▽ 走るジーネの死体の事 | ▽ 目覚めた鍛冶師の事 | ▽ 銀の金槌を探す事 |
【GM】 さて、森の中の戦闘の翌朝。
キミたち12人は、ランダースに向けて出発した。
たぶん、カルファン騎士の誰かが、ジーネの死体を毛布にくるんで、かついでくれてるんでしょう。「重てえな」とか言いながら。
【アンドリュー(故ジーネ)】 重たくない! 失礼な。
【メイユール】 死体は重たいよ。
【ティガー】 じゃあ、6人ぐらいで持ってもらう? オリンピックの旗行進みたいに、毛布の端を持って(笑)。
【GM】 そうすると、広げられた毛布の真ん中で、ジーネの死体が大の字になって、ぐで〜んとしてるわけやな。
【メイユール】 誰かがサボると、そっちに転がっていくよ。「うわ〜、来た〜」って。
【ティガー】 恐ろしい。なるべく後ろは見ないようにしよう。
【GM】 さてさて。
悪いことは重なるもので、上空を黒い雲が覆い、辺りが薄暗くなったと思うと、じきにポツリポツリと雨が降り始めた。
やがて、車軸を垂らすような大雨になる。森の木々でさえ遮れないほどの、豪雨やね。
【メイユール】 大変や。ジーネを裏返さな。
【ティガー】 なんで?(笑)
【GM】 そんなことを言ってると、行く手に切り立った崖が見えてきた。
そのふもとには、洞穴が口を開けている。自然の洞窟のようやね。
【シルヴィア】 そこに逃げ込むか。
【メイユール】 このままじゃ、ジーネが水を吸って膨らむからな。
【GM】 では、キミたちは、雨宿りのために洞穴に入った。服を絞ったり、濡れた髪をふいたりしている。
時刻は昼前。
雨は、まだまだ止む気配がなく、辺りは薄暗いまま。
【ティガー】 ジーネの死体は、奥のほうに置いとこう。目の前にあったら、イヤやし。
【メイユール】 匂ってこないように、毛布でしっかりくるみ直しとこう。
【シルヴィア】 それがすんだら、とりあえず、焚き火を起こそうか。誰か、火を起こす道具を持ってる?
【メイユール】 持ってないよ。
【ティガー】 俺も。
【アンドリュー】 ジーネの背負い袋の中に一式入ってるから、それを使え。
【メイユール】 じゃあ、ジーネの死体をあさる。「動かないよな」って、ドキドキしながら。
【GM】 ──と、思って振り返ったメイユールは、毛布にくるまれたジーネの死体が、洞穴の奥のほうへ地面を滑るように移動していくのを目撃した!
【メイユール】 動いたぁーッ!
【ティガー】 マジで!?
【GM】 マジで。横たわったまま、すごいスピードで移動していくよ。
【メイユール】 ぎゃ〜!
【ティガー】 いや〜ッ!
【GM】 精霊使いのメイユールには、ジーネの死体を持ち上げて走っている、20匹ぐらいの小さな精霊の姿が見える。
【メイユール】 どんな奴?
【GM】 白い半透明のネズミみたいな姿の精霊です。
尻尾は平べったいヘラみたいな形をしていて、ちょこまか動く足が4本、背中に手が4本生えている。
背中の4本の手でジーネを持ちあげて、走ってるわけですな。
【メイユール】 あはは、何それ(笑)。
【GM】 精霊たちのうちの1匹が、チラっと振り向き、メイユールと目が合った。
すると、「キーっ」と鳴いて、さらに加速して逃げて行く。
【メイユール】 「死体の下に何かいる」って、仲間に教える。
「死体を運んでる」
【ティガー】 「なにが!?」
【メイユール】 「かわいいよ」
【ティガー】 「何が見えてるの。自分、やばいで?」(笑)
【メイユール】 「だって、見えてるんやもんー!」(笑)
【ティガー】 とりあえず、俺は、逃げてくジーネの死体を追っかける。
【GM】 奥は暗闇。照明がなければ、追いかけていくのは難しいな。
ティガーは、岩壁に激突してしまったよ。
【ティガー】 「いてー!」(笑)
【GM】 カルファン騎士たちが、「王子、大丈夫ですか!?」と、言ってる。
【ティガー】 「うるせー!」
【シルヴィア】 〈ライト〉を唱えて、メイジ・スタッフに明かりを灯します。(ころっ)
【GM】 洞穴の中を、シルヴィアの魔法の青白い光が照らしだした。
どうやら、洞穴は、かなり奥まで続いてるみたいやね。ジーネの死体は、すでに見えなくなってるよ。
向こうの壁際では、ティガーがおでこをさすってます。
【シルヴィア】 「ジーネは、どこに行った?」
【ティガー】 「知らんわ」
【シルヴィア】 「頼りにならんなぁ」
【ティガー】 「うるせーなぁ。じゃあ、おまえが行けよ」
【シルヴィア】 「言われるまでもない」──ということで奥に行きたいんやけど、洞穴の様子は、どんな感じ?
【GM】 ごつごつした岩肌の自然の洞窟で、曲がりくねったり、極端に狭くなったりしている。基本的には一本道。
【メイユール】 なら、迷うことはなさそうね。
【シルヴィア】 それじゃ、奥に行きますか。
【アンドリュー】 ネズミたちの足跡とかはない?
【GM】 精霊だから、そういうのは残されてない。
精霊だから、尻尾をプロペラにして、たまに宙を飛ぶこともあるらしいし。
【メイユール】 便利やなぁ(笑)。
冒険者たちは、精霊に持ち去られたジーネの死体を求めて、洞窟の奥に潜っていった。
最初は一本道だった洞窟に、やがて、いくつか分岐点があらわれはじめた。冒険者たちは、行き止まりの道などに苦しめられる。
そこで冒険者たちは、岩壁に右手をついて、分かれ道では常に右方向を選択する、という方法をとった。もちろん、分岐点に、自分たちがやって来た方向を刻んでおくことも忘れない。
古典的な手段ではあるが、マッピングが難しい自然の洞窟では、有効な作戦だった。
やがて、冒険者たちは、広い空間に出た。
【GM】 先頭は、メイユールとティガーか。で、壁際にいるのはティガー、と。
ティガーは、レンジャー技能を持ってないので、ひら目で[危険感知]してください。
【ティガー】 (ころっ)失敗。
【GM】 なら、岩壁からニュっと大きな腕が突き出て、ティガーをゴツンと殴りつける。不意討ちされたから、ペナルティつきで回避してください。
【ティガー】 (ころっ)当てられたけど、ダメージは鎧で防いだ。
「なんやねん〜」
【GM】 岩の一部だと思っていたのが、どうやら、巨人だったようです。
テリトリーを侵された巨人は、頭にきてるみたいで、かなり怒っている。
【シルヴィア】 そいつの正体を、セージ技能でチェックします。(ころっ)
【GM】 そいつは、トロール。普段は、洞窟などで岩のごとく過ごしている巨人。ティガーのように気づかずに近づいた者は、殴られてしまうことがあるらしい。
【シルヴィア】 トロールは単独で棲息するタイプ?
【GM】 それは、さまざまなケースがある。モテない奴は、独りでいるでしょう。
【メイユール】 そいつ、モテそうな感じ? かっこよさげ?
【GM】 う〜ん、ちょっと男前かな。シャープに彫り込んだ、石の彫像みたい。メイユールの目は、ハートになってる(笑)。
【メイユール】 いや〜ッ!
【シルヴィア】 それじゃ、戦おうか。
【メイユール】 わたしは、後ろにさがりたいのじゃ。
【シルヴィア】 きっと、ロートシルトくんが変わってくれるよ。
【GM】 ところが、トロールは後ろにもいた。
「いてえ!」とかいう悲鳴があがってる。
【メイユール】 殴られたんや(笑)。
【GM】 ロートシルトと、アンドリューを除くカルファン騎士6人は、後方のトロールに向かって行った。
キミたち4人は、男前のトロールと対峙する。
メイユールの〈ストーン・ブラスト〉が炸裂し、シルヴィアから〈エンチャント・ウェポン〉をもらったティガーが、2連発クリティカルを出し、わずか1ラウンドで、男前トロールは倒されてしまった。
【GM】 後方のトロールは、ロートシルトたち7人の戦士にタコ殴りにされ、緑色の血を噴き出しながら、「ぐへえ!」と倒れてしまった。
【メイユール】 おー、すごいすごい。
【GM】 「メイユール、見てくれたか!」と、ロートシルト。
【メイユール】 「ごめ〜ん。トロールが倒れるとこしか、見てなかった〜」(笑)
【シルヴィア】 じゃあ、さらに奥へ向かおうか。
【GM】 キミたちは、どんどん岩肌の洞窟を進んでゆく。「見てみ、あの岩。ひとの横顔に見えるで」なんて言いながら。
【ティガー】 「トロールちゃう?」
【メイユール】 「殴ってみ」
【ティガー】 「先手必勝〜!」
でも、ただの岩で、「だまされた〜」って。
【シルヴィア】 すっかり楽しんでるね。
【アンドリュー】 ふたりとも、何のために洞窟を探索してるか、忘れてへんか?
【メイユール】 楽しんではいるけど、目的は忘れてへんよ。
【ティガー】 うん。ティガーは、さっさとジーネを見つけて、ファンリーを助けに行きたいと思ってるし。
【アンドリュー】 しかし、ネズミたちが何のためにジーネを持って行ったか知らんけど、もうすでに食べられてるか、儀式の材料にされてるかしてるような気がしてきたな。
何のために、ジーネを持って行ったんだと思う?
【ティガー】 さあ? なんでやろ。
【メイユール】 「これが噂のキリング・プリーストか」って、興味を持ったんや(笑)。
【ティガー】 「この邪悪さがたまらん」とか(笑)。
【アンドリュー】 邪悪って、不慮の事故でひとり殺しただけやないか〜。
【GM】 『殺した“だけ”』というのが、なかなか(笑)。
【ティガー】 さすが、邪悪や。
【メイユール】 怖いよ〜。
【GM】 ──などと、みんなでワイワイ言いながら、キミたちは洞窟の奥へ、奥へと潜っていくわけやね。
さぞかしうるさいことやろな。声が反響しまくって。
やがて、彼らの前にあらわれたのは、下りの階段だった。
その階段をおりた先にあったのは、明らかにひとの手で築かれた、ダンジョンだった。
冒険者たちは、さっそく部屋(F)から、ダンジョンの探索をはじめた。
シーフがいないので、罠を調べることはできず、とにかく次々に扉を開けて、進んで行った。
部屋(F)から、部屋(E)(B)を経て、部屋(A)に向かう──。
【GM】 ところが、その通路は、床を突き破り、天井を貫いて、びっちりと密生する細い木の幹に閉ざされている。
木々は複雑に絡み合い、とても切り倒して先に進めそうにはない。
【メイユール】 燃やせるかな。
【GM】 団結力のある木々は、「燃やせるものなら、燃やしてみろ!」とか言ってる。
【メイユール】 「言ったな〜」
【シルヴィア】 生木を燃やすとすごい煙が出てしまうし、ここはあきらめよう。
他のところを探索してみようか。
冒険者たちは、部屋(I)にやって来た。
【GM】 部屋(I)の中央には、台座を含めて2メートルほどの高さの、銅像がある。
目玉がポコっと飛び出るほどやせた男が、強そうなファイティング・ポーズをとっている像です。
要するに、巨大なニョムヒダの像やね。
【ティガー】 「なんじゃ、これ〜?」って言いながら、見に行く。
【メイユール】 わたしも〜。
【アンドリュー】 私は、「王子、お待ちください!」って、追いかけるやろな。
【シルヴィア】 僕は、入口のところで様子を見てるよ。
【GM】 なら、部屋の中に入ったのは3人やね。
先頭のティガーがニョムヒダの銅像の前に立つと、一瞬、なんかスイッチを踏んだような感触があった。
【ティガー】 おう?!
【GM】 すると、ニョムヒダの口から、白い霧状のガスが吐き出された。
部屋に入った3人は、生命力抵抗してください。
【ティガー】 (ころっ)成功。
【メイユール】 (ころっ)成功。
【アンドリュー】 (ころっ)失敗。
【GM】 では、ティガーに7点、メイユールに5点、アンディーに9点のダメージがいった。
3人は、ゲホゲホと咳き込む。
【アンドリュー】 「王子、大丈夫ですか。ゲホゲホ」
【シルヴィア】 不用意に中に入らなくてよかった。
【ティガー】 スイッチを踏まないように気をつけて、部屋の中を見て回ろうっと。
【GM】 とくに何も見つからなかったよ。
そして冒険者たちは、階下におり、部屋(M)で何やら文字が刻まれた石碑を見つけた。しかし、残念なことに、誰もその文字を解読することはできなかった……。
次に、部屋(N)へやって来た。
部屋(N)の壁一面には、細い木が密集して生えていた。
とくに、正面奥には木々がかなり固まって生い茂っており、まるで、繭のようになっている。
【GM】 その木の繭は、ひとりの眠れるエルフを包みこんでいる。
【ティガー】 は??
【アンドリュー】 寝てるの? 死んでるんじゃなくて。
【GM】 死んでるわけではなさそう。鼻ちょうちんが、ぷ〜、ぷ〜と、膨らんだりしぼんだりしてるから。
【ティガー】 見に行ってみる。そのエルフって、男?
【GM】 男性です。エルフの例に漏れず、美しい顔つきやね。メイユールの目が、またハート型になっている(笑)。
【メイユール】 またぁ?!(笑)
【ティガー】 まあ、今度のはしかたないよな。
【アンドリュー】 鼻ちょうちんが膨らんでてもいいの?
【メイユール】 このミスマッチがいいのよ(笑)。
【GM】 さて、ティガーがエルフを包む木の繭に近づいたとき、脇の壁から、足が4本、背中に手が4本ある白いネズミが、にゅ〜っと出てきたよ。
【メイユール】 ジーネを運んで行った、あいつか。壁を通れるんや。
【ティガー】 俺らにも見えてるの?
【GM】 今は、はっきりと見えている。
白いネズミは、キーキー鳴いた。すると、エルフの鼻ちょうちんが、パチンと割れた。
エルフは、端正な眼を、ゆっくりと開く。
【ティガー】 なにい!? ネズミは目覚まし時計?
【GM】 エルフが目を覚ますと、繭を形成していた木々がシュルシュルとほどけて、退いていった。
男性エルフは、静かに床に降り立つ。
【シルヴィア】 言葉が通じるかな。
【ティガー】 とりあえず、共通語で話しかけてみる。
「やあ」
【GM】 通じてる様子はないね。
【ティガー】 じゃあ、エルフ語では?
【GM】 それなら、問題なく通じる。
エルフ語をしゃべれるのはティガーだけか。なんて話しかけるのかな?
【ティガー】 えっと、名前を聞いてみる。
【GM】 「わたしの名は、エウロギア」と、エルフは答える。
「あなたたちは?」
【ティガー】 じゃあ、「ティガー」って名乗る。王子であることは内緒にしとくよ。それから、みんなのことも紹介しとくね。
「で、あんた、ここで何をしてるの?」
【GM】 「ここは、わたしのアトリエだよ」
【ティガー】 アトリエ?
【シルヴィア】 このエルフは、いったい、何をやってるひとなん?
【GM】 鍛冶師です。 といっても、トンテンカン、トンテンカンと鉄を打つのではなく、製作された武器や防具に、魔力を付加するひと。
いわゆる、エンチャンターというやつですな。
【シルヴィア】 おお、すばらしい!
現代においては、もはや存在しない魔力付加者。
エウロギアは、約600年前から今日まで眠りについていた、古代魔法帝国時代のエルフである。
すでに故人となっている友人のドワーフ鍛冶師、ユグルスの作った武器・防具に、強化魔法を付加させるのが、彼の仕事だった。
そして、このエウロギアとユグルスの合作のひとつが、ティガーの恥ずかしい青い色の鎧や、シルヴィアのぬめ〜っと光る緑のクロースである。
【メイユール】 趣味、悪ぅ。
【ティガー】 これは通訳したものか。
【メイユール】 ごめん、黙っといて(笑)。
エウロギアの話によると、その恥ずかしい色の鎧は、魔力を封印したままになっているらしい。
かつて、海上都市ジャカレパグァの長が、闘争のゴーレムと戦った勝者に贈る品として、エウロギアに魔法の鎧の制作を依頼した。万が一、邪悪な者の手に渡ってもいいように、魔力をセーブさせるという注文つきで。
ジャカレパグァの長が、その鎧にふさわしい人物と見た者には、このアトリエの場所が教えられ、晴れて、エウロギアから魔力の封印を解いてもらえるようになってたらしい。
けっきょく、鎧が勇者の手に渡るより先に、ジャカレパグァは海底に沈んで滅び、ティガーたちが入手するまで、エウロギアの鎧は、日の目を見ることはなかった。
【シルヴィア】 じゃあ、この鎧の封印を解いてもらうことはできるの?
【GM】 「キミたちが、それにふさわしい人物ならばね」と、エウロギア。
「ところで、そちらこそ、ここで何をしてるのかな?」
【ティガー】 「いやー、雨宿りしてたら、仲間の死体を持って行かれたんよ」
【メイユール】 そこのネズミにね。
【ティガー】 「そんで追いかけて来たら、ここに着いたわけ」
【GM】 「なるほど。たぶん、保管庫に運ばれてるな」と、エウロギアは苦笑して言う。
【ティガー】 保管庫??
【GM】 「魂の保管庫さ」と言って、エウロギアは、キミたちを伴って1階に上がった。
そして、例の木々に遮られた通路まで来ると、木の幹に軽く手を触れた。
すると、細い木々は、カーテンが開くにように道を開けた。
通路の奥は、部屋(A)になっていて、その床には、大きな魔法陣が描かれている。
【シルヴィア】 そこが魂の保管庫か。
【GM】 部屋の中には、エウロギアが眠っている間に精霊ネズミたちが勝手に集めてきた、人型や動物などの白骨化した死体が、たくさん転がっている。
その中に、毛布にくるまれたジーネの死体もあるよ。
【アンドリュー】 やーめーてぇ〜。
【GM】 ジーネの死体には、たくさんの精霊ネズミが群がっており、入ってきたエウロギアに、「食べていい?」「食べていい?」と、口々に尋ねる。
【ティガー】 だめ、だめ。
【GM】 そう言われたネズミたちは、がっかりした。
【アンドリュー】 しかし、何のために魂なんか保管するの?
【GM】 武器や防具に強化の魔法を付加するためには、たくさんの魔力が必要らしい。
かつては魔晶石を使ってたんやけど、これがまた、効率が悪くてしかたがない。
そんなある日、ふらりと現れたナナチョスという男が、『魂晶石』という、魔晶石よりも強力な魔石を与えてくれた。
【ティガー】 ナナチョス……もしかして、あいつか?(笑)
【GM】 サンチョスのことを言ってるんなら、たぶん違うよ。
ナナチョスという人物は、エウロギアが眠りにつく80年ほど前に、ここに来た男。
「魔法のコマンドがなくても動かせる、ゴーレムを作りたい」とかで、魂晶石の精製方法の伝授と引換えに、エウロギアやユグルスに弟子入りしてきた人物らしい。
【メイユール】 竜巻で古代魔法帝国に行ってしまった、サンチョスの仲間やな。
【シルヴィア】 たぶん、1から順番に、数字が割当てられてるねん。サンチョスは12人の勇者やったやろ?
【ティガー】 あー、なるほど。
魂晶石を作るためには、なるべく新鮮な魂が必要。その収集に、『
魂と肉体は、『
魂の緒は、魂が肉体から抜けたあとも、しばらくの間、霊界まで伸びてつながったままになっている。
だが、時間が経つと、やがて薄れて消えてしまい、魂は、完全に肉体から離れてしまう。(日数の経過によって〈リザレクション〉での蘇生が困難になるのは、こうした理由)
肉体から霊界に伸びている緒を見つけると、大喜びでかじって食べる。
【メイユール】 「食べていい?」っていうのは、ジーネの魂の緒を食べていいか、ってことやったんか。
エウロギアは、ナナチョスのアドバイスに従って、魔法によって魂の緒を繋げたままにできる倉庫を作った。
そして、
【GM】 そして、運ばれきた死体の中から、いい材料となる魂を選りわけ、ナナチョスが魂晶石を精製してたんやね。
使い物にならない魂は、ネズミたちのエサにしてたそうだけど。
【アンドリュー】 ジーネは材料ですかぃ。
【GM】 ただ、人間は光にも闇にもなりきれない中途半端な存在だから、あまりいい魂晶石の材料にはならなかったらしい。
【ティガー】 闇になりきれる魂なら、そこにあるよ(笑)。
【アンドリュー】 やめてくれ! 聖職者に対して、なんちゅうことを言うねん。
【ティガー】 それで、ナナチョスって奴は、どうなったん?
【GM】 ナナチョスは、ドワーフのユグルスから、機械じかけの人形の作製法を学んだ。
やがてユグルスが死に、エウロギアが木の繭で眠りにつくとき、南に旅立って行ったという。
このアトリエに、多数のしかけを施し、エウロギアの大切な鍛冶道具を盗まれないようにしてからね。
【アンドリュー】 じゃあ、あのガスを吐くニョムヒダの像を作ったのも、ナナチョスか。
【シルヴィア】 さすが、12人の勇者のひとりやな。
【メイユール】 ジーネをこの倉庫に置いとけば、魂の緒が消えることはないねんな?
【シルヴィア】 日が経っても、〈リザレクション〉にペナルティがつかない、ってことやな。
【GM】 まあ、そうやね。でも、永遠に魂の緒が保たれるわけじゃないよ。
〈リザレクション〉には、30日で1日分のペナルティがつく、と考えてください。
【メイユール】 しばらくの間、ジーネを預かってもらえる?
【GM】 「別にかまわんが」と、エウロギア。
【シルヴィア】 あと、僕たちの鎧の封印を、解いてもらいたいねんけど。
【GM】 「まあ、いいだろう。キミたちは、悪人には見えないしね」
【ティガー】 邪悪な奴は、死んでるし(笑)。
【GM】 でも、タダで引き受けるわけにはいかない。エウロギアは、ジーネの預かりと鎧の封印を解くことのかわりに、ある条件を出してくる。
【シルヴィア】 何かな?
【GM】 まず、彼の作業場(J)の掃除をするために、アンディー以外のカルファン騎士6名と、ロートシルトを貸してくれること。
それから、キミたち4人に、『銀の金槌』を見つけてきて欲しいとのこと。
【ティガー】 金槌?
【GM】 ウォーハンマーのような金槌で、エウロギアが魔力付加するために使う道具だそうです。
「ナナチョスが、『見つけにくい場所に隠しておくから』と教えてくれたんだが、眠る間際に聞いたんで、どこに隠すと言ってたのか、忘れてしまったんだよ」と、エウロギア。
「この洞窟内にあるのは確かだから、見つけてきてくれんかね?」
【ティガー】 いいよ。
【GM】 「では、よろしく」と、エウロギアは言う。
掃除組とは、ここで分かれることになる。カルファン騎士6名とロートシルトは、エウロギアに伴われて、作業場(J)に行くよ。
【メイユール】 いってらっしゃい。
【GM】 ロートシルトは、「ウソだろ、メイユール。2度と離れない、って誓ったじゃないか」とか、言ってる(笑)。
【メイユール】 「サボるなよ」
【GM】 「冷たいなぁ。でも、そういうとこがいいよね」
【ティガー】 ペドロが、「え??」とか言ってそう(笑)。
【GM】 「あれがかわいいのさ」とかいう声が、だんだん遠ざかっていった。
【シルヴィア】 じゃ、僕たちも、金槌を探しに行こうか。
【アンドリュー】 さて、どこから調べよう。
【シルヴィア】 ニョムヒダのガス室からでいいんとちゃう?
【GM】 では、キミたちも、部屋(A)を出るわけやね。
「キシャー!」という雄叫びに振り向くと、後ろで、
【ティガー】 「行くよ〜、ヒデヨシ〜」(笑)
冒険者たちは、エウロギアのアトリエの探索を始めた。
さまざまな部屋の壁を調べてると、いくつかの隠し扉を発見した。
隠し部屋には、たいがい宝箱があり、ワインレッドのミスリル製のチェイン・メイルをひとつ、通話の護符ひと組、魔晶石3つ(魔力は16、12、14)などを発見した。
【ティガー】 エルフの鍛冶屋に、見つけた宝物を見せに行こう。
「こんなの見つけた〜」
【GM】 エウロギアは、作業場(J)で掃除の監督をしてるよ。
【メイユール】 エウロギアさんに、「これ、もらってもいい?」って聞く。
「ちょうだい」
【GM】 「別にいいけど、それはゴミだぞ?」と、エウロギアは言う。
【アンドリュー】 『ゴミ』って、魔力16の魔晶石があるのに。
【GM】 このひとたちが使う魔力は桁外れなんで、そんなの、使い終わった残りカスだそうです。
【メイユール】 いいの、いいの。記念品やから。
【ティガー】 俺たちにとっては宝物、とは言えない(笑)。
【メイユール】 わたしは、ミスリルのチェイン・メイルをもらうけど、いい?
【シルヴィア】 いいんじゃない? シャーマンやし、ちょうどいいかもね。
【GM】 「ところで、私の金槌は、まだかね?」
【ティガー】 それは、もうちょっと待ってて。
銀の金槌を探して、ダンジョンを駆けめぐる冒険者たち。
やがて、隠し部屋(O)で隠し扉を見つけ、隠し部屋(Q)の、意匠を凝らした鉄の扉の前まで来ることができた。
しかし、隠し部屋(Q)の扉は魔法で閉ざされており、解除するためには、扉のくぼみに、何か特別なアイテムをはめ込まなくてはならないようだった。
これまでの探索で、それらしきアイテムを見たことはない。
普通に見つけられる隠し部屋、宝箱は、すでに発見しつくしている気もする。
【メイユール】 どこかで特別なことをしたら、鍵のアイテムのところに行けるのかも。
【シルヴィア】 この中でいちばん怪しいのは、ガス吐きニョムヒダの部屋かな。
【ティガー】 ガスのスイッチに乗ってる状態で他の部屋を調べたら、何かあるかも知れない。
そんじゃあ、俺がスイッチに乗る! (ころっ)抵抗には成功。
【GM】 なら、ティガーにいくダメージは9点。
【シルヴィア】 今のうちに、手分けして他の部屋を調査してこよう。
【アンドリュー】 とりあえず、私はこのガス室から調べてみるよ。
しかし、ティガー王子の献身的な努力は、無駄だった。
【シルヴィア】 今、カルファン騎士たちが掃除をやってる、作業場(J)には?
とくに何もなかった。
【メイユール】 エウロギアが眠っていた木の繭の下とか。
【アンドリュー】 木をのけて、調べさせてもらおうか。
しかし、何も見つからなかった。
【アンドリュー】 魂の保管庫を調べてみようか。
【ティガー】 死体をガーっとのけて(笑)。
気持ち悪いだけだった。
……このように、冒険者たちは試行錯誤をくりかえし、さんざん頭を悩ませた。
悩みに悩みぬいて、やがて、ダンジョンの構造自体が、大きなヒントになっていることに気づいた。
隠し部屋(O)の奥に、隠し部屋(Q)。そう、この二重底的構造が、宝のありかを示していたのだ!(ホンマかぃな)
「宝箱が二重底になっているのではないか」と思った冒険者たちは、さっそく、いちど調べて放置した宝箱を調べなおし、二重底を探すことにした。
そして、ゴミと言われた魔晶石を見つけた宝箱の底から、部屋(Q)の鍵であるアイテムを発見したのだった。
【アンドリュー】 よかったね〜。じゃあ、隠し部屋(Q)に走って行こか。
【ティガー】 で、扉のくぼみにアイテムをガーンとはめる。
【GM】 すると、「正解ですッ」と言う声とともに、スポットライトがキミたちを照らした。紙吹雪が舞い、どこからともなく、大勢の拍手と口笛の音が響く。
【シルヴィア】 毒ガスに耐えて、よくがんばった。感動した!(笑)
【ティガー】 ふざけんな〜!(笑)
【GM】 そして、「お入りください!」と、鉄の扉が上にスライドして開いた。
【アンドリュー】 中はどんな感じ?
【GM】 最初に目につくのは、部屋の中央に立っている、体長2メートルほどのニョムヒダの石像ですな。
【アンドリュー】 また?
【メイユール】 怖いなぁ。
【ティガー】 俺は走って入ってしまうやろな〜。
【アンドリュー】 それを、「王子、ガス室のことを思い出してくださいッ」って、止めるでしょうな。
【ティガー】 「今度は大丈夫!」って入る。
【シルヴィア】 僕は「子供だな」と思いながら、腕組みして見てる。
【メイユール】 わたしもその場で見てるよ。
【GM】 ということは、入ったのはティガーだけやな?
すると、ニョムヒダの石像の目が、赤く光った。
そして、生き物のごときなめらかな動きで、ティガーに殴りかかってくる。
【ティガー】 動くん? 「なに、これぇ?」
ガーゴイルならぬニョームヒダと冒険者たちの戦闘は、ほぼ一方的な形でティガーたちの勝利となった。
ちなみに、エウロギアが一緒にいれば、ニョームヒダは動く必要がなく、壊されることもなかった。
この部屋(Q)で銀の金槌を見つけた冒険者たちは、エウロギアにそれを届けた。
【GM】 作業場では、ようやく、掃除が終わったところです。
エウロギアは届けられた金槌を受け取って、「おお。これ、これ」と、大喜びする。
【シルヴィア】 これで、鎧の封印を解いてもらえるね。
【ティガー】 この恥ずかしい色も変えてくれ。黒にして欲しい。
【シルヴィア】 なら、僕は青がいいな。
【ティガー】 マジで?! なんで、その色なん?
【シルヴィア】 だって、ロ○の鎧みたいで、カッコいいやん(笑)。
【メイユール】 じつは、ティガーの鎧が羨ましかったんや(笑)。
【GM】 エウロギアは快諾してくれた。
「ただ、1ヶ月ほど時間がかかるけどね」
【ティガー】 は?? もうちょっと急いで。
【GM】 「何をそんなに急いでるのかね?」と、エウロギアは尋ねるよ。
【シルヴィア】 じゃあ、事情を全部説明しよう。ティガーの通訳で。
【GM】 説明された。
すると、エウロギアは、「別に1ヶ月待ってもいいんじゃないかね」と言う。
つまり、黒ずくめたちが「今から儀式をしないと、連合軍の侵攻に間に合わない」と言ってたんなら、彼らの『儀式』が完了するのは、その直前あたりということだから、鎧の封印を解くのを待ってもいいんじゃないか、ということやね。
【シルヴィア】 なるほどね。
【GM】 それに、ファンリーを取り戻すということは、王城でやってる儀式に殴り込みに行くということになるわけやから、うまくすれば、連合軍のランダース攻撃のどさくさにまぎれることができるかも知れない。
「そうすれば、相手にする敵も減って、楽になるだろう」
【シルヴィア】 言われてみれば、そんな気もしてきた。「初めから知ってるよ」という顔をしとくけど(笑)。
【ティガー】 ティガーは気づいてないから、「早くファンリーを助けに行こうや」とか言ってる。
【シルヴィア】 「その色のまま、エンディングを迎えたいか?」
【ティガー】 それはイヤ!(笑) 「じゃあ、黒くなるのを待つ」
【シルヴィア】 ところで、僕らの他の装備品に、魔力を付加してもらうことはできない?
【GM】 難しいね。現代に製作されたアイテムは、魔力を受け入れる器としてはかなり劣悪。ムリにエンチャントしようとすれば、魔力に耐えきれず壊れてしまうでしょう。
それに、魂晶石の残りも少ないしね。
【メイユール】 もう、魂晶石は作れないの?
【GM】 「作り方を忘れちゃったんだ。はっはっは」と、エウロギアは笑う。
というわけで、エウロギアは、鎧の封印を解く作業に取りかかる。
【ティガー】 じゃあ、1ヶ月、寝て待ってるよ。
【GM】 そんなヒマはないなぁ。魂の保管庫で、24時間体制でジーネの死体を見張ってないと、
【ティガー】 それは、カルファン騎士たちに見張ってもらっとく、ということで(笑)。
【アンドリュー】 あと、ランダースにスパイに行って、内部の情報を集めとかないといけないしな。
【GM】 そんな感じで、1ヶ月が過ぎてゆきます──。
しかし、この1ヶ月後、シルヴィア・アクアマリンの身に、信じられない災難が降りかかるのであった……!