▽ 災難王子の事 | ▽ 夜明けの襲撃者の事 | ▽ 原野のオアシスの事 |
【GM】 キミたちがそうやって塔を眺めていると、「おまえら、どこから入ってきたんだ?」と、声をかけてくる男性がいるよ。
ちょっとくたびれたチェイン・メイルを着て、シールドを背負い、槍を手にしている中年の戦士やね。金髪で、日焼けしていて、無精髭が伸びてる。
【プレセア】 「あそこ」って、転移の魔法陣がある建物を指さす。
【GM】 「あの建物は、鍵がかかってたはずだが……」
【キャロット】 「中からなら、簡単に開いたよ。それより、あんた、誰?」
【GM】 「俺は、セフェリアの魔術師ギルドに雇われてる警備だ。仲間たちと、この“謎の灯台”を守護してるんだよ」
【キャロット】 “謎の灯台”? ……って、どこ?
【GM】 ミドル地方、アステア大砂海の西にある、有名な古代の遺跡です。その名のとおり、まったく謎に満ちた遺跡で、誰も内部を調査したことがない。入り方がわからんからね。
【プレセア】 そうなんや。
【キャロット】 ボアは近い?
【GM】 ここからなら、徒歩で53日ほどの距離。馬なら、27日やね。
【ファベル】 今は何月何日頃やろ?
【GM】 「レムリア暦530年の9月18日だよ」と、兵士が教えてくれた。
【プレセア】 おお、期限までじゅうぶん間に合うで。
【ファベル】 何事もなければ。
【キャロット】 じゃあ、ボアへ向かうよ。
冒険者たちは、ボアに向けて街道を旅した。
途中、犬猿の中である西サルトル王国と東サルトル王国の関所を抜けるとき、3日も足止めをくらったりしたが、まずまず順調な道程だった。
そして、10月18日、約束の地ボアに到着したのだった。
【GM】 ボア王国の都ボアは、ミドル地方、サリア地方、アリステア地方の道が交わる、古くからの交通の要です。
いろんな言語が飛び交い、さまざまな民族の姿がある。ドワーフや、グラスランナーの姿もたくさんあるね。
【キャロット】 グラランボンバーを飲んだっぽい奴はいる?
【GM】 たくさんいるよ。カ○ルおじさんみたいな髭を生やしたマッチョなひとが、「がしゅいん、がしゅいん」と、通りを闊歩してるのを頻繁に見る。
【プレセア】 えらいこっちゃ。
【ファベル】 とりあえず、使えない斧と、邪魔な彫像を売った。
【キャロット】 ティガーたちは、まだ来てないよね。今、どこにおるんやろ。
【GM】 どの辺やろね? では、彼らの旅を見てみましょうか。
こうして、プレセアたちの『天の心』をめぐる冒険は、幕を閉じた。
時間は巻き戻り、レムリア暦530年5月25日。プレセアたちが、旧カルファン王国領をめざして旅している頃――。
奪われた『天の鍵』を取り戻すべく、南へ向かうティガーたちは、オレンブルク王国の都市メミンゲンに入っていた。
【GM】 メミンゲンの街は、日暮れを迎えております。西の空はまだ太陽の名残のピンク色、紺の東の空には星が瞬きはじめてる。
ここは、オレンブルク王国の東西南部への道が交わる主要都市。
【シルヴィア】 ほほう。
【GM】 家路を急ぐ街のひとびとの他に、今夜の宿を求める旅人や行商人たち、遠方に向かう荷馬車やリッチなひとの馬車などが、ひっきりなしに通りを行き交い、とても賑やかやね。
夜になると活気づく店の前では、呼び込みの兄さんや姐さんたちが、道行くひとを捕まえて明るい店内に誘う。
【メイユール】 すごい賑やかなとこやな。
【GM】 キミたちは、そんなメミンゲンで今日1日身を休め、明日、南をめざして旅立つことにしてます。
とりあえず、この時間、どんなふうに過ごしてるのかな?
【シルヴィア】 昼間は魔術師ギルドに出向いてて、夜は宿屋に戻ってるよ。酒場でご飯でも食べとく。
【メイユール】 シルヴィアと同じテーブルで、競馬新聞を読んでる。
【ティガー】 昼間にオムレツを食ったから、晩飯は肉を食う。宿屋に帰る。
【GM】 では、ティガーは、仲間が待つ宿『黒曜石の黄昏亭』をめざして、ひとや馬車が往来するメミンゲンの大通りを歩いてます。
ここで、冒険者レベルと知力ボーナスで、ちょっとチェックしてみ。
【ティガー】 (ころっ)うん、失敗。
【GM】 そしたら、ティガーは不意に背中をドンっと押された。フラフラとよろけて通りの真中に出たところへ、塩商人の馬車がやって来る。馬車は急には止まれない。
【メイユール】 わお!
【GM】 冒険者レベルと敏捷度ボーナスで回避してごらん。
【ティガー】 (ころっ)これは余裕で回避。
【GM】 ティガーは地面をごろごろと転がって、危ういところで馬車を避けた。
【シルヴィア】 アクション・スターや。
【ティガー】 ジャッキー・○ェン!
【GM】 どこからか、「ちっ」と、舌打ちが聞こえた気がした。
御者は、「バカ野郎! 死にてぇのか!」と怒鳴りながら、キミの脇を通り過ぎて行く。
【ティガー】 「ロケ中です」(笑)
【メイユール】 迷惑な話や(笑)。
【ティガー】 「誰が押してん」って思って、その辺を見てみるけど。
【GM】 通りを行くひとは多く、その中に、犯人らしい人影は見当たらない。
【ティガー】 まあ、いいや。「カバンタかな」って思ってよう。
【GM】 その後は何事もなく、ティガーは『黒曜石の黄昏亭』に着きました。
客でごった返す酒場に入ると、シルヴィアがテーブルで食事をしてる。
同じテーブルで、メイユールが耳に赤ペンを挟み、足を組んでタバコを吸いながら、眉間にシワを寄せて競馬新聞に見入ってる。
【メイユール】 紫煙が立ちこめてるで。
【ティガー】 うわー、すさんでる(笑)。
【シルヴィア】 最近、当たらへんから、機嫌悪いねん。
【メイユール】 ヤケ酒もするで。
「どれが来ると思う〜?」って、シルヴィアに聞くし。「あんた、魔術師やったら、わかるやろ」
【シルヴィア】 「わからへん!」(笑)
【メイユール】 「役立たずやなぁ」
【ティガー】 触らぬ神に祟りなし(笑)。コソコソ帰ってきて、オヤジに「オムレツ……と、肉」って注文。
【GM】 そうやって、コソコソとテーブルにつくティガーの背中に、1枚の紙切れが張られてることに、メイユールたちは気づいた。
【シルヴィア】 何か書いてある?
【GM】 共通語の文字で、「あほ」って書かれてる。
【メイユール】 なに、それ!?(笑)
【シルヴィア】 ティガーに教えてあげるよ。「背中に何か張られてるで」
【ティガー】 びゃっとはがして、「アホとちゃうわ!」って、くしゃくしゃと丸めて投げる。
っていうか、その筆跡、見たことある?
【GM】 いや、見覚えのない筆跡やったよ。
【ティガー】 誰やろ?
【GM】 そうこうしてるうちに、ティガーが注文した、ケチャップがたっぷりかかったオムレツと、肉料理が運ばれてきた。
白いエプロンをして、コック帽を目深にかぶったオレンジ色の長髪のコックさんが、自ら運んでくれたよ。ホカホカしてて、とてもおいしそう。
【ティガー】 じゃあ、食べる〜。
【GM】 では、オムレツを口に運ぶとき、[危険感知]をしてください。
【ティガー】 なんでオムレツで[危険感知]? レンジャー技能なんか持ってないから、ひら目やで。(ころっ)失敗。
オムレツが爆発すんのかな?
【GM】 まあ、感覚的にはそれに近いかも。オムレツをひと口食べたら、ティガーは口から火を吹きそうになったよ。
ケチャップが100%タバスコやったんやね。めっちゃ辛い。口の内外がヒリヒリする。
【ティガー】 「辛ぁー!」って言う。
【メイユール】 「うるさい、ティガー!」(笑)
【ティガー】 「韓国やねん、韓国。チゲー!」(笑)
【メイユール】 「はあ?」
【ティガー】 ……タバスコって、メキシコとかの辺やったかな。
「今日はメキシコふうですか?」って、聞いてみる。
【GM】 オレンジの髪のコックさんは、背中で「くっくっく」と笑って、そのまま厨房の奥に姿を消した。
【メイユール】 ティガー、今日は仏滅やな。
【ティガー】 まあ、いいや。バクバクバクーって食ってる。
【シルヴィア】 食えるんや(笑)。
【GM】 さて、『黒曜石の黄昏亭』の夜は更けて、キミたちは2階の宿泊施設で眠ってる。4人部屋を3人で使用してます。
【ティガー】 4つ目のベッドは、ヒデヨシが使ってるねん。
【メイユール】 贅沢なニワトリやな。
【GM】 6月6日の明け方近く、まだ日が昇る前のもっとも暗いとき――ティガー。
【ティガー】 またかいな(笑)。
【GM】 キミが目を覚ますと、隣でメイユールで寝てるねん。キミのベッドで。
【ティガー】 えーっと?
【GM】 そのとき、パシャっと部屋に閃光が走る。カメラのフラッシュがたかれた感じ。
【ティガー】 は?? シルヴィア?
【GM】 いや、シルヴィアは自分のベッドで寝てるよ。ヒデヨシも。
さっきの閃光で、シルヴィアとメイユールも目を覚ましていいよ。
【ティガー】 誰が光を放ったん?
【GM】 部屋の中に、黒いジャケットを着た、オレンジ色の長髪の見知らぬ若者がいる。額の中央に赤い石を埋め込んでる、おしゃれさんやね。
【シルヴィア】 ほう。
【GM】 若者の手には、謎の小さな箱がある。箱から1枚の黒い紙切れが、ジコーっと出てきた。出てきた紙切れに、ティガーとメイユールがベッドに並んで寝てる光景が、じわ〜っと浮かびあがってくるよ。
ティガーたちにはわからないけど、要するにポラロ○ドカメラみたいな機械なんやね。
【ティガー】 おおーっ、すげー! 「それ、なに、なに!?」って聞く。
【GM】 「目の前の風景を紙に写し取る、古代のマジック・アイテムだ。独身最後の冒険で見つけたんだ」と、若者は答える。
「いい写真が撮れた。苦労して女を運んだ甲斐があったぜ」
【メイユール】 起きろよ! って感じやな(笑)。
【GM】 昨日、はずれ馬券ばかりで、ヤケ酒し過ぎたんやね。
【メイユール】 そうなんか。じゃあ、青〜くなってるで。
【GM】 二日酔いするくせに、ヤケ酒するから。
【メイユール】 そのスリルがたまらんのよ。
【GM】 朝、起きたら、自分に〈レストア・ヘルス〉するのが日課やからね。
【メイユール】 便利やな、それ。
【シルヴィア】 魔法の使い道、間違うてるで(笑)。
【GM】 若者は、「フッ。終わりだな、ティガー。この写真を、ファンリーちゃんに見せれば……くっくっく」と、笑ってる。
【ティガー】 「ファンリー、知ってんの?」
【GM】 「よ〜く知ってるぜ」
【ティガー】 「どこにいるの?」
【GM】 「オレンブルクだ。で、もうじきオレとぉ――」
【ティガー】 『オレとぉ――』? 剣でズバーっ!(笑)
【GM】 ズバーっとしたいんなら、戦闘やね。シルヴィアとメイユールも、起きてるから何か行動できるよ。
というか、メイユールは、目を覚ましてみたらティガーが隣にいる、って状況やけど。
【メイユール】 「なにしとん、ティガー!?」
【ティガー】 「知るかぁ〜! あいつのせいじゃー!」
【メイユール】 「ちょっと吐くかも〜!」(笑)
【ティガー】 ばーってベッドから飛び降りる!(笑) で、そばに置いてる剣を持つ。
【GM】 えらい騒ぎになってるけど、シルヴィアはどうする?
【メイユール】 「バケツ、バケツ!」とか言ってるで。
【シルヴィア】 じゃあ、バケツ探したるわ(笑)。「もお」って。
【GM】 洗面所に、洗面器があるよ。
【メイユール】 「早く〜」
【シルヴィア】 ダッシュで取りに行くよ。
【GM】 では、敏捷度順に行動を解決していこう。ティガー、若者、メイユール、シルヴィアという順番。
【ティガー】 死なへんように攻撃する。
【GM】 [手加減]は、打撃系の武器じゃないとダメなんやって。
【ティガー】 じゃあ、普通に攻撃する。一撃では死なへんやろ。(ころっ)当たってない。「寝起きやしな〜」って言ってる。
【GM】 若者は何もしない。続いてメイユール。
【メイユール】 バケツ待ち(笑)。
【GM】 次はシルヴィア。洗面器を持って戻ってきたよ。
【シルヴィア】 「あれは誰?」って思いながら、メイユールに洗面器を渡す。
【メイユール】 間に合った……。
【GM】 次のラウンド。
「ふん。あとはおまえが死ねば、めでたしめでたしだ。死ね、ティガー」
【ティガー】 いや、ムリ。
【GM】 「いやいや、死ねよ。おまえには、多額の保険金をかけてるんだ。そして、受け取り人はファンリーちゃん♪」
【メイユール】 保険金サギや(笑)。
【ティガー】 「それなら、もっと死にやすいひとを標的にしたら、いいんじゃないですか? レベル7ファイターとかじゃなくて」
【GM】 「バカ! おまえが邪魔なんじゃないですか」
【ティガー】 知らんわ!(笑)
【GM】 なんでも、彼がファンリーに交際を申し込んだら、「ティガーがいるから」と、断られてしまったらしい。
【メイユール】 おお。なんか、痴情のもつれや。
【GM】 「おまえが消えて、ファンリーちゃんに大金を贈ることができたら、一石二鳥じゃないですか」
【ティガー】 「うん、自分が消される可能性は、考えたことないんですか?」
【GM】 「自分で言うのもなんだけど、オレ、けっこう強いですよ」
【ティガー】 「俺もけっこう強いですよ」ちゃきーん。
【メイユール】 修羅場だ、修羅場だ(笑)。
【ティガー】 今度は本気で。(ころっ)当たり。あっ、ダメージはへぼい。14点。
【GM】 「痛ぇー! てめー、本気で殴ったな!」と若者は怒って、魔法を唱えた。メイユールはその魔法を使えないけど、彼が呼びかけてる精霊は知ってる。
若者は、男性シャーマンのみが使役できる勇気の精霊、戦乙女バルキリーに呼びかけ、光る投げ槍をティガーにぶつけてくるんやね。
【ティガー】 は?! レベル5シャーマンなんか、そいつ。
【GM】 「ファンリーちゃんに手ぇ出しやがって! くらえ、ティガ〜!」
若者は〈バルキリー・ジャベリン〉を放った。ティガーはレジストに失敗したので、ダメージ20発いきます。
【ティガー】 生命力、2点しか残ってない。でも、「痛くねーよ」って言っとく。
【GM】 「やせガマンすんな。膝がガクガクいってるぜ。ファンリーちゃんをあきらめるなら、命だけは助けてやってもいいぞ?」
【ティガー】 「うるさいわ!」
【GM】 「おまえ、サリア地方へ行くんだろ? オレ、そこから来たけど、徒歩で半年以上かかるんだぜ。竜なら、数日で行けるやろけどな」
【ティガー】 「俺、竜やから」
【GM】 「ウソつけ! おまえの足は、あの変なブチ馬やろ。馬でも片道3ヶ月、往復で半年かかる距離なんだぞ。
その間、ファンリーちゃんが寂しかったら、かわいそうやん。寂しいのは、すっごく辛いんだぞ。だから、貴様は彼女をオレによこすべきだ」
【ティガー】 「ふざけんな、っての。俺らは南へ行くけど、おまえは、今から天国に行くんだぜ」(笑)
【GM】 「自分のほうが死にかけてるくせに!」(笑)
若者の次は、メイユールの番やね。メイユールの行動は?
【メイユール】
【GM】 それは、この部屋にいる者すべてが、やばいことになるんとちゃう?(笑)
【シルヴィア】 シルヴィアの努力を無に帰すんや(笑)。
【メイユール】 じゃあ、〈シェイド〉をぶつける。(ころっ)
【GM】 (ころっ)しまった、レジストで1ゾロ!
【メイユール】 (ころっ)あっ、クリティカルした。精神力に18点。
【GM】 こいつはきつい。ジャベリン2発分、精神力を減らされてもた。
【シルヴィア】 組み合って、[押さえこみ]にかかるよ。(ころっ)失敗した。
【GM】 シルヴィアは床をズサーっと滑って、洗面器すれすれのところで止まった。
【ティガー】 やばい!(笑)
【メイユール】 ギリギリや(笑)。
【GM】 次のラウンドやけど、まだ攻撃すんの?
【ティガー】 うん。
【GM】 「しつこいな!」と、若者は言う。
【ティガー】 「しつこいよ!」
【GM】 「じゃあ、オムレツをいくつ渡せば、ファンリーちゃんから手を引く?」
【ティガー】 (ころっ)当たった。ダメージは、またへぼい。13点。
【GM】 「交渉の余地なしか。まあ、いいや。目的は果たしたし」と、若者は魔法を唱える。
これも、メイユールは知ってるね。彼はスプライトに呼びかけて、〈インビジビリティ〉で姿を消した。
「くっくっく」
【ティガー】 あー、逃げた!
【メイユール】 ティガーに〈ヒーリング〉。(ころっ)全快させた。
【シルヴィア】 相手が見えないんなら、何もできない。
【GM】 では、部屋のドアがガチャっと開いて、バタンと閉まった。
【ティガー】 出ていったんかな? まあ、いいや。オレンジの髪やし、街にまぎれててもめだつやろ。
【シルヴィア】 額に、赤い石が埋め込まれてるらしいしな。
【GM】 そして、ティガーとメイユールがベッドで並んで寝ている写真が、床に残されてるんやね。
【シルヴィア】 忘れていったんか。
【メイユール】 「これ、なに? わたしが酔った勢いで……?!」(笑)
【ティガー】 「誤った?」って思ってよう(笑)。
【メイユール】 どっちも覚えてないんや。
【シルヴィア】 記念にもらっとき。珍しい品やし。
【GM】 そっくりそのまま光景を切り取ったかのような、緻密な絵やね。
【ティガー】 「すごーい」
【シルヴィア】 いろんな意味で、高く売れそうや。
【GM】 シルヴィアの瞳が怪しく光ってる……。
【メイユール】 これはシルヴィアに持たせたらアカン。
【シルヴィア】 いやいや、何が写ってるかということだけじゃなくて、写真というもの自体が、この世界ではすごいシロモノやろ?
【GM】 まあね。珍し過ぎて、誰もその価値がわからへんかも知れんけど(笑)。
他にすることがなければ、朝にしてしまうけど、いいかな?
【ティガー】 いいよ。
【GM】 それでは、6月6日の夜明けを迎えました。
【シルヴィア】 あの男、「ファンリーはオレンブルクにおる」って言いよったな。
【ティガー】 言いよったけど、いつの話かわからん。あいつがここに来るまで、時間かかってるかも知れんし。
オレンブルクからここまで、何日かかってたっけ?
【GM】 徒歩なら25日。3週間と4日やね。馬なら13日。竜なら3日。
【ティガー】 少なくても25日前までは、ファンリーはオレンブルクにいたんや。
たぶん今もオレンブルクにおる、と想定して、南へ行くか。
【GM】 どういう移動手段で行くのかな?
【ティガー】 え? 馬やろ。ぼちで。
【GM】 とすると、サリア地方の玄関エストリア王国の王都エストリアまで、94日〜97日かかるね。3ヶ月とちょっとの旅になります。
では、出発しましょう。
冒険者たちは、メミンゲンから南へ向かう街道を進んだ。
【GM】 南への街道も、もちろん規模は大きい。重要な交易路やからね。ただ、海岸地帯に比べて、内陸部はそれほど開拓されてないみたい。
海岸沿いの街道は、少なくても1日行くごとに、立ち寄れそうな町や村があったけど――。
【ティガー】 ――南の街道は、あんまりないんや。
【GM】 そう、2日ほど集落に出会わなかったりする。
そのかわり、街道の神殿とかが点在してるけどね。くたびれた旅人に、ひとときの安息をもたらす重要な施設。街道巡視員も利用してるよ。
【シルヴィア】 ほう。
【GM】 石造りの頑丈な建物で、堅固な外壁に守られてる。窓はとても高いところにあって、まるで要塞か砦かといった雰囲気やけど、れっきとした聖堂です。
【シルヴィア】 それはすごい。
【GM】 近くの集落の住人が築いたり、いろんな宗派の教団が築いたりしたもので、旅人に食事や雨風をしのぐ場を提供してくれる。もちろん、祈りを捧げたりすることもできるよ。
【メイユール】 便利やね〜。
【GM】 まっとうな旅人は、受けた施しに見合う寄進をするのが慣例。
神事を執り行なう司祭が2〜3人いて、砦……じゃない、聖堂を守護する神官戦士が7〜8人駐在してる。
オレンブルクは大地母神ミフォアが国教なので、ミフォアの神殿が最多かと思いきや、やっぱりこういう施設は、至高神シルファスのものが多い。
【ティガー】 そうなんや。
【GM】 シルファス教団は、治安維持に熱心やしね。ミフォア、幸運神ノプス、戦神オーシュと続いて、知識神リンツがいちばん少ない。
ミフォアの神殿には、夫から逃げてきた嫁が駆け込むことが、多いとか少ないとか。
キミたちは、そうした施設に立ち寄ったりしながら、旅をしております。
メミンゲンから8日ほど南下し、大陸最大の湖、ニトラ湖の近くに来たところで、“冒険者の島”への港町トリール方面と、クルスク王国への港町リーザ方面への分岐に差しかかった。
サリア地方へ行く道は、リーザ方面だ。ニトラ湖を東へ沿って旅をする。やがてアルジェント山脈を越え、港町リーザに到着した。
そして冒険者たちは、リーザとクルスク王国王都クルスクを結ぶ連絡船に乗り、ニトラ湖を渡った。
【GM】 クルスク王国を出ると、町や村の数は、ガクっと減った。街道の神殿なども姿を減らし、野営をすることが多くなってきた。
【メイユール】 大変や。
【GM】 街道も、オレンブルク近辺のようなきちんと整備されたものではなく、この辺では、原野が踏みならされて道筋ができただけ、という程度のものやね。
街道巡視員がいるはずもなく、危険極まりない旅路。力のない者は、護衛を雇うか、徒党を組むかするしかない。実力者のキミたちには、なんてことないけどね。
【シルヴィア】 このレベルやと、ちょっとやそっとの危険は大丈夫。
【GM】 名ばかりの街道をどんどん南下して行き、左手のほうからレオン山脈が迫ってきた辺りで、久々に人里が見えてきたよ。カナートという、人口70人足らずの小さな村落です。
【メイユール】 ちっちゃ!(笑)
【GM】 幸運神ノプスの神殿の周りに発展してきた村で、その歴史は31年ほど。
どこの国の保護も受けておらず、自分たちで身を守ってる。村の周囲は、防護の掘りが掘られ、石塁と丸太の柵で囲われてるよ。
いちおう、ノプスの神官戦士が9人ほど駐在してて、神殿と村の守護を担ってるみたい。
とうぜん領主はいないので、宿の主人がリーダーを務めてます。
【ティガー】 宿屋のオヤジが偉いんや。
【メイユール】 宿に寄る?
【シルヴィア】 久々に人心地つきそうやし、寄ろうよ。
【ティガー】 偉いオヤジを見てみたい。
【GM】 では、キミたちはカナート村の宿屋に向かった。『荒野のオアシス亭』という宿で、クルスク寄りの門から入ってすぐのところにあります。
敷地は堅固な外壁で囲われていて、門には守衛がひとりいる。
厩舎や、馬車の車庫と修理場まで完備されてる2階建ての建物は、小さな村には不釣り合いなほど立派。
【シルヴィア】 すごいな。
【ティガー】 入る、入る。
【GM】 『荒野のオアシス亭』の車庫には、豪華なものから、しょぼいものまで、さまざまな馬車が収められてる。厩では、たくさんの馬たちが、たっぷりの干草を食んでます。
キミたちが宿の門番に休息を求めると、『荒野のオアシス亭』の厩番を務める中年の小男がやって来て、ぼちやレッドゾーンたちを厩舎に入れてくれた。
【メイユール】 しっかり、世話しといてや。
【GM】 酒場は、ものすごい賑わってます。さまざまな地方の言語や、お国訛りが飛び交ってる。みんな旅人やね。
3人の給仕たちが、注文を聞いたり、テーブルの隙間をぬって食べ物や飲み物を運んだり、きりきり舞いになって働いてます。
それを監督するおじさんが、『荒野のオアシス亭』の主人にして、カナート村の村長さん。
【ティガー】 オヤジ、偉そう?
【GM】 まあ、偉いっぽいかな(笑)。もちろん、愛想はいい。現在59歳の元冒険者。キミたちの大先輩やね。
【シルヴィア】 おお。
【GM】 一攫千金を得て冒険者を引退したオヤジは、旅人のためのノプス神殿しかなかったこの地に流れて来て、宿屋を開くことを思いついた。
ノプスの司祭たちとともに開墾に励んで農地を広げ、カナート村の礎を築き、そして、『荒野のオアシス亭』を開いたんやね。
【ティガー】 すんごい偉いひとや。
【シルヴィア】 泊れる部屋は残ってるかな。
【GM】 大丈夫。この建物、『□』の形をしてるから、たくさん収容できる。いざというときの、村人の避難場所にもなってるから。
【シルヴィア】 なるほど。
【ティガー】 じゃあ、オムレツを食う。
【メイユール】 どこに来ても、それか!(笑)
【GM】 だいぶ待たされてから、オムレツとか、その他注文の品が運ばれてきたよ。腕利きの料理人の作品らしい。
【ティガー】 じゃあ、食った。
【シルヴィア】 あっという間やな(笑)。
【GM】 食事が終わったら、2階でお休みやね。ちょうど3人部屋が空いてたので、キミたちはそこに案内される。召使いたちが、すぐに清潔なシーツでベッドをこさえてくれたよ。
【メイユール】 ヒデヨシの分がない。
【GM】 4人分の料金を払ってくれるなら、ベッドを4つ使ってもいいけど?
【ティガー】 じゃあ、ヒデヨシの分も払う。ベッドがないと怒るから。
【GM】 どんなニワトリや(笑)。では、4人部屋に移動した。
そんなこんなで、久しぶりにふかふかの寝床に潜り込んだキミたちは、あっという間に眠りに落ちた。
――で、真夜中。
シルヴィアとメイユールは、冒険者レベルと知力ボーナスで、ちょっとチェックしてみて。
【シルヴィア】【メイユール】 (ころっ)成功。
【GM】 ふたりが目を覚ますと、ティガーがいない。
【メイユール】 えーっ?!
【ティガー】 気づこうよ、俺!(笑)
【シルヴィア】 なるほど。「ん?? どこに遊びに行ったんや?」
【GM】 といったところで、この続きはまた後ほど。