▽ エリオ、任務を命じられる事 | ▽ トリン村に向かう事 | ▽ 怪事件の正体の事 |
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【GM】 それでは、今日から新しいキャンペーンを始めますよ〜。
【プレイヤー1】 じゃじゃ〜ん!
【GM】 で、皆さん、自分の作ったキャラクターは把握できてますね?
【プレイヤー2】 名前と設定ぐらいなら。
【プレイヤー1】 あたしは、知識神リンツの司祭ハニィ・バーベ。人間、女性の20歳。お父さんが戦士で、お母さんが盗賊なんやけど、あたしが6つのときにお母さんが蒸発してしまって、それからずっとお父さんとふたり暮らしやってん。そんで自分を捨てた母親を憎んでて、ついでに盗賊が嫌いやねん。
【プレイヤー2】 俺のキャラは、エリオ・デ・アンジェリスという下級貴族の次男坊、18歳。ちなみに兄弟は、姉と妹を含めてぜんぶで5人おって、エリオはその真ン中。当然、ファイター。
【プレイヤー3】 その隣の家に住んでいる同級生が、僕のジャニオス。おとんが大地母神ミフォアの神殿長で、おかんが魔術師ギルドの高位の導師。だから僕も、ソーサラー技能とプリースト技能を持ってるんやな。あと、使い魔で黒猫がおるから。
【ハニィ】 同級生って? 学校とかあるん?
【GM】 まあ、学校というか、魔術師ギルドに通ってたんでしょう。魔術師ギルドでは、文字の読み書きなんかを教えてくれるから。
【エリオ】 俺はいちおう貴族のたしなみとしてね。これが上級貴族やと、家庭教師を招けるんやろうけど、ウチは中の下の貴族やから。
【ジャニオス】 僕はおかんが魔術師やらかな。なんか、一緒のクラスやったらしいで。
【GM】 そんで授業中、悪さばっかりやってたんやろ。
【ジャニオス】 僕はまじめに勉強したかったんやけどな、あの貴族のボンボンがな〜。
【エリオ】 ちっちゃい紙切れに手紙書いて「これ回して」とか、後ろの席からジャニオスの椅子蹴ってみたりとかしてたから。
【GM】 最悪やな。
【プレイヤー4】 で、うちのは36歳のハーフエルフの男で、ユーリっていうねんけど、それは偽名やねん。双子の弟がな、リナっていうユーリの婚約者を犯して自殺させて、姿を消してん。で、その弟に復讐するために旅してるねん。あと、髪の毛も黒に染めてるから。
【GM】 そんな暗い設定を軽いノリで言われてもなぁ。
【ジャニオス】 暗い設定を重いノリで言われるよりマシやろ。
【ハニィ】 で、技能は何を持ってるの?
【ユーリ】 えっとね〜、バードとシャーマンとシーフ。白兵戦はせんと、遠くから魔法使う。精神力が少なくなったらダーツを投げる。
【ハニィ】 あたし、盗賊を憎んでるのに……。
【ユーリ】 んあ〜、じゃあ、シーフ技能のことは内緒にしといたるわ。
【ジャニオス】 でも、旅してるうちに絶対バレるやろ。
【ハニィ】 いや、盗賊を憎んでるけど〜、復讐するとかまでは考えてないから。
【GM】 まー、そこはどないなとしといてください。
【エリオ】 ほんで俺らはいま、どんな状態やねん。
【GM】 はいはい。ユーリはミドル地方のボア王国出身、ハニィは出身地不明、エリオとジャニオスは、アリステア地方のセフェリア王国出身でしたね。そして今回のキャンペーンは、セフェリア王国、魔術の研究が盛んで『魔法王国』とも呼ばれる国から始まります。
【ジャニオス】 僕らの母国やな。
【GM】 そうです。セフェリア王国の王都はファノンといい、エリオとジャニオスのふたりは、生まれてからずっとそこで暮らしてきています。ハニィは同じように、ファノンにある知識神リンツの神殿で暮らしています。ユーリは姿をくらました弟の動向を探るために、ここの盗賊ギルドの情報網を利用しており、復讐を決意してからファノンに腰を落ちつけています。
【エリオ】 で、いま現在の俺らは何をしてんの?
【GM】 それは各々で決めてください。
【ハニィ】 じゃあ、神殿でお祈りでもしときましょう。
【ユーリ】 いつもどおり盗賊ギルドに出向く。
【ジャニオス】 しゃあないな、エリオの屋敷に遊びに行っとこう。
【エリオ】 遊びに来られた。「まー、上がれや。でもな、おまえが帰ったあと、いっつも小銭がなくなってるんやけど」
【GM】 最悪や。
【ジャニオス】 それは僕の仕業じゃないな。たぶん、双子の弟に復讐しようとしてる、ハーフエルフの犯罪や。
【ユーリ】 なんでやねん! そんな下級貴族の家に入るか、っちゅうねん。
【エリオ】 ってゆーか、入られへんだけやろ。この間、俺のうちに忍び込もうとして、犬にケツ噛まれてたしな。
【ユーリ】 噛まれとるかッ!
【GM】 それはさて置き、エリオくん。
【エリオ】 なんじゃらホイ。
【GM】 エリオのお屋敷に尋ねてくるひとがいます。
【エリオ】 俺が応対に出るのか? 他に家にいる奴はおらんのか。姉貴は?
【GM】 家出して、オレンブルク王国にいるんでしょ。
【エリオ】 兄貴は?
【GM】 もちろん、城勤めに出ています。
【エリオ】 弟は?
【GM】 病弱なんで、自室で寝ています。
【エリオ】 末の妹は?
【GM】 修道院に入ってるんじゃなかったっけ? まあ、それなりの家柄ですし、来客の応対に出るのは、キミではなく爺やのサンチョス。で、けっきょく訪問者の用はエリオにあるようで、爺やが「エリオ坊っちゃまにお客様でございます」と伝えてきたよ。
【エリオ】 誰や。
【GM】 「お城からのお遣いだそうで」
【エリオ】 城の奴か! ついに俺も騎士叙勲のときが来たか。
【GM】 あ、エリオはひと月前にすでに騎士の称号を得ていますから。まあ、武勲を立ててというよりは、家柄でそうなっただけですけど。
【エリオ】 なんや、素直に喜べんなぁ。
【ハニィ】 まあ、武勲はこれから立てたらええねん。
【GM】 そうなるように頑張ってください。で、騎士エリオ・デ・アンジェリスには、お城から招集がかかってるそうです。いますぐ出勤して来いと。
【ユーリ】 仕事、サボってたんや。
【GM】 というより、騎士にはなったけど、まだ仕事が与えられてない状態やったんやね。
【エリオ】 ってことは、初仕事がもらえるんやな。よし、いますぐ行こう。
【ジャニオス】 僕はほったらかしかぃ。しゃあないな、その辺の壺でも眺めとこか。
【ユーリ】 やっぱり、ジャニオスが盗みしてたんや。
【ジャニオス】 眺めてるだけやのに〜。
【GM】 では、エリオはファノン城にやって来ました。しかし、通されたのは謁見の間ではなく、誰かの私室のようです。「どうぞ」と言われてその部屋に入ると、ふたりの男性がテーブルの前に座って待っていました。ひとりは若く、ひとりは初老。
【ユーリ】 面接官や。
【エリオ】 なんでいまさら面接受けなアカンねん。
【GM】 もちろん、エリオはよく知っている人物ですよ。若い男性は、このセフェリア王国の国王で、初老の男性は宮廷魔術師です。
【ハニィ】 国王?!
【ジャニオス】 大企業に初出社して、いきなり社長室に呼ばれたようなもんやな。
【ユーリ】 なんかヘマしたんや。
【エリオ】 仕事したことないのに、ヘマなんかできるかぃ。
【GM】 国王は20代半ばで、エリオとは年齢が近いせいか、「やあ」ってな感じで気さくな方です。が、やっぱり全身から放たれる威光はエリオの比ではなく、思わず畏まってしまうほどやね。
【エリオ】 しゃあない、畏まったるわ。
【ハニィ】 偉そうに。
【GM】 畏まったエリオに、国王が「楽にしていいぞ」と自分と向かいの椅子を勧め、エリオが腰掛けると、宮廷魔術師が「トリン村の事件を知っておるか」と切り出してきます。エリオは知っているかどうか、サイコロで判定してみて。
【エリオ】 (ころっ)。
【GM】 なら、エリオは噂として知っています。「トリン村で奇妙な事件が起きている」という話を聞いたことがある程度やけどね。
【エリオ】 じゃあ、「噂程度なら知っている」と答えとこう。
【GM】 「じつはその村で、村人が姿を消すという事件が起きている。あまりにも多発するものじゃから、そこを治める領主が自ら部下を率いて調査に向かったそうじゃ。だが、その領主までもが、行方知れずになってしまった」
【エリオ】 なるほど。それで俺に、空位となったその領主の座につけというわけか。
【GM】 んなわけあるかぃ。「そこで国の治安のため、名誉のために、この事件を解決せねばならんのじゃ」
【エリオ】 ぜひ、頑張ってください。
【ハニィ】 これはエリオに「行け」と言ってるんちゃうの。
【ジャニオス】 いちばんヒマそうな騎士やしな。
【ユーリ】 そうそう、窓際族やし。
【GM】 あんまり有名な騎士や大部隊が出向くと、騒ぎが大きくなって、噂に尾ヒレがついて国が混乱する可能性もあるしね。
【ユーリ】 有能な騎士がいなくなっても困るしね。
【エリオ】 ああ、国のホンネが垣間見えてしまう。
【GM】 素直に栄誉ある仕事と受け取っとけばええねん。国王自ら「エリオ・デ・アンジェリス。キミにもこの任務を引き受けてもらいたいのだ」と、言うてくれてるんやし。
【エリオ】 はいはい、「王国のため、喜んで行ってまいります」。……で、『キミにも』とは?
【GM】 じつはもうひとり、キミと同じ任務を受けた騎士がいるらしい。そのひとは、今日の午前中に出発したらしいけど。
【ジャニオス】 たぶん、やられキャラや。
【GM】 ひどいこと言うなぁ。
【エリオ】 で、必要経費のほうは?
【GM】 そうやね、かかった分だけ王国が支払ってくれるということで、宿泊したときなんかは領収証みたいなものをもらってくるように、とのこと。
【エリオ】 「じゃあ、行ってまいります」。国王相手やと、報酬の話もでけへんなぁ。
【GM】 じゃあ、王自らエリオに馬を1頭与えましょう。長旅にもじゅうぶん耐えられる、若い軍馬です。世話は自分でやってね。
【エリオ】 それも騎士のたしなみやからね。最高級のブラシを買うてこよう。じゃ、家に帰ってジャニオスに仕事の話をする。「ちゅうわけで、ついてこい」
【ジャニオス】 しゃあないな〜、行ったるか〜。
【ハニィ】 あたしらはどうやって仲間になるの?
【GM】 う〜ん、じゃあ、ユーリは盗賊ギルドから、エリオに同行するように依頼された。
【ユーリ】 「しょうがねえな」と仲間になる。
【GM】 リンツ神殿では、ファノンのリンツ神殿を預かる高司祭が、ハニィに「ついて行ってあげてください」と言う。
【ハニィ】 頼まれました。
【GM】 ということで、トリン村に向かっていただきます。
【エリオ】 ほんじゃ、出発しよか。
【ジャニオス】 何事もなく行けそうか。
【GM】 そうやね。街道を通るわけやから、危ない目に遭うことはない。6日後の夕方には、セフェリア第2の都市であるアスリアという街に到着しました。
【エリオ】 じゃあ、ここで1泊する。最高級の宿屋を探そう。どーせ公費で泊まるんやし。
【ジャニオス】 食い放題、飲み放題できるな〜。
【GM】 国の金を何と思ってるんや、まったく。では『栄光の騎士亭』という、アスリア最高級の5つ星宿屋にやって来ました。だだっ広い玄関ホールの床は、大理石が敷きつめられていて、ホール中央には噴水があり、2階までブチ抜いたように高い天井には、豪華なシャンデリアがぶら下がってる。で、気取ったホテルマンが、「いらっしゃいませ」と言うてくるんやな。
【ハニィ】 なんか別世界やな〜。入っただけでクラクラしてるんちゃうか。
【ユーリ】 うちはこんな宿屋にはいづらいから、他の宿屋に行ってくる。酒場でネーちゃんが踊ってそうな宿屋がいい。
【エリオ】 そのネーちゃん見て「えっへへへへ〜」って言うんや。
【ユーリ】 言うかっ!
【GM】 じゃあ、ユーリ以外は『栄光の騎士亭』に泊まるわけね。
【ジャニオス】 おう。で、その夜は何が起こるんや〜?
【GM】 何も起きません。翌朝になりました。
【ジャニオス】 なんやと〜!?
【エリオ】 しゃあないな、さっさと出発しよう。
【GM】 それでは再びてくてくと進みまして、その日の夕暮れ時にはレストンという宿場町に到着します。
【ジャニオス】 じゃあ、また最高級の宿屋に行こか〜。
【GM】 レストンはそれほど大きい宿場町ではないので、最高級といっても大したものではないけどね。
【エリオ】 しゃあない、そこでがまんしたろ。
【GM】 では、皆さんはその宿屋に行くわけやけど、エリオが厩に自分の馬を預けにいってみると、別の軍馬が1頭繋がれているのを見ます。同じ軍馬にしても、明らかにエリオの馬とは格が違うって感じの立派な馬やね。
【エリオ】 その軍馬の横に、我がブルーシャドウ号を入厩させとく。見た目では負けてても、こっちの馬は青鹿・牝4歳・5戦3勝のオープン馬やからな。
【GM】 ほう、青鹿か。なるほど、それで名前が『ブルーシャドウ』なわけね。
【ジャニオス】 見た目で勝負やな。
【GM】 しかし、4歳というのは若過ぎへんか。
【エリオ】 だから格が違うように見えるんちゃうん。
【ハニィ】 でも牝の馬やと、戦場では臆病なんとちゃうの?
【エリオ】 大丈夫、大丈夫。我がブルーシャドウは気性が荒いから。それはもう、折り合いがつかんほどに。
【GM】 それはそれでアカンやろ。
【ハニィ】 それにしても、その格が違う軍馬が気になるなぁ。
【ユーリ】 どーせ、先に出発したっていう騎士のやつやろ。
【エリオ】 ほんじゃ、メシ食いに行こか。
【GM】 その宿屋もレムリア大陸の標準的な造りになっているので、1階が酒場、2階が宿泊施設になっています。
そして、皆さんが1階の酒場で食事をしていると、2階からいかにもさっきの馬の持ち主だろうというような若い騎士が、5人ほどの部下を引き連れて下りてきました。ちなみにエリオは、この男性を知ってるよ。
【エリオ】 誰や〜?
【GM】 エリオと同期の騎士で、ルーティンという人物。同期やけど、家柄はデ・アンジェリス家よりも格上で、ルーティンのほうがエリオくんよりも上の立場の騎士です。ルーティンはエリオを見つけて、「やあ、エリオじゃないか」と声をかけてきた。
【エリオ】 じゃあ、「久しぶりやな」と言うとこか。
【GM】 ルーティンは「まあ、ボクの足を引っ張らないように頑張ってくれたまえ」と言う。
【ハニィ】 ルーティンさんの部下って、どんな感じ?
【GM】 う〜ん、そっちみたいに有象無象の寄せ集めみたいな感じではないども、腕が立つようにも見えない戦士たちやね。ただの取り巻きって感じかな。
【ジャニオス】 ただのやられキャラやな。ルーティンも含めて。
【ユーリ】 トリン村に行ったら、やられてるかもよ。
【GM】 なんてことを。ルーティンは別のテーブルについて、取り巻きの男たちと食事をはじめました。では、時間を進めて翌朝になります。
【エリオ】 じゃあ行こか〜。
【ジャニオス】 ルーティンの馬に毒でも盛っとく?
【GM】 残念ながら、ルーティン隊のほうが先に出発しています。
【エリオ】 あ〜あ、ユーリが寝坊したからや。
【ユーリ】 しとるかっ!
【GM】 そんなこんなで旅を続けて、その日の昼過ぎにトリン村に到着したよ。
【ジャニオス】 トリン村に入る〜。
【GM】 じゃあ、村の入口近くの畑で第1村人を発見しました。
【エリオ】 「『かくかくしかじか』というわけで、この村に来たった。村長のところに案内せい」と言う。
【ハニィ】 偉そうや。
【GM】 ではエリオ御一行様は、小高い丘の上に建つ村長さんの家に案内された。するとそこには、きのう宿場町の宿屋で見たルーティンの馬がいて、取り巻き男Aが馬番をしています。
【エリオ】 そのそばに、我がブルーシャドウ号を繋げておこう。
【ジャニオス】 ほんじゃ、村長の家の扉を16ビートのリズムで叩く〜。
【ユーリ】 蝶番が壊れて、扉が「ぎ〜、バタン!」って倒れたりして。
【GM】 どんなんや。扉が開き、初老の男性が顔をのぞかせたよ。そして、騎士エリオを見ると、「ようこそいらっしゃいました」と言ってた。
【ジャニオス】 ようこそいらっしゃったったぞ。
【GM】 家の中には、もちろんルーティンたちがいて、「遅かったじゃないか。オレたちは、もう下調べを終えてるぞ」と言ってくる。
【エリオ】 ふむ。「では、下調べした結果を報告せい」
【GM】 なんでやねん! それはルーティンは拒否するでしょう。
【ジャニオス】 何のための先発隊や。役に立たんの〜。
【GM】 別にエリオのための先鋒じゃないんやから。
【エリオ】 ほんなら、村長に詳しい話を聞かせてもらおか。
【GM】 「じつはですな、1週間ほど前から、人がいなくなりはじめまして……」
【ユーリ】 いなくなるのって、女ばっかりとか。
【ジャニオス】 子供ばっかりとか。
【GM】 いや、むしろ行方不明者の中に、女性や子供はほとんど含まれてないよ。
【エリオ】 じゃあ、行方不明者は男ばっかりか。それは働き盛りの奴らか?
【GM】 う〜ん、まあ、働けないというひとたちではないですね。村の外に出かけれるようなひとたちばかりやから。
【ハニィ】 領主様も行方不明になったと聞いたんやけど……。
【GM】 「ええ、そうなんですわ。領主様は部下を率いて、あなた方よりも先に事件について聞き込みをしておられたんですが、何か思い当たる節があったらしく、森へ出かけられ、そのまま帰ってこなかったんです。そして、これはここだけの話ですが──」
【エリオ】 ──「私は真相を知っておるのです」
【ジャニオス】 おまえが犯人か〜!
【GM】 それやったら、ここでゲームが終わってまうやないかぃ! そうじゃなくて、「村人には内緒にしておるのですが、じつはきのう森の中で、6体の死体を見つけたんですじゃ」と村長さんは言います。
【ハニィ】 それは行方不明になってるひとの死体?
【GM】 「はい、そうだと思われます」
【ユーリ】 いま、行方不明になってる人間って、領主一行も含めて何人おるん?
【GM】 村人が6人、領主一行が10人の、合計16人。今回発見された死体の内訳は、村人が3体、領主の部下が3体で、その中に領主は含まれていなかった模様。ただしこれは、原型を留めているものに限られます。
【ジャニオス】 じゃあ、原型を留めてへんのもあるんや。どんな感じで散乱してたん?
【GM】 「じつは、私は直接死体を見とらんので、詳しいことはわかりません」。村長さんの話では、それらの死体を発見して報告にして来たのは、樵のアルという男だそうです。
【エリオ】 じゃあ、そのアルとかいう樵の家に行く。
【GM】 では、道順を聞いてアルの家までやって来ました。扉をノックすると、チョッキを着て髭を生やした体格のいい中年男性が扉を開けて、「何かご用でしょうか」と顔を覗かせるよ。騎士のエリオを見て、ちょっと緊張してるようやね。
【ハニィ】 「『かくかくしかじか』ということで、死体を発見したときの状況を教えて欲しいんですけど」と言う。
【GM】 そう言うのね。すると、家の中にいるアルの奥さんが「えっ?」と驚くよ。
【ハニィ】 げっ、奥さんがおったんや。早く言うてよ〜。
【GM】 あんたが説明する前に行動したんでしょうが。
【エリオ】 いまさら手遅れかも知れんけど、樵に「人払いをしてくれ」と言う。
【GM】 するとアルは、「騎士様に大事な話があるから、おまえはあっちへ行ってなさい」と言い、奥さんは「あなた、何の話なの?」と不安がりながら追い出されたよ。
【エリオ】 では、森の中で死体を発見したときのことを詳しく聞かせてもらおう。あることないこと全部しゃべれ。
【ジャニオス】 ないことまで聞いてもしゃあないから、あることだけしゃべれ。
【GM】 アルだけにね。
【ユーリ】 うわ〜……。
【ジャニオス】 言うてはならないことを〜。
【GM】 それはさて置き、アルの話では、彼が森の仕事を終えて帰ってくる途中、死体を発見したということです。
【ジャニオス】 死体を発見したときの状況は、どうなのだね?
【GM】 まず最初に、明らかに人間のものだとわかる死体を見つけたと。そして、「まさか」と思いながら周囲を探してみると、他にも多数の死体や、ちぎれた手足や肉片などが散乱していたらしい。
【エリオ】 散乱している肉片は、喰いちぎられたりしてた?
【GM】 「してました。ただ、野犬が死体を漁ったという可能性もありますが」
【ハニィ】 で、正確には何人分の死体なんですか?
【GM】 アルは専門家ではないので、肉片を調べて何人分の死体かということは、判断できない。はっきりとひとり分の死体だとわかるものだけを数えると、6人でした。
【ユーリ】 じゃあ、ひょっとしたら、行方不明者は全滅してるかも知れへんってことか。
【エリオ】 ま、とりあえず、現場を視察に行ってみよか。
【GM】 死体発見現場までは、6時間ほどかかりますよ。ちなみに、いまは夕暮れどきね。もうあとわずかで、夕陽が山の向こうに隠れてしまいます。
【エリオ】 ほんじゃあ、明日の朝早くに出発しよか。
【ユーリ】 今日は村長のところに泊めてもらおう。
【GM】 わかりました。ただし、全員が同じ部屋でザコ寝、って形ね。ルーティン御一行も、村長の家に泊まるんで。
【ジャニオス】 雑魚寝したろやないか〜。じゃあ、朝になってもらおか。
【GM】 コケコッコー。あ〜さで〜すよ〜。
【ハニィ】 朝ご飯を食べてから、死体発見現場に行ってみますよ。
【GM】 ところが、朝食を終えた皆さんが出発準備をしているところに、村長さんが深刻な顔でやって来ます。
【ジャニオス】 何がそんなに深刻なんかな。
【GM】 「じつは、村の者がまた、行方不明になっているようなんです」
【エリオ】 いつから?
【GM】 「それはわかりませんが、先ほど、ルーティン様が広場に村の者すべてを集めて情報を聞こうとなさったところ、タドックという男がいないことがわかったんです」
【ユーリ】 タドックって、独身?
【GM】 独身です。ちょっと変わり者で、森の中で木の実なんかを拾って、生活していたそうです。この村のはずれに粗末な小屋を建てて、そこに住んでいたらしい。
【ハニィ】 で、そこに様子を見に行ったけど、いなかったと。
【ジャニオス】 木の実を拾いに行ってるんとちゃうんか。
【GM】 ところが、タドックの姿を2、3日前から見てないという証言があるんですね。
【エリオ】 誰の証言や?
【GM】 子供たちです。タドックは子供好きで、よく、子供たちの遊び相手になっていたそうです。
【ユーリ】 じゃあ、その子供らに情報を聞きに行こう。
【ハニィ】 死体発見現場の視察はどうすんの?
【ジャニオス】 後回しでええんちゃう。
【エリオ】 ルーティンの性格からして、たぶん奴は、子供の証言に耳を貸してないはずやしな。
【GM】 では、皆さんは子供たちのところに来ました。4歳〜9歳ぐらいの少年少女7、8人が、退屈そうに広場のはずれでたむろしてます。
【ハニィ】 ルーティンが広場でまだ事情聴取をしてたりする?
【GM】 いや、もうそれは終わったようやね。広場には人影がまばらで、大人たちは農作業に出かけてるようです。ルーティンの姿も見当たらない。
【ジャニオス】 そのガキらも、もっとはつらつと遊んどけばええのに。疲れとんのか。
【GM】 「だって、タドックおじちゃんはいないし、村の外に出ちゃいけない、って言われてるし」
【エリオ】 村の外でよく遊ぶんか?
【GM】 そうですね。なんでも、村近くの草原に『秘密基地』と呼ばれる遺跡があって、そこでよく遊ぶそうです。もっとも、その遺跡はトリン村の子供たち代々の遊び場なので、この村の人間なら、誰でも知ってる場所なんですけどね。
【ユーリ】 タドックも、そこで子供の相手をしてたん?
【GM】 「そうだよ」
【ユーリ】 じゃあ、タドックはそこにおるんとちゃう。
【ハニィ】 その遺跡に行ってみよう。案内してくれる?
【GM】 しかし、ガキ大将みたいな男の子が、「だめだよ。秘密基地だから」と言う。
【ハニィ】 なんでよ〜!
【エリオ】 「秘密基地のことは口外せえへん」と言ってやる。
【GM】 騎士様のお言葉に、子供たちは顔を見合わせて、迷ってるようですね。
【ジャニオス】 もうあとひと押しやな。行けっ、エリオ!
【エリオ】 じゃあ、ガキ大将みたいな奴に「これが約束の印だ」と言うて、デ・アンジェリス家の家紋が入ったダガーを、騎士自ら与えよう。ガキはこういうの好きやなからな。
【GM】 それならガキ大将は、「約束だよ!」と言ってから、「ついておいでよ」と案内してくれる。村はずれの草原を目指して十数分、皆さんは、遺跡に到着しました。
【ユーリ】 その遺跡の周りを、全員で調べてみよう。
【GM】 では、サイコロを振ってみてください。
【エリオ】【ジャニオス】【ハニィ】【ユーリ】 (ころっ)。
【GM】 すると、ユーリが直径50センチほどの穴を発見しました。
【エリオ】 50センチやと、俺らじゃ入れんな。頭しか入らんのとちゃうか。
【ハニィ】 子供なら入れるかも。「ここに入ったことある?」って聞く。
【GM】 「こんな穴、あったって知らなかった」と、子供たちは答えます。
【ユーリ】 最近できた穴かな。
【ジャニオス】 使い魔の猫、中に入れさせてみる?
【エリオ】 そうしてくれ。でも「ご主人様、暗くて何も見えませんぜ」とか言われたりして。
【GM】 トリ目の猫かぃ。
【ユーリ】 じゃあ、照明に〈ウィル・オー・ウィスプ〉も入れるよ。(ころっ)成功。
【エリオ】 「ご主人様ッ、まぶしくて何も見えません!」
【ジャニオス】 そんな猫、ウィスプに当たって死んでしまえ!
【GM】 それはさて置き、ジャニオスの猫が穴をどんどん潜って行くと、人工的に作られた地下の部屋に辿り着きました。そこには、開け放たれた扉があるんだけど、その先は土砂に埋もれて進めないよ。
【エリオ】 それだけか。その部屋に何かないんか、GMさんよぉ。
【GM】 何もないですな。
【ジャニオス】 しゃあないな、猫を戻って来させる。
【ユーリ】 この穴から、何か出てきたと思うねんけどな〜。ゴーストとか。
【エリオ】 じゃあ、子供らに「いままで、この遺跡の近くでモンスターとか見たことあるか?」と尋ねる。
【GM】 「ううん、ないよ」とのこと。「でも、この間、ヘンなおじさんは見たけど」
【エリオ】 そいつは見たことあるような奴やったか?
【GM】 「見たことあるような気もするけど、よくわかんない」
【ユーリ】 どんな恰好してた? 戦士っぽいとか、普通の村人っぽいとか……。
【GM】 そうですね、「村の人っぽかった」と答えられます。
【エリオ】 そいつ、何をしてた?
【GM】 「別に。ウロウロしてた」と言って、その子供は、見かけた人の歩く真似をするんやけど、それが正確なら、フラフラとぎこちなく歩いてたことになりますね。
【ジャニオス】 そいつ、ゾンビやったんちゃうか。
【ハニィ】 とにかく、この遺跡が怪しくない? ここでキャンプして張ってみたらどうや。
【ジャニオス】 おう、頑張ってくれ。僕は村長の家で泊まっとく。
【ハニィ】 そんなんアカンわ〜。
【ジャニオス】 いや、僕は村長が怪しいと睨んでるからな。
【エリオ】 奇遇やな。じつは俺もそう思ってたんや。
【GM】 ホンマかぃな。いまのいままで、そんなことひと言も言うてなかったやろ。
【ジャニオス】 胸に秘めてたんや。
【エリオ】 それに、子供たちも村に送ってやらんといかんからな。騎士として。というわけで、俺は村に戻るぞ。ユーリにハニィ、後はよろしく。
【ジャニオス】 いちおう使い魔の猫、ここに置いていくから。
【ユーリ】 そんなん置いとかれたって、いざというとき間に合わへんやろ。
【エリオ】 大丈夫、俺のブルーシャドウの脚力を持ってすれば。何せ、阪神3歳牝馬ステークスで1着になった後、チューリップ賞でも勝ったからな。
【ジャニオス】 マジっすか。
【GM】 何を言うてまんねん。で、けっきょく、ふた手に分かれるわけね。
【エリオ】 遺憾ながら。
【ハニィ】 ウソつけ。
【ユーリ】 薄情やな。
【ジャニオス】 何を言う、村長を見張っとくんやないか〜。ということで、帰ってきたで〜。
【GM】 子供たちを送り帰して、エリオとジャニオスが村長の家に戻ってみると、ルーティンの部下たちが、酒を飲んで騒いでいます。かなり酔ってるようやね。
【エリオ】 そいつらは何や、いっこも仕事してへんのか。
【GM】 いえ、ルーティンたちはルーティンたちで、今日は森の中を捜索してきたそうです。ちなみにルーティンは、いまは割り当てれた部屋に籠もってる。
【ジャニオス】 じゃ、僕らも部屋に籠もろか。今日はふたりやから部屋も広いし、ゆっくり寝れるで〜。
【ユーリ】 ムカつく〜。
【GM】 で、遺跡でキャンプしてるふたりは、どうするの?
【ユーリ】 4時間ずつ交代で、見張りに立つよ。
【ハニィ】 あたしが先に見張る。
【GM】 わかりました。では、ハニィが見張っていると、向こうからひとつの人影が、ユラユラと近づいてきます。見た感じは、普通の村人っぽいです。
【ハニィ】 ユーリを起こす。
【ユーリ】 ゾンビかな。[センス・オーラ]で精霊力を見てみる。
【GM】 生命の精霊力は働いていませんね。
【ハニィ】 じゃあ、アンデッドかな。〈ターン・アンデッド〉って効くかな〜、キャハ〜って。
【ジャニオス】 どんな効き方を期待してんのか知らんけど、やってみればええがな。
【ハニィ】 じゃあ、行きま〜す。(ころっ)失敗、あ〜ん。
【ユーリ】 〈ホールド〉やるよ。(ころっ)効いたな。
【ジャニオス】 敵の周囲の大地からノームが湧き上がって、敵の下半身に絡みついたで〜。これで敵は動けんな。
【エリオ】 ──以上、使い魔の猫からの報告でした。
【GM】 ま、移動はできんけど、攻撃や回避はペナルティを受けつつ行えるからね。魔法も使えるし。
【ユーリ】 ってことは、反撃があるわけ?
【GM】 いや、ないよ。こいつは、そっちに近づいていただけやから。焦点の合わない目で、フガフガもがいてるだけですわ。
【ユーリ】 じゃあ、ハニィ、〈ホーリー・ライト〉や。
【ハニィ】 でもな〜、捕まえたほうがよくない? 情報とか聞きたいし。
【ユーリ】 アンデッドを捕まえても、しゃあないやん。
【ハニィ】 だって、そいつって村人の恰好をしてるんやろ。もしかして、それが誰かに操られてるだけやったら、どうすんの。アンデッドになってるんじゃくて。
【ジャニオス】 だから、〈ホーリー・ライト〉でええやないか。
【ユーリ】 〈ホーリー・ライト〉なら、アンデッドにはダメージ行くけど、生きてる奴にはまぶしいだけやから。
【ハニィ】 なるほど、じゃあ〈ホーリー・ライト〉(ころっ)完璧に決まった。じゃあ、ダメージ行きますよ〜。
【GM】 来なくていいです。目潰しはくらったけど、ダメージは受けませんから。
【エリオ】 アンデッドじゃなかったんやな。
【ハニィ】 じゃあ、ただの村人が操られてただけなんや。見て見て、あたしの言うたとおりやったやろ〜。エッヘン。
【ユーリ】 「生命力は働いてない」って言ってたからな〜、ひょっとしたら魔法生物かも。
【GM】 とりあえず、ユーリは何をする?
【ユーリ】 う〜ん、様子を見とくよ。
【GM】 では、こっちの番やね。なんと、村人の頭が身体から分離して、宙に浮かぶ! 首の下では、4本の赤黒い触手がウジュウジュと蠢いてるよ。
【ユーリ】 気持ち悪ぅ〜。
【エリオ】 なるほどな、正体がわかった。事件の真相も見当ついた。
【GM】 でも、エリオは現場におらんのやから、黙っといてな。
【エリオ】 猫を通じて教えてやるよ。
【ジャニオス】 ほんじゃ、猫が「ニャン! ニャニャニャニャン!」って訴えるから。
【ハニィ】 わかるかー!
【GM】 さて、これで第2ラウンドが終わって、3ラウンド目に突入するよ。
ユーリは〈シェイド〉で、首だけ怪物の精神力を削る作戦をとる。そして、5ラウンド目に首だけ怪物は気絶させられた。
【ユーリ】 じゃあ、そいつを拾って持って帰る。
【GM】 では、ユーリとハニィは、村長さんの家まで帰ってきました。
【ユーリ】 ジャニオスに、このモンスターが何か調べてもらう。
【ジャニオス】 調べたろ。(ころっ)。
【GM】 するとそいつは、ヘッド・ディスプレーサーという魔物だとわかった。はるか昔、魔術によって人工的に造られた怪物で、人間に寄生するらしい。寄生した人間の頭を食べてそこに居すわり、触手を体内に埋め込んで操るそうです。そして、次から次へと人間を襲うという。
【エリオ】 そいつが、あの遺跡の穴から出てきたわけやな。空中飛びよるしな。
【ジャニオス】 なるほど、これで事件は解決やな。
【エリオ】 いちおう、ヘッド・ディスプレーサーは本国に持って帰ろう。とどめを刺して、塩漬けにしたる。
【ハニィ】 じゃ、ファノンに帰ろう。
【ユーリ】 でも、死体が喰い荒らされてたっていうのはなんでやろ。ヘッド・ディスプレーサーが食べるんは、人間の頭だけなんやろ。
【エリオ】 野犬や狼が食べたとか。
【GM】 それについては、ルーティンくんのほうから話が入ります。「じつは、森を探索しているとき、グールと出会った。そいつらの仕業じゃないのか」
【ジャニオス】 グールもうろついてたんか。
【ハニィ】 じゃあ、グールもやっつけに行かんでええの?
【GM】 「グールどもは、既に我々が駆逐した」と、ルーティンは誇らしげに言います。
【エリオ】 それなら、本当に事件は解決したな。では、我々は明朝ファノンに向けて出発する。各自、じゅうぶんに休息を取るように。解散!
【GM】 では、その日の晩、事件解決を祝う酒宴などがありまして、翌朝になりました。皆さんはファノンに帰還するため、来た道を戻って行くわけですな。
というところで今回のセッションは終わりかな。以下、次回ということで。