユールに部屋(D)では右の壁の一部が開き、隠し通路への入口が出現した。
【ティガー】 じゃあ、隠し通路を進む。
【GM】 メイユールはウィル・オー・ウィスプの明かりがあるからいいけど、ティガーは真っ暗の中を進むわけやな。
【ティガー】 がんばります。
【GM】 まあ、向こうのほうに、ウィスプの光が見えてるんやけどね。
 やがて、ふたりは、通路の真ん中で出会うことになる。ティガーから見れば、メイユールは、闇の中でスポットライトを浴びてる感じ。
【メイユール】 かっこいい〜。
【GM】 メイユールにしてみれば、闇の奥から、漆黒の鎧の男がヌっと現れる感じやな。
【ティガー】 邪悪に登場(笑)。
【メイユール】 (こわ)〜。
【GM】 ちょうどそこは、T字路になっている。

最終決戦の事

【メイユール】 T字路の奥に進む。
【GM】 キミたちは、長〜い通路をひた走る。
 やがて、豪華な装飾が施された、両開きの大きな鉄の扉の前に来た。
 中から、何やら騒がしい声がしている。
【ティガー】 蹴り開ける──前に、何て言ってるのか聞いてみようっと。
【GM】 中年の男性が、「ミーア様は何をしておられる?!」と、焦った様子で怒鳴っているのが聞こえるよ。
【メイユール】 儀式が滞ってるんかな。
【ティガー】 それならいいんやけどな。
【GM】 すると、無線機から聞こえてくるような感じの声で、若い男が、「現在、連合軍のカタパルトを、破壊してまわってます。しかし、敵の数が多過ぎて、どうにもなりません!」と、悲痛な声で叫び返す。
【メイユール】 外での戦いの話か……。
【GM】 中の男性が、「“魔王の娘”も地に堕ちたものだな」と、毒づく。
【ティガー】 ほう。
【GM】 悲壮な報告は、まだつづく。
「すでに城に侵入している敵もいる模様!」
【ティガー】 うん、隊長と衛兵Aがいたよな。
【メイユール】 むちゃくちゃしよったよな、あのひとら(笑)。
【GM】 「隠し通路が見つかるのも時間の問題かと──」
【ティガー】 もう、見つかってるよな。
【メイユール】 わたしらがここにおるんやし(笑)。
【GM】 「召喚を、召喚を急いでくださいッ!!」と言う声に対し、中の男は、「あと1分もたせろ。間もなくクートラは降臨する」と応える。
【ティガー】 じゃあ、扉を蹴り開けて中に入る。
【GM】 扉はバンっと開いたよ。
 中は、たいまつやロウソクに照らされる、広い部屋です。
【メイユール】 ボスの間っぽいな。
【GM】 部屋の奥は一段高くなっていて、8人の魔術師たちが祭壇を囲み、何やら呪文の詠唱を行っている。魔術師たちには、怪しげなサークレットがはめられており、その瞳に自我の光はない。
【メイユール】 操られてるんかな。
【GM】 そして、魔術師たちに囲まれた祭壇には、白いローブを着せられた黒髪の少女が寝かされています。
【ティガー】 今度は本物かな? ゴブリンなんかじゃないよな。
【メイユール】 体型でわかるやろ。
【GM】 そうやね、まちがいなくティガーの愛しのひと、正真正銘、本物のファンリーです。
 意識はないようやね。
【メイユール】 気絶させられてるんか。
【GM】 さらに部屋の中ほどには、ひとりの中年の魔術師がいる。
【ティガー】 国王を裏切った宮廷魔術師やな?
【メイユール】 さっき、外のひとと話をしてたんはそいつ?
【GM】 そう、元ランダース王国の宮廷魔術師オネット。台座に載った水晶の玉で、外部と通話していたらしい。
 彼の前には、護衛のスケルトン・ウォリアーが2体立ってるよ。
【メイユール】 用意がいいなぁ、くっそ〜。
【GM】 オネットはキミたちを見て、「ほほう、貴様らか」と笑う。
【ティガー】 えっ、俺らのこと、知ってるん?
【GM】 知ってるよ。魔法の水晶で、ずっとファンリーの動向を監視してたんやから。
【メイユール】 そういえば、前に黒ずくめたちがそんなこと言ってたね。
【ティガー】 そうそう。俺がオムレツ食ってるところとか、カバンタがイスをかじってるところとかも、見られてたんやったな。
【メイユール】 ジーネがランダース騎士の頭を潰すところもね(笑)。
【ティガー】 「ごめんな。今日、あいつはおらへんねん」
【GM】 「それは残念。あの邪悪さ、ぜひとも我が軍に来て欲しかった!」と、オネット。
「貴様らは、ファンリーを取り戻しに来たのだろう? かかってくるがよい。クートラ降臨の暁には、おまえたちを最初の生贄にしてやろう」
【ティガー】 8人の魔術師は操られてるっぽいから、親玉のオネットを倒せば、儀式は失敗するかも知れない。
【メイユール】 じゃあ、オネットを狙い撃ちやな。
【GM】 ただし、オネットの前には2体のスケルトン・ウォリアーがいる。
【ティガー】 そんなザコは見えてないから。見て見ぬふり。
【GM】 むっちゃ存在をアピールしてるのに。顔をそむけた先にまわって、「お〜い」って手を振るし。
【ティガー】 愛嬌あるスケルトン・ウォリアーやな(笑)。
【GM】 そう、比類なき人工知能つきやで。
【メイユール】 でも、ちょっとAIの方向性を間違えてる(笑)。
【GM】 さあ、キミたちが何もしないなら、オネットは呪文の詠唱を始めるよ。
【ティガー】 何もしないわけないよ。オネットに攻撃する。
【GM】 それは2体のスケルトン・ウォリアーが阻む。
【ティガー】 なら、[なぎ払い]で、両方のスケルトン・ウォリアーに攻撃する。
 (ころっ)どっちともに当たり。スケルトン・ウォリアーAに15点、スケルトン・ウォリアーBに17点ダメージを与えた。
【GM】 つづいてオネット。
 呪文は完成した。メイユールは、彼の周囲から、シルフの力がなくなったのを感じる。
【メイユール】 じゃあ、〈ミュート〉も〈サイレンス〉も、かけられへん。
 オネットに、〈ウィル・オー・ウィスプ〉をぶつける。(ころっ)失敗、ダメージも消されてしまった。
【GM】 スケルトン・ウォリアーズが、ティガーに反撃──しかし、ティガーは攻撃をかわした。
 では、第2ラウンド。
【ティガー】 スケルトン・ウォリアーたちに、[強打]で[なぎ払い]する。
 (ころっ)Aには当たったけど、Bには1ゾロではずした。スケルトン・ウォリアーAに、ダメージ18点。
【GM】 まだ壊れてないよ。
 オネットは、ティガーに魔法をかけた。抵抗してみてください。
【ティガー】 (ころっ)失敗。
【GM】 それなら、キミは、電撃の網に捕らえられてしまった。
【ティガー】 うわっ、やると思った、それ。
【GM】 これから毎ラウンド、ダメージが行くよ。ラウンドごとの抵抗に成功すれば、なんとか動くことはできるけど。
【メイユール】 もういちど、ウィスプをオネットにぶつける。(ころっ)また抵抗された、ダメージもなし。きついな〜。
【GM】 オネットはラスボスなんやから、なめてたらアカンで。
【メイユール】 わかってるんやけど、ダイスの出目が……。

 ティガーを捕らえた〈ライトニング・バインド〉は、抵抗に成功してもなお、生命力の半分近くのダメージを与える。
 ティガーは、生命力を削られながらも、何とかスケルトン・ウォリアーAを撃破し、オネットのもとへ向かう。

【ティガー】 オネットに攻撃! (ころっ)当たった、ダメージ18点。
【GM】 痛い、痛い。接近戦になると、魔術師は苦しいな。
 じゃあ、魔法を唱えて、防御力を上昇させた。
【メイユール】 生意気な。

 電撃に減らされたティガーの生命力は、メイユールが〈ヒーリング〉で回復させる。
 しかし、残りわずかな精神力では、〈ヒーリング〉の使用回数に限界があるのだ。

【メイユール】 これが最後の〈ヒーリング〉。ティガーの傷を治します。
【GM】 1ゾロが出たら、目もあてられんな(笑)。
【ティガー】 まちがいなく、次のラウンドで俺は死ぬ。
【メイユール】 やめて〜、死なれたら困るぅ。……(ころっ)おお〜、ちゃんと治せた。

 その次の第5ラウンド。
 ティガーは、〈ライトニング・バインド〉の電撃に傷つきながら剣を振るい、オネットに18点のダメージを与えた。
 そして、運命の第6ラウンドを迎えた──。

【GM】 奥で8人の魔術師が唱えていた呪文の詠唱の声が、ピタリとやんだ。
【メイユール】 ひょっとして、儀式が終わった?
【GM】 ふっふっふ。
 祭壇に寝かされていたファンリーの体が、ふわっと浮き上がる。そして、静かに床に降り立ったファンリーは、ゆっくりと、目を開いた。
 ファンリーから、すさまじい威風の黒いオーラがわき立ち、それを目にしたキミたちの膝は、ガクガク震える。
【ティガー】 そんなこと言われても〜。
【GM】 とりあえず、ティガーには、電撃の網のダメージがいくよ──抵抗はできたみたいやね。ならば、今回のダメージは8点です。
【ティガー】 残り生命力2点。
【メイユール】 わたしの精神力も残り2点だから、もう、傷を治すことはできないよ〜。
【GM】 そんなキミたちを尻目に、オネットは、歓喜の声をあげている。
「ついに、クートラが降臨した!」と。
【ティガー】 くっそ〜。ファンリーの名前を呼んでみるけど──。
【GM】 反応はない。
【ティガー】 だよな〜。
【GM】 メイユールの肩にとまっている霊食(たまぐ)いネズミが、メイユールに言う。
 曰く、ファンリーの魂の器、ちょうど暗黒神の刻印があるところに、管のようなものが刺さり、それをつたって、黒いものがどんどん注がれているらしい。
【メイユール】 まだ、クートラは降臨しきってないんやな。
【GM】 「でも、このままじゃ、あの娘の魂の器が破裂しちゃうです! き〜っ」
【ティガー】 何ラウンドもちそう?
【GM】 さあ。とりあえず、クートラを宿したファンリーは、すでに動きだしてるよ。
【ティガー】 俺はオネットをほっといて、ファンリーのところに行くと思う。ティガーはそうする。
【メイユール】 じゃあ、わたしは、喜んでるオネットにクラブを投げつけま〜す。
 (ころっ)当たった! ダメージは10点。
【GM】 なぬっ?! なら、クラブに後頭部を直撃されたオネットは、歓喜の表情のまま、昏倒してしまった!
【メイユール】 やった、ストラ〜イク!(笑) ラスボス、倒したぞー!!

奇跡の大団円の事

【ティガー】 すげぇ、メイユール! 主役や(笑)。
【GM】 おいしいところを持っていったなぁ(笑)。
【メイユール】 いえーい♪
【GM】 さて、喜んでるところを悪いんやけど、怖いひとが行動するよ。
 ファンリーは、ニヤリと笑い、「消し飛べ」と言う。
 すると、すさまじい力の奔流がキミたちを襲った。スケルトン・ウォリアーBと倒れたオネットは、一瞬にして消え去った。
 キミたちの鎧も色が薄くなり、魔力がプラス2に下がってしまったよ。
【メイユール】 あらら〜?
【GM】 エウロギアの鎧でなければ、ティガーとメイユールも、オネットと同じように消えてたんやけどね。
 あ、ティガーにかかってた電撃の網も、ついでに消えてしまったから。
【ティガー】 OK。
【メイユール】 どうしよう?
【ティガー】 ファンリーに抱きつく! それで、「ファンリー、帰ってこい!」って言うわ。
【メイユール】 わたしは、後ろでそのドラマを見とく。
「行けッ、ティガー! 何をしても許す!」って(笑)。
【GM】 霊食(たまぐ)いネズミは、ティガーが抱きついたとき、ファンリーの魂が揺さぶられた、とメイユールに言う。
 とくに、魂に押された呪いの烙印のあたりが、激しく反応しているらしい。
【メイユール】 もっと揺さぶれ、ティガー!
【ティガー】 え〜? 何をしよう?
【GM】 ぼやぼやしてると、クートラは、完全にファンリーの体に入ってしまうよ。そうなると、ファンリーの魂は砕けて、二度と生き返らない。
【メイユール】 ファンリーの烙印って、呪いなんやな。そこからクートラの魂が注がれてるってことは──。
【ティガー】 呪いを解けばいいねんな。でも、どうやって?
【GM】 霊食(たまぐ)いネズミの話では、高司祭の〈リムーブ・カース〉ですら解除できないような強力な呪いでも、解除する鍵となるものは、必ず設定されてるらしいよ。
【メイユール】 何をすればいいんや〜?
【GM】 まあ、いちばん簡単な方法も設定してたんやけどね。
 例のスクロールで、剣を精神力にダメージを与える武器にして、ファンリーに刺さっている管を切れば、あっという間にカタがついてた(笑)。
【メイユール】 そうやったんか。
【ティガー】 そんなん、今ごろ言うてもムリ。
【GM】 こうなったら、別の方法を考えるしかないね。ちょっとトイレに行ってくるから、その間にがんばってくれ。
【メイユール】 別の方法ねぇ……。
 ティガーが触ったときに、ファンリーの魂が反応したんやったな。
【ティガー】 じゃあ、もっと触る?
【メイユール】 その言いかたって、セクハラみたい。
【ティガー】 ホンマやなぁ、“セクハラ王子”とか呼ばれてしまいそう。『セクハラ王子の大冒険』。
【メイユール】 それはイヤ過ぎ(笑)。わたしは、ファンリーにキスすればいいと思うんやけど。
【ティガー】 キスする?!
【メイユール】 うん。セクハラになるぐらいなら、こっちのほうが美しくない? 王子様のキスで、呪いが解けるねん。
【ティガー】 そうやなぁ。じゃあ、してみよっか。
【GM】 ただいま。何か考えた?
【ティガー】 えへへへ。
【メイユール】 何を笑っとんのよ(笑)。照れずに行け〜っ!
【ティガー】 よっしゃ、行くぞー!
 GM、ファンリーに「おまえが好きだッ」と言って、キスするッ!
【GM】 なぬッ、キスっ?!
【メイユール】 やっぱり、ダメ?
【GM】 いや、ちょっと驚いただけ(笑)。
 そうすると、霊食(たまぐ)いネズミが拍手するよ。
「見えますか、メイユールさん! 魂の烙印が、消えていきますです! きーッ」
【メイユール】 おお〜!
【ティガー】 さすが、“ドラマ好き”メイユール! 俺とシルビーじゃ、絶対に思いつかなかったよ。
【GM】 クートラの管は、しゅるしゅると退いていく。「ちくしょ〜、覚えてろ〜」と。
【メイユール】 威厳のない邪神やな(笑)。
【GM】 そして、ファンリーの魂は、解放された。
【ティガー】【メイユール】 やったーッ!!
【GM】 で、我を取り戻したファンリーは、自分にキスしてるティガーにびっくりしてるよ。
 カルファン王国では、接吻は「結婚してくれ」という意味なんやね、じつは。
【ティガー】 そうやったんか!
「これが俺の気持ちさ」
【GM】 そのティガーとファンリーを、どこからともなく降り注ぐ光が包む。その光の筋に沿ってラッパを持った天使が舞い降り、花吹雪が彩りをそえる(笑)。
【メイユール】 わたしと霊食(たまぐ)いネズミは、感動で涙を流しながら、拍手してそれを見守る。
「これよ! わたしは、これが見たかったのよッ」
【GM】 サークレットの支配から放たれた8人の魔術師も、わけがわからないまま、拍手している。
【メイユール】 ああ〜、もう、この満足をどう表現しよう。
【GM】 そのとき、突然、地下の会議室を激しい揺れが襲った。
 天井がパラパラと崩れはじめ、柱が次々に倒れてゆく!
【ティガー】 こりゃ、やばい。逃げよう。
【GM】 来た道を引き返すのかい?
【メイユール】 水路は通れない。もう、魔法を使う精神力が残ってないもん。
【ティガー】 8人の魔術師は、脱出路とか知らんの?
【GM】 彼らは、オレンブルクから誘拐されて来たひとやからね。
 ぱちぱちと拍手しながら辺りを見回して、「はて、ここはどこでしょう?」。
【ティガー】 ファンリーも知らんよな。どこか別の出口──あッ、隊長の穴っ!
【メイユール】 なるほどネ!
【ティガー】 そこへ行く。もう拍手はいいから、魔術師たちもついて来い!
【GM】 では、キミたちは、ファンリーと魔術師を伴って、部屋(D)に走る。
【ティガー】 あ、部屋(E)で気絶してる師匠を拾って、連れて逃げるよ。
【GM】 了解。
 では、地響きと揺れがつづく中、キミたちは、隊長たちがあけた穴を通って地下通路を突破し、無事に外へ脱出することができた。
 そこは王城の中庭。
 勝利をおさめた連合軍の兵士たちが、バンザイ三唱しているところです。
【ティガー】 「みんな、逃げろ〜! なんか、城が崩れるねん!」
【GM】 兵士たちは、「は??」というような顔をする。
 ちなみに、バルコニーでは、隊長と衛兵Aのふたりが「城は落としたのである!」と、手を振っている。
【メイユール】 知らないところで大活躍したんやな。
【ティガー】 活躍したんはいいけど、もうじき城は崩れるよ。
【GM】 すでに、あちこちで崩壊がはじまっている。隊長たちはそれに気づかず、群衆の声に応えている。
【メイユール】 早く、気づけ〜!(笑)
【ティガー】 逃げろ、ばかーッ!(笑)
【GM】 隊長たちは、キミたちが声援を送ってくれてるものと勘違いして、一生懸命、手を振ってくれてるよ(笑)。
【ティガー】 俺はもう、逃げる!
【メイユール】 他の兵士たちも、逃げたほうがいいよ。
【GM】 うん、クモの子散らすように、連合軍兵士たちは中庭から脱出していった。
 そこでようやく隊長たちも異変に気づいたけど、ときすでに遅し。
「何であるかー?!」という悲鳴とともに、崩落する城に呑み込まれてしまった。
【ティガー】 でも、たぶん、生きてるんやろな。
【GM】 そうやね。なんだかんだで掘り起こされて、向こうで太った偉い看護婦さんに手当てされてる。
「痛いのである! しみるのである!」
「ガマンしなッ」
【メイユール】 なんか、いい感じやな(笑)。
【ティガー】 あッ! ヒデヨシとネネは?!
「ヒデヨシ〜っ!」
【GM】 大丈夫、丘のふもとの排水口から、流れ出てきた。2羽とも、腹がパンパンに膨らんでるけどね。
【ティガー】 何を食べたん? もしかして、ツノの魚?
【GM】 「ツノっ! こけっ」と言うヒデヨシの額には、小さなツノが生えてたりする。
【ティガー】 ……進化した。
【GM】 というわけで、みごと、大団円を迎えることができたね。
【メイユール】 けっきょく、わたしらは人間を殺してないし。
【ティガー】 ホンマや。師匠は気絶させただけやし、オネットにとどめを刺したんはクートラやし。
【GM】 まさに、奇跡のようなハッピーエンドやね。
 とにかく、ふたりとも、おめでとう!

 その後、ティガーとメイユールは、救出した8人の魔術師とステファンを連れて、エウロギアの洞窟への帰路についた。
 途中、意識を取り戻した“真紅の騎士”ステファン・ベロフは、姿を消してしまった……。

 無事に洞窟に帰還したふたりは、カルファン騎士やロートシルト、シルヴィアと再会した。
 そして、救出した魔術師に〈テレポート〉を使ってもらい、洞窟に保管しておいたジーネの死体をオレンブルクに持ち帰ったのだった。

 8人の魔術師を助けたティガーとメイユールには、魔術師ギルドから多額の褒賞金が支払われた。
 さらに、世界を破滅から救った功績で、オレンブルク国王からも褒美が与えられた。
 爵位の授与の話も持ち上がったのだが、ふたりはそれを辞退し、ティガーはオレンブルクの高級レストランの永久フリーパスを、メイユールは1頭の名馬を受け取った。

 ふたりは国王に頼み、ジーネに〈リザレクション〉をかけてもらえるよう、ミフォア大神殿の神殿長アジャン・ラーシャに取り計らってもらった。
 そしてジーネに、〈リザレクション〉の儀式が施されることになった。(ただし、儀式の料金は褒美とは別口なので、ジーネは多額の借金とともに蘇ることになる)

 こうして、ひとつの冒険が幕を降ろした。

 人々は決して忘れないだろう。
 人々は永遠に語り継ぐであろう。

 世界を破滅から救った、紅緋の精霊使いが絞った知恵を。
 暗黒神を退けた、虎の王の愛を。
 ふたりが出会った、数多のひとの物語とともに──。

÷÷ おわり ÷÷
©2004 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2004 Jun Hayashida
Map ©2004 Moyo
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お名前
ひと言ありましたら
 
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