▽ 新たな仲間が加わる | ▽ 疑惑のオヤジ | ▽ 狙われた牛 |
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【GM】 さて、皆さんはルニオールに帰って来たよ。で、これから何をするか、教えてください。
【シーザー】 そうやね、例の魔王になりつつあると思われる男のことと、そいつがいる遺跡の情報を魔術師ギルドにたれ込む。
【カーム】 それが終わったら、宿屋で休む。メシ食って寝る!
【GM】 わかりました。では、ひと晩休んで翌朝になった。ここで蛮族が、「伝説の剣を探す」とかでパーティから抜けた。
そしてカーム、シーザー、リィンの3人のところに、ひとりの男性がやって来ました。そのひとは、「ホルトーさんの遣いでやって来た」と言います。
【リィン】 ホルトー? ああ、前に護衛してやった商人か。
【カーム】 まだルニオールにおったんか。
【GM】 『まだ』といっても、ゲームの中の時間では、護衛の仕事から半月ほどしか経ってないよ。それに、ホルトーさんはルニオールに別荘を持っているので、しばらくそこで休暇をとってたんですね。
【リィン】 おお、金持ち!
【カーム】 ほんで今度は何の用なんや。
【GM】 「『王都メカリアまで、護衛をして欲しい』とのことです」
【シーザー】 別にええけど。
【GM】 では「詳しい話はホルトーさんの別荘で」ということで、皆さんは遣いの男性に伴われて酒場を出ます。それとすれちがいに、いかにも農村から出てきたという感じの、あか抜けない娘さんが酒場に入ってきたよ。
【カーム】 別に気に留めずにホルトーさんのところへ行く。
【GM】 わかりました。では、従来からのキャラクターたちはひとまず置いといて、今回から新しく仲間に加わるキャラクターさんの出番です。
デリー・アップルさん。女性エルフの魔術師やったね。
【デリー】 は〜い。わたしはその酒場にいてもいいんですか?
【GM】 いいですよ。ちなみにデリーは、シーザーたちよりも先に、ホルトーさんから護衛の仕事を引き受けています。で、その報酬の前金で昼食を食べに来てた、ということにしてください。
【デリー】 わかりました。
【GM】 さて、デリーがカウンター席で昼食をとってると、農村から出てきたばかりというような田舎娘がやって来て、カウンター越しに酒場の主人に話しかけます。どうやら彼女は、冒険者を紹介して欲しいようです。
【デリー】 どうしたんだろう?
【GM】 デリーが何気なく聞いてると、狩人である彼女の父親が猟に出たまま、半月も戻ってこないらしいです。
【カーム】 でも狩人やから、半月ぐらい帰ってこないのはあたりまえやろ。
【GM】 だけど、父親と一緒に猟に行った仲間たちは10日も前に戻って来たのに、父だけが帰って来ない。しかも、帰って来た仲間の話では、猟の途中で濃い霧に覆われ、そのときはぐれてしまったらしい。
【デリー】 じゃあ、立派な遭難やん。
【GM】 「ひょっとして、霧の中で崖から落ちて動けないでいるのかも」と思うと、いても立ってもいられなくなって、こうして冒険者を雇いたいと申し出てきたんですね。
しかし、娘さんの示した報酬額を聞いて、酒場の主人は「悪いがそんな安い報酬じゃ、誰も仕事を引き受けてくれないよ」と気の毒そうに言います。
【デリー】 う〜ん……できれば助けてあげたいけどなァ。
【GM】 じゃあ、しばらく考えといてください。場面はシーザーたちの方に変わります。
シーザーたちは、ホルトーさんの別荘へやって来ました。大変けっこうなお屋敷でございまして、大きな門をくぐると、噴水のある広い庭があったりします。
【シーザー】 蛮族がいなくてよかった。あいつおったら、きっと庭を駆け回って大変なことになってたで。
【リィン】 犬とか追い回して──。
【カーム】 ──捕まえて食う!
【GM】 エライ言われようでんな。さて、皆さんは屋敷へ案内され、通されたのは応接間です。
【カーム】 リィンがあさる。きっと、部屋の中をあさる。
【リィン】 見つかったらまずいから、眼で金目の物を物色するだけにしとくよ。
【GM】 そうすると、しばらくしてホルトーさんがやって来ました。「やあ、お久しぶりです」と、にこやかに握手してきます。
【シーザー】 握手し返して「詳しい話を聞かせてください」。
【GM】 では、依頼内容を説明しましょう。遣いのひとが言ったように、仕事はメカリアまでのホルトー商隊の護衛です。「前回オーガーに襲われたこともあるし、是非ともあなた方に護衛をお頼みしたいのです」
【リィン】 報酬はいくら? うち、軍馬ほしいねんけど。
【カーム】 あれ? 前に買わんかった?
【リィン】 もう1匹ほしいねん。
【シーザー】 馬相手に『匹』はないやろ。
【GM】 そないに馬ばっかり集めても、世話が大変やろに。で、報酬なんですけど、前払いで1200フィス、後払いで3000フィスが提示されました。
【シーザー】 それは現金か? 前みたいに宝の地図とか──。
【GM】 いえ、現金です。まあ、額が大きいので、宝石などで支払うんでしょうけど。
【シーザー】 じゃあ、引き受けるか。
【カーム】 おう。引き受けるつもりで来たしな。
【GM】 「では、出発は6日後の朝です」
【リィン】 かなり間があるな。
【シーザー】 前払いの1200フィスで何か用意でもしとけ、ってことかな。
【GM】 あっ、ちなみね、前金の1200フィスってひとり頭じゃないよ。3人で、ってことやから。
【カーム】【シーザー】【リィン】 なにぃ!?
【GM】 いくらホルトーさんでも、現金でひとり1200フィスはキツイがな。ひょっとして、後払いの3000フィスもひとり頭のつもりやったんやろ?
【カーム】【シーザー】【リィン】 うん。
【GM】 それは無理ってもんですな。そうそう、先に契約したデリーさんも契約金で400フィスもらって、成功報酬で1000フィスを約束してもらっていますから。
【デリー】 は〜い。で、わたしはいつパーティに入れるんだろう。
【GM】 もう少し待っててください。このときシーザーたちは、ホルトーさんから「この仕事は、別の冒険者の方も一緒にやってもらうことになります」と聞かされる。「デリー・アップルという、女性エルフの魔術師です。仲良くやってください」
というわけで、他になければ契約に関するイベントは終わるよ。
【カーム】 じゃあ、ボケ〜っと過ごすために宿屋に戻る。
【GM】 わかりました。カームたちは宿屋への帰り道についたと。では、場面転換してその宿屋、デリーの方へいきます。
【デリー】 娘さんが「冒険者を雇いたい」と言ってたんですよね。
【GM】 そう。でも、お金の都合がつかないので、酒場の主人は「いちおう、冒険者に声をかけておくけど、難しいんじゃないかな」と言う。それを聞いた娘さんは、がっかりした様子で、トボトボと帰って行きました。
そして、シーザーたちがドヤドヤと酒場に戻ってきます。
【シーザー】 「前祝いだー!」
【カーム】 「酒もってこ〜い!」
【リィン】 「金はあるぞ〜」
【GM】 ──とまあ、賑やかなわけや。その躁狂の声の中に、「ホルトーさんから仕事をもらった」というのが、含まれてたんやな。デリーは、その冒険者たちも、ホルトーさんの護衛につくということを知りました。
【デリー】 じゃあ、声をかける。「わたしもご一緒させてくれませんか? 実はわたしも、ホルトーさんから仕事を受けてて──」
【カーム】 おっ。仲間や、仲間! 「ホルトーから話は聞いてる」
【シーザー】 「魔術師は我々が求めていた人材だ。歓迎するよ」
【リィン】 「よろしく〜」
【デリー】 「よろしくお願いしますゥ」
【GM】 そういうわけで、めでたくデリーさんが仲間に加わりました。
【カーム】 じゃあ、宴会や! 酒宴や、酒宴。酒池肉林しよう。
【GM】 酒池肉林とまではいかなくても、皆さんは、歓迎パーティーでひと晩賑やかに過ごした。そして、翌朝になったよ。護衛の出発までは、まだ5日あります。
【カーム】 いつもどおり、朝メシを食いに酒場へ下りる。
【シーザー】 頭が痛いので〜、迎え酒で二日酔いを治す。
【リィン】 神聖魔法で治せばいいのに。
【GM】 そんな魔法の使い方されたら、神様泣くわ。
【デリー】 あ、そうそう。昨日の女の子のことをみんなに話しとこう。「ちょっと気の毒な娘さんだった」と、朝食の席での世間話って感じで……。
【GM】 そのデリーの話に、酒場の主人も入って来て、「もし、時間があるなら、彼女の相談に乗ってやってくれないか」と持ちかけて来たよ。
【シーザー】 その娘はどこの村に住んでんの?
【GM】 ルニオールから南東へ、半日弱ほどの距離にある、モナルという村です。ゼム村の近くやね。馬を急がせば、5〜6時間といったところでしょう。
【リィン】 でも、報酬の見込みはないんやろ?
【GM】 「そうだな。ホントに『人助け』ってトコかな」
【デリー】 個人的には行ってあげたいけどな。
【リィン】 報酬の見込みがある仕事を持ってるからな〜。
【シーザー】 移動時間を省くと、3日ほどしか猶予がないけど、娘がそれでもよければ相談に乗ってやろう。
【カーム】 じゃ、モナル村に行って、その女子(おなご)に「期限つきでもいいか」と尋ねてみよか。
【GM】 『おなご』て……。「期限つきはイヤです」って言われたら、ムダ足になってしまうけどね。
【カーム】 それなら、1、2発どついて帰ってくる。
【GM】 そりゃ困る。どつくんはやめたってぇな。
【シーザー】 ま、どのみち護衛の出発まですることないし。大きな荷物やロバはこの宿屋に預けて、例の簡易馬車で行くことにしよか。
【GM】 では、出発の準備にかかるわけですな。皆さんが馬の鞍を載せ替えたりなどしてると、そこに酒場の主人がやって来ます。「モナル村から来たひとが、冒険者に用があると言ってるぞ」
【シーザー】 今度は何や!
【リィン】 おとんが帰ってきたとか。
【GM】 いえ、酒場にいるのは昨日の娘ではなく、ふたりの中年の農夫ですね。「冒険者さま! オラが村の、恐ろしい事件を解決してくだせぇ」とのこと。
【シーザー】 どーせモナル村には行くつもりやからな。詳しく話してみ。
【GM】 話によると、ここ最近、夜のうちに家の中でおかしな死に方をする村人が、多数出ているらしい。
【シーザー】 『おかしな死に方』? どんな死に方だ。
【GM】 ざっくりばっくり破裂したような変死体になるようです。
【デリー】 うええ〜!
【GM】 朝になって、犠牲者の身内や、家に尋ねてきた者が死体を発見するというのが、事件のパターン。2、3日に1回の割合で、事件が起きているそうです。
【カーム】 けっこう頻繁に起きてるなぁ。
【GM】 その怪事件が発生しだしたのは最近で、犠牲者の数はこれまでに3人。
【リィン】 9日ほど前から事件が起きだしたってことか……。
【GM】 事件の特徴として、発生するのは必ず夜。犠牲者の中には、家族で暮らしてる者もいるけど、隣で寝ていた家族も、朝になるまで事件に気づかないらしい。
【シーザー】 悲鳴とか、肉が裂けたり骨が砕ける音は、しなかったん?
【GM】 そう。それで、2回目の事件の後、モナル村で独自に見回りなどをしたんだけど、3人目の事件のときも、犠牲者の悲鳴を聞いたり、怪しいものを目撃したりということはなかったとのこと。
【デリー】 村人の中に、怪しいひとはいない?
【リィン】 実は家族の犯行とか。
【GM】 「うちの村に限って、そんな者はいません。それに、死んだ人間の中には、独身者もいるし、家族の犯行とは思えねぇだ」
【シーザー】 とにかく、モナル村へ行ってみよう。どのみち、娘に会いに行くんやろ。
【GM】 じゃあ、馬車でガラガラと行くわけね。その後ろで村人が、「おねげぇしますだぁ〜」と手を振りながら叫んでます。
【デリー】 「任せなさ〜い」
【GM】 では、6時間後にモナル村に到着しました。
【シーザー】 じゃあ、まず娘の家に行こう。その辺の村人に、「最近、父親が行方不明になっている娘の家はどこだ」と聞く。
【カーム】 言え! 家はどこだ、言え!!
【GM】 あのね。村人は、シーザーの問いに「それはサイルんとこの、娘さんのことだがね?」と答えます。「だどもサイルは昨日、見かけただと」
【リィン】 え〜? どこで?
【GM】 「村の雑貨屋で」
【カーム】 ……これは娘をしばきに行かなアカンな。
【デリー】 そんなしばかんでも……。その村人に「でも、娘さんから『父親を探して欲しい』って依頼があったんですけど」と話す。
【GM】 「はあ、そう言われても……」
【カーム】 村人にそんなこと言ってもしゃあないやん。とにかく、サイルの家を教えろ。そこに行く!
【GM】 では、サイル家にやって来ました。普通の村人が住むような、つつましい家屋です。扉を叩くと、例の娘さんが出てきました。
【デリー】 じゃあ、「酒場であなたの話を聞いてたんですけど」と言う。
【カーム】 盗み聞きしてたんや。さすがはエルフ、耳が長いだけある。
【リィン】 うちも長いよ。
【シーザー】 いや、そういう問題やないから。「酒場の主人に紹介された」と言うだけでええねん。
【GM】 それなら娘さんは、「来てくださって、ありがとうございます。実は、ルニオールから戻ってみると、父が帰って来てたんです」とすまなそうに言う。
【シーザー】 そのお父さんな、帰ってきてから様子が変わったことないか? 以前はなかった癖があるとか、夜な夜などこかに出かけるとか。
【リィン】 で、朝帰ってくると服に血がベットリついてたり。
【GM】 はあ、彼女の父親を疑ってるわけね。娘さんは「そんなことないです」と、キョトンとします。そのとき、家の中から彼女の父親サイルさんが顔を覗かせます。「お客さんかい?」
【デリー】 「実はかくかくしかじかで、あなたを探しに来たんですよ」と、サイルさんに恩着せがましく言う。
【リィン】 サイルはいったいどこに行ってたん?
【GM】 「ただの狩りですよ。昨日、帰って来たんです。途中、仲間とはぐれて道に迷い、ずいぶん遅くなってしまったんです。どうもお騒がせしてすみません」
【シーザー】 「いえ、礼には及びません。ただ、ざっと村を見回してきたところ、どうやら宿泊できそうなところはなさそうでして」
【GM】 「そういうことでしたら、ぜひ我が家にお泊まりください」
【デリー】 じゃあ、遠慮なく上がらせてもらおう。
【リィン】 サイルと娘に、村人が殺される事件のことを尋ねとこ。「何か知らへん?」
【GM】 昨日帰ってきたばかりのサイルさんは、事件そのものについてあまり知りません。娘さんのほうも、酒場へ依頼に来た村人と同じぐらいのことしか知りません。
【カーム】 ふ〜ん。じゃあ、村長のところに惨殺事件について聞きに行く。
【GM】 では、皆さんは村長の家までやって来ました。「おお、あなた方は冒険者! 事件の解決を引き受けてくださるのか?」と、嬉しそうな村長さん。
【シーザー】 「引き受けるかどうかは、これから決めます。まずは参考までに、報酬の話からいきましょう」
【GM】 いきなりでんな。「報酬は、ひとり200フィスでいかがですか?」
【カーム】 う〜ん、ま、ええやろ。事件の詳しい話を聞かせて欲しい。
【GM】 詳しい話と言っても、村長さんも、酒場に来た村人が知ってる以上のことは知りませんよ。
【デリー】 それよりさ、この依頼を引き受けたら、二重契約にならん? それは大丈夫なん?
【シーザー】 「大丈夫じゃない」って話は聞いたことないから、大丈夫なんちゃう。
【デリー】 でもさ、もし、ホルトーさんとの約束の日に間に合わんかったら、まずいことにならん?
【カーム】 いまごろそんなこと言うてもな。それに、期日中に謎が解けそうになかったら、ルニオールに帰ってまえばええやん。
【デリー】 それってこの仕事に失敗したことになるやん。
【リィン】 ええやん。3000フィスの仕事が優先で、200フィスのはおまけ。
【シーザー】 村長に話しておこう。「我々は多忙の身ゆえ、5日程しかこの村にいられません。それまでに事件を解決できなければ、もちろん報酬はいりませんし、別の冒険者を紹介することを約束しましょう。ただし、我々が働く5日分は、拘束料として報酬の何割かを前払いしていただきたい」
【GM】 村長さんは、シーザーの条件をのむことにしました。「よろしくお願いします」と、ひとりにつき50フィスを前金として払ってくれた。
【カーム】 よし、交渉成立。じゃ、化け物が出てきたら呼んでな。
【デリー】 そんな無責任な! 見回りとかせんでええの?
【カーム】 だって、村まるまる1個見張るのは大変やん。出てきたところをやっつけれたらええがな。
【デリー】 じゃあ、今のところサイルさんが怪しいから、サイルさんだけを見張ればええんとちゃう?
【シーザー】 盗賊のリィンが天井裏にでも潜んどけばええな。
【リィン】 え?? うち、徹夜かいな。
【デリー】 あ、わたしも使い魔の黒猫で見張りしますよ。使い魔の目を通してものを見ることができるんですよね?
【GM】 できるよ。ただ、そのためにはデリーも起きとかなアカンけどね。
【デリー】 じゃあ、わたしも徹夜します。
【シーザー】 どーせなら、猫は村を巡回しといて欲しいな。俺とカームは寝るけど。
【カーム】 何かあったら起こしてくれ。
【リィン】 うわ〜、なんかムカつく〜!
【シーザー】 とりあえず情報がもらえんのなら、もう村長のとこには用はない。サイルの家に戻ろう。
【GM】 帰って来た。すっかり日も暮れたよ。夕食は、娘さんの素朴ながらも精一杯の御馳走。皆さんはその心尽くしの料理をいただき──。
【シーザー】 「がっはっは。もっと食え、もっと食え!」
【カーム】 「さあ、飲めッ」
【GM】 ──と、まあ、そんなふうに賑やかに過ごしました。そして夜も更けて、そろそろ寝ようということになります。
【シーザー】 では、打合せどおり、リィンが梁の上に潜んで、使い魔の猫は村を巡回する。
【GM】 わかりました。では、カームとシーザーはグウグウ寝て、サイルさんと娘さんもぐっすり眠ります。そして「きゃー!!」という悲鳴とともに、夜は明けるのでした。
【リィン】 サイルは関係なかったやん。魂だけ抜け出したんかも知れんけど。
【シーザー】 現場はどこや。どこの家や!
【GM】 騒然としているのは、サイルさんの家の裏手にある家です。畑を挟んでいるので、すぐ隣というわけではないけど。
【カーム】 見に行く。
【GM】 悲鳴を聞きつけた他の家のひとびとも、「また事件か」といった様子で、その家に集まりつつあるよ。
【シーザー】 じゃあ、俺らは人垣をかき分けて、白い手袋を嵌めながらロープをくぐって現場に入る。
【カーム】 それで、ガイ者(被害者)の様子は?
【GM】 倒れてるのは、20代ぐらいの男性。首と胴が離れて転がっております。
【デリー】 こわい〜。
【リィン】 被害者はひとり?
【GM】 この家で死んでるのは、その男性だけです。ちなみに第1発見者は、隣で寝ていた彼の新妻です。
【カーム】 部屋の様子は。荒らされたりとかしてない?
【GM】 物色された跡はありません。
【シーザー】 じゃあ、血が飛び散ってるだけか。
【GM】 その血なんですけども──。
【カーム】 緑色か。
【シーザー】 なんでやねん。たぶん、首を切断されたにしては、量が少ないというんちゃうの。
【GM】 そのとおり。
【リィン】 血を吸われたんやろか。犯人は吸血鬼?
【シーザー】 バンパイアの犯行にしても、首をちょん切るというのはしっくりこない。
【デリー】 その傷口はどんなの? 鋭利な刃物で切られたとか。
【GM】 そうですね、そういうのはセージ技能でチェックしてみましょう。
【カーム】【デリー】 (ころっ)。
【GM】 それは、刃物で切断されたというよりも、たとえばゴム人形の頭を無理やり後ろに曲げてると、喉が裂けてきますよね? そんな感じで、裂け切れてしまったみたいです。
あと、胴体はグチャグチャです。胸や腹に傷口がざっくり開いていて、あばら骨なんかも見えてます。こちらも血がほとんど流れてないので、服を脱がすまで、その惨状がわかりませんでした。ちなみに、内蔵を引きずり出したり、とかいうことはされてません。
【シーザー】 これまでの被害者たちの死体も、こんな感じやったん?
【GM】 まあ、だいたいこんな感じだったそうです。
【シーザー】 そんなに死体がグチャグチャになってんのに、物音ひとつせんかったんか。
【デリー】 実は、家のひとは魔法で眠らされてたとか。
【GM】 さあ。それは、奥さんにはよくわかりませんね。
【シーザー】 ふむ……とりあえず、足跡を探してみよう。リィン、頼むわ。
【リィン】 はいよっと。(ころっ)。
【GM】 目につくものはありません。
【シーザー】 家の周りも見てみよう。どこから侵入してきたのか、調べる。
【GM】 窓を破って入ってきたとか、ドアを蹴破って入ってきたとか、そういう外から侵入してきたような形跡は見られない。ちなみに、外にも怪しい足跡は見当たらないよ。
【リィン】 やっぱり肉体のない奴か? テレポートしてきたとか……。
【カーム】 いま言えることは、「わけがわからん!」ってことだけやな。
【シーザー】 次に狙われる奴がわかってたら、何とかできるかも知れんけど……。今までの被害者に共通点はないのか?
【GM】 聞いたところ、まったくないようです。
【デリー】 無差別殺人ってことか。計画性とかないのかなぁ。被害者を怨んで殺したとか。
【シーザー】 ま、それはこれから調べよう。村のひとたちに聞き込みに行く。
【リィン】 うちは寝る。昨日、徹夜したから。
【デリー】 あ、じゃあわたしも。
【シーザー】 しゃあないな。ふたりで村を調べるか、リーダー代理。
【カーム】 ウイ。何か怪し〜ものはないかな〜。
【シーザー】 村のはずれに古びた教会があるとか……。
【GM】 そんなのないよ。
【カーム】 じゃあやっぱりサイルが怪しいんか?
冒険者たちは、しきりにサイルに疑いの目を向ける。サイルに何か変わったところがないか、娘や村人に尋ねてまわるが、収穫はなし。そして、狩りの途中でサイルとはぐれ、11日前に戻ってきたという3人の猟師仲間(アルム、ディーン、ベイス)のひとり、アルムを訪ねた。
【GM】 ではでは、シーザーとカームはアルムさんの家にやって来ました。
【シーザー】 それじゃ、狩猟に出かけた場所や、サイルとはぐれたときの状況を聞く。
【GM】 「あのとき、狩りへ行ったのは西の山です」
【シーザー】 西? 位置的にはゼム村の南ってことになるな。
【カーム】 ゼム村というと、あの全滅してた村。関係あるんかな。
【シーザー】 でも、あんときの村人と、今回の被害者の死に方は全然ちがうぞ。
【GM】 で、アルムさんの話では、サイルさんとはぐれてしまった原因は、「途中で霧に包まれてしまったから」だそうです。
【シーザー】 それは出発してから何日目のこと?
【GM】 「1週間ぐらい経ってからです」
【カーム】 現場までそんなにかかるんか。そこには行かれへんな。で、なんでサイルだけはぐれたん?
【GM】 「なんでと言われても……。ただ、その霧はいま思うと妙な霧でした。霧の中をさまよっていると、ある地点でいきなり霧が晴れたんです。後ろを振り返ってみると、まるで見えない境界が引かれているかのように、そこからきっちり向こうにだけ、霧が発生してたんです。
そして間もなく、ディーンとベイスは霧から出てきたんですが、サイルだけはとうとう出て来ませんでした。そういうわけで、しょうがなく我々だけで帰ってきたんです」
【シーザー】 それが11日前のことやな。
【カーム】 事件が起きはじめたのが、いまから10日前。その霧が何か関係してきてるんかな。
この後、ふたりはディーンとベイスの家に行った。が、得られた情報はアルムからの情報と大して変わらなかった。
【シーザー】 しゃあない。デリーを起こして、サイルに[センス・オーラ]してもらおう。
【デリー】 そうすると何がわかるんですか?
【リィン】 アンデッドやったり、何かにとり憑かれてたりすると、生命や精神の精霊力に、異常な働きを感じることができるんよ。
だが、結果はシロ。サイルに異常は見られなかった。そこで今度は、霧に包まれたという残りの3人に[センス・オーラ]をしてみた。すると、3人ともことごとく生命の精霊に異常が見られ、そのうちベイスの生命の精霊の存在は激しく歪んでいた。
【GM】 それは、負の生命力が働いているというよりも、ベイスさんの生命力に別の力がとり憑いているという感じですね。
【リィン】 やっぱり憑依されてたんか。霧の中で何かあったんや。
【デリー】 怪しいんはベイスやったんや。これでサイルさんの容疑は晴れたな。
【カーム】 ベイスが犯人や。今晩、ベイスを家の前で見張る。気づかれへんように。
【GM】 わかりました。では夜も更けて、ベイスさんは就寝したようです。大きなイビキが聞こえてきてたんですが……そのイビキが突然止まり、聞こえなった!
【リィン】 家に踏み入る! [忍び足](ころっ)。
【GM】 リィンは家の中に入って、ベイスさんが寝ている部屋に来た。すると、ベイスさんはご臨終です。例の死体となっていました。
【リィン】 この部屋には他になにかおらへん?
【GM】 そうですね、それはダイスで判定してみましょう。
【リィン】 (ころっ)経験値10点もらい(自動失敗)!
【GM】 では、リィンは何も見つけられませんでした。
【リィン】 じゃあ、こっそりと大声でみんなを呼ぶ。
【カーム】 難しいことを言うとるで。
【リィン】 だってこのままやったら、うちが殺人犯にされてまうやん。
【GM】 大声でみんなを呼んでしまったので、ベイスの家族も起きだして来たよ。カームたちも、リィンの呼び声に気づいた。
【カーム】 じゃあ、家に踏み込む。
【GM】 そうすると家族たちは、「あなたたちは!?」ということになる──けど、死体の状況が状況なだけに、リィンが犯人だとは思わないようやね。それに、キミらが事件の調査をしてるのは知ってるし、殺人犯が大声で仲間を呼ぶはずがないしね。
【リィン】 よかった。
【デリー】 現場で[センス・オーラ]してみる。
【GM】 すると、部屋の隅っこで反応があります。それは、今までに感じたことのない精霊ですが、その正体を知る寸前にその精霊力はかき消えてしまった。
【カーム】 おおッ、何がなんだかぜんぜんわからん!!
犯人だと思っていたベイスに死なれ、ほとんど手がかりがないまま、捜査は振り出しに戻る。
翌朝、冒険者たちは、村長を介して村人全員を広場に集め、デリーに[センス・オーラ]させてみる。すると、雑貨屋の主人の生命力が、死ぬ直前のベイスと同じようになっているのがわかった!
【リィン】 ひとの生命力にとり憑いた何かが、村人を殺してたんや。だから、次に死ぬんはきっと雑貨屋さん。
【シーザー】 じゃあ、雑貨屋に言ってやろう。「あなた、今晩死にますよ」と。
【GM】 「ひええええ〜?!」
【シーザー】 「だから今日1日、我々が護衛してあげましょう」
【カーム】 おう、そんで怪物倒して事件は解決や。
【GM】 なるほど、雑貨屋の主人イワミーさんの家で見張りをするわけね。
【カーム】 そうや〜。目を離せへんで〜。そいつが寝てるそばで見張ってるから。
【シーザー】 いつでも戦闘できるようにしてな。
【GM】 それでは、夜も更けて──みんな、イワミーさんと同じ部屋にいるんやったな。じゃ、全員[精神力抵抗]してください。
【カーム】【シーザー】【リィン】【デリー】 なにぃ!? (ころっ)。
【GM】 おやおや、それなら皆さん、[精神力抵抗]失敗ですな。
【カーム】 あ〜あ、けっこういい目が出てたのに。
【リィン】 うちの出目でダメやったら、6ゾロ出さんと無理ってこと。そんなの出ねーよ!
【シーザー】 [カウンター・マジック]かけとけばよかったんかな。でも、しかけられたのが魔法かどうかわからんからなぁ。
【GM】 では、全員気を失ってくだしゃい。
【カーム】【シーザー】【リィン】【デリー】 パタっ。
【シーザー】 で、起きたら雑貨屋は死んでると。
【GM】 そうですな。例によって例の死体と変わり果ててます。
【カーム】 どないせえ、っちゅうんじゃあーッ!!
これで王手と思いきや、スルリと逃げだす謎の敵。もはや八方塞がりと、ここでシーザーが神(GM)にヒントを求めるため、神託を乞うた。
神の返答は「邪悪なる意思の目的は、人だけにあらず」。つまり犬や猫や家畜までもが、謎の敵のターゲットだということ。
【カーム】 村じゅうの動物を集めよう。
【リィン】 きっと次のターゲットは牛やで。
そういうわけで、再び村長に命じて村人とその家畜たちを広場に集め、[センス・オーラ]をしてみた。すると、ひとりの農夫の連れてきた一頭の牛が怪しいことに気づいた。リィン大正解。
【GM】 ええ勘してるわ、ホンマに。
【シーザー】 今晩はその牛を見張ろう。ただし、今度見張るのは使い魔の猫だけ。俺たちは外で待機して、猫が気を失ったら現場に突入する!
【GM】 それでは三たび夜になり、計画どおりに見張ってると、猫は気を失った!
【カーム】【シーザー】【リィン】【デリー】 突入〜!!
【GM】 突入すると、すでに牛の死体が裂けはじめてます。そしてそこから、何かが現れた気配がします。ただし、その姿はまったく見えません。
【シーザー】 エア・ストーカーか? なんだってええわ、逃がすな!
その透明モンスターはエア・ストーカーではなく、GMのオリジナル。それゆえ、セージ技能で[怪物判定]してみても、敵の正体を知ることはできなかった。
デリーの[センス・オーラ]で気配を読み、牛の血をぶっかけて敵の姿が見えるようにした冒険者たちは、透明モンスターをタコ殴りにして、何とか倒すことに成功した!
【GM】 怪物は、ぶしゅ〜、ジュクジュクジュク……と溶けてちゃいました。
【リィン】【デリー】 やった〜!
【カーム】 あー、すっきりした。
【シーザー】 では、村長に事件の解決を報告しに行こう。
【GM】 「どーもありがとうごぜえますだ」とお礼を言われて、ひとり200フィスを手に入れました。
【カーム】 ちっ、仕事の割りには安いぜ。2万フィスぐらいくれ。
【GM】 そんなの、村が破産しまんがな。
【シーザー】 じゃあ、ルニオールに戻ろう。ホルトーの護衛の仕事もあることやし。
【GM】 皆さんはモナル村のひとびとに見送られ、馬車でガラガラと、ルニオールの街に戻ってきました。しかし、すんなりと街に入れるわけではないんですね〜。
【カーム】 今度は何や〜。
【GM】 行く先々で事件が起こる。キミらは疫病神やな、ホンマに。
【リィン】 GMがそうするからやんか!