≪REV / EXIT / FWD≫

§烙印の天使:第16話§

謎の組織

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 襲撃者との戦いの事 ▽ 捕らわれたティガーたちの事 ▽ 焼肉、食えなくなる事

襲撃者との戦いの事

【GM】 じゃあ、続きをやろう。森の中から、矢がパラパラと降ってきたところからやね。
【ティガー】 「何すんねん」って言うて、とりあえず剣を構える。
【ジーネ】 スモール・シールドを構える。
【シルヴィア】 僕は後ろにさがるよ。
【ティガー】 ファンリーもさがらせる。俺の背中に隠す。
【GM】 すると、森の中から11人の男たちが姿を現した。いずれも真っ黒に日焼けして、不精髭を生やした、ならず者って感じやね。30代〜40代前半に見える。
【ジーネ】 山賊か……。
【GM】 そのうち4人は、傷んだ古いプレート・メイルを纏い、ティガーと同じツヴァイハンダーを装備している。
 残り7名は、薄汚れた鍔広の羽帽子──羽飾りはすでにガビガビ──をかぶり、傷んだリングメイルに身を包み、弓に矢をつがえてたり、スモール・シールドにレイピアを構えてたりする。
【シルヴィア】 ボスっぽい奴もいる?
【GM】 羽帽子のうちのひとりが、リーダーっぽいね。その脇には、縄で縛られたズバンチョがいる。
【ティガー】 ズバンチョ、捕まっとん!? 別に「返せ」とは言わんけど。
【GM】 そして羽帽子リーダーが、ズバンチョに「どっちの娘だ?」と、尋ねる。
 するとズバンチョは、「あっち、あっち。黒い髪のほう」と、答えた。
【ティガー】 それって、やっぱりファンリーのことを言ってるんやんな?
【GM】 うい。
【ジーネ】 「ズバンチョ、やっぱり殺す」と、思った。ファンリーのこと、ばらしやがって!
【ティガー】 「見損なったぞ、ズバンチョ! ニョムヒダの像、返せ」
【ジーネ】 返して欲しいんかぃ!
【ティガー】 「友達の印やったのに。そんなことするとは思わなかったぞ、貴様」
【GM】 「だって、1時間待ってたのに、テレポートしてきてくれなかったし、待ってるうちに捕まってしまうし、殺されるのはイヤなんですもん〜」と、泣いてるよ。その背でニョムヒダも「にょ〜」。
【ティガー】 向こう時間では1分やったから、しゃあないねん。
【ジーネ】 しかし、ズバンチョって化け物の仲間やのに、なんでこう、すぐに捕まるかな。
【シルヴィア】 小心者なんやろ。
【GM】 さて、ならず者たちは、身ぐるみ脱いでファンリーを置いてけと、キミたちに要求してくるよ。
【ティガー】 「プレート・メイルならあげてもええけどな、ファンリーはイヤ」と言う。
【GM】 「鎧もいるけど、娘もいる」と、向こうは答える。
【ティガー】 じゃあ、鎧とファンリーと俺をあげる。俺もファンリーと一緒に行く。ふたりでひとつ!
【GM】 NON。キミはいらないよ(笑)。縄で縛って袋に入れて、後ろの海に捨てるから。
【ティガー】 えぇー?
【シルヴィア】 とてもじゃないけど、呑める要求じゃないね。きっぱりと、「断る」と言う。仲間の後ろから。
【GM】 「ならば、しかたあるまい。黒髪の娘を傷つけるわけにはいかんが、残りの3匹は料理させてもらおう」
【ティガー】 料理されるんは、そっちや。
【GM】 それでは、戦闘ラウンドに移行するよ。
【ティガー】 ファンリーから離れられへんから、ここで剣を構えて迎え撃つ。
【ジーネ】 同じく。
【シルヴィア】 いちばん効果的な場所に、〈スリープ・クラウド〉をかけようとする。何人ぐらい、範囲に入りそう?
【GM】 4人かな。あと、ズバンチョも入る。
【シルヴィア】 ズバンチョはどうでもいいけど。それじゃ、かけます。(ころっ)羽帽子Cだけが寝た。
【GM】 (ころっ)ズバンチョも抵抗。「なにするですか!」と、怒ってるよ。
【シルヴィア】 寝たふりでもしとけばええのに。
【ジーネ】 そんで隙を突いて逃げるとか、そういう頭は働かんのやろか。
【GM】 では、ならず者たちの反撃ね。
 ティガーに、ツヴァイハンダーを持った男A、Bのふたりが攻撃する――当たったけど、ダメージなし。
【ティガー】 ってゆうか、そいつら、なんで俺と同じ剣持ってるねん。
【GM】 「我が祖国の剣だからな」と、答える。
【ティガー】 あ、そうなん!? そいつらの祖国って、カルファン王国、滅びた国。
【GM】 「そのとおり。貴様のような若造が持っていていい剣ではないわ!」
【ジーネ】 そっか〜。つまり、この人たちは──言わんといてやろか。
【GM】 言ってもいいよ、別に。何かね?
【ジーネ】 いや〜、滅びた国の騎士崩れが山賊に身を落としたとか、そういうのなんやな〜って。
【GM】 そのジーネには、羽帽子A、Bが行く──レイピアの先が鎖帷子の隙間を抜け、ジーネにダメージを与えた。ダメージは2点、2点。
【ジーネ】 かすり傷さ。
【GM】 第2ラウンドに移行するそのとき、森の中から、新たな軍勢が現れた。その数7名。
 こちらは、バラエティにとんだ構成やね。さまざまな装備に身を包んだ戦士っぽいのが4名、レンジャーっぽいのが2名、ハード・レザーに軽めのクラブを持った女性が1名。
【シルヴィア】 新手か。
【GM】 お待たせしました、メイユール。状況は事前に説明したとおりです。
 リーダーは、「『隻眼の狼』を追い払うぞ」と言う。「青い鎧の奴らは、後で取り調べる」
【メイユール】 はい。

 こうして、ティガーたちVSならず者たちVSメイユールたちの戦いが始まった。
 新たに戦闘に加わったメイユールたちは、ならず者たちに向かってゆく。

【ティガー】 カルファン王国の生き残りが、ここで何やってんの?
【GM】 祖国を奪回し、カルファン王国を再興させるための、資金を集めてるらしい。
「必ず、王虎の御旗を、再びレギトの都に掲げてみせる!」
【ジーネ】 「山賊ごときが何を言うとる、けっ!」
【ティガー】 ジーネを睨んでみる。でも、俺らそんなに金は持ってへんで?
【GM】 「あのおっさんの話だと、そこの黒髪の娘をランダースに連れて行けば、破格の額で買い取ってもらえるそうじゃないか。
 うまくすれば、我々の祖国の再建に、力を貸してもらえるかも知れん」
【ジーネ】 サ〜ン〜チョ〜スぅぅ〜!!
【GM】 「い、いえ、わたしは“生まれ変わった”ズバンチョでございます……」
【シルヴィア】 やってることは、変わってないやんか(笑)。
【ティガー】 俺の鎧を売れば、けっこういい値段になると思うけど。
【シルヴィア】 いくらなんでも、国を再建させるには程遠いんじゃないかな?
【ジーネ】 ちゅーか、山賊なんかに協力してやる必要はない。
【メイユール】 「リーダー、あいつら何かもめてますよ?」(笑)
【GM】 「ただの仲間割れだろう。ほっとけ」(笑)
【ティガー】 カルファンBに攻撃。(ころっ)あ、クリティカルしてしまった! ダメージは24点。
【GM】 それは、カルファン戦士のプレート・メイルを突き破ったな。カルファンBは、血しぶきををあげながら、「ぐはぁ!」と倒れた。
【ティガー】 うそぉ、マジで? ごめん。生きてるの? 死んだ?
【ジーネ】 死んどってくれたらいいんやけど。
【GM】 (ころっ)虫の息だけど、かろうじて生きてるよ。
 カルファン戦士Aは、「よくも、マイオールを!」と、目に涙を浮かべて怒ってるよ。
【ティガー】 「いや、殺すつもりはなかったんやけど」

 そしてジーネが攻撃し、シルヴィアが魔法を唱え、メイユールたちも、ならず者たちに襲いかかる。
 やがて、形勢不利と悟ったならず者たちは、撤退を始めた。

【ジーネ】 ズバンチョも連れてかれたのね。別にいいけど(笑)。
【GM】 ちなみに、接敵状態にあるならず者たちの離脱は、ラウンドの最後になる。そいつらに攻撃するなら、プラス4のボーナスがつくよ。
 カルファン戦士Aは、倒れたマイオールを担いで逃げようとしている。
【ジーネ】 情報源が欲しいから、誰かひとり捕まえよう。
【ティガー】 俺は剣をしまって、見逃す。
【ジーネ】 タックルでもせぇー!!
【ティガー】 ジーネがやれば? 別にそれを止めはせん。
【ジーネ】 止めるっちゅうか、協力しろよな〜。じゃあ、私ひとりで羽帽子Aにタックルをかまします。(ころっ)失敗。
【GM】 ジーネはずざざーっと地面を滑って、顔を擦りむいてしまった。
【シルヴィア】 その一連のやりとりを、暖かく見守っていてあげる。
【ジーネ】 情報収集しようという気がないんか、てめーらは〜。
【GM】 メイユールたちと対峙していたならず者たちも、逃亡を図る。
 メイユールたちは、手筈どおりにならず者たちを見逃し、レンジャーのひとりが、それを追って行った。
 ならず者たちは撤退し、姿を消した。
【メイユール】 あとは、あの青い鎧の怪しい人たちを、見張っておけばいいんですね。
【GM】 そのとおり。メイユールたちのリーダーが、あごをしゃくって、次の作戦の開始を告げる。
 メイユールと仲間の男性たち計6人は、よく訓練された動きで、すみやかにティガーたちを取り囲んだ。
【メイユール】 「そこを動かないでください」と、青い鎧の人たちに言う。
【ティガー】 ぬ? 「また出た」と思う。
【GM】 リーダーも、「武器を捨てて、我々に従いたまえ」と告げる。
【ジーネ】 さあ、行こうか。街道を探さないとねっ。
【GM】 殺されたいのなら、どうぞ、ご勝手に。ジーネの動きを見て、男たちは武器を構えたよ。

捕らわれたティガーたちの事

【メイユール】 わたしは、あんまり手荒なことはしたくないんで、彼女が逃げるようだと、魔法で捕らえようとします。
【ジーネ】 そんなことできるの?
【GM】 できるよ、メイユールには。
【シルヴィア】 とりあえず、ファンリーをわざわざ危険に晒すわけには、いかないね。
【ティガー】 ってゆうかさ〜、敵の敵は味方じゃないの? 狙いはファンリーか?
【GM】 相手のリーダーは、「その小娘がどうかしたのかね?」と、逆に尋ねてくる。
【ティガー】 あ、そうなんや。
【GM】 メイユールたちにとって、ティガーたちは単純に不審人物。旅人ふうなのにロクな荷物も持たず、そのくせやたら武装だけは立派という、看過できないほどの怪しい一団。まっとうな旅人でないことだけは、はっきりとわかるからね。
【メイユール】 青い鎧やし(笑)。
【ティガー】 いや、鎧はな、GMの陰謀やねん(笑)。
【シルヴィア】 陰謀といえば、僕のクロースのほうがもっとひどいよ。
【GM】 で、降伏するの、しないの?
【ティガー】 「ファンリーに何もしないのなら、そっちの言うことに従ってもいい」
【GM】 「うむ。おとなしく従ってくれるのなら、我々はキミにも、キミの恋人にも、危害を加えない」と、リーダーは保証する。
【ジーネ】 なんで、ファンリーがティガーの恋人だってわかるの!
【メイユール】 あんなに庇ってるし、誰にでも察しがつくって(笑)。
【GM】 「では、とりあえず、武器を預けてくれるね?」
【ティガー】 じゃ、カルファンの剣を地面に突き立てて、「持ってけ」って言う。
「後で返してな。それ、宝物やから」
【GM】 「キミたちの素性が、はっきりしたらね」と言って、向こうの戦士がカルファンの剣を持つ。
「おおぅ。よく、こんなの振り回してるな〜」
【ジーネ】 降伏しちゃうの?
【シルヴィア】 ま、こちらのリーダーがそう言ってるんやから、従おう。僕もメイジ・スタッフを地面に置くよ。
【ジーネ】 じゃあ、モーニング・スターを足下に置くぐらいなら、してもいい。
【GM】 メイユールたちは、ティガーたちが放棄した武器を拾い集める。
 そして、ティガーたちをロープで後ろ手に縛って連結し、そのうえ目隠しして、連れて帰ることになった。
【ティガー】 あ、そういうことになってるんか。
「うわ、かっこ悪ぅ。これ、主人公の扱いか?」と、思っとく。
【GM】 じゃあ、ティガーだけ金色のロープにしてあげよう。
【ティガー】 やった〜、特別製や!(笑)
【GM】 目隠しも特別製やで。びっくりした目玉が描かれてある。
【ティガー】 それは拒否(笑)。
【GM】 さて、ティガーたちは途中で何回もつまずいて転びそうになりながら、苦労して歩いてゆく。
【メイユール】 その様子を見ながら、「クスっ」と笑っとく。「あそこ石がある、きっとつまずく、やっぱり!」って(笑)。
【ティガー】 誰か笑ってるぅ。
【GM】 ずいぶん長いこと歩かされてると、やがて、ティガーたちの耳に、木を打つような音、金属音、馬の嘶き、豚や鶏の鳴き声、人々のざわめきなどが聞こえてくる。どうやら、大きな集落に近づいてるらしい。
 ギ〜っと木が軋むような音がして、「ご苦労さまです」と迎える、若者の声がする。
 リーダーが、「かくかくしかじかで、怪しい奴らを捕らえて来たから、アルヌーさんを呼んでくれ」と、言っている。
【ジーネ】 『捕らえてきた』って、何だかな〜。
【GM】 ティガーたちは、このざわめきの中をさらに歩かされ、「入りな」と、どこかに入らされた。外の雑音が遠くなる。
 そして、縄を解かれて目隠しを取られると、そこは、鉄格子の嵌まる小さな牢だった。小屋の中に牢獄を作った、という感じやね。
【ティガー】 あれぇ?
【GM】 ちなみに、ティガーとシルヴィア、ファンリーとジーネというふうに分けられて、投獄されてるよ。もちろん、扉には外から鍵をかけられる。
「それじゃ、メイユール。こいつらを見張っててくれよ」
【メイユール】 は〜い。見張りはわたしだけ?
【GM】 そう。逃がしちゃダメだよ、後で取り調べがあるから。
 他の男たちは、「いやー、疲れた、疲れた」と、小屋から出て行った。
 さっきの男のセリフで、見張りについたハード・レザーの女性が、メイユールという名前だと、ティガーたちにもわかったね。
【ティガー】 GM、ファンリーの牢屋は近くにあるん?
【GM】 隣の牢から、キミの好きな人の気配がする。
【ティガー】 「ファンリー、無事?」って聞く。
【GM】 「無事です」と、答えが返ってくるよ。「ティガーは大丈夫ですか? シルヴィアさんも」
【ティガー】 「大丈夫、大丈夫♪」
 ん、なら、OK。暑いから鎧を脱ごうっと。
【ジーネ】 ファンリーのことだけかぁーッ!?
【ティガー】 え??
【シルヴィア】 ジーネのことは聞かないのかい?(笑)
【ジーネ】 ファンリーが無事で、ジーネが無事でない保証なんてないじゃない。あんなけオムレツを作ってやったのに(笑)。
【GM】 じゃあ、ファンリーが「ジーネさんも大丈夫です」と、つけ加えとこうか。
【ティガー】 まあ、それはいいとして、メイユールに「見張りの姉ちゃん、ここ、どこ?」って聞いてみる。
【メイユール】 それはちょっと、言えない。
【ティガー】 キミら、何者?
【メイユール】 う〜ん、それもちょっと……。
【ジーネ】 この地方の名前は?
【メイユール】 うん、明かせない。
【ジーネ】 地方の名前でも?
【メイユール】 わたしは口止めされてるから(笑)。
【ジーネ】 まあ、もっと偉い奴が来たら、いずれわかるこっちゃろ。
【ティガー】 あと、俺の剣は無事?
【メイユール】 無事なんちゃうかなぁ。GM?
【GM】 小屋の入口近くの空き室に、まとめて保管されてるよ。
【ジーネ】 牢屋を蹴り破って外に出て、武器を取り返して逃げようか。
【ティガー】 やらへんよ、そんなこと。
【メイユール】 すぐに仲間を呼ぶよ、それは。
【シルヴィア】 そのうち取り調べがあるんやろ? 僕はそれまで寝て待つよ。おやすみ。
【ティガー】 俺は食べ物を要求する。
【メイユール】 あげていいんですか? いちおう、仲間を呼んで聞いてみるけど。
【GM】 「夕食まで、まだ時間があるよ。水でいいだろ」
【ティガー】 「えー!? だって、この間から魚とワカメしか、食ってないねん」
【GM】 「知らねーよ! なんだ、捕虜のくせに態度でかいなぁ」(笑)
【ジーネ】 捕虜じゃないもん!
【GM】 いや、こっちにしてみれば、間違いなく捕虜やね。
 そんなこんなで時間は流れ、入口から4人の男性が入ってきた。
 ひとりは、前髪の長い20代半ばの優男ふう。ひとりは、肩にフクロウをとまらせた40歳ぐらいの魔術師。あとの2名は、剣士です。
【ティガー】 フクロウ! 「わあ、いいなぁ〜」って見てる。シルヴィアに、「使い魔がおるで」って教えてあげる。
【シルヴィア】 寝返りうって、ふて寝する。「オレもそのうち」と、思いながら(笑)。
【GM】 前髪の長い優男は、「やあ、ご苦労さま」とメイユールに声をかけ、前髪をバサっとはね上げる。
【メイユール】 「いえいえ」
【GM】 魔術師が、牢屋の中のキミたちに、「事情を聞かせてもらいたい。代表者1名、出てきてくれるかな?」と言う。
 じゃあ、リーダー、よろしく。
【ティガー】 うい〜。
【GM】 ティガーが連れて行かれたのは、この建物の奥の一室。そこは扉がない戸口なので、ジーネたちにも、廊下の向こうから取り調べの様子が聞こえてくるよ。
 メイユールは、引き続き牢の見張りを続けてね。
【メイユール】 ラジャー!
【ジーネ】 取り調べ室に行くのに、私の牢の前を通る?
【GM】 通らない。反対側だからね。
【ジーネ】 なんだ、前を通ったらティガーをガッと捕まえて、「ファンリーのことを、ぐちゃぐちゃしゃべるなよ」と、言いたかったんやけど。
【GM】 ……できなくてよかったな。どこの世界に、これから取り調べようとしてる人間の目の前で、「情報を隠せ」と言う奴がおるねん。そんなことしたら、「ファンリーって何かね?」と、小1時間問い詰められるに決まってるやないか。
【シルヴィア】 危うく、ヤブヘビになるところだったね(笑)。
【GM】 それでは、場面は取調室のティガーに移る。
 部屋の中には、テーブルがひとつあり、戸口以外には小さな窓しかない。テーブルに優男と魔術師が座り、ティガーの背後に剣士がひとり、出入口にも剣士がひとり立つ。
 魔術師が「まあ、かけたまえ」と、ティガーに対面の椅子に座るよう促すよ。
【ティガー】 ドカっと座る。
【GM】 態度でかいなぁ(笑)。じゃあ、魔術師が道具袋から拳大の水晶の玉を取り出して、テーブルの上に置く。
「これは、ウソを看破する魔法の道具だ。これに手を置きながらウソを話すと、赤く光るので、すぐにばれてしまうよ」と、魔術師は言う。
【ティガー】 なるほど〜。
【GM】 「では、いちど試してみよう。水晶に手を置きたまえ」
【ティガー】 置いてみた。
【GM】 「私の質問に『はい』と答えるんだよ。キミは女かね?」
【ティガー】 「はい」
【GM】 すると水晶は、ピカっと赤い光を放った。

焼肉、食えなくなる事

【ティガー】 ほう。じゃあ、「オムレツは嫌い」って言ってみる。
【GM】 ピカっと光った。
【ティガー】 おおーっ。俺、オムレツ好き〜。
【GM】 魔術師に「遊ぶな!」と、叱られた(笑)。
「ま、このような力のある水晶なのだ。これからの質問、答えたくないことは答えなくても構わないが、変な誤解を招きたくなければ、素直にしゃべってくれたほうが賢明だね」
【ティガー】 あ、いちおう、黙秘権はあるんや。
【GM】 そういうこと。それじゃ、尋問させてもらおう。
「まず、キミの名前を教えてくれたまえ」
【ティガー】 えーッ?! それは……それはなぁ〜……。
【メイユール】 いきなり黙秘権?
【シルヴィア】 そうなんか。ティガーって偽名やったんか。
【ジーネ】 それは、私らに聞かれたくないわけ? それとも、誰にも聞かれたくないわけ?
【ティガー】 試しに「ティガー」と言ってみる。
【GM】 ピカーっと光った(笑)。
【ティガー】 やっぱり〜!(笑)
【GM】 魔術師たちは、「こんな質問にウソを答えて、どうするのかね?」と、目を丸くしてるよ。
【ジーネ】 きっと、自分の本名が嫌いで、偽名を使ってるんやな。恥ずかしい名前なのに違いない!
【ティガー】 「というかさ〜、そっちこそ何なん? キミたち、何者?」
【メイユール】 めっちゃ、態度でかい〜(笑)。
【GM】 すると、優男が前髪をかきあげながら、「それもそうだ。ひとに名を尋ねるときは、まず、自分から名乗るのが礼儀だな」と言う。
 しかし、魔術師に「おやめなさい」と、たしなめられてしまう。
【ティガー】 じゃあ、「そっちが名乗らないなら、こっちも本名を名乗らへん」と答える。
【GM】 「まあ、よろしかろう」と、魔術師は言う。
「では、単刀直入に尋ねる。キミは、ランダースの手の者かね?」
【ティガー】 「違う」
【GM】 光らない。「では、『隻眼の狼』の者かね?」
【ティガー】 何それ?
【GM】 「この辺りにいる、山賊団だよ」
【ティガー】 「じゃあ、違う」
【GM】 光らない。「キミたちは、我々に敵対する者かね?」
【ティガー】 「違う。つーか、キミら、誰よ?」
【GM】 光らない。
「よろしい。ご協力、感謝する。ところで、ロクな装備も持たず、武装だけして、あんなところで何をしてたのかね?」
【ティガー】 「あんな、ブレインに焼肉食いに行く途中やってん」
【GM】 ティガーがそれを言うと、水晶は光らない(笑)。
【メイユール】 廊下でそれを聞いて、「焼肉か〜。いいなぁ」と思ってる(笑)。ここに来てから、あんまりいい物食べてないし。
【ティガー】 「ほんでな、ウィスから船に乗ったら、途中で嵐にあって海に落ちて、荷物が全部なくなってんよ。
 そんで、海底都市に行ってしまって、そこでこんな装備を調達してきてん。それから魔法陣でテレポートして地上に戻ってきたら、山賊に襲われたんよ。な?」
【GM】 なるほど。これで、キミたちが脅威となる存在でないことはわかったね。
 それじゃ、偽名のティガーくん、牢屋に戻ってください。
【ティガー】 うい〜。
【GM】 メイユールは引き続き、見張りをしといてください。夜になったら、別の人と交代してもらうから。
【メイユール】 わかりました〜。
【ジーネ】 その魔術師たちって、もしかしてバカ?
【GM】 ……何で?
【ジーネ】 だってさ〜、あんな説明で納得するねんで〜。本当の名前も言わないうえに、旅の目的が「焼肉を食べに行く」なのに、あっさり納得してしまうところが──。
【GM】 あの答えで水晶が光れば、そりゃ、余計な追求を受けるでしょう。でも、光らなかったからね。
【ティガー】 俺、焼肉食べたかってんもん……。
【ジーネ】 でも、それはウソをつけば光るだけでしょ? 焼肉を食べる以外の理由は、聞かんかったやんかぁ〜。
【GM】 聞く必要があったのかい?
【ジーネ】 聞かなきゃおかしいでしょ。私たちがファンリーを連れてランダースを目指してる理由、ひと言も尋ねなかったじゃん。
 ランダースに乗り込んで、ファンリーを狙ってる奴らを叩きのめす、という目的を。
【GM】 ファンリーって、なに?
【メイユール】 「なんだ、そういう目的があったんだ」と、思う(笑)。
【ティガー】 ファンリー、ジーネの口をふさげ!
【シルヴィア】 メイユール側は、ファンリーのことなんて全然知らないし、どうでもいいことなんでしょ。僕たちが敵対勢力じゃないことだけわかれば、それでよかったんだよ。
【GM】 そのとおり。彼らが知りたかったのは、キミたちの名前でも、旅の目的でもないんやで?
 重要なのは、キミたちが自分たちに敵対する者なのかどうか、ということ。それさえわかれば、ティガーの名が偽名だろーが、旅の目的が「焼肉を食べに行く」だろーが、そんなのどうでもいいんだよ。
【ティガー】 とりあえず、俺ら怪しくないんやんな。無事に釈放してもらえるの?
【GM】 「うむ、明日にでも釈放しよう」
【ジーネ】 『明日』って、なぜ? 今じゃダメなん?
【GM】 もう日が暮れるから、今から釈放するのはムリだね。ここで「さようなら」というわけじゃないんやで? また目隠しして、どこかの街道付近に送っていくことになるから。
【ジーネ】 街道付近はやめて欲しいな。どこか、町の近くに連れていって欲しい。
【GM】 それはできない。
【ジーネ】 だって、食料とか手に入れなきゃいけないんだよぉ!
【メイユール】 分けてあげたいけど、わたしたちの台所も苦しいからねぇ。
【ジーネ】 誰も、あなたたちから買いたいとは言うとらへん。
【ティガー】 ところで、メイユールたちに聞くけど、ここってどこかの国なん?
【GM】 「それは答えられない。キミたちは部外者だからね」
【ティガー】 何してる人らなのかも、教えてもらわれへんの?
【GM】 う〜ん、それも教えることはできないなぁ。見た感じ、メイユールとか、魔術師の護衛の戦士とか、傭兵っぽいのが多い組織みたいだけどね。
【ティガー】 あの山賊団とは、仲が悪いんやんな?
【GM】 そうやね。山賊とは、敵対する関係にあるらしい。
【シルヴィア】 だから、あの岸壁で山賊と戦ったんやな。
【GM】 そう。ちょうど森付近をパトロールしてたら、山賊が怪しい旅人を襲っているのを見かけた。
 旅人が何者かはわからないけども、とりあえず、はっきり敵だとわかってるのは山賊なので、山賊側を襲撃したんやね。怪しい旅人は、その後、取り調べるということで。
【ティガー】 山賊って、俺と同じ剣を持ってたけど、カルファン王国の人なん?
【GM】 「カルファン王国出身の者が混じってる、という報告もある。他に、ファラリア王国の出身の者も混ざってるようだ。もちろん、元々山賊である者たちも多数いるよ」
【ジーネ】 要するに、寄せ集めやな。
【ティガー】 あの人ら、「カルファン王国を再建する」とか言ってたけど、あれはそういう集団なん?
【GM】 「そういう目的を持ってる者も、いるかも知れないな」
【ジーネ】 でも、ファンリーを狙ってきてたよなぁ。
【シルヴィア】 それは、ズバンチョが何か言うたせいやろ。「ランダースに売り渡せば──」とか。
【ジーネ】 あの山賊の居場所とかは、わかってるの? 殴り込みに行くんなら手伝おっかな〜、と思ってるんやけど。
【GM】 「まあ、キミたちの腕前のほどは報告されてるし、我が団に入るのであれば、歓迎しよう」
【ジーネ】 いや、仲間になるとは言ってない。山賊にはファンリーのことを知られてるし、手っとり早く後顧の憂いを絶つために、そちらを利用したいと言ってるだけなんやけど。
【ティガー】 「利用したい」なんて言って、誰が協力してくれるの?(笑)
【シルヴィア】 もうちょっと言葉を選ばんと……。
【ジーネ】 とりあえず、近いうちに討伐隊を派遣する予定とかはある?
【GM】 「そのうちあるだろう」
【ジーネ】 そのうちかぁ。じゃあ、自分らで叩き潰しに行ったほうが早いかな。
【シルヴィア】 どうやって行くの? 山賊がどこにおるんか、知らんのに。
【ティガー】 仲間に入れてもらえばええやん。ここがランダースと敵対してるんなら、味方が増えるってことやし。
 俺は「この組織に協力するぜっ」って言う。
【GM】 ティガーが入団するなら、ファンリーもそれに従う。
【ジーネ】 それはいいけど、いつまでもここにおられへんねんで?
【シルヴィア】 別に期限がある旅じゃないんやから、のんびりやればええやん。案ずるより産むが安し。僕もここに入団するよ。
【GM】 「それはありがたい。では、この契約書にサインを」
【ティガー】 ん〜……サイン?!
【GM】 呼び名でいいよ(笑)。
 それでは、キミたちは、メイユールたちの組織に所属することになりました。契約が完了するまで、抜けられなくなったからね。
【メイユール】 あーあ、かわいそうに。焼肉が……(笑)。
【ティガー】 えっ、焼肉食えないの? ウソ!?
【メイユール】 目頭を押さえて同情する。「気の毒ねぇ」
【ティガー】 先に言えよっ。食ってから契約したのに!
【シルヴィア】 そういう問題なんやな(笑)。

÷÷ つづく ÷÷
©2002 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2002 Jun Hayashida
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