▽ 転がり込んできた事件の事 | ▽ 酒場での乱闘の事 | ▽ 詰め所で取り調べの事 |
【GM】 それでは、始めましょうか。んじゃ、簡単にキャラクター教えといて。
【プレイヤー1】 ファイター・セージのティガーくん。17歳の男ね。
【プレイヤー2】 ファイター・プリーストのジーネです。15歳の女性で、宗派は至高神シルファスです。
【プレイヤー3】 同じくファイター・プリーストのランディ・アクアマリン。男で18歳。宗派は戦神オーシュ。
【プレイヤー4】 36歳のシーフ、カバンタ。男。
【GM】 シーフを除いて、すべてファイター系か。すごい偏ったパーティやね。なかなか苦労しそうで楽しみだ(笑)。それでは、軽く舞台の説明をしとこう。
新しいキャンペーンのスタート地点は、レムリア暦529年のオムスク地方オレンブルク王国の王都オレンブルク。
ちなみに、この時代の地図はこんな感じね。
【カバンタ】 オレンブルクが大きいのは相変わらずやけど、この時代はロットバイルってとこも広くなってんのか。
【GM】 そう。この時代は、520年にロットバイル王国がカルファン王国を滅ぼして始まった、後に『十四年戦争』と呼ばれる戦争の10年目の年。
この10年の間に、ファラリア王国、トロワ王国が地図から姿を消し、それらを呑み込んだロットバイル王国の勢力が、ピークに達している時代。
【ランディ】 オレンブルクは大丈夫だろうか。
【GM】 いまのところ、大丈夫。ロットバイル王国とは、十四年戦争が始まる前に、すでに不戦協定を結んでたしね。ただ、友好的な間柄、というわけではないよ。ちょっと前まで、一触即発な感じやったし。
【ジーネ】 不戦協定を結んでるのに?
【GM】 事の発端は、ロットバイル王国が“邪神の眠る島”クラーダ島のランダース王国を後押しして、クラーダ島の制覇に乗り出したことにある。
地図を見てもらえればわかると思うけど、この島を押さえると、なんと、オレンブルク王国の喉元に剣を突きつける恰好になる。
【ティガー】 そんでオレンブルクが「やめろ」と言うたんやな。
【GM】 「やめろ」というか、クラーダ島の東諸国、ロンデニア王国とウィス王国を後押しして、ランダースの侵攻を食い止めさせた。
【ジーネ】 なんで自分たちで戦わないの?
【GM】 オレンブルクが直接出向けば、ロットバイルが乗り出してこざるを得ないし、その逆にロットバイルが出ていけば、オレンブルクが派兵せんとアカンようになるからね。急所を守るためには。
しかし、両王国とも、なるべくなら自国の兵士を消耗させたくない。
いちおう、建前は「不戦協定の遵守のため」。
【ジーネ】 だからといって、他の国に戦争させんでもいいのに。
【GM】 後にわかることやけど、オレンブルク王国はロットバイル王国軍の戦力を過大評価してた。ロットバイルの勢いに恐れをなして、直接対決を避けつづけてたんやね。
【カバンタ】 弱腰政策やな。
【GM】 そうやね。アリステア地方の制覇を夢見るオレンブルク王国は、オムスク地方の小競り合いで兵力を削られるのを、嫌ってたわけ。
【ティガー】 で、邪神の眠る島の戦争はどうなってんの?
【GM】 邪神の眠る島は、ランダース王国のある西島と、ロンデニア・ウィス王国のある東島に分かれてるね。
522年の段階で、ランダース軍は西島のほとんどを制覇していた。残すはブレインのみ。
そのブレインを援護するために、ロンデニア・ウィス軍は西島に派兵。ブレイン西で、ブレイン攻略に乗り込んできたランダース軍と激突し、これを退けた。
【ランディ】 オレンブルク勢の勝利やな。
【GM】 その後、何度か小競り合いを続けているうち、525年にランダース領スパニアで大規模な反乱が起き、スパニアは独立を回復してしまった。
それによって、ランダースの勢力は、西島において北と南、本国とゴルドに分断されてしまった。
【ティガー】 あーりゃりゃ。補給線が……。
【GM】 ランダースの補給は、ほとんど海路に頼ることになるね。
一方その頃、大陸では、ロットバイル王国がいよいよオレンブルクの隣国ダンフリーズ王国に手を伸ばしてきた。
オレンブルクは、ロットバイルとの戦いに備えるため、ほぼ大勢喫したと判断した邪神の眠る島から手を引き、ロットバイルも、大陸での戦争のために、ランダースへの援助を打ち切った。
そうして現在、529年を迎えた。
【カバンタ】 そういうややこしい話は、すぐに忘れるやろけどな。
【GM】 別に忘れてもらってもかまわないよ。単なる時代背景やから。
みんなは、そういう時代のオレンブルクにいます。
【カバンタ】 まずは、このオレンブルクの街から征服していくわけやな。
【ランディ】 カバンタはロットバイルのスパイやったんや(笑)。
【GM】 いまは7月某日、蝉時雨のお昼どき。キミたちは、オレンブルクの北区の宿場街にある、一軒の宿屋兼酒場で昼食を食べています。
ところで、みんな、すでに知り合った仲なのかね?
【ランディ】 僕はアリステア地方のセフェリア王国から来たばかり。
【カバンタ】 隣のメカリア王国から来たばかり。
【ティガー】 オレンブルクの小さな村から来たばかり。
【ジーネ】 私はその宿屋で働いてます。
【GM】 じゃあ、知り合いではなさそうやね。
みんな、バラバラの席でそれぞれ昼食をとっております。
【ティガー】 オムレツだー!
【ランディ】 客は僕たちだけ?
【GM】 いや、他に3人ほど冒険者らしき男たちがいる。装備品がピカピカであるところを見ると、キミたちと同じルーキーらしいね。
【ランディ】 ルーキーズやな。
【GM】 キミたちも、じゅうぶんルーキーだが(笑)。
【カバンタ】 それにしても、寂れた酒場やな、おい。
【GM】 夕食になったら、もっと増えると思うよ。オレンブルク王国には、まだ荒らされてない遺跡がたくさんあるので、冒険者がいっぱい集まるから。
あと、現在は“邪神の眠る島”に儲け話がゴロゴロしてるんで、クラーダ島に渡ろうとする冒険者でオレンブルクはさらに賑わってる。島への交通は、オレンブルク港から邪神の眠る島のロンデニア王国へ向かう海路だけ。
昼食時にすいてるのは、昼間、冒険者たちは出かけてるからでしょう。
【ジーネ】 私もその島に渡りたいんだけど、いかんせんお金のほうが……。
ってことで、この酒場で働いてるんですね。ここに来るまでも、何件かの店で働いてきたけど。
【ティガー】 オムレツにケチャップいっぱいかけるから持ってきて、メイドさん。
【ジーネ】 メイドじゃなくて、ウェイトレスと呼んでくれぃ。
【GM】 似たようなもんでしょ。宿屋で働くなら、掃除・洗濯も必須やから。
じゃあ、ジーネには一般技能『メイド』を3レベルあげよう。
【ジーネ】 嬉しいような、嬉しくないような……早く、冒険者として稼ぎたい。
【GM】 ちなみにメイドさんも、カウンターの隅っこでまかないの昼食を食べてるよ。ただし、そうしながらでも、用があれば働かなくてはならない。
【ティガー】 早く、ケチャップぅ。
【GM】 3人組の冒険者たちも、「おーい、ビールの追加だー」とご注文。
【ジーネ】 ああ、スパゲッティがのびてしまう、と嘆きつつ、注文の品を運びましょう。
右手にビール、左手にケチャップ。
【ランディ】 まかないは、合間、合間に食べるものです。
【GM】 そんな感じで穏やかに流れるお昼どき、なごやかな雰囲気をブチ壊すように、酒場の扉が乱暴に開けられた。
そして、質素な貫頭衣を着た女司祭がひとり、文字通り、酒場に転がり込んで来た。
転んだ女司祭はカウンターの手前まで滑り、彼女の荷物、薬草だの何だのが床一面に散乱する。
【カバンタ】 拾え、拾え〜。
【ティガー】 拾ってどうすんのかね?
【ランディ】 素直に返すとは思えない(笑)。
【ジーネ】 女司祭さんにお近づきになるきっかけにするとか。女司祭さんって、若いの?
【GM】 見た感じ、14、5歳ってとこかな。ジーネと年端は変わらない、黒髪の少女です。聖印からすると、どうやらミフォアの司祭のようやね。
ミフォアの女司祭は、散らばった荷物の中から古びた人形を拾い上げ、カウンターの前まで後ずさる。
その怯えた視線の先、酒場の入口から、黒装束に身を包んだ4人の男が侵入して来た。闖入者たちは黒頭巾の黒マスクをしてるんで、いかにも悪者って感じの目ぐらいしか覗いてない。
【ティガー】 うわ〜、昼間から暑そう。
【ランディ】 怪しすぎる奴らやな。
【ジーネ】 正体隠してるつもりかも知れんけど、余計に目立つやろに。
【GM】 オレンブルクは冒険者の国やからね、こういう怪しい輩はゴロゴロしてる(笑)。
【カバンタ】 オレらもその怪し〜ぃ奴らのひとりやからな。
【ジーネ】 私を一緒にしてもらっちゃ、困るな。
【GM】 で、酒場の親父、ジーネの雇い主さんが「おいおい、店内で騒いでもらっちゃ、困るよ」と、カウンターの奥から抗議する。
すると、黒ずくめのひとりが懐からダガーを出し、ふわりとした動作でそれを投げつけた。
ダガーは店主の眉間に突き刺さり、店主は目を見開いたまま仰向けに倒れて息絶えた。トム・オッカー、享年42歳。生涯、独身を貫き通して、ダガーに貫かれた。
【カバンタ】 ラッキー! 食い逃げできる〜。
【ジーネ】 食い逃げは、私が許しませんよ。
【ランディ】 その前に、黒ずくめのほうが許せないのでは?
【ジーネ】 それはそうだけど、私は鎧を着てるんだろうか。ふとした疑問。
【GM】 メイド状態のジーネの装備は、木綿の服にエプロン。筋力1のクロース扱いやね。ついでに言うと、ジーネの得物のモーニングスターも、いまは装備してないよ。
【ティガー】 包丁があるやろ、その辺に。
【GM】 カウンターの向こうにある。包丁は筋力1のダガーとして扱おう。
とりあえず、みんなのリアクションを教えてもらえるかな?
【ティガー】 「あ」と言ったら、くわえてたスプーンが床に落ちた。
で、そのスプーンを拾って、またオムレツを食い始める。
【カバンタ】 見てるよ。奴ら、強そうやもん。
【ランディ】 僕は食事の手を止めて、ドキドキしながら様子を見てます。
【ティガー】 みんな、見てるだけか(笑)。
【ジーネ】 私はビールとケチャップを放り投げて、カウンターの向こうに行くよ。いちおう、店長の生死を確認しに。
で、死んでるのを確認したら、包丁を手に持って仇討ちに行く。
【GM】 ジーネがカウンターの向こうに行ったとき、店内にいた他の3人の冒険者たちも立ち上がった。
で、女司祭と黒ずくめとどっちの味方につくかというと、当然、女司祭。
ってことで、ルーキーズは女司祭を庇うような形で、黒ずくめたちの前に立ちはだかる。
【ジーネ】 そりゃそうでしょう。いきなり店長を殺すような奴の味方をされてもねぇ。
【GM】 これで黒ずくめたちが、じつはいいひとやったら大笑いやけどな。
【ティガー】 そんときは、店長はロットバイルのスパイだった、ってことで。
【ジーネ】 じゃあ、女司祭は何なの?
【ティガー】 愛人。
【ランディ】 42歳のスパイと、14、5歳の愛人というのも、妙な組み合わせやな。
【カバンタ】 ロリコンやったんや。
【ジーネ】 そういえば、私も15歳……。
【GM】 こらこら、故人の悪口を言うでない。店長はスパイでもロリコンでもなく、食いっぱぐれたジーネを雇ってあげるような、ただの気のいいおじさん。ちなみに、元冒険者。
【ジーネ】 元冒険者だったら、ダガーぐらいよけてよ〜。
【GM】 よけた方向に、ダガーが飛んできたの。
【ランディ】 きっと、回避で1ゾロを振ったに違いない。
【GM】 そう。「やった、経験値10点!」とか思ってたんやろね。
【カバンタ】 死んでしまったら、何にもならへんけどな。
【GM】 さて、黒ずくめのうちのひとりが、立ちはだかった冒険者たちに向かって、「邪神の祭器……渡してもらおう」と、黒マスクの奥からくぐもった低い声で脅しをかける。
女司祭は、古びた人形をギュッと胸に抱きしめた。
【ジーネ】 邪神と聞いたら、ますます放っておけないじゃないか。
【ティガー】 黒ずくめ、悪者に決定。じゃあ、オムレツ置いといて、立ち上がってみる。
【GM】 黒ずくめたちは、ピクっとそっちを見る。
【ティガー】 う〜ん、見られたか。スピアでも構えてみよう。
【GM】 それが合図となって、3人の冒険者たちもそれぞれの武器を構え、黒ずくめたちも身構えた。
ちなみに、ルーキーズの取り合わせは、ファイター、シーフ、プリーストね。あ、プリーストまで前線に立っちゃった。
【ランディ】 僕はテーブルの下でバスタード・ソードを抜いて、こっそり戦闘態勢。
【ジーネ】 包丁を持って、エプロンをひるがえし、カウンターを飛び越えて店内に戻る。
【GM】 女司祭を踏み潰さないようにね。それでは、戦闘に入ります。
いちばん速いティガーから行動してください。
【ティガー】 黒ずくめAに攻撃。(ころっ)当たった、11点ダメージ。
【カバンタ】 傍観しとく。
【GM】 じゃあ、次はジーネとランディが同時行動。
【ジーネ】 さて、このままエプロン姿で突っ込むべきか、2階に上がってチェイン・メイルを着込んで来るか……鎧を着てる時間なんてないか。
じゃあ、女司祭を庇いつつ、[パリィ(防御姿勢)]してますわ。
【ランディ】 僕は待機。敵味方の出方を窺う。
【GM】 冒険者たちは黒ずくめB、C、Dに攻撃。びしっばしっ!
そして、黒ずくめたちの反撃、黒ずくめAのダガーの攻撃がティガーにヒット。ダメージは3点が通った。
【ジーネ】 ひぃ、強い! エプロンじゃ、突っ込めないよ。
【GM】 ルーキーズにも反撃。「痛い、痛い」。はい、次のラウンド。
【ティガー】 (ころっ)当たり、ダメージは10点ね。
【ジーネ】 んーと、傷を負ったひとのところに走って行く。ちなみにティガーのことね。名前、まだ知らないはずだから。
それで、黒ずくめAに攻撃。(ころっ)スカ。
【GM】 ティガーの隣で、メイドさんが包丁を振り回して戦ってるよ。
【ティガー】 こわ〜! 「なんだ、こいつ!?」(笑)
【ランディ】 戦うメイドさん。
【カバンタ】 めったに見られへんな。
【ジーネ】 メイドじゃなくて、ウェイトレスなのに〜。
【ランディ】 ちなみに、僕はまだ様子を見てます。待機。
【ティガー】 なんちゅうこっちゃ。
【GM】 では、冒険者たち。プリーストが後方に退き、ファイター、シーフが攻撃。バシバシ、「この野郎!」。
で、黒ずくめの反撃。ジーネに当たり、8点のダメージがいった。
【ジーネ】 生命力が半分になってしもうた。
【ティガー】 槍で突く〜。(ころっ)当たった!
【GM】 でも、ダメージは止められた。破れた黒衣装の下から、チェイン・メイルの鈍い光が覗いてる。
【ティガー】 むかっ。俺より、いい鎧を着てる。
【ジーネ】 傍観してるふたりの男に、「正義の味方をしなさい!」と怒鳴りつつ、黒ずくめAに攻撃。(ころっ)また、はずれ。
【ランディ】 そこまで言われたらしかたがない、最寄りの敵黒ずくめDに攻撃しに行きます。(ころっ)はずれか……。
【GM】 ルーキーズ、黒ずくめと攻防が続く。黒ずくめAはティガーに攻撃──しかし、かわされた。
ルーキーズのプリーストが前線から離脱してるんで、黒ずくめBがジーネに攻撃。これは当たって、ダメージ5点。
黒ずくめDはランディではなく、ルーキーズのファイターに攻撃した。
【ランディ】 ラッキー。
【ジーネ】 う〜、ごめんね〜、私、次のラウンドでさがります。
【GM】 では、女司祭がジーネに〈キュアー・ウーンズ〉。(ころっ)10点回復したよ。
じゃあ、第4ラウンド。
【ティガー】 (ころっ)はずした。
【ジーネ】 モーニングスターを取りに2階に上がるぅ。包丁じゃ戦えな〜い!
【GM】 じゃ、次のラウンドに荷物のところに着いて、その次のラウンドでモーニングスターを装備して、3ラウンド目に戦線に復帰ね。
【ジーネ】 「すぐ、帰ってきますからぁ!」と叫んで、階段を駆け登って行く。
【ランディ】 Dに攻撃、当たった。でも、チェイン・メイルで止められた。
【GM】 さて、ルーキーズの攻撃も終わった後、黒ずくめAが「退け!」と鋭く叫ぶ。
黒ずくめたちは、懐から得体の知れない玉を取り出し、床に投げつけた。すると、店内いっぱいにモワモワと煙が立ち込めた。
敵の気配は消えていったよ。
【ジーネ】 武器を取りに行った、私の立場はいったい……。
【GM】 帰ってきたら、もう、そこに敵はいない。ただ、煙の中で、ティガーたちが咳き込んでるのみ。
しばらくして、煙はおさまった。
【ティガー】 戦闘終了か。そんじゃ、オムレツ、オムレツ。
【GM】 オムレツは、すっかり冷めてる。
【ジーネ】 さて、店内の片付けをするほうが先か、ケガを治すほうが先か。
【GM】 ケガは、女司祭が治してます。店内はメチャクチャだけどね。床に散らばった彼女の荷物も、さっきの戦闘で踏みにじられてぐちゃぐちゃ。
【ジーネ】 じゃあ、私、そこらへんを掃除してますわ。
【GM】 ティガーも、女司祭に治してもらったよ。完全回復ね。
【ランディ】 僕は無傷。
【カバンタ】 オレも。
【ティガー】 だって、キミら、何もしてねーじゃん(笑)。
【ランディ】 いちおう、戦ったのに〜。
【GM】 ひと段落ついたところで、女司祭が「みなさん、どうもありがとうございました」と頭を下げる。
【カバンタ】 いえいえ、大したことはしてませんよ。
【ティガー】 つーか、カバンタは何にもしてねーじゃんよ! スプーンを投げつけてやろ。
【カバンタ】 (ころっ)首を曲げて回避した。何もしてないから、「大したことしてない」って言うてるんやで〜。へろへろ。
【ティガー】 むかー! メイドさん、新しいスプーンを。
【ジーネ】 あのねぇ、片づけてる先から、散らかさないでください。
【ティガー】 ちぇ。
【ランディ】 って、ここでなごんでる場合ではないのでは?
【ジーネ】 そうそう、店長どうしよう。殺されてしもた。
【カバンタ】 布でもかぶせて、なかったことにし。
【ランディ】 臭い物にフタですな。
【ジーネ】 なんてことを。
【GM】 ところで、キミたちは夢中で戦ってたから気づいてなかったけど、店の外には、ヤジ馬の人だかりができあがっておるんですな。
【カバンタ】 やばい! 見られてた!
【ジーネ】 だから、あんたは何もしてないでしょ。
【GM】 そして、そのヤジ馬たちをかき分けかき分け、3人の衛兵が店内に入って来た。そのうちのひとりは、ヘルメットに角飾りがある、偉そうな髭のおっちゃん。
「おまえたち、そこを動くな!」
【カバンタ】 偉そうか。どのくらい偉そうや。
【GM】 そうやな、キミたちより1個上のレベルぐらいかな。
【ティガー】 なんや、大したことない。じゃあ、気にせずオムレツを食べ続ける。
【GM】 衛兵Aがカウンターの向こうを覗き、「隊長! 店長が死んでいるであります!」と報告する。
「そうか、おまえたちが殺ったんだな。現行犯で逮捕する!」と、衛兵長。
【ジーネ】 濡れ衣ですかぃ。
「来るのが、遅いんじゃあ!」って、衛兵長にテーブルを投げつけてやろうかしら。筋力18やから、できるでしょ。
【GM】 できるよ。ただし、ジーネがテーブルを持ち上げたので、ティガーのオムレツが床にパッシャ〜ン!
【ティガー】 あーッ、俺のオムレツ! 現行犯で逮捕する!
【GM】 「逮捕な〜のダ!」
【カバンタ】 ん、わけわからん状態やな。
【GM】 衛兵長が言ってるのは、要するに詰所に来て話を聞かせろ、ってこと。
【ランディ】 単に事情聴取されるだけなら、行ってもいいですよ。
【ティガー】 オムレツ、食べ終わってからね。
【ジーネ】 じゃあ、新しいオムレツを作りましょか。
【ティガー】 ケチャップもたくさんくれ。
【GM】 衛兵長は「早く食え」と言ってる。
「む、うまそうなオムレツであるな。ひと口」
【ティガー】 いやだ。
【GM】 「自分も、食べたいであります!」と衛兵A、B。
【ジーネ】 別に作ってあげてもいいけどね。
【ティガー】 なんでこんなになごんでるの?(笑)
【GM】 そんな感じのなごみ系で、ルーキーズと女司祭、そしてキミたちの計8人は、衛兵の詰所に連れられて来た。
【ジーネ】 詰所いっぱいやろな、こんなにひとが来たら。
【GM】 ぎゅうぎゅうなので、取調室には代表者1名に来てもらって、残りのひとは牢屋で待機させられる。
【ジーネ】 牢屋ぁ?!
【GM】 いちおうね。ま、楽屋だと思ってください。案内した衛兵Bも、「どうぞ、自分の家だと思ってくつろいでください」って言ってるし。
【ティガー】 じゃあ、くつろごう。
【カバンタ】 取り調べ室にはカバンタが行くんやな。代表者やし。
【GM】 あんたが代表者かぃ!
【ティガー】 何もしてなかったくせに。
【カバンタ】 だから、取り調べられたるんやないか。
さ、衛兵長どの、カツ丼を。
【ランディ】 それが狙いか。
【GM】 じゃあ、カバンタはカツ丼をもらって、顔にライトを当てられて、「おまえが店長を殺ったんだな?」と質問される。
【ティガー】 ちゃんと濡れ衣晴らしてよ?
【カバンタ】 ほんなら、説明しよっかな。女司祭が店に転がり込んで来たあたりから。
【ランディ】 全部、そばで見てたしな(笑)。
【カバンタ】 ただ見てただけでなく、一部始終をリプレイとして、文書に書き残しといたからな。
【GM】 「どうも信用ならんな、貴様の顔は」
【カバンタ】 人を顔で判断しないでください〜。
【GM】 と、そのとき、衛兵Aが中年の魔術師を伴って、取り調べ室に入って来た。
「カザーリ先生をお連れしたであります!」
【ティガー】 魔術師?
【GM】 衛兵長はニヤリと笑って、「たとえ貴様が嘘をつこうが、このレンツォ・カザーリ先生の魔法の前に、すべて暴かれるのである! じゃ、先生、いっちょお願いしやす」
【ランディ】 ははあ、〈センス・ライ〉を使うわけですな。
【ティガー】 じゃあ、その魔術師、けっこうレベル高そう。
【GM】 カザーリ先生は、きれいに手入れされた口髭をいじりながら、「んーんー、ハイジちゃんの劇まで、まだ時間があるからねぇ。ゆっくり、やりましょ。んーんー」と言って、ムニャムニャと呪文を唱える。
そして、カバンタに向「んー、あなたが、店主を殺したのですか?」と質問してくる。
【カバンタ】 やってましぇん。
【GM】 「それでは、詰所に連れてこられたひとたちの中に、犯人はいますか? んー」
【カバンタ】 おりましぇん。
【GM】 「じゃあ、んー、真犯人は逃げた者なのですね?」
【カバンタ】 そのとおり。
【GM】 「その犯人を、あなたは知っていますか?」
【カバンタ】 わからへん。黒ずくめやったから、どんな奴かもわからんし。
【GM】 魔術師は衛兵長に、「んー、このひとは嘘をついてません。少なくとも、連行されたひとの中に、犯人はいないようです。んーんー」と言う。
すると、衛兵長の顔色は、見る見る青くなる。そして、衛兵Bに「何をしてる! 皆さんを牢から出して差し上げなさい!」と怒鳴る。
カザーリ先生は帰っていき、カバンタは詰所のロビーに通された。
【カバンタ】 それもいいけど、カツ丼おかわり。
【GM】 「何をしてる! 早く、カツ丼のおかわりを持ってきて差し上げなさい!」と怒鳴られた衛兵Aが、「了解であります!」と走って行く。
じゃあ、皆さんは牢から出されて、詰所のロビーに案内された。11人もいると、さすがに狭いね。ちなみにそこでは、カバンタがおかわりのカツ丼をうまそうに食ってる最中です。
【ティガー】 あーッ、いいもん食ってるぅ!
【GM】 「皆さんのぶんも、あるであります!」
「何をしてる! お茶もお出ししなさい!」
「了解であります!」
【ティガー】 やったー! 今日、食ってばっかり。
【ジーネ】 私、太るからいらない。サラダにして。
【GM】 「何をしてる! サラダを用意しなさい!」
「了解であります!」
【ティガー】 じゃあ、メイドのぶんは、俺が食う。
【ジーネ】 あの〜、そんなことよりも、黒ずくめの奴らを追いかけて欲しいんですけど〜。
【GM】 「黒ずくめ? うん、なんか強そうで怖いけど、いちおう捜査してみるよ」
「善処するであります!」
【ティガー】 それは「やらない」ってことやな(笑)。
【GM】 で、衛兵長は「これは、ほんのお詫びですが……」と言って、チケットを2枚差し出した。
【ジーネ】 何のチケット?
【GM】 オレンブルク劇場で上演されている、最近話題の演劇のチケットです。「わたしにはもう、必要ありませんから……」と、衛兵長は遠い目をして言う。
【ティガー】 彼女にふられたんだな。
【GM】 図星をつかれた衛兵長は、さめざめと泣き出した。
「隊長! お察しするであります!」と、衛兵Aももらい泣き。
そして、彼も同じチケットを2枚差し出し、「ボクのも差し上げるであります! ──わたしにも、もう必要ありませんから……」。
【ティガー】 おまえもかー!
【GM】 衛兵長と衛兵Aは、部屋の隅っこで肩を寄せ合って泣いている。
【ジーネ】 慰めとこか。「人生、そんなことばかりじゃありませんわ」って。
【GM】 「お、女など、信じられるか!」と、衛兵長。で、その様子を申し訳なさそうな顔で見てるのが、衛兵B。
【ジーネ】 こいつはうまくいってるんだな。
【GM】 そう。それに気づいた衛兵長と衛兵Aは、「貴様だけ、貴様だけぇ!」と衛兵Bに詰め寄る。
「わかってるのか、貴様が幸せなぶんだけ、我々は不幸になってるんだぞ! 申し訳ないとは、思わんのか!?」
【ティガー】 だから、天秤は釣り合うんだよ。
【GM】 「そんな理不尽な天秤など、壊してやる!」と、衛兵長。
「我々の不幸で、貴様だけが幸せになってるのかと思うと、ああ、腹が立つ!」
「そ、そんなご無体な〜」
【ティガー】 とばっちりや。
【GM】 ルーキーズは呆れて出ていく。女司祭も、そっとキミたちを促すけど?
【ランディ】 僕らも出ていこう。チケットも、もらったし。
【GM】 それじゃあ、みんな、詰所前の路上に出た。
いまは午後2時頃ね。街のざわめきに混じって、衛兵たちの喧騒がかすかに聞こえている。
【カバンタ】 まだ、やっとんのか(笑)。
【GM】 ところでルーキーズは、チケットいらないらしい。これから船に乗って、邪神の眠る島にひと儲けに行くとかで。
「いま、邪神の眠る島に行けば、ボロ儲けできるんだぜ」と、自慢そう。
「おっと、いけねぇ! 船が出ちまう」と、ルーキーズたちは港のほうへ走り去りました。
【ティガー】 そんなら、カツ丼なんか食ってるなよ!
【ジーネ】 私も邪神の眠る島に行きたいんだけどね。せっかく、船代を稼いでる途中だったのに……と、遠い目。
【GM】 そして、女司祭が「お願いがあるんですが」と、遠慮がちに言ってくる。
【ランディ】 なんでしょう?
【GM】 この司祭さんの名前は、ファンリー。ミフォア大神殿の司祭で、魔術師ギルドに薬草を届けに行くお使いの途中だったらしい。
ところが、大事なお届け物は──。
【ティガー】 ──戦闘で、ぐちゃぐちゃ──。
【GM】 ──に、なったんですね〜。それで先方に謝りに行かないといけないけど、さっきのこともあって怖いんで、護衛で一緒に来てくれませんか、とのこと。
「もちろん、お礼はいたします」
【ティガー】 いいよ。
【ランディ】 護衛ぐらいなら、お安い御用です。
【カバンタ】 ついて行くだけで謝礼がもらえるのはおいしい。
【ジーネ】 ついて行くだけじゃなくて、守らないとダメなんだよ。あー、チェイン・メイルを着てくればよかった〜。
【GM】 でも、武器は持ってるんやんな? モーニングスターを装備したメイド。
【ランディ】 なんじゃ、こいつ? って思うやろな。
【ティガー】 包丁、振り回すし。
【ジーネ】 メイドは副業です。──って、みんなは知らないんだよね。じゃあ、軽く自己紹介しときましょう。
【GM】 というわけで、名前とクラスぐらいは、お互いわかったわけやね。そんで、ものすごく偏ったパーティであることに驚くんや。
【ティガー】 ソーサラーとシャーマンがいない(笑)。
【ランディ】 肉弾戦専用パーティ。
【GM】 それでは、女司祭の護衛として、キミたちは魔術師ギルドを目指します。