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§烙印の天使:第7話§

怪奇の館

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 森のクマさんの事 ▽ 黒ずくめの遺言の事 ▽ 紳士なバンパイアの事

森のクマさんの事

【GM】 ティガーは、宿場街の通りでカールを見つけた。
 カールは、チェイン・メイルを着込んでバトル・アックスを担いだ冒険者ふうの中年男性と、何やら話している。
【ティガー】 カールくんのとこに行く。
「カバンタは、どこに行ったん?」
【GM】 「逃げられたさ」
【ティガー】 「最悪やなぁ」って言う(笑)。
【GM】 「だから、このひとに姉ちゃんのことを話してたのさ」と、中年の男性を指して言う。
 カールが、冒険者っぽい人間に手当たりしだいバーバラのことを聞いてまわっていたら、このおじさんが、「小僧。もう少し詳しく、その話を聞かせてくれ」と言ってきたらしい。
【ティガー】 俺も「彼女がさらわれてさぁ〜」と、話に紛れ込む。
【ジーネ】 『彼女』!? いつの間にか、彼女にしてしまってる(笑)。
【ランディ】 まあ、ファンリーもまんざらでもなさそうやったし。
【GM】 その中年男性の名前は、レイモンド・バイヤー。ロンデニア王国の片田舎デンス村で、妻と16歳の娘との3人で暮らしていた、元冒険者のファイターです。
【ジーネ】 3レベルで引退してしまったんか。
【GM】 きっと、GMが1回しかセッションしてくれんかったんやろ。
 レイモンドのひとり娘ステラは3ヶ月前に失踪し、それ以来、彼は娘の消息を求めて島中を旅しているらしい。
 今回は4度目のロンデニア訪問。島内ではラチが開かんということで、一度、大陸に渡ろうかと考えてたところ、若い女性の失踪の話をしているカールを見つけた。
 その話が自分の娘の失踪と何か関連があるのかと思い、カールに詳しいことを尋ねてるところやったんやね。
【ランディ】 なるほど。
【ティガー】 「ところでカール、レモネード飲むかい?」
【GM】 カールはティガーが差し出した謎の液体を見て、「なに、これ?」と言ってる。
【ティガー】 「なんか、売りつけられたんだよ。果汁100%!」
【GM】 「このビン、誰かが口をつけた跡があるし」
【ティガー】 「きれいな姉ちゃんだったらいいね」
【GM】 「ヤだよーっ。自分で飲めよぉ」と言ってるで。
【ティガー】 「俺もヤだよ〜」(笑)
【GM】 カバンタは、そんなところにヒョコヒョコやって来た。
 カバンタが宿場街の通りを歩いてると、向こうで息子とティガーが変な液体の入ったビンの押しつけ合いをしてるのを見るよ。
【ティガー】 「おー、飲むか、カバンタ。ジュース買ってん」
【カバンタ】 ……飲まへん。
【ティガー】 椅子かじるくせに、飲めよ!(笑)
【カバンタ】 そんなん飲んだら、お腹壊す〜。
【GM】 ジーネとランディもそこへ通りかかる。
【ジーネ】 私は急いで酒場を訪ねて歩こうとしてるんで、ダッシュしてる。
【ランディ】 丘を駆け降りてきたんや(笑)。
【ジーネ】 で、通り過ぎなに「バトル・アックスを担いだ3レベルぐらいのファイターの中年の男性冒険者を知らない? そういうひとを捜してるから、見かけたら教えてねッ」とティガーに言って、走り去る。
【ティガー】 ここにいるぞ〜。
【ジーネ】 今は『捜す』ということで、頭がいっぱいやねん(笑)。
【ランディ】 僕はその隣でバトル・アックスのおじさんに、「ひょとして、あなたは若い女性の失踪について調査してる冒険者ですか?」と尋ねる。
【GM】 「いかにも」
【ランディ】 「おお、じつはあなたを探してたんですよ」と、事情を話す。
【カバンタ】 そのおっさんがこれまでに集めた情報を、すべて話してもらおか。
【GM】 残念ながら、大した情報は持ってないよ。この3ヶ月の間に、若い女性の失踪事件の噂を4件ほど聞いた、という程度。その失踪自体が、いちばん古いものではすでに2年近く経ってたりするし、手がかりらしい手がかりはない状態。
 なもんで、おじさんは一度、オレンブルクへ行ってみようかと思ってたところだ。
【ティガー】 オレンブルクには何もないで。失踪してんのは魔術師やし。
「俺は、ランダースってとこが怪しいと思うねんけど。ランダースへ行こうや、ランダース」って言うてみる。
「きっと、あんたの娘も、黒ずくめがさらわれたんやで。見たもん」
【カバンタ】 見たんかぃ。
【GM】 するとおじさんは、『黒ずくめ』という言葉に反応した。
「そういえば、ついさっき、黒ずくめの怪しい集団の噂を聞いたぞ」
【ティガー】 なになに、なんて噂?
【GM】 ロンデニアの街から出て、森の中を2日ばかり南にいったところに、ポドプという小さな漁村がある。
 先日、黒ずくめの怪しい男がふたり、これは黒ずくめじゃないけど、若い女がひとり、そのポドプ村に漂着したらしい。ちなみに黒ずくめの男の片方は、大ケガを負っていたという。
【ティガー】 よしッ、それや。行こう!
【ジーネ】 というより、バトル・アックスのおじさん、若い女が漂流してきたという話を聞いて、「自分の娘のことかも」と考えなかったんやろか。
【GM】 考えたかもね。そのうえで、さらなる情報を探ってる途中だったのかも知れない。
【ティガー】 とりあえず、ティガーは『漂流してきた若い女』をファンリーだと考える。
【カバンタ】 間違いなく、そうやろな。
【ランディ】 僕もそう思う。でも、カールやおじさんは、きっと別の女性を思い浮かべてるんやろな。カールはバーバラさんを、おじさんはひとり娘を(笑)。
【GM】 カールはカバンタの裾を引いて、「『漂流してきた若い女』って、姉ちゃんのことだよ、きっと。そこに行ってみようよ、父ちゃん」と言う。
【カバンタ】 知らん、知らん。勝手に行きーな。
【ジーネ】 そこに戻ってきて、ティガーたちがバトル・アックスのおじさんと一緒にいるのを見て、「あっ、見つけといてくれたのね!」。
【ティガー】 ノド乾いたやろ。レモネードあげる。はい。
【ジーネ】 いらん。
【ティガー】 果汁100%やのになぁ。とりあえず、噂の漁村に行こう。おっさんも一緒に行こうぜ。
【GM】 ポドプ村までは、2日ほどの旅になるよ。食料とかは大丈夫なのかね?
【ティガー】 ここで準備してく。市場で携帯用の肉と缶詰を買う。
【ランディ】 缶詰って……そんなんあるの?
【ティガー】 単に保存食が缶の中に入ってるだけ。あと、果物も欲しい。
【カバンタ】 しおれていくで。
【ティガー】 しおれる前に食べきるもん。食料ぜんぶで100フィスぶん買った。
【GM】 100フィスぶん!? えらい買い込んだな。
【ティガー】 遠足気分やねん。
【GM】 出かけるのが嬉しくてしゃあないんやな。
【カバンタ】 さ、準備できた。南に向けて出発しよか〜。
【ジーネ】 黒ずくめたちも移動するかも知れんし、できる限り全力疾走で行こう。
【ランディ】 2日も全力疾走するなんてムリや(笑)。
【ティガー】 食べてる間がなさそうなので、却下します(笑)。

 冒険者たちはロンデニアの街を発ち、南に広がる森の中をポドプ村めざして進む。
 と、行く手に、木の幹に前足の爪でガリガリ傷をつけている、1頭の熊を発見した!

【ティガー】 熊か。強そうやな。
【カバンタ】 反応は腹具合によるんやんな。どう、腹減ってる?
【GM】 熊はつぶらな瞳でキミたちを見て、よだれをダラ〜っとたらしてる。
 どうやら、木の上の蜂の巣を襲って、蜂蜜を食そうとしていたらしい。が、うまくいかないもんだから、すごく気が立ってるようだ。
【ランディ】 食料を投げつけてやったらいいですな。
【ティガー】 ……なぜ、こっちを見る?
【ランディ】 だって、いちばん食料を持ってるから(笑)。
【GM】 熊も匂いを嗅ぎつけたのか、「グ?」とティガーを見る。
【ティガー】 「おまえにやる分はねーよ」
【GM】 というわけで、息詰まるような交渉は決裂しました。熊は実力でエサを確保することを決めたようです。やる気まんまんで、のそのそと歩いてくる。
「ガーっ」
【ランディ】 なるだけ追い返そうと、威嚇し返します。
【GM】 ランディは、熊に負けじと「きしゃあ!」と大声を出した。どっちが熊か、わからない状態になっております。
【ランディ】 どんな威嚇や(笑)。

 ジーネのモーニングスターのクリティカルが2発きまり、熊はわずか2ラウンドで倒されてしまった。

【GM】 ズシンと倒れた熊は、ピクピク痙攣してる。
【カバンタ】 ほっといたら勝手に死ぬやろ。蟻んことかがいっぱいたかって。
【ランディ】 蟻に殺されるぐらいなら、名誉ある死を与えましょう。介錯をしてあげる。
【GM】 というわけで、サクっととどめを刺されました。
【カバンタ】 よっしゃ、肉ゲットぉ〜。熊の左手は高く売れる〜。
【GM】 戦闘では何もしなかったカバンタが、わさわさと熊の死体に寄ってきて、ちゃっちゃとさばき始めた(笑)。
 すごく手慣れてて、熊はあっという間に解体される。カバンタは熊の肝臓を取り出して、「これ、薬〜」とか喜んでいる。
【カバンタ】 そんな感じで、肉とか毛皮とか薬とかをひとしきり入手した。

 そして翌日の昼過ぎ、ポドプ村らしき漁村が見えきた。

【ジーネ】 これだけの人数で一気に押しかけると、向こうが警戒して逃げるかも知れんから、とりあえず、こっそり様子を探りに行くのがいいかと思うんですけど。
【ランディ】 どういうメンツで?
【ティガー】 一般人っぽいひとが行くとか。
【ジーネ】 私、いちおうプリーストなんで、巡礼する司祭を装って行ってこようか?

黒ずくめの遺言の事

【ランディ】 巡礼を装って冒険者であることを悟られたくないんなら、チェイン・メイルとモーニングスターは置いて行ったほうがいいでしょうな。
【ジーネ】 武装解除して行くのは不安だな。誰か、ファイター系のひとが、旅の護衛という名目でついてきてくれる? それなら、丸腰で行けるから。
【ティガー】 じゃ、ついて行こう。
【GM】 ジーネとティガーが村に行くわけね。じゃあ、ふたりは村に入ったよ。
 しかし、シンと静まり返った村は波の音だけがやたらと響き、どうも人の気配が感じられない。
【カバンタ】 そりゃ大変や。人影がまったく見当たらんのか。
【GM】 人影はある。ただ、道端にうつ伏せで倒れてるけどね。
【ティガー】 そのひとを見てみる。生きてるかどうか、確かめる。
【GM】 仰向けにしてみると、その顔は恐怖で歪み、目がカッと見開かれていた。
 その見開かれた瞳にはハエが止まっていて、「なんでございましょう」とばかりに手を擦りあわせてたりする。
 夏場やし、風下には立たんほうがいいぞ(笑)。
【ティガー】 うわー、死んでる。なんで死んだっぽい? 病気?
【GM】 外傷は見当たらんけど、病気ではなさそうな感じやね。直観的には、殺されたんじゃないかな、と思う。
【ティガー】 とりあえず、他のみんなを呼びに行く。
【GM】 カバンタとランディが、セミの鳴き声を聞きながら、「暑いですな〜」「まったくですな」と木陰でくつろいでると、村のほうからティガーが駆けてくる。
【ティガー】 「ひとが死んでるー!」と言う。
「見に来いや〜」
【GM】 見物かぃ!
【ランディ】 そりゃ、大変や。村に行ってみましょう。
【ジーネ】 その間に私は、生きてるひとがいないか、村中を探してまわる。
【GM】 じゃあ、ジーネは村のあちこちを調査しはじめた。
 小さい村なんで、立ってる家は小屋みたいなものばかり。家の内外あちこちに、男だの、女だの、子供だの、犬だの猫だの何だのの死体が転がっている。
【ジーネ】 む〜、生きてるひとはいないかな……。ここで何があったんだろう。
【GM】 ジーネが村中を見てまわってると、とくにボロっちくて「物置やったんちゃうか」というような小屋が、村はずれに建っているのを発見した。
 その中には、黒ずくめの衣装を着たひとりの男が倒れている。死んではいないけど、ほとんど虫の息やね。
【カバンタ】 かろうじて生きてる状態やな。
【GM】 男のそばの床板には、「北西」「バンパイア」と、血文字で書かれている。たぶん、彼が書いたんやろね。
【ジーネ】 効くかどうかわからんけど、いちおう〈キュアー・ウーンズ〉をかけてみよう。(ころっ)
【GM】 容体がよくなったようには見えへんね。
 じつはこのひと、腰の骨を折る重傷を負っていて、それが元で高熱を出し、ついでに病に冒されてしまってるから。
【ジーネ】 それじゃあ、どうしようもない。病気を治す魔法も、骨折を治す魔法もまだ使えんし。
 とりあえず、ティガーたちを呼びに行こう。
【GM】 ティガーたちは、最初に村人の死体を見つけたところで、「くせー!」だのなんだの、死体を囲んでワイワイ言っている。
【ジーネ】 「生きてるひとを見つけたよ」と言って、物置小屋に案内しよう。
【ティガー】 そのひとに「バンパイアにやられたん?」って尋ねる。
【GM】 しかし、そのひとはもう、意識が混濁してるらしい。ティガーの質問には答えず、焦点の合わない瞳を宙にさまよわせて、何ごとかぶつぶつ言ってる状態。
【ティガー】 何を言うとん?
【GM】 「あ、あの娘を助けてくれ」とか言ってる。
「あの娘は、世界からすべての悲しみを消すために、必要なんだ。必ず、あのお方のもとへ──ぐふっ」
【カバンタ】 死んだ!
【ティガー】 あーあ。
【ジーネ】 とりあえず、黙祷して「私の力が足りないばかりに」と泣いとこか。
【カバンタ】 じゃあ、「この、役立たず!」と言うとこう。
【ジーネ】 おまえに言われる筋合いはなぁーいッ!!
【ランディ】 そういえば、カバンタが役に立ったところなんて、まだ一度も見たことがない(笑)。
【カバンタ】 なんてことを〜!
【ジーネ】 さて、死体をどうしよう。普通に埋葬するだけでいいんだろうか。バンパイアが関係してそうなことを言ってたし、夜中に動きだしそうで怖い。
【カバンタ】 じゃあ、火葬すればええやん。死体をぜんぶ集めて、「ファイアー!」って。
【ランディ】 油はたぶん、家をあさればあるだろうし。
【GM】 しかし、死体をぜんぶって、100体は下らんぞ。
【カバンタ】 そこはみんなでちゃんと手分けしてやって。
【ジーネ】 『やって』って、あんたも手伝いなさい!
【GM】 じゃあ、キミたちは頑張って村に転がる遺体をすべて、猫の骸にいたるまで火葬して、墓をたてた。
 それが終わった頃には、すでに夕暮れ、藤色の空で星が瞬き始めている。
【カバンタ】 よっしゃ、この村でひと晩泊まって、明日になったら北西にいこう。
【ティガー】 げ〜っ、こんなところに泊まるの?
【カバンタ】 そら、もう夕暮れやしな。村でいちばんきれいな家に泊まる。
【ジーネ】 もう一度村の中を調査する。何かの痕跡はないかなって。
【ランディ】 争った痕跡があるかどうかですね。何もなければ、いきなり全滅させられたということになる。物置小屋の男のメッセージどおりなら、バンパイアに。
【GM】 村人が逃げまどったような形跡なら、そこら中にあるよ。
【カバンタ】 「ぎやぁ〜」って逃げたんやな。
【GM】 ただ、ベッドで死んでるひともいたし、ひょっとしたら寝込みを襲われたのかも知れない。
【ランディ】 ということは、夜中に襲撃があったのか。恐らく、昨日の夜に。
【GM】 あるいはこいつら、昼寝をしとったんかも知れん(笑)。
【ティガー】 それはありえる(笑)。
【ジーネ】 村人全員が昼寝ってのは、ちょっと考えられん。
【ティガー】 ここには昼寝の時間があるねん。
【ジーネ】 ともかく、警戒しておくに越したことはないな。夜、ここで休んでいくなら。
【カバンタ】 よし、警戒しれ。
【ランディ】 見張りを立てて休むってことですな。
【ジーネ】 カールくんは除外して、2-2-1の組み合わせで2時間ずつ見張りをしよう。
【ランディ】 じゃ、僕とレイモンドがいちばん最初に。
【ジーネ】 2番目は、私とカバンタね。
【ティガー】 最後は俺がひとりで見張り。カバンタにひとりで見張りをさせるわけにはいかんからな(笑)。
【ランディ】 モンスターが来ても、起こしてくれなさそう(笑)。
【カバンタ】 そらもう、「モンスターや!」と思いつつ、静か〜に撤退するから。
【GM】 では、ランディはレイモンドの過去の冒険話を聞かされながら、2時間見張りをした。
 (ころっ)とくに何事もなかった。
【ランディ】 やっと、おじさんの自慢話から解放される(笑)。じゃ、交代して。
【カバンタ】 交代した! 目を開けて眠っとく。
【ジーネ】 殴ってやろうかしら。(ころっ)
【カバンタ】 (ころっ)回避した。
【ジーネ】 眠ってるくせに、どうやって回避すんのよ!?
【GM】 きっと、寝返りでのらりくらりとジーネの攻撃をかわしてるんや(笑)。
 (ころっ)とくに何事もなく2時間過ぎたよ。
【ジーネ】 やれやれ。
【カバンタ】 じゃあ、本格的に寝る。
【ティガー】 ブドウを食べながら見張りする。で、種をカバンタの目の上にてんこ盛りにしたるねん。
【GM】 (ころっ)無事に朝になったよ。
 目を覚ましたカバンタは、「目が痛い! 目が痛い!」と、七転八倒してる。
【ティガー】 それを見て、笑っとこ。じゃあ、朝メシを食べる。
【ジーネ】 見張りしながら夜食を食べて、すぐさま朝ごはんも食べるの? お腹、破裂してまうで。
【ティガー】 食べ盛りやねん。
【カバンタ】 よっしゃ、北西に行こう。
【ジーネ】 カールくん、このまま連れていって大丈夫かなぁ。
【ティガー】 大丈夫、大丈夫。
【カバンタ】 即答されたんで、連れて行こう。
【ランディ】 じゃあ、カバンタが面倒見てくださいよ。
【カバンタ】 いや、カールなんて見えないことにしてるから。
【GM】 カールが「頼むぜ、父ちゃん!」と、腰を叩く。
【カバンタ】 触られたことさえ、感じへんから。
【ランディ】 存在自体を完全無視してるんか。
【GM】 最悪な父親やなぁ(笑)。
【カバンタ】 もう、さっさと北西に向かう! 北西には何があるの?
【GM】 森が広がってる。キミたちはその森の中を、わさわさと進んでいくわけやね。
 やがて3時過ぎぐらいに、森が開けた場所に出た。そこには、1軒の古びた洋館が建っている。
 すると、一天にわかにかき曇り、鋭い稲妻が走って雷鳴が轟いた。電光が、怪しい館のシルエットを、不気味に浮かびあがらせる。
【カバンタ】 ん、わかりやすいな。
【ランディ】 弟○草や。
【ティガー】 バ○オ・ハザ○ドとか。
【ジーネ】 ちょっと待って。向こうはバンパイアで、そのうち夜になるんやろ。このまま突っ込んだら、とてつもなくまずいんじゃなかろうか。
 今日は周りを調べるぐらいにして、明日の朝いちばんに乗り込んだほうがいいような気がするのよ。
【ティガー】 でも、時間が経つと、ファンリーがどうなるかわからんぞ。外で待ってるうちに、中で何かが起こりそう。
【カバンタ】 ティガーはいいところに気がついた! そらもう、グズグズしてたら、ファンリーはいろんなことされるに決まってる。
【ランディ】 真夜中に館から、「きゃー!」と悲鳴が聞こえたりして(笑)。
【ティガー】 俺は行くぜ!
【ランディ】 僕も急いだほうがいいと思う。

紳士なバンパイアの事

【カバンタ】 こんなところで一夜明かすのもイヤやからな。
【ジーネ】 う〜ん、じゃあ、乗り込もか。
【ランディ】 カールくんは、外で待たせておいたほうがいいかも。
【ジーネ】 中にはバンパイアがいるとわかってるしね。どこか茂みの中にでも、隠れてもらっとこうか。
【ティガー】 じゃあ、ロング・スピアを貸してあげるわ。必要筋力20のやつやけど、がんばってな。
【GM】 「まかせとけ!」とカールは言い、フラフラと危なっかしくよろけながら、手近な茂みに潜んだ。
 ただ、その茂みの上から、思いっきり槍先がニュッと突き出てるんやけどな。
【ジーネ】 じゃあ、レンジャー技能の[カモフラージュ]で隠しとこう。
【カバンタ】 スピアに葉っぱがいっぱいつけられたんやな。じゃ、行こか。
【GM】 キミたちは軋む鉄の扉を開けて門を潜り、館の敷地内に入った。
 周囲には、不気味な謎の草が生えてたりする。
【カバンタ】 それは見なかったことにして、後ろで門が勝手に閉まらんように、くさびを打ち込んどく。
【GM】 そんなことをしつつ、キミたちは玄関の前に来た。
 背の高い両開きの扉で、獅子が輪っかをくわえたレリーフのノッカーが取り付けられてたりする。
【カバンタ】 じゃあ、それを使って「コンコン」と激しくノックする。
「頼もう!」
【ティガー】 どつく。
【ランディ】 ホントにノックしたの?
【カバンタ】 そら、挨拶せんと。勝手に入ったりしたら、不法浸入やからな。
【ジーネ】 不法浸入しに来たんやないか!
【GM】 すると、扉が少し開けられ、白いカッターシャツに黒のズボン、黒のチョッキに黒い蝶ネクタイを身につけた、見た目50代の気の弱そうな背の低いおじさんが顔を覗かせた。
 ちなみにおじさんの顔色は恐ろしいほど白く、瞳は赤い。
「どちらさまで?」と、細い声で聞いてくるよ。
【ジーネ】 「旅の者です」
【ランディ】 「道に迷ったので、ひと晩、泊めて欲しいのですが」と言う。
【GM】 するとおじさんは、「しばしお待ちください」と引っ込んだ。
【カバンタ】 じゃあ、待つ。
【ジーネ】 待つの? 私は速攻で突っ込みたいんやけど。
【カバンタ】 そんなん、失礼やで。
【GM】 待たされること数分、再び扉が開けられて、「どうぞ、お入りください」と、薄暗い館の中に案内された。
 入ってすぐのところはホールになっていて、絵画やスーツ・アーマーの置物、果物が入った籠が置かれたテーブル、上品なソファなどがある。
 おじさんは「どうぞ、おかけになってください」と、ソファを勧めてくれた。
【ジーネ】 座らないよ、そんなの。
【ランディ】 僕も立っていよう。
【カバンタ】 座る。
【ティガー】 座ってリンゴを食う。テーブルの上のじゃなくて、自分で持ってきたやつね。
【GM】 レイモンドも座った。そのホールには、東西南北の壁に1つずつ扉があって、キミたちが入ってきた玄関扉は南にある。
【ランディ】 脱出するときは、ここからやな。
【GM】 で、玄関と同じぐらい大きな北の扉から、口髭を生やして髪をきちっとセットして、パイプを片手に持った、40代ぐらいのスマートな紳士が入ってきた。
【カバンタ】 む、強そうや。
【GM】 ちなみに、その紳士も白い肌に赤い瞳をしている。
「やあ、ようこそいらっしゃいました、旅のお方」と、歓待してくれるよ。
「これ、サンチョス。お茶をお出ししなさい」
【ティガー】 うわ〜、フレンドリーや。
【ランディ】 僕やジーネの聖印を見て、何か言ってきませんか?
【GM】 とくにつっこむようなことは、言ってこないね。「皆さんは、どちらからお越しになったので?」などと、質問してくる。
【ジーネ】 ランダースから来たことにしよう。
【GM】 「それはまた、遠いところから来られたんですな」
【ジーネ】 「危なくなってきたから、疎開してきたんです」
【GM】 敵国にか!?
【カバンタ】 それは亡命と言う(笑)。
【GM】 紳士は「あっはっは。愉快なひとたちだ」と笑ってる。
 そのとき、サンチョスがホールに戻ってきて、銀のトレイに載せたカップをテーブルの上に並べた。そして、ポットからいい香りの茶を注いで、「どうぞ」と勧めてくれる。
【ティガー】 わーい、飲もう。
【ジーネ】 えっ、飲むの?!
【カバンタ】 なんか、めちゃ無防備に飲んだ奴がおるみたいやな。
【GM】 すごくおいしいお茶だった。ちなみに、オレンブルクのミフォア大神殿で作られたお茶です。
【ジーネ】 でも、私は飲まないよ。
【ランディ】 僕は冷めてから飲む。
【ティガー】 紳士に「この館って、あんたらふたりしかいないの?」って、聞いてみる。
【GM】 「ええ、わたしとサンチョスのふたりで、暮らしております。ですから、毎日退屈でしかたがないのです」
【ティガー】 「大変やなぁ。買い物とか、どうするん?」
【GM】 「月に2度ほど、サンチョスが街に出かけて、しこたま買い込んでくるんですよ」
【カバンタ】 ざっくり聞く? 「女の人をさらってきたやろ」って。
【ジーネ】 それはまずいでしょ。カバンタの口をふさぐよ。
【カバンタ】 そんなん、いつまでもなごんでてどーするよ。
【GM】 キミらが何も言わんのなら、紳士はお茶の講釈を始めてしまうぞ?
【カバンタ】 お茶の何を講釈するんや!
【GM】 入れ方だの何だの。
【ジーネ】 いいよ、聞いてるよ(笑)。
【GM】 「では、まずティーポット。カップと同様、必ず事前にお湯を注いで温めておきたまえ。そしてお湯を捨てて、おもむろにティーパックを放り込む。そして、必ずよ〜く沸騰させたお湯を注ぎ込む」
【ジーネ】 紅茶に熱湯を入れてはいけません。80度ぐらいのお湯ですわ。
【GM】 「ノンノンノン。アリステア人は、ここがよくわかってないのよね」と、紳士は言う。
【ティガー】 素直に聞いてる。でも、聞いた先から忘れていくねん。
【GM】 講釈はまだ続く。
「いい香りが漂うまでしばし待つ。そして最後にカップに注ぎ、ティー・オブ・ティーの完成なのです」と、これが正しいミフォア茶の飲み方らしい。
 で、キミらどういう行動すんの?
【ジーネ】 とりあえず、夜になるまで待つ?
【ティガー】 「ここに泊めてもらえるの?」と、紳士に聞く。
【GM】 「もちろんですよ」
【ティガー】 「じゃあさ、どっか部屋を貸してくれよ」
【GM】 「ええ、いいですよ。これ、サンチョス。お客様を、お部屋にご案内しなさい」と紳士が言うと、「かしこまりました。しばし、お待ちを」とサンチョスは応えて、西の扉から出て行った。
 しばらくして、そこから現れたサンチョスは、ほうきやちり取り、モップにバケツを担いで、ホールをわひゃわひゃと横切り、今度は東の扉から出て行く。
【ティガー】 かわいい吸血鬼やな(笑)。
【GM】 部屋の準備を待っている間、キミたちは、紳士と一緒にカード遊びをしたり、あるいは世間話などをして、時間を潰す。
 やがて、サンチョスが「お部屋のご用意ができました」と、キミたちを呼びに来た。
【ティガー】 じゃあ、ついてく。
【GM】 案内されたのは、東の扉から出て、南北に伸びる廊下を挟んで右斜向かいにある部屋。部屋はぴかぴかに掃除されてて、ベッドもきちんとメイクされてる。
【ティガー】 この部屋からさ、カールのいる茂みは見えへんの?
【GM】 ちょっと見えへんな。屋敷を囲ってる壁とかがあるしね。
【ティガー】 じゃあ、いいや。ほっとこう。
【GM】 ちなみに、この部屋にはベッドが3つ。そっちの人数は5人。ジーネは女性なのでとうぜん別室だけど、あともうひとり、別室に泊まってもらうことになるよ。
【ランディ】 それなら、レイモンドに行ってもらおう。
【GM】 では、ジーネとレイモンドは、サンチョスに連れられて、ホールを横切り、今度は西の扉から出て行く。
 こちら側も、やはり南北に廊下がのびていて、西側の壁に扉が3つ並び、南は扉で行き止まりになっていた。
 南の扉は物置らしく、サンチョスは中に入って掃除道具を置くと、西側のいちばん北の部屋にジーネを、その隣の部屋にレイモンドを案内した。
 こっちはひとり用の部屋やね。もちろん、掃除はすんでいる。
【ランディ】 玄関ホールを挟んで、2組に分けられましたね。
【ジーネ】 でも、隣にレイモンドさんがいてくれてるから、少し安心。4・1に分けられたら、さすがに怖いもんね。
 ところで、夜になったら、合流して館を探索しようか?
【ランディ】 夜まで待たなくても、今のうちに探索しておけばいいと思いますよ。
【ジーネ】 バンパイアが眠ってからじゃないと、バレるやんか。
【ティガー】 バンパイアって、眠らなかったような気がする……。
【カバンタ】 別にこっそり探索せんでも、サンチョスに「館の中を見せてください」と、頼めばええやん。
【ランディ】 「素晴らしいお屋敷ですな。ぜひ、中を案内してください」と、サンチョスに頼んでみる。
【カバンタ】 案内してくれんのなら、勝手に見とくよ。
【GM】 勝手にうろつかれるのは困るな(笑)。じゃあ、サンチョスが案内してあげよう。ただし、それは次回の話ね。

÷÷ つづく ÷÷
©2002 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2002 Jun Hayashida
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ひと言ありましたら
 
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