≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第31話§

隠された鍵

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 終着地アルファンの事 ▽ ギルド長との会見の事 ▽ 雪の村をめざす事

終着地アルファンの事


 かくして、冒険者たちと、銀髪の魔術師たちとの戦闘が始まった。
 まずは、ティガーとガランザンがぶつかり、メイユールはガランザンに〈ウィル・オー・ウィスプ〉をぶつけて、ティガーの援護射撃する。
 双方の魔術師は、それぞれの味方に〈カウンター・マジック〉〈プロテクション〉をかける展開。
 〈プロテクション〉がかかったガランザンにダメージが通りにくいので、ティガーはツヴァイハンダーを捨てて、破壊力が高いバトル・アックスに持ち替えた。

【ティガー】 アックスって、あんまりカッコよくないねんけどな〜。

 シルヴィアは、ティガーのアックスに〈ファイア・ウェポン〉をかける。さらに、ティガーに〈フィジカル・エンチャント〉をかけて、筋力を強化した。

【ティガー】 ムキムキや〜。
【メイユール】 服がビリビリに破けるで。

 その間に、銀髪の青年は〈ファイアボール〉を放った。ティガー、メイユール、シルヴィア、そしてガランザンをも範囲に含めて。
 青年の魔法にはかなり苦しめられたが、メイユールが〈ヒーリング〉で、ティガーが〈キュアー・ウーンズ〉で傷を治して、なんとかしのぐ。
 メイユールの〈シェイド〉の影響で青年の使う魔法が〈ファイアボール〉から〈エネルギー・ボルト〉に格下げされた頃、ティガーの炎のアックスがガランザンを打ち砕いた。

【GM】 鎌がカランカランと転がるわ。

 そして、銀髪の青年も倒されて、例のごとくボロボロと土くれと化して消滅した……。

【ティガー】 骸骨の鎌をもらう。
【GM】 いいけどそれ、ガランザンの右腕やで? アホほど扱いにくいから、戦闘では役に立たんと思うよ。
【ティガー】 あとで棒をつけて、かっこよくしとくわ。死神の鎌っぽく。
【GM】 キミは何になりたいの?(笑)
【ティガー】 死神。それから、武器商人。あと、オムレツと、ファンリー。
【メイユール】 単語で並べるなー! わからん〜。
【シルヴィア】 魔術師は、いい物持ってへんの?
【メイユール】 追い剥ぎスタート!(笑)
【GM】 うーん、魔法の発動体になってる、筋力10のバスタード・ソードだけかな。
【シルヴィア】 とりあえず、そいつをもらっとくか。
【ティガー】 んじゃ、旅を続けよう。
【GM】 OK。キミたちは、アルファンへの道を進みます。
 さて、翌日のこと。
 いつものように、シルヴィアが〈ロケーション〉を使って『天の鍵』のありかを探っていると、異変があった。
【シルヴィア】 なに?
【GM】 『天の鍵』の存在感が、フっと消えてしまった。移動したとかじゃなくて、感知が途絶えてしまったんやね。
【メイユール】 なんで?
【ティガー】 なんか、魔法をかけたんちゃう。感知できなくする魔法。
【シルヴィア】 ここまで来たんやから、とりあえず、アルファンへ行くよ。

 レムリア暦530年10月22日。
 冒険者たちは、ついに、アルファン王国の王都アルファンに到着した。

【GM】 時刻は午後2時ぐらい。
【メイユール】 長い旅やったな。
【シルヴィア】 グラランボンバー暴走まで、あと1ヶ月もないんや。
 とりあえず、宿をとって、体を休めよう。ティガーの趣味に合わせるなら、“歌と食の広場”っていう広場の辺りで、泊れるとこを探しそうやな (笑)。
【GM】 では、キミたちは適当な宿を求めて、さまざまなひとが行き交うアルファンの通りを歩いてます。
 そのとき、突然、澄みきった秋の青空が黒くなった。暗くなったんじゃなくて、黒に変色したんやね。
【メイユール】 日食や。
【GM】 いや、太陽は出てる。真っ黒の空に、白い太陽がぽっかり浮かんでる。なんか、すごい不気味で不吉。
【シルヴィア】 何事?
【GM】 通りを行くひとびとや、路地で遊んでいた子供、それを見守っていた老人、2階の窓辺の植木鉢の花に水をやっておばさんなども、皆、驚いて空を見上げてる。
 と、赤く輝く大きな星のようなものが、東南の方角の地平線からまっすぐ上にあがった。
 赤い星は上空で一瞬止まった後、はじけるように108つに砕け、悲しげに尾を引きながら四方へ飛び散った。まさに白昼の流れ星。
【メイユール】 無視する。「わたしには関係ないわ」
【ティガー】 なに、あれ? この辺特有の自然現象?
【GM】 いや、地元の方も「なんだ、あれは!?」と、指差して驚いてるよ。
 この辺りの賢者たちは、「ふ、不吉の星じゃ!」とか騒いでるやろね。みんな、競って[占星術]の判定をしてるかも。ダイスの転がる音がすごいよ、きっと。
【シルヴィア】 それなら、誰かひとりぐらいは6ゾロ振りるやろ、きっと(笑)。
【GM】 流星がことごとく地平線の彼方に消えてしばらくすると、黒い空は、ゆっくりと気持ちのいい青空に戻った。
【シルヴィア】 とりあえず、宿に入ろう。
【GM】 キミたちは、ざわめくアルファンの通りを行き、“歌と食の広場”の近くにある『定められた幸福亭』という宿屋に入りました。
【メイユール】 酒場で酒を飲んどく。
【ティガー】 酒場のひとに、「さっき流星が空にあがった場所って、何かあるの?」って聞いてみる。
【GM】 「あれは、シエル湖の方角だったな」と、酒場のオヤジが答える。
【ティガー】 紫の奴が関係してるんかな? そこに行ってみようかな。
【GM】 すると、カウンターでグラスを傾けてる旅人ふうの男が、口を挟む。つばが広いとんがり帽子を目深にかぶった、エルフやね。
「シエル湖の東岸の森近くには、かつて、人里があった。しかし11年前、その里はシエル湖に住む怪物に襲われ、住人は全滅したという。
 今や里は廃墟と化し、森は迷わせの結界となって、湖に近づく者を拒む」
【メイユール】 行くだけムダってことや。
【GM】 じつは、別の物語のイベントが、時間的に交わったんで描写してみただけやったりして(笑)。このキャンペーンの伏線とかじゃないねん。だから気にせんといて、ごめんな。
【シルヴィア】 そうなんか。
【ティガー】 じゃあ、服、ビリビリになっちゃったから、新しい服を買ってくる。
【メイユール】 南国らしく、アロハシャツとか。
【ティガー】 アロハシャツはイヤや。
【メイユール】 さらしとかも売ってるで。漁師ルック。
【ティガー】 んじゃ、さらしで。江戸時代の浪人みたいな感じになる。アイテム欄に『江戸のふく』って書いとこ。
【GM】 なんでそんなもんがここで売ってるねん。
【シルヴィア】 観光地って、けっこう、わけわからん物売ってるから(笑)。
【メイユール】 わたしは、おみやげ買いたい。
【GM】 買っといで。キミらが欲しいものがあることにするから(笑)。
【メイユール】 じゃ、ペナント買う。グロフィエ山脈の絵が描かれてるやつ。
【ティガー】 湖の形のキーホルダーを買った。誰かにあげよ。ファンリーにはあげんとこ。きっとバカにされるから(笑)。
【シルヴィア】 木刀はいらんの?
【メイユール】 じゃあ、買っとく。
【GM】 そいつは筋力1のスタッフ扱いね。
【メイユール】 「ペナントと木刀、買った」って、シルヴィアに見せる。
【ティガー】 「キーホルダー買った〜」
【シルヴィア】 「よかったねぇ」って、ふたりに言うてあげるわ。小さい子に言うように。
【GM】 ――そんな感じで、『定められた幸福亭』の酒場で、キミたちは賑やかに過ごしております。
 で、これからどうすんの?
【シルヴィア】 魔術師ギルドへ顔を出してみるよ。
【ティガー】 盗賊ギルドへ行く〜。
【メイユール】 あ、劇場ってあるんや。じゃあ、そこに行く。
【GM】 みんな、バラバラに行動すんのね。
 では、シルヴィアは魔術師ギルドを訪れました。流星騒ぎのせいで、少し慌しい感じになってます。
【シルヴィア】 手近なひとを捕まえて、「最近、この辺りで変わったことはなかった?」と、聞いてみる。さっきの流星は除いてね。
【GM】 「最近ですか? とくに、これといって――そうそう、少し前だけど、今年の1月と去年の3月の満月の夜、マッチョな奴らが暴れて、大騒ぎになりましたよ」と、若い魔術師見習いが答えてくれた。
【ティガー】 それは、まあ、知ってる(笑)。
【シルヴィア】 「他には? 変わったものとか、おもしろそうな話でも」
【GM】 「そうだなぁ……ここから西へ数時間行ったところに、一年中雪に覆われた山があります。その麓に広がる森は、入ると必ず道に迷わされるそうですよ。
 森を抜けたところに、かつてフアリバを栽培していた村があるそうですが、そこは11年前に妖魔の襲撃で滅ぼされたそうです。迷いの森は、村人の怨念が作り出しているとか……」

ギルド長との会見の事

【メイユール】 迷いの森が多いとこやな。
【ティガー】 サリア名物。
【GM】 「ツアーを組んだら、ひと、集まるかな」と、魔術師見習い。
【メイユール】 『キミも森で迷おうツアー』?(笑)
【ティガー】 その森って、精霊使いが住んでるんかな。
【GM】 「うちのギルド長は、村が迷いの森に閉ざされるずっと前に、フアリバの木を見るために、その村へ行ったことがあるそうですよ」
【シルヴィア】 そうなんや。
【GM】 「若い頃は、あなたのように冒険者をしてたそうです。そのおかげで、失われていた古代の魔法を、ひとつ見つけ出したとか。
【シルヴィア】 「ちなみにそれっって、どんな魔法なん?」
【GM】 「〈コンシール〉という、高度な技術を要する魔法です。任意の物体の存在を、探知系の魔法から隠蔽する働きがあるそうです。
 もちろん、ボクには使えませんけどね」
【シルヴィア】 おお!?
【ティガー】 ビンゴか?
【シルヴィア】 それで「ピキーン」ときてみるわ。
【GM】 シルヴィアが魔術師ギルドで「ピキーン」ときてる頃、盗賊ギルドへ行ったティガーは、どうしてんのかな?
【ティガー】 この街ってさ、宿屋から盗賊ギルドに行くまでの間に、紫色の髪の奴っていた? 一般人の中で。
【GM】 一般人の中で? ほとんどが、茶色とか赤茶色の髪かな。それが、サリア人の地毛やからね。
 観光客とか、冒険者の中になら、変わった色の髪をしてるひともいるかも知れないけど、地元人より数は少ないし、紫というのは見なかったよ。
【ティガー】 そっか。
【GM】 あ、変に筋肉質で、カ○ルおじさんみたいな口髭を生やして、「がしゅいん、がしゅいん」と歩いてるひとなら、たくさんいる。
【シルヴィア】 ジーネがたくさんおるんや。
【メイユール】 この街に来るまでに、もう、見慣れたかも(笑)。
【GM】 やろね。どの町にも、いっぱいいたから。
【ティガー】 じゃあ、盗賊ギルドの奴に、「紫色の長い髪の奴で、魔法を使えそうな奴って知らん?」って聞く。100フィス渡す。
【GM】 なるほど、紫がかった長い銀髪の魔術師のことを聞いてるんやね?
「知りはしないけど、ちょっと前に、そういう奴を見たことならあるぜ」
【ティガー】 「誰が?」
【GM】 「オレが」
【ティガー】 「どこで見たん?」
【GM】 「魔術師ギルド。ギルドに入って行くのを見たんだ。変わった色の髪の男だったんで、何となく覚えてる」
【ティガー】 「ハデな服やった?」
【GM】 「そうそう、すっごいセンスの悪いローブを着ててさ、印象に残ってるんだ」
【ティガー】 ははあん、なるほど。「魔術師ギルドね、ありがとう」
 じゃあ、宿屋に戻る。
【GM】 その頃のメイユールは、どうしてるんかな?
【メイユール】 劇場って何かやってる?
【GM】 今日はとくにイベントはないみたい。
【メイユール】 じゃあ、その辺で買い物しながら、宿屋に帰る。
【シルヴィア】 僕も宿屋に戻るよ。
【GM】 では、キミたちは、『定められた幸福亭』の酒場に会しました。ちょうど夕食時で、酒場は賑わってる。
【シルヴィア】 今日、魔術師ギルドで聞いことを教えてあげる。
【ティガー】 盗賊ギルドの話をする。
【シルヴィア】 「あ、それや!」って。
【ティガー】 「おっしゃー、終わり〜」
【メイユール】 終わりか!(笑)
【シルヴィア】 明日になったら、もういちど魔術師ギルドへ行って、その紫の髪の男のことを聞いてみよう。
【GM】 他にとくにすることがないなら、翌日にするよ?
 では、10月23日の朝になりました。
【ティガー】 じゃあ、魔術師ギルドへ行ってみる。
【メイユール】 わたしは行かへん。
【ティガー】 えー?!
【シルヴィア】 ハミゴや(笑)。
【GM】 では、ティガーとシルヴィアは、魔術師ギルドにやって来ました。今、受付のところにいます。
【シルヴィア】 受付のひとに、「紫の長髪で、ハデなローブを着た若い男が、ここに来たことない?」って聞くよ。
【GM】 「そういえば、10日ほど前まで、そういう方が来られてましたね」
【ティガー】 最近は来てないんか。
「それって、ここの街に住んでるひととかじゃないん? 通い詰めてたとかじゃなくて、そのとき初めて来たん?」
【GM】 「そうですね、2〜3回しか来られてないと思います」
【シルヴィア】 「ちなみに、何をしに来てたん?」
【GM】 「ギルド長へ面会しに来られてました」
【ティガー】 『天の鍵』を隠す魔法を、かけてもらいに来たんや。
【シルヴィア】 そうやろうな。
「そんな簡単にギルド長に会えるものなん?」
【GM】 「その方は、ホムンクルスに関する研究の論文を、当ギルドへ納めてくださったんです。私はもちろんその内容を知りませんが、上の者の話では、かなり完成度の高い論文で、評判だったそうです。
 それで、その方がギルド長との面会を申し込まれたときも、すぐに許可するように言われました。ギルド長は、未知なる知識が大好きですしね」
【シルヴィア】 なるほど。「じゃあ、僕もギルド長に会わせて」って言う。
「遺失魔法を持ってるから。〈ディクリーズ・ウェイト〉っていう魔法なんやけどね」
【GM】 「少しお待ちください」と、受付のひとは、上の者に取り次ぎに行った。
 そして、しばらくして戻ってきて、「シルヴィアさんと、お付の方の面会が許されました。アプト導師がお会いになります」と伝える。
【ティガー】 『お付』?? あれぇ? セージ技能2レベルで、オムレツについて論文をまとめよっかな。
【シルヴィア】 「オムレツを語らせたら、ちょっとすごいよ」(笑)
【ティガー】 「オムレツ仙人がな〜」って(笑)。
【GM】 ちなみに、アプト導師っていうのは、アルファン魔術師ギルドのナンバー3の実力者ね。その弟子が、キミたちをアプト導師の部屋に案内してくれた。
 ここでシルヴィア・アクアマリンは、遺失魔法〈ディクリーズ・ウェイト〉について、いろいろ語るわけやね。アプト導師は、熱心に聞き入ってる。
【シルヴィア】 それが終わったら、「ぜひとも、ギルド長とお会いしたいんですが」って言うてみるよ。
【GM】 「わかりました。ただ、昨日の流星騒ぎなどでギルド長は多忙ですので、明日の昼、もういちどギルドへお越し願いますか? 受付に申しつけられたら、すぐに面会できるようにしておきますので」
【シルヴィア】 OK、OK。宿屋に戻る。
【GM】 他にすることはある?
【メイユール】 別にないや。酒場で飲んどくだけ。
【GM】 1日中? 太るで。
【メイユール】 じゃあ、街を走っとくわ。ジャージ着て走ってるで。
【GM】 赤いジャージな。腕と足の側面に、白い2本線が入ってるやつ。
【メイユール】 目立つで。
【シルヴィア】 一気に街の名物や。
【GM】 指さされてるわ。
【メイユール】 手ぇ振るで。
【ティガー】 それ、違う〜。勘違いしてるぅ。
【シルヴィア】 いちおう、メイユールに魔術師ギルドであったことを教えといてあげるよ。
【GM】 「僕の遺失魔法が、絶賛されてさ〜」って、ちょっと誇張を混ぜてみたり(笑)。
【ティガー】 「俺のオムレツ仙人も、話題になってさ〜」(笑)
【メイユール】 違う意味で話題になってるんとちゃう?(笑)
【GM】 それはメイユールもや(笑)。
 では、10月24日にします。約束の昼近くになったよ。
【ティガー】 魔術師ギルドへ行こう。
【シルヴィア】 行くさ。
【メイユール】 じゃあ、ついて行こう。ジャージ姿で。
【GM】 ギルドまでの道すがら、「うわ、ジャージ女や」って、ひそひそ声が聞こえるで。
【メイユール】 「わたしも名前が上がったわね」
【ティガー】 違うって(笑)。
【GM】 そんなことを言いつつ、キミたちは、魔術師ギルドへやって来ました。受付で用向きを伝えると、すぐにギルド長の応接室に通されました。
 キミたちは、並んでソファーに腰掛けてる。
 テーブルを挟んだ向かいに、アルファン魔術師ギルド長の、マティアス・エクストロームさんが座ってるよ。52歳の男性です。
「まあ、お茶でもどうぞ。はるばるオレンブルクから取り寄せた、ミフォア茶です」
【メイユール】 あー、懐かしいな。一緒に来たのかも(笑)。
【GM】 「ミフォア茶は、体にいいんですよ」
【ティガー】 「知ってますよ」って思いながら、飲んだ。
【シルヴィア】 マティアスさんに、事情を説明するよ。ギルド長を務めてるぐらいのひとやから、全部話しても大丈夫やろ。
 グラランボンバーのこととか、オレンブルクの国王から依頼されてることとか、自分たちが追いかけてるもののこととか……。

雪の村をめざす事

【ティガー】 というか、ギルド長、グラランボンバーのこと知ってる?
【GM】 いや、ギルド長は初耳らしい。1月の暴走からもう8ヶ月経ってるし、あれは一時的な事件やった、と思ってたみたいやね。
「では、1月の騒ぎよりもっとひどいことが、来月起こるんですか!?」と、驚いてる。
【シルヴィア】 「そうです。あのひとや、あのひとや、あのひと、筋肉ムキムキのひとたちが危ないんです」
【ティガー】 「みんな、暴れるから。おじいちゃん、殴り殺されちゃうよ?」(笑)
【シルヴィア】 「その大暴走を阻止するために、僕らは、オレンブルクの国王から『月の塔を壊してこい』と、依頼されたんです」
【GM】 「なるほど」
【シルヴィア】 そんで、ここまでやって来た理由を話して、「紫の長髪の男は、何をしに来てたのか」と、尋ねてみる。
【GM】 「彼がひとりで行っていたホムンクルスの研究を、より発展させたいため、これまでの成果を当ギルドへ献納したい、と申しておりました」
【ティガー】 それだけ? 何か、頼まれなかった?
【GM】 「そうそう、私が若い頃に発見した遺失魔法、〈コンシール〉をかけて欲しいと、頼まれましたな」
【シルヴィア】 何にかけてくれと頼まれたん?
【GM】 「長さ50センチほどの、不思議な光沢の星型をした金属の棒でした」
 キミたちが覚えてるなら、それは『天の鍵』の形状に似てると思うね。
【メイユール】 で、かけちゃったのね。
【シルヴィア】 〈コンシール〉って、どのぐらい持続する魔法なん?
【GM】 永続。〈ディスペル・マジック〉などで解除されるまで。
【メイユール】 え〜?
【シルヴィア】 えらいこっちゃ。
【GM】 ちなみに、呪文レベル7、基本消費精神力35の魔法だそうです。効果範囲は物体1つで、距離は接触。拡大は達成値と数ね。
【ティガー】 そいつ、これからどこに行くとか、言うてへんかったよね?
【GM】 そうやね、言うてないみたい。
【メイユール】 足取りが途切れたか。
【シルヴィア】 ここで質問することはこれぐらいかな。
【ティガー】 うん、他には別に聞きたいことない。
【メイユール】 わたしも。
【シルヴィア】 じゃ、マティアスさんにお礼を言うて、ギルドから出る。
「また、何かあったときはよろしく」
【GM】 「承知しました。我々も、すぐに暴走への対策を準備するとします」
 さて、ギルドから出た後、キミたちはどうするのかな?
【シルヴィア】 街のひとに聞き込み開始。
【ティガー】 「紫の長い髪のひと、見んかった?」って。「ハデな服やねん」

 冒険者たちは、その日1日を情報収集に費やして、紫がかった銀髪の魔術師の手がかりを追った。
 そして、ある有力な情報を得た。

【GM】 シルファス神殿の横に、『朝日門』という門がある。それはアルファンの街の東の玄関。
 そこの門番が、10日ほど前に、キミたちがいう姿の若者が、街を出るのを見たらしいよ。
「紫っぽい銀の長髪で、裾の辺がピンク色になってる、黄緑のローブを着ていたな」
【メイユール】 東か。
【シルヴィア】 そっちには何があるの?
【GM】 アルファンの東には、グロフィエ山系の山々と、11年前に滅びたという雪の村、そしてその村を閉ざす迷いの森ぐらいしかないね。山脈を越えると、シエル湖に出てしまう。
 別に大きな町などがあるわけじゃないから、『朝日門』を出入りするのは、近郊の農場で働くひとぐらい。旅人が通ることは、あんまりないんやね。
【シルヴィア】 だから、印象に残ってたんやな。
【メイユール】 ハデな姿やし(笑)。
【ティガー】 滅びた村か……怪しいな。
【シルヴィア】 「迷いの森に入って、帰ってきたひとはおるん?」って、門番に聞く。
【GM】 「ああ。村に残された財産めあてに出かけて、森の中でさんざん迷ったあげくに、元の場所に出てきた、って奴はよくいたな。最近は、誰もあの森には近づかないけど」
【ティガー】 村に辿り着けないだけで、出れないわけじゃないのね。
【シルヴィア】 その村って、そんなにすごい財産があったの?
【GM】 「これは、雪の村が滅びた後に出回った噂なんだが、なんでも、雪の村の奥には古代遺跡が眠っていて、そこにとてつもない宝が隠されてるらしい。その宝をめぐって、村が滅びる争いが起きた、って話だ」
【ティガー】 その宝が狙いか?
【シルヴィア】 「ちなみに、雪の村の宝ってなに?」
【GM】 「そこまでは知らん。神を斬る剣だとか、一国の王になれるほどの財産だとか、願いが何でも叶えられる場所なんだとか、いろいろ言われてるが、近づくことすらできないんだから、本当のところは誰にもわからないんだ」
【シルヴィア】 なんか、その宝を奪われたら、グラランボンバーどころの騒ぎじゃなくなりそうやな。
【GM】 まあ、でも、そう言い伝えられてる遺跡なら、いくらでもあるよ。長い年月を経るうちに、どんどん伝説に尾ヒレがついてくものやから。
 で、たいてい、やっと思いで辿り着いた冒険者を、ガッカリさせるんやね(笑)。
【シルヴィア】 まあ、経験値は入るから(笑)。
【メイユール】 物より思い出。
【ティガー】 どっちにしろ、『天の鍵』がそこに向かったっぽいから、俺らも行くしかない。
【シルヴィア】 そうやな。すぐに出発しよう。
【GM】 『すぐに』といっても、10月24日はアルファンでの聞き込みで潰れてるから、出発は次の日になるね。
 では、翌10月25日の朝になりました。キミたちは、東のグロフィエ山系中にあるという雪の村をめざして、『朝日門』からアルファンを出立します。
 グラランボンバー暴走まで、あと20日。
【シルヴィア】 えらいこっちゃ。ピンチ!
【ティガー】 ヤ○トみたい。
 近くに農場があるんやんね? 念のために、そこでも聞き込みしながら行く。
【GM】 OK。しかし、農場では、紫がかった長い銀髪の魔術師の手がかりを、得ることはできなかった。
【ティガー】 やっぱり、雪の村に行ってるんやな。
【メイユール】 森で迷ってるんとちゃう?
【シルヴィア】 それならそれで、探すのが大変そうやな。
【GM】 ――なんて言ってるうちに、その日の夕方、キミたちは問題の迷いの森の入り口に到着しました。森のはる向こうには、美しく峰を連ねるグロフィエ山系の姿が見える。
【メイユール】 山の上のほうは白い。
【シルヴィア】 万年雪が残ってるんやな。
【GM】 その中にひとつ、麓近くまで雪に覆われてる小さい山があるんやね。標高はごく低いので、頂がわずかに森の上に見える程度やけど。
【ティガー】 そこが、雪の村の山?
【GM】 そう。
【シルヴィア】 見えてても、辿り着けないんやな。
【GM】 どのみち、森に入ったら、山は見えないしね。空すら見えないでしょう。雑草に埋もれた古道の跡は、そんな木々の暗がりへ続いています。
【シルヴィア】 その森はどのぐらい広い?
【GM】 どのぐらいって……すごく広い、としか言いようがない(笑)。
【ティガー】 狂った森の精霊とかおらんの?
【メイユール】 [センス・オーラ]で、精霊力を感じてみる。
【GM】 すると、狂った精霊力ではなく、正常な精霊力が、この森を閉ざしているのを感じる。その力の主は、森の上位精霊エントやね。
【メイユール】 おお〜。話とか聞いてくれそうかな?
【シルヴィア】 精霊語で語りかけてみなよ。
【メイユール】 じゃあ、エントに呼びかけてみる。
【GM】 呼ばれた。森の入り口にある1本の大木の幹に、おじいさんみたいな顔が浮かび上がったよ。エントが具現化した姿です。
「また、人間が来よったか」と、エントは、ゆったりした口調で言う。
【シルヴィア】 『また』?
【ティガー】 「前にここに来た奴って、紫の髪やった?」
【GM】 「そんな感じじゃったな。紫がかった長い銀髪で、裾にかけて桜色にグラデーションする、若草色のローブを着ておったの」
【メイユール】 「いつ頃、来たん?」
【GM】 「つい最近じゃ」
【メイユール】 「通してあげたん?」
【GM】 「奴は、通してもよい者じゃったからの」と、エントは答える。
【ティガー】 ん? 通っていい奴と、悪い奴があるの??
【メイユール】 「わたしは通れそう?」
【GM】 「ダ〜メじゃ。少なくとも、おまえたちは、絶対にダ〜メじゃ」
【ティガー】 なんで? どういう基準? 何かあるのかな。「緑の服を着なければいけない」とか。
【シルヴィア】 イヤな基準や(笑)。
【GM】 とりあえず、この続きはまたあとで、ってことにしましょう。

÷÷ つづく ÷÷
©2007 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2007 Jun Hayashida
Map ©2007 Moyo
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