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§短編集[4-1]§

ドラゴンの鞘奪還作戦・前編

作:Crazy Heaven 著:龍神裕義
▽ 1 ▽ 2 ▽ 3

 このセッションは、TRPGリプレイ短編集(3)『ドラゴンの鞘を取り戻せ』及び、キャンペーン・リプレイ『久遠の旅人』第7話「悲劇の村の少女」と、同じシナリオを使用しています。
 もちろん、参加しているプレイヤーとキャラクターは、3つのセッションでまったく異なっています。
 今度のプレイヤーたちは、無事にミッション達成を果たせるでしょうか。

【GM】 それじゃあね、始めたいと思います。キャラクターを教えてください。
【プレイヤー1】 アイオライト・ソーダスです。人間の男の子で、18歳。生まれはレンジャーだけど、大地母神ミフォアのプリーストをやっとります。
 いちおう、レンジャーということで、武器はロングボウで、鎧はハードレザー・アーマーです。接近戦はできないということで、よろしく。
【プレイヤー2】 人間の男性のアルセーヌ・アクアマリンです。22歳です。生まれは盗賊で、シャーマン技能も身につけました。
【アイオライト】 〈インビジビリティ〉で姿を消して、忍び込むって?
【アルセーヌ】 ゆくゆくは、そのつもり(笑)。今はレベルが全然足りんから、そんなことはでけへんけどね。
 武器はレイピアで、鎧はハードレザー・アーマーです。盾は持たない。あと、マントを着てるよ。
【アイオライト】 イメージは完全に“怪盗”なのね。
【プレイヤー3】 人間、男、19歳のレイスくんです。生まれはバードで、それを素直に伸ばしました。呪歌は〈シング〉と〈ダンス〉。それから、ファイター技能も1個取ってます。
 武器はロング・スピアとダガー。鎧はチェイン・メイルです。
【アイオライト】 しかし、このパーティって、男しかおらんのね。華がないな。
【GM】 プロフェッショナル集団って感じで、いいんとちゃう?
【アイオライト】 たかだかレベル1の冒険者が、『プロフェッショナル』っていうのもな〜。
【GM】 さて、それでは状況を説明します。
 みんなはすでにパーティを組んでる、ってことでいいよね?
【レイス】 うい。
【GM】 キミたちは、北のほうのとある小さな町の酒場で知り合い、パーティを結成し、ちょっとした仕事をこなしてきています。
 そして、「そろそろ大きな町へ行ってみよう」ということになって、南へ向かって旅をしている、といった状況です。
【アイオライト】 それは街道を旅してるのかな?
【GM】 いや、街道というほど整備された道ではないね。
 広大な草原に、ひとが踏み慣らしてできた白い筋が1本生じてる、といった具合の道。普通は“間道”と称されてしまうような、僻地の道です。
 あと数日旅をすれば、ちゃんとした街道に出られるけどね。
【アイオライト】 じゃあ、そこをめざして、てくてく旅をしときましょか。
【GM】 そうして丘を越え、窪を迂回し、原野を歩くことウン日後、行く手に小さな村が見えてきたよ。とくに改めて描写するほどでもない、ごくありふれた農村です。
 時刻は夕方。カラスも鳴いてます。
【レイス】 それじゃあ、村に立ち寄りましょうか。
【アルセーヌ】 宿も探すでしょう。
【GM】 こんな辺鄙な村では、宿を探すのも大変やね。
 キミたちは、畑から家に帰る途中の村人に宿屋の有無を聞いて、ほとんど開店休業状態になってる小さな宿屋に入りました。
【アイオライト】 旅人なんか、ほとんど来ないんやな。
【GM】 少し気になるのは、さっきの村人といい、ここの経営者の中年夫婦といい、あからさまに冒険者ですって格好のキミたちを見て、なんか妙に嬉しそうな顔をするんやわ。
【レイス】 ほう。
【アイオライト】 目ぇそらしとこっかな。
【アルセーヌ】 儲け話の匂いがするんや(笑)。
【GM】 それはもう、金の匂いがプンプンと。
【アイオライト】 儲け話はいいけど、私らのレベルと相談してくれな。
【アルセーヌ】 それは、向こうの話を聞いてから心配すればええねん。
【GM】 それに、宿のオヤジは右側頭部から右目を覆う変な機械を装備してて、ボタンをピっと押して、「フッ、レベル1か……」とか言うてるし。
【アルセーヌ】 スカ○ターや(笑)。
【レイス】 儲け話の内容を聞いてみる。
【GM】 語りましょう。さっそく村長さんが呼ばれて、揉み手しながら現れた。
【アイオライト】 村長がわざわざ?!
 なんか、逃げたくなってくるな〜。「ムリですー!」って言うて(笑)。出口をふさがれてしまってそうやけど。
【GM】 「じつは、この村の秘宝が盗まれたんです」と、村長はしみじみと語る。宝が盗まれてしまったらしいね。
【アイオライト】 聖印とか?
【GM】 「いえ、鞘です。剣を収めるための」
【レイス】 鞘?? 鞘だけ?
【GM】 「そうです。もちろん、それは村に代々伝わる魔法の鞘です。
 その鞘に入る大きさの刃物を収め、ある儀式を行うと、それはドラゴンに対してプラス1の効果が武器になる、と言われております」
【アルセーヌ】 すげぇ(笑)。
【アイオライト】 でも、使ったことはない、と。
【GM】 1回だけ、試しに使ったことがあるよ。鎌の刃の部分だけを入れて、試しに儀式をしてみた。
 すると、みごとにドラゴンキラーの鎌になったらしい。
【アイオライト】 はい〜!?
【レイス】 あはは(笑)。
【GM】 ところが、鞘の効能は3回分しかなく、その時点ですでに1回使われていたので、あと1回しか効果がないらしい。
「もし、盗んだ犯人に使われてしまうと、ただの鞘になってしまうんです。非常に危機的状態なのです。どうか、そうなる前に鞘を取り戻してください」
【アイオライト】 私らが鞘を使ったら、どうする気なんやろ?
【レイス】 儀式が必要らしいから……。
【アイオライト】 儀式ぐらい、調べようと思えば調べられるかも知らん。
【GM】 キミは大地母神のプリーストじゃなかったっけ?
【アイオライト】 思うとるだけやから。「なんて、人の好いひとばかりなんだろ」って。
 そういえば、農村ってことは、ここの村人はみんなミフォアの信者じゃなかろうか?
【GM】 いや、至高神シルファスの信者ばかりやね。道歩くときなんか、みんな、右側通行やで。法と秩序の村やから。
【アルセーヌ】 道がちゃんと区画されてるんや(笑)。
【GM】 村長さんも、ピシっとしてるね。ピシっとして、揉み手してるね。
「どうでしょう。鞘の奪還を、引き受けてもらえますか?」
【アルセーヌ】 報酬次第やね。
【GM】 「あなた方の冒険者レベルは、2、2、1ですね。そうすると、レギュレーションで定められた報酬額は、750〜3000フィスの間です」と、村長さんは、ルールブックを見ながら言う。法と秩序の村やからね。
「ところが、我々は3000フィスも払えない。ということで、ちょうど中間の1875フィスではどうでしょう? もちろん、成功報酬ですが」
【アイオライト】 ひとり625フィス。
【アルセーヌ】 悪くはない。
【レイス】 で、盗んだ犯人に心当たりは?
【GM】 「この村の西、川を越えて1時間ほど行ったところに、かつて、多くの魔術師たちがこもって何かを研究していた塔があります。もう何十年も前に廃棄されて、ずっと無人になってたんですが、最近、何者かが塔に住み着いたようです。
 おそらく、そいつが盗んだんでしょう」
【レイス】 魔術師か……。
【アルセーヌ】 そいつがどの程度のものか、わからへん?
【GM】 「このスカ○ターで見れば、わかりますが」(笑)
【アイオライト】 見てないのね(笑)。
【GM】 「怖くて。塔の周囲には、ゴブリンもうろついてたし」
【アルセーヌ】 ほう。
【GM】 「モンスターレベル1か。……カスめ」とか言いながら、逃げてきた。
【アイオライト】 法と秩序の村なら、ゴブリンぐらい退治に行かんか、村人め!
【レイス】 きっと、管轄外ってやつ。
【アルセーヌ】 管轄は僕ら冒険者なんやな。
【アイオライト】 まあ、行ってみますか。
【レイス】 しょうがないですね。
【アイオライト】 昔に魔術師がいっぱいいたとこなら、何か見つかるかも知らんし。
【レイス】 マジック・アイテムが。
【アルセーヌ】 その塔に行くまでの必要経費は?
【GM】 必要経費込みの報酬です。
【アルセーヌ】 やっぱり(笑)。
【アイオライト】 ここから1時間ほどの距離でしょ? 準備するほどのものはないと思うけど(笑)。
【GM】 道中の弁当ぐらいは、用意するけどね。あと、仕事を引き受けてくれるなら、前金が支払われる。
 で、どうする? 依頼を引き受ける?
【アイオライト】 だから、引き受けるって。
【GM】 じゃあ、前金で300フィスを渡しましょう。
【アルセーヌ】 今日はもうすぐ夜だから、明日の朝、出発しようかい。
 あ、ここの宿代は? これはタダでええやろ。
【GM】 ……タダでいいよ(笑)。

【GM】 では、翌朝になりました。
 キミたちは、意気揚々と村を発ち、西にあるという魔術師の塔へ向かいます。
【アルセーヌ】 その塔までは、道があったりするの?
【GM】 古道の跡があるよ。レンジャーがいれば、迷わずに辿って行けそう。
【アイオライト】 私、レンジャー技能ある。
【レイス】 じゃあ、出発しよう。
【アイオライト】 すぐに着くっしょ?
【GM】 ところがどっこい、ひとつめの森を抜けたところで、川がキミたちの行く手を阻むんやわ。
【レイス】 どんな川?
【GM】 幅は十数メートルで、大河というほど広いものじゃない。
 けど、どうも最近、上流のほうで大雨があったらしく、すんごい濁流が唸りをあげてるんですわ。
【アルセーヌ】 あらら。
【レイス】 濁流ですか。
【GM】 それはもう、すごい流れ。あるはずの橋が、土台を残して流されてしまってるし、今も、馬が「ヒヒ〜ン」と鳴きながら流れていった。
【アイオライト】 どないします?
【レイス】 迂回路を探すしか……。
【アルセーヌ】 川幅の狭いところを探して上流へ行くか、流れの緩いところを探して下流へ向かうか。
 十数メートルもあると、そこらの木を切り倒して橋にする、っていうのは、まずムリやろしな(笑)。
【アイオライト】 下流か、上流か……どっちが渡りやすい、ゲームマスター?
【GM】 知らんよ、そんなの(笑)。
【アイオライト】 じゃあ、多数決で決めよう。
【レイス】 ダイス振って、奇数なら上で。(ころっ)上で。
【アイオライト】 (ころっ)下。
【アルセーヌ】 (ころっ)上。
【アイオライト】 じゃあ、上流へ向かうということで。
【GM】 キミたちは、川上へ向かいます。川の流れを遡って行くにしたがって、だんだん、大きな岩が目立つようになってくるね。川幅も狭くなってくるよ。
 ただ、ひとつ気になるのは、キミたちが歩く地面はどんどん標高が高くなってるのに、川のほうはあんまり高くならないこと。
【アイオライト】 つまり、どういうこと?
【レイス】 谷になってる?
【GM】 そういうことやね。
【アイオライト】 川幅は、いちおう狭くなってるのね?
【GM】 今の段階で、向こう岸まで8メートルと見た。ちなみに、これは谷の幅ね。川は15メートルほど下にあって、ちっちゃ〜く見える。
【アイオライト】 落ちたら死ぬってやつですな。15メートルも落ちたら、いくら下が水っちゅーても、衝撃がすごいっしょ。
【GM】 下が水ということを考慮しても、ダメージが30点ぐらいはいくやろね。鎧を着てたって、助かる数値じゃないやろ?
【レイス】 チェイン・メイルのボクでさえ、防御で6ゾロ出しても助からん。
【GM】 もし、奇蹟的に助かったとしても、キミは沈む。
【レイス】 死体は浮かんでこない、と(笑)。
【アイオライト】 8メートルってさ、向こうにロープを渡して、それを伝って行けると思う?
【レイス】 向こう岸に、ロープをくくりつける場所があれば。
【GM】 いちおう、向こうとこっちに木が生えてるよ。木と木の間は、谷を挟んで16メートルぐらい。
【アイオライト】 私のロープは10メートルだから、使えんな。
【アルセーヌ】 僕は20メートルのロープを持ってる。
【レイス】 いちおう、30メートルのを持ってるッス。
【アルセーヌ】 ちっ、負けた(笑)。
【レイス】 でも、このロープをどうやって向こうの木に結びつけるか、という問題が。
【アイオライト】 矢にくくりつけてやな、弓で木に撃つとか。
【アルセーヌ】 それって、僕らがロープにぶら下がった瞬間、矢が抜けると思うぞ(笑)。クリティカルで、ごっつい深く突き刺さりでもせんと。
【GM】 たとえ矢が抜けないぐらい突き刺さったとしても、キミらがロープにぶらさがった瞬間、矢は折れてしまうと思う(笑)。
【レイス】 谷の幅が3メートルぐらいならな〜。幅跳びで行けそうやけど……。
【GM】 レイスの場合、8メートルの幅跳びに挑戦するなら目標値は29やね。その重い鎧を脱いだとしても、目標値は25。
【レイス】 絶対ムリっす!(笑)
【アルセーヌ】 僕はシーフやから、ハード・レザーを脱いだら、なんとか行けるかな。
【GM】 アルセーヌが鎧を脱げば、目標値は11やね。
【アルセーヌ】 ダイスの出目が8以上必要か。厳しいけど、行けないことはない。
【アイオライト】 ロープを持って、向こうに飛んでみる気はある?
【レイス】 命綱をつけて。
【アルセーヌ】 それはいいけど、命綱の長さに気をつけんと、跳んでる最中に長さが足りなくなると、えらいことやで。
【アイオライト】 私らふたりで、10メートルの長さのところを持っとくから。
【アルセーヌ】 『持っとく』って、大丈夫か?
【レイス】 ロープの端は、木に巻きつけといたら?
【アルセーヌ】 そっちのほうが安心できる。
【レイス】 GM、谷の(ふち)から後ろの木まで、何メートルぐらい?
【GM】 4メートル。
【レイス】 12……だとギリギリやから、14メートル必要なわけか。
【アイオライト】 ま、おふたりは20メートル以上のロープを持ってるんやし。
 アルセーヌに30メートルのロープを命綱にして跳んでもらって、そのまま対岸の木にくくりつけてもらったら、手間が省けるな。
【アルセーヌ】 いやいやいや、谷の(ふち)まで4メートルやねんから、26メートルも余るやん。谷の高さは、15メートルなんやで?(笑)
【レイス】 何のための命綱か、わからん(笑)。
【アイオライト】 だから、10メートルのとこで持っとくからさ。
【アルセーヌ】 そんな、わけのわからんことせんでもええよ。
 僕の20メートルのロープを、木と僕にくくる分の長さを差し引いて、14メートル使う。別に切断するとかじゃないで。
【レイス】 少し余らせて、くくりつけるってことね。
【GM】 了解。では、アルセーヌは、8メートルの幅跳びに挑戦するんやね。どうぞ。
【アルセーヌ】 鎧を脱いで、荷物を置いて跳ぶよ。(ころっ)成功。
【GM】 アルセーヌは、華麗に対岸に降り立った。
【アルセーヌ】 よしよし。じゃあ、まず、体にくくりつけたロープをほどく。そっちの木に結びつけたロープも、いったんほどいて、今度は余らせずに結んで。
【アイオライト】 した。――って、ダイスで判定はいるの?
【GM】 しとこか。冒険者レベルと器用度ボーナスでダイスを振って、達成値を教えて。
【アイオライト】 (ころっ)うーん、9。
【GM】 それなら、アイオライトはちゃんと結べたような気がした。
 アルセーヌもロープを木に結ぶなら、同じ判定をして。
【アルセーヌ】 僕はレベル1やねんな〜。そのぶん、器用度が高いけど。(ころっ)うおっ、低い! ……8。
【GM】 アルセーヌも、いちおう結べたよ。
【レイス】 大丈夫かな?
【アイオライト】 重そうな鎧は、はずしとこうね(笑)。
 レイスの30メートルのロープを使って、ロープウェイみたいにして、先に荷物を渡らせようか。
【レイス】 じゃあ、30メートルのロープの片方を、対岸のアルセーヌに投げ渡す。
【アルセーヌ】 それを受け取って、木に結ぶ。(ころっ)今度はええぞ、12。

 冒険者たちは、なんとか荷物と鎧を対岸に渡した。
 そして、アイオライトとレイスは、荷物運びに使ったロープを命綱にして、アルセーヌが張ったロープを伝い、対岸に渡った。

【アイオライト】 ところで、向こうとこっちで結びつけちゃった20メートルのロープは、どうやって回収するの?
【レイス】 帰りに使いましょ。
【アルセーヌ】 30メートルのは回収しとこう。
 みんな、鎧をちゃんと装備しなおした? いちおうGMに宣言しとかんと、戦闘が始まってから「鎧、着てたっけ?」とか聞かれたら、困るで。
【レイス】 「あ! そういえば、着てない!」って(笑)。
【アイオライト】 そこで「着てない」と答えるひとなんて、おらへんと思う。やっぱり。
【アルセーヌ】 いやいや、GMによっては、宣言してないと認めてくれないから(笑)。
【アイオライト】 それは、まあ、確かに。
 じゃあ、「よっこらしょ」と鎧を着なおして、魔術師の塔をめざしましょか。
【GM】 どうやってめざすのかな? もはや、正規のコースからかなり逸脱してるけど。
【レイス】 川伝いに、橋が壊れてたとこまで戻りましょうか。
【アイオライト】 そこからなら、また道の跡を辿って行けるっしょ。
【GM】 川伝いに下って行くのなら、迷うことはないね。キミたちは快調に旅を続け、もともと通るつもりだったルートに戻りました。
【レイス】 よし。
【GM】 そして、そこから西へ1時間ほど歩いて行くと、「あれか、あれが噂の塔だな」っていうような、蔦で覆われた古い建築物が見えてきました。
【アルセーヌ】 いかにもそれっぽい塔なんやな。
【レイス】 「あれっぽいな〜」
【GM】 その石造りの塔は、まだしっかりと建ってるけど、てっぺん付近の壁だけが若干崩れたような感じになってるかな。最近壊れた感じではなく、もうず〜っと昔にそうなったように見えるけど。
 あと、2階辺りの壁の一部が、バルコニーになってるようやね。
【アイオライト】 バルコニーか。あんまり塔って感じじゃないな。
【アルセーヌ】 見えるのはそれだけ?
【GM】 いや、その塔の入口に、ゴブリンが2匹見張りに立ってるのが見えるよ。
【アルセーヌ】 なるほど(笑)。
【GM】 かつて魔術師たちが集っていたというその塔は、森が開けたところに建っていて、キミたちは森の出口近くの茂みの中。ゴブリンたちは、キミたちに気づいた様子はないね。
 距離は目測で20メートルほど。
【アイオライト】 無益な殺生はあまりしたくないけど、さて、いかがいたしましょう。
【GM】 ゴブリンたちは退屈そうにあくびしてる。何か話して笑ってる。
【アルセーヌ】 いかにもやる気なさげやな。
 今いるとこから離れたとこの別の茂みに石を投げてガサガサ言わせたら、そっちへ行ってくれへんかな。
【アイオライト】 でも行って、うちらが塔に入ろうとして「あっ、鍵、閉まってる!」ってなったら、戻ってくる見張りたちと鉢合わせするよ?
【アルセーヌ】 そうなったら、強襲したらええやん。
【アイオライト】 それやったら、このまま奇襲しても……。飛び道具もあるし。
【レイス】 うん。
【アルセーヌ】 まあ、僕の囮作戦は「無益な殺生はしたくない」というキミの意見に従って考えただけです。不意討ちするんやったら、頑張って不意討ちするで。〈スリープ・クラウド〉もないことやしな。

【アイオライト】 どっちにしろ、強行突破になりそうな気がするんやけどねぇ。
 とりあえず向こうをガサガサ言わせて、上手く塔に入れたらそのまま潜入する、ってことにする? 入れなかったら、蹴散らして。
【レイス】 それでいいんじゃないッスかね。
 じゃあ、向こうの茂みに石を投げ込む。
【GM】 そしたら、ゴブリンたちはビクっとしますわな。顔を見合わせて、ごぶごぶ言うてます。んで、ジャンケンするわけや。
 そして負けた奴が、レイスが石を投げ込んだ茂みを恐る恐る見に行った。
【アイオライト】 やっぱ強行突破だね。それとも、もう1回、別のところに石を投げ込んでみる?
【レイス】 んー、塔の前に残った奴に弓矢という……。
【アイオライト】 じゃあ、しましょうか。(ころっ)当たった、まわった、17点。
【GM】 おお、「ごーん」って倒れた。
 様子を見に離れてたゴブリンBが、「ごぶっ!?」と叫んで、倒れた仲間に駆け寄る。抱き寄せて泣いてる。……誰もゴブリン語わからへんねんね?
【レイス】 覚えてないッス。
【GM】 じゃ、この感動的なシーンで感動できんな。
【アルセーヌ】 僕は茂みの中から様子を窺っとく。
【レイス】 同じく。
【アイオライト】 じゃあ、もう一発弓矢を撃つ。(ころっ)はずれ。
【GM】 ゴブリンBは、辛うじて避けた。亡き親友の魂が救ってくれた、って思ってる。
 ゴブリンBはどこから矢が飛んできたかを把握して、茂みに隠れてるキミたちの存在に気づいたよ。
【アルセーヌ】 僕は茂みから飛び出て、そこへ襲いかかる。(ころっ)あっ、1ゾロ。なんてこったい。
【GM】 ゴブリンAの死体に躓いたんや。
【アルセーヌ】 ゴブBは、「あ、また親友に助けられた」って思うとんやな。
【レイス】 ボクも突撃〜。(ころっ)当たり、10点。
【GM】 ゴブBはまだ生きてるけど、このラウンドは避けるのに必死。次のラウンドからは反撃が来るよ。
 では、第3ラウンド。
【アイオライト】 もう飛び道具は撃てんから、とりあえずここで様子見てましょか。
【アルセーヌ】 レイピアで攻撃。今度こそ当てるぜ。(ころっ)またじゃ! 嘘や! またこけた。
【アイオライト】 ダイス、換える?(笑)
【レイス】 攻撃、(ころっ)はずれ。
【GM】 じゃあ、ゴブBの反撃やな。
【アルセーヌ】 僕は斬りつけてないで。
【GM】 いやいや、斬りつけてはいたやろ(笑)。勝手に空振りしてるだけで。
 とりあえず、反撃の目標はレイス――当たった。ダメージは7点ね。
【レイス】 2点通った。
【GM】 第4ラウンド。
【アイオライト】 「伏―せーてー!」って。
【アルセーヌ】 伏せられるの?(笑)
【GM】 伏せてもいいけど、矢でゴブBを仕留められなかったら、その後されたい放題になるかも(笑)。
【アイオライト】 じゃあ、やっぱり見とくだけ。

 このラウンド、アルセーヌのレイピアの攻撃がクリティカルで決まり、ゴブリンBを倒した。

【GM】 ゴブリンBは、涙を流しながらゴブリンAに寄り添うように息絶えた。胸に下げてたロケットが地面に転がるんやな。中には婚約者の写真が……。
【レイス】 でも、ゴブリンなんだな。
【アイオライト】 そんなの見分けがつかない、と。
【アルセーヌ】 その見張りたちは何も持っとったりせえへん?
【GM】 調べてみても、めぼしい物はなかった。
【アイオライト】 矢を回収しておこう。
【アルセーヌ】 とりあえず、この死体は茂みの中に隠すことにします。自然葬ということで。
【レイス】 ちょっと違うような。
【GM】 ほったらかしただけや。
【アイオライト】 じゃあ、塔にトテトテと行きましょうか。入口に鍵はかかってない?
【GM】 その鉄製の両開きの扉は閉じられてるけど、鍵はかけられてない。普通に開きそうやね。
【アイオライト】 いっそのこと、バルコニーから入るという手も。
【レイス】 2階ッスよ。梯子がいるかと……。
【アイオライト】 石をくくりつけたロープでも投げて手摺に引っかければ、普通に登れるじゃん。
【GM】 まあ、できるかどうかは成功ロールしだいやけどね。シーフのアルセーヌは楽勝やろうけど、チェイン・メイルを着込んでるレイスにはかなり厳しいかも。
【アイオライト】 鎧を脱いで登るとか。
【アルセーヌ】 普通に1階から入ったほうが早そうやけど。
【レイス】 鎧を脱いだところで敵に襲われたりして(笑)。
【アイオライト】 じゃ、普通に玄関から入ろうか。
 ……そうだよな、「宝が盗まれた」と聞いただけで、ここにいるひとが犯人だという証拠はないんだよな、よく考えたら。
【アルセーヌ】 ゴブリンを見張りに使ってる時点で、普通の人間じゃないと思うけど。
【レイス】 まあ、それも含めて調査しましょう。
【アイオライト】 強襲して、悪いことしたかしら。
【レイス】 ゴブリンはしょうがないかと。村が近いし、村人が襲われてしまう可能性がありそう。
【アルセーヌ】 誰もゴブリン語を話せんから、交渉のしようがないでな。
【アイオライト】 とりあえず、ドアを調べてください。
【アルセーヌ】 罠チェックします。(ころっ)
【GM】 とくに罠は見つからなかった。
【アルセーヌ】 じゃあ、開けて中に入ろう。
【レイス】 「おじゃましまーす」
【アイオライト】 「どなたかいらっしゃいませんかー?」
【GM】 ――って言うんやね?
【アイオライト】 いちおう(笑)。
【GM】 しかし、とくに答える者はないね。
【アイオライト】 進みましょうか。住人を探さなければなるまい。

÷÷ つづく ÷÷
©2004 Hiroyoshi Ryujin
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