≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第11話§

動き出した事件

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 屋根走りのケリーの事 ▽ 容疑者発見の事 ▽ メイユールへの手紙の事

屋根走りのケリーの事

【GM】 春の夜の浜辺ちかくの松林、潮騒を聞きながら眠っているティガーに、カニがいっぱいたかってるよ。ポカンと口を開けてたら、その中に入ってくるで。
【ティガー】 ぱくぱく食ってる。
【GM】 そうすると、鼻にハサミがぶら下がってたりするんやな。口の端に、足が引っかかってたり。
【ティガー】 いや〜ん。
【GM】 フナムシたちが、それを遠巻きに見ている。
【ティガー】 すごいな。みんなでお出迎えや。
【GM】 「ティガ〜、ティガ〜」って呼んでるねぇ。
【ティガー】 それ、なんか違う(笑)。
【GM】 向こうでは、海亀が卵を産んでるよ。
【ティガー】 「うわー。亀、でっけー!」って、ぺちぺち触ってる。
「竜宮城に連れてってくれへんかな〜」
【GM】 「ティガーさん、私の背に乗ってください」と、卵を産み終えた亀が言う。
「竜宮城へ行きましょう」
【ティガー】 やったー、行けるんや。でも、新しい服が濡れるしなぁ。

【シルヴィア】 GM、GM。僕の〈スリープ・クラウド〉は、どうなったん?(笑)
【GM】 ティガーが浜辺でそんな夢を見ている頃、シルヴィアたち3人は、泊っている宿の部屋に侵入した、怪しい人影と戦ってるんやね。
 シルヴィアの放った〈スリープ・クラウド〉で、怪しい人影は眠ってしまった。
 (ころっ)屋根からずり落ちたけど、服の襟が、屋根の端から突き出た金具に引っかかって、宙づりになって眠っている。
【メイユール】 じゃあ、外に出て、そこへ行ってみよう。
【シルヴィア】 着替えてから出るよ。
【サテラ】 わたしも。
【メイユール】 わたしはチェイン・メイルは着ないけど、普通の服を着る。
【シルヴィア】 メイジ・スタッフに〈ライト〉を唱えて、出かけよう。
【GM】 というわけで、キミたちは、人影がぶら下がってる現場に来ました。
【ティガー】 そいつって、ジーネじゃないやんな?
【GM】 ジーネじゃないよ(笑)。ほっそりとした体躯の男やね。20代前半みたい。
【シルヴィア】 引きずり降ろせそう?
【GM】 そばに屋根掃除用の梯子が、横たわってるよ。
【シルヴィア】 じゃあ、梯子を立てかけて、男を担いで降ろそう。
【メイユール】 降ろしたら、縄で縛るよ。で、起こす。
【シルヴィア】 その男に見覚えはある?
【GM】 いや、キミたちにはないよ。
【メイユール】 「あんた、誰?」
【GM】 「俺様か? “屋根走りのケリー”だ」きらーん。
【ティガー】 なんじゃ、それ(笑)。
【メイユール】 ヤモリや。
【GM】 「そのとおり。別名、“ガーゴイル・ケリー”だ。10万円だ」
【メイユール】 「なんでティガーの荷物を漁ってたん?」
【シルヴィア】 「何が目的や?」
【GM】 「別にぃ。たまたまッスよ。窓の鍵、開いてたし」
【ティガー】 ただの泥棒?
【メイユール】 そうみたいやな。
【シルヴィア】 とりあえず、持ち物チェックしてみる。
【GM】 シルヴィアは、ケリーの懐から『天の鍵』を見つけた。
【シルヴィア】 ほほう。とりあえず、これは僕が預かっておこう。ケリー自身の持ち物は?
【GM】 シーフ用ツールと、所持金50フィス。
【シルヴィア】 しけとんなぁ。
【GM】 ケリーは「返せよぉ」と言ってる。「ひとの物を盗るなんて、泥棒だぞ」
【ティガー】 おまえが言うなぁー!(笑)
【シルヴィア】 盗賊に「どうして欲しい?」って聞いてみよう。
【GM】 「そりゃあ、この縄目を解いて、その『天の鍵』を俺に渡して、皆様のサイフも渡してもらって、解放してもらうのが最高ですよねぇ」と、答える。
【シルヴィア】 「なんで、こいつが『天の鍵』っていうアイテムなのを知ってるの?」
【GM】 「……え?? それはですね……いよっ、さすがぁ!」と、ケリーは言う。
「じゃあ、あっしはそろそろ帰りたいので」
【メイユール】 もうちょっと、しゃべりたいなぁ。
【シルヴィア】 突っついてもいいよ。死なん程度になら。
【GM】 「なんてことを言うんだ。それ以前に、ケガしてるんだから、治してくれよ!」とか、ケリーは言ってるけど? 「死んだらどーすんだ」
【ティガー】 厚かまし〜。
【メイユール】 すぐに立ち止まらんかったからやん。
【GM】 だって、「止まれ!」と警告しなかったやろ。
【メイユール】 痛いのは元気な証拠。大丈夫、大丈夫。簡単に死なへん。
【GM】 「乱暴な奴らだ」と、ケリーはぶつぶつ言ってる。
【シルヴィア】 「官憲に突き出されるのと、この場で始末されるの、どっちがいい?」
【メイユール】 始末したいで〜す。
【シルヴィア】 「仲間はこんなこと言ってるけど、キミの持ってる情報しだいでは、命を助けてあげてもいいよ」
【GM】 「……ホントに?」
【メイユール】 あっ、気持ちが揺らいでる。
【シルヴィア】 まあ、メイユールの気分しだいやけどね。
【GM】 それは「保証しない」と言ってるのと同じやけど。サテラはどうなん? 「そんなひどいこと、言うなよ。逃がそうよ」って、止めてもいいよ。
【サテラ】 いや、逃がす気はない(笑)。
【GM】 じゃあ、しゃあないな。情報を吐いてあげよう。
 ケリーは、「青い波の美し亭に泊まってるティガーという男が、『天の鍵』というアイテムを持ってるんで、盗み出してこい」と、依頼されたらしい。
【メイユール】 具体的やな。
【シルヴィア】 依頼したんは誰?
【GM】 「ジョン・J・スミスという男だ」
【シルヴィア】 「誰や、それ。偽名っぽい、ええかげんな名前やなぁ」(笑)
【メイユール】 「ホントの名前、言いよ」って、詰め寄るで(笑)。
【サテラ】 とりあえず、昼間そういうのがいたって話す。
【メイユール】 「ああ、ケバイって言ってたひとか」
【シルヴィア】 サテラから聞いた容姿を話して、それと同じ恰好かと、確認してみよう。
【GM】 「そうそう、そんな恰好」と、ケリーは答えた。
【シルヴィア】 依頼主は、『天の鍵』を盗ませて何をするつもりなん?
【GM】 「知らねえな。金の支払いさえよければ、そんなこと、俺にはどうでもいいし」
【シルヴィア】 『天の鍵』を盗み出した後、どこに持って行くことになってるの?
【GM】 「『大いなるナマズ亭』という宿屋だ」
【サテラ】 あ、その場所知ってる。スミスに話を聞きに行ってみるとか。
【シルヴィア】 そうやな。後で行ってみようか。
【メイユール】 明日にしようよ。精神力がすごい減ってるし、回復させたい。
【GM】 ケリーは、「あと、盗賊ギルドでおまえらの情報を仕入れてきてくれ、って言われたから、それも売ったな」と話した。
【シルヴィア】 僕らの情報って、どんなこと言うたん?
【GM】 そりゃあ、パーティの編成とか、どこにいるかとか、前回のキャンペーンでどういうことをしたかとか、目つきの悪いニワトリがいて7色に光るとか、いろいろ。
【ティガー】 ヒデヨシ、今は光るのムリやけどな(笑)。
【シルヴィア】 「その情報を聞いたスミスの反応は、どんなんやった?」
【GM】 「うなずいてただけだった」
【シルヴィア】 他に聞きたいことはある?
【メイユール】 わたしは別に。
【サテラ】 わたしも、とくにない。
【シルヴィア】 じゃあ、ケリーに「言い残すことは、もうないか?」って聞く。
【GM】 「どういう意味だ!」って抗議してるよ。
【シルヴィア】 いや、ビビらすだけ、ビビらせとこうかと(笑)。

 3人はケリーを衛兵の詰所に突き出して、褒賞金270フィスを入手した。
 そして、精神力を回復すべく、『青い波の美し亭』に戻って寝ることにした。

【GM】 精神力を回復させるためには、朝9時30分まで眠っておく必要があるな。
【メイユール】 寝るよ。ばっちり寝る。
【シルヴィア】 メイユールがそうするなら、僕らもつき合っとかないと損やな。多少でも、精神力を消費してるし。
【サテラ】 じゃあ、わたしも9時半まで眠ります。

容疑者発見の事

【GM】 では、漁村で野宿のティガー。キミは何時頃に起きるの?
【ティガー】 今日は寝にくいから、たぶん、早くに起きてると思う。7時に街門から、『青い波の美し亭』に戻ってくる。
【GM】 とすると、ミフォア大神殿の前で、通りを掃除してるファンリーと会うな。
【ティガー】 手ぇ振ってる。「夕方の6時な〜」って。
【GM】 そんなことしながら、ティガーは宿屋に帰ってきました。部屋に入ると、みんなはベッドで眠ってるよ。
【ティガー】 ヒデヨシはどうなってるかな?
【GM】 モヒカンの形に、うっすらと毛が生えかけてる。
【メイユール】 気持ち悪っ!(笑)
【ティガー】 「あと、もうちょっとやな〜」って思っとく。で、酒場に下りて、朝メシを食う。オムレツね。
【GM】 食べた。まだ7時30分ぐらい。みんなは起きてこないね。
【ティガー】 じゃあ、盗賊ギルドに行きたいから、置き手紙して出かけようっと。「盗賊ギルドに行ってきます♥」って。
 泥棒っぽい恰好に着替えるよ。
【GM】 ほっかむりして風呂敷背負うの?
【ティガー】 ちがうわ! 黒コート着るねん。昨日、買ってきたやつ。とりあえず、シーフは黒かな、って思ってるから。剣とゴールドカードと財布と、シーフ用ツールだけ持って、出かけるね。
【GM】 ところで、キミの荷袋は荒らされた形跡があるけど?
【ティガー】 自分で荒らしたかな〜、って思ってるから、あんまり気にしてない(笑)。
【GM】 では、ティガーは10時30分に、貧民街の盗賊ギルドに到着する。

【GM】 9時30分。『青い波の美し亭』のシルヴィアたちが目を覚ますと、部屋のテーブルの上に、ティガーの置き手紙がある。
【メイユール】 ああ、いちおう帰ってきたんや。
【シルヴィア】 じゃあ、朝食を食べ終わったら、『大いなるナマズ亭』のスミスのところに行ってみよう。サテラに案内してもらいながら。
【GM】 13時、3人は南区の『大いなるナマズ亭』にやって来ました。ティガーが盗賊ギルドに着いた2時間半後やね。でも、シルヴィアたちを先に処理しとこう。
 1階の酒場のカウンターでは、この宿の主人が、今日も妙な櫛で髪の生え際をポンポン叩いてるよ。「いらっしゃい」
【サテラ】 酒場のマスターに、あの変なのがいるかどうか、聞いてみる。
【GM】 「変なのって?」
【メイユール】 ジョン・J・スミスやな。
【GM】 「スミスさんなら、もうチェック・アウトしたよ」と、オヤジは答える。
【シルヴィア】 どこに行ったのか、聞いてない?
【GM】 「聞いてないなぁ」
【サテラ】 酒場にいる他の客に、スミスを見たかと尋ねてみる。
【GM】 いや、今日、その姿を見たのは、酒場のオヤジだけやね。スミスがチェック・アウトしたのは、早朝だったらしいから。
【シルヴィア】 何時ぐらい?
【GM】 6時30分頃。
【メイユール】 早起きさんや。
【シルヴィア】 ケリーがドジ踏んだから、逃げたのかな。
【メイユール】 しょうがない、あきらめるか。ナマズ亭を出よう。

【GM】 それでは、時間を巻き戻して10時30分。場面は盗賊ギルドに着いたティガーです。
 スルメをくちゃくちゃ噛んでる人相の悪い男が、「よお」と出迎えてくれる。
【ティガー】 「よ〜」盗賊ギルドに登録に来たんやけど、本名で登録せんとアカンの?
【GM】 いや、ちゃんと金さえ収めてれば、別になんだっていいよ。“ガーゴイル・ケリー”みたいなのでも。
【ティガー】 じゃあ、“ティガー”とは別の偽名にしようっと。“ゲイル”で。
【GM】 では、年会費の1000フィスを払って。あと、ギルドの管轄内で“仕事”して利益をあげたら、1割を上納するようにね。そうしとけば、例えばキミがヘマして官憲に捕まったときでも、すぐに釈放してもらえるよう、ギルドが手を打ってくれたりするから。
【ティガー】 OK〜。ついでに聞きたいことがあるんやけどさー。昨日、魔術師ギルドで何か起きた、ってことは知ってんのかな?
【GM】 「ああ、騒ぎがあったらしいな」
【ティガー】 その騒ぎはどうでもいいねん。騒ぎがあった後に、ジーネが目撃されたかどうかを知りたい。
「ジーネって知ってる? ぼこっとしたごつい筋肉女で、ちょっと有名なんやけど。昨日の魔術師ギルドの事件の後、そいつを見たひとがいるかどうか、知りたいんだけどなぁ」
【GM】 スルメを噛んでる男は、黙って手を差し出す。
【ティガー】 じゃあ、200フィス払う。
【GM】 (ころっ)「そういや、すげぇ筋肉の女を見た、って興奮してた奴がいたな」
【ティガー】 「どこで見たって言ってた?」
【GM】 「貧民街で」
【ティガー】 は? そうなんや。「何してた?」
【GM】 街のほうから走って来て、貧民街の裏路地にある、さびれた宿屋に飛び込んで行ったらしい。
【ティガー】 目撃されたんは、それだけ?
【GM】 それだけ。
【ティガー】 何時頃、見たん?
【GM】 昨日の15時頃らしい。
【ティガー】 15時か。魔術師ギルドが燃えたんって、いつ頃やったっけ……メモしてへんし。お〜い、シルビー。
【シルヴィア】 15時。
【GM】 おい、コラ(笑)。
【ティガー】 う〜ん、燃えた後か。
「じゃ、どうも」って言うて、出ていく。「ばいばい」
【GM】 「バイバイ」
 今の時間は、まだ11時やね。メイユールたちが『大いなるナマズ亭』へ移動してる最中。ティガーは、他にしたいことがあればできるよ。
【ティガー】 今、貧民街にいるねんな。じゃあ、ジーネが入ったっていう、裏路地の宿屋に行ってみる。
【GM】 なんていう宿屋?
【ティガー】 知らな〜い(笑)。
【メイユール】 宿屋の場所を、聞いてないやん。
【ティガー】 じゃ、盗賊ギルドに戻って聞く。
【GM】 スルメの男は、黙って手を差し出す。
【ティガー】 うっそーん、二重?! 10フィス払う。
【メイユール】 効率悪ぅ。
【GM】 ティガーは、裏路地の宿の場所と名前を聞いた。『鳥を呑んだヤマカガシ亭』ね。
【ティガー】 じゃあ、ヤマカガシ亭に行く。ついでに、そこで昼メシ!
【GM】 ヤマカガシ亭は、寂しいとこに建ってるさびれた宿屋です。1階の酒場には、ティガー以外に客の姿はない。
【ティガー】 昼メシを食べながら、オヤジに「ジーネって奴、見た?」って聞く。「すごい筋肉の女なんやけど」
【GM】 「見たよー」
【ティガー】 「昨日?」
【GM】 「うんにゃ」と言って、オヤジは2階を指した。
【ティガー】 はっ!? 上にいるの?? マジで? 怖い〜。
【シルヴィア】 まだ、心の準備ができてないんやな(笑)。
【メイユール】 おると思わんかったもんな。ティガー、大当たりや。
【ティガー】 イヤやな〜。6時に帰らんとアカンのに。
【メイユール】 どんどん予定が狂っていく(笑)。
【ティガー】 今日は遅れられへん。ファンリーが広場で待ってるもん。
 シーフ技能で[変装]する。もっと他人ぽく、ティガーに見えないように。(ころっ)
【GM】 ティガーは、「他人っぽく変装できた」と思ったよ。
【ティガー】 じゃあ、ジーネが泊まってる部屋の場所を聞いて、2階にあがる。で、ドアをノックする。
【メイユール】 ドキドキや。
【GM】 返事はない。
【ティガー】 えーっ!? 蹴破る……ウソ、普通に開ける。
【GM】 内から鍵がかかってる。
【ティガー】 [鍵開け]、(ころっ)成功〜。ドアを開ける。ジーネはいる?
【GM】 ドアが開けられた瞬間、ガシュっとベッドの向こうに隠れる者がいた。背中とかが、モリっとしてるけど。
【ティガー】 それ、隠れられてないよ(笑)。
「あんたに用があるんだけど」って、知らないひとっぽく話しかけてみる。
【GM】 筋肉の背中は、震えている。「何よ、ティガー」って言ってるよ。
【ティガー】 バレてるぅー!(笑) じゃあ、もう普通に「どうしたん?」って聞く。「なに隠れてんの? 帰ってきぃや」
【GM】 ジーネは頭を抱えてうずくまったままやね。
【ティガー】 「そういえば、昨日さー、ヒデヨシがえらいことになってん」って関係ない話をしながら、肩をポンと叩いてみる。
【GM】 ジーネはそれを振り払う。
【ティガー】 えーっ、怖い〜。
「どうしたんよ。誰にも言わへんから、話してみ」って、顔を覗き込んでみるけど。
【GM】 見てみると、ジーネの顔に髭が生えてるよ。カ○ルのおじさんのような、黒々とした髭が。
【メイユール】【サテラ】 髭ッ?!(笑)
【ティガー】 あははは!(笑) 「怪しいターバン姿の商人に、変な薬でも塗られた?」
【GM】 「そんなん知らへん」
【ティガー】 「ピーター博士に何か塗られたり、飲まされたりした?」
【GM】 「そんなこと、されてへんわ」やって。
 どうやら、グラランボンバーで筋肉ダルマになったのに懲りて、あれ以来、変な薬には手を出してないらしい。
【ティガー】 「じゃあ、どうしたん、その髭」
【GM】 ジーネの話によると、昨日の朝、ピーター博士の検査を終えた後、シルファス神殿に戻って昼食をとって、後片付けを手伝ってたら、他の神官から「髭が生えてますよ」と指摘されたらしい。
 あまりのショックに、ジーネはシルファス神殿を飛び出して、このさびれた宿屋に逃げ込んで、隠れたんやね。
「言うたら、殺すで」と、ジーネはティガーを睨むよ。
【メイユール】 目がマジやで。
【ティガー】 怖い、怖い、怖い。
 あ、そうそう。ジーネに「魔術師ギルドが火事になったの、知ってる?」って聞く。
【GM】 ジーネは「は?」とか言ってる。
【ティガー】 えっ、知らんの?
「14時か、15時ぐらいに、魔術師ギルドに来てたやろ。薬学部の廊下で、あんたとすれ違ったんやけど」
【GM】 「知らないよ」

メイユールへの手紙の事

【ティガー】 あれ??
【GM】 ジーネの話だと、その時分にはすでに髭が生えていて、人目につかないところをめざして、逃げてたらしいよ。
【ティガー】 「じゃあ、昨日、魔術師ギルドに行ったの、検査のときだけ?」
【GM】 「うん。午前中だけやで」
【メイユール】 なら、あのジーネは何者や?
【ティガー】 う〜ん……。
 とりあえず、「その髭はいい薬があるから、ここに隠れてなさい」って言う。
【GM】 ジーネはガシュっとうなずいた。
【ティガー】 じゃあ、酒場に下りる。オヤジに200フィス払って、ジーネの食事を20日間ぐらい面倒見てもらう。
【メイユール】 おおー。
【サテラ】 優しいな。
【ティガー】 あ〜、怖かった。じゃあ、メイクを落として、「わーい」って。
【GM】 「『わーい』って」?? どないしたいねん(笑)。
【ティガー】 さかな広場に行く!
【GM】 それならちょうど、サテラたち3人が、ナマズ亭で「ジョン・J・スミスはいない」と聞かされて、店から出てきたところ。
 黒いコートを着て、「わーい」とか言いながら走るティガーが、『大いなるナマズ亭』の前を通りかかるよ。
【メイユール】 声をかけてみよう。
【ティガー】 「やあ!」って、めっちゃ嬉しそう(笑)。
【メイユール】 「なんでそんなにハッピーなん?」
【ティガー】 「これから、いいことがあるから」
【メイユール】 「ああ、そうか。デートやな」
【シルヴィア】 「あんまり、ファンリーに迷惑かけたらアカンで」
【ティガー】 「かけてないよぅ。あっ、ジーネ、犯人じゃないで」って、教えとく。
「魔術師ギルドで見たジーネは、偽物かも」
【メイユール】 いきなり、脈絡がないな(笑)。
【ティガー】 「盗賊ギルドで聞いてきてん」って、ギルドの情報のふりをして教える。
【メイユール】 「ジーネに会った」とは、言わへんねんな。
【ティガー】 ジーネの言葉やと信じてもらわれへん、と思ってん。髭のことは内緒やし。
「で、ここで何してんの?」
【シルヴィア】 じゃあ、昨日の夜の泥棒騒ぎから順を追って、事情を説明する。あ、そうそう。『天の鍵』は僕が預かってるから。
【GM】 朝、自分の荷物からなくなってることに気づいてなかったな、ティガーは(笑)。
【ティガー】 ヒデヨシが取ったと思っててん(笑)。ところで『天の鍵』って、何に使うんやったっけ?
【メイユール】 それは、まだわかってなかったと思う。
【シルヴィア】 「そういうわけで、盗みを依頼したジョン・J・スミスが、ここに宿泊してると聞いて来てみたんやけど、出ていった後なんや」
【ティガー】 「ジョン・J・スミス?? ウソくさい名前やなー」(笑)
【シルヴィア】 サテラは見たことあるらしいけどね。
【サテラ】 すごいハデなひとって、見た目を説明する。
【シルヴィア】 「僕には負けてるかも知れへんけどね」と、付け足しとく。
【GM】 張り合ってんのか。とりあえず、お互いに情報交換できたわけやね。ティガーがジーネに会ったことを除いて。
【メイユール】 うん。じゃあ、ティガー、行ってよし。
【ティガー】 「さらば!」
【GM】 ティガーは、さかな広場に去っていった。他の3人はどうする?
【メイユール】 適当にその辺をぶらぶらして、コロシアムに行ってみる。
【サテラ】 魔術師ギルドの図書館で、調べ物をしたいです。
【シルヴィア】 あ、僕も行こう。使い魔のフクロウは、こっそりティガーにつけとく。
【メイユール】 もう、いいやんか、監視するのは。なんかシルヴィア、いやらしいで。
【ティガー】 覗きや、覗き。
【シルヴィア】 デート状態に入ったら、引き返すよ。
 あ、図書館へ行く前に、ギルドの受付に寄って、ジョン・J・スミスが今日、ギルドに来てないか尋ねてみる。サテラから聞いた、スミスの容姿も説明するよ。
【GM】 「今日は、そういうひとは見てませんね」
【シルヴィア】 ちなみに、スミスがここに何を調べに来てたのか、わからんかな? サテラから、ここで何か調べてたと聞いたんやけど……。
【GM】 「宝のありかを示した古文書か、『天の鍵』というアイテムを、ここに持ち込んだ者はいないか、と聞かれたんですよ」と、受付のひとは答えた。
 で、スミスは、以前、キミたちがディック・ジャシュアを探したときに調べた、鑑定依頼の帳簿を見せてもらった。その『天の鍵』の欄には、この前、ティガーが「てぃがあ♥」とサインしてたよな。
【シルヴィア】 なるほど、それでティガーの名前を知ったのか。
【GM】 あと、ピーター博士の研究室のほうからやって来たジーネを見て、スミスはずいぶん衝撃を受けていたらしい。「なんだ、あの生き物は?」と、受付のひとにあれこれ尋ねたらしい。
【メイユール】 『生き物』って(笑)。
【シルヴィア】 ん、もう納得した。図書館へ行って、月にあるっていう塔に関する文献を、いろいろ調べてみる。
【サテラ】 わたしは、『天の鍵』について何かないか、調べてみます。
【GM】 それは、だいたい何時間ぐらい、トライするかね?
【シルヴィア】 2時間。
【サテラ】 わたしも。
【GM】 じゃあ、キミたちふたりが調べ物を終えるのは、16時30分やね。

【GM】 では、ティガー。キミは15時に、さかな広場に到着したよ。
【ティガー】 広場でターバンの商人を探してみる。
【GM】 すぐに見つかった。向こうで、猫に薬をつけて、「このとおり、抜ける、抜ける」と実演販売してる。
【ティガー】 「その薬、1個くれ」
【GM】 「いいよー。300フィスねー」
【ティガー】 よっしゃ〜。リボンをつけて、「ジーネへ☆」って書いて、喜んでよう。
【GM】 ──それは広場でやってんの?
【ティガー】 うん、隅っこでこっそり。
【GM】 脱毛剤をプレゼント仕様にし終えたティガーは、さかな広場で、「メイユールってひと、いる?」と聞いて回っている、10歳ぐらいの男の子に気づいた。
【ティガー】 男の子? 「知ってるけど」って、声をかけてみる。
「メイユールやんな? 俺の仲間やで」
【GM】 「じゃあ、これを渡しといて。頼まれてん」と、封書を渡す。封書はいちおうロウで封印されていて、封印は解かれていない。手紙が入ってるみたいやね。
【ティガー】 手紙? なに、これ。見ていいん?
【GM】 それは知らん(笑)。封を開けるかどうかは、キミの判断で。
【ティガー】 何やろ……怖いな〜。──どうしよう、見よっかなぁ……。
【メイユール】 なんか、キョロキョロしてるんちゃうん。めっちゃ不審者や(笑)。
【シルヴィア】 広場でひとりで悩んでる姿が、フクロウを通して僕にも見える(笑)。
【GM】 フクロウはどこにいるの? ティガーの近く?
【シルヴィア】 いや、気づかれないようにしてるから、けっこう遠いと思うよ。
【GM】 なるほど。
【ティガー】 ……いいや、見ちゃえ!

 ちなみに、ティガーが受け取ったメイユール宛の手紙は、GMが口頭で説明するものではなく、本当にティガーのプレイヤーに手渡されたもの。
 なので、現時点では、手紙を目にしたティガーのプレイヤー以外、その内容を知ることができません。(シルヴィアの使い魔のフクロウは、遠くにいるので、手紙の文面までは見えない)
 手紙には、こう書かれていました──。

 16時までに、メイユールがひとりで、“天の鍵”を持って、北東の太古の寺院跡に来られたし。いかなる動物を連れていてもならない。荷物は“天の鍵”だけであること。
 部外者に知らせれば、ファンリーの命はない。街では、仲間たちが見張っている。
 メイユールは、北区鍛冶屋町の酒場『オグルの棍棒亭』に行き、店主に預けているチェインメイルに着替えること。
 16時を過ぎれば、ファンリーの左目を潰す。17時を過ぎれば、右目を潰す。その後1時間を過ぎるごとに、左耳、右耳、鼻、左腕、右腕、左足、右足、最後に胴を切断する。


 これを読んだティガーは、手紙をくしゃくしゃと丸めてしまった!

【メイユール】 どうしたの?
【ティガー】 GM、今、何時?
【GM】 15時30分。
【ティガー】 じゃあ、今度はティガーが、その辺のひとに「メイユール知らない?」って聞いてまわってる(笑)。
【メイユール】 コロシアムだぞ〜。その後、劇場に行く予定やけど。
【GM】 でも、それはティガーにはわからない。
【ティガー】 この街の中でメイユールを探すのは無理と見たので、とりあえず『青い波の美し亭』に戻る。
 で、酒場のマスターに、「メイユールが帰ってきたら、この手紙をすぐ渡せ」って言うて手紙を預けて、ミフォア大神殿に行く。走って行く!
【GM】 泣きながら走って行くんやね。
【ティガー】 泣きはせんけど、必死で走る。
【GM】 では、16時。ティガーはミフォア大神殿にやって来たよ。

÷÷ つづく ÷÷
©2005 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2005 Jun Hayashida
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