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§烙印の天使:第22話§

海原の恋人

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 7人のカルファン騎士の事 ▽ ランダースへの船出の事 ▽ 海賊ロマンスの事

7人のカルファン騎士の事

【GM】 さて、メイユールとファンリーが、わたアメを買って宿屋に戻ってみると、ティガーと、ティガーの前に跪いた7人のカルファン侍の姿がある。
【メイユール】 すごいことになってるなぁ。ティガーはまだ、わたアメを食べてないし。
【ティガー】 ジーっと見られてるから、食べづらいねん。
「わたアメ、ほしいんかなぁ、うそぉ。こいつらのぶんも買ってきたら、見なくなるかな〜」とか思ってる(笑)。
【GM】 そんなこんなで、7人のカルファン侍がティガーの家来になった。
 ティガーの命令で何でもするけど、7人の命を預かってるということも、忘れないように。
 あと、主として、顔と名前ぐらいはおぼえておくようにね。
【メイユール】 がんばれ〜(笑)。
【GM】 まず、ティガーと肩を並べて剣を振るったことのある、7人のリーダー格のペドロ・チャベス。33歳。
 ファイター技能4レベル、セージ技能2レベル。
【ティガー】 じゃ、“ヒゲ”のおっちゃんで。
【GM】 勇猛な戦士、短気だけど情にもろい、ウベ・アルツェン。34歳。
 ファイター技能4レベル、セージ技能1レベル。
【ティガー】 短気なんか。なら、“いのしし”ね。
【GM】 520年にゴラン草原で反乱軍と戦ったときに右目を失い、以来、黒い眼帯をあてているベテラン剣士、ベルント・シュナイダー。40歳。
 ファイター技能3レベル、セージ技能1レベル、レンジャー技能3レベル。
【ティガー】 ほい、“政宗”って呼ぶわ。
【GM】 銀の長髪、クールな美形の31歳、アンドリュー・ギルバード-スコット。
 ファイター技能3レベル、セージ技能1レベル、シャーマン技能2レベル。
【ティガー】 “アンディー”〜♪
【GM】 体格は横綱、その剛腕から繰り出される必殺の一撃と、頑強な守備が自慢。だけど、気は優しいグリスリー・セラ。33歳。
 ファイター技能3レベル、セージ技能1レベル、バード技能2レベル。
【ティガー】 じゃあ、“クマさん”ね。
【GM】 その次は、逆にチビなひと。おでこが広く、生え際デンジャラス。地理・伝承オタクで、剣を振るうより読書が好きな、トム・クリステンセン。29歳。
 ファイター技能1レベル、セージ技能4レベル。
【ティガー】 うん、“チビ”。
【GM】 最後は、7人のうちの最年少、27歳の騎士スティーブ・エルキント。
 ファイター技能3レベル、セージ技能1レベル。あと、戦神オーシュの信者で、プリースト技能を1レベル持っている。
【ティガー】 “若様”って呼んだろ。
【シルヴィア】 若様はティガーやろ。
【GM】 ……ことごとく、変なあだ名つけやがって。
【ティガー】 いいやん、フレンドリーにいこうよ(笑)。
【メイユール】 王子がそう言ってるんだから(笑)。
【シルヴィア】 家来というより、友達感覚なんやな。
【ティガー】 一気にパーティが賑やかになった。
【GM】 よかったな。
【ジーネ】 ちっともよくない。むさいおっさんたちと一緒にいるのはイヤだから、ティガーを放って行こうかしら。
【GM】 うん、パーティから抜けるのは、プレイヤーの意思で自由に決定できるよ。
 ジーネは、離脱するのかい?
【ジーネ】 ……なんで、私が抜けることになるの? 私がティガーを置いて行くと言ってるのに。
【メイユール】 パーティのリーダーは、ティガーだから。
【シルヴィア】 ファンリーが、ティガーのいるほうに残るから。僕も残るし。「王子と旅をしたシルヴィア」と、アクアマリン史に書いてもらえるかも知れないから(笑)。
【ジーネ】 いいよ、ファンリーを強引に連れて行くもん。
【GM】 それは誘拐やん。
【メイユール】 そうなると、わたしらがジーネをやっつけに行かなアカン。
【ティガー】 わかった! このキャンペーンのラスボスは、ジーネ!
【シルヴィア】 斬新なキャンペーンやなぁ。
【ジーネ】 なんでじゃあーッ!!
【GM】 ──などと、キミたちは、いつものように賑やかに過ごしてるわけやね。
 ところで、船でランダースに向かえるかどうか、アルヌーさんに打診するんじゃなかったっけ?
【シルヴィア】 そうそう。王子が帰ってきたら、城に行くつもりやったんや。
【メイユール】 じゃ、わたアメも食べたし、出かけようか。
【ティガー】 カルファン侍たちは、留守番しててな。
【GM】 「御意!」
【メイユール】 ファンリーは?
【ティガー】 「一緒に行こう」って誘う。
【ジーネ】 あんな見ず知らずのむさいおっさんたちの中に、ファンリーを残してくるなんて、できないもん。何をされるか、わからんからな。
【GM】 ファンリーは困ったように、
「ジーネさんの、わたしへの愛情は、大変うれしく思います。
 でも、これからは、その愛をもっと多くの人々に向けてみませんか? そうすれば、きっと、故郷の神殿をお継ぎになるにふさわしい司祭様になられると思います」と、ジーネに言う。
【ジーネ】 つまり、今の私は神殿を継ぐにふさわしくない、と? いちおう、私、3レベルなんですけど〜。
【GM】 いや、技術に関しては優秀やと思うよ。ただ──。
【ティガー】 ──人格がな、問題やねん(笑)。
【ジーネ】 なんでじゃあーッ!?
【GM】 ――などと言いつつ、キミたちは、城にやって来ました。
 城門で見張りをやってる衛兵が、用向きを尋ねてくるよ。
【シルヴィア】 「レギト王子とその従者なんだけど、アルヌーさんに相談したいことがあるんです」と、言う。
「取り次いでもらえませんか?」
【ジーネ】 『従者』ってなんだかな〜。むしろ、私たちがティガーを利用してるんだよ。ティガーはアイテム扱い。
【シルヴィア】 利用するのは、王子という肩書だけでええねん。せっかくの豪華な肩書なんやし。
【ティガー】 いくらでも使ってやって(笑)。
【メイユール】 いよっ、太っ腹!(笑)
【GM】 アルヌーさんはちょっと忙しいので、昼食時なら、会見の時間を空けることができるらしい。もしよければ、食事をともにしよう、とのこと。
【ティガー】 やりぃ!
【GM】 では、時間は流れてお昼になりました。キミたちは、アルヌーさんとともにテーブルを囲む。
 まあ、城での食事ではあるけれど、そんなに豪華なものじゃないよ。キミたちが酒場で食べるものと、それほど変わらない。
【メイユール】 しょうがない、戦争が終わったばかりやもん。
【シルヴィア】 でも、タダやから。全然OKです。
【GM】 「それで、ご用というのは何でしょう、レギト王子?」
【ティガー】 えっ、俺? じゃあ、「詳しい話は仲間たちから聞いてくれ」と、答える。
【メイユール】 やっぱり(笑)。
【ジーネ】 えーっと、「ランダースに行きたいんだけど、北に船を出す予定はある? ランダースに海軍を出すとか」と、尋ねる。
【GM】 予定ねぇ。ゴルドの予定というか、連合軍のランダース侵攻の予定なら、あるよ。
 ゴルド解放がつつがなく果たされたので、連合軍は、予定通りにランダース侵攻作戦を開始する。
 こんな感じで――。

 ロンデニア王国軍が9月18日にロンデニアを発ち、10月15日にスパニアに着く。
 ウィス王国軍は9月29日にウィスを発ち、10月10日にスパニアに入る。
 スパニア王国に集結したロンデニア・ウィス・スパニアの3国は、10月23日から北上を開始し、ランダース王国領の砦を撃破しつつ、王都ランダースを目指す。
 予定通りにいけば、11月半ばに、王都への侵攻を開始することができる。
 ゴルド王国は、10月15日に海軍をランダース王国領ソラに進撃させ、その後、連合軍の動き合わせて、王都ランダースを北から攻める。

【ジーネ】 10月か……あと1ヶ月もある。ちんたらちんたら、スパニア砂漠を歩いて行こうか?
【ティガー】 「便乗とかじゃなくて、俺らに船を貸してくれたりはしない?」って聞く。
【メイユール】 王子様やし。
【GM】 「船ですか? ランダースから接収した最新艦は無理ですが、我が国所有のアイリス級輸送戦艦ならば、お貸しすることが可能でしょう。
 しかし、なぜ?」
【ジーネ】 それを聞かれると困るんやわ〜。
【シルヴィア】 「僕らには、ランダースと戦わなくちゃいけない、個人的な理由があるんです」と、答えとこう。
「10月の侵攻のための先見隊ということで、船を出してもらえませんか?」
【GM】 「まあ、いいでしょう。しかし、ソラには行けませんよ」
【シルヴィア】 どこか人目につかないところで、上陸させてくれればいいです。
【ジーネ】 その船って、何人ぐらい乗れるの?
【GM】 『乗れるの』というより、最低80人乗っとかないと、動かせないよ。
【シルヴィア】 水夫がいるってことか。
【GM】 「お望みなら、水夫もお貸ししてよろしいが。
 そのかわり、ゴルド解放に尽力いただいた件は、チャラということで」
【メイユール】 戦争の報酬は出ないってこと? えぇ〜!?
【GM】 メイユールには、ゴルド解放直前までの報酬をあげてるやんか。
【メイユール】 まあ、そうだけどぉ。
【シルヴィア】 船と水夫を貸してもらうんやし、これぐらいはガマン、ガマン。
【ティガー】 ちなみに、ゴルド解放の報酬は、いくらなん?
【GM】 え〜、傭兵には、ひとりにつき400フィスが支払われます。ひと段落ついたら、配給が始まる予定。
【ジーネ】 400ぅ〜?!
【シルヴィア】 ま、そんなもんでしょ。
【ティガー】 じゃあ、船と水夫を貸してもらってチャラにするほうが、絶対に得!

ランダースへの船出の事

【GM】 「では、これから大急ぎで出航準備に取りかかりますので、6日後、港に来てください」と、アルヌーさんは言う。
 そして、昼食の時間は終わり、キミたちは宿屋に戻って来た。
 何か準備などがあるなら、出航前にやっといてね。海に出てから慌てても、遅いよ。「帰って!」というなら、いつでも引き返すけど(笑)。
【シルヴィア】 えらい手間やな。
【ジーネ】 じゃあ、一般装備でも買いそろえておこうかしら。何か買うものある?
【ティガー】 変な物、売ってないかなぁ。あ、釣り竿買おっと。
【メイユール】 わたしも。
【GM】 釣り竿は5フィス。で、糸が300フィスで、針が2800フィス。
【ティガー】 どんなんやねん。普通の釣りセットでいい。
【GM】 釣りセットは、5フィスで売られてる。
【ティガー】 エサは、その辺でミミズでも掘って捕まえとこう。
【GM】 ほじくり返されたミミズは、「何すんねん」と、身をよじらせながら抗議する。
【ティガー】 「エサにすんねん」
【GM】 「やめてくれッ!」
【メイユール】 あはは、イヤがられてる(笑)。
【ジーネ】 私はダガーを5本買った。
【ティガー】 5本も?
【シルヴィア】 上着をバッと広げたら、その裏に装着されてそうやな。
【ティガー】 凶悪になってきた(笑)。
【GM】 月夜の路地、コツコツと響く自分ではない靴音。不安にかられて振り向いた乙女が見たものは、青闇に踊る白刃と、ニヤリと笑うジーネの姿。
 ――そう、これが、ゴルド王国に“ジーネ・ザ・リッパー”が誕生した瞬間。
【メイユール】 (こわ)〜。夜のひとり歩きは控えようっと。
【ジーネ】 やめーい! まあ、この冒険が終わったら故郷に帰るから、いいけどさ。
 帰って、育ての親の後を受け継いで、神殿長になるんだ♪
【ティガー】 ……なんか、恐ろしい神殿になりそう……。
【メイユール】 ジーネって、いいとこの娘やったんやな。
【ジーネ】 本当の両親は、狩人なんだけどね。なぜだか知らないけど、シルファスの神殿に預けられて、神殿長に育てられたんだ。
【GM】 まあ、ジーネが作った設定によると、故郷は辺境の小さな村らしいから、教会って感じの神殿なんやろけどね。
【メイユール】 そうなんか
【GM】 でも、大丈夫。仲間たちはそれを知らないから、ジーネさえ黙ってれば、真実は闇の中。
【ジーネ】 じゃあ、黙ってよう。
【メイユール】 わたしらは、「ジーネは神殿長の跡継ぎ」としか、認識してないんやな(笑)。
【シルヴィア】 「ジーネってすごいなぁ」
【ティガー】 俺、ペットを買って行こっかな〜。目つきの悪い雄のニワトリで、名前はヒデヨシ。
【メイユール】 じゃ、わたしは雌鶏のネネ。つがいや。
【GM】 ファンリーは、魔術師ギルドで酔い止めの薬を調合してきてもらった。
【ティガー】 船酔いしてたもんな。
【シルヴィア】 しっかりしてるね。
【ジーネ】 この時代に、酔い止めなんかがあるのか?
【GM】 あるよ。薬師がおるんやから。
【ジーネ】 シルヴィアが調合してあげればよかったのに。
【シルヴィア】 僕はセージ技能を1レベルしか持ってないから、難しいかな。セージに関しては、ティガーのほうが上なんやでな。
【ティガー】 でも、俺が調合すると、お菓子みたいな薬になる(笑)。
【メイユール】 あ、そっちのほうがいい!(笑)
【GM】 準備がすんだのなら、6日後になるけど、いいかね?
【シルヴィア】 いいよ。準備OK。
【GM】 では、船出の日の朝になりました。
 解放作戦のときにキミたちがダークエルフと死闘を繰り広げた、例の港から、アイリス級輸送戦艦『フランベルジュ号』は、海原へくり出した。
【ジーネ】 あの戦いはすごかったな〜。18ラウンドもかかったし。
【GM】 アイリス級の船は足が遅いので、上陸ポイントまで14日かかる見込みです。
 9月に入ってだいぶ涼しくなってるので、8月にウィスで船に乗ったときよりかは、いくぶん過ごしやすいよ。
【シルヴィア】 じゃあ、僕は、カルファン騎士たちと剣の修行をしておこう。
【ジーネ】 剣の修行って、それじゃソーサラーというより、ファイターじゃん。
【シルヴィア】 めざすのは魔法戦士やからね。体も鍛えとかんと。
【ティガー】 「よくやるわ〜」って、見とこう。
【ジーネ】 私は、いつかバードになって日銭を稼ぎたいから、竪琴の練習をしとります。
【メイユール】 バードになる動機が不純やな(笑)。
【ティガー】 俺は釣りしとくわ。バリスタの横で。
【メイユール】 ティガーの反対側で、釣りをしとく。ネネを頭に乗せて。
【シルヴィア】 そこで卵を産まれたら、大変やな。
【GM】 針路を北にとったところで、追い風に変わった。フランベルジュ号は、3枚の帆をパンパンに膨らませて、海面を疾駆する。
 航海はきわめて順調で、30分ごとに見張り台から響く報告の怒鳴り声は、常に「問題なし!」。
 操舵手も、鼻唄まじりで舵をとっている。
【ジーネ】 食料の心配はないよな。ティガーとメイユールが釣りをしてるから。
【GM】 そんな不確定要素に頼らなくてもいいように、航海に必要な食料や水ぐらい、ちゃんと積んでるよ(笑)。
 まあ、日持ちを考えて、塩漬けにされた肉だとか、魚の燻製だとか、ピクルスみたいな漬物だとかやけど。
【ティガー】 じゃあ、ピクルスを食べてる。
【GM】 いくら王子様でも、勝手に食べたら、船長に怒られるよ。
【ジーネ】 さるぐつわをかませて、ティガーをマストに縛りつけといてやろう。
【GM】 そんなことしたら、今度は、カルファン騎士たちがジーネを怒るよ。
【ティガー】 騎士たちに、「ジーネに変なことされたぁ」って言う(笑)。
【GM】 するとファンリーが、「よしよし」と、ティガーを慰めてくれる。
 よかったな、王子。ちやほややん(笑)。
【ジーネ】 ちやほやっちゅーか……おとなしく釣りでもしときなさい。
【メイユール】 わたしは、さっきからずっと釣りしてるねんけどね。GM、何か釣れた?
【ティガー】 「ワカメが釣れた〜」とか、そんな感じかも。
【GM】 なら、今夜は海草サラダやね。
 船長が、「これは、王子様がお釣りになられたワカメだ! 皆、心して食すように」と、言うでしょう。
【ティガー】 そんなん、大声で言うなっ!(笑)
【メイユール】 引っかかっただけやもんな。
【GM】 メイユールは、クラゲを引っかけたよ。
【メイユール】 ワカメと一緒に、サラダに入ってそう。
【GM】 そんな感じで7日が過ぎ、スパニア西の沖合に差しかかったときのこと。
 見張り台から、「右舷に船影あり!」と報告が入った。
【ティガー】 見に行こう。
【GM】 見ると、まっすぐこちらに向かってくる、1隻のアイリス級輸送戦艦の姿がある。
 そのマストには、髑髏の旗がはためいている。
【ティガー】 海賊や、初めて見た。「お〜い!」
【メイユール】 喜んでるし(笑)。
【GM】 とりあえず、フランベルジュ号は、逃げて海賊をやり過ごそうとする。取り舵にきったり、面舵にきったり。
 しかし、海賊船の操舵手は、なかなかの腕前。小回りで追跡し、フランベルジュ号との差を縮めてくる。
 覚悟を決めたフランベルジュ号の船長は、戦闘態勢に入ることを宣言した。
【ジーネ】 この船で戦えるのは、何人ぐらいや? カルファン騎士を除けば、私らだけか。
【GM】 いや、いちおう水夫も戦う訓練は受けてるよ。がちゃがちゃとクロス・ボウを手に持って、甲板に出てくる。
 もちろん、左右に1門ずつ装備されたバリスタにも人員がとりつき、すぐさま力を合わせて攣るを巻き上げた。
【メイユール】 がんばれ〜。
【GM】 当然、海賊船も飛び道具を用意しているので、フランベルジュ号と海賊船の間で、飛び道具の撃ち合いになる。
【ティガー】 ヒデヨシを抱いて、「わぁ」って見てよう。
【GM】 そんなティガーの足下にも、クォーレルが「ごずん!」と突き刺さる。ヒデヨシは、「逃がせ! オレを逃がせ!」と、大騒ぎしている。
 ネネは、ショックのあまり気絶した。卵がころりんと甲板に転がる。
【メイユール】 あらら。
【GM】 しまいに海賊船からフックが投げつけられ、接舷されてしまった。
「ごん、ごん、ごん!」と渡し板がかけられて、武器を手にした海賊たちが、「わ〜ッ!」と鬨の声をあげて、乗り込んでくる。
【シルヴィア】 敵の装備は?
【GM】 手にしてるのは、ソード系の武器や、メイス系の武器がほとんど。鎧は、普通の服だとか、ハード・レザーだとか。
 海賊というより、冒険者っぽい感じがするね。
 で、キミたちの装備は、どうなってるのかね?
【ティガー】 普通の服に、カルファンの剣。
【ジーネ】 さすがに、チェイン・メイルは着てないよな〜。スモール・シールドに、プラス1モーニングスターは持ってるけど。
【GM】 普通の服なら、防御力1のクロース扱いやから、数値の変化に気をつけてください。
【ジーネ】 海に出るんだから、ハード・レザーを買ってきとけばよかった。
【シルヴィア】 そういうことを含めての買い物タイムやったんやろ。
【メイユール】 わたしはハード・レザーを着てます。
【シルヴィア】 いつもどおり、魔法のクロースを着てるよ。
【GM】 そうこうしてるうちに、甲板だとか、他の渡し板の上などで戦闘がはじまった。
 キミたちの近くにも渡し板がかけられて、海賊たちがやってくるよ。
【シルヴィア】 迎え討ってやる。〈プロテクション〉を仲間全員にかけておこう。(ころっ)

海賊ロマンスの事

 かくして、冒険者たちと海賊との戦いが始まった。
 ティガーは海賊にちくちくとダメージを与えてゆく。
 並んで戦うジーネによる敵の頭を叩き潰さんとする必殺の一撃は、必死に避ける海賊たちをはずして、床板を叩くばかり。

【GM】 足下に穴が開いたりしてな。
【メイユール】 木片とか飛び散ってそう。
【ティガー】 あのおばちゃん、怖いよ〜。
【ジーネ】 誰がおばちゃんかッ!
【ティガー】 貫祿(かんろく)がね。
【メイユール】 気迫がね。
【GM】 オーラがね。
【ティガー】 「来るもん、全部潰したる〜」って(笑)。
【ジーネ】 なんでじゃあーッ!

 ハード・レザーを着るメイユールも前線に立ち、〈スリープ〉を炸裂させまくった。眠らされた海賊たちは、次々と渡し板から落ちていく。
 前線の数を減らしても、後から後から海賊たちが板を渡って押し寄せ、反撃してくる。

【GM】 その中のひとりの男が、「メイユールじゃないか!」と、声をかけてきた。
【メイユール】 お? 誰だろ。わたしの知ってる人物ですか?
【GM】 よ〜く知ってる人物やね。名前はロートシルト、23歳の戦士です。
 メイユールのキャラ設定にあった、ブレインで別れたという、キミの元彼氏だよ。
【ティガー】 彼氏がおったんや!
【メイユール】 うん。ケンカ別れして、酒場でヤケ酒飲んでるところをスカウトされて、わたしはゴルド解放組織に入ってん。
【ティガー】 そうやったんか(笑)。
【メイユール】 そう。酔っぱらってたから、わけがわからないまま連れていかれた(笑)。
【ジーネ】 今は、わけがわからないまま、私たちと一緒に旅をしてるんやね。
【メイユール】 ん? ファンリーのことは聞いてるし、解放作戦が終わったら旅に出るつもりだったから、ついてきてるだけやで。
【シルヴィア】 「せっかく仲良くなったんだし、一緒に行こう」って感じで、なしくずし的に仲間になったんやな。
【ジーネ】 いや、「ファンリーの秘密を知ったからには、ついてきてもらおう」って感じやろ、どっちかというと。
【ティガー】 そっか。
 そうやって、裏でジーネが脅してたんか。
【メイユール】 うん。モーニングスターを振り回しながら、脅された(笑)。
【ティガー】 「ついてこないと、頭、潰しちゃうよ」って?
【GM】 「こんなふうに」って、そばにいた猫の頭を、叩き潰したしな。
【メイユール】 それを見たわたしは、「ああーッ、すみません! ついていきますぅ」と、命乞いしたわけ。
【シルヴィア】 すごいパーティやな。
【ティガー】 ひとりだけな。
【ジーネ】 なんでやねん!
 たったひとり殺したぐらいで、なんでこんなに言われなアカンねん、ホンマに。
【シルヴィア】 ゼロと1では大きな違いやでな、殺人は。
【ジーネ】 そんなん、私の攻撃を避けられなかった奴が悪い!
 司祭に対して失礼やぞ、みんな。
【ティガー】 だって、自分で怖いこと言ってるねんもん(笑)。
【GM】 ま、司祭として扱われたいなら、司祭らしく振る舞わんといかんね。
【シルヴィア】 ジーネは、故郷に帰って神殿を継ぐんやろ? がんばれ。
【GM】 さて。ロートシルトは、メイユールを見て驚いている。
 そして、「こんなところで、何をやってるんだ?」と、尋ねてくるよ。
【メイユール】 「そっちこそ!」と、わたしも驚きとまどってる。

 そうこうしているうちに、戦闘はさらに進み、やがて、旗色が悪くなった海賊たちは降伏し、捕縛されてしまった。
 ちゃっかりメイユール側についた、ロートシルトを除いて……。

【シルヴィア】 うまく立ち回る奴やね、ロートシルトは。やるな。
【GM】 こうやって生きてきたんやろね。むろん、数ラウンド前まで仲間だった海賊たちからは、激しいブーイングを浴びてるけど(笑)。
【ジーネ】 メイユールは、こんな男のどこがよかったんだ?
【メイユール】 見た目がカッコいいから(笑)。
【シルヴィア】 ミーハーなんやね。
【メイユール】 それより、ロートシルトは、なんで海賊なんかになってるのよ?
【GM】 ブレインでキミと別れた後、彼は、当初の目的どおりにスパニア王国に入り、傭兵になった。
 ところが、かの国はすでに傭兵で溢れ返っており、また、大規模な戦闘があるわけでもないので、ほとんど稼げない。
 で、知り合った傭兵たちに誘われて、私掠船に乗り込み、海賊業に手を染めることになったんやね。
【ジーネ】 腐っとるな。
【GM】 ロートシルトは、「また、昔みたいに仲良くやろうぜ」と、メイユールに言ってくるよ。
【メイユール】 せっかく、過去を忘れかけてたのにぃ(笑)。
 こいつ、ジーネにあげようか?
【ジーネ】 いらん。
【ティガー】 カッコいいひとやから、神殿に飾っとけば、女信者が寄ってくるかもよ。
【ジーネ】 人間で大事なのは、内面です。
【GM】 ──ジーネが、そんなことを言うてもな〜(笑)。
【シルヴィア】 これほど説得力がない言葉も、珍しいな(笑)。
【ジーネ】 なんでじゃあーッ!
【メイユール】 で、どうする? ロートシルトがついてきてもいいの?
【シルヴィア】 僕はどっちでもいいよ。
【ティガー】 ファンリーに変なことしないなら。
【ジーネ】 なんか、だんだん大所帯になっていく……。
【メイユール】 うちら、カリスマ冒険者やから。
 んじゃあ、ついてきてもいいかな。やっぱり、メイユールには、まだ未練があるかも知れないし。
【ジーネ】 顔がいいから?(笑)
【メイユール】 うん、久しぶりに見たし(笑)。
「わたしの言うこと聞くんなら、ついてきてもいいよ」と、ロートシルトに言う。
【GM】 「おまえ、変わったなぁ」
【メイユール】 「あんたのせいよ!」
【GM】 「まあ、いいや。また、楽しくやろうぜ」と、ロートシルトは馴れ馴れしくメイユールの肩を抱く。
「皆さんもよろしく!」
【メイユール】 「ま、仲良くしてやって」
【ティガー】 年上のひとやから、いろいろたかろっかな。
【GM】 しかし、ロートシルトは、男には冷たいよ。さっきも、簡単に仲間を裏切ってたやろ?(笑)
 女には見境がないけど。
【メイユール】 未成年には手を出したらアカンよ。
【GM】 大丈夫。成長するのを待つから。
【ティガー】 待つんや(笑)。
【ジーネ】 こいつには気を許すわけにはいかんな。
【メイユール】 それじゃ、ニワトリの世話をといてね、ロートシルト。いちおう、メスやし。
【GM】 「メスか〜。うーん」と、悩んでる。
【メイユール】 悩むんか(笑)。
【ティガー】 ちょっかい出されたら、ヒデヨシが怒ったりして。「コケーっ」
【GM】 リミットブレイクして、七色のニワトリに変化するかもね。
【ジーネ】 どんなニワトリやねん。
【GM】 さて、戦いに敗れた海賊船はだ捕されて、捕虜となった海賊ともどもゴルドに回送される。そのため、フランベルジュ号の船員が少し減ったけど、航行には支障ないのでご安心を。
 フランベルジュ号は、ランダース南西の上陸地点をめざし、再び海原を進みます。

 その途中、フランベルジュ号をジャイアント・オクトパスが急襲した!
 船に巻きついた大ダコの長く巨大な足が甲板を漁り、エサを捕らえようとする。

【ティガー】 タコ! たこたこたこたこ、たこ焼き〜!

 驚異の大ダコは、ティガーの3回りクリティカルで足を切断され、メイユールの〈スリープ〉で眠らされ、わずか1ラウンドで撃退されてしまった。
 ティガーが切った巨大な足は、その日の夕食の材料となった。

【GM】 出航から14日後、フランベルジュ号は、上陸ポイントであるランダース南西の海岸に到着しました。
 奥地には森が広がる無人の野で、誰かに見つかる心配はなさそう。
【シルヴィア】 ちゃんと鎧に着替えて、武装を整えてから上陸しよう。
【ティガー】 じゃあ、イヤイヤあの青い鎧に着替えた。
【GM】 武装したティガーが船室から甲板に出ると、船長以下乗組員たちが整列して拍手で出迎えてくれた。
「似合ってますぜ、王子!」
【ティガー】 似合うわけねえーッ! 脱ごうっと。
【メイユール】 「まあまあ、今だけガマンすればいいから」と、笑いをこらえながら、慰めてあげる。
【ティガー】 やっぱり、笑われてるぅ〜!
【GM】 「そんなことはありませんぞ!」と、カルファン騎士“いのしし”が言う。
「そのお姿こそ、王子にふさわしい!」
【ティガー】 いやだ〜!
【GM】 そんなこんなで、キミたちは、小舟に分乗して浅瀬に近づき、膝を濡らしながら上陸を果たした。
 ついに、ランダースの地に足を踏み入れた!

÷÷ つづく ÷÷
©2003 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2003 Jun Hayashida
Map ©2002 Moyo
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お名前
ひと言ありましたら
 
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