≪REV / EXIT / FWD≫

§伏魔の街ルニオール:第3話§

闇の蠢動

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ カーム、水の間の謎を解き明かす ▽ ゼム村の怪事件 ▽ オルト村の死闘

カーム、水の間の謎を解き明かす

【アルフレッド】 帰られんのは困るぞ。
【GM】 まあ、保存食が尽きたら、ここで餓死するしかないからねぇ。
【シーザー】 とりあえず、その扉も開けてみよう。鍵がかかってるんなら、ホルトーの鍵を使う。
【GM】 では、扉を開けて中に入りました。そこは部屋です。正面奥には台座があって、その上に、赤、青、白、透明の玉が置かれてある。ちなみに精霊使いのアルフレッドは、赤の玉に炎の精霊サラマンダ、青の玉に水の精霊ウンディーネ、白の玉に氷の精霊フラウ、透明の玉に風の精霊シルフの存在を感じます。
【シーザー】 なるほどな。こいつでゴンドラを動かせるかも知れん。
【カーム】 よっしゃ、持って行ってみよう。とりあえず“炎の間”へ。
【GM】 はい、じゃあ、ダダッと一気に“炎の間”の前までやって来ました。
【アルフレッド】 あとの問題は、この飴玉やな。たぶん、こいつで炎とかを中和できるんやと思うけど、人数に対して飴玉の数がぜんぜん足りん。ひとりずつ行ったほうがええんかな。
【シーザー】 飴を4つに割るとか。
【GM】 えっ?! はあ、そういうことも考えられるわけか……。
【アルフレッド】 どうやらそれは、やめといたほうがよさそうやな(笑)。
【シーザー】 それになぁ、中和剤やとしても、謎の色もあるからな。マーブルはいいとして、緑と黄色の効果がわからん。
【リィン】 万能とか。
【アルフレッド】 とりあえず僕、ちょっと行ってきますわ。そんで骨になって帰ってきたら、どっかに埋めといて。

 アルフレッドは、赤い飴と白い飴を持って“炎の間”のゴンドラに乗り、ゴンドラの先端のへこみに赤い玉を嵌めてみた。すると、ゴンドラはゆっくりと進みだし、アルフレッドを“炎の間”の奥へといざなった。
 振り返ると、仲間が待つ扉が空中にポツンと浮かんで見える。それが見えなくなるまで進み続けると、やがて炎の壁が行く手に立ちはだかった。上にも下にも左右にも、無限に広がる烈火の壁だった。

【アルフレッド】 炎を突き抜けたらえんやろ。……白の飴玉をなめる!
【GM】 じゃあ、力がみなぎる感じがします。
【アルフレッド】 え? 涼しくなったとか、炎に熱さを感じなくなったとか──。
【GM】 いえ、そういうことはありませんね。
【シーザー】 ひょっとして、能力値を上昇させる飴やったんか?
【リィン】 え〜?!
【GM】 シーザーさん、正解です。アルフレッドの生命力値が6点上昇しました。
【アルフレッド】 めっちゃ強なった。……けど、どうしょうもないな。帰ります。
【シーザー】 「蛮族おまえ、何か肌がツヤツヤしてへんか?」
【アルフレッド】 「なんや知らんけどな、白い飴なめたら生命力あがってん」

 そこでさっそく、仲間たちも色んな飴をなめてみた。思ったとおりの能力値があがったもの、狙いがはずれたもの、悲喜こもごもながら、パーティは若干のパワーアップを果たした。
 ちなみにマーブルの飴は、時間制限つきで全能力値がパワーアップという飴だった。

【リィン】 それよりこれからどうしよう。
【カーム】 外に出られへん。
【アルフレッド】 青い魔人がいたとこや。あの魔法陣から出られるはず!
【シーザー】 でも、デーモン系は怖いぞ。
【カーム】 魔法の武器も持ってるし、能力値もあがったから、大丈夫やろ。
【シーザー】 ふ〜む。じゃ、とりあえず行ってみるか。


 部屋に着くなり、リィンは槍で青い魔人をつついてみた(リィンは青い飴で、敏捷度が最大値まであがった)。
 すると、すぐさま魔人の〈ライトニング〉による反撃をくらってしまった。
 この一撃で大ダメージを受けてリィンは後退、恐怖におののいた冒険者たちは、部屋から逃げだした。

【アルフレッド】 すぐに扉を閉める!
【リィン】 あいたたた〜、死にかけや。
【シーザー】 治したるわ。〈キュアー・ウーンズ〉2倍消費、(ころっ)全快した。

 この後、冒険者たちは再び青い魔神の部屋の扉を開け、アルフレッドが、魔人が乗っている魔法陣に強引に入ろうと突撃してみた。しかし、あえなく失敗。撤退するアルフレッドの背に、魔人の〈エネルギーボルト〉が炸裂。[精神力抵抗]に成功するも、大ダメージを受けた。
 ここに至って、ようやく冒険者たちは敵が高レベルであることを悟った。

【リィン】 どうしよう。あいつを倒さんかったら、外に出られへんとちゃうの?
【シーザー】 いまさら交渉のしようもないしなぁ。だいたい言葉が通じへんし。
【アルフレッド】 倒すしかない。〈シェイド〉で精神点を削ってやる。
【GM】 戦闘を続けるということですね。じゃあ、まだカームがこのラウンド中に行動できますよ。
【カーム】 敵の気を引きつつ、[パリィ(防御姿勢)]。
【GM】 では、次のラウンドに移行します。どう行動するんですか?
【シーザー】 全員散解しろ。それなら〈ライトニング〉が来ても、くらうのはひとりですむ。2倍消費とかされんかったらな。
【リィン】 じゃあ、みんなとバラけたところで攻撃。(ころっ)はずれ。
【シーザー】 〈フォース〉! (ころっ)10点! 経験点が。
【アルフレッド】 〈シェイド〉。(ころっ)[精神力抵抗]された、ダメージ4点。
【GM】 すると、そいつの姿は消えてしまいます。
【アルフレッド】 やった、精神力が尽きたんや。魔法陣に入る!
【GM】 残念ながら、魔法陣には入れません。アルフレッドは見えない壁に阻まれます。
【リィン】 え〜?! この魔法陣が出口ちゃうかったん?
【シーザー】 他に行ってないところあるか? 隠し扉とか……。
【アルフレッド】 とりあえず、逃げよう。
【カーム】 どこへ?
【リィン】 行くとこないよう。
【シーザー】 現実から逃げんのか? 「空はいいなぁ。見てみろよ、あの青い大空を」とか言うて。
【カーム】 “水の間”で泳いでみます?
【シーザー】 まあなァ。鍵を握ってるとしたら、精霊の間やろな。何の意図もなくあんなのが出てくるわけがない。

 しばし冒険者たちは議論を交わす。その間に……。

【GM】 じゃあ、セージ技能のあるカームは、ちょっとダイスを振ってみて。
【カーム】 ウイ、(ころっ)。
【GM】 それなら、カームは思い出しました。この世界は我々のオリジナルということやけど、使っているシステム上、世界の構造そのものは、それほど変えられません。それでこれは、ゲームのシステムに元々あるものなんやけど、次のような伝承がこの世界にもあるんやわ。
『北にあるのは氷の門、無限の高さが世界を閉ざしている。南に炎の門、灼熱の炎が世界を閉ざしている。東にあるのは風の門、猛き嵐が世界を閉ざしている。西にあるのは水の門、滝となりて異界に堕つ』
【リィン】 異界?
【シーザー】 それや、“水の間”に行くぞ!
【GM】 じゃあ、“水の間”の前まで来ました。
【シーザー】 ゴンドラに乗って、青い玉を嵌めて、“水の間”の果てまで行く。
【GM】 わかりました。では皆さんは、ゴンドラに乗って水の世界を進みます。そうして時間感覚が狂うぐらい長い時が経過した頃、ようやく、“水の間”の果てが見えてきました。そこは滝になって、水がいずこかへと落ちていっているようです。
【シーザー】 ゴンドラは宙に浮いてたよな。じゃあ、そのまま滝の向こう側まで行って、滝に沿って降下することはできるか?
【GM】 ゴンドラはある程度滝の向こう側まで行けますが、それ以上向こうには行けないし、降下も上昇もすることができません。
【リィン】 飛び込めってか。
【カーム】 〈フォーリング・コントロール〉は誰も使えへんし、困ったな。
【シーザー】 毛布でパラシュートを作って飛び込むとか。
【アルフレッド】 僕が飛び降りますよ。「お先になぁ!」って。
【GM】 ちなみにアルフレッドは、その滝のはるか下に水の上位精霊であるクラーケンの存在を感じるよ。
【アルフレッド】 クラーケンがいるのか。なら大丈夫。
【シーザー】 なんで? 何を根拠に?
【アルフレッド】 「お先に! うおりゃああああああああ〜ッッ!!」
【GM】 アルフレッドの雄叫びは、だんだん小さくなっていきます。
【シーザー】 で、「──うぎゃああ!」。
【リィン】 グシャっ。
【GM】 ないない。アルフレッドの身体は、落ちてる途中で淡い光に包まれて消えたよ。
【カーム】 よし、オレらも行こか。
【リィン】 飛び降りる。
【シーザー】 しまった、パラシュートが邪魔だ。「お〜い、待ってくれ〜!」
【GM】 ま、そんなこんなで、皆さんも淡い光に包まれました。皆さんは、落ちてる途中で意識を失い、気がついたときには遺跡のドームの中にいました。
【シーザー】 帰って来れたか。
【リィン】 よかった、よかった。
【カーム】 ルニオールに戻るぞ〜。
【シーザー】 持って帰ってきた武具防具を、魔術師ギルドに鑑定してもらおう。

 グレートソードはアルフレッドが持ち、バスタードソードとプレートメイルはカームが持つことになった。それ以外の物は売り飛ばし、冒険者たちは4万8140フィスを手に入れた。

【カーム】 ひとりあたまで、1万2035フィスか。しばらく働かんでええな。ほんじゃ、疲れたし、宿屋でボ〜っとして過ごす。

ゼム村の怪事件

【GM】 それでは時間を進めて、翌日の夕方になりました。皆さんは、遺跡から帰還して、丸1日、ボ〜っと休んだんですね。そのおかげで、いちおう疲れはとれましたよ。さて皆さん、これから何かしたいことはありますか?
【アルフレッド】 そうやな〜、僕はやっぱり、伝説の剣を求めて旅がしたいな。
【シーザー】 きっとその剣を持って帰ってきたら、酋長から一人前の男として認められるんや。
【GM】 あのね、そういう漠然とした目的じゃなくて、当座の目的を聞いたんやけど。
【シーザー】 買い物に行く。
【リィン】 うちも。
【カーム】 オレも行っとこっかな〜。
【GM】 はいはい、何がご入り用ですかな?
【シーザー】 プラス1ソードなんかが売ってたら、手に入れときたい。けっこうな金が入ってきたし。
【GM】 魔法の武器か。ルニオールは大きな街なんで、たまたま入荷してたことにしましょう。品物は、プラス1のバスタードソードのみですが。
【シーザー】 それでじゅうぶん。買ったぞ。
【リィン】 あっ、軍馬が買える。買ってしまおっと。
【カーム】 おお、オレも買ったで〜。
【GM】 あれ? リィンはロバを持ってなかったっけ。
【リィン】 ロバは荷物運びで、軍馬は戦闘用やねん。
【GM】 世話すんのが大変そうやけどね。アルフレッドは、どうしてるの?
【アルフレッド】 僕は酒場で、伝説の剣について情報を集めてる。「オヤジ、伝説の剣について知らないか」
【GM】 いきなりそんなこと言われても……酒場の主人はちょっと困ってる。
【リィン】 しょうがないな、蛮族やし。
【アルフレッド】 ほんなら、酒場のオヤジに面白い冒険がないか聞いてみる。
【GM】 そうしたら、「近くの村で、何やらひと騒動が起きてるそうだ」という情報を得ます。
【アルフレッド】 じゃあ、メンバーが帰ってきたら、そのことを話す。「実はよ〜、近くの村で、ひと騒動起きてるらしいんだ。ひょっとしたら、伝説の剣があるかも知れねえ」
【シーザー】 「で、その騒動って何なん」
【アルフレッド】 「うん、なんでもひと騒動って話だ」
【シーザー】 「しっかり調べてこいッ!」
【アルフレッド】 僕は行ってみたいね。
【カーム】 そんなこと言われてもな。だいたい、どこに行けばええんや?
【アルフレッド】 そんなこと気にしてたら、冒険者なんかにはなられへん。とりあえず、迫り来る敵をやな、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ──。
【シーザー】 ま、彼は蛮族だからね。
【カーム】【リィン】 うんうん。
【アルフレッド】 「僕は行ってみたいね」って言うよ。
【リィン】 しつこいな。昨日帰ってきたばっかりやのに。
【アルフレッド】 リーダー代理ぃ。
【カーム】 (舌打ち)……行ったろか……?
【アルフレッド】 シーザーは?
【シーザー】 しょうがないやっちゃ。
【アルフレッド】 はい、決まり〜!
【GM】 じゃあ、酒場のオヤジから、その『ひと騒動』の村への道を教えてもらいます。ルニオールから南西へ、徒歩で3日行ったところにあるゼムという村です。

【カーム】 徒歩で3日……馬なら?
【GM】 馬なら1日で着きますけど、2頭しかいなかったんじゃ……。
【シーザー】 後ろに乗っけてもらうから、大丈夫。そんでその『ひと騒動』って何なん?
【GM】 「詳しいことはわからん。ゼム村で聞いてくれ」とのこと。酒場のオヤジも、噂でしか知りませんから。
【シーザー】 あやふややの〜。とりあえず、出発は明日の朝や。
【GM】 わかりました。では、宿屋にもう1泊して、翌朝、馬でパカパカ移動します。そしたら、翌日の夕方、ゼム村へ到着しました。が、村にはまったく人の気配がありません。
【アルフレッド】 「お〜い、だれかいるか〜!」
【GM】 返事はありません。薄闇に、ただ風が吹き抜けるだけ。
【カーム】 藁の玉みたいなゴミが、カサカサカサって転がるんやな。
【シーザー】 どこか手頃な家を覗いてみる。
【GM】 村にあるのは、どれも粗末な家です。シーザーが覗いた家の部屋の奥では、椅子に座った恰幅のいいおじさんが──。
【アルフレッド】 あ、誰かいるんや。
【シーザー】 死んでるんやろ。
【GM】 そうです、死んでいます。
【シーザー】 それ、死後どれくらい経過してそう? カーム、死体を調べてみ。
【カーム】 ウイ。セージ技能でチェック、(ころっ)。
【GM】 死後、それほど日数が経っていないようです。死体には外傷はなく、死因はとくに掴めません。
【リィン】 病死かな。
【アルフレッド】 毒とちゃうか。
【シーザー】 死体の表情はどうなん?
【GM】 眠るようにして死んでますね。苦悶の表情を浮かべてたりはしないよ。嘔吐や吐血の跡も見当たりません。
【アルフレッド】 生きてるひとはおらんのかな。とりあえず、この家の中を探してみるけど。
【GM】 するとこの家で、おじさん以外にふたりの死体を見つけました。どうやら彼の奥さんと、幼い息子のようです。
【シーザー】 このゼム村ってのは、基本的に農業で成り立ってたところなん?
【GM】 そうです。農業以外にない、って感じやね。
【シーザー】 それやったら、馬小屋もあるやろな。そこへ行ってみる。
【GM】 馬小屋はもちろんあります。が、中で飼われていた馬は、やはり同じように死んでしまってます。
【アルフレッド】 馬まで死んでるんか! この家以外はどうなん? 村中をうろついて、捜索してみる。
【GM】 村中探してみても、同じような死体があるばかりで、生存者を見つけることはできませんでした。死に場所はいろいろで、家で死んでたり、道端で死んでたり、畑で死んでるひともいたよ。あと、鶏とか野良犬とかの死体も転がってる。
【カーム】 この村の生き物は全滅か!
【シーザー】 それは普通に生活してて、突然死んでしまったって感じか。
【GM】 そうですね。
【シーザー】 う〜ん……。この村で騒動が起きてるって話は──。
【リィン】 ──いつ、ルニオールに入ってきたんだろう。
【アルフレッド】 いったい何が原因でこうなったんか、さっぱりわからん!
【シーザー】 まあ、魔法か呪いか……。どっちにしたって、かなり強力なモンやろなぁ。
【カーム】 とりあえず、もうすぐ夜やし、ここで泊まっていこう。
【シーザー】 しょうがないな。適当な家を使わせてもらおか。
【リィン】 死体のそばで寝るなんてヤダな〜。ゾンビになって襲ってきそう。
【GM】 そういうことで、今夜はゼム村で宿泊しました。そして何事もなく、翌朝になったよ。
【カーム】 ルニオールに帰ろか。
【アルフレッド】 それは……だって、何しにここまで来たんかわからんやん。
【シーザー】 「詳しい話は現地で聞け」ってことで来てみたけど、詳しい話をしてくれる人間がおらんねんから、しゃあないやん。
【アルフレッド】 でも、ここでひと騒動があるんやで。僕は帰りたくないな。
【シーザー】 「ひと騒動がある」というより、「ひと騒動があった」って感じや。
【カーム】 これ以上ここにおってもしょうがない。帰るぞ。
【シーザー】 その前に農家の納屋から荷車を失敬して、ロバに繋げる。それに死体を2、3体積んで、ルニオールに持って帰る。
【アルフレッド】 死体なんか持って帰ってどうすんの?
【シーザー】 魔術師ギルドで司法解剖してもらって、死因を調べさせるねやん。
【GM】 じゃあ帰りは、馬やロバを引いての徒歩ということになりますね。それならルニオールに戻って来たのは3日後ということで。
【シーザー】 とりあえず、持って帰ってきた死体を、魔術師ギルドに持ち込む。そんで「かくかくしかじか」と事情を話して、「死因を調べた方がええんちゃいまっか」と言う。
【GM】 「わかりました。時間はかかりますが、調べておきましょう」
【シーザー】 じゃ、俺たちは宿屋に戻ろう。で、オヤジにひとこと文句を言ってやる。
【GM】 しかし、皆さんがオヤジに声をかけるより先に、宿屋のオヤジの方が皆さんに声をかけてきた。
「さっきバジェット村から連絡があって、バジェットから南へ2日行ったところにある、オルトという村が怪物に襲われているらしいんだ」とのこと。
【シーザー】 ちなみに、バジェット村とマルパナ村の間の街道で、前回、謎の巨人と遭遇してるよな。
【アルフレッド】 どんな怪物に襲われてるのか、わからへん?
【GM】 怪物の正体についての情報は、ルニオールには届いてません。
【リィン】 バジェット村でなら、わかるかな。
【アルフレッド】 とりあえず、行こう!
【シーザー】 行くけど、たぶん、俺らがオルト村に着いた頃には事が終わってるで。
【リィン】 きっとまた、みんな死んでるわ。
【GM】 まあ、ルニオールからオルト村までは、徒歩で3日かかりますからね。
【カーム】 でも、また馬で移動するから、ゼム村までと同じ時間で行けるやろ。
【シーザー】 そうや! ゼム村から持って帰ってきた荷車を、簡易馬車に改造してもらっとこうかな。これなら馬に2人乗りせんでも、みんなで高速移動ができる。
【GM】 はあ、まあいいでしょう。メカリア王国は職人の国ですから、それぐらいできる人物がいるやろな。ちなみに費用は、1000フィスです。乗り心地は保証せんけどね。
【シーザー】 ポンと払おう。前回の冒険でたっぷり稼いだからな。
【GM】 改造ということなので、明日には完成しますよ。
【カーム】 とりあえず、今夜は宿屋に泊まって、次の朝にオルト村に出発するということで。
【GM】 では、翌朝になりました。シーザー発注の簡易馬車も、めでたく完成。馬車を引くのは、リィンの軍馬とカームの軍馬。皆さんはそれに乗って、街道を西に移動するわけですね。
 それでは、当日夕方に、バジェット村に到着しました。
【アルフレッド】 情報が集まりそうな酒場へ行こう。
【GM】 では、酒場に来ました。1階が酒場、2階が宿屋という造りです。ここは、ホルトー商隊の護衛をしたときに、一度立ち寄ったところですよ。
【シーザー】 謎の巨人の襲来があったことを教えてやった宿屋か。
【GM】 ここの主人も皆さんのことを覚えていて、「キミたちが商隊と一緒にルニオールに向かってからしばらくして、街道からちょっとはずれたところで、オーガーの死体が見つかって大騒ぎになったことがあったぞ」と話してくれます。
【リィン】 前回の怪物は、やっぱりオーガーやったんか。
【GM】 ここで確認ができたわけやね。
【アルフレッド】 そのオーガーの死体はどこで発見されたん?
【GM】 この村から西にちょっと行ったところです。
【シーザー】 俺らがオーガーと遭遇した辺りか。それは殺されてたん?
【GM】 そう、既に死んでた。それを村人がたまたま発見して、騒ぎになったらしい。
【リィン】 誰が殺したんやろ。
【カーム】 そりゃ、他にも冒険者はおるやろからな。そういう奴らやろ。
【GM】 他に質問はありますか?
【アルフレッド】 特にないな。とりあえず夕方やし、ここで泊まっていくか。
【シーザー】 いや、このまま出発するよ。少しでも早く、オルト村に着くようにしたい。
【カーム】 じゃあ、出発しよう。徹夜で行軍や。

オルト村の死闘

【GM】 皆さんが徹夜で旅をすると、次の日の午前中にはオルト村が見えてきます。村の様子が見えてくると──。
【シーザー】 煙がモワ〜って立ちのぼってるとか。
【GM】 ──とは言わないけど、ひとびとの悲鳴や叫び声が聞こえてきますね。
【アルフレッド】 突進じゃあ〜!
【シーザー】 状況も確かめずにか。
【GM】 村人が逃げまどいながら、「たすけてくだせぇ!」とか言ってる後ろでは、大きな人型のモンスターが暴れております。そいつは、この前見たのと同じような巨人です。
【シーザー】 噂のオーガーやな。数は?
【GM】 見える範囲には5匹います。
【リィン】 げっ。
【シーザー】 前より多いやんけ。
【GM】 怪物のうち3匹が皆さんに気づいてやって来ます。
【アルフレッド】 グレートソードを抜いて攻撃!
【シーザー】 ちょいちょい、なんで敏捷度が低いキミからやねん。リィンからやろ。
【リィン】 ロングスピアで[チャージ(突撃)]しようかな……あ、でもカウンターくらうかも知れん。じゃ、馬車から降りるだけで行動終わり。
【シーザー】 プラス1バスタードソードでオーガーAに攻撃。(ころっ)おっ、調子ええぞ。11点のダメージ。
【アルフレッド】 よっしゃ、僕やな。

 3匹のオーガーは、戦闘前にすでに傷ついていたせいもあって、3ラウンドでやっつけられた。

【シーザー】 あと2匹いるな。
【GM】 その2匹は、向こうで殺した村人を食っています。
【リィン】 食べてんのか。頭からバリバリと。
【アルフレッド】 そいつを後ろから攻撃したれ。

 2匹のうちの1匹、オーガーDも、2ラウンドで片づけられた。逃げようとしたオーガーEは、カームのクリティカルの一撃で倒された。

【カーム】 イエ〜イ!
【シーザー】 よし、怪我した村人は1列縦隊で並べ。俺が魔法で治したる。
【GM】 ありがたいことで。素朴な村人たちは、言われたとおり1列に並んだりします。
【アルフレッド】 それをひとりずつ殺していく! ぶし〜ッ!!
【シーザー】 おい、おまえらその蛮族を押さえとけ。
【カーム】 ウイ。
【リィン】 これだから蛮族は……。
【GM】 生き残って元気がある村人は、犠牲になったひとたちの遺体を、共同墓地に運びます。ま、置いとくのも何なので、オーガーの死体も村から離れたところに捨ててきました。
 そういう事後処理ひと通り終え、落ち着いたところで、村長が「どうもありがとうございました」と、皆さんにお礼を言いに来たよ。
【シーザー】 「いえいえ、どういたしまして」
【GM】 「今晩はささやかながら、鎮魂の宴を催しますので、皆さまもぜひ、ご出席ください」とのことです。ちなみにオルト村には宿屋がないので、村長の家に泊めてくれるそうです。
【カーム】 招待されよう。
【アルフレッド】 そんじゃ、村長の家で訪ねよう。「いったい、この村で何が起こってるんです?」
【GM】 「実は10日ほど前にも、あの怪物どもの襲撃を受けました。そのときは樵のダニーが、森の中でオーガーたちがここへ向かうのに気づいたので、比較的早く東隣のゼム村まで避難できました。そのおかげで、犠牲者もひとりですんだのですが……」
【リィン】 ゼムって、全滅してたあの村か。
【アルフレッド】 この村から、直接ゼム村に行ける道があるみたいやな。
【シーザー】 ゼム村が滅びたってこと、村長は知ってんの?
【GM】 その話を聞くと、村長は驚きます。「そ、そんなバカな……!」
【シーザー】 村長らがゼム村に逃げたとき、ゼムの村人に変わった様子はなかった?
【GM】 「はい、いつもと変わらない様子でした。……そんなことになってるのなら、弔いに行ってあげないと……」
【シーザー】 ふむ……。あっ、ひょっとして、最初にルニオールで聞いた『ゼム村の騒動』って、こいつらが避難してきたことやったんちゃうか。
【リィン】 あ、なるほど〜。だいたい日数合うしな。
【アルフレッド】 じゃあ、ゼム村の人らが全滅してたんはなんで?
【シーザー】 それは魔術師ギルドの面々が調べてるところやろ。少なくとも、オーガーに殺されたような死体はなかったけどな。そういえば、カームにとどめを刺される前、オーガーEはどこへ逃げようとしてたん?
【GM】 方角で言うなら、南。樵のダニーがオーガーを目撃した森というのも、そこら辺にあります。
【リィン】 南の森か。
【シーザー】 たぶん、その辺りに住処でもあるやろ。とりあえず、今夜はここで休ませてもらって、明日はオーガーたちの足跡を逆にたどって住処を発見しよう。
【アルフレッド】 そやな。住処にはまだ、別のオーガーがおるかも知れんからな。
【GM】 それじゃ、翌朝になりましたよ。
【カーム】 じゃあ、オーガーの巣を探しに行こか〜。
【アルフレッド】 オーガーの掃討作戦や。
【リィン】 オーガーの足跡を追跡する。
【GM】 それならレンジャー技能の[足跡追跡]で、成否をチェックしてみてください。
【リィン】【アルフレッド】 (ころっ)。
【GM】 なら、足跡を見失わずにたどることができるよ。皆さんは、オルト村南の森に入りました。
【アルフレッド】 僕は蛮族やから、こういう野外の活動は慣れてる。任せといてくれ。
【カーム】 足跡をたどってどんどん森を進む。
【GM】 森の中を進んで行くと、やがて小川に行く手を遮られたよ。もちろん橋など架かってなく、足跡はそこで途切れます。正確に言うと、足跡は小川の中から出てきたような感じで、ついている。
【カーム】 渡ってみようかな。その川はなに、深いの?
【GM】 そんなことはないね。水につかるのは足首まで、という程度やから。
【アルフレッド】 なら、渡ってしまおう。
【GM】 すると、向こう岸でオーガーの足跡を見つけます。さらに森の南からやって来ているようやね。ず〜っと追跡してますと、ちょっとした洞窟にたどり着いた。足跡はそこから出てきてるよ。
【カーム】 まちがいなく、オーガーの巣や。
【アルフレッド】 これは入ってみる価値があるな。
【シーザー】 それとも煙で中のものを燻し出すか?
【アルフレッド】 そんなことしたら『ひと騒動』が燃えてしまうじゃないか。
【シーザー】 何がぃな。
【アルフレッド】 『騒動』にヤキが入ってだなぁ──。
【GM】【カーム】【シーザー】【リィン】 ??
【アルフレッド】 ──弱くなってしまう。
【シーザー】 彼はいったい何を言ってるんだい?
【リィン】 蛮族の言葉やから、わけがわからん。
【アルフレッド】 だから、『騒動』と『ソード』がやなぁ──。
【リィン】 まだ言うてる……。
【カーム】 洞窟に入ってしまおう。どうよ、中は?
【GM】 「どうよ」よ言われても……真っ暗で湿ってます。
【シーザー】 灯りやろ、まずは。ランタンとたいまつに火をつける。
【カーム】 じゃ、進むぞ。
【GM】 わかりました。そこは自然の洞窟で、道は蛇行しながら奥に続いています。そして、何分も探索しないうちに、広い空間に出た。そこで、洞窟は行き止まりやね。ちなみに、その空間の広さは、10メートル四方ぐらい。天井もかなり高いよ。
【リィン】 これで洞窟おわり? 単なるほら穴やん。
【シーザー】 な〜んや。
【アルフレッド】 まあまあ、もうちょっと細かく調べてみようよ。
【GM】 調べてみても、何もないよ。腐った人の死体かなんかなら、その辺に散乱してるけど。ま、死体と言っても、肉は食われてるんで、ほとんど骨やね。
【シーザー】 あいつら、ホントにエサを取りに村に来てただけなんやな。
【アルフレッド】 よし、もうあいつらがここに住めないように、燃やしてしまおう。
【GM】 何を燃やすんですか? 燃えるようなものはないですけど。
【アルフレッド】 いや、死体とかをね……。
【GM】 だから、死体はほとんど骨しか残ってないよ。
【シーザー】 ホント言うと、この洞窟を塞ぐか、埋め立てるかしたいんやけどな。
【アルフレッド】 それはちょっとムリやろ。とにかく、この洞窟をクリーンにしとかないと。
【リィン】 『クリーン』って、うちらで掃除すんの?
【シーザー】 そんなん、あいつら帰って来ても「何かキレイになっとー」で終わってまうぞ。
【リィン】 ホンマや。「キレイになったし友達呼んでこよ」とか。
【カーム】 オーガーが増えてまうやないか!
【シーザー】 さて、前のセッションで1匹倒して2匹逃し、今回新しく1匹死体が見つかったという情報が入って、さっきの村で5匹倒した。オーガー全員がここに住んでたとすると、7〜9匹の所帯やったんやな。
【カーム】 10メートル四方の洞窟やったら、そんなもんちゃう。
【アルフレッド】 これ以上、オーガーはおらんと考えていいってことやな。
【カーム】 ほんなら帰ろか〜。オルト村に〜。戦闘なかったわ〜。
【GM】 それでは、その日の夕方近く──時刻的には3時ぐらいに、オルト村に戻ってきました。
【リィン】 行って帰ってきたら、村が滅びてた、とか。
【GM】 大丈夫、大丈夫。みんな元気です。
【シーザー】 じゃあ、森の奥にオーガーの住処があったということを報告しとこう。そこには何者の姿もなかったことも。
【アルフレッド】 「襲われることは、たぶん、もうないでしょう」
【シーザー】 オーガーが出かけてるだけ、ってことがなければな。
【アルフレッド】 ところで──伝説の剣はどこにあったんだ?!
【シーザー】 さ、ルニオールに帰るか。「伝説の剣〜!」とか言うとる奴を引きずりながら。
【リィン】 あ、報酬は? タダ働きになるで。
【GM】 報酬ですか。村長さんは、「お礼と言っても、そんなにたいそうなことはできませんが……」と言って、金貨を10枚──500フィス相当を支払ってくれます。
【カーム】 ひとり125フィスか。
【GM】 ところで、今からルニオールに向けて出発するんですか?
【シーザー】 まさか。ここで1泊して明日の朝出発したら、当日の夕方にバジェット村に着くやろ。そこでまた1泊して翌朝に出発したら、今から2日後の夕方に、ルニオールに着くやん。
【GM】 なるほど、そういう行程で旅をするわけね。では、翌朝、皆さんは村人たちに見送られながら、オルト村を後にしました。

÷÷ つづく ÷÷
©2000 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2000 Jun Hayashida
Map ©2000 Moyo
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