≪REV / EXIT / FWD≫

§モンスター・リプレイ[2-3]§

聖カンスの祝祭・仕上篇

作:Crazy Heaven 著:広田ヒロ那 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 牢に忍び込む妖魔たち ▽ 大活劇の妖魔たち ▽ 恋の天使の妖魔たち

牢に忍び込む妖魔たち

【GM】 それでは、時間は進んで夜になりました。月が雲に隠れた真闇の夜も、暗視能力のあるキミらには苦にならないね。
【アヤ】 あっ、小さくなってからインプを召喚したら、ちっちゃいインプが来るの?
【GM】 それもおもろいけど(笑)、普通のサイズのが来るよ。
【アヤ】 じゃあ、それでいく。薬を飲む。
【GM】 そしたら、キミたちの体は、どんどん小さくなっていく。体のサイズが5分の1ほどになった。
【アヤ】 服とかはどうなるん?
【GM】 装備のサイズは変わらないから、服は脱げてしまうね。あと、武器も。
【キラ】 ゴブリンは、爪や牙が武器やから。皮膚も固いから、鎧なくてもいいし。
【アヤ】 裸になっちゃうんか。じゃあ、何か、そのへんのを巻きつけとく。
【キラ】 服をちぎって使えばいいねん。どうせ、小さいサイズやし。
【アヤ】 じゃあ、「もったいな〜い」と言いながら、服をちょっとヘチって装備した。
【GM】 あと、薬のビンも小さくならへんよ。樽みたいな感じになってる。
【キラ】 あちゃ〜。
【アヤ】 背負っていく。「重い〜」って言いながら。
【キラ】 キラは筋力高いから、楽に背負える。
【アヤ】 んじゃ、〈サモンインプ〉でインプを召喚〜。(ころっ)
【GM】 そいつは成功やね。インプが、にょにょにょと出てきたよ。
【アヤ】 街の中に運んでもらう。刑務所に向かって、18ラウンドで行けるとこまで行って。
【GM】 「OK〜。全力で飛ぶぜぇ」
【アヤ】 あ、17ランド目には着地してな(笑)。

 こうして、アヤとキラは無事にオレンブルクの街に侵入し、刑務所前に降り立ちました。

【GM】 その直後、制限時間が過ぎたので、インプはにょにょ〜と消えていった。
 キミたちは、ダークプリーストが捕らえられてる刑務所の敷地、建物の前の芝生の庭園に立ってます。
【アヤ】 刑務所に向かってダッシュする。
【キラ】 ルパン並みに。
【GM】 薬のビンを背負った小さいゴブリンと、小さいダークエルフが、芝の上をちょこちょこと走ってるんや。
【キラ】 ビンが走ってるように見えるで。
【GM】 そんなキミたちの背後で、恐ろしい猛獣の咆哮が轟く。「にゃああ!」
【アヤ】 なに、何かいんの?
【GM】 振り向かへんの?
【アヤ】 怖いもん(笑)。
【キラ】 「逃げろ、猫がおる」って言う。
【アヤ】 もう1回〈サモンインプ〉でインプを召喚〜。猫の相手をしてもらう。(ころっ)
【GM】 その出目なら、即座に現れるね。ズボンをさげて、広げた新聞を手にしたインプが現れて、「え?」とか言うてるよ。
【アヤ】 トイレ中? それはすんませんねぇ(笑)。
【GM】 インプはきょろきょろして、猫に「何の用?」って聞いてる。
【キラ】 「召喚したんは、こっち、こっち!」(笑)
【アヤ】 「とりあえず、その猫の相手をしてて。3分でいいから」
【GM】 んじゃ、インプはねこじゃらしで猫と遊び始めた。
【アヤ】 その隙に、刑務所の建物に行きます。
【キラ】 入れそうなところはある?
【GM】 玄関の扉が、開けられたままになってる。もちろん、入口には見張りの衛兵が立ってるよ。
 ちなみに、玄関はそのまま事務所になってて、当直の衛兵が何人か、デスクで書類と向き合って仕事してます。
【アヤ】 ちっちゃいから、バレずに入れるかな。
【GM】 判定してみよか。シーフ技能か、レンジャー技能の[忍び足]でどうぞ。大きさを考慮して、目標値はかなり低め。
【キラ】 (ころっ)うん、余裕。
【アヤ】 (ころっ)あーッ、びっくりしたぁ! 成功、成功。
【GM】 なら、見張りが「ん?」って右を向いた瞬間に、左側をカサっと通って、中に入ったんやね。事務所に入っても、誰も気づかない。
【アヤ】 そういえば、ダークプリーストってどんなひとか、聞いてへんねんけどな。
【GM】 どこにおるのかも、聞いてへんのと違う?
【アヤ】 牢屋って言ってた。
【GM】 牢屋はいっぱいある……。
【アヤ】 たぶん、地下。
【GM】 ほんなら、書類作成がひと段落ついた衛兵が、「そういえば、あの地下牢に繋がれてるダークプリースト、もうじき死刑だな〜」と、背伸びをしながら仲間に言う。
「ああ。あの、右から3番目の牢屋の奴な」と、仲間が応える。
【アヤ】 おお、ええなぁ、これは(笑)。
【キラ】 ありがたい(笑)。じゃ、そこに行こう。

 2匹の妖魔は地下牢をめざし、刑務所の中をうろつきます。
 何度か衛兵に見つかりそうになる危機を切り抜け、2匹は、重犯罪者が捕らえられている地下へやって来ました。

【GM】 その身長で階段をおりるの、大変やったやろなぁ。
【アヤ】 がんばったよ。「どうやって登るんやろ?」って、思いながら。
【GM】 階段を降りきると、廊下がまっすぐに伸びてるよ。ところどころ、壁に燭台がとりつけられてて、ほのかな明かりが灯ってます。
 廊下の左右の壁には、7つずつ、鉄格子の扉が設置されてる。
 廊下は、15メートルほどのところで行き止まり。そこに、ランタンが載ったテーブルが置かれていて、異変に備えた見張りの衛兵がひとり、イスに座っております。
【アヤ】 あいつ、ビンが走ってたら、さすがに気づくやろな。
【GM】 それは、ダイスで判定して決まるけどね。
 キミたちは今、燭台の明かりが届かない階段のそばの暗がりで、息を潜めてます。
【アヤ】 どうやって牢屋に近づこう。もうじき死刑やったら、ご飯とかもらえてなさそうやしなぁ。
【GM】 ミソ汁の中に入って、運ばれて行くの? ハンバーガーのパンの下に隠れてみるとか。
【アヤ】 で、ダークプリーストに食われるねん。寝過ごして。
【GM】 「あいたー!」って思ったら、もう、口の中やねん。
【アヤ】 「ニワトリの気持ちが、今、わかりました」(笑)
【キラ】 さて、どうしよう。
【アヤ】 ……鉄格子の扉って、左右の壁にあるんやんね? 『右から3番目の牢屋』って、どっちの列の右やろ?
【GM】 しかも『右から』って、何に対して右なんかわからんし。
【アヤ】 候補が4つあるやん(笑)。(L3、R3、L5、R5の牢屋)
【キラ】 あちゃー。
【アヤ】 せめて、ダークプリーストが男か女かぐらい、聞いとけばよかった。たぶん、男やと思うけど。
 奥にいる見張りってさ、起きてる?
【GM】 起きてるよ。見張りやもん(笑)。
【アヤ】 「寝ろよ!」って思ってる(笑)。
【キラ】 とりあえず、危険度が少なさそうな近いところから、探ってみたらええやん。
【アヤ】 じゃあ、いちばん手前の牢屋から、こそっと覗いてみよう。
【GM】 見張りから遠い箇所では、気づかれずに移動するための目標値は低い。だけど、近づけば近づくほど、成功ロールの目標値は高くなるからね。
【アヤ】 OK〜。(ころっ)成功。

 2匹の妖魔は、ダークプリーストを探して、L7、R7の牢屋から順に探りを入れます。
 体が小さいので、鉄格子の隙間から簡単に牢の中に入れるのは、幸いでした。廊下に身を晒す時間が少ないぶん、さらに見張りから見つかりにくいからです。
 牢の中では、横縞の囚人服を着た死刑囚がベッドに寝てたりしましたが、L3、R3、L5、R5以外の牢の人物は、無関係なことがわかっています。

【アヤ】 とりあえず、R5の牢屋までは何とか行けそう。(ころっ)成功。気づかれてない。
【キラ】 牢の中に、ひとはいる?
【GM】 いるよ。他の牢と同じく、囚人服の男がベッドで寝てる。人間じゃなくて、ダークエルフやけどね。ちなみに、向かいのL5の牢は無人っぽい。
【アヤ】 ダークエルフ? じゃあ、ダークプリーストと違う。
【キラ】 とりあえず、ダークエルフなら話をしたらええやん。
【アヤ】 どうしよう。牢から話し声がしたら、怪しい?
【キラ】 こっちは耳もとで話したらええやん。ダークエルフがしゃべること自体は、おかしくないやん。「また、何か独りごと言うてるわ」って、思われるぐらい。
【アヤ】 じゃあ、声をかけてみる。
【GM】 ダークエルフは、目をこすりながら起きた。
 で、キョロキョロして、「気のせいか」って寝ようとしてる。
【キラ】 「ここ、ここ!」(笑)
【GM】 小さいダークエルフとゴブリンを見つけた彼は、「うわ!」と驚いてる。
【アヤ】 「しーっ!」って言う。
「あなた、レベルはいくつですか?」
【GM】 「レベル1」
【アヤ】 はぁ?? 「何をしたん?」ぴかーん!
【GM】 「万引き」
【アヤ】 「あ、そう」(笑)

大活劇の妖魔たち

【GM】 あんまり腹減ってたから、リンゴを1個失敬しらしい。
 街道で、リンゴを運ぶ馬車の背後からこそ〜っと忍び寄って、荷台からパカっと盗ったら、その後ろのタマネギを運ぶ馬車の御者に、犯行を目撃されてもてん。
【アヤ】 あはは(笑)。
【GM】 運悪く、そこに街道警備隊が通りかかって、ダークエルフは捕まえられてしまったんやね。
【アヤ】 で、リンゴ1個で死刑なん? かわいそう。
【GM】 「ダークエルフやから、死刑やねんて。『日焼けですよ〜』って言うたのに」
【アヤ】 エルフは日焼けしませ〜ん(笑)。
「じゃあ、逃がしてあげるけどさ」
【キラ】 「ここに捕まってるひとって、他にどんなのがおるの?」
【アヤ】 「ダークプリーストとか、おらへん?」
【GM】 「ああ、おるおる。あそこ」と、ダークエルフが指したのは、L3の牢。
【アヤ】 OK〜。じゃあ、小さくなる薬を飲ましてあげる。「1個だけやで、飲むの」
【GM】 「えー?」
【アヤ】 「あかん! 2個飲んだって、一緒や」(笑)
【キラ】 キラのピクシー・メイカーを渡してあげるよ。
【GM】 受け取った薬を飲んだダークエルフの体は、みるみる縮まり、やがて、キミたちと同じサイズになった。
【キラ】 「じゃあ、おまえはおまえで、がんばって逃げろ」と、言うてあげるよ。
【GM】 「一緒に行くよ〜」と、ダークエルフ。
【キラ】 いや、来んでいい(笑)。
【GM】 もう、アヤと手をつないでるよ。
【アヤ】 同じダークエルフやし(笑)。「名前は?」って聞く。
【GM】 「ミホ☆」
【アヤ】 『ミホ』?! 男やんな?
【GM】 うん(笑)。
【アヤ】 あれぇ? なんか、名前だけかわいい3人組(笑)。
 ミホって、何技能がレベル1なん?
【GM】 シャーマン技能。「ウィスプ呼べるよ〜」って言うてる。
【アヤ】 いらん、いらん!
 〈ウィンド・ボイス〉で見張りの気を引いて、どこかに行かせるとかしてみたかったけど、シルフがいないねんな。
【GM】 そうやな。地下の牢屋やし。
【アヤ】 とりあえずさ、そいつがいたら判定にマイナスがつくから、「ここで待ってて」って言う。待ってるか、階段のとこに隠れてるか。
【キラ】 むしろ、囮になれって感じ。
【アヤ】 なんか、キラの本性が出てきた(笑)。
【GM】 ゴブリンやし(笑)。
「じゃあ、ここで待ってるよ〜」と、ミホは名残惜しそうにアヤの手を放した。
【アヤ】 で、R5から隣のR4の牢屋に行くのに、また、気づかれないための目標値が上がるわけね?
【GM】 うん、上がる。見張りに近づくから、ちょっと難しくなるんやね。
 ちなみに、廊下を横切って向かいのL5の牢に渡るための成功ロールは、R6からR5に来たときと同じ目標値。
【アヤ】 R3からL3に渡るのは、R4からR3に行くのと、同じ目標値?
【GM】 そう。
【アヤ】 じゃあ、L5に渡ってから、ダークプリーストがいるL4に行くのが楽なんか。
 廊下を渡っちゃう。(ころっ)成功。
【キラ】 (ころっ)1ゾロや。
【アヤ】 うぉう!?
【GM】 キラは、廊下を横切るとき、ペチっとこけてしもたんやね。
 見張りの衛兵が、「ん?」と、ちっちゃいゴブリンに気づいたよ。
【アヤ】 アヤはL5の牢屋に隠れてる。
【GM】 衛兵は、「ネズミか?」と言いながら、キラのほうに歩いてくるよ。
【キラ】 隠れる。
【GM】 どこに隠れようとする?
【キラ】 ダークエルフがいるR5の牢屋。
【アヤ】 ミホのとこに行くの? 牢屋の中、誰もいなくなってるのがバレちゃうけど――。
【キラ】 ええねん、そのほうが騒ぎになって。
【GM】 じゃあ、キラはR5の牢に入った。やって来た衛兵は、鉄格子越しにR5の牢を覗こうとするよ。
【アヤ】 その隙にL5の牢を出て、L3に走る。
【GM】 衛兵はアヤに背を向けてるから、それは判定の必要はないね。アヤは、L3の牢に侵入した。
 で、キラのほうはどうするの?
【キラ】 隅っこのほうに隠れる。
【GM】 隠れるんなら、[潜伏]やね。今、キラの体は小さいので、牢はまるで荒野のような感じ。レンジャー技能で隠れていいよ。
【キラ】 (ころっ)足りひん、失敗。
【GM】 キラは毛布に潜り込んだけど、お尻が出てる。ミホはどうすんの?
【キラ】 「あっち行け。逃げろ!」と、言うてあげるわ。
「行けっ。外へ飛び出せ。捕まれー!」(笑)
【GM】 「誰が捕まるか〜! おまえが捕まれ!」って、ミホは言うてる(笑)。
 R5の牢を覗いた衛兵は、ちっちゃいゴブリンとダークエルフが、ちっちゃいケンカしてるのを、目撃してしまうんやな。
「うおおぉ!?」と驚いた衛兵は、笛を鳴らして仲間を呼んだ。(ころっ)今から3ラウンド後に、階上から他の衛兵が駆けつけるよ。
【アヤ】 とりあえず、L3の牢屋に行ってみる。誰かいる?
【GM】 中年の男性がいるよ。騒ぎで目を覚ましてる。鉄格子の隙間から入ってきたアヤを見て、「うわっ、ちっちゃいダークエルフや!」って驚く。
【アヤ】 「あんた、ダークプリースト? カンス祭りをご存知ですか?」って聞く。
【GM】 「知ってるよ。妖魔の集落で、祭儀をとり行うはずだった」
【アヤ】 「その集落の族長から、あんたを助け出してこい、って言われてるんですけど」
【GM】 「そうか、そうか」
【アヤ】 「まず、お聞きしますけど、何技能が何レベルありますか?」
【GM】 ダークプリースト技能が、5レベル。
【アヤ】 5レベル!
【キラ】 強ぇー。
【GM】 あと、セージ技能が3レベル。
【アヤ】 それはいらん〜。
【GM】 「エルフ語、しゃべれますよ」って、エルフ語でしゃべり出すで。
【アヤ】 「いや、いらないです」(笑)
【GM】 優秀やのに。
【アヤ】 ……暗黒魔法って、5レベルでもあんまり大したのないね。
「あんたをちっちゃくして、ここから逃げようと思ってるねんけど。
 じつは、あそこの牢屋に、捕まりかけてる仲間がひとりと、ついてこようとしてるひとがひとりおるんで、それも助けてくれたら嬉しいな〜、って思ってるねんけど」
【GM】 ダークプリーストは、「どうやって助けるの?」って聞く。
【アヤ】 「とりあえず、これ、飲んで!」って、薬を渡す。
【GM】 飲んだ。ダークプリーストの体は縮み、あわてて布きれを腰に巻きつけてる。
【アヤ】 そんで、オレが〈サモンインプ〉でインプを召喚するから、ダークプリーストは見張りをこっちに向かせて、〈ホーリー・ライント〉で目くらましして。
【GM】 なるほどね。
【アヤ】 〈サモンインプ〉、(ころっ)即座に召喚。
【GM】 パジャマ姿で三角帽子のインプが、通路に出てきた。まだ、寝てる……。
【アヤ】 ぺちって起こす。
【GM】 「なによ〜?!」と、インプは不機嫌に言う。
【アヤ】 見張り、こっち向いた?
【GM】 不気味な小さい妖魔にビビってた衛兵は、「今度は何?!」って、振り向いたよ。
【アヤ】 じゃあ、〈ホーリー・ライト〉かけて〜。
【GM】 ダークプリーストは、〈ホーリー・ライト〉を唱えた。差し出した掌からまばゆい閃光が放たれる。小さい体でも、その光は強烈。
 (ころっ)衛兵は抵抗できなかったので、手で顔を覆って、「目がァ、目がぁ〜!」と苦しんでる。
【アヤ】 じゃあ、その隙にインプの背中に乗って、R5の牢屋の前までガーっと飛んでく。
「おーい、インプに捕まれ〜!」って、牢屋の中のキラとミホに言う。
【キラ】 鉄格子の隙間から、通路に出る。
【GM】 奥のほうから、アヤとダークプリーストを乗せたインプが飛んで来るよ。インプの右足か左足に捕まることになるね。活劇っぽく。
 モンスターレベルと敏捷度ボーナスで、成功ロールしてみよう。
【アヤ】 ミホの判定。(ころっ)余裕で成功。ダークエルフは、敏捷度が高いから。
【キラ】 (ころっ)うわっ、ギリギリで成功。ギリギリなんが、かっこいいねん。
【GM】 では、キラとミホは、インプの足に捕まった。
 ところで、さっき笛で呼ばれた衛兵の仲間たちが、そろそろ、この地下牢に来る頃だけど? 階段の上のほうから、3人ほどの足音が響いてる。
【アヤ】 インプががんばって階段の天井すれすれを飛ぶ。
【GM】 なら、兵士に気づかれたかどうか、運試しをしてみよか。ダイスを2個振ってみて、出目が8以上なら気づかれない。
【アヤ】 (ころっ)6。
【GM】 じゃあ、気づかれた。兵士が「あーッ!」って、指をさしてる。
【アヤ】 インプに「がんばれ〜!」って言う(笑)。
【GM】 がんばって逃げ……あれ? インプの敏捷度は7しかないよ。兵士の敏捷度は10やから、追いつかれてしまう。
【アヤ】 「おっさん、もう1回光って!」
【GM】 じゃ、もっかい〈ホーリー・ライト〉を唱えましょう。
 (ころっ)兵士たちは抵抗できない。5レベルの閃光やもん、ひとたまりもあらへん(笑)。
「うあ〜!」って、目を押さえて、のたうちまわってる。

恋の天使の妖魔たち

【キラ】 この隙に、急げ、インプ。急げ!(笑)
【GM】 インプは、彼なりに全速で飛んで、キミたちを刑務所の外に運び出したよ。
【アヤ】 もう1回、インプを呼んで町の外に連れていってもらう〜。
【GM】 インプ使い荒いなぁ、もう(笑)。最初に侵入したとこに、降ろしてもらった。
 無事に町の外に脱出できたよ。
【アヤ】 じゃあ、ダークプリーストのおっさんに、〈キュアー・ポイズン〉をかけてもらう。
【GM】 では、キミたちの体は、にゅにゅにゅ〜っと元の大きさに戻った。とうぜん、身につけてたものは破けて取れてしまうので、みーんな素っ裸ね。
【キラ】 キラには関係ないけど。
【アヤ】 アヤは、その辺に隠しておいた服を着る。あとのふたりは……知らん(笑)。
「まー、助かったから、いいんじゃない?」
【GM】 別の罪で捕まったりして。
【アヤ】 猥褻(わいせつ)物陳列罪?(笑)

 こうして2匹の妖魔は、ダークプリーストと、ついでに助けたミホを連れて、森の沼のほとりの集落に帰りました。

【アヤ】 族長に、「ダークプリーストを助けてきました〜」って言う。
「あと、ひとり増えましたけど」
【GM】 「はあ?」と、族長マレイツさま。
【アヤ】 「ダークエルフがいたんですよぉ。で、一緒に連れてきました〜。名前はミホちゃん。男☆」
【キラ】 「僕らの部下です」って。
【GM】 まあ、これだけの働きをしたからね。「うむ。部下を持つことを許そう」と、族長は言う。
 で、ミホに「あのふたりに仕えなさい」と言った。
【アヤ】 困った3人組になりそうや(笑)。
【GM】 そして、翌日になって、カンス祭りが始まった。助けられたダークプリーストは、暗黒の聖衣をまとって、神事をとり行なってる。
【アヤ】 「あっ、裸じゃない!」って思ってるねん。
【GM】 あたりまえやんか。ちゃんと、闇司祭のコスプレをしてるよ。
【キラ】 『コスプレ』っていうのもおかしいけど。ダークプリーストなんやから(笑)。
【GM】 で、偉そうに説教もしたりしてるわ。
「自由神クートラは、己の欲求のままに行動しろと教え、人助けなどもってのほか――」
【アヤ】 おまえ、助けられたじゃん!(笑)
【GM】 そんで、広場に飾りつけられた提灯に明かりが灯されて、中央の(やぐら)の上でホブゴブリンが太古を叩き、インプが笛を吹く。
 櫓には、ワラで作られた大きなカンス人形が飾られていて、妖魔たちが、その周りで輪になって踊り出す。
 料理もたくさんあるから、勝手に食っていいよ。髑髏飾りがいっぱいついたエントの木も、水をまいてもらって、根っこから吸収してる。
【アヤ】 ニセの樹齢のエントの木(笑)。
【GM】 聞かれもしないのに、「ワシは300歳」とつぶやいてるから、大丈夫。
【キラ】 妖魔だらけの祭りや。
【アヤ】 ハロウィンみたい。
【GM】 子供たちは、大人のところに行って、「お菓子をくれんと、イタズラするぞ」とか言うてるし。
【アヤ】 「くれてもするけどなー」(笑)
【GM】 「さあ、どうする?」(笑)
【アヤ】 そんなん、くれるわけない。あはは(笑)。
【GM】 まあ、そんな感じで、キミたちはカンス祭りを楽しんでます。
【キラ】 わーい。
【アヤ】 先生はどうしてる?
【GM】 “山の主”は、広場で踊ってるけど?
【アヤ】 先生のとこに行って、「先生、エントの木を運んでくれたお礼、何が欲しい?」って聞いてみる。
【GM】 「んー、そうやなぁ……。か、彼女?」と答える。
【アヤ】 彼女?
【GM】 そう。ずっと山に篭ってるから、全然出会いがないのよ。ずっとひとりでいて、寂しいらしい。
【キラ】 雌の巨人を見つけてこなアカンのか。
【アヤ】 誰か、心当たりないかなぁ。インプの偵察部隊に、ちょっと聞いてみる。
「雌のジャイアントって、どこにおるか知らん?」
【GM】 「雌のジャイアントぉ?」
 質問されたインプは、歯に挟まった食べ物のカスをこそぎながら、「喉、乾いた」。
【アヤ】 いやいや、知らんよ(笑)。
【GM】 「あ。じゃあ、オレ、何も知〜らねっ」
【アヤ】 はあ?! 「水でいいのかよ」
【GM】 うん、水瓶はすぐそこにあるから。
【アヤ】 手ぇ伸ばせよ!(笑)
【キラ】 じゃあ、キラがコップに汲んできてあげるよ。
【GM】 キラに差し出されたコップを受け取って、インプはごくごく水を飲んだ。
【キラ】 で、心当たりはあるの?
【GM】 「んー。目がひとつの巨人でもいい?」
【アヤ】 「いや、それ、ダメっぽい」(笑)
【GM】 「じゃあ、南に山を3つ越えたところに、雪の高原があるわ。そこに、スノー・ジャイアントがいるよ。たぶん、雌やったと思うで」と、インプは言う。
【アヤ】 「先生、氷はどうですか?」って聞く。
【GM】 OKっぽい。“山の主”は、「え、うそ?」って、顔を赤くしてる。
【アヤ】 クールな女がいいみたい(笑)。
【GM】 そうそう。それに、スノー・ジャイアントの女性は、細身で背が高いから(笑)。
【アヤ】 とりあえず、彼女のところに行って、彼女を連れて来させる? こっちから出向いたほうがいいかな。
【キラ】 出向いたほうがいいと思う。付き添いで一緒に行ってあげよう。
【アヤ】 何か、プレゼントを持っていったほうがいいかな?
【キラ】 何があるやろ?
【GM】 食用の牛1頭とか(笑)。
【アヤ】 じゃあ、「先生がエントの木を持ってくるの手伝ってくれたし、牛1頭ぐらい、あげてもいいっしょ?」って、族長に聞いてみる。
【GM】 「別にいいよ」と、マレイツさま。
【アヤ】 わーい。
 じゃ、牛にリボンをかけて、持って行く。山を3つ越えて、南に行ってみる。
【GM】 では、キミたちは“山の主”の肩に乗って、南へ行ったよ。
 山を3つ越えたあたりで、急に寒くなった。向こうに雪原が見える。
【アヤ】 「じゃあ、先生、ちょっとここで待ってて」って言うて、まずは俺らだけで雪原に行ってみる。
 スノー・ジャイアントはいる?
【GM】 いるよ。銀色の長い髪の女巨人が、ひとりで雪ダルマを作ってる。
【アヤ】 寂しそ〜。
【キラ】 声をかけてみる。
【GM】 スノー・ジャイアントは、「え?」って振り向いた。なかなかの美人やね。
【アヤ】 「おひとりで寂しくないですか?」って聞いてみる。
【GM】 「そうやねぇ。こういう体質やから、外に出られへんし、友達できにくいし」
【キラ】 雪原から外に出られへんの?
【GM】 そうみたい。
【アヤ】 先生、こんな寒いとこでも大丈夫かな。
【キラ】 「じつは、あなたとお友達になりたいという、巨人族の方が――」
【アヤ】 「すてきなプレゼントを持って来てはるねんけど、会ってあげてくれますかねぇ?」
【GM】 「会ってもいいよ」
【アヤ】 じゃ、先生のとこに戻る。「会ってもいいって」
【GM】 「マジで?」って、“山の主”は髪を直しはじめた。
「髪型、おかしくない?」
【アヤ】 「おかしくないから、はよ、牛持って会いに行ってき」
【キラ】 「後は、がんばって」
【GM】 では、“山の主”は牛を持って、スノー・ジャイアントのところへ行った。手と足が同時に前に出る歩き方やね。
【アヤ】 ちょっと、陰から見とく(笑)。
【GM】 なんか、“山の主”はうまく話せてないね。ほとんど、スノー・ジャイアントのほうから何か話しかけてて、応える言葉が「え、あ、うん」ばっかり。
【アヤ】 先生、がんばれよ!
【GM】 真っ赤になった顔から湯気が出てて、“山の主”の周囲の雪がとけはじめてる。
【キラ】 どんだけ緊張してるねん。
【アヤ】 「プレゼント、渡せよ〜」って、足にチョップする(笑)。
【GM】 それで緊張が解けて、“山の主”はちょっとリラックスできた。
 どもりながらも、普通にしゃべれるようになったよ。リボン付きの牛も、喜んでもらえたし。
 スノー・ジャイアントと、お友達になれたみたいやね。
【アヤ】 よかった、よかった。
【キラ】 じゃあ、あとはふたりに任せて、僕らは集落に戻ろう。

 こうして、アヤとキラは集落に帰りました。
 働き者の2匹は、これからも一所懸命に仕事をして、やがて、部下をたくさん従える大妖魔になることでしょう――。

÷÷ おわり ÷÷
©2003 Hirona Hirota
Illustration ©2003 Jun Hayashida
Map ©2003 Moyo
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ひと言ありましたら
 
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